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タイトル:公開特許公報(A)_IIS型制限酵素を用いる翻訳終止コドンの除去方法
出願番号:2005362337
年次:2007
IPC分類:C12N 15/09


特許情報キャッシュ

林崎 良英 伊藤 昌可 鈴木 治和 JP 2007159512 公開特許公報(A) 20070628 2005362337 20051215 IIS型制限酵素を用いる翻訳終止コドンの除去方法 独立行政法人理化学研究所 503359821 加藤 朝道 100080816 三宅 俊男 100116528 林崎 良英 伊藤 昌可 鈴木 治和 C12N 15/09 20060101AFI20070601BHJP JPC12N15/00 A 9 1 OL 14 4B024 4B024AA20 4B024BA80 4B024CA04 4B024CA05 4B024CA06 4B024CA07 4B024CA10 4B024DA02 4B024EA03 4B024EA04 4B024FA02 4B024FA10 4B024FA20 4B024GA11 4B024GA18 4B024GA19 4B024HA08 4B024HA09 4B024HA14 本発明は組換えDNA技術に関し、特に、IIS型制限酵素を用いてタンパク質をコードする遺伝子の翻訳終止コドンを除去する方法、及びその方法に用いるベクター等に関する。 ベクター交換(乗せ換え)システムは、クローン化したcDNAを種々の機能性ベクターへ同時平行的に移行させることを容易にし、分子生物学研究に革新的な効率化をもたらした。このシステムは、特異的な組換え反応、例えば、λファージのインテグラーゼ−att部位(非特許文献1参照)やCre−loxP(非特許文献2参照)に基づく。また、ホーミングエンドヌクレアーゼ部位を用いたベクター交換についても報告されている(非特許文献3参照)。 当業者に広く利用されている1つのシステムとして、インビトロジェン社から市販されているGATEWAYシステムがある。このシステムは、(1)PCR産物をエントリーベクターにクローン化する方法;(2)クローン化されたDNA断片を種々の目的ベクター、例えば大腸菌、酵母、バキュロウイルス、又は哺乳類細胞での発現ベクター等へ乗せ換える方法;及び(3)クローン化したDNA断片を所望の方向、順番で連結したり、その翻訳領域のN末端やC末端にタグ配列や蛍光タンパク質等を容易に付加する方法を提供する。これら全ての方法は、大腸菌λファージ生物学の洗練された知識に基づく。すなわち、λファージは溶菌性ファージ、又は可逆的な組換え反応により大腸菌ゲノムに組み込まれた溶原性ファージの何れかの形で増殖する。最初に、ファージのattP部位が大腸菌のattB部位と組み変わることにより、attL部位及びattR部位で挟まれたプロファージとして組み込まれる。次に、attL部位とattR部位が組換えを起こした切り出し反応によって、ファージと大腸菌ゲノムの夫々にattP及びattB部位を再生する。野生型のattP、attB、attL及びattR部位は夫々、243、25、100及び168塩基対からなる。GATEWAYシステムでは、インビトロでのattB部位とattP部位との組換え反応が「BPクロナーゼ」と呼ばれるファージインテグラーゼと大腸菌の宿主因子で触媒され、attL部位とattR部位との組換え反応が「LRクロナーゼ」と呼ばれるλファージの除去酵素及びインテグラーゼと大腸菌の宿主因子によって触媒される。さらにこれらの組み換え部位を改良することにより、目的遺伝子をエントリーベクターから目的ベクターへと一方向に組み換えることが可能となる(例えば、非特許文献4参照)。 一方、比較的長いcDNA断片を低いバックグラウンドで、かつ高効率でクローン化することができる一群のクローニングベクターも報告されている(特許文献1参照)。これらのベクターでは、クローン化したDNA断片の両側に、ホーミングエンドヌクレアーゼやIIS型制限酵素の切断部位を設けることによって上記方法等によるベクター乗せ換え反応におけるバックグラウンドの出現を低下させることができる。