生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_細胞培養液および細胞培養方法
出願番号:2005322444
年次:2007
IPC分類:C12N 5/06


特許情報キャッシュ

近藤 哲司 石井 健太郎 JP 2007124982 公開特許公報(A) 20070524 2005322444 20051107 細胞培養液および細胞培養方法 東レ株式会社 000003159 近藤 哲司 石井 健太郎 C12N 5/06 20060101AFI20070420BHJP JPC12N5/00 E 12 OL 13 4B065 4B065AA90X 4B065BC31 4B065BC42 4B065BD40 4B065CA44 本発明は、さまざまな細胞の培養に使用することができる細胞培養液およびその細胞培養液を使用した細胞培養方法に関するものである。 疾病により機能不全になった臓器や組織の再生あるいは白血病や固形癌などの治療を目的として、生体外で細胞を培養して組織を再建しあるいは細胞に機能を付加し、これを患者の生体内に移植して治療を行う再生医療や細胞医療の研究が近年進められており、ここにおいて、様々な種類の細胞を培養する技術が求められている。 細胞を培養するためには一般的に、シャーレやフラスコなどの平面状の細胞培養基材あるいは高密度の細胞培養を行うために中空糸やスポンジなどの多孔性の三次元状細胞培養基材を用いた培養が行われている。しかしながら、ある種の細胞においては、疎水性の細胞培養基材表面に対して、細胞増殖因子などの細胞培養に必須なタンパク質の物理吸着や細胞自体の接着が問題となり、細胞の増殖性や機能発現に影響を受けることが問題となることがある。特に、比表面積の大きい多孔性の三次元状細胞培養基材を用いて細胞培養を行う場合、このような問題が顕著に起こる傾向がある。 従来、このように細胞培養基材表面の疎水性が原因として起こるタンパク質の物理吸着や細胞の接着の問題に対して、一般的には、細胞培養基材表面を親水性化することによる対応が行なわれている。具体的には、細胞培養基材にプラズマ処理やコロナ放電処理を施しあるいは水に対して親和性のある親水性物質を被覆処理することにより、このような疎水性表面における吸着性を原因とする問題を回避する方法が提案されている(特許文献1〜3参照。)。しかしながら、このような被覆処理には、細胞培養基材の種類に応じて個別に処理条件の検討を行う必要があり、特に、上記したような多孔性の三次元状細胞培養基材では、完全に均一な被覆処理を行うことが難しく、また長時間の培養において一度被覆した親水性物質が剥落してしまうという問題があった。 また一方では、血清を添加した細胞培養液を用いて細胞を培養すると、血清中のタンパク質が疎水性の細胞培養基材表面に物理吸着されることにより、上記したような細胞培養基材表面の疎水性に起因する問題が回避できると言われているが、その効果は不明である。また、このようなタンパク質を使用すると、細胞培養液の温度やpH、細胞培養基材の表面の性質など様々な条件により、タンパク質の構造変化や変性などの影響を受けやすく効果がばらつくため、好ましくないとされている。 また、患者に細胞を移植して治療を行う再生医療や細胞医療において、血清を添加した細胞培養液を用いて細胞を培養すると、血清に含まれる様々な因子が細胞を移植する際に患者体内に混入する恐れがあり、これにより感染症などのリスクが向上する。このため、血清のような生体由来の未精製物資を細胞培養液に添加することは好ましくないとされている。特表2001−502959号公報特開2004−290111号公報特開2004−018504号公報 本発明の目的は、上記従来技術の欠点を解消せんとするものであり、免疫系細胞や幹細胞の培養のような従来の培養方法では細胞培養基材表面の疎水性相互作用に起因するタンパク質の吸着現象や細胞の接着が障害となり、効率よく培養できなかった細胞の培養を簡便に改善することができる細胞培養液およびその細胞培養液を使用した細胞培養方法を提供することにある。 本発明の他の目的は、特に、細胞培養用の基材を使用し、基材として多孔性で三次元状の細胞培養用基材を使用する場合に、被覆処理などの条件検討が必要性とされず、また、煩雑な処理を行う必要がない細胞培養方法を提供することにある。 本発明の細胞培養液と細胞培養方法は、上記課題を解決するために、以下に示される構成を有するものである。(1)水溶性の合成ポリマーを添加してなる細胞培養液。(2)水溶性の合成ポリマーが、水に対して親和性のある官能基を有する合成ポリマーである前記(1)に記載の細胞培養液。(3)水に対して親和性のある官能基を有するユニットが、水溶性の合成ポリマー鎖中に50以上含まれている前記(2)に記載の細胞培養液。(4)水に対して親和性のある官能基が、水酸基および/またはエーテル基であることを特徴とする前記(2)または(3)に記載の細胞培養液。(5)水溶性の合成ポリマーが、非イオン性である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の細胞培養液。(6)水溶性の合成ポリマーが、ポリアルキレングリコールである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の細胞培養液。