タイトル: | 公開特許公報(A)_エマルション型アクリル系粘着剤の製造方法及びエマルション型アクリル系粘着剤 |
出願番号: | 2005305592 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C09J 133/06,C09J 133/02,C09J 11/06,C09J 7/02,A61L 15/58,A61K 9/70,A61K 47/32,A61K 47/20 |
長友 秀晃 JP 2007112896 公開特許公報(A) 20070510 2005305592 20051020 エマルション型アクリル系粘着剤の製造方法及びエマルション型アクリル系粘着剤 日東電工株式会社 000003964 高島 一 100080791 長友 秀晃 C09J 133/06 20060101AFI20070406BHJP C09J 133/02 20060101ALI20070406BHJP C09J 11/06 20060101ALI20070406BHJP C09J 7/02 20060101ALI20070406BHJP A61L 15/58 20060101ALI20070406BHJP A61K 9/70 20060101ALI20070406BHJP A61K 47/32 20060101ALI20070406BHJP A61K 47/20 20060101ALI20070406BHJP JPC09J133/06C09J133/02C09J11/06C09J7/02 ZA61L15/06A61K9/70 401A61K47/32A61K47/20 7 OL 13 4C076 4C081 4J004 4J040 4C076AA74 4C076BB31 4C076DD02 4C076DD04 4C076DD05 4C076DD07 4C076EE09 4C076EE10 4C076EE11 4C076FF56 4C081AA03 4C081AA12 4C081BB04 4C081BC01 4C081CA081 4C081CC01 4C081DA02 4C081DA05 4C081DC11 4C081EA11 4J004AA10 4J004AB01 4J004CA03 4J004CA04 4J004CA06 4J004CB03 4J004CC02 4J004EA06 4J004FA08 4J004FA09 4J040DB021 4J040DE021 4J040DF021 4J040DF031 4J040HD13 4J040KA38 4J040LA01 4J040LA06 4J040NA02 4J040QA03 4J040QA09 本発明はエマルション型アクリル系粘着剤の製造方法及びエマルション型アクリル系粘着剤に関する。 皮膚に貼付する医療用粘着テープやシートの粘着剤層等に使用する医療用粘着剤としては、従来から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系粘着剤や、天然ゴム、合成ゴムを主成分とするゴム系粘着剤等が使用されている。しかしながら、ゴム系粘着剤は粘着特性の調整が比較的困難であり、また天然ゴムを用いた粘着剤は不純物としての蛋白質などに起因するアレルギー発現の危険性など、取扱いにやや難点がある。従って、最近では重合方法や重合組成、配合などにより粘着特性の調整が容易なアクリル系粘着剤の使用が多くなってきている。 一方、エマルション型粘着剤は、有機溶剤溶解型の粘着剤とは異なり、無溶剤で塗工できるので、環境衛生や安全性などの点で優れており、特にエマルション型のアクリル系粘着剤は粘着性に優れていることから、種々の分野で利用されている。また、エマルション型粘着剤は、乳化剤の存在下に粘着性の重合体(粘着剤)を水中に乳化(分散)することで得られるが、アクリル系粘着剤においては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を乳化剤の存在下にエマルション重合することによって得られる(すなわち、エマルション重合によって得られる重合体エマルション(重合体の水分散体)をそのままエマルション型粘着剤として使用できる)ので、製造面からも有利である。しかし、エマルション型のアクリル系粘着剤に含まれる乳化剤の多くはノニルフェノールを含有している点で問題がある。すなわち、ノニルフェノールはエストロゲン活性を有する環境ホルモン物質として、内分泌系器官に対する毒性を有し(非特許文献1〜2、欧州指令2003/53/EC及び76/769/EECの補遺INo.46)、また平成13年(2001年)8月に我が国の内分泌攪乱化学物質問題検討会においても内分泌攪乱作用が確認されたことにより、ガン、奇形等を生ずる環境問題の原因物質であると指摘されている。