タイトル: | 公開特許公報(A)_プロテオグリカンの新規医薬用途 |
出願番号: | 2005323966 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 38/00,A61P 43/00,A61P 29/00,A61P 37/06,A61P 37/08,A61P 3/10 |
中根 明夫 差波 拓志 高垣 啓一 JP 2007131548 公開特許公報(A) 20070531 2005323966 20051108 プロテオグリカンの新規医薬用途 国立大学法人弘前大学 504229284 清水 善廣 100087745 阿部 伸一 100098545 辻田 幸史 100106611 中根 明夫 差波 拓志 高垣 啓一 A61K 38/00 20060101AFI20070427BHJP A61P 43/00 20060101ALI20070427BHJP A61P 29/00 20060101ALI20070427BHJP A61P 37/06 20060101ALI20070427BHJP A61P 37/08 20060101ALI20070427BHJP A61P 3/10 20060101ALI20070427BHJP JPA61K37/02A61P43/00 111A61P29/00A61P37/06A61P37/08A61P3/10 6 1 OL 8 4C084 4C084AA02 4C084DC50 4C084NA14 4C084ZB08 4C084ZB11 4C084ZB13 4C084ZC35 本発明は、プロテオグリカンの新規医薬用途に関する。 プロテオグリカンは複合糖質のひとつで、コアタンパクとそれに結合するグリコサミノグリカン(酸性ムコ多糖)から成る。プロテオグリカンは細胞外マトリックスの主な構成要素であり、皮膚、軟骨、骨、血管壁などに存在する。最近、プロテオグリカンは、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンなどと共に細胞増殖や接着に関わっていることが報告されている(例えば非特許文献1や非特許文献2を参照)。しかしながら、プロテオグリカンが有する作用の全容はいまだ明らかでない。de Aguiar CBNM, Lobao-Soares B, Alvarez-Silva M, Trentin AG. Glycosaminoglycans mediate C6 glioma cell adhesion to extracellular matrix components and alter cell proliferation and cell migration. BMC Cell Biol 6:31, 2005.Munakata H, Takagaki K, Majima M, Endo M. Interaction between collagens and glycosaminoglycans investigated using a surface plasmon resonance biosensor. Glycobiology 9:1023-1027, 1999. そこで本発明は、プロテオグリカンの新規医薬用途を提供することを目的とする。 本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意研究を進めた結果、プロテオグリカンにこれまでに報告されていない免疫系に対する新規な薬理作用を見出した。 本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、本発明のTNF−α産生抑制剤は、請求項1記載の通り、プロテオグリカンを有効成分とすることを特徴とする。 また、本発明のIFN−γ産生抑制剤は、請求項2記載の通り、プロテオグリカンを有効成分とすることを特徴とする。 また、本発明のIL−10産生促進剤は、請求項3記載の通り、プロテオグリカンを有効成分とすることを特徴とする。 また、本発明のTLR2および/またはTLR4遺伝子発現抑制剤は、請求項4記載の通り、プロテオグリカンを有効成分とすることを特徴とする。 また、本発明のiNOS遺伝子発現抑制剤は、請求項5記載の通り、プロテオグリカンを有効成分とすることを特徴とする。 また、本発明のSTAT−3遺伝子発現促進剤は、請求項6記載の通り、プロテオグリカンを有効成分とすることを特徴とする。 