国際公開第02/070720号パンフレットWalhout AJ, Temple GF, Brasch MA, Hartley JL, Lorson MA, van den Heuvel S, Vidal M. Methods Enzymol. (2000), Vol. 328, pp.575-592http://www.clontech.com/clontech/products/families/creator/index.shtmlGoderis IJ, De Bolle MF, Francois IE, Wouters PF, Broekaert WF, Cammue BP. Plant Mol Biol. 2002 Vol.50, pp.17-27.Brasch MA, Hartley JL, and Vidak M, Genome Research. (2001), Vol.14, pp.2001-1009 完全長cDNAを含むエントリークローンからC末端融合タンパク質発現ベクターを構築する際、従来法によればベクター乗せ換え前にPCR等により翻訳終止コドンを除去しなければならない。ところが、PCR反応を行うとコドンの読み枠(reading frame)に突然変異を起こしてしまう可能性があるため、融合タンパク質を発現させる前に再度塩基配列を確認する必要がある。特に、ゲノムネットワーク等の解析のためcDNAライブラリーから得られた数多くのクローンを取り扱う場合には、これらの手順に要するコストと労力の負担が大きいという問題があった。 そこで、本発明は、目的遺伝子、特に、完全なC末端領域を有するタンパク質をコードする遺伝子について、PCRを行わずに翻訳終止コドンを除去することのできる新規な方法を提供することを目的とする。 本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、除去すべき翻訳終止コドンの3’隣接領域に、認識部位の外側を切断するIIS型制限酵素の認識配列を導入することによってPCR反応を行わずに終止コドンを除去する方法を開発した。 すなわち、本発明の翻訳終止コドンの除去方法は、目的タンパク質をコードする遺伝子の翻訳終止コドンの3’隣接領域に、IIS型制限酵素の認識配列を導入した2本鎖DNAを調製する工程、ここで、導入された認識配列は、当該制限酵素により前記タンパク質のC末端アミノ酸コドンと翻訳終止コドンとの間の位置又は終止コドンの内部で前記2本鎖DNAの一方の鎖が切断されるように設計されてなり、前記2本鎖DNAを前記制限酵素で切断する工程、及び前記切断された2本鎖DNA末端を平滑化する工程を含むことを特徴とする。前記目的タンパク質は完全な(intact)C末端アミノ酸配列を有することが好ましい。 好ましい実施形態において、前記IIS型制限酵素は、PpiI又はPsrIである。また、1つの実施形態において、前記認識配列を導入した2本鎖DNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により調製することができる。 本発明の異なる観点において、目的タンパク質のC末端アミノ酸に他のタンパク質又はペプチドが結合した融合タンパク質をコードする組み換えDNAの構築方法が提供される。当該方法は、目的タンパク質をコードする遺伝子を用意し、その翻訳終止コドンの3’隣接領域に、IIS型制限酵素の認識配列を導入した2本鎖DNAを調製する。ここで、導入された認識配列は、当該制限酵素により前記タンパク質のC末端アミノ酸コドンと翻訳終止コドンとの間の位置又は終止コドンの内部で前記2本鎖DNAの一方の鎖が切断されて一本鎖突出末端が生ずるように設計されてなる。続いて、前記2本鎖DNAを前記制限酵素で切断し、前記切断された2本鎖DNA末端の1本鎖突出部分を欠失又は充填して平滑末端にし、さらに前記平滑末端に直接又は(任意の長さの)リンカーDNAを介して他のタンパク質又はペプチドの翻訳領域(ORF)を連結する。前記リンカーDNAは、目的タンパク質のC末端アミノ酸コドンの後ろに連結されたときに、アミノ酸の読み枠として終止コドンを含まないことを特徴とする。 本発明のさらに異なる観点において、完全長cDNAをクローン化したプラスミド又はファージベクターが提供される。当該ベクターは、前記完全長cDNAの翻訳終止コドンの3’隣接領域に、IIS型制限酵素の認識配列を導入した2本鎖DNAと、当該2本鎖DNAの両端にホーミングエンドヌクレアーゼの非対称認識配列とを含み、導入されたIIS型制限酵素の認識配列が当該制限酵素により前記cDNAのC末端アミノ酸コドンと翻訳終止コドンとの間の位置又は終止コドンの内部で前記2本鎖DNAの一方の鎖が切断されるように設計されてなることを特徴とする。 