生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_核移植卵、単為発生胚および単為発生哺乳動物の作出方法
出願番号:2005512613
年次:2009
IPC分類:A01K 67/027,C12N 15/09,C12N 5/10


特許情報キャッシュ

河野 友宏 尾畑 やよい JP 4275137 特許公報(B2) 20090313 2005512613 20040804 核移植卵、単為発生胚および単為発生哺乳動物の作出方法 学校法人東京農業大学 598096991 大島 正孝 100080609 白石 泰三 100109287 河野 友宏 尾畑 やよい JP 2003286543 20030805 20090610 A01K 67/027 20060101AFI20090521BHJP C12N 15/09 20060101ALI20090521BHJP C12N 5/10 20060101ALN20090521BHJP JPA01K67/027C12N15/00 AC12N5/00 B C12N 5/00 A01K 67/027 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) J.Biol.Chem., vol.277(14), pp.12474-12478 (2002) Development, vol.125, pp.1553-1560 (1998) 蛋白質 核酸 酵素,vol.43(4), pp.565-572 (1998) 7 JP2004011491 20040804 WO2005011371 20050210 9 20060207 長井 啓子 本発明は、核移植卵の作出方法に関する。さらに詳しくは、雌ゲノムのみから構成される核移植卵の作出方法に関する。また本発明は、核移植卵から単為発生胚を作出する方法に関する。さらに本発明は、該単為発生胚から単為発生非ヒト哺乳動物を作出する方法に関する。 哺乳動物では、精子と卵子の受精により個体発生が行われ、決して卵子のみでは個体発生を完了することはない。これは、精子と卵子のゲノムの機能が決定的に異なっていることを意味する。この機能差は生殖細胞が形成される過程で後天的に刷り込まれる化学的なDNA修飾の結果、同一遺伝子の発現が精子に由来するものと、卵子に由来するものとで全く異なる遺伝子群(インプリント遺伝子)が存在するためであると考えられている。事実、新生仔の卵母細胞はこの遺伝子修飾を受けておらず、あたかも精子由来の遺伝子発現パターンを示す遺伝子が多数存在する。 このようなインプリント遺伝子の発現パターンを解析するため、本発明者は、マウスの新生仔卵母細胞由来のゲノムと成熟雌由来の卵子ゲノムから核移植卵を作出する方法を提案した(非特許文献1参照)。かかる方法は、(1)除核した卵核胞期(GV期)卵に、新生仔卵母細胞(ng卵子)を導入した後、体外成熟培養しMII期(第2減数分裂中期)まで移行させ第1核移植卵とする工程、(2)該第1核移植卵からMII期染色体を取り出し、別のMII期卵(fg卵子)に導入し第2核移植卵とする工程からなる。かかる第2核移植卵は、ng卵子由来の半数体ゲノムセットおよびfg卵子由来の半数体ゲノムセットを有する。 本来、新生仔卵母細胞(ng卵子)は、卵子成長過程の後期(マウスでは卵子の直径がおよそ60μm)になるまでは減数分裂を再開することがなく、第1減数分裂前期のディプロテン期で細胞周期を停止している。本発明者は、この細胞周期を停止している新生仔卵母細胞(ng卵子)を、十分に成長した卵母細胞の細胞質へ導入すると、減数分裂を再開することを見出し、上記方法を提案した。 導入されたng卵子由来の遺伝子は、卵子成長期に後天的に刷り込まれる化学的なDNA修飾を受けておらず、第2核移植卵はインプリント遺伝子の発現制御を解析する上で、有用な材料となることが期待される。