(7)水溶性の合成ポリマーが、ポリビニルアルコールである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の細胞培養液。(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の細胞培養液を使用する細胞培養方法。(9)細胞培養用基材として多孔性基材を使用する前記(8)記載の細胞培養方法。(10)多孔性基材が中空糸状の多孔性基材である前記(9)記載の細胞培養方法。(11)細胞増殖因子、接着因子またはサイトカインに依存的に機能発現する細胞の培養に使用される前記(8)〜(10)のいずれかに記載の細胞培養方法。(12)細胞塊を形成する細胞の培養に使用される前記(8)〜(10)のいずれかに記載の細胞培養方法。 本発明によれば、水溶性の合成ポリマーが添加された細胞培養液を使用することにより、煩雑な条件検討や処理を行うことなく、好適には多孔性の三次元状細胞培養基材上で免疫系細胞や幹細胞などの再生医療や細胞医療で使用される細胞を効率良く培養することができる。また、本発明によれば、生体由来の未精製物質を使用することがないため保存安定性が高く、また、培養細胞に感染源となる因子が混入する心配がないため、培養細胞をそのまま治療に使用する細胞として使用することができる。 本発明の細胞培養液は、水溶性の合成ポリマーを添加してなる細胞培養液である。この細胞培養液を細胞培養基材と接触させて細胞を培養する場合に使用すれば、細胞培養液に添加した水溶性の合成ポリマーが細胞培養基材表面に物理的に吸着されることにより、細胞培養液中に含まれる細胞増殖因子、接着因子およびサイトカインなどのタンパク質が細胞培養基材表面に物理的に吸着されることを抑制することが可能であり、また、培養する細胞自体の細胞培養基材表面への接着も抑制し、細胞が接着したとしても、ピペッティング、洗浄およびすすぎなどの操作で容易に細胞を脱着することが可能となる。 この際、細胞培養液中に添加された水溶性の合成ポリマーが、細胞培養液中に常に一定量存在していることにより、細胞培養基材表面に一度吸着した水溶性の合成ポリマーが細胞培養基材から解離したとしても、すぐに細胞培養液中に存在する水溶性の合成ポリマーの吸着が起きるため、吸着と解離が常に繰り返されるような状態となる。このため、水溶性の合成ポリマーが常に細胞培養基材表面を被覆したような平衡状態を保つことができるため、疎水性相互作用に起因する吸着現象を阻害する効果を常に保つことが可能となる。ここでいう吸着とは、水との親和性が低いために起きる疎水性相互作用により物質と物質が物理的に結合している状態を指している。 上記のような目的のため、例えば、アルブミン、グロブリンおよびフィブリノーゲンなどの生体由来のポリマーが使用されることがあるが、これら生体由来のポリマーは細胞培養に使用している途中で分解され機能が低下する恐れがある。このためポリマーは、酵素や細胞や微生物によって分解あるいは吸収され難いポリマーであることが必要である。本発明で使用される水溶性のポリマーは、タンパク質や核酸や糖などの生体由来の物質ではなく、有機化学的な手法でモノマーを重合した合成ポリマーである。 生体由来の物質は、細胞培養液中の酵素、細胞および微生物などにより分解や吸収を受けやすいため、長期の保存安定性が低いが、本発明で用いられる水溶性の合成ポリマーは、細胞培養液中に添加しても分解および吸収されにくく、長期間にわたっての保存安定性が高い。また、合成ポリマーは、高温での高圧蒸気滅菌処理やガンマ線、電子線および紫外線などの放射線処理などさまざまな過酷な処理に対しても比較的高い安定性を有す。また、合成ポリマーは、生体由来の物質のように不純物および感染性の因子を含有している可能性がないため、培養した細胞に対するこのような危険因子の汚染や混入の可能性が低く、細胞培養用として好ましく使用することができる。 細胞培養液は、細胞を増殖および/または発育させるために供せられる栄養素および/または液体の混合物を指し、栄養素としてアミノ酸、ビタミン、無機塩および糖などが含まれている。このような細胞培養液としては、例えば、Minimum Essential Medium(MEM、ミニマム基礎培地)、Basal Medium Eagle(BME、イーグル基礎培地)、Media 199(199培地)、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D-MEM、ダルベッコ変法イーグル培地)、α−Minimum Essential Medium(α-MEM、アルファミニマム基礎培地)、F-10 Nutrient Mixture(Ham’s F-10、ハムエフ10培地)、F-10 Nutrient Mixture(Ham’s F-12、ハムエフ12培地)、RPMI1640(アールピーエミアイ1640)、L-15(エル15)、Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM、イスコブス変法ダルベッコ培地)、ES medium(イーエス培地)、MCDB 131 Medium(エムシーディービー131培地)、CMRL 1066 Meida(シーエムアールエル1066培地)、DM-160 Medium(ディーエム160培地)、Fisher Medium(フィッシャー培地)、StemSpan Medium(ステムスパン培地)、StemPro Medium(ステムプロ培地)、Hybridoma Serum Free Medium(ハイブリドーマ無血清培地)と呼ばれる市販の細胞培養液、あるいはリン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン−塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、ハンクス緩衝液などの各種緩衝液およびよびこれらの混合物を用いることができるが、培養の目的とする細胞に最適な細胞培養液を使用すれば良く、これらに限定されない。 