タイトル: | 公開特許公報(A)_共焦点ラマン分光法を利用した組織からの自己−蛍光信号減少方法及びこれを利用した皮膚癌診断方法 |
出願番号: | 2005306389 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 21/65,A61B 10/00 |
オー チル ファン グェオン ダエ ガブ キム ヒョ ジン パク ジャン ヒー チョー ジャエ バン チャン ホイ エイル チョイ ジャン ヒュン JP 2006119138 公開特許公報(A) 20060511 2005306389 20051020 共焦点ラマン分光法を利用した組織からの自己−蛍光信号減少方法及びこれを利用した皮膚癌診断方法 高麗大学校産学協力団 505393131 山口 朔生 100082418 オー チル ファン グェオン ダエ ガブ キム ヒョ ジン パク ジャン ヒー チョー ジャエ バン チャン ホイ エイル チョイ ジャン ヒュン KR 10-2004-0083980 20041020 G01N 21/65 20060101AFI20060407BHJP A61B 10/00 20060101ALI20060407BHJP JPG01N21/65A61B10/00 EA61B10/00 QA61B10/00 T 5 2 OL 13 2G043 2G043AA03 2G043BA16 2G043CA05 2G043EA03 2G043GA01 2G043GB01 2G043MA01 本発明は共焦点ラマン分光法を利用した組織からの自己−蛍光信号減少方法(Method for reducing auto−fluorescence signals in confocal Raman microscopy)及びこれを利用した皮膚癌診断方法に関する。 去る数十年にわたった分光学(spectroscopy)技術の発達は癌研究の領域に相当な影響を及ぼしてきた。FT−IR、ラマン(Raman)及び共焦点(confocal)蛍光顕微鏡のような技術は癌の根源及び進展を明らかにするために使用されてきた(Jackson,M.Faraday Discuss 2004,126,1−18 Yano et al.,Analyt Biochem 2000,287,218−225)。これら技術は癌誘発細胞及び組織での癌及び生化的変化の早期診断にも使用されてきた(Shafer−Peltier et al.,J Raman Spectrosc 2002,33,552−563 Ling et al.,Appl Spectrosc 2002,56,570−573)。これら分光学技術のうち、ラマン分光学(Raman spectroscopy)が非破壊的でありサンプル準備工程を必要とせず正常及び疾病組織の分子構造に関する詳細な情報を提供するため医学的診断のために相当な関心を集めてきた。 最近、オゾン層破壊、環境汚染などによって皮膚がUV照射に過度に露出されることによって皮膚癌の発病が顕著に増加した。もし初期に検出さえすれば、皮膚癌は100%に近い治療率を有する。しかし、不幸にも診断がまだ病理学者による形態学的観察に基づいているため、初期検出が困難である。2種類の一般的な皮膚癌がある:基底細胞癌腫(BCC)及び扁平細胞癌腫(SCC)。BCC及びSCCは両方とも非−黒色腫皮膚癌であり、BCCは最も一般的な皮膚新生物(neoplasm)である。周辺非−癌性組織からBCC組織を区別することが難しいため、BCCの正確な検出は臨床皮膚学者から多くの関心を集めてきた(Caspers et al.,J Invest Dermatol 2001,116,434−442 Bakker Schut et al.,Anal Chem 2000,72,6010−6018)。 BCCの検出に使用される日常的な診断技術は生検サンプルの病理学的検査である。これは疑わしい異常(abnormal)領域から組織を除去した後、スライスし染色して病理学者が形態学的異常を同定することができるようにした。この方法は個別病理学者の熟練度による主観的な判断に依存し、組織の過度な生検を誘導することがある。したがって、それ以上の生検のための病変(lesions)の初期選別及び選択のための迅速かつ正確な診断技術が必要である。 ラマン分光学(Raman spectroscopy)はこのような問題点を解決することができる潜在能を有する。それは周辺正常組織からBCC組織を区別できるさらに正確な医学的診断を提供するために適用できる。最近、多様な研究グループがラマン分光学を利用してBCC検出を試みた。Gniadecka et al.