かかる第2核移植卵からの単為発生胚は、形態的には受精卵由来の胎仔と比べ遜色のない妊娠13.5日目の胎仔まで発生することを確認したが、その後の成長は確認できなかった。河野友宏著、「卵子形成過程におけるゲノム刷込みと胚発生」、蛋白質 核酸 酵素Vol.43 No.4(1998), p267−274 そこで本発明は、非ヒト哺乳動物の卵子由来の半数ゲノムを2セット有する核移植卵であって、成体までの発育能を有する核移植卵の作出方法、該核移植卵からの単為発生胚の作出方法、該単為発生胚からの単為発生哺乳動物の作出方法を提供することを目的とする。 非特許文献1に記載の第2核移植卵の作出方法に使用するng卵子の遺伝子は、卵子成長期に後天的に刷り込まれる化学的なDNA修飾を受けておらず、精子由来の遺伝子に近いものではあるが、精子由来の遺伝子とは相違する。 本発明者は、卵子由来の半数ゲノム2セットを有する第2核移植卵のゲノム遺伝子を、より精子と卵子の生殖におけるゲノム遺伝子に近づけるべく鋭意検討した結果、卵子由来の半数ゲノムの一方として、精子形成過程で後天的遺伝子修飾をうけるインプリント遺伝子を欠損させた遺伝子を用いることを見出し、本発明に到達した。 すなわち哺乳動物では、父方および母方から由来している相同染色体上に、同じ遺伝子あるいはその対立遺伝子が同一順列で配列されており、両親のアレルから同等に遺伝子発現が行われ個体の形質発現に携わっている。 しかし、一部の遺伝子には父方発現するものと母方発現するものがある。例えば、H19遺伝子は、胚成長因子であるIGF2(Insulin like growth factor II ) 遺伝子の発現調節をする遺伝子であり母方で発現し父方では発現しない。これはH19遺伝子は精子形成過程で後天的遺伝子修飾をうけ、父方での発現を抑制されるからである。このような遺伝子をインプリント遺伝子と呼ぶ。 一方、IGF2遺伝子は父方で発現し、母方では発現しない。これはIGF2遺伝子とH19遺伝子がH19遺伝子の下流に存在するエンハンサー(遺伝子発現増強配列)を共有しているためである。このエンハンサーは、通常H19遺伝子に対して優位に機能するが、H19遺伝子が精子形成過程で後天的遺伝子修飾を受けるとH19遺伝子に対して機能することができなくなり、IGF2遺伝子に対して機能するようになる。その結果、H19遺伝子は父方での発現が抑制され、IGF2遺伝子は父方で発現するといった相互関係が成り立つ。 すなわち、通常の精子と卵子による生殖においては、母方でH19遺伝子が発現し、父方でIGF2遺伝子が発現することにより、正常な胚成形が行われている。本発明のように卵子同士の単為生殖を行い、双方の遺伝子が母方由来では、母方で発現するH19遺伝子のみが発現され、父方で発現するIGF2遺伝子が発現されないことが予想される。 しかし、本発明者は、卵子同士の単為生殖において、卵子由来のH19遺伝子の一方を欠損させておくと、本来父方で発現するIGF2遺伝子が卵子由来(母方)の遺伝子から発現し正常な胚形成および哺乳動物の形成がなされることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、非ヒト哺乳動物の核移植卵を作出する方法であって、(1)除核した卵核胞期卵(GV期卵)に、原始卵胞卵(ng卵子)を導入した後、体外成熟培養しMII期(第2減数分裂中期)まで移行させ第1核移植卵とする工程、(2)該第1核移植卵からMII期染色体を取り出し、別のMII期卵(fg卵子)に導入し第2核移植卵とする工程、からなる、ng卵子由来の半数体ゲノムセットおよびfg卵子由来の半数体ゲノムセットを有する核移植卵を作出する方法において、ng卵子またはfg卵子として、精子形成過程で後天的遺伝子修飾をうけるインプリント遺伝子を欠損する卵子を用いることを特徴とする、前記核移植卵の作出方法である。 