生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_血管新生阻害剤
出願番号:2005301146
年次:2006
IPC分類:A61K 31/122,A61P 1/16,A61P 9/00,A61P 29/00,A61P 35/00


特許情報キャッシュ

岡田 裕実春 JP 2006008712 公開特許公報(A) 20060112 2005301146 20051017 血管新生阻害剤 ヤマハ発動機株式会社 000010076 南條 博道 100104673 岡田 裕実春 JP 2005085525 20050324 A61K 31/122 20060101AFI20051209BHJP A61P 1/16 20060101ALI20051209BHJP A61P 9/00 20060101ALI20051209BHJP A61P 29/00 20060101ALI20051209BHJP A61P 35/00 20060101ALI20051209BHJP JPA61K31/122A61P1/16A61P9/00A61P29/00 101A61P35/00 3 OL 7 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206CB25 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA36 4C206ZA75 4C206ZB15 4C206ZB26 本発明は、血管新生阻害剤に関する。より詳細には、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを有効成分として含有する、血管新生阻害剤に関する。 血管新生とは、血管が新たに増生する現象であり、脊椎動物の胎生期における循環器系の形成や、組織形成に関与するばかりでなく、成熟個体の性周期における黄体形成、胎盤形成などに関与する。このように、血管新生は、健常な状態で発生し、組織の回復に重要な役割を担っている。しかし、糖尿病をはじめ多くの慢性疾患において毛細血管が増加して組織に重篤な損傷をもたらすことも知られている。 血管新生が関与する疾患としては、悪性腫瘍の増大や転移、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、加齢黄斑変性症、炎症性皮膚疾患、関節リウマチ、変形性関節症などが挙げられる。 例えば、悪性腫瘍が増殖する際には、腫瘍細胞の増殖に必要な栄養や酸素を得るために腫瘍細胞が自ら血管新生促進因子による血管の新生を誘導する。悪性腫瘍が他の臓器や部位へ転移する場合も血管新生を誘導し、血流にのって腫瘍細胞が移動する。糖尿病性網膜症の場合には、糖尿病による粘性血液によって毛細血管が詰まり、網膜に出血や浮腫を生じ、さらにこれが慢性化して網膜に酸素や栄養の不足を起こすため、網膜上や神経系乳頭上に新生血管が発生し、その周囲に繊維組織が形成される。この繊維組織によって網膜が引張り上げられたり(網膜剥離)、網膜の血管が引き裂かれて出血を起こし(硝子体出血)、やがて高度視力障害や失明に至る。 このように、血管新生は様々な疾病の発症や進行に深く関与しているため、これら疾病の治療を目的として、血管新生を阻害する物質の探索がこれまでに数多く行われている。血管新生を阻害する作用のある物質や薬剤として、例えば、硫酸化多糖体(特許文献1)、アスコルビン酸エーテルおよび関連化合物(特許文献2)、チアゾール誘導体(特許文献3)、鮫軟骨エキス(コンドロイチンおよびムコ多糖類)(特許文献4)などがある。しかし、これまで血管新生を阻害する作用を示す物質として提案された物質は、実用的に満足できる効果を発揮し得るものではなかった。このため、血管新生をより強力に阻害し、安全性の高い物質を開発することが求められている。 血管新生が関与する疾病の1つである癌の治療法としては、一般的に外科的方法、放射線療法、化学療法(薬剤投与)などが行われている。これらのうち化学療法としては、直接腫瘍細胞に作用して腫瘍細胞を死滅させる薬剤を投与する治療法が広く適用されており、このような治療法に適用するための抗腫瘍剤についての提案は多い。しかし、このような薬剤は、腫瘍細胞を死滅させると共に正常細胞にも作用するため、癌の治療効果は高いが、副作用が非常に強いという欠点がある。また、このよう薬剤は、細胞単位で効いても、腫瘍塊の深部まで届かないため、根本的な解決とならない。さらに、癌はその器官が異なると性質も異なり、抗腫瘍剤の選択や投与方法が異なることは珍しくなく、様々な種類の癌に効果を有する抗腫瘍剤が望まれている。 カロテノイド(カロチノイド)は、動物、植物、および微生物に広く分布し、その数約600種におよぶ黄〜橙〜赤色を呈する脂溶性生体色素である。その一種であるアスタキサンチンは、オキアミ、エビ、カニなどの甲殻類、サケ・マスの筋肉・卵(イクラなど)、タイ・コイ・金魚などの体表などに含有されている。