タイトル: | 公開特許公報(A)_FTIRを用いた非侵襲血液検査「光人間ドックシステム」 |
出願番号: | 2005310522 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61B 5/1455,G01N 21/35,G01N 21/27 |
兼子 亘 JP 2007117221 公開特許公報(A) 20070517 2005310522 20051025 FTIRを用いた非侵襲血液検査「光人間ドックシステム」 平戸 浩二 502239564 工藤 一郎 100109553 兼子 亘 A61B 5/1455 20060101AFI20070413BHJP G01N 21/35 20060101ALI20070413BHJP G01N 21/27 20060101ALI20070413BHJP JPA61B5/14 322G01N21/35 ZG01N21/27 C 18 1 OL 20 特許法第30条第1項適用申請有り 外国語で記載されている刊行物に関しては、発行者名、刊行物名、著者名、発行時期の訳文を以下に併記する。 発行者名:IEEE (米国電機電子学会) 刊行物名:Proceedings of the 22th IEEE Instrumentation and Measurement Technology Conference 2005(第22回−計測工学に関する国際会議2005予稿集) 巻・頁数:Vol.22,pp.1433−1437 著者名 :Keiichi Fujita,Kazuto Tamura,Tomotaka Morikawa,Linh Tuong Nguyen,Hiroaki Ishizawa,Eiji Toba(藤田 圭一、田村 一人、兼子 亘、森川 友隆、Linh Tuong Nguyen、石澤 広明、鳥羽 栄治)ISBN(国際標準図書番号):0−7803−8880−1 発行年月日:May 16,2005(平成17年5月16日:発行年月日の記載がないため学会初日とした。) 但し、刊行物は第22回IMTC005の予稿集であり、当該予稿集の内容は、後の平成17年5月16日にカナダのオタワで行われた当該学会において著者の一人である石澤広明により発表された。当該発表は、当該予稿集と密接不可分の関係にある公開のため、審査便覧42.45Aに基づき一の公開として取り扱われる。したがって、学会発表に関する「証明する書面」の提出は省略する。 2G059 4C038 2G059AA01 2G059AA06 2G059BB13 2G059CC16 2G059CC18 2G059EE02 2G059EE12 2G059FF08 2G059HH01 2G059HH06 2G059JJ12 2G059MM01 2G059MM02 2G059MM12 4C038KK10 4C038KL07 4C038KM01 4C038KY04 本発明は、赤外分光法を用いて非侵襲的に血液成分濃度を測定する方法及び装置に関する。 現在、栄養過多、運動不足などにより糖尿病患者数は増加し続けている。II型糖尿病の場合にはインスリン療法を行うことが主となるが、その際に血糖自己測定を行う必要がある。血糖自己測定は、指先や耳朶に傷を付けることにより採血し、グルコース濃度の測定を行っている。しかし、血糖自己測定は、患者の負担が大きく、採血の際に痛みや、感染症の危険性を伴うといった問題がある。 そこで、近年赤外分光法を利用した非侵襲的な血糖測定法が開発されている。特許文献1において、近赤外光の吸収強度から求められた吸光度によりヘモグロビンの絶対量を算出し、算出したヘモグロビンの絶対量を用いて規格化することを特徴とする生体計測装置が公開されている。これによればヘモグロビンの絶対量は、グルコースとは異なる波長域において赤外吸収スペクトルを測定することで算出されている。また、特許文献2において、高浸透圧溶液を使用して血中グルコース濃度を非侵襲的に検出する方法が公開されている。これによれば、高浸透圧溶液としてグリセロールを測定部位に浸透させることによって、皮膚組織のより深くまで検出することができるようになるため、皮膚中の水やコラーゲン等によるバックグラウンド吸光度を下げることができる。