タイトル: | 特許公報(B2)_テトラヒドロピラン化合物の製造方法及び該製造方法で製造されるテトラヒドロピラン化合物 |
出願番号: | 2005350448 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07D 309/04,B01J 23/44,C07B 61/00 |
山上 功 安田 浩 JP 4979230 特許公報(B2) 20120427 2005350448 20051205 テトラヒドロピラン化合物の製造方法及び該製造方法で製造されるテトラヒドロピラン化合物 昭和電工株式会社 000002004 大家 邦久 100081086 林 篤史 100121050 山上 功 安田 浩 JP 2004352914 20041206 20120718 C07D 309/04 20060101AFI20120628BHJP B01J 23/44 20060101ALI20120628BHJP C07B 61/00 20060101ALN20120628BHJP JPC07D309/04B01J23/44 XC07B61/00 300 C07D 309/ CA/REGISTRY(STN) 特開昭62−093285(JP,A) 特開2001−064219(JP,A) 特開平02−167274(JP,A) 特開平01−290640(JP,A) ソ連国特許発明第00717052(SU,A) LONGLEY,R. I. Jr.,ET AL. ,"Some Reactions of 2-Alkoxy-3,4-dihydro-2H-pyrans",JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,1952年,VOL.74,NO.8,PP.2012-2015 13 2006188492 20060720 19 20080918 井上 典之 本発明は、テトラヒドロピラン化合物の製造方法及び該製造方法で製造されるテトラヒドロピラン化合物に関する。さらに詳しくは、3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物やテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物と水素を反応させることによるテトラヒドロピラン化合物の製造方法に関する。 本発明により製造されたテトラヒドロピラン化合物は、溶剤、特に、グリニヤール反応溶剤や、ポリマー用溶剤や、有機中間体として有用である。 従来、テトラヒドロピラン化合物を合成する方法としては、3,4−ジヒドロ−2−ブトキシ−2H−ピランをニッケル触媒を用いて水素化分解することにより、テトラヒドロピランを合成する方法が知られている(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー 第74巻,2012頁(1952年):非特許文献1)。しかし、この方法では、テトラヒドロピラン化合物の選択率が低く、5−ブトキシペンタノールが多く生成する欠点を有する。 また、3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物やテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物を、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とし、パラジウム活性炭を触媒として水素化分解することにより、テトラヒドロピラン化合物を合成する方法が開示されている(特開昭62−93285号公報:特許文献1)。しかし、この方法では、反応条件が温度150℃、反応時間20時間、圧力200バール(約20MPa)というもので、工業的に実施するには苛酷な条件であり、温和な反応条件が求められている。 また、3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピランを水および触媒の存在下に水素化することによる1,5−ペンタンジオールの合成法において、副生物としてテトラヒドロピラン(THP)が生成するとの記載がある(特開2001−64219号公報:特許文献2)。ただし、この方法においては、1,5−ペンタンジオールが優先的に生成するので、テトラヒドロピラン化合物の製造方法としては好ましくない。 テトラヒドロピラン化合物の製造方法としては、他に、対応する1,5−ペンタンジオールの環化脱水反応(特開平2−167274号公報:特許文献3)や、対応するラクトンの還元反応(特開平1−290640号公報:特許文献4)などの方法により合成できるとも報告されている。しかしこれらにもテトラヒドロピラン化合物の収率が低かったり、選択率が低いという問題点があり、より収率や選択率の高い製造方法が求められている。ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー 第74巻,2012頁(1952年)特開昭62−93285号公報特開2001−64219号公報特開平2−167274号公報特開平1−290640号公報 本発明は、従来公知のテトラヒドロピラン化合物の製造方法における課題を解決し、より温和な条件及び簡便な方法での製造を可能にするテトラヒドロピラン化合物の製造方法を提供することを目的の一つとする。 さらに、原料として、安価かつ容易に入手できる化合物を使用することが可能なテトラヒドロピラン化合物の製造方法を提供することを目的の一つとする。 本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意努力した結果、3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物あるいはテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物と水素とを触媒の存在下に反応させてテトラヒドロピラン化合物を製造する方法において、当該反応を酸性条件下で行うことにより、比較的低温且つ低圧という穏やかな条件でテトラヒドロピラン化合物を製造できることを見出し本発明を完成させた。 すなわち、本発明は以下のテトラヒドロピラン化合物の製造方法およびテトラヒドロピラン化合物に関するものである。1.