また、細胞培養液には、ウシ血清、ウシ胎児血清、ウマ血清、ヒト血清などの血清および血漿成分が含まれていても含まれていなくても良いが、含まれていない場合に本発明の細胞培養液はより大きな効果が期待できる。また、細胞培養液には、サイトカインや増殖因子および分化因子などの細胞の増殖や分化に係わる機能発現を促進する精製されたタンパク質を添加しても良い。 上記のような目的から、本発明で用いられる水溶性の合成ポリマーは、すなわち水に対して1ppm以上の溶解性がある合成ポリマーであれば良いが、さらに疎水性相互作用に起因する吸着現象を阻害できる性状を有することが好ましい。このような性状を有するため、主鎖および/または側鎖に水に対する親和性のある官能基を有していることが好ましい。このような官能基を有することにより合成ポリマー鎖に対して細胞培養液中で水和現象が起き、疎水性相互作用に起因する吸着現象を阻害することが可能となる。 このような水に対する親和性のある官能基として水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エーテル基、アミド基、エステル基、ピリジン基、ピロリドン基、イミダゾール基、4級アンモニウム基、イミノ基、イミド基、メルカプト基、カルボニル基、シアノ基、メトキシ基などの水和基および極性基を含んでいることが好ましいが、細胞培養液中の他の物質と反応しないために、非反応性の官能基であることが好ましい。 このような主鎖および/または側鎖に水に対する親和性のある官能基を有する水溶性の合成ポリマーとして、例えば具体的には、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、セルロース、デキストラン、キチン、キトサン、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリオキシアルキレンメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジアルキルアミノアルキルデキストラン、ポリヒスチジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン及びこれらの誘導体の構造を構造の全部あるいは一部に含むような合成ポリマーや界面活性剤あるいはホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリンイノシトール、ホスファチジルコリンエタノールアミン、スフィンゴミエリン、およびレシチンあるいは2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合物などのリン脂質やコレステロール構造を構造の一部または全部に含む合成ポリマーが挙げられる。 特に、水に対する親和性を十分に確保して含水性が高く、ポリマー鎖の分子運動により疎水性相互作用に起因する吸着現象を阻害するために、水に対する親和性のある官能基を有するユニットが、合成ポリマー鎖中に好ましくは50ユニット以上であり、より好ましくは100ユニット以上含まれていることが望ましい。水に対する親和性のある官能基を有するユニットが50ユニット未満では水に対する親和性が十分に得られなく、また、水溶液中でのポリマー鎖の運動が限定されるため、疎水性相互作用に起因する吸着現象を阻害することが難しくなる。ここで言うユニットとは、例えば、ポリマーに対するモノマーに対応するような最小単位の構成構造を指し、すべてが同じ種類のユニットであっても良いし、同じ種類のユニットでなくても良い。このようなユニットとしては、具体的には、例えば、アルキレングリコール、ビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等が挙げられる。 また、これら水溶性の合成ポリマーは、官能基としてカルボキシル基やスルホン酸基などのアニオン性官能基を有する合成ポリマー(例えば、ポリアクリル酸など)や、イミノ基やアミノ基などのカチオン性の官能基を有する合成ポリマー(例えば、ポリエチレンイミンやポリリジンなど)のようなイオン性の合成ポリマーと、このようなイオン性の官能基を持たない、あるいはカチオン性官能基とアニオン性官能基の電荷バランスがつりあった非イオン性の合成ポリマーに分類することができるが、本発明においては、イオン性の合成ポリマーは、細胞に対する接着性など細胞のさまざまな機能に影響を与えることが懸念されるため、非イオン性の合成ポリマーを用いることが好ましい。 