特開平10−179557特開2005−43343 しかし、特許文献1の発明は、グルコースの波長とは異なる波長域によって、別途ヘモグロビンの吸光度を測定しなければならず、またヘモグロビン濃度は個人により異なるため被験者毎にヘモグロビン量を測定しなければならない。また特許文献1及び2のどちらにおいても、測定部位の皮膚状態や個体差についての記載はされていなかった。実際、発明者らが実験する上において、測定部位の状態により予想値と測定値の相関にばらつきが見られるという問題があった。 上記課題を解決するために、本発明は、内部標準法を用いた赤外分光法による血液成分濃度の測定方法及び測定装置を提供する。 本発明の血液検査方法は、測定部位に内部標準物質を塗布する内部標準物質塗布ステップと、フーリエ変換型赤外分光光度計を用いて内部標準物質が塗布された測定部位の赤外吸収スペクトルを測定する測定ステップと、内部標準物質の吸収スペクトル域でのスペクトル吸収強度にて規格化、一次微分、二次微分のいずれか一又は二以上を組合せて行い、血液成分の吸収スペクトルから血液成分濃度を算出する算出ステップとからなるものである。また好ましくは、測定部位に付着した汚れなどを除く洗浄ステップと、測定部位をエタノールにて消毒する消毒ステップとを有する血液検査方法を提供する。 また、本発明の血液成分測定装置は、測定部位に内部標準物質を塗布する内部標準物質塗布部と、フーリエ変換型赤外分光光度計を用いて内部標準物質が塗布された測定部位の赤外吸収スペクトルを測定する測定部と、内部標準物質の吸収スペクトル域でのスペクトル吸収強度にて規格化、一次微分、二次微分のいずれか一又は二以上を組合せて行い、血液成分の吸収スペクトルから血液成分濃度を算出する算出部とからなるものである。また好ましくは、算出部は、測定部位の吸収スペクトルを説明変数とし、採取した血液により測定された血液成分濃度を目的変数としてPLS回帰分析を行い、血液成分濃度の予測モデルによって予め作成された検量線により算出する検量線算出手段を有する血液成分測定装置を提供する。さらに好ましくは、測定部は、赤外分光光度計のプリズム上に内部標準物質が塗布された測定部位を圧力印加するための圧力維持手段を有する血液成分測定装置を提供する。 以上のような構成をとる本発明によって、被験者の皮膚表面状態によって影響を受けていた吸光度が内部標準物質によって規格化されるため、個人差の影響を少なくすることができる。この方法を用いて作成されて検量線は、採血により測定した場合の血液成分濃度との誤差が少なくなり、簡易で非侵襲的に血液成分濃度の測定を行うことができる。 以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。なお、実施形態1は、主に請求項1から14、16から18について説明する。実施形態2は、主に請求項15について説明する。≪実施形態1≫<実施形態1の概要> 本実施形態の血液検査装置は、内部標準法により血液成分濃度を非侵襲的に算出することを特徴とする。<実施形態1の構成> 図1に本実施形態での機能ブロックの一例を示した。本実施形態の「血液検査装置」(0100)は、「内部標準物質塗布部」(0101)と、「測定部」(0102)と、「算出部」(0103)を有し、算出部は「検量線算出手段」(0104)をさらに有する。 「内部標準物質塗布部」(0101)は、測定部位(0105)に内部標準物質を塗布するように構成されている。「内部標準物質」とは、内部標準法を行う場合に、基準物質として用いる物質をいい、構造が測定物質と似通っており、かつ測定対象外である分離可能な物質が選択される。「内部標準法」とは、共存する物質の影響を受ける系や検量線が直線とならないような場合に用いられる方法であり、まず内部標準物質を標準試料に添加し、内部標準物質と標準物質の測定強度比と濃度の関係線を作成する。同様に内部標準物質を加えた成分濃度が未知である試料についても測定強度比を求めることにより、定量を行う方法である。 内部標準物質としては、測定する血液成分の赤外吸収ピークに影響を与えない物質であればよく、例えばスクワランオイル、水を用いることができる。