生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ホスホジエステラーゼ阻害剤
出願番号:2005301153
年次:2006
IPC分類:A61K 31/23,A61P 3/04,A61P 3/06,A61P 7/02,A61P 9/10,A61P 11/06,A61P 11/16,A61P 37/08,A61P 43/00,C12N 9/99,C12P 23/00


特許情報キャッシュ

岡田 裕実春 JP 2006016407 公開特許公報(A) 20060119 2005301153 20051017 ホスホジエステラーゼ阻害剤 ヤマハ発動機株式会社 000010076 南條 博道 100104673 岡田 裕実春 JP 2005174749 20050615 A61K 31/23 20060101AFI20051216BHJP A61P 3/04 20060101ALI20051216BHJP A61P 3/06 20060101ALI20051216BHJP A61P 7/02 20060101ALI20051216BHJP A61P 9/10 20060101ALI20051216BHJP A61P 11/06 20060101ALI20051216BHJP A61P 11/16 20060101ALI20051216BHJP A61P 37/08 20060101ALI20051216BHJP A61P 43/00 20060101ALI20051216BHJP C12N 9/99 20060101ALI20051216BHJP C12P 23/00 20060101ALN20051216BHJP JPA61K31/23A61P3/04A61P3/06A61P7/02A61P9/10A61P9/10 101A61P11/06A61P11/16A61P37/08A61P43/00 111C12N9/99C12P23/00 3 OL 8 4B064 4C206 4B064AH01 4B064CA02 4B064CE08 4B064DA01 4C206AA01 4C206AA02 4C206DB06 4C206DB56 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA39 4C206ZA40 4C206ZA45 4C206ZA54 4C206ZA59 4C206ZA60 4C206ZA70 4C206ZB13 4C206ZC20 4C206ZC33 本発明は、ホスホジエステラーゼ阻害剤に関する。より詳細には、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する、ホスホジエステラーゼ阻害剤、およびホスホジエステラーゼが関与する疾患の治療剤に関する。 ホスホジエステラーゼ(PDE)は、種々の環状ヌクレオシド一リン酸(c−AMPおよびc−GMPを含む)の加水分解を触媒する酵素である。細胞内情報伝達物質であるc−AMPやc−GMPは、PDEによってそれぞれ不活性な5’−AMPや5’−GMPに分解される。これらを不活化するPDEアイソザイムは、生体に一律に存在するのではなく、細胞分布や組織分布などに差があり、臓器特有の局在性を持って生体内に存在している。現在までにPDE1〜PDE11まで11種類のファミリーの存在が確認されている(非特許文献1)。例えば、PDE4は気道平滑筋、上皮細胞、炎症細胞(マクロファージ、好中球、好酸球)、T−リンパ球などの種々の細胞に存在しており、これらの細胞の細胞内c−AMPレベルを調節し、細胞機能の制御を行っている。一方、PDE3などの他のPDEは、血小板、心筋、血管平滑筋などに存在し、細胞内c−GMPまたはc−AMPレベルを調節し、循環器系の制御に関与している。例えば、PDE2はc−GMP依存的であり、心臓および副腎に見出される。PDE3はc−GMPにより阻害され、この酵素の阻害により正の筋収縮活性が生じる。PDE5は種々の血管平滑筋中のc−GMPを調節する。このように、PDEアイソザイムは、それぞれ異なる生理機能を有している。 そのため、各PDEアイソザイムを阻害することによってそれに関連する疾患を治療するための薬剤が多数開発され、実際に使用されている。例えば、PDE3阻害剤は、心筋症、肺高血圧症および関連する病態の処置に有用であり、血小板凝集抑制作用および脂肪分解亢進作用を有する(非特許文献2および3)。また、PDE4阻害剤は、気管支拡張作用、抗炎症作用、メディエータ遊離抑制作用、免疫抑制作用などを有する。さらに、近年では、PDE5阻害剤が、雄性勃起機能障害(MED)および雌性性的機能障害(FSD)を治療するために有効であることが見出されている。 このように、現在使用されているPDE阻害剤はほとんどが化学合成物質であり、天然物由来のPDE阻害剤についてはあまり研究されていない。例えば、種々の天然物抽出物がPDE阻害作用を有することが報告されているが(例えば、特許文献1〜5)、それらの有効成分は同定されていない。