タイトル: | 公開特許公報(A)_PMSの予防又は改善剤 |
出願番号: | 2005359909 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 36/18,A61P 15/08 |
塩本 秀己 JP 2007161643 公開特許公報(A) 20070628 2005359909 20051214 PMSの予防又は改善剤 大正製薬株式会社 000002819 佐鳥 宗一 100115406 塩本 秀己 A61K 36/18 20060101AFI20070601BHJP A61P 15/08 20060101ALI20070601BHJP JPA61K35/78 CA61P15/08 1 OL 6 4C088 4C088AB12 4C088AC04 4C088ZA81 本発明は、月経前症候群(PMS)の予防又は改善に有効な生薬に関し、医薬品、医薬部外品及び食品の分野で応用可能な発明である。 月経前症候群(premenstrual syndrome;PMS)は月経前緊張症(premenstrual tension)とも呼ばれ、日本産婦人科学会では「月経開始の3〜10日前から始まる精神的、身体的症状で、月経開始とともに減退ないし消失するもの」と定義されている。つまり、PMSは思春期から更年期までの生殖年齢の女性に見られ、月経前のおよそ2週間で基礎体温の高温相である黄体期に、ホルモンのアンバランスに伴って、日常生活に差し障りのある女性特有の不快な症状であり、種々な身体的、精神的あるいは行動的症侯を伴い、対人関係や日常生活が阻害されるため、社会進出のめざましい女性のQOLを妨げる要因の一つとして挙げられている。その原因としては排卵後に分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)の関与、女性ホルモンのアンバランス、ストレス、食生活等が考えられているが、詳細は解明されていない(非特許文献1参照)。 PMSの症状としては、社団法人・日本家族計画協会が提唱している、身体的、精神的及び社会的症状が挙げられる。すなわち、身体的症状としては、下腹部痛、腰痛、乳房の痛み、乳房緊満感、乳頭過敏、腹部膨満感、下痢、便秘、食欲異常(食べ物の嗜好の変化、食欲増進や不振)、頭痛、肩凝り、めまい、肌荒れ、にきび、むくみ、疲れやすい、疲労感、眠い、及び傾眠が挙げられ、精神的症状としてはイライラ、怒りやすい、攻撃的になる、憂鬱、無気力、落ち着きがない、不安、情緒不安定、及び集中できないことが挙げられ、社会的症状としては、いつも通り仕事が出来ない、女性であることが嫌になる、引きこもる、人づきあいが悪くなることが挙げられる。この治療方法としては、女性ホルモン異常障害を改善することを目的にホルモン剤投与、精神安定剤投与等があるが、愁訴が多岐に渡り、また、出現する症状も様々で、月経の度に訪れる本症状に対し、これら治療方法は副作用等の安全性が懸念され、患者の負担も大きいという問題がある。また、心理療法、運動療法及びストレスの解消等も挙げられるが、その効果は未だ十分とは言えず、安全かつ効果の高いPMSの予防・改善剤の開発が望まれている。 他方、五味子(ゴミシ、シサンドラエ フルクタス:Schisandrae Fructus)」とは日本薬局方に収載されているマツブサ科(Schisandraceae)チョウセンゴミシSchisandra chinensis(シザンドラ チャイネンシス)の完熟した果実を乾燥したものである。『本草綱目』には「気を益し、不足を補い、五臓を養い、目を明らかとし、筋骨を強壮とし、喘鎮、瀉痢を治す」等と記され、鎮咳、収斂、止瀉、滋養強壮を目的に使用され、さらに、鎮咳去痰薬を中心に、小青竜湯、生脈散、清暑益気湯、人参養栄湯等の漢方処方に配合されている。五味子の含有成分としてはシザンドリン、デオキシシザンドリン、シザンドール、ゴミシンA、B、C、D、E、F等のリグナン類やカミグレン、シトラール、ビサボレン等の精油成分やクエン酸、リンゴ酸、ビタミンA、C、E、タンニン等が報告されているおり、薬理作用として鎮痛作用、鎮静作用、鎮咳作用、中枢抑制作用、抗潰瘍作用、肝細胞障害予防作用等が報告されている(非特許文献2参照)。 