式(1)(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族基を有する炭化水素基を表し、R1〜R7は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族基、アルコキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表す。)で示される3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物と水素とを触媒の存在下、酸性条件下で反応させることを特徴とする、式(2)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)で示されるテトラヒドロピラン化合物の製造方法。2.式(3)(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族基を有する炭化水素基を表し、R8〜R14は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族基、アルコキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表す。)で示されるテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物と水素とを触媒の存在下、酸性条件下で反応させることを特徴とする、式(4)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)で示されるテトラヒドロピラン化合物の製造方法。3.3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物が、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−n−プロポキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−イソプロポキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−イソブトキシ−2H−ピランおよび3,4−ジヒドロ−2−n−ブトキシ−2H−ピランからなる群から選ばれる前記1に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。4.テトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物が、テトラヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−n−プロポキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−イソプロポキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−イソブトキシ−2H−ピランおよびテトラヒドロ−2−n−ブトキシ−2H−ピランからなる群から選ばれる前記2に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。5.水素が、電解系水素および石油系水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記1または2に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。6.酸性条件が、pH−1〜6の範囲である前記1または2に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。7.硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、p−トルエンスルホン酸、ヘテロポリ酸、燐酸二水素ナトリウムおよび酸性イオン交換樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を添加して酸性条件とする前記1、2または6に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。8.1kPa〜10MPaの範囲の圧力条件下で反応を行う前記1または2に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。9.周期律表の第8〜第10族の元素を含有する触媒を使用する前記1または2に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。10.周期律表の第8〜第10族の元素が、ニッケル、ルテニウム、パラジウムおよび白金からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記9に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。11.触媒が、担持型触媒である前記1、2、9または10に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。12.下記の第1工程〜第3工程を含むことを特徴とする前記1に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法:第1工程:式(1)(式中の記号は前記1と同じ意味を表す。)で示される3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物と水素とを触媒の存在下に反応させて、式(5)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)で示されるテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物を含む反応混合物を得る工程、第2工程:反応混合物に酸を加える工程、第3工程:酸性の反応混合物と水素とを触媒の存在下に反応させて式(2)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)で示されるテトラヒドロピラン化合物を含む反応混合物を製造する工程。13.式(6)(式中の記号は前記12と同じ意味を表す。)