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タイトル:公開特許公報(A)_車両の路面摩擦係数推定装置
出願番号:2005330511
年次:2007
IPC分類:B60R 16/02,G01N 19/02


特許情報キャッシュ

塚崎 裕一郎 JP 2007137138 公開特許公報(A) 20070607 2005330511 20051115 車両の路面摩擦係数推定装置 富士重工業株式会社 000005348 伊藤 進 100076233 塚崎 裕一郎 B60R 16/02 20060101AFI20070511BHJP G01N 19/02 20060101ALI20070511BHJP JPB60R16/02 661BG01N19/02 B 5 11 OL 16 本発明は、直進走行においても精度良く路面摩擦係数を推定する車両の路面摩擦係数推定装置に関する。 近年、車両においてはトラクション制御,制動力制御,あるいはトルク配分制御等の様々な制御技術が提案され、実用化されている。これらの技術では、必要な制御パラメータの演算、或いは、補正に路面摩擦係数を用いるものも多く、その制御を確実に実行するためには、精度良く路面摩擦係数を推定する必要がある。 このような路面摩擦係数を推定する技術としては、路面摩擦係数に応じてタイヤのすべり角に対するセルフアライニングトルクの大きさが変わることに注目して、例えば特開平11−287749号公報では、ハンドル角と操舵トルクから路面摩擦係数を推定するものが開示されている。また、特開平6−258196号公報では、車輪振動の周波数分析を行うことにより、通常走行時の路面摩擦係数を可能とする技術が開示されている。特開平11−287749号公報特開平6−258196号公報 しかしながら、上述の特許文献1に開示される路面摩擦係数推定装置の技術では、ハンドル角と操舵トルクから路面摩擦係数を推定するため、車両が直進状態の場合には路面摩擦係数の推定が行えないという問題がある。また、上述の特許文献2に開示される路面摩擦係数推定装置の技術では、周波数分析を行うためには、ある一定時間、車輪振動のデータを取得し続ける必要があり、路面摩擦係数の推定に遅れが生じ、この路面摩擦係数推定値では、レスポンスの良い制御ができないという問題がある。 本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、直進走行状態であっても迅速に精度の良い路面摩擦係数の推定を行うことができる車両の路面摩擦係数推定装置を提供することを目的としている。 本発明は、左右輪のトー角を可変するトー角可変手段と、上記左右輪に作用する横力とセルフアライニングトルクのどちらかを検出する検出手段と、車両が直進状態か否かを判定する直進判定手段と、車両が直進状態の際に上記トー角可変手段に対して上記左右前輪のトー角を予め設定する量だけ可変する信号を出力し、該左右前輪のトー角と上記検出手段で検出した上記横力とセルフアライニングトルクのどちらかに基づいて路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定手段とを備えたことを特徴としている。 本発明による車両の路面摩擦係数推定装置によれば、直進走行状態であっても迅速に精度の良い路面摩擦係数の推定を行うことが可能となる。 以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。 図1〜図11は本発明の実施の一形態を示し、図1は路面摩擦係数推定装置を搭載する車両の概略構成図、図2は路面摩擦係数推定装置の機能ブロック図、図3は第1の路面μ推定処理部の機能ブロック図、図4は車体すべり角演算部の構成を示す機能ブロック図、図5は車両の横運動の2輪モデルを示す説明図、図6は一般的なオブザーバの構成を示す説明図、図7は前輪すべり角(トー角)と横力の路面摩擦係数に対する特性の説明図、図8は車速に基づき設定される規定時間の特性の説明図、図9は路面摩擦係数推定のフローチャート、図10は第1の路面μ推定処理のフローチャート、図11は第2の路面μ推定処理のフローチャートである。 図1において、符号1は車両を示し、この車両1のエンジン2による駆動力は、エンジン2後方の自動変速装置(トルクコンバータ等も含んで図示)3を介してセンタデファレンシャル装置4に伝達される。 センタデファレンシャル装置4に伝達された駆動力は、リヤドライブ軸5、プロペラシャフト6、ドライブピニオン軸部7を介して後輪終減速装置8に入力される一方、フロントドライブ軸9を介して前輪終減速装置10に入力される。 