しかしながら、五味子をPMSの予防又は改善に用いたという報告はない。松本清一監修「月経らくらく講座−もっと上手に付き合い、素敵に生きるために−」文光堂、東京、2004年、p9−58。鳥居塚和生編集「モノグラフ 生薬の薬効・薬理」医歯薬出版株式会社、東京、2003年、p131−139。 本発明の課題は、月経前に見られる様々な身体的、精神的又は社会的な不快症状に極めて有効で副作用の少ない月経前症候群(PMS)の予防又は改善剤を提供することである。 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、生薬の五味子にPMSの改善作用があることを見出した。 かかる知見に基づき完成した本発明の態様の一つは、五味子を含有することを特徴とする月経前症候群(PMS)の予防又は改善剤である。 本発明により、PMSの諸症状のうち、特に、イライラ、無気力及び不安等の精神的症状や引きこもり等の社会的症状を改善し、安全性の高い、PMSの予防又は改善剤を提供することが可能となった。 「五味子」の有効投与量は、症状等に応じて適宜に増減できるが、通常成人で1日当たり原生薬換算量として50mg〜10000mgであり、好ましくは100mg〜3000mgである。 五味子は、生薬末の他エキスを使用することができる。エキスには、生薬抽出物、濃縮エキス、乾燥エキスなど何れの形態のものも含まれる。抽出溶媒としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、酢酸エチル、アセトン、ヘキサン、またはそれらの混液などを用い、通常用いられる方法で製造することができる。 本発明の予防又は改善剤は、月経前症候群(PMS)、特に、その精神的症状であるイライラ、憂鬱、不安、情緒不安定、引きこもり及び社交性の低下等の予防又は改善に有効である。 本発明の予防又は改善剤には、五味子(生薬末又は抽出物)を配合し、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤等を添加して常法により、顆粒剤、散剤、カプセル剤、錠剤、ドライシロップ剤、液剤等の経口製剤として提供することができる。 また、必要に応じて他の生理活性成分、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛等のミネラル、ビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D、E、K、P、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸、リポ酸、ユビキノン等のビタミン類(誘導体も含む)、タウリン、アルギニン、プロリン、バリン、ロイシン、イソロイシン、テアニン等のアミノ酸類、ホルモン、栄養成分、香料等を配合することにより、嗜好性をもたせることもできる。 さらに、インヨウカク(イカリソウ)、茴香、エゾウコギ(刺五加、五加皮)、黄蓍、黄ゴン、黄精、黄連、遠志、何首烏、霍香、葛根、カノコソウ、乾姜、甘草、桔梗、枳実、羌活、枸杞子、枸杞葉、ケツジツ、桂皮、肉桂、桂枝、苦参、苦楝皮、玄参、紅花、紅参、香附子、厚朴、呉茱萸、胡麻、胡蘆巴、虎杖根、細辛、石榴、山梔子、山茱萸、山査子、鎖陽、山椒、山奈、山扁豆、山稜、酸棗仁、西洋山査子、生姜、縮砂、蛇床子、女貞子、芍薬、沙参、菖蒲根、升麻、地黄、熟地黄、沈香、川キュウ、川骨、川楝皮、蒼朮、菖蒲根、石斛、石菖根、蘇葉、蒼朮、大蒜、大棗、大豆(イソフラボンでも可)、沢瀉、竹節人参、茶葉、丁字(母丁香、公丁香)、陳皮、当帰、杜仲、党参、橙皮、人参、巴戟天、反鼻、麦門冬、白朮、ブラックコホッシュ、茯苓、覆盆子、防己、蒲公英、補骨脂、ムイラプアマ、木香、牡丹皮、レッドクローバー、ローズヒップ、益母草、益智、良姜、竜眼肉、ヨクイニン、ローヤルゼリー等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる。 