及びNunes et al.はBCCと周辺正常組織とを区別するためにFT−ラマン分光法を使用した(Gniadecka et al.,J Invest Dermatol 2004,122,443−449 Nunes et al.,Spectroscopy 2003,17,597−602)。Nijssen et al.はBCCの凍結組織切片から得たFT−ラマンスペクトルに基づいてシュード−カラー(pseudo−color)ラマン地図(Raman maps)を証明した(Nijssen et al.,J Invest Dermatol 2002,119,64−69)。前記研究で、シュード−カラーラマン地図がヘマトキシリン及びエオジン(H&E)染色されたサンプルの顕微鏡イメージと密接に関連するということを示した。FT−ラマン分光学を利用した従来の研究で、長波長励起(excitation)レーザー(1064nm Nd:YAG laserまたは850nm titanium−sapphire laser)が皮膚組織からの自己−蛍光を最少化するために適用された。しかし、長波長レーザーは短波長励起レーザーに比べて弱いラマン散乱強度を有する。結果的に、以前に報告されたBCC組織に対するラマンスペクトルは弱い信号−対−ノイズ率を示すため、癌及び正常組織のラマン信号を分別するために主成分分析(principal component analysis、PCA)(Nunes et al.,Spectroscopy 2003,17,597−602)、K−平均群集分析(K-mean clustering analysis、KCA)(Caspers et al.,Biophys J 2003,85,572−580)及び神経網分析(neural networks)(Gniadecka et al.,J Invest Dermatol 2004,122,443−449)のような分光学データの統計的処理を必要とした。しかし、癌診断の実際適用のためにスペクトルデータのいずれの統計的処理も要しないスペクトル差の直接観察が必然的に要求される。 本発明では、514.5nmの短波長アルゴンイオンレーザーを使用した共焦点(confocal)ラマン技術をBCCの皮膚学的診断に適用した。ラマン信号を強く妨害する自己−蛍光を効果的に除去するために、共焦点技術を使用した。共焦点ラマン顕微鏡は蛍光の優れた拒否能を有すると知られた。これはレーザーが小さい点に焦点を合せるためサンプリング体積でレーザーフラックスが一般的なラマン分光法でたびたび要求される時間の分画内に蛍光を除去する程度に十分に高くなるという事実に起因する。第二に、励起電子がそのスリットに沿って一つの分子から他の分子に移動することができるため、焦点体積外の分子は蛍光光子を放出することができる。これら光子は共焦点スリットによって封鎖される。共焦点ラマン顕微鏡を使用して照射された10個のBCCサンプルに対して正常及び癌組織の間の一貫したスペクトル差が観察された。また、共焦点ラマンデプスプロファイリングを行って周辺非−癌性組織からBCCを分別した。外科手術において除去する領域を決定することは重要である。本発明によって、前癌及び非癌性病変に対する直接診断道具として使用できる共焦点ラマン顕微鏡の可能性が分かる。 したがって、本発明の主な目的は、共焦点技術を利用してラマン信号を強く妨害する自己−蛍光を効果的に除去する方法を提供することにある。本発明の他の目的は、前記共焦点ラマン分光学を利用した皮膚癌の非浸透的診断方法を提供することにある。 ラマン分光学(Raman spectroscopy)は皮膚癌の非浸透的診断を提供することに強い可能性を有する。本発明では、共焦点(confocal)ラマン顕微鏡を最も一般的な皮膚癌である基底細胞癌腫(basal cell carcinoma、BCC)の皮膚学的診断に適用した。日常的な生検法を使用して10名のBCC患者から組織を得て共焦点ラマン測定に使用した。ラマン信号を妨害する組織からの自己−蛍光(Auto−fluorescence)信号が共焦点スリット調整(confocal slit adjustment)を使用して著しく減少された。アミド(amide)IモードとPO2-対称性ストレッチングモードでの正常及びBCC組織の間の明確なラマンバンド差はこの技術がスペクトルデータの統計的処理が必要なく皮膚学的診断道具として使用される強い潜在能を有しているということを示した。また、共焦点ラマンデプスプロファイリング(confocal Raman depth profiling)技術を使用して周辺の非−癌性組織からBCC組織を正確に分別することが可能であった。