本発明の方法によれば、PCRを用いることなく翻訳終止コドンを除去することができるため、目的タンパク質をコードする遺伝子を含む組み換えベクターから他のベクター、特に、C末端融合タンパク質発現用ベクターへ容易に当該遺伝子を乗せ換えることができる。本発明のベクターにクローン化された遺伝子は、上記C末端融合タンパク質の発現を含む種々の用途に効率的に使用することができるため、数多くの遺伝子クローンからなる大規模な生物資源構築に極めて有用である。(翻訳終止コドンの除去方法) 本発明の翻訳終止コドンの除去方法は、IIS型制限酵素を用いることを特徴とする。「IIS型制限酵素(type IIS restriction endonuclease)」とは、認識部位と離れたところに切断部位を有する制限酵素であって、認識部位は非パリンドローム配列であってもよい。IIS型制限酵素が例えばPpiIの場合、以下の式に示すように、5’−GAAC(N)5CTC−3’とその相補鎖からなる認識部位とこの認識部位から離れた部位に切断部位(以下に矢印で示す)を有する。認識部位の配列及び認識部位と切断部位との間隔は、制限酵素の種類により異なる。5’・・・ ↓7(N)GAAC(N)5CTC(N)13↓・・・3’3’・・・↑12(N)CTTG(N)5GAG(N)8↑ ・・・5’ その他のIIS型制限酵素としては、具体的には、例えば、AlwI、AlwXI、Alw26I、BbsI、BbvI、BbvII、BcefI、BccI、BcgI、BciVI、BinI、BmrI、BpmI、BsaI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BspMI、BsrDI、BstF5I、EarI、Eco31I、Eco57I、Esp3I、Esp3I、FauI、FokI、GsuI、HgaI、HinGUII、HphI、Ksp632I、MboII、MmeI、Mn1I、NgoVIII、PleI、PsrI、RleAI、SapI、SfaNI、TaqII、Tth111II、BsmI、BsrI、BsmFI、BseMII(Szybalski, W. et al. Gene 100 (1991) 13-26、及びニューイングランドバイオラボ社カタログ http://www.neb.comを参照)等がある。いくつかの制限酵素の認識部位及び切断部位は以下の通りである。BbvI(GCAGC8/12)、HgaI(GACGC5/10)、BsmFI(GGGAC10/14)、SfaNI(GCATC5/9)、BspMI(ACCTGC4/8)、PsrI(7/12GAACNNNNNNTAC12/7)(カッコ内の塩基配列は認識部位を示し、数字は切断部位を表す)。 以下に図面を参照しながら本発明の方法について説明する。図1は、本発明の方法を実施するために設計された2本鎖DNA及びそれにコードされるアミノ酸配列の具体例である。 図1Aに示した配列は、本発明の方法に使用する2本鎖DNAの1つの具体例である。図中、目的タンパク質をコードする遺伝子は翻訳開始のメチオニンコドン(ATG)から始まり翻訳終止コドン(TGA、***で示す)で終わる。翻訳終止コドンの3’末端側には、下線で示したPpiIの認識配列が導入されている。このIIS型制限酵素は、認識配列が長く、認識サイトから遠い2つの部位(4つの矢印で示した)を切断する。図1Aに示した配列は、その両端にさらに2つのホーミングエンドヌクレアーゼの切断部位(I−SceI部位、及びI−PpoI部位)と、一方の末端にTOPOクローニング用の配列(5'-caccgc-3')が付加され、これらを利用して適当なベクターにクローン化することができる。このような2本鎖DNAは、当業者に公知の種々の方法で調製することができる。例えば、所望の2本鎖DNAを化学合成しても良いし、あるいは目的遺伝子の5’末端及び3’末端配列と相補的な配列を有し、さらにIIS型制限酵素の認識配列を含むプライマーDNAを用いてPCRを行うことにより容易に調製することができる。PCR産物をそのまま用いてもよいし、又は適当なベクターにクローン化してプラスミドやファージDNAを調製した後、これらを用いてもよい。 