後輪終減速装置8に入力された駆動力は、後輪左ドライブ軸11rlを経て左後輪12rlに伝達される一方、後輪右ドライブ軸11rrを経て右後輪12rrに伝達される。また、前輪終減速装置10に入力された駆動力は、前輪左ドライブ軸11flを経て左前輪12flに伝達される一方、前輪右ドライブ軸11frを経て右前輪12frに伝達される。 また、符号15は操舵装置を示し、本実施形態における操舵装置15としては、個々の車輪12fl,12fr,12rl,12rrの操舵角(車輪角)を独立して制御可能な四輪操舵機構が採用されている。この四輪操舵機構は、例えば、車輪12fl,12fr,12rl,12rrとハンドル16とが機械的に分離したステアバイワイヤ機構であり、ハンドル角と、左右前後の各車輪12fl,12fr,12rl,12rrの操舵角との関係を任意に設定することができる。 すなわち、ドライバによって回転操作されるハンドル16は、操舵入力軸17の一端に固設され、操舵入力軸17の他端は、動力伝達機構18に接続されており、この動力伝達機構18には、モータ19の出力軸が接続されている。これにより、モータ19において発生した動力は、動力伝達機構18及び操舵入力軸17を介し、操舵反力としてハンドル16に伝達される。 個々の車輪12fl,12fr,12rl,12rrには、車輪調整装置としての操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrが車輪単位で設けられている。 これにより、左右前輪12fl,12frの操舵角は、前輪側に設けられた一対の操舵アクチュエータ20fl,20frにより、それぞれ独立して調整される。 また、左右後輪12rl,12rrの操舵角は、後輪側に設けられた一対の操舵アクチュエータ20rl,20rrにより、それぞれ独立して調整される。 個々の操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrには、駆動ロッド21fl,21fr,21rl,21rrが挿通されており、それぞれの操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrの内部に設けられたモータのロータ(図示せず)の回転に応じて、駆動ロッド21fl,21fr,21rl,21rrが、車幅方向、すなわち、左右方向に伸縮可能となっている。 各駆動ロッド21fl,21fr,21rl,21rrの端部は、各車輪12fl,12fr,12rl,12rrと連結されたタイロッド22fl,22fr,22rl,22rrに接続されており、駆動ロッド21fl,21fr,21rl,21rrに連動してタイロッド22fl,22fr,22rl,22rrが移動することにより、車輪12fl,12fr,12rl,12rrが操舵される。 左前輪12flと右後輪12rrとは、それぞれの駆動ロッド12fl,12rrが伸張することにより、右方向に操舵され、駆動ロッド12fl,12rrが収縮することにより、左方向に操舵される。これに対して、右前輪12flと左後輪12rlとは、伸縮方向に対する操舵方向が前述の左前輪12flと右後輪12rrの場合とは逆になっている。 各操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrは、操舵制御装置23により制御されるようになっている。操舵制御装置23には、車速センサ31で検出した車速V、操舵入力軸17に取り付けられて、ハンドル16の中立位置からの回転角をハンドル角θHとして検出するハンドル角センサ32からのハンドル角θH、各操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrにそれぞれ取り付けられて、それぞれのモータのロータの回転角度を検出することにより各車輪12fl,12fr,12rl,12rrの操舵角を検出する操舵角センサ33fl,33fr,33rl,33rrからの操舵角等が入力される。 そして、操舵制御装置23は、ハンドル角θHに応じてモータ19を制御することにより、ハンドル16に与えられる操舵反力を制御する。これとともに、操舵制御装置23は、各操舵アクチュエータ20fl,20fr,20rl,20rrを制御することにより、各車輪12fl,12fr,12rl,12rrの操舵角をそれぞれ制御する。例えば、操舵制御装置23は、通常、ハンドル角θHに基づいて、左右の前輪12fl,12frの操舵角を互いに正相に設定するとともに、左右の後輪12rl,12rrの操舵角も互いに正相に設定する。尚、本実施の形態において、正相は、操舵角が進行方向を基準に対応することであり、逆相は、車輪角が進行方向を基準に逆向きに対応することであるが、車輪角の対応は厳密に一致している必要はない。また、左方向への操舵を正の値と定義する。 