「スクワランオイル」は、鮫の肝油から採取された無色透明の液体であり、分子式C30H62、分子量422.826で表される酸化安定性に優れた以下の構造を有する化合物である。スクワランオイルは、ヒトの皮膚に大変浸透しやすいため、個人によって異なる皮膚表面の状態をほぼ一定にすることができる。図2は、ヒトの皮膚の赤外吸収スペクトル(細線)とスクワランオイルの赤外吸収スペクトル(太線)を示している。図2のように、ヒトの皮膚の赤外吸収ピークとスクワランオイルの赤外吸収ピークが異なるため、スクワランオイル特有のピークを内部標準法に用いることができる。また、スクワランオイルは、その構造がヒトの皮脂と似ており、皮膚への浸透性の高さから保湿液等として化粧品等としても用いられている成分であるため、測定後においても測定部位の洗浄等を行わず、皮膚に浸透させるようにすることができる。その他、内部標準物質としては、日本光電から購入したゲルエイド(登録商標)及び安藤製薬から購入したグリセリンを検討したが、共にヒトの皮膚の赤外吸収ピークとの差は見られず、内部標準物質としては不適であった。 また、内部標準物質として水を用いることができる。「水」は、皮膚表面にも存在するが、個人により、また体調や皮膚の状態等によりその含有量は変化する。そのため、元々皮膚表面に存在している水は、内部標準物質として機能しない場合がある。そこで別途、水、好ましくは蒸留水又は純水を塗布し、内部標準物質とする。 測定部位への内部標準物質の塗布方法は、特に限定されない。例えば、測定部位に内部標準物質を直接滴下してもよいし、内部標準物質を含ませた脱脂綿などによって測定部位に塗布する方法でもよい。また図1に示すように、内部標準物質を含ませたスポンジ等の輪(0106)を測定部位がくぐるような構造としてもよい。さらに、赤外吸収スペクトルの測定を行うプリズム上に内部標準物質を滴下しておき、そこへ測定部位を圧力印加する方法としてもよい。 また、測定部位の汚れ等が赤外吸収スペクトルの測定に影響を与えるため、測定部位の洗浄及び消毒を内部標準物質の塗布前に行うことが望ましい。水や石鹸などによる洗浄及びエタノールによる消毒を行うことにより、赤外吸収スペクトル測定の誤差を少なくすることができる。 「測定部位」(0105)は、皮膚表面であり、比較的皮膚の薄い部位がよい。例えば、図1に示すような指先や、耳朶、唇などが挙げられる。測定のしやすさ及び内部標準物質の塗布のしやすさ等から、指先が好ましい。 「測定部」(0102)は、フーリエ変換型赤外分光光度計を用いて内部標準物質が塗布された測定部位の赤外吸収スペクトルを測定するように構成されている。フーリエ変換型赤外分光光度計(Fourier Transform infrared spectrophotometer:FT−IR)は、赤外光照射装置(0107)から照射された赤外領域の光を干渉計により干渉光に変換し、試料に照射する方式である。この出射された光の強度を可動鏡の移動距離の関数として測定し、検出器(0108)で得られたインターフェログラムと呼ばれる干渉波形をフーリエ変換することにより赤外吸収スペクトルの測定を行う。赤外吸収スペクトルの測定は、板型プリズム、光ファイバープローブ、ダイヤモンドプリズムを用いた減光全反射法(Attenuated Total Reflection spectroscopy:ATR法)によって行うことができる。プリズムには、高屈折率物質であるセレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)などを用いることができる。反射回数は、特に限定されず、1回であっても、3回以上であってもよい。図1においては、例としてZnSe(0109)の先端をダイヤモンド(0110)に置き換えた1回反射型のダイヤモンドプリズムATR装置を示している。さらに、検出器(0108)は、MCT(Mercury Cadmium Tellurium)検出器であっても、DLATGS(Deuterated L−Alanine Triglycine Sulphate)検出器であってもよい。 