特開2004−331648号公報特開2004−26719号公報特開2003−261457号公報特開2002−87974号公報特開平11−209299号公報Current opinion in Cell Biology.,12巻,2000年,pp.174-179Goodman, Gilman's: The Pharmacological Basis of Thearpeutics,第9版,pp.832-837,McGraw-Hill,1996年日高弘義ら,循環器科,37巻,1995年,pp.232-242 本発明は、より安価かつ安全性の高い天然物由来のPDE阻害剤を提供することを目的とする。 本発明は、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤を提供する。 本発明はまた、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する、ホスホジエステラーゼが関与する疾患の治療剤を提供する。 1つの実施態様では、上記疾患は、慢性閉塞性肺疾患、喘息、慢性動脈閉塞症、心血管病、炎症性疾患、アレルギー性疾患、血栓症、脳障害、高脂血症、または肥満である。 本発明によれば、新たな天然物由来のPDE阻害剤が提供される。このPDE阻害剤は、種々のPDEが関与すると考えられる慢性閉塞性肺疾患、喘息、慢性動脈閉塞症、心血管病、炎症性疾患、アレルギー性疾患、血栓症、脳障害、高脂血症、肥満などの種々の疾患の治療剤として用いられ得る。本発明PDE阻害剤は、非常に毒性が低いため、安全性が高い。 本発明のPDE阻害剤に含まれる、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、以下の式:(ここで、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または脂肪酸残基である)で示されるカロテノイドの一種である。アスタキサンチンのエステルとしては、特に限定されないが、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、あるいはオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ビスホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸のモノエステルまたはジエステルが挙げられる。これらは単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。アスタキサンチンは、β−カロチンの骨格の両端にオキソ基とヒドロキシ基とを余分に有する構造であるため、β−カロチンとは異なり、分子の安定性が低い。これに対し、両端のヒドロキシ基が不飽和脂肪酸などでエステル化されたエステル体(例えば、オキアミ抽出物)はより安定である。 本発明に用いられるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、化学的に合成されたものであっても、あるいは天然物由来のもののいずれであってもよい。後者の天然物としては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する赤色酵母;ティグリオパス(赤ミジンコ)、オキアミなどの甲殻類の殻;緑藻類などの微細藻類などが挙げられる。本発明においては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルの特性を利用できるものであれば、どのような方法で生産されたアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する抽出物をも使用することができる。一般的には、これらの天然物からの抽出物が用いられ、抽出エキスの状態であっても、また必要により適宜精製したものであってもよい。本発明においては、このようなアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する粗抽出物や破砕粉体物、あるいは必要により適宜精製されたもの、化学合成されたものを、単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。体内での安定性を考慮すると、好ましくはエステル体が用いられる。 本発明のPDE阻害剤は、PDEが関与する疾患または症状を治療または予防するのに有用であり得る。このような疾患または症状としては、心筋症、慢性動脈閉塞症、心不全を含む心血管病;肺高血圧症、喘息;閉塞性気管支炎、肺気腫、気管支喘息などの慢性閉塞性肺疾患;アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻結膜炎、自己免疫性糖尿病、自己免疫性脳脊髄炎;変形性関節症、慢性関節リウマチ;乾癬や潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患;悪質液;AIDS;クローン病;多発性硬化症;脳虚血;再潅流障害、再狭窄、脳卒中;敗血症性ショック、中毒性ショック;大脳マラリア;同種移植拒絶;うつ病;雄性勃起機能障害(MED)および雌性性的機能障害(FSD)、月経困難症;早産;肥満などが挙げられる。 