で示される化合物と、式(7)(式中の記号は前記12と同じ意味を表す。)で示される化合物を反応させることにより得られる3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物を使用する前記12に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。14.式(6)で示される化合物と式(7)で示される化合物を加圧下で反応させることを特徴とする前記13に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。15.前記1〜11に記載の製造方法によって製造されたテトラヒドロピラン化合物。16.前記12〜14に記載の製造方法によって製造されたテトラヒドロピラン化合物。 本発明の製造方法は、3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物と水素を触媒の存在下に反応させるにあたり、反応を酸性条件下で行うことにより、テトラヒドロピラン化合物を、温和な条件で収率良く製造することができるので有用である。 以下に本発明の具体的内容について詳細に説明する。 本発明(I)は、式(1)で示される3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物と水素とを触媒の存在下に反応させて式(2)で示されるテトラヒドロピラン化合物を製造する方法において、反応を酸性条件下で行うことを特徴とするテトラヒドロピラン化合物の製造方法である。(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族基を有する炭化水素基を表し、R1〜R7は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族基、アルコキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表す。)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。) 本発明(I)で使用される3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピランは、アクロレインとアルキルビニルエーテルの反応により製造することができる(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー 第72巻,3079頁(1950年))、ジャーナル・オブ・モレキュラー・キャタリシス 第72巻,209頁(1992年))。 反応を加圧下でおこなうと、式(7)で示される化合物の重合などの副反応が抑制され、3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物の取得率が向上する。加圧は窒素などの不活性気体で行われ、0.2MPa以上が好適である。 本発明(I)で使用される3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物は、式(1)で示される構造であれば特に制限なく使用することができる。ここで、収率・選択率の観点からは、式中のR1〜R7は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族基であることがより好ましく、置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基であることがさらに好ましい。アルコキシ基やアミノ基が3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物中に存在すると、反応は進行するものの副生物が多くなる。 また、ここで式中のRは、置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であることがさらに好ましい。3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物からテトラヒドロピラン化合物を製造する際には、式中のRは、ROHの構造で示されるアルコールとしてテトラヒドロピラン化合物と共に生成する。したがって、Rはその分子量が小さいほうがテトラヒドロピラン化合物の生産性が高くなる。また、テトラヒドロピラン化合物と共沸がないアルコールを用いると、テトラヒドロピラン化合物の取得は容易になる。テトラヒドロピラン化合物がテトラヒドロピラン(THP)の場合には、アルコールとして、ノルマルブタノール、イソブタノールなどのブタノール類が好適である。 本発明(I)で使用される3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物の具体例としては、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−n−プロポキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−イソプロポキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−イソブトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−n−ブトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−6−メチル−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−5−メチル−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−4−メチル−2H−ピランおよび3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−4−フェニル−2H−ピランなどが挙げられる。 本発明(I)で使用される水素は特に制限はなく、電解系水素や石油系水素のいずれも使用することができる。ここで電解系水素とは、水の電気分解により製造される水素であり、石油系水素とは、ナフサのクラッキングにより得られる水素を示す。また、水素を、窒素やアルゴンなどの不活性ガスで希釈して用いてもよい。 