「算出部」(0103)は、内部標準物質の吸収スペクトル域でのスペクトル吸収強度にて規格化、一次微分、二次微分のいずれか一又は二以上を組合せて行い、血液成分の吸収スペクトルから血液成分濃度を算出するように構成されている。「規格化」とは、測定する度に生ずる測定ポイントの微妙な変化などに起因するベースラインの変化などを打ち消すため、特定のものを基準とすることをいう。すなわち、内部標準物質のスペクトル強度を1とすることである。例えば、内部標準物質がスクワランオイルである場合には、スクワランオイル特有の1377cm−1及び/又は1462cm−1の吸収ピークにおいて規格化を行う。また、内部標準物質が水である場合には、水特有の1640cm−1の吸収ピークにおいて規格化を行う。内部標準物質により規格化を行うことによって、測定毎の測定誤差を少なくすることができる。また、「一次微分」を行うことによって、加算的なベースライン変動や波長に依存しない一定のベースライン変動を取り除くことができる。さらに、「二次微分」を行うことによっては、一次微分までのドリフト成分を取り除くことができるため、より吸収ピークを明確にすることができる。規格化、一次微分、二次微分を行った結果を評価し、最適の算出法を選択する。その他、試料の光の散乱やATR測定におけるカーボンブラックの影響を補正するためのベースライン補正、入射光の試料への潜り込みの深さを一定にする補正であるATR補正などの補正をさらに行うことが望ましい。 「血液成分」とは、血液中に存在する液体又は固体の成分をいい、健康状態の検査を行うために、通常血液を採取し測定を行う成分をいう。例えば、アルブミン(Alb)、アルカリ性ホスファターゼ(Al−P)、ビリルビン(Bil)、血液尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cre)、グルタミン酸・オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸・ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)、γ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)、尿素(UA)、乳酸脱水素酵素(LDH)、低比重リポタンパク(LDL)、高比重リポタンパク(HDL)、低比重リポタンパク・コレステロール(LDL―C)、高比重リポタンパク・コレステロール(HDL―C)、中性脂肪(TG)、総タンパク(TP)、血小板(Pt)、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、血色素・ヘモグロビン(Hgb)、ヘマトクリット値(Ht)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、平均赤血球ヘモグロビン容積(MCV)、血中グルコース(Glu)、などが挙げられる。各成分はそれぞれ生体器官の状態などを反映するものであり、該成分の血中濃度等の測定は病気の発見や治療の重要な指標となっている。特に血中グルコース濃度の測定は、糖尿病治療に重要であり、非侵襲的に迅速で正確な測定を行うことができれば、より効率的な治療が可能になる。 「検量線算出手段」(0104)とは、算出部(0103)の有する手段であり、測定部位の吸収スペクトルを説明変数とし、採取した血液により測定された血液成分濃度を目的変数としてPLS回帰分析を行い、血液成分濃度の予測モデルによって予め作成された検量線により未知試料の血液成分濃度を算出するように構成されている。「PLS(Partial Least Square)回帰分析」とは、因子数が多く、強い共線性が見られる場合に、定量分析を行うための一般的な方法の一であり、説明変数と目的変数の両変数に誤差を仮定し回帰式を算出し、分析する方法である。説明変数には、調べたい条件である測定部位の吸収スペクトルが該当し、目的変数には、その結果求めたい値である血液成分濃度が該当する。目的変数である血液成分濃度は、実際に採取した血液を既存の方法によって測定された値を用いる。