以上のような観点から、本発明で用いられる水溶性の合成ポリマーとしては、極性かつ非イオン性の官能基である水酸基および/またはエーテル基を官能基として含む合成ポリマーであることが好ましく、その中でも特に、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコール構造を主鎖や側鎖の一部または全部に含むような合成ポリマー、あるいはポリビニルアルコールやポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)のように側鎖に水酸基を持つポリマー構造を主鎖や側鎖の一部または全部に含むような合成ポリマーが好ましい。中でも、入手の容易さや水に対する溶解性の点からポリアルキレングリコールあるいはポリビニルアルコールを使用することがより好ましい態様であり、ポリアルキレングリコール中のアルキレンの炭素数としては1以上5以下が好ましく、より好ましくは2または3である。 また、上記した水溶性の合成ポリマーの分子量は、合成ポリマーの吸着性と水に対する溶解性の観点から、好ましくは100〜5000000であり、より好ましくは1000〜500000であり、さらに好ましくは3000〜100000である。分子量が100未満であると、細胞培養基材表面に対する合成ポリマーの吸着性が低下する傾向があり、また、分子量が5000000を超えると、水に対する溶解性が低下する。また、ポリビニルアルコールについては、そのケン化率が細胞培養基材に対する吸着性および細胞培養に対する効果に与える影響が高い。このため、ケン化率は80%〜98%であることが好ましく、より好ましくは85%〜95%である。ケン化率が98%を超えると、ポリビニルアルコール自体の細胞培養基材に対する吸着性が悪くなり効果が損なわれることがあり、また、ケン化率が80%未満では、ポリビニルアルコールが細胞培養基材に吸着したとしても、それによる細胞培養液中のタンパク質の吸着抑制効果や培養細胞に対する接着抑制という期待される効果が得られにくくなる。 また、本発明で使用される水溶性の合成ポリマーは、水溶性が確保できればその中に疎水性領域を含んでいても良い。疎水性領域とは水との親和性が低い領域を指し、このような疎水性領域が合成ポリマー中に存在することにより、その領域がアンカーのような役割を担い、合成ポリマーが細胞培養基材に吸着しやすくなる。このような疎水性領域の構造として、アルキル基、フェニル基、ナフタレン基、フッ素基などの無極性および疎水性の官能基を主鎖や側鎖に持つ構造が挙げられる。具体的には、ポリアルキル、フッ素化ポリアルキル、ポリスチレン、ポリフェニレン、ポリロイシン、ポリイソロイシン、ポリフェニルアラニン、ポリプロリン、ポリトリプトファン、ポリチロシン、ポリバリン、アルキルシリルなどの構造が挙げられるが、これらの構造に限定されない。また、これらの構造は、水溶性の合成ポリマー構造の末端部に存在しても中央部に存在していてもどちらでも良い。 また、上記のような水溶性の合成ポリマーの細胞培養液に対する添加濃度は、1〜1000ppであることが好ましく、より好ましくは5〜500ppmであり、さらに好ましくは10〜250ppmである。添加濃度が1ppm未満では、細胞培養基材表面に水溶性の合成ポリマーが十分量吸着することができずに、タンパク質の吸着抑制や細胞接着抑制などの効果が低下してしまう恐れがある。逆に、添加濃度が1000ppmを超えると、培養細胞に対する毒性や細胞機能に対する影響が懸念される。また、水溶性の合成ポリマーは、細胞培養液中において、吸着抑制したいタンパク質の濃度以上に添加されていることが好ましい。 水溶性の合成ポリマーを添加した本発明の細胞培養液を用いることにより、様々な細胞を培養することができる。培養に供される細胞としては、例えば、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系肝細胞、中胚葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、胚性幹細胞等の幹細胞や、幹細胞を目的の細胞に分化させた細胞、あるいは免疫系細胞、血球系細胞、神経細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、角化細胞、角膜細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、表皮細胞、肝細胞、膵β細胞、心筋細胞、骨髄細胞、羊膜細胞、臍帯血細胞などの生体由来の細胞、あるいはNIH3T3(エヌアイエイチスリーティースリー)細胞、3T3−L1(スリーティースリーエルワン)細胞、3T3−E1(スリーティースリーイーワン)細胞、Hela(ヒーラ)細胞、PC−12(ピーシーツェルブ)細胞、P19(ピーナインティーン)細胞、CHO(チャイニーズハムスター卵母)細胞、COS(シーオーエス)細胞、HEK(エッチイーケー)細胞、Hep−G2(ヘップジーツー)細胞、L929(エルナインツーナイン)細胞、C2C12(シーツーシーツェルブ)細胞、Daudi(ダウディ)細胞、Jurkat(ジャーカット)細胞、KG−1a(ケージーワンエー)細胞、CTLL−2(シーティーエルエルツー)細胞、NS−1(エヌエスワン)細胞、MOLT−4(エムオーエルティーフォー)細胞、HUT78(エッチユーティーセブンティエイト)細胞、MT−4(エムティーフォー)細胞などの株化細胞、あるいは抗体産生細胞である各種ハイブリドーマ細胞株、あるいはこれら細胞を遺伝子工学的に改変した細胞などが挙げられる。 