また、操舵制御装置23には、後述する路面摩擦係数推定装置50からトーイン、或いは、トーアウトの信号が入力された場合には、各操舵アクチュエータ20fl,20frを作動させて左右の前輪12fl,12frに予め設定した値(例えば2〜3゜)の操舵角で可変させ、トーイン状態、或いは、トーアウト状態を実現させる。このように、操舵装置15はトー角可変手段としての機能を有している。 一方、車両1には、前方の障害物を検出し、また、前方の路面状況の変化を検出するために前方環境認識装置34が配設されており、検出した前方障害物、路面状況変化は、路面摩擦係数推定装置50に入力される。 前方環境認識装置34は、例えば、1組のカメラ35L,35Rで撮影した画像データを基に、前方障害物、路面状況変化の検出を行うようになっている。 1組のカメラ35L,35Rは、ステレオ光学系として例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた1組の(左右の)CCDカメラで構成される。これら左右のCCDカメラは、それぞれ車室内の天井前方に所定間隔をもって取り付けられ、車外の対象(歩行者、先行車、駐車車両、障害物等の立体物や白線等)を異なる視点からステレオ撮像し、前方環境認識装置34に出力する。 前方環境認識装置34における、1組のカメラ35L,35Rからの画像データの認識処理は、例えば以下のように行われる。まず、1組のカメラ35L,35Rで撮像した自車両1前方のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって距離情報(距離データ)を求める処理を行ない、このデータを基に、周知のグルーピング処理を行い、予め記憶しておいた3次元的な道路形状データ、側壁データ、立体物データ等の枠(ウインドウ)と比較し、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両、歩行者等の立体物データを抽出する。そして、立体物の中で、ガードレール、白線等により定める自車進行路を中心として、例えば左右1.1mの幅の領域を自車走行領域と定め、該自車走行領域に存在する立体物を前方障害物として抽出する。 また、前方の路面状況の検出は、撮像画像中に設定した監視領域の輝度値をヒストグラム処理し、その輝度分布を予め設定された複数の輝度分布パターンの何れかに分類することにより行う。例えば、特開2005−84959号公報に開示されるように、輝度分布のパターンにより、所定の狭い輝度範囲内に輝度値が集中するパターンは、一面雪路、白線のないきれいなドライ路面、ウェット路面である。 また、所定以上の輝度範囲に輝度値が分布され且つ黒側及び白側に輝度分布のピークが存在する輝度分布パターンは、融雪路、くっきりとした影を有するドライ路面である。 更に、所定以上の輝度範囲に輝度値が分布され且つ大半の輝度値が相対的に白側に偏って分布する輝度分布パターンは、一面雪路、ウェット路面である。 また、所定以上の輝度範囲に輝度値が分布され且つ大半の輝度値が相対的に黒側に偏って分布する輝度分布パターンは、白線のあるドライ路面である。 更に、所定以上の輝度範囲に輝度値が一様に分布する輝度分布パターンは、融雪路、ウェット路面、汚れたドライ路面である。 そして、これらを組合せ、場合分けすることにより、前方路面が雪路、ウェット路面、ドライ路面の何れかであるかを判定し、前回検出された路面状況と異なっている場合に路面状況に変化があると判断するのである。 このように、前方環境認識装置34により検出された前方障害物、路面状況の変化は、路面摩擦係数推定装置50に入力される。 また、車両1には、上述の車速センサ31、ハンドル角センサ32、操舵角センサ33fl,33fr,33rl,33rr、前方環境認識装置34に加え、前輪12fl,12frの力検出センサ36fl,36fr、横加速度センサ37、ヨーレートセンサ38、ブレーキスイッチ39が設けられており、これらのうち、車速センサ31、ハンドル角センサ32、前方環境認識装置34、前輪12fl,12frの力検出センサ36fl,36fr、横加速度センサ37、ヨーレートセンサ38、ブレーキスイッチ39は、路面摩擦係数推定装置50に接続されて、車速V、ハンドル角θH、前方障害物、路面状況の変化、前輪12fl,12frに作用する横力Fyfl、Fyfr、横加速度d2y/dt2,ヨーレート(ヨー角速度)dψ/dt、ブレーキのON信号が路面摩擦係数推定装置50に入力される。 ここで、力検出センサ36fl,36frは、例えば、特開平9−2240号公報に開示されるセンサであり、前輪12fl,12frに作用する横方向(y方向)の力Fyfl、Fyfrをそれぞれのアクスルハウジングに生じる変位量に基づき検出するものである。 