例えば、血中グルコース濃度の測定を行う場合には、本発明による非侵襲的な測定を行う直前に採血を行った血液を用い、GOD/POD(グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ)法等により測定された血中グルコース濃度が目的変数となる。GOD/POD法は、比色定量法の一つで、GODの作用でブドウ糖が過酸化水素とグルコン酸を生成させ、PODの作用で反応試薬中の色原体と反応しキノン系色素を生成し、これを比色定量することによりグルコース濃度を測定することができる。採血による実際のグルコース濃度測定の方法はGOD/POD法に限られず、既存の方法を用いることができる。PLS回帰分析を行う波数範囲は、測定成分の吸収ピーク及び内部標準物質の吸収ピークを含む範囲に設定されていればよく特に限定されない。例えば、内部標準物質としてスクワランオイルを用いた場合には、スクワランオイル特有の吸収ピークである1377cm−1及び/又は1462cm−1が含まれる波数範囲であればよく、4000cm−1〜700cm−1のように波数範囲を設定する。また、オーバーフィッティングやアンダーフィッティングを避けるため、クロスバリデーションを行い、PLSファクター数の決定を行うことが好ましい。以上のようにPLS回帰分析を行い、得られた血液成分濃度の予測モデルによって検量線を作成する。作成された検量線により未知の試料の血液成分濃度の予測が可能となる。 前記検量線算出手段によって作成された血中グルコース濃度を求める検量線の有効性を評価するためには、エラーグリッドアナリシス(Error Grid Analysis:EGA)法を用いる。EGA法とは、血糖値計が臨床的に有効であるかを示す指標であり、図7(b)のようにx軸に参照値(Reference value)、y軸に実測値(Estimated value)を示している。対角線は参照値と実測値の一致を示しており、対角線の上は過大評価、下は過小評価をしていることを示す。本発明の評価において、参照値はGOD/POD法により測定した血糖値を表し、実測値は本発明の方法により測定した血糖値の予測値を表している。A、Bゾーンに含まれていれば臨床的に適切な治療を行えることを表しており、測定法が有効であることを示している。<実施形態1の処理の流れ> 図3は、本実施形態の処理の流れの一例を示している。まず、測定部位に付着した汚れなどを除き(洗浄ステップ S0301)、測定部位をエタノールにて消毒する(消毒ステップ S0302)。次に測定部位に内部標準物質を塗布し(内部標準物質塗布ステップ S0303)、FT−IRを用いて内部標準物質が塗布された測定部位の赤外吸収スペクトルを測定する(測定ステップ S0304)。そして、内部標準物質の吸収スペクトル域でのスペクトル吸収強度にて規格化、一次微分、二次微分のいずれか一又は二以上を組合せて行い、血液成分の吸収スペクトルから血液成分濃度を算出する(算出ステップ S0305)。<実施形態1の効果> 本実施形態の非侵襲的な血液検査方法及び血液検査装置によって、皮膚表面の影響を受けずに血液成分濃度を測定することができる。また、内部標準物質にて規格化等をおこなうことによって、採血により測定した血液成分濃度との誤差を少なくすることができる。≪実施形態2≫<実施形態2の概要> 本実施形態の血液検査装置は、プリズム上に測定部位を一定圧で押し当てることのできる圧力維持手段を有することを特徴とする。<実施形態2の構成> 図4に本実施形態での機能ブロックの一例を示した。本実施形態の「血液検査装置」(0400)は、実施形態1を基本とし、「内部標準物質塗布部」(0401)と、「測定部」(0402)と、「算出部」(0403)とを有し、測定部は「圧力維持手段」(0404)をさらに有する。 「圧力維持手段」(0404)は、測定部(0402)が有する手段であり、赤外分光光度計のプリズム(0410)上に内部標準物質が塗布された測定部位(0405)が圧力印加されるように構成されている。ATR法において、プリズムと試料の密着性及び試料の面積は、吸収強度に影響を与えるため、測定に際してプリズムと試料を密着させる必要がある。