特に、水溶性の合成ポリマーを添加した本発明の細胞培養液による効果のひとつが、サイトカインや増殖因子および接着因子などのタンパク質の細胞培養基材に対する吸着の抑制にあることから、細胞増殖因子やサイトカインに依存的、すなわち細胞増殖因子やサイトカインが細胞表面のレセプターと相互作用して増殖や分化という機能発現を行う細胞に対して好適に用いることができる。すなわち、細胞増殖因子やサイトカインが細胞培養基材に吸着してしまうと、細胞表面のレセプターに供給されないため、細胞の遺伝子発現に伴う機能発現が阻害されてしまう。 ここでいう細胞増殖因子は、各種の細胞が分泌し、それ自身や他の細胞の分裂や発達、分化を促すタンパク質を指し、サイトカインは、生体内の組織の細胞が産生して細胞間の相互作用に関与する生理活性因子を指し、接着因子は、細胞の接着に係わる因子を指している。このような細胞増殖因子やサイトカインに依存的に増殖し分化するという機能発現を行う細胞としては、免疫系細胞や血球系細胞などが挙げられ、具体的には、例えば、Tリンパ細胞、Bリンパ細胞、NK細胞、樹状細胞、NKT細胞等、造血幹細胞、好塩基球、好酸球、巨核球、肥満細胞、単球、マクロファージ、神経幹細胞、神経細胞、血管細胞、肝細胞および胚性幹細胞等が挙げられる。 また、水溶性の合成ポリマーを添加した本発明の細胞培養液による効果のひとつが、培養細胞の細胞培養基材表面に対する接着の抑制にあることから、本発明の細胞培養液は液浮遊系細胞の培養に対して好適に用いることができ、さらに、接着を引き金として分化などの望まれない機能の発現が誘導されてしまうような細胞、あるいは細胞が集合した凝集体を形成し、直径50〜500μmの球状の細胞塊を形成して増殖あるいは機能発現する細胞の培養に対して好ましく用いることができる。ここでいう球状とは、完全な球状でなくても良く、ある程度楕円球状や扁平状になっていたり、表面に凹凸があったりしてもよい。上記のような細胞として、神経幹細胞や間葉系幹細胞、造血幹細胞、胚性幹細胞などの幹細胞や血球系細胞、肝細胞、膵β細胞、心筋細胞、グリア細胞、上皮細胞、繊維芽細胞、軟骨細胞および骨細胞等が挙げられ、これらの細胞に対して、本発明で用いられる水溶性の合成ポリマーが添加された細胞培養液を好ましく用いることができる。 水溶性の合成ポリマーを添加した本発明の細胞培養液を使用することにより細胞培養基材への吸着を抑制することができるタンパク質としては、例えば、サイトカインとして、インターロイキン-1α、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-6 、インターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターロイキン-12、インターロイキン-13、インターロイキン-14、インターロイキン-15、インターロイキン-16、インターロイキン-17、インターロイキン-18、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、顆粒球刺激因子(G−CSF、)顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、MCP−1、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、Flk−2/Flt−3リガンド(FL)などが挙げられる。 また、細胞増殖因子および細胞分化因子としては、例えば、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、オステオネクチン、アンジオポイエチン、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、神経成長因子(NGF)、白血病阻害因子(LIF)、幹細胞増殖因子(SCF)、骨形成タンパク質(BMP)インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、ノッチリガンド(デルタ1(Delta−1)、デルタ3(Delta−3)、デルタ4(Delta−4)、ジャッジド1(Jagged−1)、ジャッジド2(Jagged−2))等が挙げられる。また、細胞接着因子としては、例えば、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、カテニンやカドヘリン等のカドヘリンファミリー、I−CAMなどのIgスーパーファミリー、セレクチンファミリー、シアロムチンファミリーなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記のタンパク質は、細胞培養液中に添加したものでも、細胞から分泌されたものでも、いずれのタンパク質に対しても有効である。 水溶性の合成ポリマーを添加した本発明の細胞培養液は、細胞培養基材と接触させて細胞を培養する細胞培養方法に好適に用いることができる。