また眼、皮膚、呼吸器系に対し強い刺激性があり(非特許文献3〜4)、皮膚性刺激試験に対して暴露時間の延長により腐食性を示すことも分かっている。従って、エマルション型アクリル系粘着剤、特に生体外皮(皮膚)に直接接触する医療用のエマルション型アクリル系粘着剤において、乳化剤にノニルフェノールを含まない代替品への移行が必要になってきている。しかし、乳化剤にノニルフェノールを使用せずに、(メタ)アクリル系モノマーのエマルション重合を安定に行うことは容易でなく、そのため、乳化剤にノニルフェノールを使用せずに、(メタ)アクリル系モノマーをエマルション重合して良好な粘着特性を示すエマルション型アクリル系粘着剤を安定に製造できる方法が求められている。また、エマルション型アクリル系粘着剤においては、重合体の分子量を調整するなどして、皮膚接着性を向上させたり、剥離時の痛みを軽減する試みがなされているが、十分に改良されているとは言い難く、良好な皮膚接着性を有し、かつ、剥離時の痛みも十分に軽減されるエマルション型アクリル系粘着剤が望まれている。Laws, S.C. et al., Estogenic activity of octylphenol, nonylphenol, bisphenol A and methoxychlor in rats. Toxcol. Sci.,54, 156−167, 2000Lee, P.C. Disruption of male reproductive tract development by administration of the xenoestrogen, nonylphenol, to male newborn rats. Endocrine, 9, 105−111, 1998U.S.Coast Guard, Department of Transportation. CHRIS−Hazardous Chemical Data. Volume II.Washington D.C.:U.S. Government Office. 1984−1985Ikeda, et al., Two cases of leucoderma, presumably due to nonyl− or octylphenol in synthetic detergents. Ind. Health 8,192−196, 1970 上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、乳化剤にノニルフェノールを使用せずに、良好な粘着特性を示すエマルション型アクリル系粘着剤を重合安定性良く製造できるエマルション型アクリル系粘着剤の製造方法を提供することである。 また、良好な皮膚接着性を有し、かつ、剥離時の痛みも十分に軽減される、環境対応に優れたエマルション型アクリル系粘着剤および該エマルション型アクリル系粘着剤を重合安定性良く製造できる方法を提供することである。 本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、モノアルキルサクシネートスルホン酸塩とその他の乳化剤とを特定量比で使用したエマルション重合であれば、重合安定性良くエマルション型アクリル系粘着剤を製造することができ、しかも、その際のモノマー組成及び重合体(ゾル分)の重量平均分子量を特定範囲に調整することによって、良好な皮膚接着性を有し、かつ、剥離時の痛みが十分に軽減されるエマルション型アクリル系粘着剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は以下のとおりである。[1]一般式(1):H2C=C(R1)COOR2 [式中、R1は水素又はメチル基、R2はC5〜C12のアルキル基を示す。]で表される第1の(メタ)アクリル系モノマーを60〜85重量%、一般式(2):H2C=C(R3)COOR4 [式中、R3は水素又はメチル基、R4はC1〜C4のアルキル基を示す。]で表される第2の(メタ)アクリル系モノマーを10〜30重量%、及びカルボキシル基含有ビニルモノマーを2〜10重量%の配合比で含むモノマー混合物を、モノアルキルサクシネートスルホン酸塩とその他の乳化剤を95:5〜70:30(重量比)の混合比で含む乳化剤の存在下にエマルション重合することを特徴とする、エマルション型アクリル系粘着剤の製造方法。[2]他の乳化剤がアニオン系乳化剤又は/及びノニオン系乳化剤である、[1]記載のエマルション型アクリル系粘着剤の製造方法。[3]モノアルキルサクシネートスルホン酸塩とその他の乳化剤を含む乳化剤の使用量がモノマー100重量部当たり0.3〜5重量部である、[1]又は[2]記載のエマルション型アクリル系粘着剤の製造方法。