本発明(I)では、反応を酸性の条件下で行うことが必要である。一般的には、酸を反応系中に存在させることにより酸性条件とする。酸性条件としては、反応混合物のpHが−1〜6の範囲であればよく、pHが0〜4の範囲が好ましく、pHが1〜3の範囲がさらに好ましい。pHが−1より低いと、原料や中間体の重合が進行して収率が低くなり、pHが6を超える中性付近では、酸を添加している効果はなく収率が低い。 なお、pHは、市販のpH測定器(例えば堀場製作所製 pH METER D−12)で測定することができる。また、より簡便には、市販のpH試験紙(例えば、Whatman製 pH試験紙 1.0〜14.0)を用いてもよい。 酸としては、プロトン供与体として定義されるブレンステッド酸や、電子対受容体として定義されるルイス酸(化学大辞典(共立出版社)より引用)であれば特に制限はなく使用できる。具体的には、例えば、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、p−トルエンスルホン酸、ヘテロポリ酸および燐酸二水素ナトリウムなどを好適に使用することができる。 また、酸型のイオン交換樹脂や、酸性白土などの固体酸も好適に使用することができる。 本発明(I)で使用される酸と原料のモル比には、特に限定はないが、通常、原料に対し酸の当量を0.0001〜10モル%にすることが好ましく、0.001〜5モル%がさらに好ましく、0.01〜1モル%とするのが最も好適である。 本発明(I)で使用される触媒は、水素化する能力があれば特に限定しないが、好ましい触媒としては、周期律表の第8〜第10族の元素を含有する触媒が挙げられる。 周期律表の第8〜第10族の元素の具体例としては、コバルト、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、パラジウムおよび白金が挙げられる。これらの中でもニッケル、ルテニウム、パラジウムおよび白金が好ましい。 これらの元素は、担体に担持して用いると、触媒の表面積が大きくなるため、さらに好適である。担体としては、活性炭、シリカ、アルミナ、チタニア、ゼオライトなどが挙げられる。 上記の触媒の具体的な例としては、パラジウム担持活性炭、白金担持活性炭、パラジウム担持シリカ、パラジウム担持アルミナ、パラジウム担持チタニアなどが挙げられる。 上記触媒に担持する元素の量としては、触媒全体に対して0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が最も好適である。 担持量が0.01質量%以下では反応性にもよるが担持触媒の使用量が多くなることで取り扱いが困難であったり、触媒に吸着される生成物の量が多くなる等の点で好ましくない。また、20質量%を超えて担持しても、表面積が相対的に大きくなるわけではなく収率の向上が見込めない点などから好ましくない。 本発明(I)で使用される触媒の調整方法は特に限定はないが、具体的には例えば、触媒成分元素の硝酸塩や塩化物などを、水や有機溶媒などに溶解あるいは懸濁させた溶液を触媒担体に含浸させる。その後、ヒドラジンなどを用いた湿式還元や水素などを用いた乾式還元などにより、元素を0価の状態に還元して触媒を調製する。この場合、担持されているすべての元素が0価の状態である必要はない。詳しくは「元素別触媒便覧 地人書館刊、昭和42年2月25日発行」に記載がある。 本発明(I)における触媒と原料のモル比としては、バッチ式反応で行う場合は、原料に対して触媒を0.0001モル%〜1モル%使用することが好ましく、0.001モル%〜0.5モル%使用することがさらに好ましく、0.01モル%〜0.1モル%使用することが最も好ましい。触媒が0.0001モル%未満では反応性が悪くなる。一方、1モル%を超えて使用しても反応速度が向上するわけではない。 本発明(I)における反応温度は、特に限定はないが、20℃〜160℃が好ましく、70℃〜130℃がさらに好適である。20℃未満では反応の進行が極端に遅く、160℃を超える温度条件は工業的な実施が難しい。 本発明(I)における反応圧力は、特に限定はないが、通常、1kPa〜10MPaが好ましく、0.2MPa〜2.0MPaがさらに好ましい。1kPa未満では反応速度が遅くなるので不利であり、10MPaを超えると装置が大掛かりとなるので不利である。 本発明(I)においては、溶媒を使用することは特に必要としない。反応原料が固体である場合や、酸性の化合物を溶解させるため、あるいは、急激な発熱による反応温度の上昇を緩和するために溶媒を使用してもよい。溶媒としては、反応する温度において液体であり、なおかつ、水素化に耐性のある溶媒であれば特に限定はない。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソブタノール、ノルマルブタノール、エチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、水、トルエン、ヘキサンおよび酢酸エチルなどが挙げられる。 本発明(I)によって製造されたテトラヒドロピラン化合物は、一般的な方法により単離することができる。具体的方法としては、蒸留、再結晶及びスプレードライなどが挙げられる。 本発明(II)は、式(3)で示されるテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物と水素とを触媒の存在下に反応させて式(4)で示されるテトラヒドロピラン化合物を製造する方法において、反応を酸性条件下で行うことを特徴とするテトラヒドロピラン化合物の製造方法である。 (式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族基を有する炭化水素基を表し、R8〜R14は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族基、アルコキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表す。)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。) 本発明(II)で使用されるテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物は、従来公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピランを水素化することにより得られる(特開昭62−93285号公報)。 