アスタキサンチンは、プロビタミンAとなり得ることや顕著な抗酸化作用を有することだけでなく、抗腫瘍剤としての可能性も知られている。例えば、膀胱癌、口腔癌、および結腸癌の腫瘍形成抑制作用(非特許文献1);抗ストレス作用(特許文献5);アポトーシス誘導作用(特許文献6);トポイソメラーゼ阻害作用(特許文献7);プロテインキナーゼ阻害作用(特許文献8);UV照射からの皮膚の防御作用(非特許文献2);乳癌増殖抑制作用(非特許文献3);アスタキサンチン誘導体の一種による腫瘍形成阻害作用(非特許文献4);免疫応答増強作用(非特許文献5)などが報告されている。しかし、上記のような血管新生阻害に関しては、全く報告がない。特開昭63−119500号公報特開昭58−131978号公報特公平6−62413号公報特開平10−147534号公報特開平9−124470号公報特開2001−114673号公報特開2001−114674号公報特開2001−114683号公報T. Tanakaら、Carcinogenesis,1995年,16巻,12号,pp.2957-2963N.M. LyonsおよびN.M. O'Brien、J. Dermatol. Sci.,2002年,30巻,pp.73-84B.P. Chewら、Anticancer Res.,1999年,19巻,pp.1849-1853L.M. Hixら、Cancer Lett.,2004年,211巻,pp.25-37H. Jyonouchiら、Nutr. Cancer,2000年,36巻,1号,pp.59-65 本発明は、血管新生を阻害する新たな薬剤を提供することを目的とする。本発明はさらに、血管新生を伴う疾病の治療剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記のように抗腫瘍剤としての可能性が報告されているアスタキサンチンについて種々の検討を行ったところ、アスタキサンチンが血管新生阻害活性を有することを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを有効成分として含有する、血管新生阻害剤を提供する。 本発明はまた、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを有効成分として含有する、血管新生を伴う癌または疾病の治療剤を提供する。 1つの実施態様では、上記疾病はリウマチおよび黄斑変性症である。 本発明によれば、新たな血管新生阻害剤が提供される。この血管新生阻害剤を有効成分とする薬剤は、腫瘍増殖、関節リウマチ、糖尿病性網膜症などの血管新生を伴う種々の疾病の治療剤として用いられ得る。この治療剤は、特に、癌細胞の増殖抑制や固形腫瘍の縮小などに有用であり得る。さらに、本発明の血管新生阻害剤または治療剤は、低毒性であるため、安全性が高い。 本発明の血管新生阻害剤の有効成分であるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、以下の構造:(ここで、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または脂肪酸残基である)で示されるカロテノイドの一種である。アスタキサンチンのエステルとしては、特に限定されないが、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、あるいはオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ビスホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸のモノエステルまたはジエステルが挙げられる。これらは単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。アスタキサンチンは、β−カロチンの骨格の両端にオキソ基とヒドロキシ基とを余分に有する構造であるため、β−カロチンとは異なり、分子の安定性が低い。これに対し、両端のヒドロキシ基が不飽和脂肪酸などでエステル化されたエステル体(例えば、オキアミ抽出物)はより安定である。 本発明に用いられるアスタキサンチンおよび/またはそのエステルは、化学的に合成されたものであっても、あるいは天然物由来のもののいずれであってもよい。後者の天然物としては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する赤色酵母;ティグリオパス(赤ミジンコ)、オキアミなどの甲殻類の殻;緑藻類などの微細藻類などが挙げられる。本発明においては、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルの特性を利用できるものであれば、どのような方法で生産されたアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する抽出物をも使用することができる。