圧力維持手段は、プリズム上に内部標準物質の塗布された測定部位が一定の圧力で密着するように、圧力を加えることができるものであればよい。例えば、測定部位を指とした場合に、ゴムバンドを用いて固定してもよいし、図4に示すように、指の上部から棒のようなもの(0411)で一定の圧力を加えるようにしてもよい。また、エアマシェット等により一定圧まで自動的に圧力を加えるようにしてもよい。<実施形態2の効果> 本実施形態の非侵襲的な血液検査装置によって、プリズムと測定部位との密着性を確実にすることができるため、安定した測定を行うことができる。≪実施例≫ 本発明を用いた血中グルコース濃度測定を例に、測定方法と内部標準物質の効果を説明する。また、本発明の血液成分測定法を用いた血中グルコース濃度をEGA法により評価するとともに、同様の方法により測定したHDL−C、GOT、GPT濃度の測定法の評価を行った。<実施例1>(血中グルコース濃度の測定) まず、手の表面に付いた汚れ等を落とすため石鹸により手を洗浄し、さらにエタノールにて測定部位である中指を消毒した。本発明による測定結果の評価を行うため、まず採血により得た血液を酵素電極法を用いたグルコースオートアンドスタットGA−1150(アークレイ)により、又は、GOD/POD法を用いた侵襲型測定器であるメディセーフ(登録商標)(テルモ)により血中グルコース濃度の測定を行った。その後、本発明による血中グルコース濃度の測定を行った。1回反射ダイヤモンドプリズムを用いたATR法を行うFT−IR(TravelIR:S.T.JAPAN)により、測定部位を分解能4cm−1、積算回数30回にて、スクワランオイルを塗布しない状態及びスクワランオイルを塗布した状態の計2回の測定を行った。プリズムへの指の密着は、指の上を金属棒により圧力印加することによって行った。(スクワランオイルの内部標準物質としての妥当性とスクワランオイルの効果) 図5は、スクワランオイル塗布前後の赤外吸収スペクトルであり、細線がスクワランオイル塗布前を、太線がスクワランオイル塗布後を示している。スクワランオイル塗布後の赤外吸収スペクトル(太線)には、1377cm−1と1462cm−1においてスクワランオイル特有の吸収ピークが見られることがわかる。したがって、スクワランオイルは内部標準物質として適当であることがわかる。 図6は、特に皮膚が乾燥し荒れている被験者のスクワランオイル塗布前後の赤外吸収スペクトルであり、細線がスクワランオイル塗布前を、太線がスクワランオイル塗布後を示している。図6に示すように、スクワランオイル塗布の有無によりノイズが少なくなっていることが分かる。したがって、スクワランオイルを塗布することによってノイズの影響を軽減することができる。(本発明の測定方法の評価) 赤外吸収スペクトルから血中グルコース濃度を算出するために、まずスペクトルデータにATR補正を行い、スクワランオイルの吸収ピーク(1377cm−1)にて規格化、及び二次微分を行う。得られた赤外吸収スペクトルを説明変数、採血した血液により測定した血中グルコース濃度を目的変数とし、4000cm−1〜700cm−1の波数範囲にてPLS回帰分析を行った。そして、血中グルコース濃度測定用の予測モデルを構築した。上記方法により(A)糖尿病ではない被験者の群及び(B)皮膚表面が乾燥している糖尿病患者の群の2群で評価を行った。対照となるスクワランオイルを塗布しない場合においては、水の吸収ピーク(1640cm−1)にて規格化を行った。 (A)の場合は、GOD/POD法により得られた血中グルコース濃度を目的変数とした。表1は、GOD/POD法により得られた血中グルコース濃度の結果を示している。表1に示す結果を参照値としてPLS回帰分析を行い、得られた結果をEGA法により評価を行った。図7は、(A)の群におけるEGA法による評価の結果を示している。図7(a)の相関係数は、参照値と実測値の相関度合いを表し、SEP(Standard Error of Prediction:予測標準誤差)は、成分未知の試料に対する検量線の測定精度を表している。図7(b)において、黒三角がスクワランを塗布しない状態の結果であり、白丸がスクワランを塗布した状態の結果を示している。