本発明は、該第2核移植卵を活性化処理した後、体外発生培養することからなる単為発生胚の作出方法を包含する。 本発明は、該単為発生胚を雌哺乳動物の子宮に移植し成長させることからなる単為発生非ヒト哺乳動物の作出方法を包含する。 本発明によれば、非ヒト哺乳動物の卵子由来の半数ゲノムを2セット有する核移植卵であって、成体までの発育能を有する核移植卵の作出方法が提供される。また本発明によれば、該核移植卵からの単為発生胚の作出方法、該単為発生胚からの単為発生非ヒト哺乳動物の作出方法が提供される。 特に、本発明によれば、成体までの発育能を有する核移植卵、単為発生胚を提供することができ、妊娠13.5日目程度の胎仔までしか発生することの出来ない従来法に比べその技術的意義は大きい。 本発明者は、本発明の内容を本願の優先権の基礎とする日本出願後に発表した(Tomohiro Kono et al, Nature Vol.428, No.6985, pp.860−864, 22 April 2004)。(第1核移植工程) 除核した卵核胞期卵(GV期卵)に、原始卵胞卵(ng卵子)を導入した後、体外成熟培養し、MII期(第2減数分裂中期)まで移行させる工程である。 GV期卵は、成熟した哺乳動物に妊馬絨毛性性腺刺激ホルモンなどを投与し、過排卵処理により得られる体内成長卵子や、成熟した哺乳動物の卵巣から無処理で得られる体内成長卵子を用いることが出来る。かかる体内成長卵子は、過排卵処理、あるいは無処理により得られる雌哺乳動物の卵巣からPBS溶液等を用いて注射針等で卵胞を切り裂いたり、注射針等で卵胞から吸引することにより採取することができる。卵丘細胞が付着しているGV期卵はガラスピペットなどによるピペッティングや、トリプシン・EDTA等の酵素処理によって卵丘細胞を除去することが好ましい。 GV期卵は、透明帯の切断および除核を行いレシピエント卵とする。透明帯は、顕微鏡で観察しながらガラスナイフなどで切断することができる。除核は、除核ピペットを透明帯の切断部から挿入し、少量の細胞質とともに除去して行うことができる。 ng卵子は、胎生期の卵母細胞または新生仔の卵母細胞であることが好ましいが、成熟した哺乳動物の卵巣から採取することもできる。 導入は、細胞融合により行うことが好ましい。レシピエント卵の囲卵腔内にng卵子をセンダイウイルス(HVJ)とともに注入し融合させることが好ましい。 その後、体外成熟培養し、MII期(第2減数分裂中期)まで移行させる。体外成熟培養は、ウシ胎仔血清(FBS)を5%添加したαMEM培地等により、炭酸ガス培養器中で培養することができる。またウシ胎仔血清(FBS)を5%添加したM16培地を用いることができる。体外成熟培養により、卵は核膜の崩壊、分裂装置の形成、減数分裂、第1極体の放出を行いMII期に達した第1核移植卵を得ることができる。 非ヒト哺乳動物としては、マウス、豚、牛、ヒツジ、ヤギ、ラット、ウサギ等が好ましい。(第2核移植工程) 第1核移植卵からMII期染色体を取り出し、別のMII期卵(fg卵子)に導入し第2核移植卵とする工程である。 fg卵子は、雌成熟哺乳動物からの排卵卵子であることが好ましい。かかる排卵卵子は、成熟した哺乳動物に妊馬絨毛性性腺刺激ホルモンやヒト絨毛性性腺刺激ホルモンなどを投与し、過排卵処理により排卵卵子を得ることが出来る。一方、成熟した哺乳動物の卵巣から無処理で得られる体内成長卵子を卵丘細胞に覆われた状態で体外成熟培養しMII期に達した卵をfg卵子として用いることも出来る。fg卵子は透明帯の一部を切断しておくことが好ましい。 導入は以下の方法で行うことができる。第1核移植卵の透明帯切断部から除核用ピペットでMII期染色体(分裂装置)を吸引する。