したがって、共焦点ラマン分光学は正常及びBCC組織の間のスペクトル差の直接観察が可能であるため皮膚学的診断の新たな方法を提供することができる。 本発明の目的を達成するために、本発明は皮膚癌診断のためのラマン分光法において共焦点スリット調整を使用してラマン信号を妨害する組織からの自己−蛍光(Auto-fluorescence)信号を減少させる方法を提供する。本発明において、共焦点ラマン分光法は当業界で商業的に入手可能なRenishaw 2000 Raman microscope systemのような共焦点が可能なラマン顕微鏡を使用して提供されたプロトコルによって行うことができる。共焦点分光法(Confocal spectroscopy)はサンプルの限定された特定領域(well−defined regions)からスペクトルが収集されることができるようにする技術である。共焦点作動モードにセッティングされると、関心領域(region of interest)からの光(light)のみが許容(accept)される反面、周辺焦点外(out−of−focus)領域からの光は拒絶(reject)される。共焦点モードで空間的解像度(spatial resolution)が改善される。空間的解像度は水平解像度(lateral resolution)及び焦点深さ(depth of focus)の二つの成分を有する。 本発明において、好ましくは、前記共焦点スリット調整は2スリット共焦点整列(two−slit confocal arrangement)を使用して第1共焦点スリットは10〜20μmの幅でセッティングし、第2スリットはスペクトロメータスリットに垂直に整列されたCCD検出器上の二つのピクセル列(pixel rows)から仮想第2スリットを作ることを特徴とする。前記スリット幅の範囲内でラマン信号を妨害する組織からの自己−蛍光信号が効果的に減少した。 本発明において、好ましくは、アミド(amide)Iモード、アミド(amide)IIIモードとPO2-対称性ストレッチングモードで正常及び皮膚癌組織の間の明確なラマンバンド差をスペクトルデータの統計的処理無しに検出することを特徴とする。 本発明において、好ましくは、共焦点ラマンデプスプロファイリング(confocal Raman depth profiling)技術を使用して周辺の非−癌性組織から皮膚癌組織を正確に分別することを特徴とする。 本発明の他の目的を達成するために、本発明は共焦点ラマン分光法を利用した皮膚癌の診断方法において、共焦点スリット調整を使用してラマン信号を妨害する組織からの自己−蛍光(Auto−fluorescence)信号を減少させることを特徴とする皮膚癌診断方法を提供する。 本発明において、前記皮膚癌は基底細胞癌腫(BCC)と扁平細胞癌腫(SCC)のようないずれの皮膚癌であることができるが、好ましくは、基底細胞癌腫(BCC)であることを特徴とする。 本発明において、好ましくは、前記共焦点スリット調整は2スリット共焦点整列(two−slit confocal arrangement)を使用して第1共焦点スリットは10〜20μmの幅でセッティングし、第2スリットはスペクトロメータスリットに垂直に整列されたCCD検出器上の二つのピクセル列(pixel rows)から仮想第2スリットを作ることを特徴とする。本発明において、好ましくは、正常及び皮膚癌組織の間のスペクトル差をスペクトルデータの統計的処理無しに直接的に観察することによって診断することを特徴とする。 本発明において、好ましくは、前記スペクトルでラマンシフト(Raman shift)1000〜1700cm-1領域の強度(intensity)変化を観察することを特徴とする。 本発明において、好ましくは、アミド(amide)Iモード、アミド(amide)IIIモードとPO2-対称性ストレッチングモードで正常及び皮膚癌組織の間の明確なラマンバンド差を検出することを特徴とする。前記アミド(amide)I及びIIIモードでは主に正常/癌組織間の蛋白質アミド構造変化を検出し、PO2-対称性ストレッチングモードでは主に正常/癌組織間の燐脂質と核酸構造変化を検出することができる。 本発明において、好ましくは、アミド(amide)Iモードはラマンシフト(Raman shift)1580〜1610cm-1領域で、アミド(amide)IIIモードはラマンシフト1320〜1340cm-1領域で、PO2-対称性ストレッチングモードはラマンシフト1030〜1060cm-1領域でラマンバンドが発見されることを特徴とする。 