図7より、スクワランオイルを塗布することにより、若干ではあるが相関係数及びSEPが向上していることがわかる。また、EGA結果においてもすべてのデータがA、Bゾーンに含まれて、さらにスクワランオイルを塗布しない場合に比べて、Aゾーンに入る割合が増えており、内部標準法の有効性が確認できる。 (B)の場合には、酵素電極法により得られた血中グルコース濃度を目的変数とした。表2は、酵素電極法により得られた血中グルコース濃度の結果を示している。表2に示す結果を参照値としてPLS回帰分析を行い、得られた結果をEGA法により評価を行った。図8は、(B)の群におけるEGA法による評価の結果を示している。図8(b)において、黒三角がスクワランを塗布しない状態の結果であり、白丸がスクワランを塗布した状態の結果を示している。図8より、スクワランオイルを塗布することにより、相関係数及びSEPが向上していることがわかる。また、EGA結果においてもスクワランオイル塗布前には、Dゾーンにデータが含まれていたが、スクワランオイル塗布後にはすべてのデータがA、Bゾーンに含まれている。さらにスクワランオイルを塗布しない場合に比べて、Aゾーンに入る割合が増えており、内部標準法の有効性が確認できる。まだ、データ数が少ないためにSEPがよいとは言えない値であるが、さらにデータ数を増やすことにより、より誤差の少ない検量線の作成が可能である。<実施例2>(HDL−C、GOT、GPT濃度の測定) 血中HDL−C、GOT、GPT濃度の測定手順は、実施例1と同様に行った。(HDL−C、GOT、GPT濃度における本発明の測定方法の評価) 赤外吸収スペクトルから各血液成分濃度を算出するために、まず各スペクトルデータにATR補正、スクワランオイルの吸収ピーク(1377cm−1)にて規格化、二次微分を行う。得られた赤外吸収スペクトルを説明変数、採血した血液を日立自動分析装置7700シリーズにて測定した各血液成分濃度を目的変数とし、HDL−Cは4000cm−1〜700cm−1、GOPは1180cm−1〜950cm−1、GPTは1800cm−1〜960cm−1の波数範囲にて、それぞれPLS回帰分析を行った。そして、各血液成分濃度測定用の予測モデルを構築した。 表3は、採血した血液により各成分の測定法により測定した血液成分濃度を示している。表3に示す結果を参照値としてPLS回帰分析を行い、得られた結果を図9に示している。図9(a)に示すように、HDL−C、GOT、GPTにおいても高い相関係数を示し、本発明の測定方法が有効であることを示している。図9(b)は、代表としてGPTの相関図を示している。実施形態1を説明する機能ブロック図ヒトの皮膚及びスクワランオイルの赤外吸収スペクトル実施形態1の処理の流れの一例を示す図実施形態2を説明する機能ブロック図スクワランオイル塗布の効果(1)スクワランオイル塗布の効果(2)本発明の測定方法により作成した検量線の評価(1)本発明の測定方法により作成した検量線の評価(2)その他の血液成分濃度測定のための検量線の評価符号の説明 0101 内部標準物質塗布部 0102 測定部 0103 算出部 0104 検量線算出手段 0105 測定部位(指) 0106 内部標準物質を含ませたスポンジ等の輪 0107 赤外光照射装置 0108 検出器 0109 ZnSeプリズム 0110 ダイヤモンドプリズム 赤外分光法を用いて非侵襲的に血液成分濃度を測定する方法であって、 測定部位に内部標準物質を塗布する内部標準物質塗布ステップと、 フーリエ変換型赤外分光光度計を用いて内部標準物質が塗布された測定部位の赤外吸収スペクトルを測定する測定ステップと、 内部標準物質の吸収スペクトル域でのスペクトル吸収強度にて規格化、一次微分、二次微分のいずれか一又は二以上を組合せて行い、血液成分の吸収スペクトルから血液成分濃度を算出する算出ステップと、を有する赤外分光法を用いた血液検査方法。 前記内部標準物質塗布ステップの前に、 測定部位に付着した汚れなどを除く洗浄ステップと、 測定部位をエタノールにて消毒する消毒ステップと、をさらに有する請求項1に記載の赤外分光法を用いた血液検査方法。 前記測定部位は指である請求項1又は2に記載の赤外分光法を用いた血液検査方法。 