一般的には、これらの天然物からの抽出物が用いられ、抽出エキスの状態であっても、また必要により適宜精製したものであってもよい。本発明においては、このようなアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含有する粗抽出物や破砕粉体物、あるいは必要により適宜精製されたもの、化学合成されたものを、単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。体内での安定性を考慮すると、好ましくはエステル体が用いられる。 本発明の血管新生を伴う疾病の治療剤は、上記の本発明の血管新生阻害剤と同様に、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを有効成分として含有する。血管新生を伴う疾病としては、悪性腫瘍の増大や転移、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、加齢黄斑変性症、炎症性皮膚疾患、関節リウマチ、変形性関節症などが挙げられる。本発明の治療剤は、血管新生を伴う癌および関節リウマチの治療に有用である。 本発明の血管新生阻害剤または治療剤の投与経路は、経口投与または非経口投与のいずれであってもよい。その剤形は、投与経路に応じて適宜選択される。例えば、注射液、輸液、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、腸溶剤、トローチ、内用液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、外用液剤、湿布剤、点鼻剤、点耳剤、点眼剤、吸入剤、軟膏剤、ローション剤、坐剤、経腸栄養剤などが挙げられる。これは、症状に応じてそれぞれ単独でまたは組み合わせて使用することができる。これらの製剤には、必要に応じて、賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤技術分野において通常用いられる補助剤が用いられる。 本発明の血管新生阻害剤または治療剤の投与量は、投与の目的や投与対象者の状況(性別、年齢、体重など)に応じて異なる。通常、成人に対して、アスタキサンチンフリー体換算で、経口投与の場合、1日あたり0.1mg〜2g、好ましくは4mg〜500mg、一方、非経口投与の場合、1日あたり0.01mg〜1g、好ましくは0.1mg〜500mgで投与され得る。 本発明の血管新生阻害剤は、上記のような医薬品としてだけでなく、医薬部外品、化粧品、機能性食品、栄養補助剤、飲食物などとして使用することができる。医薬部外品または化粧品として使用する場合、必要に応じて、医薬部外品または化粧品などの技術分野で通常用いられている種々の補助剤とともに使用され得る。あるいは、機能性食品、栄養補助剤、または飲食物として使用する場合、必要に応じて、例えば、甘味料、香辛料、調味料、防腐剤、保存料、殺菌剤、酸化防止剤などの食品に通常用いられる添加剤とともに使用してもよい。また、溶液状、懸濁液状、シロップ状、顆粒状、クリーム状、ペースト状、ゼリー状などの所望の形状で、あるいは必要に応じて成形して使用してもよい。これらに含まれる割合は、特に限定されず、使用目的、使用形態、および使用量に応じて適宜選択することができる。 (調製例1:アスタキサンチンモノエステルの調製) アスタキサンチンモノエステルを、次のように調製した。ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pulvialis)K0084株を、25℃にて光照射条件下3%CO2を含むガスを通気しながら栄養ストレス(窒素源欠乏)をかけて培養し、シスト化した。シスト化した細胞を、当業者が通常用いる手段によって破砕し、エタノールで油性画分を抽出した。抽出物は、アスタキサンチン類の他に、トリグリセリドなどの脂質を含んでいた。抽出物を、合成樹脂吸着剤を用いるカラムクロマトグラフィーにかけて、アスタキサンチンのモノエステルを含む精製物を得た。この精製物をHPLCによって分析し、このアスタキサンチンモノエステル精製物が、分子量858のモノエステルを主成分として含み、アスタキサンチンの遊離体およびジエステル体を含まず、わずかにジグリセリドを含んでいることを確認した。 (実施例1:血管新生阻害活性) ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、内皮細胞増殖サプリメントの存在下でMatrigelにおいて、分化して毛細管様構造を形成する。そこで、アスタキサンチンモノエステルの血管新生阻害活性を、未処理のコントロールと比較して、血管ネットワーク連続体の非構築を観察することによって評価した。 アスタキサンチンモノエステルを、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、次いで蒸留水で希釈して、40(v/v)%DMSO中に25000、2500、250、25、および2.5μMのアスタキサンチンモノエステルを含むストック試験溶液を調製した。 