本発明のPDEが関与する疾患の治療剤は、上記の本発明のPDE阻害剤と同様に、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを有効成分として含有する。特に、慢性閉塞性肺疾患、喘息、慢性動脈閉塞症、心血管病、炎症性疾患、アレルギー性疾患、血栓症、脳障害、高脂血症、または肥満の治療に有用である。 本発明のPDE阻害剤またはPDEが関与する疾患の治療剤の投与経路は、経口投与または非経口投与のいずれであってもよい。その剤形は、投与経路に応じて適宜選択される。例えば、注射液、輸液、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、腸溶剤、トローチ、内用液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、外用液剤、湿布剤、点鼻剤、点耳剤、点眼剤、吸入剤、軟膏剤、ローション剤、坐剤、経腸栄養剤などが挙げられる。これは、症状に応じてそれぞれ単独でまたは組み合わせて使用することができる。これらの製剤には、必要に応じて、賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤技術分野において通常用いられる補助剤が用いられる。 本発明のPDE阻害剤またはPDEが関与する疾患の治療剤の投与量は、投与の目的や投与対象者の状況(性別、年齢、体重など)に応じて異なる。通常、成人に対して、アスタキサンチンフリー体換算で、経口投与の場合、1日あたり0.1mg〜2g、好ましくは4mg〜500mg、一方、非経口投与の場合、1日あたり0.01mg〜1g、好ましくは0.1mg〜500mgで投与され得る。 本発明のPDE阻害剤は、上記のような医薬品としてだけでなく、医薬部外品、化粧品、機能性食品、栄養補助剤、飲食物などとして使用することができる。医薬部外品または化粧品として使用する場合、必要に応じて、医薬部外品または化粧品などの技術分野で通常用いられている種々の補助剤とともに使用され得る。あるいは、機能性食品、栄養補助剤、または飲食物として使用する場合、必要に応じて、例えば、甘味料、香辛料、調味料、防腐剤、保存料、殺菌剤、酸化防止剤などの食品に通常用いられる添加剤とともに使用してもよい。また、溶液状、懸濁液状、シロップ状、顆粒状、クリーム状、ペースト状、ゼリー状などの所望の形状で、あるいは必要に応じて成形して使用してもよい。これらに含まれる割合は、特に限定されず、使用目的、使用形態、および使用量に応じて適宜選択することができる。 (調製例1:アスタキサンチンモノエステルの調製) アスタキサンチンモノエステルを、次のように調製した。ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pulvialis)K0084株を、25℃にて光照射条件下3%CO2を含むガスを通気しながら栄養ストレス(窒素源欠乏)をかけて培養し、シスト化した。シスト化した細胞を、当業者が通常用いる手段によって破砕し、エタノールで油性画分を抽出した。抽出物は、アスタキサンチン類の他に、トリグリセリドなどの脂質を含んでいた。抽出物を、合成樹脂吸着剤を用いるカラムクロマトグラフィーにかけて、アスタキサンチンのモノエステルを含む精製物を得た。この精製物をHPLCによって分析し、このアスタキサンチンモノエステル精製物が、分子量858のモノエステルを主成分として含み、アスタキサンチンの遊離体およびジエステル体を含まず、わずかにジグリセリドを含んでいることを確認した。 (実施例1:PDE3の活性に及ぼす効果) 上記調製例1で得たアスタキサンチンモノエステルについて、PDE3の活性に及ぼす効果を検討した。PDE3として、ヒト血小板由来のPDE3を用いた。アスタキサンチンモノエステルを、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、以下の表1に示すアッセイ系に250、25、2.5、および0.25μMとなるように添加してインキュベートして、阻害率を測定した。 アスタキサンチンモノエステルによる50%阻害濃度(IC50)は、71.1μMであった。250μMにおける酵素活性の阻害率は72%であり、そして25μMにおける阻害率は31%であった。このように、アスタキサンチンモノエステルは、PDE3活性に対して低い阻害濃度かつ比較的高い阻害率を示した。 (実施例2:PDE4の活性に及ぼす効果) 上記調製例1で得たアスタキサンチンモノエステルについて、PDE4の活性に及ぼす効果を検討した。PDE4として、ヒトU937細胞由来のPDE4を用いた。