具体的に、アミド(amide)Iモードは正常組織の場合には1630〜1660cm-1領域で観測されたが、癌組織の場合にはピークが緩慢になり強さは増加すると共にピークの位置が1580〜1610cm-1領域に移動する現象が発見された。反面、アミド(amide)IIIモードは正常組織では1290〜1310cm-1領域で観測されたが、癌組織の場合にはピークの位置がむしろ高いエネルギー領域に移動して1320〜1340cm-1領域で発見された。PO2-対称性ストレッチングモードの場合には正常組織では1070〜1100cm-1領域で観測されたが、癌組織の場合には1030〜1060cm-1領域で発見され、アミドIモードと同様にピークが30〜40cm-1程度エネルギーが低い領域に移動しピークの強さは小さくなり緩慢になる傾向性を示した。このような皮膚組織のラマンピーク変化は皮膚癌組織の蛋白質の構造変換によるものであると判断される。 本発明において、好ましくは、共焦点ラマンデプスプロファイリング(confocal Raman depth profiling)技術を使用して周辺の非−癌性組織から皮膚癌組織を正確に分別することを特徴とする。本発明において、好ましくは、前記共焦点ラマンデプスプロファイリング技術は1〜2μm程度の焦点大きさを有するレーザー光を30〜40μm間隔で連続走査して正常組織と癌組織のラマン散乱シグナル差を測定した後、これに基づいて癌の有無を判別する方法であって、レーザー光の走査条件と検出条件を最適化することによって微細組織の正常/癌組織の診断に適用できると判断される。 本発明によれば、ラマン分光学(Raman spectroscopy)は皮膚癌の非浸透的診断を提供することに強い可能性を有する。本発明では、アミド(amide)IモードとPO2-対称性ストレッチングモードでの正常及びBCC組織の間の明確なラマンバンド差はこの技術がスペクトルデータの統計的処理が必要なく皮膚学的診断道具として使用される強い潜在能を有しているということを示した。また、共焦点ラマンデプスプロファイリング(confocal Raman depth profiling)技術を使用して周辺の非−癌性組織からBCC組織を正確に分別することが可能であった。したがって、共焦点ラマン分光学は正常及びBCC組織の間のスペクトル差の直接観察が可能であるため皮膚学的診断の新たな方法を提供することができる。 以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。 以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は単に本発明を例示するためのものであるので、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されると解釈されない。[実施例1]:皮膚組織製造(Skin tissue preparations) 皮膚組織サンプルを大韓民国の高麗大学病院の皮膚科から得た。共焦点ラマン(confocal Raman)測定に使用されたBCC組織は10名の患者から一般生検法によって得た。クロス−セクション20μm厚さを−20℃で微細切片器(microtome)で切断し、凍結切片を使用するまで液体窒素に保管した。二つの薄膜切片を試験のために切断した。一つの切片は共焦点ラマンプロファイリング(confocal Raman profiling)実験に使用し、他の一つの切片はH&Eで染色して一般癌診断のための専門病理学者に送られた。また、H&E切片は染色されなかった切片においてお互い異なる皮膚−層の間の境界を位置化するラマンリファレンス(Raman reference)として使用された。本発明において、BCC組織の3つの異なる領域に対する特徴的ラマンスペクトルが見られる。[実施例2]:共焦点ラマン測定(Confocal Raman measurements) 共焦点ラマン測定はRenishaw 2000 Raman microscope systemを使用して行った。λ=514.5nmで作動するSpectra Physicsアルゴンイオンレーザーが約20mWレーザーパワーの励起(excitation)供給源として使用された。レーリー(Rayleigh)線はコレクション通路に位置したホログラフィックノッチフィルター(holographic notch filter)によって収集されたラマン散乱から除去された。ラマン散乱は4cm-1のスペクトル解像度で電荷結合素子(CCD)カメラを使用して検出した。皮膚組織サンプルの光学イメージを得るために光学顕微鏡に追加的にCCDカメラを装着した。