本発明(II)で使用されるテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物は、式(3)で示される構造であれば特に制限なく使用することができる。ここで、収率・選択率の観点からは、式中のR8〜R14は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族基であることがより好ましく、置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基であることがさらに好ましい。アルコキシ基やアミノ基がテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物中に存在すると、反応は進行するものの副生物が多くなる。 また、ここで式中のRは、置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であることがさらに好ましい。テトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物からテトラヒドロピラン化合物を製造する際には、式中のRは、ROHの構造で示されるアルコールとしてテトラヒドロピラン化合物と共に生成する。したがって、Rはその分子量が小さいほうがテトラヒドロピラン化合物の生産性が高くなる。 本発明(II)で使用されるテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物の具体例としては、テトラヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−n−プロポキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−イソプロポキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−イソブトキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−n−ブトキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−メトキシ−6−メチル−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−メトキシ−5−メチル−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−メトキシ−4−メチル−2H−ピラン、および、テトラヒドロ−2−メトキシ−4−フェニル−2H−ピランなどが挙げられる。 本発明(II)で使用される水素は、本発明(I)と同様のものを使用することができる。 本発明(II)では、反応を酸性の条件下で行うことが必要であり、本発明(I)と同様に酸を反応系中に存在させることにより酸性条件とする。酸性条件や酸としての具体例も本発明(I)と同様である。 本発明(II)で使用される酸と原料のモル比については、本発明(I)と同様である。 本発明(II)で使用される触媒は、本発明(I)と同様に使用することができる。 本発明(II)で使用される触媒の調整方法は、本発明(I)と同様の手法により調整される。 本発明(II)における触媒と原料のモル比は、本発明(I)で示した範囲で行うことが好適である。 本発明(II)における反応温度、反応圧力は、本発明(I)で示した範囲で行うことが好適である。 本発明(II)においては、溶媒を使用することは特に必要としないが。本発明(I)で示した溶媒を使用してもよい。 本発明(II)によって製造されたテトラヒドロピラン化合物は、本発明(I)と同様に蒸留、再結晶及びスプレードライなどの方法により単離することができる。 本発明(III)は、以下に示す工程を含むことを特徴とするテトラヒドロピラン化合物の製造方法である。 第1工程:式(1)で示される3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物と水素とを触媒の存在下に反応させて、式(5)で示されるテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物を含む反応混合物を得る工程 第2工程:反応混合物に酸を加える工程 第3工程:酸性の反応混合物と水素とを触媒の存在下に反応させて式(2)で示されるテトラヒドロピラン化合物を含む反応混合物を製造する工程 (式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族基を有する炭化水素基を表し、R1〜R7は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族基、アルコキシ基、アミノ基または置換アミノ基を表す。)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。) ここで、式(1)で示される化合物は、式(6)で示される化合物と、式(7)で示される化合物を、例えば、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー 第72巻,3079頁(1950年)に記載された方法で反応させることにより製造された3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物であってもよい。 式(6)で示される化合物と式(7)で示される化合物を加圧下で反応させると、式(6)で示される化合物の重合などの副反応が抑制される。(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。) 本発明(IV)は、本発明(I)〜本発明(III)のテトラヒドロピラン化合物の製造方法によって製造されたテトラヒドロピラン化合物である。 以下に本発明について代表的な例を示し具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。 なお、実施例における各成分の分析はガスクロマトグラフ装置(アジレント製 6890N)を用い、分析カラムとしてJ&W製DB−1カラム(長さ30m、直径0.32mm、膜厚1μm)を用いた。