すなわち、本実施の形態においては、前方環境認識装置34は障害物検出手段、及び、路面状況検出手段として、この力検出センサ36fl,36frは検出手段として、ブレーキスイッチ39は制動操作検出手段として設けられている。 路面摩擦係数推定装置50は、上述の各入力信号に基づき、走行中、旋回状態の場合には、後述する第1の路面μ推定処理を行い、直進状態の場合には、後述する第2の路面μ推定処理を行って、推定した路面摩擦係数μを図示しない所定の制御装置(例えば、4輪駆動制御装置、制動力制御装置)等に出力する。 従って、路面摩擦係数推定装置50は、図2に示すように、路面μ推定処理選択部51、第1の路面μ推定処理部52、第2の路面μ推定処理部53から主要に構成されている。 路面μ推定処理選択部51は、車速センサ31から車速Vが入力され、横加速度センサ37から横加速度d2y/dt2が入力される。そして、車両が走行中(V≠0)、横加速度d2y/dt2が予め設定しておいた値(d2y/dt2)c1以上の場合には旋回中と判定し、第1の路面μ推定処理を行うべく第1の路面μ推定処理部52に信号を出力する。また、車両が走行中(V≠0)、横加速度d2y/dt2が予め設定しておいた値(d2y/dt2)c1未満の場合には直進状態と判定し、第2の路面μ推定処理を行うべく第2の路面μ推定処理部53に信号を出力する。尚、直進の判定は、横加速度d2y/dt2以外にも、ヨーレート(ヨー角速度)dψ/dt等で判定するようにしても良い。このように、路面μ推定処理選択部51は、直進判定手段として設けられている。 第1の路面μ推定処理部52は、図3に示すように、車体すべり角演算部52a、前輪すべり角演算部52b、路面摩擦係数設定部52cから主要に構成されている。 車体すべり角演算部52aは、車速センサ31からの車速Vとハンドル角センサ32からのハンドル角θHが入力され、予め設定しておいた車両の運動方程式に基づく車両運動モデルにより、検出したハンドル角θH,車速Vに対応する車体すべり角を演算して、前輪すべり角演算部52bに出力する。 図5の車両運動モデルを用いて、車両の横運動の運動方程式を立てる。車両横方向の並進運動に関する運動方程式は、前後輪のコーナリングフォース(1輪)をCf,Cr、車体質量をM、横加速度をd2y/dt2とすると、 2・Cf+2・Cr=M・(d2y/dt2) …(1)となる。 一方、重心点まわりの回転運動に関する運動方程式は、重心から前後輪軸までの距離をLf,Lr、車体のヨーイング慣性モーメントをIz、ヨー角加速度をd2ψ/dt2として、以下の(2)式で示される。 2・Cf・Lf−2・Cr・Lr=Iz・(d2ψ/dt2) …(2) また、車体すべり角をβ、車体すべり角速度dβ/dtとすると、横加速度d2y/dt2は、 (d2y/dt2)=V・((dβ/dt)+(dψ/dt)) …(3)で表される。 従って、上記(1)式は、以下の(4)式となる。 2・Cf+2・Cr=M・V・((dβ/dt)+(dψ/dt)) …(4) コーナリングフォースはタイヤの横すべり角に対して1次遅れに近い応答をするが、この応答遅れを無視し、更に、サスペンションの特性をタイヤ特性に取り込んだ等価コーナリングパワを用いて線形化すると以下となる。 Cf=Kf・αf …(5) Cr=Kr・αr …(6)ここで、Kf,Krは前後輪の等価コーナリングパワ、αf,αrは前後輪のすべり角である。 等価コーナリングパワKf,Krの中でロールやサスペンションの影響を考慮するものとして、この等価コーナリングパワKf,Krを用いて、前後輪のすべり角αf,αrは、前後輪舵角をδf,δr、ステアリングギヤ比をnとして以下のように簡略化できる。 αf=δf−(β+Lf・(dψ/dt)/V) =(θH/n)−(β+Lf・(dψ/dt)/V) …(7) αr=δr−(β−Lr・(dψ/dt)/V) …(8) 以上の運動方程式をまとめると、以下の状態方程式が得られる。 (dx(t) /dt)=A・x(t) +B・u(t) …(9) x(t) =[β (dψ/dt)]T u(t) =[θH δr]T a11=−2・(Kf+Kr)/(M・V) a12=−1.0−2・(Lf・Kf−Lr・Kr)/(M・V2) a21=−2・(Lf・Kf−Lr・Kr)/Iz a22=−2・(Lf2・Kf+Lr2・Kr)/(Iz・V) b11=2・Kf/(M・V・n) b12=2・Kr/(M・V) b21=2・Lf・Kf/Iz b22=−2・Lr・Kr/Iz ここで、車体すべり角を推定するためのオブザーバの構成を図6で説明する。 測定できる(センサで検出できる)出力が、以下で示されるとき、 y(t) =C・x(t) …(10) オブザーバの構成は次のようになる。 (dx'(t)/dt)=(A−K・C)・x'(t)+K・y(t) +B・u(t) …(11) ここで、x'(t)の「’」は推定値であることを示す。 或いは、 (dx'(t)/dt)=A・x'(t)+B・u(t) −K・C・(x' −x) …(12) 上記(12)式を車両運動モデルに適用すると、であり、上記(12)式は以下となる。 (dx'(t)/dt)=A・x'(t)+B・u(t) −K・(x' −x) …(14) ここで、行列(A−K・C)が安定行列、すなわち(A−K・C)の固有値の実部が負(複素左半面)となるようにKを設定すれば、x'(t)→x(t) が保証される。 そして、u(t) =[θH δr]T,x(t) =[β (dψ/dt)]Tであるから、前輪舵角δfのみ変化するオブザーバ61は、図4に示すように、ハンドル角θHの入力に対して、ヨーレートと車体すべり角βとが推定される構成となる。 すなわち、推定されたヨーレートと推定車体すべり角βは、それぞれ実際のヨーレート(ヨーレートセンサ5からのヨーレート)と実車体すべり角演算部62からの演算で得た実車体すべり角β' との偏差(ヨーレート偏差,車体すべり角偏差)が演算され、ヨーレート偏差はK1と、車体すべり角偏差はK2との積算が行われ、これら各値が、ハンドル角θHとBとの積と推定されたヨーレート,推定車体すべり角βとAとの積の和から減算され、この結果を積分することで、正確にヨーレートと推定車体すべり角βを推定演算するようになっている。このように車両運動モデルを用いることにより、実車ではあり得ない高周波のセンサノイズ等を有効に除去することができる。 また、実車体すべり角演算部62は、オブザーバ61のフィードバックに必要な実車体すべり角β' をセンサ信号そのものではなく、以下の(15)式で演算する。 β' =∫((d2y/dt2)/V−(dψ/dt))dt …(15) そして、前輪すべり角演算部52bは、車速センサ31からの車速V、ハンドル角センサ32からのハンドル角θH、ヨーレートセンサ38からのヨーレートdψ/dtおよび車体すべり角演算部52aからの推定車体すべり角βが入力され、前述の(7)式に従って操舵輪すなわち前輪のすべり角αfを演算し、この前輪すべり角αfを路面摩擦係数設定部52cに出力する。 路面摩擦係数設定部52cは、路面μ推定処理選択部51から選択信号、車速センサ31から車速V、力検出センサ36fl,36frから前輪12fl,12frに作用する横力Fyfl、Fyfr、前輪すべり角演算部52bからオブザーバで推定した前輪すべり角αfが入力され、路面μ推定処理選択部51からの選択信号が入力された際に、上述の各信号に基づき路面摩擦係数μの設定を行って出力する。 路面摩擦係数設定部52cでの路面摩擦係数μの設定は、基本的に、予め実験・計算等により求めておいた前輪すべり角αfと横力とに基づく、例えば図7に示す前輪すべり角(トー角)と横力の路面摩擦係数に対する特性のマップから求めるようになっている。ここで、横力とは、左前輪12flの横力Fyflと右前輪12frの横力Fyfrとの平均値、或いは、値の大きな方である。 すなわち、前輪すべり角(トー角)と横力の路面摩擦係数に対する特性のマップは、前輪すべり角αfを一定とすると高μ路であるほど横力が大きくなる特性を、各前輪すべり角αf毎に表現したマップとなっている。 また、路面摩擦係数設定部52cは、車速Vが非常に低い場合(予め設定しておいた閾値Vcより低い場合)では、ステアリングの据え切りトルクの影響が大きくなり、推定精度の悪化が予想されるため、路面摩擦係数μの設定を禁止するように構成されている。 一方、図2に戻り、第2の路面μ推定処理部53は、路面μ推定処理選択部51から選択信号、車速センサ31から車速V、前方環境認識装置34から前方障害物、路面状況の変化、力検出センサ36fl,36frから前輪12fl,12frに作用する横力Fyfl、Fyfr、ブレーキスイッチ39からブレーキのON信号が入力される。そして、路面μ推定処理選択部51からの選択信号が入力された際に、上述の各信号に基づき以下の如く路面摩擦係数μの設定を行って出力する。 前方環境認識装置34により前方障害物を検出した場合、操舵制御装置23に対して前輪12fl,12frを予め設定したトーアウト(例えば2〜3゜)の角度とする信号を出力し、操舵アクチュエータ20fl,20frを作動させて左右の前輪12fl,12frをトーアウトとする。そして、前輪12fl,12frの横力を測定することにより、前述と同様、図7に示す前輪すべり角(トー角)と横力の路面摩擦係数に対する特性のマップを参照し、路面摩擦係数μの設定を行って出力する。 