本発明によれば、プロテオグリカンの新規医薬用途が提供される。 本発明において有効成分とするプロテオグリカンは、サケ、サメ、ウシ、クジラなどの軟骨を原材料にして自体公知の方法により精製されてなるものであってよい。プロテオグリカンの精製方法としては、例えば、特開2002−69097号公報記載の酢酸を用いた方法を好適に採用することができる。 プロテオグリカンは、炎症性サイトカインであるTNF−α(腫瘍壊死因子α)およびIFN−γ(インターフェロンγ)の産生を抑制する一方で、抗炎症性サイトカインであるIL−10(インターロイキン10)の産生を促進させる作用を有する。また、細菌を認識するレセプターであるマクロファージ上のTLR(Toll−like receptor)2やTLR4の転写レベルの発現を抑制する作用を有する。さらに、殺菌に関わる窒素酸化物生成を媒介するマクロファージのiNOS(inducible nitric oxide systhase)の転写レベルの発現を抑制する作用やIL−10により活性化される転写因子であるマクロファージのSTAT(signal transducers and activators of transcription)−3の転写レベルの発現を促進させる作用を有する。従って、プロテオグリカンを有効成分とする本発明は、炎症性疾患や自己免疫疾患の予防治療に有用である他、臓器移植時の拒絶反応の抑制、アレルギーの処置、糖尿病などにも有用である。 プロテオグリカンは、経口投与または非経口投与(例えば、静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与など)することができる。投与に際してはそれぞれの投与方法に適した剤型に製剤化すればよい。製剤形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、丸剤、トローチ剤、舌下錠、坐剤、軟膏、注射剤、乳剤、懸濁剤、シロップなどが挙げられ、これら製剤の調製は、無毒性の賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、防腐剤、等張化剤、安定化剤、分散剤、酸化防止剤、着色剤、矯味剤、緩衝剤などの添加剤を使用して自体公知の方法にて行うことができる。無毒性の添加剤としては、例えば、でんぷん、ゼラチン、ブドウ糖、乳糖、果糖、マルトース、炭酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ペトロラタム、グリセリン、エタノール、シロップ、塩化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸、ポリビニルピロリドン、水などが挙げられる。なお、製剤中には、本発明の有用性を補強したり増強したりするために、他の薬剤を含有させてもよい。 製剤中における有効成分の含有量は、その剤型に応じて異なるが、一般に0.1〜100重量%の濃度であることが望ましい。製剤の投与量は、投与対象者の性別や年齢や体重の他、症状の軽重、医師の診断などにより広範に調整することができるが、一般に1日当り0.01〜300mg/Kgとすることができる。上記の投与量は、1日1回または数回に分けて投与すればよい。 また、プロテオグリカンは、種々の形態の食品(サプリメントを含む)に、所望する薬理作用を発揮するに足る有効量を添加することで、機能性食品として食してもよい。 以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、以下の記載に何ら限定して解釈されるものではない。実験1:(実験方法) 24穴培養プレートを用い、マウスマクロファージ細胞株RAW264.7を10%牛胎児血清添加DMEM中で2×106/wellにて培養を行った。その際に特開2002−69097号公報記載の方法によりサケ軟骨から抽出したプロテオグリカン(以下PGと略す)を所定の濃度で添加した。また、比較対照として、グリコサミノグリカンのひとつである硫酸化ムコ多糖のコンドロイチン4硫酸(以下C4Sと略す)とコンドロイチン6硫酸(以下C6Sと略す)のいずれかも所定の濃度で添加した。同時にマクロファージを刺激するために、グラム陽性細菌であるListeria monocytogenes(LM)またはグラム陰性細菌であるEscherichia coli(EC)の加熱死菌(以下それぞれHKLM、HKECと略す)を2×107/well添加した。