実施例1: 容量100mlのステンレス製ミクロオートクレーブに、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(DHMP)(東京化成試薬)5.71gと、5質量%パラジウム/活性炭粉末(Pd/C)(エヌ・イー・ケムキャット製K−Type)0.053gと硫酸水素ナトリウム・水和物0.069gを入れ混合した。混合物のpHを、Whatman製pH試験紙で測定したところ、pHは1であった。反応器内を水素で置換し、水素を0.8MPa仕込んだ。この混合物を130℃で4時間反応させた。反応中は0.8MPaを維持するよう水素を追加した。 反応後の反応混合物を分析した結果、テトラヒドロピラン(THP)の収率は50%であった。また、副生物として、収率20%のテトラヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(THMP)及び原料に対して収率55%のメタノールが生成していた。実施例2: 容量100mlのステンレス製ミクロオートクレーブに、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(DHMP)23.17gと、5質量%パラジウム/活性炭粉末(Pd/C)0.42gを入れ、反応器内を水素で置換し、水素を0.8MPa仕込んだ。これを室温で撹拌し、反応中は圧力が0.8MPaとなるように、連続的に水素ガスを反応器内に導入した。この時、反応器内に導入した水素ガスは4737mlであった(第1工程)。1時間半後、反応混合物中には、原料のDHMPは検出されず、テトラヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(THMP)が96%の収率で生成していた。この反応混合物に、硫酸水素ナトリウム・水和物1.10gを入れpHを測定すると、反応混合物のpHは1であった(第2工程)。第1工程と同様に水素で0.8MPaに加圧し、連続的に水素を導入しながら、70℃で2時間、次いで100℃で2時間、さらに130℃で1時間30分反応させた。この時、反応器内に導入した水素ガスは、3989mlであった(第3工程)。反応後の反応混合物を分析した結果、テトラヒドロピラン(THP)の収率は82%であった。また、THMPが7%の収率で生成し、メタノールが原料に対して80%の収率で生成していた。実施例3: 3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(DHMP)23.79g、5質量%パラジウム/活性炭粉末(Pd/C)0.21gを使用し、硫酸水素ナトリウム・水和物の代わりにp−トルエンスルホン酸一水和物を0.38g使用した以外は実施例2と同様の操作を行った。その結果、第一工程で導入した水素ガスは4872mlであり、第1工程のテトラヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(THMP)の収率は97%であり、第2工程の反応混合物のpHは1であった。また、第3工程で導入した水素ガスは3418mlであった。得られたテトラヒドロピラン(THP)の収率は70%であり、副生したTHMPの収率は20%であり、メタノールの収率は67%であった。実施例4: 3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(DHMP)の代わりに3,4−ジヒドロ−2−ブトキシ−2H−ピラン(DHBP)を23.46g使用した以外は実施例2と同様の操作により還元反応を行った。その結果、テトラヒドロピラン(THP)の収率は95%であった。また、テトラヒドロ−2−ブトキシ−2H−ピラン(THBP)は検出されず、ブタノールが原料に対して96%の収率で生成していた。実施例5: 3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(DHMP)の代わりに3,4−ジヒドロ−2−ブトキシ−4−メチル−2H−ピラン(DHBMeP)を33.66g使用した以外は実施例2と同様の操作により還元反応を行った。その結果、テトラヒドロ−4−メチル−2H−ピラン(THMeP)の収率は93%であった。また、副生物としてテトラヒドロ−2−ブトキシ−4−メチル−2H−ピラン(THBMeP)が1%の収率で生成し、ブタノールが原料に対して90%の収率で生成していた。実施例6: 容量100mlのステンレス製ミクロオートクレーブに、テトラヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(THMP)23.25gと、5質量%パラジウム/活性炭粉末(Pd/C)0.21gと硫酸水素ナトリウム・水和物1.10gを入れ混合した。混合物のpHは1であった。反応器内を水素で置換し、水素を0.8MPa仕込んだ。連続的に水素を導入しながら、70℃で2時間、次いで100℃で2時間、さらに130℃で1時間30分反応させた。反応中は圧力が0.8MPaとなるように、連続的に水素ガスを反応器内に導入した。反応後、導入した水素ガスは、3989mlであった。反応後の反応混合物の成分を測定した結果、テトラヒドロピラン(THP)の収率は76%であった。また、未反応の原料としてTHMPが仕込量の10%検出され、メタノールが原料に対して78%の収率で生成していた。実施例7: テトラヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(THMP)の代わりにテトラヒドロ−2−ブトキシ−2H−ピラン(THBP)を32.30g使用した以外は実施例6と同様の操作により還元反応を行った。反応後の反応混合物を分析した結果、テトラヒドロピラン(THP)の収率は94%であった。また、THBPは検出されず、ブタノールが原料に対して92%の収率で生成していた。実施例8: 3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(DHMP)を23.22g使用し、反応圧力を2.0MPaとした以外は、実施例2と同様の操作により還元反応を行った。反応後の反応混合物を分析した結果、テトラヒドロピラン(THP)の収率は94%であった。