[4][1]〜[3]のいずれかに記載の方法で製造されたエマルション型アクリル系粘着剤。[5]重合体のゾル分の重量平均分子量が15万〜40万である、[4]記載のエマルション型アクリル系粘着剤。[6]医療用である、[4]又は[5]記載のエマルション型アクリル系粘着剤。[7]基材の少なくとも片面に[4]〜[6]のいずれかに記載のエマルション型アクリル系粘着剤による粘着層を有する医療用粘着テープまたはシート。 本発明のエマルション型アクリル系粘着剤の製造方法によれば、乳化剤にノニルフェノールを使用しないエマルション重合によって、優れた粘着性を示すエマルション型アクリル系粘着剤を重合安定性良く(すなわち、ゲル化やモノマーの分離を起こすことなく)製造することができる。 また、本発明の製造方法で得られるエマルション型アクリル系粘着剤は、環境問題の原因物質であると共に、皮膚刺激性を有するノニルフェノールを含有しないだけでなく、優れた粘着性を有することから、種々の技術分野での粘着性が必要とされる製品に適用することができる。特に、そのモノマー組成、重合体(ゾル分)の重量平均分子量等の調整により、皮膚接着性が良好で、かつ、剥離時の痛みが十分に軽減されるエマルション型アクリル系粘着剤を実現できることから、医療用として特に好適であり、例えば、医療用粘着テープやシートの粘着層として有用である。 以下、本発明をより詳しく説明する。 本発明において、「(メタ)アクリル系モノマー」とは、アクリル系粘着剤に粘着性を付与するための主要単量体成分のことを意味し、一般的には、炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが充当する。 本発明において、(メタ)アクリル系モノマーは、皮膚に対する良好な粘着性の発現および粘着性を制御する点から、一般式(1):H2C=C(R1)COOR2 [式中、R1は水素又はメチル基、R2はC5〜C12のアルキル基を示す。]で表される第1の(メタ)アクリル系モノマーの1種又は2種以上と、一般式(2):H2C=C(R3)COOR4 [式中、R3は水素又はメチル基、R4はC1〜C4のアルキル基を示す。]で表される第2の(メタ)アクリル系モノマーの1種又は2種以上とを併用することが重要である。 一般式(1)で表される第1の(メタ)アクリル系モノマー(すなわち、炭素数が5〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル)において、式中のR2で示されるC5〜C12のアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状であってもよく、また、環状であってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。当該第1の(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、式中のR2がペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基又はドデシル基等であるアクリル酸(式中のR1が水素)およびメタクリル酸(式中のR2がメチル基)のアルキルエステルなどが挙げられ、これらの中でも、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチルが好ましい。 一方、一般式(2)で表される第2の(メタ)アクリル系モノマー(すなわち、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル)において、式中のR4で示されるC1〜C4のアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状であってもよく、また、環状であってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。当該第2の(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、式中のR4がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等であるアクリル酸(式中のR3が水素)およびメタクリル酸(式中のR3がメチル基)のアルキルエステルなどが挙げられ、これらの中でも、(メタ)アクリル酸イソブチルが好ましい。 本発明においては、粘着剤に優れた内部凝集力を付与する等の点から、重合原料のモノマーとして、上記の第1及び第2の(メタ)アクリル系モノマーとともに、これらと共重合可能なカルボキシル基含有ビニルモノマーを使用することが重要である(すなわち、上記の第1及び第2の(メタ)アクリル系モノマーとカルボキシル基含有ビニルモノマーとを含むモノマー混合物を使用することが重要である)。