上記2本鎖DNAをPpiIで切断すると、目的タンパク質のC末端アミノ酸のコドンと翻訳終止コドンとの間の位置で、アンチセンス鎖が切断されてセンス鎖の3’末端が突出した一本鎖粘着末端が生成する。上記PCRプライマーの長さを調節して、終止コドン(TGA)の内部で切断されるように上記2本鎖DNAを設計してもよい。この場合には、後工程でリンカーDNAと連結する際に終止コドンが再生しないよう注意する。PpiIサイトが目的遺伝子の翻訳領域内に存在しているときには、その他のIIS型制限酵素、例えば、PsrI(SibEnzyme、ロシア)等を用いてもよい。PpiIやPsrIは、認識部位から離れたところに存在する切断部位を正確に切断するため本発明の方法に使用することが特に好ましい。あるいは、別のIIS型制限酵素認識配列を用いて、目的タンパク質のC末端アミノ酸のコドンと翻訳終止コドンとの間の位置若しくは終止コドンの内部で、2本鎖DNAの一方の鎖が切断されてアンチセンス鎖の5’末端が突出した一本鎖粘着末端が生成するように設計してもよい。前者、すなわちPpiIやPsrIの切断により生じた5’陥没末端の場合には、3’突出末端が削られ、後者、すなわち5’突出末端の場合には3’陥没部分に塩基が付加されることにより目的タンパク質のC末端アミノ鎖のコドンで終わる平滑末端とすることができる。 このような翻訳終止コドンを除去するためのDNA末端の平滑化反応は当業者において公知の手段を用いて行うことができる。例えば、dNTPsの存在下、T4DNAポリメラーゼの5’→3’ポリメラーゼ活性と3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を用いることができる。また、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントを用いてもよい。平滑化した末端は目的タンパク質のC末端アミノ酸のコドンが存在するため、これに直接又はリンカーDNAを介して他のタンパク質やペプチドの翻訳領域(ORF:Open Reading Frame)を連結することができる。このリンカーDNAは、目的タンパク質と他のタンパク質とのアミノ酸の読み枠をシフトさせない限り任意の長さのDNAでよいが、好ましくは数塩基対から数十塩基対である。また、当該配列部分にアミノ酸の読み枠として終止コドン(TGA、TAA、及びTAG)を含まないことが必要である。 図1Bは、上記翻訳終止コドン除去反応後の塩基配列である。プラスミドpENTER−TOPO(インビトロジェン社)にクローン化した2本鎖DNAを用いて上記終止コドンの除去反応を行い、さらに自己連結反応を行った結果の塩基配列である。目的タンパク質のC末端アミノ酸のコドンにアラニンをコードするGCAなるコドンが連結されている。図1Cは、上記図1Aに対応し、プラスミドpENTR−TOPOにクローン化された翻訳領域のアミノ酸配列である。図1Dは、上記図1Bに対応し、翻訳終止コドン除去反応後のアミノ酸配列である。図1B及びDに示されるように、終止コドンを除去した後の翻訳領域(ORF)はpENTRベクター領域に移動し、att領域と連結されているためクロナーゼを用いるLR反応により他の所望のベクターに乗せ換えることができる。(ベクター乗せ換えによるC末端融合タンパク質発現ベクターの構築) 翻訳終止コドンを除去した目的タンパク質の遺伝子は、種々の組換えDNA技術により他のタンパク質又はペプチドとの融合タンパク質として発現させることができる。上述したLR反応の他にも、例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼを用いる方法がある(非特許文献3参照)。ホーミングエンドヌクレアーゼとは、RNAスプライシングで除かれるようなイントロンの中やプロテインスプライシングで除かれるようなインテインの中にコードされていることが多い酵素である。自身のDNA切断活性を使ってゲノムDNAの中に自分の遺伝情報を組み込むことによって、動く遺伝子として自身が生き延びていくと考えられている。このようなホーミングエンドヌクレアーゼとして、単細胞緑藻から得られるI−CeuIや酵母から得られるI−SceI等が知られているが、これらの遺伝子は何れもグループIイントロンに、独立した翻訳領域として存在する。あるいは、プロテインインサート(インテイン)にコードされているものとしてPI−SecIやPI−PspI等がある。