また、テトラヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(THMP)は検出されず、メタノールが原料に対して92%の収率で生成していた。実施例9: 容量100mlのステンレス製ミクロオートクレーブに、テトラヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(THMP)5.81gと、5質量%パラジウム/活性炭粉末(Pd/C)0.053gとイオン交換樹脂(ダイヤイオン製PK−216 H型変換品)0.092gを入れ混合した。反応混合物のpHは4であった。反応器内を水素で置換し、水素を0.8MPa仕込んだ。この反応混合物を100℃で4時間反応させた。反応中、圧力が0.8MPを維持するよう水素を補充した。反応後の反応混合物を分析した結果、テトラヒドロピラン(THP)の収率は70%であった。また、未反応の原料としてTHMPが仕込量の15%検出され、メタノールが原料に対して71%の収率で生成していた。比較例1: 容量100mlのステンレス製ミクロオートクレーブに、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(DHMP)23.42gと、5質量%パラジウム/活性炭粉末(Pd/C)0.42gを入れ、反応器内を水素で置換し、水素を0.8MPa仕込んだ後、室温で1時間半撹拌し反応した。反応中は圧力が0.8MPaを維持するように、連続的に水素ガスを反応器内に導入した。水素を4793ml吸収したところで、水素吸収が停止した。さらに、温度を上げて130℃で1時間、次いで160℃で4時間反応させた。加熱後に導入した水素ガスは388mlであった。反応後の反応混合物を分析した結果、テトラヒドロピラン(THP)の収率は18%であった。他の生成物として、テトラヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン(THMP)が61%の収率で生成し、3,4−ジヒドロ−2H−ピランが5%の収率で生成していた。また、メタノールが原料に対して25%の収率で生成していた。実施例10: 容量100mlのステンレス製ミクロオートクレーブに、メチルビニルエーテル(MVE)20.9g、アクロレイン(ACR)16.8g、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.2gを入れ、反応器内を窒素で置換した。窒素で3MPaに加圧し、135℃で12時間反応させた。3,4−ジヒドロ−2−イソブトキシ−2H−ピラン(DHIBP)の収率は92%(ACR基準)であった。比較例2: 容量100mlのステンレス製ミクロオートクレーブに、メチルビニルエーテル(MVE)20.9g、アクロレイン(ACR)16.8g、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.2gを入れ、反応器内を窒素水素で置換し、135℃で12時間反応させた。3,4−ジヒドロ−2−イソブトキシ−2H−ピラン(DHIBP)の収率は77%(ACR基準)であった。反応液中に固体が析出した他、ミクロオートクレーブの壁面、上部に固体が付着した。実施例11: 容量50Lのステンレス製オートクレーブに、イソブチルビニルエーテル(IBVE)16.22kg、アクロレイン(ACR)6.97kg、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.08kgを入れ、反応器内を窒素で置換した。窒素で3MPaに加圧し、135℃で16時間反応させた。3,4−ジヒドロ−2−イソブトキシ−2H−ピラン(DHIBP)の収率は94%(ACR基準)であった。反応液を蒸留し、DHIBPを17.1kg(20kPa/120℃)取得した。実施例12: 容量50Lのステンレス製オートクレーブに、ブチルビニルエーテル(BVE)16.22kg、アクロレイン(ACR)6.97kg、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.08kgを入れ、反応器内を窒素で置換した。窒素で3MPaに加圧し、135℃で14時間反応させた。3,4−ジヒドロ−2−ブトキシ−2H−ピラン(DHBP)の収率は96%(ACR基準)であった。反応液を蒸留し、DHBPを17.7kg(20kPa/140℃)取得した。実施例13:大量合成 容量100Lのステンレス製オートクレーブに、3,4−ジヒドロ−2−イソブトキシ−2H−ピラン(DHIBP)46.9kgと、5質量%パラジウム/活性炭粉末(Pd/C)0.64kgを入れ、反応器内を水素で置換し、水素を0.8MPa仕込んだ後、室温で2時間半撹拌し反応させた。反応中は圧力が0.8MPaを維持するように、連続的に水素ガスを反応器内に導入した。2時間後、反応混合物中には、原料のDHIBPは検出されず、テトラヒドロ−2−イソブトキシ−2H−ピラン(THIBP)が定量的に生成していた。この反応混合物に、硫酸水素ナトリウム・水和物0.42kgを入れ水素で0.8MPaに加圧し、連続的に水素を導入しながら、80℃で12時間、次いで水素圧を1.2MPaに加圧し4時間反応させた。反応後の反応混合物を分析した結果、テトラヒドロピラン(THP)の収率は92%であった。また、イソブタノールが原料に対して93%の収率で生成していた。実施例14:THPの単離 実施例13の反応溶液をろ過し、蒸留缶に導入し、常圧で蒸留した。 精留条件は充填物:スルザーEX、理論段数:30、還流比:20で、フラッティングの起こらない範囲で炊き上げた。結果を表1に示す。実施例15:大量合成 容量100Lのステンレス製オートクレーブに、3,4−ジヒドロ−2−ブトキシ−2H−ピラン(DHBP)46.9kgと、5質量%パラジウム/活性炭粉末(Pd/C)0.64kgを入れ、反応器内を水素で置換し、水素を0.8MPa仕込んだ後、室温で2時間半撹拌し反応させた。反応中は圧力が0.8MPaを維持するように、連続的に水素ガスを反応器内に導入した。2時間後、反応混合物中には、原料のDHBPは検出されず、テトラヒドロ−2−ブトキシ−2H−ピラン(THBP)が定量的に生成していた。この反応混合物に、硫酸水素ナトリウム・水和物0.42kgを入れ水素で0.8MPaに加圧し、連続的に水素を導入しながら、80℃で10時間、次いで水素圧を1.5MPaに加圧し2時間反応させた。