ついで、ピペット先端にセンダイウイルスを吸引し、fg卵子の透明帯切断部から挿入してMII染色体を注入することができる。これらの操作はM2培地等の核移植用培地中で行うことが好ましい。その後、M2培地中で所定の時間、培養して融合させ第2核移植卵を得ることができる。第2核移植卵は、ng卵子由来の半数ゲノムセットとfg卵子由来の半数ゲノムセットを有する。(インプリント遺伝子) 本発明においては、ng卵子またはfg卵子は、精子形成過程で後天的遺伝子修飾をうけるインプリント遺伝子を欠損する卵子である。インプリント遺伝子およびその発現調節領域を欠損する卵子であることが好ましい。 インプリント遺伝子として、H19遺伝子(Leighton P. A. et al, Nature 375, 34−39,1995)、Igf2遺伝子(Leighton et al, Nature 375, 34−39,1995)、Dlk1遺伝子(Schmidt, J. V. et al, Genes Dev. 14, 1997−2002, 2000)、Gtl2遺伝子(maternally expressed gene 3/gene−trap locus 2, Schmidt, J. V. et al, Genes Dev. 14, 1997−2002, 2000)、Ras−grf1遺伝子を挙げることができる。 したがって、H19、Igf2、Dlk1、Gtl2、Ras−grf1からなる群から選ばれる少なくとも一種の遺伝子を欠損する卵子を用いることが好ましい。H19、Gtl2およびRas−grf1からなる群より選ばれる少なくとも一種の遺伝子を欠損する卵子を用いることがさらに好ましい。H19遺伝子、Gtl2遺伝子のどちらか一方または双方を欠損する卵子を用いることが特に好ましい。 インプリント遺伝子を欠損する卵子は、遺伝子欠損哺乳動物から得ることができる。遺伝子欠損哺乳動物は、公知の標的遺伝子組換え法(ジーン・ターゲティング:例えば、Methods in Enzymology 225:803−890, 1993)を用いることにより、例えばマウスの場合、以下のとおりに作成することができる。 先ず、単離したH19遺伝子、Gtl2遺伝子などのインプリント遺伝子の標的配列をネオマイシン耐性遺伝子(Neor遺伝子)と置換し、またインプリント遺伝子の端部にヘルペスウイルスのサイミジンカイネース遺伝子(HSV−tk遺伝子)を付加してターゲティング・ベクターを作成する。このターゲティング・ベクターをマウスの胚性幹細胞(ES細胞)に導入し、細胞ゲノムDNAのインプリント遺伝子がターゲティング・ベクター中の変異配列に相同組換えされた細胞を選択する。 このような遺伝子組換え細胞の選択は、G418を細胞培地に添加してNeor遺伝子を持たない非組換え細胞を除去し、さらにガンシクロビルを添加してHSV−tk遺伝子が残存するランダムな組換え細胞を除去することによって行うことができる。選択された遺伝子組換え細胞のインプリント遺伝子は、そのコード配列中にNeor遺伝子が挿入された変異配列であり、インプリント遺伝子を発現することはできない。 次いで、この遺伝子組換えされたES細胞をマウスの初期胚(胚盤胞)に注入し、この初期胚を雌マウスの体内で個体へと発生させ、キメラマウスを産出させる。そして、このキメラマウスと野生型マウスとを交配して子孫マウスを産出させ、これらの子孫マウスの中から、対立遺伝子の両方または片方に変異配列を有するマウス個体を選別することによって、遺伝子欠損マウスを得ることができる。(単為発生胚の作出) 本発明は、上記第2核移植卵を活性化処理した後、体外発生培養することからなる単為発生胚の作出方法を包含する。卵子の活性化は、ストロンチウムで行うことが好ましい。具体的には、10mMのSrCl2を含むM16培地で培養して活性化させることができる。