ホーミングエンドヌクレアーゼの特徴は14〜40塩基対の長い配列を認識して2本鎖DNAを切断することである。従って、ゲノムDNA中に存在する認識部位が極めて稀であるため、cDNAライブラリー等から目的遺伝子をクローン化する上で有用である。(本発明のベクター) 本発明は、さらに完全長cDNAをクローン化したプラスミド又はファージベクターを提供する。当該ベクターは、上記翻訳終止コドンを除去するためのIIS型制限酵素認識配列を備え、且つその両端にホーミングエンドヌクレアーゼの非対称認識配列を含むものである。このベクターは、クローン化したcDNAの完全な(intact)C末端領域を有する状態で発現させる場合には、両端のホーミングエンドヌクレアーゼ認識配列を用いて種々のベクターに乗せかえることができる。タンパク質のC末端領域は酵素活性やタンパク質−タンパク質相互作用等の生物学的機能にとって重要な場合が多く、例えば、受容体チロシンキナーゼのシグナル伝達機能などである(非特許文献4参照)。一方、C末端融合タンパク質を発現させる場合には、本発明の方法を用いて終止コドンを除去した後、所望のタンパク質と連結して融合タンパク質を発現させることができる。C末端アミノ酸残基を切り詰めることなく完全なC末端領域を保持したままで他のタンパク質との融合タンパク質を調製することも、当該タンパク質の生物学的機能を調べる上で極めて重要となろう。種々の目的に使用できるエントリークローンに所望の遺伝子をクローン化することのできる本発明のベクターは、数多くの遺伝子クローンからなる大規模な生物資源を構築する上で極めて有用である。(分子生物学等の基本的手技) 本発明の実施において、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNA技術等の一般的方法及び従来技術について、実施者は、特に示されなければ、当該分野の標準的な参考書籍を参照し得る。これらには、例えば、モレキュラークローニング・ア・ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual) 第3版(Sambrook & Russell、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001);Methods in Enzymologyシリーズ(Academic Press);PCR Protocols: Methods in Molecular Biology(Bartlett & Striling編、Humana Press、2003);Animal Cell Culture: A Practical Approach 第3版(Masters編、Oxford University Press、2000)等がある。また、本明細書において参照される組換えDNA技術、細胞生物学実験のための試薬及びキット類はシグマ社やアルドリッチ社、インビトロジェン社、クロンテック社、プロメガ社、ロッシュダイアグノスチクス社、ニューイングランドバイオラボ社、ファーメンタス社、SibEnzyme社、TaKaRa(タカラバイオ株式会社)等の市販業者から入手可能である。 以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 好熱性細菌サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)のDNAポリメラーゼI遺伝子(polA)の翻訳終止コドンを除去するために、以下のような制限酵素認識配列を有する2本鎖DNAを調製した。 まず、polA遺伝子特異的なプライマーとして、2つのプライマーを合成した。5’末端特異的プライマー(配列番号1):5'-GAAGGAGCCGCCACCatgagggggatgctgccc-3’及び、3’末端特異的プライマー(配列番号2):5'-CAATTGTTCACAGGAAACtcactccttggcggagag-3'(小文字は開始コドン及びpolAフレームを示し、下線はPpiI認識部位の一部を示す)。 続いて、polA遺伝子を鋳型とし、TaqDNAポリメラーゼHifi(インビトロジェン社)を用いて、95℃で1分間の変性、60℃(Tm値)で1分間のアニーリング、及び68℃で3分間の伸長反応を30サイクル繰り返し第一段階目のPCRを行った。