当該カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられるが、これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。 本発明において、モノマー混合物中の第1の(メタ)アクリル系モノマー、第2の(メタ)アクリル系モノマー及びカルボキシル基含有ビニルモノマーの配合比は、モノマー混合物全体当たり、第1の(メタ)アクリル系モノマーが60〜85重量%(好ましくは60〜80重量%)、第2の(メタ)アクリル系モノマーが10〜30重量%(好ましくは10〜25重量%)、カルボキシル基含有ビニルモノマーが2〜10重量%(好ましくは3〜8重量%)とすることが重要である。 第1の(メタ)アクリル系モノマーが60重量%未満では、粘着特性が損なわれるおそれがある。また、第2の(メタ)アクリル系モノマーが10重量%未満では、粘着特性が損なわれるおそれがあり、30重量%を超えると重合時に凝集物が発生する懸念がある。さらに、カルボキシル基含有ビニルモノマーが2重量%未満では重合体の分子量が大きくなり過ぎて、粘着特性(特に皮膚接着性)が損なわれるおそれがあり、10重量%を超えると重合時に凝集物が発生する懸念がある。 本発明においては、重合原料であるモノマーとして、上記3種の主モノマー(第1の(メタ)アクリル系モノマー、第2の(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有ビニルモノマー)の他に、必要に応じてエマルション粒子の安定化、粘着テープ等に適用した際の基材への密着性向上、被着体への初期接着性の向上等を目的として、他のモノマーをさらに配合してもよい。この他のモノマーは、全モノマー混合物中1重量%以下の範囲で各モノマーの種類に応じて適宜その使用量を選択でき、2種以上を使用してもよい。 当該他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどのアルキル基の炭素数が13〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン等があげられる。また、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の2つ以上の重合性官能基を有するものを使用してもよい。 本発明では、第1の(メタ)アクリル系モノマー、第2の(メタ)アクリル系モノマー及びカルボキシル基含有ビニルモノマーを少なくとも含むモノマー混合物をモノアルキルサクシネートスルホン酸塩とその他の乳化剤を95:5〜70:30(重量比)の混合比で含む乳化剤の存在下にエマルション重合して重合体エマルション(アクリルエマルション)を生成せしめる。 本発明でいう「モノアルキルサクシネートスルホン酸塩」とは、下記の一般式(3)で表される化合物である。 (式中、R5はC8〜C12のアルキル基、mは2〜20の自然数、X1、X2はそれぞれナトリウム原子又はアンモニア分子を示す。) 当該一般式(3)で表されるモノアルキルサクシネートスルホン酸塩において、式中のR5で示されるC8〜C12のアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状であってもよく、また、環状であってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。また、X1、X2は同一であるのが好ましく、同一である場合、X1、X2はともにナトリウム原子が好ましい。 当該モノアルキルサクシネートスルホン酸塩は市販品を使用してもよく、具体例としては、日本乳化剤社製の「ニューコール293」(商品名)(R5=C8H17、m=2、X1、X2=Na)、日本乳化剤社製の「RA5411」(商品名)(R5=C8H17、m=20、X1、X2=Na)、日本乳化剤社製の「RA544」(商品名)(R5=C8H17、m=8、X1、X2=Na)等が挙げられる。 モノアルキルサクシネートスルホン酸塩を乳化剤に用いることで、ゲル化を起こさず、凝集物をほとんど発生することなく、(メタ)アクリル系モノマーおよびカルボキシル基含有ビニルモノマーの重合反応が進行して、優れた性状の重合体エマルション(アクリルエマルション)、すなわち、エマルション型アクリル系粘着剤を得ることが可能となる。このような優れた重合安定効果は、乳化剤中のカルボキシル基とアクリルポリマー中のカルボキシル基の相互作用によるものと推定される。 また、本発明において、上記のモノアルキルサクシネートスルホン酸塩を他の乳化剤と95:5〜70:30(重量比)の混合比で使用することが重要である。