また、電気パルスやエタノール等によっても卵子を活性化することが出来る。体外発生培養は、5%CO2、5%O2、90%N2の気相、37〜39℃の条件で行うことができる。(単為発生哺乳動物の作出) 本発明は、上記単為発生胚を非ヒト哺乳動物の子宮に移植し成長させることからなる単為発生哺乳動物の作出方法を包含する。移植する非ヒト哺乳動物としては、特に制限されるものではないが、人工授精させた後の妊娠初期にプロスタグランジンF2α等を用いて人工流産させ、同期化を行った哺乳動物を用いることが好ましい。哺乳動物としては、マウス、豚、牛ヒツジ、ヤギ、ラット、ウサギ等の非ヒト哺乳動物を対象とする。 以下、実施例により本発明を説明する。実施例では、哺乳動物としてマウスを用いた。実施例1(ng卵子の採取) 標的遺伝子組換え法(Methods in Enzymology 225:803−890, 1993)によりH19遺伝子およびその上流を合わせて13Kbを欠損したマウス(Leighton et al., Nature 375: 34−39, 1995)の生後1日の新生仔の卵巣を採取した。採取した卵巣を0.02%EDTA溶液中に移し37℃で10分間培養した。ついで、注射針にて卵巣を切り裂き解離してきた非成長期卵子を採取し、ドナー用ng卵子とした。(GV期卵の採取) 成熟したマウス(8〜12週齢、B6D2F1、チャールズリバー/クレア)に妊馬絨毛性性腺刺激ホルモンを5〜7.5IU投与した後、卵巣中の発育した卵胞を27ゲージ注射針にて裂き卵丘細胞に包まれたGV期卵を採取した。卵丘細胞をピペッティングにより除去した後、GV期卵をM2培地(240μM dbcAMPおよび5%FBSを添加)で37℃にて2時間培養した。(除核) 倒立顕微鏡にマイクロマニピュレーター(成茂社製)を取り付け実施した。まず、GV期卵の透明帯をガラスナイフを用いて15〜20%切断した。ついで、GV期卵を核移植用M2培地(10μg/ml サイトカラシンB、100ng/ml コルセミド、240μM dbcAMPおよび5%FBSを添加)に移し、15分間37℃で培養した。顕微操作により除核ピペット(直径が25μm)を透明帯の切断部から挿入し、GV期卵の核を少量の細胞質とともに除去しレシピエント卵とした。(第1核移植工程) 次いで、ng卵子を移植用ピペット(直径が15μm)に吸引したのち、センダイウイルス(HVJ:コスモバイオ)をピペットの先端に吸引した。ピペットをレシピエント卵の透明帯の切断部から挿入しレシピエント卵に押し付けながら注入した。得られた核移植卵を5% FCS添加αMEM培地に移し、炭酸ガス培養器中で37℃にて14時間、培養した。核移植卵は、核膜の崩壊、分裂装置の形成、減数分裂、第1極体の放出の各工程を経て、第2減数分裂中期(MII期)に達した第1核移植卵を得た。(第2核移植工程) 雌成熟マウス(8〜12週齢、B6D2F1、チャールズリバー/クレア)に妊馬絨毛性性腺刺激ホルモンおよびヒト絨毛性性腺刺激ホルモンを48時間間隔でそれぞれ5〜7.5 IU投与し、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン投与14時間後に卵管を採取した。卵管より卵丘細胞に包まれた排卵卵子の塊を採取した後、300μg/mlヒアルロニダーゼを含むM2培地中で卵丘細胞をピペッティングにより除去した後、排卵卵子(fg卵子)を採取した。顕微操作により透明帯の一部を切断した。排卵卵子および第1核移植卵を核移植用M2培地(5μg/mlサイトカラシンBを添加)に移した。上述の第1核移植卵の透明帯切断部から除核用ピペット(直径25μm)を挿入し、MII期染色体(分裂装置)を吸引した。ついで、ピペット先端にセンダイウイルスを吸引し、fg卵子の透明帯切断部にピペットを挿入して、MII期染色体を注入した。