非焦点レーザービームからバックグラウンドラマン散乱を減らすために2スリット共焦点整列(two−slit confocal arrangement)を使用した。全てのラマンスペクトルは焦点外信号を除去するために共焦点モードで測定した(Lee,M.;Lee,J.P.;Rhee,H.;Choo,J.;Ghai,Y.G.;Lee,E.K.J Raman Spectrosc 2003,34,737−742)。ラマンシステムにおいて、ピンホール(pinhole)の機能は入射スリット(entrance slit)とCCD検出器のピクセル(pixels)との協同に代替された。第1共焦点スリットは15μmの幅でセッティングされた。その後、スペクトロメータスリットに垂直に整列された仮想第2スリットを作るCCD検出器上の二つのピクセル列(pixel rows)から信号を収集した。この場合、皮膚組織サンプルのある焦点外領域による逸脱(stray)バックグラウンド光が効果的に除去された。[実験結果](RESULTS AND DISCUSSION) 図1は3名の異なる皮膚癌患者から得たH&E染色された組織の顕微鏡イメージを示す。暗い領域がBCC組織であり、明るい領域が正常組織である。生検サンプルのこのような生理学的試験はBCCのラマン分光学的同定の標準を提供する。ラマン測定における共焦点技術の必要性を確認するために、BCCのラマンスペクトルを2つの異なるモード、非−共焦点モードと共焦点モードを使用して測定した。 図2は前記2つのモード、非−共焦点を使用して測定されたBCC組織のラマンスペクトルの比較を示す(図2aは非−共焦点モード、図2bは共焦点モード)。蛍光干渉(fluorescence interference)は非−共焦点モードラマンスペクトルで非常に高かった。これに反し、ある非焦点散乱信号を除去するために15μm幅共焦点ピンホールを使用した時、共焦点モードスペクトルでBCC組織からの干渉信号が大きく減少した。したがって、共焦点技術は組織からの自己−蛍光信号(auto−fluorescence signals)を減らすことに非常に効果的である。 図3は図1aに示された皮膚サンプルに対する共焦点ラマンスペクトルを示す。共焦点ラマン顕微鏡によって正常及びBCC組織間に明確な区別が示された。これらスペクトルの多くの差異点は1000〜1700cm-1領域の強度(intensity)変化で起こる。以前の研究で(Nijssen et al.,J Invest Dermatol 2002,119,64−69 Gniadecka et al.,J Invest Dermatol 2004,122,443−449;Gniadecka et al.,J.Photochem Photobio 1997,66,418−423;Gniadecka et al.,J.Raman Spectrosc 1997,28,125−129 Nunes et al.,Spectroscopy 2003,17,597−602)、アミド(amide)IIIモードの場合には1250〜1350cm-1領域で、PO2-ストレッチングモードの場合には1000〜1100cm-1領域で正常及びBCC組織の間に弱いスペクトル差が発見された。しかし、本発明の共焦点ラマンスペクトルの場合、この領域で4つの特徴的ラマンバンドで明確なスペクトル差が発見された。図3に示されているように、いずれの統計的処理無しにスペクトルから視覚的診断をすることが可能である。二つのラマンスペクトルの間のさらに詳細な比較のために、BCC組織のラマンバンドを正規分布曲線−フィッティング分析(Gaussian curve−fitting analysis)を使用して分解した。1000〜1100cm-1領域でのバンドの広い重畳を表1に羅列した3つの特徴的バンドに分解した。ラマンスペクトルで、BCC組織の場合には1656cm-1でのアミド(amide)Iバンドがさらに低い周波数に移動(shift)されそのバンド幅は大きく広くなった反面、1302cm-1でのアミド(amide)IIIバンドはさらに高い周波数に移動しその強度は減少した。これら結果はGniadecka et al.によって報告された従来のラマンデータと類似しているが(J Invest Dermatol 2004,122,443−449 J.Photochem Photobio 1997,66,418−423;J.Raman Spectrosc 1997,28,125−129)、本発明の共焦点スペクトルは正常及びBCC組織の間にさらに明確な差を示す。アミドI及びアミドIIIモードでのラマンバンド変化は正常及びBCC組織の間の蛋白質の2次構造変化と密接に関連している。