48時間培養を行った後、培養上清に含まれるTNF−αとIL−10の量をELISA法にて測定した。また、回収した培養細胞からmRNAを抽出し、抽出したmRNAにおけるTLR−2、TLR−4、iNOS、STAT−3の発現を定量的real−time RT−PCRにて測定した。(実験結果)A:PGは加熱死菌刺激によるマクロファージからのTNF−αの産生を抑制し、逆にIL−10の産生を促進した。 マウスマクロファージ細胞株RAW264.7を加熱死菌存在下で48時間培養し、培養上清中のTNF−αとIL−10の量を測定したところ、PGを添加することにより、HKLMまたはHKECを用いた刺激によるTNF−αの産生は用量依存的に抑制されたが、C4SおよびC6Sを添加してもTNF−αの産生抑制は認められなかった。逆にPGを添加することにより、IL−10の産生は用量依存的に促進された(図1参照)。B:PGおよびCSは加熱死菌刺激によるTLRの遺伝子発現を抑制した。 TLR2は細菌のペプチドグリカンやリポタンパク質の認識に関与しており、TLR4はグラム陰性細菌のリポ多糖(LPS)認識に関与していることが明らかとなっている。HKLMを用いた刺激により増加するTLR2の遺伝子発現はPG、C4S、C6Sの添加により用量依存的に抑制された。同様に、HKECにより増加するTLR4の遺伝子発現はPG、C4S、C6Sの添加により用量依存的に抑制された(図2参照)。C:PGおよびCSはiNOSの遺伝子発現を抑制した。 TNF−αはマクロファージを活性化し、細胞内に侵入した細菌の殺菌に重要なNO産生に関わるiNOSを誘導する。HKLMまたはHKECを用いた刺激は培養細胞にiNOSの遺伝子発現の増加を誘導したが、PG、C4S、C6Sの添加によりその誘導は用量依存的に抑制された。この抑制効果はHKLMとHKECのいずれを用いた刺激の場合でもPGを添加した場合が最も強かった(図3参照)。D:PGはSTAT−3の遺伝子発現を促進した。 IL−10はSTAT−3の誘導に関与している。C4SまたはC6Sを培養上清中に添加した場合にはSTAT−3の遺伝子発現に変化は認められなかった。一方、PGを添加した場合、HKLMとHKECのいずれを用いた刺激の場合でも用量依存的にSTAT−3の遺伝子発現の促進が認められた(図4参照)。(考察) 生体内で炎症が起こる際、TNF−α、IL−1β、IL−8などの様々なサイトカインが誘導される。近年、グルコサミノグリカンまたはその分解産物が炎症の際のこれらのサイトカインの発現調節に関与することが報告されている。例えば、ヘパリンはマウスマクロファージからのTNF−αの産生を抑制することが報告されている。また、ヘパラン硫酸は腸管上皮細胞からのIL−1βおよびIL−8の産生を抑制することが報告されている。逆に、低分子ヒアルロン酸がNF(nuclear factor)−κBの活性化を誘導することも明らかとなっており、分子量によってグルコサミノグリカンの作用に差異があると考えられている。 細菌が生体内に侵入すると、TNF−αやIFN−γなどのサイトカインが誘導され、感染防御に働く。NK(natural killer)細胞から産生されるIFN−γがマクロファージを活性化し、活性化されたマクロファージはTNF−αを産生し、さらにTNF−αがマクロファージに取り込まれた細菌の殺菌を促進する。IL−10は抗炎症性サイトカインとして知られており、TNF−α、IL−1β、IL−6などの産生を抑制する。また、IL−10はLMなどの細胞内寄生菌が増殖するために必要とされているとも考えられている。今回我々が得た結果から、PGが加熱死菌により誘導されたTNF−αの産生を抑制し、逆にIL−10の産生を促進することが示された(図1参照)。また、TNF−αによって誘導されるiNOSの遺伝子発現はPG、C4S、C6Sの添加によって抑制され(図3参照)、IL−10によって誘導されるSTAT−3の遺伝子発現はPGの添加によって促進された(図4参照)。このことから、PGにはIL−10の産生を促進させる効果が存在することにより、細菌感染防御に対する抑制作用があることが示唆された。 様々な菌体成分がTLRによって認識されることが明らかになっている。