このような細胞培養基材としては、例えば、フラスコ、シャーレ、ウェル、プレート、多穴ウェル、多穴プレート、スライド、フィルム、シート、ディスク、バック、カラム、タンクおよびボトルなどの細胞培養基材面として平面状のものや、中空糸、不織布、スポンジ、紙、編み地、繊維状および粒子状などの細胞培養基材面として、三次元状のものを使用することができる。 細胞培養基材の材質としては、例えば、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、合成ゴム、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、再生セルロース、酢酸セルロース、ABS、ポリメチルペンテン、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリフェニレンエーテル、ポリ(4−メチルテンペン)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)などのプラスチック、セルロース、キチンおよびキトサンなどの有機系物質や、ガラス、セラミクス、ハイドキシルアパタイト、チタン、シリカ、シリコーンおよびカーボンなどの無機系物質や金属を使用することができる。 細胞培養基材としては、多孔性の三次元状の細胞培養基材が好ましく用いられる。ここでいう孔とは径が1nm以上の孔を指し、多孔性とは基材の表面あるいは基材を貫通する孔が多数存在することを意味し、多孔性の細胞培養基材を用いることにより、孔径が1nm〜10nm程度であればタンパク質の透析効果が期待でき、10nm〜0.2μm程度であればウィルスや特定分子量のタンパク質を除去する限外濾過としての効果が期待でき、0.1μm〜1μmで程度であれば菌体の除去フィルターとしての効果が期待できる。また、孔径が5μm以上であれば孔内に細胞が入り込むことが可能となるため、細胞を高密度で培養することが可能となる。以上のような効果が発現するような多孔性の細胞培養基材として、孔の数は用途に応じて様々な数に調整して良いが、孔が存在することにより細胞培養基材の比表面積が1.2倍以上になれば効果が発現される。 また、中空糸、すなわち芯が中空になっている糸状の多孔性細胞培養基材を使用すれば、広い膜面積を有する中空糸の膜面の孔を介して圧力損失無く栄養物質や老廃物の物質交換を行うことにより、細胞を効率よく培養することができる。 このような中空糸を細胞培養基材として用いた細胞培養は、例えば、下記のような方法で行うことができる。すなわち、ポリスルホン(テイジンアモコ社製”ユーデル”(登録商標)P−3500)18部とポリビニルピロリドン(BASF社製”K30”(登録商標))9部を、N,N−ジメチルアセトアミド72部および水1部からなる溶液に加え、90℃の温度で14時間加熱溶解する。この製膜原液を、外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金から吐出し、芯液としてジメチルアセトアミド58部および水42部からなる溶液を吐出させ、乾式長350mmを通過させた後、水100%の凝固浴に導き、中空糸を得ることができる(膜面の孔径6−8nm)。このようにして得られた中空糸を、直径2.5cm、長さ14cmの円筒状のポリカーボネート製モジュールケース内に20本充填した後、中空糸の中空部を閉塞しないようにポリウレタン系ポッティング剤で両末端をモジュールケースに固定して、細胞培養用モジュールを作製する。モジュールケース内の中空糸外腔側に細胞を播種し、さらに中空糸内腔面につながる両末端を回路につなぎ込み、水溶性の合成ポリマーを添加した本発明の細胞培養液を温度37℃に調整しながら、中空糸内腔側に循環しながら培養を行う。これにより、細胞の接着を抑制し、さらに細胞の存在する外腔側と細胞培養液が循環する内腔側とで効率よく栄養物質と老廃物を細胞培養機材に吸着させることなく物質交換することができるため、効率良く細胞を培養することができる。 このような多孔性の細胞培養基材を用いる場合、細胞培養基材自体の比表面積が大きいために、細胞培養基材表面へのタンパク質の吸着や培養細胞自体の細胞培養基材への接着が培養を行う上で特に問題となることが多いが、このような多孔性の三次元状細胞培養基材に対しては、従来の親水性物質の被覆処理では被覆条件の設定が難しく、また完全に被覆することは難しい。また、被覆できたとしても長期間の培養に対する耐久性が問題となることがある。しかしながら、水溶性の合成ポリマーを添加した本発明の細胞培養液を用いることにより、細胞培養中に細胞培養液が細胞培養基材の孔を通過し、添加した水溶性の合成ポリマーが細胞培養基材表面に絶えず供給されるため、細胞培養基材表面を細胞培養に最適な状態に保つことが可能である。また、方法としても非常に単純であり、特に比表面積の大きくなる中空糸を用いた細胞培養を行う際には、コーティング手段を検討する必要もなく、非常に有効である。 本発明の細胞培養液および細胞培養方法を用いて、疾病や疾患に対して有効な細胞を培養することにより、再生医療や細胞医療に使用する細胞製剤を製造することも可能である。細胞製剤とは、組織や細胞を加工した医薬品や医療用具を指し、また、細胞製剤の製造とは、細胞の分離、細胞の増殖、細胞への刺激、細胞への分化誘導および細胞のアポトーシス誘導など細胞を細胞製剤として疾病や疾患に対して有効な形態に加工するためのあらゆる工程を含んでいる。 