脂肪(lipids)及び蛋白質(proteins)に対する1441cm-1でのCH2変形モード(CH2 deformation)は高周波に移動しその強度は減少した。燐脂質(phospholipids)及び核酸(nucleicacids)に対する1085cm-1でのPO2-対称性ストレッチングモード(PO2-sym.stretch)は低周波に移動しその強度は著しく減少した。 図4は図1の3名の互いに異なる患者からの正常及びBCC皮膚組織に対するラマンスペクトルを示す。3名の異なる患者の正常組織に対するラマンスペクトルは互いに従来報告されたものと非常に類似していた。また、3名の患者からのBCC組織のラマンスペクトルは非常に良好な再現性(reproducibility)を示した。正常とBCC組織の間の直接的差を図4から確認することができる。特に、BCC組織でのアミドIIIバンドの増強とPO2-ストレッチングバンドの消滅は皮膚癌診断に利用することができる。 皮膚学的診断においてまた他の主要な要因は、ラマン分光学を利用してBCCが周辺非腫瘍組織からいかほど正確に区別されることができるかである(Kaminaka et al.,J Raman Spectrosc 2001,32,139−141;Kaminaka et al.,J Raman Spectrosc 2002,33,498−502)。ラマン分光学は生検領域の選別及び選択のための迅速かつ正確な診断道具として使用される潜在性を有している。これを確認するために、本発明者はBCC及び周辺組織に対する共焦点ラマン深さ(depth)プロファイリングを行った。図5は図1aのH&E染色された組織の拡大された顕微鏡イメージと3040μmの間隔で10個の連続的スパット(spots)でのその共焦点ラマンスペクトルを示す。正常及びBCC領域の間の差をラマン測定のための凍結組織のイメージでは見ることができないので、H&E染色されたイメージをレファレンス(reference)として使用した。1085cm-1を中心とした強いPO2-対称性ストレッチングバンドが正常上皮(A及びB)及び真皮(I及びJ)領域で観察された(図5)。一方、1589cm-1を中心とした強いアミドIバンドがBCC(D、E、F及びG)領域で観察された。正常及びBCC組織の間の境界上では(C及びH)、中間強度のPO2-バンドが観察された。 皮膚学的診断のための共焦点ラマン技術の再現性を確認するために、本発明者は図1の他の皮膚組織に対しても共焦点ラマンプロファイリング実験を行った。図6は図1bの第2皮膚組織サンプルに対するラマンプロファイリングデータを示す。この場合、第1の場合と非常に類似したラマンバンドのパターンが観察された。上皮領域で(A、B及びC)、強いBCCアミドIバンドが観察されず正常組織の特徴的な強いPO2-バンドが発見された。しかし、BCC領域(D、E、F、G、H及びI)の場合、強いアミドIバンドが観察されたが正常組織の強いPO2-バンドもいくつかのケース(D、F、G及びH)で発見された。H&E染色されたイメージを対応するラマンスペクトルと比較した時、BCCが均質的に転移されないことと示された。真皮領域で最後のスペクトル(J)は非腫瘍組織の特徴的なラマンバンドを示す。 図7は図1cのサンプルに対するスペクトルを示す。真皮領域(A、H、I、J及びK)で、正常組織の典型的なラマンスペクトルが観察され、BCC真皮領域(D、E、F及びG)でBCC組織の特徴的なラマンバンドが観察された。しかし、このサンプルで正常とBCC組織の間の境界上(B及びC)で混合されたラマンバンドが観察されることが興味深い。AからDに観察されたスペクトル変化は正常組織に対するアミドIバンドがBCC組織に対するバンドに移動したことを示す。組織の正常側から癌側へのPO2-及びアミドIIIバンドの明白な強度変化も確認することができる。これら結果は人間皮膚組織に共焦点ラマン深さプロファイリング技術を適用することによって周辺非腫瘍組織から癌組織を正確に決定することが可能であるということを示す。 ラマン分光学は正常周辺組織からBCC組織を分別するために広く使用されてきた。従来の研究では、人間組織からの自己−蛍光(auto-fluorescence)を最少化するために長波長近赤外線レーザーを使用したFT−ラマン分光学技術が適用された。しかし、この場合、スペクトルを長時間蓄積(縮尺?)させても弱い散乱効率のためラマン強度が比較的に弱かった。結果的に、PCA分析または神経網を利用した収集されたラマンデータの統計的処理が正常組織からBCC組織を分別するために必要であった。