また、前方環境認識装置34により路面状況の変化が検出されている場合、操舵制御装置23に対して前輪12fl,12frを予め設定したトーイン(例えば2〜3゜)の角度とする信号を出力し、操舵アクチュエータ20fl,20frを作動させて左右の前輪12fl,12frをトーインとする。そして、前輪12fl,12frの横力を測定することにより、前述と同様、図7に示す前輪すべり角(トー角)と横力の路面摩擦係数に対する特性のマップを参照し、路面摩擦係数μの設定を行って出力する。 更に、ブレーキのON信号が入力されている場合、操舵制御装置23に対して前輪12fl,12frを予め設定したトーアウト(例えば2〜3゜)の角度とする信号を出力し、操舵アクチュエータ20fl,20frを作動させて左右の前輪12fl,12frをトーアウトとする。そして、前輪12fl,12frの横力を測定することにより、前述と同様、図7に示す前輪すべり角(トー角)と横力の路面摩擦係数に対する特性のマップを参照し、路面摩擦係数μの設定を行って出力する。 また、上述の何れの場合にも該当しない場合は、予め設定しておいたマップ等を参照し、車速Vに応じて規定時間Tcを設定し、この規定時間Tc毎に、操舵制御装置23に対して前輪12fl,12frを予め設定したトーイン(例えば2〜3゜)の角度とする信号を出力し、操舵アクチュエータ20fl,20frを作動させて左右の前輪12fl,12frをトーインとする。そして、前輪12fl,12frの横力を測定することにより、前述と同様、図7に示す前輪すべり角(トー角)と横力の路面摩擦係数に対する特性のマップを参照し、路面摩擦係数μの設定を行って出力する。 尚、上述の規定時間Tcは、例えば、図8に示すように、車速Vが高速になるほど短く設定される。これは、車速Vが速くなると、単位時間辺りの移動距離が増える為である。また、この規定時間Tcは、ある一定時間(例えば、5sec)としても良い。 このように、第2の路面μ推定処理部53は、路面摩擦係数推定手段として設けられている。 次に、路面摩擦係数推定装置50における路面摩擦係数推定の処理の流れを、図9のフローチャートで説明する。このプログラムは所定時間毎に実行され、まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で、車速V、横加速度d2y/dt2を読み込む。 次いで、S102に進み、車速Vが0、すなわち、停止しているか否か判定し、停止している場合(V=0の場合)は、そのままプログラムを抜け、走行中の場合(V≠0の場合)はS103に進む。 S103では、横加速度d2y/dt2を予め設定しておいた値(d2y/dt2)c1と比較して、(d2y/dt2)c1以上の場合(d2y/dt2≧(d2y/dt2)c1の場合)ならば車両は旋回中と判断し、S104に進んで、第1の路面μ推定処理を実行させてプログラムを抜ける。 逆に、(d2y/dt2)c1未満の場合(d2y/dt2<(d2y/dt2)c1の場合)ならば車両は直進走行中と判断し、S105に進んで、第2の路面μ推定処理を実行させてプログラムを抜ける。 上述のS104で実行される第1の路面μ推定処理の流れを、図10のフローチャートで説明する。まず、S201で、車速V、ハンドル角θH、ヨーレートdψ/dt、横加速度d2y/dt2を読み込み、S202に進んで、車速Vが予め設定しておいた閾値Vc以上か否か判定する。 S202で車速Vが閾値Vc未満の場合(V<Vcの場合)は、推定精度の悪化が予想されるため、路面摩擦係数μの設定を行わずルーチンを抜ける。一方、車速Vが閾値Vc以上の場合(V≧Vcの場合)はS203に進む。 S203に進むと、車体すべり角演算部52aにおいて、オブザーバで車体すべり角βを推定し、更にS204に進んで、前輪すべり角演算部52bにおいて、S203で推定した車体すべり角βを基に前述の(7)式により前輪すべり角αfを演算する。 その後、S205に進み、S204で演算した前輪すべり角αfが予め設定しておいた閾値θc以上か否か判定し、前輪すべり角αfが閾値θc以上の場合(αf≧θcの場合)はS206へと進み、前輪すべり角αfが閾値θc未満の場合(αf<θcの場合)は前輪すべり角αfの誤差が大きいと判断して路面摩擦係数μの設定を行わずルーチンを抜ける。 S205からS206へと進むと、前輪12fl,12frに作用する横力Fyfl、Fyfrを読み込む。 そして、S207に進んで、路面摩擦係数設定部52cにおいて、前輪すべり角αfと横力(FyflとFyfrの平均値、或いは、大きい値の方)とに基づき、前輪すべり角と横力の路面摩擦係数に対する特性のマップを参照して路面摩擦係数μを設定し、出力してルーチンを抜ける。 次に、上述のS105で実行される第2の路面μ推定処理の流れを、図11のフローチャートで説明する。