その増幅産物をアガロースゲル電気泳動した結果を図2(右レーン)に示した。図2の左のレーンは、分子量マーカーとしてのlamda−StyI消化物(ラムダファージDNAのStyI消化産物)である。 次に、ホーミングエンドヌクレアーゼによる認識部位を導入するために2つのアダプタープライマーを合成した。5’末端I−SceIアダプタープライマー(配列番号3):5'-caccgcTAGGGATAACAGGGTAATaGAAGGAGCCGCCACCatg-3'(下線はI−SceI認識部位)及び3’末端I−PpoIアダプタープライマー(配列番号4):5'-tGCTACCTTAAGAGAGgagCAATTGTTCACAGGAAACtca-3'(下線はI−PpoI認識部位の相補配列) 続いて、第一次PCR産物を鋳型とし、TaqDNAポリメラーゼHifi(インビトロジェン社)を用いて、95℃で1分間の変性、62℃で1分間アニーリングした後、68℃、3分間の伸長反応を30サイクル繰り返し第二段階目のPCRを行った。その増幅産物をアガロースゲル電気泳動した結果を図3(右レーン)に示した。図3の左のレーンは、分子量マーカーとしてのlamda−StyI消化物である。図2及び3の結果より、目的とする2本鎖DNA断片が増幅されたことが分かる。 増幅された2本鎖DNA断片は、DNA Blunting Kit (TaKaRa)を用いて平滑末端化した(160ngのPCR産物(10μl、0.5pmol)に1μlのT4DNAポリメラーゼを加え37℃、5分間反応した)。続いて、平滑化したDNAをTOPO反応によりpENTR-TOPO(登録商標、インビトロジェン社)へクローン化した(6μl反応、5ngのDNAと1μlのTOPOベクターとを室温にて5分間反応した)。TOPO反応終了後、反応混合液を用いて大腸菌TOP10 one-competent cellを形質転換した。形質転換されたコロニーはプラスミドを選択する十分量を得ることができた。4つのコロニーを拾い、プラスミドDNA調製のために抽出した。インサートチェックのためにプラスミドDNAをI−SceIまたはI−PpoIで消化した(図4)。図4のレーン1は分子量マーカーとしてのlamda−Styl消化物である。レーン2〜5は、制限酵素処理していないプラスミドである。レーン6〜9はI−SceI消化産物である。レーン10〜13はI−PpoI消化したプラスミドである。これらの結果より、得られた4種類のプラスミドは何れもI−SceI及びI−PpoI切断部位を1ヶ所有することが分かる。プラスミドの核酸配列を決定し、所望の配列が得られたことを確認した。終止コドンの除去 目的タンパク質のC末端融合タンパクを作成する際には、ベクター乗せ換えの前に終止コドンを除去しなくてはならない。このために、上述したようにPpiIサイトを翻訳領域の3’末端側に導入した。PpiIはその認識配列から7塩基対以上離れた2ヶ所で2本鎖DNAを切断し、一本鎖粘着末端を生成する。得られたプラスミドを、PpiIで消化した結果を図5に示した。図5の左のレーンは分子量マーカーとしてのlamda−StyI消化物である。真中のレーンは制限酵素処理をしていないプラスミドであり、右のレーンはPpiIで消化したプラスミドDNAである。PpiI消化したDNAをBlunting kit(タカラバイオ社)を用い、10μlの反応溶液中で500ng(0.15pmol)のプラスミドDNAに1μlのT4DNAポリメラーゼを添加して37℃、5分間インキュベートすることにより一本鎖突出末端を平滑化した。 平滑化したプラスミドDNAを自己連結反応に供し、未反応のバックグランドを軽減するため、自己連結反応したプラスミドDNAをI−PpoIで消化した。エタノール沈殿により消化プラスミドを回収し、大腸菌を形質転換した。得られたコロニーの数は、平滑化したプラスミドDNAだけの形質転換よりも確実に多かった。複数のコロニーからプラスミドを調製し、プラスミドDNAの塩基配列を決定したところ全てのクローンが所望の配列を有していることが分かった。 ヒトp53翻訳領域をPlatinum(登録商標)PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社)を用いたPCRで増幅した。使用した特異的なプライマーは次の通りである。 