前記内部標準物質塗布ステップは、赤外分光光度計のプリズム上に滴下した内部標準物質に測定部位を圧力印加することによる請求項1から3のいずれか一に記載の赤外分光法を用いた血液検査方法。 前記測定ステップは、ZnSeプリズムを用いた減光全反射法により測定する請求項1から4のいずれか一に記載の赤外分光法を用いた血液検査方法。 前記測定ステップは、ダイヤモンドプリズムを用いた減光全反射法により測定する請求項1から4のいずれか一に記載の赤外分光法を用いた血液検査方法。 前記内部標準物質は、スクワランオイルであり、 前記算出ステップにおける内部標準物質の吸収スペクトル域での吸収強度による規格化は、スクワランオイル特有の1377cm−1及び/又は1462cm−1の吸収ピークにおいて行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか一に記載の赤外分光法を用いた血液検査方法。 前記内部標準物質は、水であり、 前記算出ステップにおける内部標準物質の吸収スペクトル域での吸収強度による規格化は、水特有の1640cm−1の吸収ピークにおいて行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか一に記載の赤外分光法を用いた血液検査方法。 前記算出ステップは、測定部位の吸収スペクトルを説明変数とし、採取した血液により測定された血液成分濃度を目的変数としてPLS回帰分析を行い、血液成分濃度の予測モデルによって予め作成された検量線により算出することを特徴とする請求項1から8のいずれか一に記載の赤外分光法を用いた血液検査方法。 前記血液成分は、グルコースである請求項1から9のいずれか一に記載の赤外分光法を用いた血液検査方法。 前記血液成分は、HDLコレステロールである請求項1から9のいずれか一に記載の赤外分光法を用いた血液検査方法。 前記血液成分は、GOTである請求項1から9のいずれか一に記載の赤外分光法を用いた血液検査方法。 前記血液成分は、GPTである請求項1から9のいずれか一に記載の赤外分光法を用いた血液検査方法。 赤外分光法を用いて非侵襲的に血液成分濃度測定する血液検査装置であって、 測定部位に内部標準物質を塗布する内部標準物質塗布部と、 フーリエ変換型赤外分光光度計を用いて内部標準物質が塗布された測定部位の赤外吸収スペクトルを測定する測定部と、 内部標準物質の吸収スペクトル域でのスペクトル吸収強度にて規格化、一次微分、二次微分のいずれか一又は二以上を組合せて行い、血液成分の吸収スペクトルから血液成分濃度を算出する算出部と、を有する血液検査装置。 前記測定部は、赤外分光光度計のプリズム上に内部標準物質が塗布された測定部位を圧力印加するための圧力維持手段を有する請求項14に記載の血液検査装置。 前記赤外分光光度計は、ZnSeプリズムを用いた減光全反射法により赤外吸収スペクトルを測定することを特徴とする請求項14又は15に記載の血液検査装置。 前記赤外分光光度計は、ダイヤモンドプリズムを用いた減光全反射法により赤外吸収スペクトルを測定することを特徴とする請求項14又は15に記載の血液検査装置。 前記算出部は、測定部位の吸収スペクトルを説明変数とし、採取した血液により測定された血液成分濃度を目的変数としてPLS回帰分析を行い、血液成分濃度の予測モデルによって予め作成された検量線により算出する検量線算出手段を有する請求項14から17のいずれか一に記載の血液検査装置。 【課題】従来から赤外分光法を用いて血液成分濃度測定を行う場合に、測定部位の状態により参照値と実測値の相関にばらつきが見られるという問題があった。【解決手段】内部標準法を用いた赤外分光法による血液成分濃度の測定方法、及び、内部標準物質塗布部(0101)と、測定部(0102)と、内部標準物質により規格化等を行う算出部(0103)と、を有する血液検査装置(0100)を提供する。これにより、被験者の皮膚表面状態等による赤外吸収スペクトルの影響を軽減することができる。また、この方法を用いて作成された検量線は、採血により測定した場合の血液成分濃度との誤差が少なくなり、簡易で非侵襲的に血液成分濃度の測定を行うことができる。【選択図】図1