以下に実施例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。 実施例1 五味子末 500 g 当帰末 500 g ビタミンB6 10 g 結晶セルロース 192 g 乳糖 513 g 軽質無水ケイ酸 90 g ヒドロキシプロピルセルロース 90 g 上記組成の粉体1895gの混合末にアルコールを適量添加後、バーチカルグラニュレータ(パウレック社製)で湿式造粒し、流動層乾燥機(フロイント社製)で乾燥した。22メッシュの篩で分級し、篩残はスピードミル(岡田精工社製)で粗砕した。これに軽質無水ケイ酸 9g、ステアリン酸マグネシウム 9gを添加して混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒を8.5mm径2段R面の杵を使い、コレクト19型打錠機(菊水製作所製)で打錠し、1錠重量200mgの錠剤を得た。 実施例2 五味子流エキス 0.2 mL(原生薬換算量 200mg) 熟地黄軟調エキス 100 mg(原生薬換算量 200mg) ヨクイニン流エキス 0.6 mL(原生薬換算量 600mg) 塩酸フルスルチアミン 5 mg ビタミンB2リン酸エステル 5 mg ビタミンB6 10 mg タウリン 500 mg クエン酸鉄アンモニウム 30 mg グルコン酸カルシウム 300 mg 砂糖 10000 mg 安息香酸ナトリウム 70 mg 上記組成を精製水に溶解させ、クエン酸を適量添加後(pH3付近)、全量を50mLとした。 試験例1 実験材料:五味子30%エタノール抽出エキス 実験動物:ICR系雄性マウスラット(4週齢、チャールズリバー社から購入) 実験方法:ソーシャルインターラクション測定試験 月経前症候群や月経前不快気分障害等に用いられる加味逍遙散の有効性を明らかとしたソーシャルインターラクション測定方法(M.Mizowaki,K.Toriizuka,T.Hanawa「Life Sciences」69巻, p2167-2177, 2001年、Anxiolytic effect of Kami-Shoyo-San(TJ-24) in mice)に準じて実施した。すなわち、4週齢のICR系雄生マウスラットを4週間群飼育し、各々異なるケージにて群飼育した2匹のマウスを観察ケージ(透明小型飼育ケージ:30×20×12cm)にて初めて遭遇させ、その際に観察されるソーシャルインターラクション行動(性器を舐める、首を舐める、胴体を舐める、尾を舐める、顔を合わせる)の累計時間を5分間測定した。 実験結果: 五味子エキス非投与群のソーシャルインターラクション累計時間は3.25±0.39秒/5分間であった。これに対して、観察1時間前に五味子エキス200mg/kgを投与すると、ソーシャルインターラクション累計時間は1.4倍に増加し、4.64±0.45秒/5分間であった(図1参照)。 この試験は、初めての環境、すなわち、異なる社会構成を有する人・集団の中におかれた人の行動を擬制し、評価する方法である。この方法により、社交性等の対人関係や不安、鬱などの精神的な症状を評価できるものと考えられている。したがって、本ソーシャルインターラクション測定試験によって見出された素材は、月経前に高い頻度で観察されるイライラ、憂鬱、不安、情緒不安定、引きこもり、社交性の低下等のPMSに依拠した精神的症状を軽減する作用があると考えられるため、五味子はPMSの予防又は改善に有用であると考えられる。 本発明により、副作用が少なく、長期間の経口投与に適した月経前症候群の予防及び改善用の医薬品、医薬部外品及び食品の開発が期待される。五味子のソーシャルインターラクションに対する作用を示すグラフである。 五味子を含有することを特徴とする月経前症候群(PMS)の予防又は改善剤。 【課題】月経前に見られる様々な身体的、精神的又は社会的な不快症状に極めて有効で副作用の少ない月経前症候群(PMS)の予防又は改善剤を提供する。【解決手段】五味子を含有することを特徴とする月経前症候群(PMS)の予防又は改善剤。【選択図】なし