当該他の乳化剤としては、エマルション重合用の公知の乳化剤(但し、ノニルフェノールを除く。)を制限なく使用できるが、アニオン系乳化剤又は/及びノニオン系乳化剤が好ましく、アニオン系乳化剤が特に好ましい。アニオン系乳化剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩およびその他のスルホン酸塩等が好適であり、ノニオン系乳化剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル等が好適である。これらの乳化剤は1種または2種以上を使用できる。 モノアルキルサクシネートスルホン酸塩と他の乳化剤とをかかる特定の混合比(95:5〜70:30)で使用することで、重合安定性がより一層向上し、より優れた性状の重合体エマルション(アクリルエマルション)を得ることができる。モノアルキルサクシネートスルホン酸塩と他の乳化剤との配合比は、より好ましくは95:5〜75:25(重量比)である。 本発明において、乳化剤の配合量は、全モノマー混合物100重量部に対して0.3〜5重量部程度が好ましく、より好ましくは0.5〜3重量部程度である。乳化剤の配合量が全モノマー混合物100重量部に対して5重量部を超えると、得られる粘着剤の耐水性が悪化して粘着特性が低下する傾向となり、また、0.3重量部未満では安定した乳化が維持できない場合があり、いずれも好ましくない。 本発明において、エマルション重合は、モノアルキルサクシネートスルホン酸塩とその他の乳化剤とを上記の配合量比で使用する以外は、通常のエマルション重合方法に従えばよく、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合など任意の方法で行う。なお、重合温度は重合開始剤の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、5〜97℃の範囲から選択できる。 重合開始剤としては、たとえば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなどのアゾ系開始剤;過流酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等の過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。またこれらは、単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。特に、重合開始剤に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩を用いることで、乳化重合の際にポリマー鎖間での架橋反応を起しゲルを生成せしめる。 これらの重合開始剤は、その種類や単量体の種類に応じてその使用量を適宜選択できるが、通常は全モノマー混合物100重量部あたり、例えば0.01〜1重量部程度の範囲から選択することができ、0.02〜0.5重量部の範囲で使用するのが好ましい。 また、得られる重合体(アクリルポリマー)の分子量を調整するために連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては特に限定されるものではないが、慣用の連鎖移動剤、たとえば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどが挙げられ、用途に応じて1種または2種以上用いられる。連鎖移動剤の使用量は、通常、全モノマー混合物100重量部に対して0.001〜0.3重量部程度である。 本発明のエマルション型アクリル系粘着剤は、乳化剤として上記のモノアルキルサクシネートスルホン酸塩とその他の乳化剤を使用したエマルション重合によって得られる重合体エマルション(アクリルエマルション)を主剤成分とし、これに必要に応じて、これに架橋剤、粘着付与剤、増粘剤、分散安定剤、充填剤、着色剤などの添加剤を添加してもよい。本発明のエマルション型アクリル系粘着剤は、乳化剤にノニルフェノールを使用していないので、安全性が高く、皮膚刺激性も小さく、医療用粘着剤に特に好適であるが、医療用粘着剤として使用する場合、これらの添加剤についても安全性の面で十分に吟味する必要がある。 本発明のエマルション型アクリル系粘着剤における、重合体(アクリルポリマー)の分子量特性は粘着剤の用途等に応じて適宜決定されるが、例えば、本発明の粘着剤を医療用粘着剤として使用する場合、その重合体のゾル分の重量平均分子量が15万〜40万であるのが好ましく、20万〜37万の範囲であるのが特に好ましい。ゾル分の重量平均分子量が15万未満では被着体に対して糊残りが生じ、40万を超えると皮膚接着性は維持できるものの、皮膚面からの粘着テープの剥離時に痛みを生じる場合がある。 