細胞製剤を製造するには、まず、細胞群の供給源となる組織や体液などを採取する必要がある。これら細胞群の供給源は、ヒト由来の供給源が好ましいが、本発明ではこれに限定されない。また、幹細胞や免疫細胞を含む細胞群が供給源として好ましく、このような細胞群の供給源として、例えば、臍帯血、骨髄液、羊膜組織、胎盤組織、生殖巣、胎児組織、末梢血およびG−CSF動員末梢血などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。供給源として特に体液などを使用するときは、予め細胞培養前に遠心法、単位重力沈降法および遠心選別法などで細胞培養に余分な成分を排除した均一な細胞群を得ることが一般的である。また、さらに細胞培養前にフローサイトメトリー、磁気ビーズ法およびアフィニティーカラム法など細胞分離の方法を用いて、純度の高い幹細胞やある種の免疫細胞のサブセットにしておくことが好ましい。 このような様々な加工を行った後、本発明の細胞培養液および細胞培養方法を用いて細胞培養を行うことにより、細胞製剤として必要な細胞を効率良く得ることができる。また、本発明の細胞培養液および細胞培養方法で細胞を培養した後に、再度細胞分離を行うことも可能である。そのようなプロセスを採用することにより、幹細胞や免疫細胞を増殖した細胞群から必要な細胞分離し、純度を高めることができるため、細胞製剤の製造方法に好適である。この製造方法により、目的とする有用な幹細胞や免疫細胞を効率よく得ることができ、効果の優れた細胞製剤を製造することができる。さらに、また、細胞分離の後に本発明の細胞培養液および細胞培養方法で再度細胞培養を行い、再び細胞分離を行うということも可能である。 以下、本発明の細胞培養液および細胞培養方法について実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。 (実施例1)サイトカイン依存性細胞の培養1 10%のウシ胎児血清を含むRPMI1640培地に、水溶性の合成ポリマーとしてPVA−1(ポリビニルアルコール、ナカライテスク社製、重合度500、ケン化度86.5〜89%)あるいはPEG20000(ポリエチレングリコール、片山化学工業社製、平均分子量20000)を、それぞれ10ppm、100ppmおよび1000ppmの割合で添加した。これらの細胞培養液に、IL−2に依存的に増殖するセルラインであるCTLL−2を2×104個/mLの濃度で懸濁し、24ウェルプレートを用意して、1mL/ウェルで3ウェルずつ播種した後、すべてのウェルにIL−2を200U/mLで添加して3日間培養し、各ウェルの総細胞数を血球計算盤により計測した。 結果は図1に示すとおりであり、水に対して親和性のある官能基を有するユニットが50以上含まれる水溶性の合成ポリマーであるPVA−1(ユニット数:約500)あるいはPEG20000(ユニット数:約450)を細胞培養液に添加することにより、疎水性相互作用に起因する吸着現象を阻害することができ、細胞の増殖が良くなることが示された。 (比較例1)サイトカイン依存性細胞の培養2 10%のウシ胎児血清を含むRPMI1640培地に、非水溶性の合成ポリマーとして酢酸セルロース(アルドリッチ社製、平均分子量65000)を、それぞれ10ppm、100ppmおよび1000ppmの割合となる量を培地に添加して懸濁した。これら細胞培養液に、IL−2に依存的に増殖するセルラインであるCTLL−2を2×104個/mLの濃度で懸濁し、実施例1と同様の条件で3日間培養し、各ウェルの総細胞数を血球計算盤により計測した。その結果、非水溶性の合成ポリマーでは、細胞の増殖性に影響を与えることはなかった。 (実施例2)神経幹細胞の培養−1 妊娠13日目のラット胎児脳の線状体から採取した神経幹細胞を、1×105個/mLの細胞濃度でDF培地に懸濁し、bFGFを20ng/mLとEGFを20ng/mLの濃度でそれぞれ添加し、さらに、実施例1と同じPVA−1を、それぞれ0ppm、5ppm、25ppmおよび100ppmの割合で添加して、それぞれ直径10cmの浮遊細胞用シャーレに10mL添加して3日間培養した。培養後の位相差顕微鏡による観察により、神経幹細胞の細胞塊の大きさ(平均直径)および接着細胞率を計測したところ、0ppmでは細胞塊平均直径50μmで接着細胞率が40%であり、5ppmでは細胞塊平均直径120μmで接着細胞率が10%であり、25ppmでは細胞塊平均直径150μmで接着細胞率が5%であり、100ppmでは細胞塊平均直径200μmで接着細胞率が0%であり、水溶性の合成ポリマーであるPVAの添加により接着細胞が減少し、細胞塊の形成性が向上されることが示された。 (比較例2)神経幹細胞の培養−2 実施例2と同様に、採取した神経幹細胞を1×105個/mLの細胞濃度でDF培地に懸濁し、bFGFを20ng/mL、EGFを20ng/mLの濃度で添加し、ここに、生体由来ポリマーであるウシ血清アルブミン(シグマアルドリッチ社製)を、それぞれ0ppm、5ppm、25ppmおよび100ppmの割合で添加し、実施例2と同様にそれぞれ直径10cmの浮遊細胞用シャーレに10mL添加して7日間培養した。