まず、S301で、前方環境認識装置34により前方障害物の抽出を行う。 次いで、S302に進み、前方障害物が存在するか否か判定し、前方障害物が存在する場合は、S303に進んで、操舵制御装置23に対して前輪12fl,12frを予め設定したトーアウト(例えば2〜3゜)の角度とする信号を出力する。この信号により、操舵制御装置23は、操舵アクチュエータ20fl,20frを作動させて左右の前輪12fl,12frをトーアウトとする。 その後、S304に進んで、前輪12fl,12frの横力Fyfl、Fyfrを検出し、S305に進んで、図7に示す前輪すべり角(トー角)と横力の路面摩擦係数に対する特性のマップを参照し、路面摩擦係数μの設定を行い、出力してルーチンを抜ける。 すなわち、前方に障害物がある際には、トーアウトとすることにより、路面μ推定による障害物回避のアシスト制御性向上だけでなく、障害物回避の為の操舵応答性の向上を図りながら路面μ推定を行うことが可能となっている。 また、上述のS302で前方障害物が存在しないと判定した場合、S306に進み、前方環境認識装置34により認識されている路面状況の変化を読み込む。 そして、S307に進み、路面状況に変化があるか否か判定し、路面状況に変化があると判定した場合は、S308に進んで、操舵制御装置23に対して前輪12fl,12frを予め設定したトーイン(例えば2〜3゜)の角度とする信号を出力する。この信号により、操舵制御装置23は、操舵アクチュエータ20fl,20frを作動させて左右の前輪12fl,12frをトーインとする。 その後、S309に進んで、前輪12fl,12frの横力Fyfl、Fyfrを検出し、S310に進んで、図7に示す前輪すべり角(トー角)と横力の路面摩擦係数に対する特性のマップを参照し、路面摩擦係数μの設定を行い、出力してルーチンを抜ける。 すなわち、路面状況の変化がある際には、トーインとすることにより、直進安定性の向上を図りながら路面μ推定を行うことが可能となっている。 また、上述のS307で路面状況に変化がないと判定した場合、S311に進み、ブレーキスイッチがONで制動操作が行われているか否かの判定を行う。 この判定の結果、ブレーキスイッチがONの場合は、S312に進んで、操舵制御装置23に対して前輪12fl,12frを予め設定したトーアウト(例えば2〜3゜)の角度とする信号を出力する。この信号により、操舵制御装置23は、操舵アクチュエータ20fl,20frを作動させて左右の前輪12fl,12frをトーアウトとする。 その後、S313に進んで、前輪12fl,12frの横力Fyfl、Fyfrを検出し、S314に進んで、図7に示す前輪すべり角(トー角)と横力の路面摩擦係数に対する特性のマップを参照し、路面摩擦係数μの設定を行い、出力してルーチンを抜ける。 すなわち、制動操作がある際には、トーアウトとすることにより、路面μ推定とそれによる制動効率の向上だけでなく、制動時の安定性向上を図りながら路面μ推定を行うことが可能となっている。 上述のS311の判定で、ブレーキスイッチがOFFの場合は、S315に進み、例えば、図8に示すマップを参照して、車速に基づく規定時間Tcを設定する。 そして、S316に進み、前回の推定から規定時間Tcが経過したか否か判定し、規定時間Tcを経過していないのであれば、そのままルーチンを抜ける。また、規定時間Tcを経過したのであれば、S317に進んで、操舵制御装置23に対して前輪12fl,12frを予め設定したトーイン(例えば2〜3゜)の角度とする信号を出力する。この信号により、操舵制御装置23は、操舵アクチュエータ20fl,20frを作動させて左右の前輪12fl,12frをトーインとする。 その後、S318に進んで、前輪12fl,12frの横力Fyfl、Fyfrを検出し、S319に進んで、図7に示す前輪すべり角(トー角)と横力の路面摩擦係数に対する特性のマップを参照し、路面摩擦係数μの設定を行い、出力してルーチンを抜ける。 すなわち、通常の直線走行時では、トーインとし、規定時間Tc毎に路面μ推定を実行することにより、ドライバに違和感なく、直進安定性の向上を図りながら路面μ推定を行うことが可能となっている。 このように本発明の実施の形態によれば、たとえ直進走行状態であっても迅速に精度の良い路面摩擦係数の推定を行うことが可能である。 尚、本実施の形態では、ステアバイワイヤ機構による独立操舵機構を例に説明しているが、他に、トー角を可変自在なアライメント可変機構においても適用できることは云うまでもない。 また、本実施の形態では、前輪に作用する横力を検出し、この横力と前輪すべり角(トー角)の特性から路面μを推定するようにしているが、横力以外に、前輪に作用するセルフアライニングトルクを検出し、このセルフアライニングトルクと前輪すべり角(トー角)の特性から路面μを推定するようにしても良い。