なお、本発明におけるエマルション型アクリル系粘着剤における重合体のゾル分の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)にて測定した値であり、具体的には約1gの粘着剤をトルエン50mlに室温下1週間浸漬し、濾別して溶剤不溶分を取り除いたゾル分溶解のトルエン溶液を乾燥させて溶媒を除去後、残渣分を1.0g/lテトラヒドロフラン溶液に調製し、1昼夜放置する。その後、該溶液を0.45μm孔のメンブレンフィルタで濾過し、濾液をGPC法にてポリスチレン換算値として測定した(分析装置:TOSOH製、HLC−8120GPC)。 テープ状又はシート状の基材の片面又は両面に本発明のエマルション型アクリル系粘着剤による粘着層を形成することで、粘着テープ又はシートが得られる。粘着剤層の厚さは、粘着力等に応じて適宜決定しうるが、一般的には100μm以下、好ましくは20〜80μmである。粘着剤層は、エマルション型アクリル系粘着剤を基材上に直接塗布、乾燥して形成してもよいし、一旦剥離紙上に塗布、乾燥した後に基材へ貼着して形成してもよい。基材への粘着剤の塗布に際しては、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等を用いることができる。 上記の基材には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどの各種プラスチックフィルムや織布、編布、不織布、紙、金属箔、またはこれらを積層したものなどを用いることができる。基材の厚みは、材質によっても異なるが、10〜1000μm程度とするのが一般的である。 本発明の粘着剤を使用した粘着テープもしくはシートは、一般消費財としてのテープやタックシート、両面テープ等の種々の用途に使用できるが、中でも、医療用途、衛生材料用途などに好適であり、特に医療用途に好適である。これらの用途に用いるものであれば形状に特に限定はなく、例えば、救急絆創膏や巻絆創膏、大型絆創膏、ドレッシング材、ドレープ材などに適宜加工して用いることができる。 以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。以下は代表的な実施例を示すものでこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。尚、以下に部とあるのは、全て重量部を意味するものである。[実施例1] 冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えた反応容器内に、水180部、モノアルキルサクシネートスルホン酸塩型の乳化剤として「ニューコール293」(日本乳化剤社製)(=一般式(3)中のR5がC8H17、mが2、X1とX2がそれぞれNaである化合物)1部および「ラテムルE−118B」(花王社製)(=ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム)0.06部、モノマーとしてアクリル酸2−エチルヘキシル75部、アクリル酸5部、アクリル酸イソブチル20部、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン0.06部を仕込み、重合温度60℃、攪拌下1時間窒素置換を行った。その後、少量の水で溶解した過硫酸アンモニウム0.2部を入れて、さらに1時間反応させた。 ここに、水30部、モノアルキルサクシネートスルホン酸塩型の乳化剤として「ニューコール293」(日本乳化剤社製)0.8部および「ラテムルE−118B」(花王社製)(=ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム)0.2部、モノマーとして、アクリル酸エチルヘキシル75部、アクリル酸5部、アクリル酸イソブチル20部、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン0.06部、重合開始剤0.05部を乳化したものを乳化モノマー分割添加法により前記仕込みに滴下し、約8時間反応させた。その後、80℃で1時間熟成反応を行うことにより重合反応を完結させ、本発明のエマルション型粘着剤を得た。粘着剤(重合体)の重量平均分子量は28万であった。 このエマルション型粘着剤を、38μmPETフィルムまたはシリコーン剥離紙の処理面に粘着剤層の厚みが40μmとなるように塗布、乾燥して粘着テープを作製した。[実施例2〜6] 単量体混合物組成及び乳化剤量を下記表1の如く変更した以外は、実施例1と同様にしてエマルション重合を行い、本発明のエマルション型粘着剤を得た。表1には参考のため実施例1の組成も併記した。