TLRリガンドの刺激に対し、MyD88(myeloid differentiation factor 88)、TIR(Toll/IL−1 receptor)、TRIF(domain−containing adaptor inducing interferon β)などのアダプター分子を介してシグナルが伝達されることで、NF−κBやAP−1(Activator Protein−1)などの炎症性サイトカインの遺伝子発現を制御する転写因子が活性化される。今回我々が得た結果では、HKLMを用いた刺激によりマクロファージにおけるTLR2の遺伝子発現が促進され、また、HKECを用いた刺激によりTLR4の遺伝子発現が促進された(図2参照)。これらの遺伝子の発現促進は、それぞれLMの菌体成分がTLR2に認識され、また、ECのLPSがTLR4に認識された結果である可能性が考えられる。しかしながら、これらの遺伝子の発現は、PG、C4S、C6Sを培養細胞に添加することによって抑制された(図2参照)。このことから、PGには細菌感染によるTLRの遺伝子発現を抑制する効果があることが示唆された。 以上の結果より、PGは菌体成分による刺激に対するTNF−αの産生を抑制し、IL−10の産生を促進する効果があることが示された。この効果はC4SやC6Sに比較して強く、菌体刺激によるTLRの遺伝子発現の抑制が関与していることが示唆された。これらの結果はPGが炎症性疾患の予防治療に有用であることを示すものである。実験2:(実験方法) C57BL/6マウスより無菌的に脾細胞を調製し、10%ウシ胎児血清添加RPMI1640培地で2×106/mlとし、大腸菌由来リポ多糖を10mg/mlになるように添加し、同時に種々の濃度のPGを共存させ、48時間培養を行った後、培養上清に含まれるIFN−γの量をELISA法にて測定した。(実験結果) 結果を図5に示す。図5から明らかなように、PGはIFN−γの産生を用量依存的に抑制した。この結果もPGが炎症性疾患の予防治療に有用であることを示すものである。なお、データは示さないが、C4SとC6Sについて同様の実験を行ったところ、C4SとC6SにはIFN−γの産生を抑制する作用は認められなかった。製剤例1:錠剤 1錠当たり5mgのプロテオグリカンを含む以下の成分組成からなる200mg錠剤を、各成分をよく混合してから打錠することで製造した。 プロテオグリカン 5mg 乳糖 137〃 でんぷん 45〃 カルボキシメチルセルロース 10〃 タルク 2〃 ステアリン酸マグネシウム 1〃 合計200mg/錠製剤例2:カプセル剤 1カプセル当たり20mgのプロテオグリカンを含む以下の成分組成からなる100mgカプセル剤を、各成分をよく混合してからカプセルに充填することで製造した。 プロテオグリカン 20mg 乳糖 53〃 でんぷん 25〃 ステアリン酸マグネシウム 2〃 合計100mg/カプセル 本発明は、プロテオグリカンの新規医薬用途を提供することができる点において、産業上の利用可能性を有する。プロテオグリカンが加熱死菌刺激によるマクロファージからのTNF−αの産生を抑制し、逆にIL−10の産生を促進することを示すグラフである。プロテオグリカンおよびコンドロイチン硫酸が加熱死菌刺激によるTLRの遺伝子発現を抑制することを示すグラフである。プロテオグリカンおよびコンドロイチン硫酸がiNOSの遺伝子発現を抑制することを示すグラフである。プロテオグリカンがSTAT−3の遺伝子発現を促進することを示すグラフである。プロテオグリカンがIFN−γの産生を抑制することを示すグラフである。 プロテオグリカンを有効成分とすることを特徴とするTNF−α産生抑制剤。 プロテオグリカンを有効成分とすることを特徴とするIFN−γ産生抑制剤。 プロテオグリカンを有効成分とすることを特徴とするIL−10産生促進剤。 プロテオグリカンを有効成分とすることを特徴とするTLR2および/またはTLR4遺伝子発現抑制剤。 プロテオグリカンを有効成分とすることを特徴とするiNOS遺伝子発現抑制剤。 プロテオグリカンを有効成分とすることを特徴とするSTAT−3遺伝子発現促進剤。 【課題】 プロテオグリカンの新規医薬用途を提供すること。【解決手段】 本発明によれば、プロテオグリカンの新規医薬用途としてTNF−α産生抑制剤、IFN−γ産生抑制剤、IL−10産生促進剤、TLR2および/またはTLR4発現抑制剤、iNOS発現抑制剤、STAT−3発現促進剤が提供される。【選択図】 図1