5’末端特異的プライマー(配列番号5):5'-GAAGGAGCCGCCACCatgactgccatggaggagt-3'及び、3’末端特異的プライマー(配列番号6):5'-CAATTGTTCACAGGAAACtcagtctgagtcaggccc-3'(小文字はp53特異的な配列を示す)。 第2回目のPCRはホーミングエンドヌクレアーゼサイトを含むアダプタープライマーを用いておこなった。5’末端I−SceIアダプタープライマー(配列番号3):5'-caccgcTAGGGATAACAGGGTAATaGAAGGAGCCGCCACCatg-3'(5’末端のcaccの4塩基はpENTR−TOPOクローニングに必須な配列である。下線はI−SceI認識部位を示す。下線の無い大文字は第1回PCRで用いたプライマーに特異的な相補配列である。)3’末端I−PpoIアダプタープライマー(配列番号4):5'-tGCTACCTTAAGAGAGgagCAATTGTTCACAGGAAACtca-3'(下線はI−PpoI認識部位と相補的であり、下線の無い大文字は第1回PCRで用いたプライマーに特異的な相補配列である。) PCRにより得られる増幅産物を図1Aに示す。ホーミングエンドヌクレアーゼサイトは両端に位置し、PpiI認識部位は目的タンパク質のコード領域の外側でC末端に位置している(図1A)。この増幅産物をpENTR−TOPOクローニングキット(インビトロジェン社)を用いてプラスミドにクローン化した。出現コロニーからプラスミドDNAを抽出し、核酸配列を決定した。得られたプラスミドの翻訳領域に変異は認められなかった。 上記プラスミドにクローニングされたDNAによりコードされるアミノ酸配列を図1Cに示す。挿入断片の読み取り枠は、pENTRのattサイトの上流まで続いている。これは、天然型及びN末端融合タンパク質の両方の発現が可能であることを示す。また、翻訳領域由来の終止コドンと、I−PpoIサイト由来の終止コドンが存在する。 得られたプラスミドDNAを用いて終止コドンを除去した。すなわち、プラスミドDNAをIIS型制限酵素PpiI(ファーメンタス社)で消化した。図1Aに示されているように終止コドンの外側に認識サイトを有している。この酵素は、他のIIS型制限酵素より長い配列を認識でき、切断部位が固定されているので用いた。この場合、必ず一箇所は、終止コドン部位を切断することになる。次に、T4DNAポリメラーゼとdNTPsを用いてDNAの末端を平滑化し、希釈して低濃度の条件で自己連結した。これらの反応の結果得られる読み取り枠を図1Bと図1Dに示す。翻訳領域が移動してpENTRベクターのC末端att読み取り枠まで続いている。連結反応後の溶液を用いて大腸菌を形質転換した。 出現したコロニーを用いてプラスミドを抽出し塩基配列を決定した。上記で予想された読み取り枠には全く変異が認められなかった。さらに、p53タンパク質のC末端にGFPを結合した融合タンパク質を発現するため、得られたプラスミドDNAを目的のベクターpcDNA−DEST47(インビトロジェン社)と共にGATEWAYシステムの使用説明書に基づいてLR反応を行った。形質転換後、得られたコロニーよりプラスミドDNAを抽出し、NIH/3T3線維芽細胞をトランスフェクションした。形質転換細胞を蛍光顕微鏡で観察した結果を図6に示す。 NIH/3T3細胞は、10%熱処理牛胎児血清、200U/mlペニシリン、及び200mg/mlストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル最小培地(DMEM)で培養した。細胞を蒔いてから24時間後にリポフェクタミン2000試薬(インビトロジェン社)を用いてトランスフェクションした。p53−GFP融合タンパク質発現ベクターを24ウェルプレートあたり0.5μg用いて、5×104個のNIH/3T3細胞をトランスフェクションした。24時間インキュベーションした後、細胞を蛍光顕微鏡で観察した。図6の(a)はp53−GFPタンパク質の蛍光を示し、(b)は位相差顕微鏡による細胞の形態を示す。発現されたp53−GFP融合タンパクは正常なp53タンパクと同様に局在していた。つまり、発現された融合タンパクは生体内で機能していることが示された。翻訳終止コドン除去のために設計された構築物の構造を示す。(A)は、プラスミドpENTR−TOPOへクローン化されたPCR産物の塩基配列である。(B)は、翻訳終止コドン除去反応後の塩基配列である。