[比較例1〜5] 単量体混合物組成及び乳化剤量を表1の如く変更した以外は、実施例1と同様にして5種類の配合を行った。[評価試験](1)重合安定性 実施例、比較例で得られたエマルションに対して、重合容器から出す際の状態を、ゲル化、ブツの有無を目視観察し、下記の基準で評価した。 ○ :重合中にゲル化せず、かつブツが発生しなかった。 分離 :重合中期にモノマーの分離があった。 ブツ :ブツが発生していた。 ゲル化:重合中にゲル化した。(2)粘着特性<評価1>粘着性 前記乾燥後の粘着テープを12mm幅に切断し、粘着剤面をフェノール樹脂積層板に2kgゴムローラーで圧着した。30分経過後、速度300mm/minで引き剥がすときの応力を粘着力として測定した。<評価2>皮膚粘着性 ボランティアの前腕内側皮膚面に、幅12mm、長さ70mmに裁断した粘着テープを貼付し、3時間後、以下の評価基準にて評価した。 皮膚接着性 ○ :非常に強く接着する感触 △ :まあまあ接着する感触 × :接着が弱い感触 剥離時の痛さ ○ :剥離時に痛くない △ :剥離時に少し痛い × :剥離時に痛い(3)環境ホルモンの有無 各接着剤構成成分について、カタログおよびMSDSの市販データから判断した。 表中、ニューコール1305SNおよびTritonX301はアニオン系乳化剤であり、ニューコール1305SNは日本乳化剤社製のポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウムであり、TritonX301はダウケミカル社製のオクチルフェノキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウムである。 表1の結果より、本発明のエマルション型アクリル系粘着剤の製造方法によれば、ノニルフェノールを使用せずに、重合体エマルション(アクリルエマルション)を重合安定性良く生成し得、しかも、良好な粘着特性のエマルション型アクリル系粘着剤を容易に製造できることが分かる。そして、こうして得られる本発明のエマルション型アクリル系粘着剤は、特に皮膚(生体外皮膚)に対して良好な粘着特性を示すことから、皮膚貼付用途の医療用粘着テープやシートの粘着層用に特に好適であることが分かる。 一般式(1):H2C=C(R1)COOR2 [式中、R1は水素又はメチル基、R2はC5〜C12のアルキル基を示す。]で表される第1の(メタ)アクリル系モノマーを60〜85重量%、一般式(2):H2C=C(R3)COOR4 [式中、R3は水素又はメチル基、R4はC1〜C4のアルキル基を示す。]で表される第2の(メタ)アクリル系モノマーを10〜30重量%、及びカルボキシル基含有ビニルモノマーを2〜10重量%の配合比で含むモノマー混合物を、モノアルキルサクシネートスルホン酸塩とその他の乳化剤を95:5〜70:30(重量比)の混合比で含む乳化剤の存在下にエマルション重合することを特徴とする、エマルション型アクリル系粘着剤の製造方法。 他の乳化剤がアニオン系乳化剤又は/及びノニオン系乳化剤である、請求項1記載のエマルション型アクリル系粘着剤の製造方法。 モノアルキルサクシネートスルホン酸塩とその他の乳化剤を含む乳化剤の使用量がモノマー100重量部当たり0.3〜5重量部である、請求項1又は2記載のエマルション型アクリル系粘着剤の製造方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法で製造されたエマルション型アクリル系粘着剤。 重合体のゾル分の重量平均分子量が15万〜40万である、請求項4記載のエマルション型アクリル系粘着剤。 医療用である、請求項4又は5記載のエマルション型アクリル系粘着剤。 基材の少なくとも片面に請求項4〜6のいずれか一項に記載のエマルション型アクリル系粘着剤による粘着層を有する医療用粘着テープまたはシート。 【課題】乳化剤にノニルフェノールを使用せずに、重合安定性良く、重合体エマルション(アクリルエマルション)を生成し得るエマルション型アクリル系粘着剤の製造方法を提供すること。【解決手段】一般式(1):H2C=C(R1)COOR2 [式中、R1は水素又はメチル基、R2はC5〜C12のアルキル基を示す。]で表される第1の(メタ)アクリル系モノマーを60〜85重量%、一般式(2):H2C=C(R3)COOR4 [式中、R3は水素又はメチル基、R4はC1〜C4のアルキル基を示す。]で表される第2の(メタ)アクリル系モノマーを10〜30重量%、及びカルボキシル基含有ビニルモノマーを2〜10重量%の配合比で含むモノマー混合物を、モノアルキルサクシネートスルホン酸塩とその他の乳化剤を95:5〜70:30(重量比)の混合比で含む乳化剤の存在下にエマルション重合して、重合体エマルションを得る。【選択図】なし