アスタキサンチンモノエステルを、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、上記表1に示すアッセイ系に250、25、2.5、および0.25μMとなるように添加してインキュベートして、阻害率を測定した。 アスタキサンチンモノエステルによる50%阻害濃度(IC50)は、134μMであった。250μMにおける酵素活性の阻害率は70%であった。このように、アスタキサンチンモノエステルは、PDE4活性に対して比較的低い阻害濃度かつ比較的高い阻害率を示した。 (参考例1:HUVECに対する50%致死濃度の測定) ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(ATCC CRL−1730)を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手し、1%Antibiotic-Antimycotic(GIBCO BRL, USA)を添加した10%ウシ胎児血清含有Endothelial Cell Growth Medium(CELL APPLICATIONS, USA))中、5%CO2雰囲気下、37℃にて予備培養した。 Matrigelマトリックス(BD Biosciences, USA)を融解して氷上で4℃にて保持し、そして50μLのマトリックスを96ウェル組織培養プレートの各ウェルに移した。プレートを37℃にて少なくとも1時間インキュベートして、マトリックス溶液を固化させた。 一方、上記調製例1で得たアスタキサンチンモノエステルを、DMSOに溶解し、次いで蒸留水で希釈して、40(v/v)%DMSO中に25000、2500、250、25、および2.5μMのアスタキサンチンモノエステルを含むストック試験溶液を調製した。 100μLのHUVEC懸濁液(約2.5×103細胞/ウェル)を、5%CO2雰囲気下37℃にて96ウェルのMatrigelプレートに入れた。24時間後、100μLの増殖培地および上記の各ストック試験溶液またはベヒクル(40(v/v)%DMSO)2μLずつを、各2つのウェルに添加し、さらに72時間インキュベートした。DMSOおよびアスタキサンチンモノエステルの最終濃度は、250、25、2.5、0.25、および0.025μMであった。 インキュベーション終了後、20μLの90%alamarBlue試薬を個々のウェルに添加し、さらに6時間インキュベートした。次いで、各ウェルの蛍光強度を、Spectrafluor Plusプレートリーダーを用いて、励起波長530nmおよび発光波長590nmにて測定し、生存細胞数を計数した。これは、生存細胞が、alamarBlueを非蛍光性の酸化型(青)から蛍光性の還元型(赤)に変化させる能力に基づく。なお、50%致死濃度は、実験開始時の細胞数の50%になる濃度を算出した。 この結果、HUVECに対するアスタキサンチンモノエステルの50%致死濃度(LC50)は250μM(DMSOへの最大溶解濃度)以上であり、毒性が低いことがわかった。 本発明によれば、新たなPDE阻害剤が提供される。このPDE阻害剤は、PDEが関与すると考えられる慢性閉塞性肺疾患、喘息、慢性動脈閉塞症、心血管病、炎症性疾患、アレルギー性疾患、血栓症、脳障害、高脂血症、肥満などの種々の疾患の治療剤として用いられ得る。本発明のPDE阻害剤に含有されるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは食経験が長く、非常に毒性が低いため、安全性が極めて高い。したがって、医薬品として使用されるだけでなく、健康食品などとして日常的に予防的に用いられ得る。 アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する、ホスホジエステラーゼ阻害剤。 アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する、ホスホジエステラーゼが関与する疾患の治療剤。 前記疾患が、慢性閉塞性肺疾患、喘息、慢性動脈閉塞症、心血管病、炎症性疾患、アレルギー性疾患、血栓症、脳障害、高脂血症、または肥満である、請求項2に記載の治療剤。 【課題】より安価かつ安全性の高い天然物由来のホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤を提供すること。【解決手段】本発明のPDE阻害剤およびPDEが関与する疾患の治療剤は、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する。本発明のPDE阻害剤は、PDEが関与すると考えられる種々の疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患、喘息、慢性動脈閉塞症、心血管病、炎症性疾患、アレルギー性疾患、血栓症、脳障害、高脂血症、肥満の治療に有用である。【選択図】なし


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