本発明では、514.5nmアルゴンイオンレーザーを利用した共焦点ラマン分光学がBCCの診断に成功的に適用されることができるということを明らかにした。組織からの面外(out−of−plane)自己−蛍光信号は共焦点技術によって効率的に除去されることができた。特に、アミドIモードとPO2-対称性ストレッチングモードの場合、正常及びBCC組織の間の明確なラマンバンド差はこの共焦点ラマン技術がいずれのデータの統計的処理も必要なく皮膚学的診断道具として強力な潜在性を有するということを示す。 生検の選別と選択のための迅速かつ正確なBCC診断道具はMoh´s微細図式手術法(Moh´s micrographic surgery)に重要である。したがって、共焦点ラマン深さプロファイリングは健康な周辺組織からBCC領域を正確に決定するために使用でき、これは周辺の非腫瘍組織から癌領域を正確に分別することを可能にする。境界線(borderline)付近の正常及びBCC組織の混合されたアミドIバンドだけでなく、BCC領域内で非均質的転移による正常組織のPO2-バンドの不規則なパターンも検出されることができた。本発明者は本発明の共焦点ラマンプロファイリング技術が皮膚学的診断道具として強力な性能を有するということを明らかにした。3名の互いに異なる患者a、b、cから収集した皮膚組織に対するH&E染色切片の顕微鏡イメージである。暗い青色領域が悪性組織(BCC)であり、明るいエオジン好性(eosinophilic)領域が正常組織である。BCC組織のラマンスペクトルである。:(a)非−共焦点モードラマンスペクトル、(b)共焦点モードラマンスペクトル。1000〜1700cm-1領域での皮膚組織の共焦点ラマンスペクトルである。:(a)正常組織のラマンスペクトル、(b)BCC組織のカーブ−フィッティング(curve-fitting)ラマンスペクトル。3名の互いに異なる患者から得た正常及び悪性組織の共焦点ラマンスペクトルである。:(a)正常組織、(b)BCC組織。3040μmの間隔で7個の互いに異なるスパットにおける皮膚組織(図1(a))の共焦点ラマンプロファイルである:(a)H&E染色された皮膚組織の拡大顕微鏡イメージ、(b)(a)に表示された7個領域で該当するラマンスペクトル。3040μmの間隔で7個の互いに異なるスパットにおける皮膚組織(図1(b))の共焦点ラマンプロファイルである:(a)H&E染色された皮膚組織の拡大顕微鏡イメージ、(b)(a)に表示された7個領域で該当するラマンスペクトル。3040μmの間隔で7個の互いに異なるスパットにおける皮膚組織(図1(c))の共焦点ラマンプロファイルである:(a)H&E染色された皮膚組織の拡大顕微鏡イメージ、(b)(a)に表示された7個領域で該当するラマンスペクトル。皮膚癌診断のためのラマン分光法において共焦点スリット調整を使用してラマン信号を妨害する組織からの自己−蛍光信号減少方法。前記共焦点スリット調整は2スリット共焦点整列を使用して、第1共焦点スリットは10〜20μmの幅でセッティングし、第2スリットはスペクトロメータスリットに垂直に整列されたCCD検出器上の2つのピクセル列から仮想第2スリットを作ることを特徴とする、請求項1に記載の自己−蛍光信号減少方法。アミドIモード、アミドIIIモードとPO2−対称性ストレッチングモードで正常及び皮膚癌組織の間の明確なラマンバンド差をスペクトルデータの統計的処理無しに検出することを特徴とする、請求項1に記載の自己−蛍光信号減少方法。共焦点ラマンデプスプロファイリング技術を使用して周辺の非−癌性組織から皮膚癌組織を正確に分別することを特徴とする、請求項1に記載の自己−蛍光信号減少方法。前記共焦点ラマンデプスプロファイリングは1〜2μm程度の焦点大きさを有するレーザー光を30〜40μm間隔で連続走査してシグナルを測定することを特徴とする、請求項4に記載の自己−蛍光信号減少方法を用いた皮膚癌診断方法。 【課題】本発明は共焦点ラマン分光法を利用した組織からの自己−蛍光(Auto−fluorescence)信号減少方法及びこれを利用した皮膚癌診断方法に関する。【解決手段】本発明では、アミドIモードとPO2-対称性ストレッチングモードでの正常及びBCC組織の間の明確なラマンバンド差はこの技術がスペクトルデータの統計的処理が必要なく皮膚学的診断道具として使用される強い潜在能を有しているということを示した。また、共焦点ラマンデプスプロファイリング技術を使用して周辺の非−癌性組織からBCC組織を正確に分別することが可能であった。したがって、共焦点ラマン分光学は正常及びBCC組織の間のスペクトル差の直接観察が可能であるため皮膚学的診断の新たな方法を提供することができる。【選択図】図2