M2培地中に移し、37℃で30分間培養して両者を融合させ第2核移植卵を得た。 下記表1に核移植卵の生産効率を示す。実施例2(単為発生胚の作出) 得られた212個の第2核移植卵を、10M塩化ストロンチウムを含むM16培地にて37℃で3時間培養し、人為的に卵子の活性化を誘起させた。その結果189個の卵子が活性化された。第2極体および前核がそれぞれ二つ形成されたもの158個をM16培地にて37℃で3日間体外培養した。その結果、131個の胚盤胞が作出された。実施例3(単為発生マウスの作出) 得られた131個の胚盤胞を偽妊娠2.5日目の雌マウス(定法にしたがい、精管結紮雄と交配させ膣栓を確認した日を偽妊娠0.5日とした雌マウス)の子宮に移植したところ、2匹の正常雌産子が誕生した。これらの遺伝子を解析した結果、H19遺伝子(fg卵子由来)およびNeor遺伝子(ng卵子由来)を持つことから、第2核移植卵由来の産子であることが確認された。 このうち一匹は、遺伝子解析のため、蘇生を確認後、安楽死させた。他の1匹は、「かぐや」と命名され正常に成体に発育した。「かぐや」は、雄との交配により産子を分娩したことから正常な繁殖能力を持つことが確認された。「かぐや」が産子を無事分娩したところの写真を図2に示す。 本発明によれば、卵子由来の半数ゲノムを2セット有する成体の単為発生哺乳動物が作出できる。かかる哺乳動物は遺伝子の働きを解析する実験用動物として有用である。本発明によれば、作出される哺乳動物は全て雌なので、例えば、優秀な遺伝子を有し遺伝的に均一な乳牛を効率よく生産することが可能となる。また、優れた肉牛を作出する雌牛を効率よく生産することが可能となる。このように本発明は畜産業において利用が期待される。本発明により単為発生哺乳動物を作出する場合は非ヒト哺乳動物を対象とする。本発明の核移植卵を作出する方法の概略を示した図である。本発明より得られた単為発生マウスとその産子の写真である。 図1中の符号a〜iは以下のとおりである。a:新生児由来ng卵子b:成熟雌由来fg卵子c:核移植d:体外成熟培養e:成熟した核置換卵子f:排卵卵子g:MII期分裂装置の移植h:卵子の人為的活性化i:再構築されたng/fg単為発生胚a〜eは、本発明の第1核移植工程に対応する。f〜iは、本発明の第2核移植工程に対応する。 非ヒト哺乳動物の核移植卵を作出する方法であって、(1)除核した卵核胞期卵(GV期卵)に、原始卵胞卵(ng卵子)を導入した後、体外成熟培養しMII期(第2減数分裂中期)まで移行させ第1核移植卵とする工程、(2)該第1核移植卵からMII期染色体を取り出し、別のMII期卵(fg卵子)に導入し第2核移植卵とする工程、からなる、ng卵子由来の半数体ゲノムセットおよびfg卵子由来の半数体ゲノムセットを有する核移植卵を作出する方法において、ng卵子またはfg卵子として、精子形成過程で後天的遺伝子修飾をうけるインプリント遺伝子を欠損する卵子を用いることを特徴とする、前記核移植卵の作出方法。 原始卵胞卵(ng卵子)は、新生仔の卵母細胞である請求項1に記載の方法。 別のMII期卵は、排卵卵子である請求項1に記載の方法。 インプリント遺伝子は、H19、Gtl2およびRas−grf1からなる群より選ばれる少なくとも一種の遺伝子である請求項1に記載の方法。 インプリント遺伝子を欠損する卵子は、遺伝子欠損非ヒト哺乳動物由来である請求項1または請求項4に記載の方法。 請求項1に記載の方法で得られた第2核移植卵を活性化処理した後、体外発生培養することからなる非ヒト哺乳動物単為発生胚の作出方法。 請求項6に記載の方法で得られた単為発生胚を非ヒト哺乳動物の子宮に移植し成長させることからなる単為発生哺乳動物の作出方法。


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