(C)は、プラスミドpENTR−TOPOにクローン化された翻訳領域のアミノ酸配列である。(D)は、翻訳終止コドン除去反応後のアミノ酸配列である。第1回PCR産物のアガロースゲル電気泳動の結果である。第2回PCR産物のアガロースゲル電気泳動の結果である。第2回PCR産物をクローン化した大腸菌コロニーから抽出したプラスミドDNAのアガロースゲル電気泳動の結果である。第2回PCR産物をクローン化したプラスミドDNAのPpiI消化産物のアガロースゲル電気泳動の結果である。NIH/3T3細胞で発現させたp53−GFT融合タンパク質の局在化を示す顕微鏡写真である。 目的タンパク質をコードする遺伝子から翻訳終止コドンを除去する方法であって、 前記遺伝子の翻訳終止コドンの3’隣接領域に、IIS型制限酵素の認識配列を導入した2本鎖DNAを調製する工程、ここで、導入された認識配列は、当該制限酵素により前記タンパク質のC末端アミノ酸コドンと翻訳終止コドンとの間の位置又は終止コドンの内部で前記2本鎖DNAの一方の鎖が切断されるように設計されてなり、 前記2本鎖DNAを前記制限酵素で切断する工程、及び 前記切断された2本鎖DNA末端を平滑化する工程、を含むことを特徴とする方法。 前記IIS型制限酵素がPpiI又はPsrIである請求項1に記載の方法。 前記認識配列を導入した2本鎖DNAがポリメラーゼ連鎖反応により調製されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。 前記平滑化する工程が、前記制限酵素で切断された2本鎖DNA末端の一本鎖突出部分を欠失又は充填することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の方法。 目的タンパク質のC末端アミノ酸に他のタンパク質又はペプチドが結合した融合タンパク質をコードする組み換えDNAの構築方法であって、 目的タンパク質をコードする遺伝子を用意し、その翻訳終止コドンの3’隣接領域に、IIS型制限酵素の認識配列を導入した2本鎖DNAを調製する工程、ここで、導入された認識配列は、当該制限酵素により前記タンパク質のC末端アミノ酸コドンと翻訳終止コドンとの間の位置又は終止コドンの内部で前記2本鎖DNAの一方の鎖が切断されるように設計されてなり、 前記2本鎖DNAを前記制限酵素で切断する工程、 前記切断された2本鎖DNA末端の1本鎖突出部分を欠失又は充填して平滑末端にする工程、及び 前記平滑末端に直接又はリンカーDNAを介して他のタンパク質又はペプチドの翻訳領域(ORF)を連結する工程 を含むことを特徴とする方法。 前記リンカーDNAは、目的タンパク質のC末端アミノ酸コドンの後ろに連結されたときに、アミノ酸の読み枠として終止コドンを含まないことを特徴とする請求項5に記載の方法。 前記IIS型制限酵素がPpiI又はPsrIである請求項5又は6に記載の方法。 完全長cDNAをクローン化したプラスミド又はファージベクターであって、 前記完全長cDNAの翻訳終止コドンの3’隣接領域に、IIS型制限酵素の認識配列を導入した2本鎖DNAと、当該2本鎖DNAの両端にホーミングエンドヌクレアーゼの非対称認識配列とを含み、導入されたIIS型制限酵素の認識配列が当該制限酵素により前記cDNAのC末端アミノ酸コドンと翻訳終止コドンとの間の位置又は終止コドンの内部で前記2本鎖DNAの一方の鎖が切断されるように設計されてなることを特徴とするベクター。 前記IIS型制限酵素がPpiI又はPsrIである請求項8に記載のベクター。 【課題】目的遺伝子、特に、完全なC末端領域を有するタンパク質をコードする遺伝子について、PCRを行わずに翻訳終止コドンを除去することのできる新規な方法を提供する。【解決手段】目的タンパク質をコードする遺伝子の翻訳終止コドンの3’隣接領域に、IIS型制限酵素の認識配列を導入した2本鎖DNAを調製する工程、ここで、導入された認識配列は、当該制限酵素により前記タンパク質のC末端アミノ酸コドンと翻訳終止コドンとの間の位置又は終止コドンの内部で前記2本鎖DNAの一方の鎖が切断されるように設計されてなり、前記2本鎖DNAを前記制限酵素で切断する工程、及び前記切断された2本鎖DNA末端を平滑化する工程を含む。【選択図】図1配列表


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