反応後の反応混合物を分析した結果、テトラヒドロピラン(THP)の収率は94%であった。また、ブタノールが原料に対して95%の収率で生成していた。 実施例14と同様に反応液を蒸留し、THPを得た。結果を表2に示す。 式(1)(式中、Rは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、R1、R2、R5、R6およびR7は水素原子を表わし、R3およびR4は、共に水素原子を表わすか、一方が水素原子、他方がメチル基を表す。)で示される3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物と水素とを触媒の存在下、酸を反応系中に存在させることにより、反応混合物のpHが−1〜6の範囲となる条件下で反応させることを特徴とする、式(2)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)で示されるテトラヒドロピラン化合物の製造方法。 式(3)(式中、Rは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、R8〜R14は水素原子を表す。)で示されるテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物と水素とを触媒の存在下、酸を反応系中に存在させることにより、反応混合物のpHが−1〜6の範囲となる条件下で反応させることを特徴とする、式(4)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)で示されるテトラヒドロピラン化合物の製造方法。 3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物が、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−n−プロポキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−イソプロポキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−イソブトキシ−2H−ピランおよび3,4−ジヒドロ−2−n−ブトキシ−2H−ピランからなる群から選ばれる請求項1に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。 テトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物が、テトラヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−n−プロポキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−イソプロポキシ−2H−ピラン、テトラヒドロ−2−イソブトキシ−2H−ピランおよびテトラヒドロ−2−n−ブトキシ−2H−ピランからなる群から選ばれる請求項2に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。 水素が、電解系水素および石油系水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。 硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、p−トルエンスルホン酸、ヘテロポリ酸、燐酸二水素ナトリウムおよび酸性イオン交換樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を添加して反応混合物のpHが−1〜6の範囲となる条件とする請求項1または2に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。 1kPa〜10MPaの範囲の圧力条件下で反応を行う請求項1または2に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。 周期律表の第8〜第10族の元素を含有する触媒を使用する請求項1または2に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。 周期律表の第8〜第10族の元素が、ニッケル、ルテニウム、パラジウムおよび白金からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。 触媒が、担持型触媒である請求項1、2、8または9に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。 下記の第1工程〜第3工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法:第1工程:式(1)(式中の記号は請求項1と同じ意味を表す。)で示される3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物と水素とを触媒の存在下に反応させて、式(5)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)で示されるテトラヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物を含む反応混合物を得る工程、第2工程:反応混合物に酸を加える工程、第3工程:酸性の反応混合物と水素とを触媒の存在下に反応させて式(2)(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)で示されるテトラヒドロピラン化合物を含む反応混合物を製造する工程。 式(6)(式中の記号は請求項11と同じ意味を表す。)で示される化合物と、式(7)(式中の記号は請求項11と同じ意味を表す。)で示される化合物を反応させることにより得られる3,4−ジヒドロ−2−アルコキシ−2H−ピラン化合物を使用する請求項11に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。 式(6)で示される化合物と式(7)で示される化合物を加圧下で反応させることを特徴とする請求項12に記載のテトラヒドロピラン化合物の製造方法。