培養後の位相差顕微鏡により観察すると、全てのシャーレにおいて細胞塊がシャーレ底面に接着し、分化が誘導されていた。 (実施例3)神経幹細胞の中空糸培養 ポリスルホン(テイジンアモコ社製”ユーデル”(登録商標)P−3500)18部およびポリビニルピロリドン(BASF社製”K30”(登録商標))9部を、N,N−ジメチルアセトアミド72部と水1部からなる溶液に加え、90℃の温度で14時間加熱溶解した。この製膜原液を、外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金から吐出し、芯液としてジメチルアセトアミド58部と水42部からなる溶液を吐出させ、乾式長350mmを通過した後、水100%の凝固浴に導き、多孔性の中空糸を得た(膜面の孔径6−8nm)。この中空糸を直径2.5cm、長さ14cmの円筒状のポリカーボネート製モジュールケース内に20本充填した後、中空糸の中空部を閉塞しないようにポリウレタン系ポッティング剤で両末端をモジュールケースに固定して細胞培養用モジュールを作製した。得られた細胞培養用モジュール内中空糸外腔側に、神経幹細胞を1×105個/mLの濃度でDF培地に懸濁して3mL添加した。さらに、中空糸内腔面につながる両末端にシリコーンチューブの循環回路をつなぎ、回路にポンプおよび細胞培養液用のリザーバーを組み込んで、恒温器により細胞培養液を温度37℃に調整しながら、中空糸内腔側に循環して培養を行えるような装置を2つ用意した。細胞培養液として、bFGFを20ng/mLとEGFを20ng/mL添加したDF培地20mLを2つ用意した。一方の細胞培養液に、何も添加せず、もう一方の細胞培養液には実施例1と同じ水溶性の合成ポリマーであるPVA−1を20ppm添加し、それぞれの装置の細胞培養液用のリザーバーに注入して細胞培養液を循環して1週間培養を行い、1週間後の細胞密度および生細胞率をトリパンブルー染色および血球計算盤により計測した。その結果、PVA−1無添加の細胞培養液では細胞密度が1.8×106個/mLとなったが、生細胞率が62%であった。一方、PVA−1を20ppm添加した細胞培養液では、細胞密度は2.7×106個/mLであり、さらに生細胞率が98%と改善されていることが示された。 本発明の細胞培養液は、煩雑な条件検討や処理を行うことなく、好適には多孔性の三次元状培養基材上で免疫系細胞や幹細胞などの再生医療や細胞医療で使用される細胞を効率良く培養することができ、また、生体由来の未精製物質を使用することがないため保存安定性が高く、また、培養細胞に感染源となる因子が混入する心配がないため、培養細胞をそのまま治療に使用する細胞として使用することができ有用である。図1は、実施例1において、総細胞数を血球計算盤により計測した結果を示すグラフである。 水溶性の合成ポリマーを添加してなる細胞培養液。 水溶性の合成ポリマーが、水に対して親和性のある官能基を有する合成ポリマーであることを特徴とする請求項1記載の細胞培養液。 水に対して親和性のある官能基を有するユニットが、水溶性の合成ポリマー鎖中に50以上含まれていることを特徴とする請求項2記載の細胞培養液。 水に対して親和性のある官能基が、水酸基および/またはエーテル基であることを特徴とする請求項2または3記載の細胞培養液。 水溶性の合成ポリマーが、非イオン性の合成ポリマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の細胞培養液。 水溶性の合成ポリマーが、ポリアルキレングリコールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の細胞培養液。 水溶性の合成ポリマーが、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の細胞培養液。 請求項1〜7のいずれかに記載の細胞培養液を使用することを特徴とする細胞培養方法。 細胞培養基材として多孔性基材を使用することを特徴とする請求項8記載の細胞培養方法。 多孔性基材が中空糸状の多孔性基材であることを特徴とする請求項9記載の細胞培養方法。 細胞増殖因子、接着因子またはサイトカインに依存的に機能発現する細胞の培養に使用されることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の細胞培養方法。 細胞塊を形成する細胞の培養に使用されることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の細胞培養方法。 【課題】 免疫系細胞や幹細胞の培養のような従来の培養方法では基材表面の疎水性相互作用に起因するタンパク質の吸着現象や細胞の接着が障害となり、効率よく培養できなかった細胞の培養を簡便に改善することができる細胞培養液と細胞培養方法を提供する。 【解決手段】 水に対して親和性のある官能基を有する水溶性の合成ポリマーを添加してなる細胞培養液であり、水に対して親和性のある官能基は水酸基および/またはエーテル基であり、水に対して親和性のある官能基を有するユニットが水溶性の合成ポリマーの中で50以上含まれている細胞培養液と、その細胞培養液を用いる細胞培養方法。 【選択図】 なし


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