路面摩擦係数推定装置を搭載する車両の概略構成図路面摩擦係数推定装置の機能ブロック図第1の路面μ推定処理部の機能ブロック図車体すべり角演算部の構成を示す機能ブロック図車両の横運動の2輪モデルを示す説明図一般的なオブザーバの構成を示す説明図前輪すべり角(トー角)と横力の路面摩擦係数に対する特性の説明図車速に基づき設定される規定時間の特性の説明図路面摩擦係数推定のフローチャート第1の路面μ推定処理のフローチャート第2の路面μ推定処理のフローチャート符号の説明 1 車両 12fl,12fr,12rl,12rr 車輪 15 操舵装置(トー角可変手段) 23 操舵制御装置 34 前方環境認識装置(障害物検出手段、路面状況検出手段) 36fl,36fr 力検出センサ(検出手段) 39 ブレーキスイッチ(制動操作検出手段) 50 路面摩擦係数推定装置 51 路面μ推定処理選択部(直進判定手段) 52 第1の路面μ推定処理部 53 第2の路面μ推定処理部(路面摩擦係数推定手段) 左右輪のトー角を可変するトー角可変手段と、 上記左右輪に作用する横力とセルフアライニングトルクのどちらかを検出する検出手段と、 車両が直進状態か否かを判定する直進判定手段と、 車両が直進状態の際に上記トー角可変手段に対して上記左右前輪のトー角を予め設定する量だけ可変する信号を出力し、該左右前輪のトー角と上記検出手段で検出した上記横力とセルフアライニングトルクのどちらかに基づいて路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定手段と、 を備えたことを特徴とする車両の路面摩擦係数推定装置。 上記路面摩擦係数推定手段は、車両が直進状態の際に上記トー角可変手段に上記左右輪を予め設定したトーインの角度とする信号を出力し、該トーインの角度と上記検出手段で検出した上記横力とセルフアライニングトルクのどちらかに基づいて予め設定する時間毎に路面摩擦係数を推定することを特徴とする請求項1記載の車両の路面摩擦係数推定装置。 前方障害物を検出する障害物検出手段を有し、 前方障害物を検出した場合、上記路面摩擦係数推定手段は、車両が直進状態の際に上記トー角可変手段に対して上記左右輪を予め設定したトーアウトの角度とする信号を出力し、該トーアウトの角度と上記検出手段で検出した上記横力とセルフアライニングトルクのどちらかに基づいて路面摩擦係数を推定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の路面摩擦係数推定装置。 前方の路面状況の変化を検出する路面状況検出手段を有し、 前方の路面状況の変化を検出した場合、上記路面摩擦係数推定手段は、車両が直進状態の際に上記トー角可変手段に対して上記左右輪を予め設定したトーインの角度とする信号を出力し、該トーインの角度と上記検出手段で検出した上記横力とセルフアライニングトルクのどちらかに基づいて路面摩擦係数を推定することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の車両の路面摩擦係数推定装置。 制動操作の実行を検出する制動操作検出手段を有し、 制動操作の実行を検出した場合、上記路面摩擦係数推定手段は、車両が直進状態の際に上記トー角可変手段に対して上記左右輪を予め設定したトーアウトの角度とする信号を出力し、該トーアウトの角度と上記検出手段で検出した上記横力とセルフアライニングトルクのどちらかに基づいて路面摩擦係数を推定することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の車両の路面摩擦係数推定装置。 【課題】直進走行状態であっても迅速に精度の良い路面摩擦係数の推定を行う。【解決手段】第2の路面μ推定処理部53は、車両1が直進走行時、前方障害物を検出した場合は操舵制御装置23に対して前輪12fl,12frを予め設定したトーアウトの角度とする信号を出力し、路面状況の変化が検出されている場合は操舵制御装置23に対して前輪12fl,12frを予め設定したトーインの角度とする信号を出力し、ブレーキのON信号が入力されている場合は操舵制御装置23に対して前輪12fl,12frを予め設定したトーアウトの角度とする信号を出力し、これら以外の場合は規定時間Tc毎に操舵制御装置23に対して前輪12fl,12frを予め設定したトーインの角度とする信号を出力し、前輪12fl,12frの横力を読み込んで、予め設定しておいた横力とトー角との関係から路面摩擦係数μの設定を行って出力する。【選択図】図11


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