一方、HUVEC(ATCC CRL−1730)を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手し、1%Antibiotic-Antimycotic(GIBCO BRL, USA)を添加した10%ウシ胎児血清含有Endothelial Cell Growth Medium(CELL APPLICATIONS, USA))中、5%CO2雰囲気下、37℃にて予備培養した。 まず、Matrigelマトリックス(BD Biosciences, USA)を融解して氷上で4℃にて保持し、そして50μLのマトリックスを96ウェル組織培養プレートの各ウェルに移した。プレートを37℃にて少なくとも1時間インキュベートして、マトリックス溶液を固化させた。 次に、200μLのHUVEC懸濁液(約1.5×104細胞/ウェル)を、96ウェルのMatrigelプレートに入れた。次いで、上記の各ストック試験溶液またはベヒクル(40(v/v)%DMSO)を2μLずつ各2つのウェルに添加し、5%CO2雰囲気下で37℃にて18時間培養した。なお、DMSOの最終濃度は、0.4(v/v)%であり、そしてアスタキサンチンモノエステルの最終濃度は、250、25、2.5、0.25、および0.025μMであった。また、標準参照物質であるスラミン(Sigma, USA)についても同時にテストした。 インキュベーション終了後、個々のウェルの内皮細胞管の形態を、顕微鏡写真によって評価した。結果を図1に示す。図1からわかるように、アスタキサンチンモノエステルの存在下では、コントロールのベヒクルで形成されている細胞体間の連続的なネットワークの形成が不十分であった。 次に、各顕微鏡写真について、形成された血管の長さを測定した。コントロールに対して管の長さが30%以上短いものを有意な阻害効果ありと判定した。結果を図2に示す。この結果、アスタキサンチンモノエステルは、ベヒクル処理コントロール群に対して血管形成に有意な阻害を生じ、最小阻害濃度(MIC)は250μMであった。なお、同時にテストした標準参照物質であるスラミンについては、MICは10μMであった。 (参考例1:HUVECに対する50%致死濃度および阻害濃度の測定) 100μLのHUVEC懸濁液(約2.5×103細胞/ウェル)を、5%CO2雰囲気下37℃にて96ウェルのMatrigelプレートに入れた。24時間後、100μLの増殖培地および上記の各ストック試験溶液またはベヒクル(40(v/v)%DMSO)2μLずつを、各2つのウェルに添加し、さらに72時間インキュベートした。DMSOおよびアスタキサンチンモノエステルの最終濃度は、上記実施例1と同様であった。 インキュベーション終了後、20μLの90%alamarBlue試薬を個々のウェルに添加し、さらに6時間インキュベートした。次いで、各ウェルの蛍光強度を、Spectrafluor Plusプレートリーダーを用いて、励起波長530nmおよび発光波長590nmにて測定し、生存細胞数を計数した。これは、生存細胞が、alamarBlueを非蛍光性の酸化型(青)から蛍光性の還元型(赤)に変化させる能力に基づく。なお、50%致死濃度は、実験開始時の細胞数の50%になる濃度を算出し、そして50%阻害濃度は、コントロールのベヒクルの細胞数の50%の細胞数となる濃度を算出した。 この結果、HUVECに対するアスタキサンチンモノエステルの50%致死濃度(LC50)は250μM(DMSOへの最大溶解濃度)以上であり、毒性が低いことがわかった。さらに、50%阻害濃度(IC50)は51μMであり、比較的低い濃度で細胞増殖阻害効果を有することもわかった。 本発明によれば、新たな血管新生阻害剤が提供される。この血管新生阻害剤は、腫瘍増殖、関節リウマチ、糖尿病性網膜症などの血管新生を伴う種々の疾病の治療、特に、癌細胞の増殖抑制や固形腫瘍の縮小などに有用であり得る。また、本発明の血管新生阻害剤は、従来より摂取されてきた食品中に含まれる物質であり、かつLC50も低いため、安全性が高い。アスタキサンチンモノエステルまたはスラミン存在下におけるMatrigel上でのHUVECによる血管形成についての顕微鏡写真(×40)である。種々の濃度のアスタキサンチンモノエステル(A)またはスラミン(B)による、HUVECの血管形成に対する阻害割合を示すグラフである。 アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを有効成分として含有する、血管新生阻害剤。 アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを有効成分として含有する、血管新生を伴う癌または疾病の治療剤。 前記疾病がリウマチおよび黄斑変性症である、請求項2に記載の治療剤。 【課題】血管新生を阻害する新たな薬剤を提供すること。さらに、血管新生を伴う疾病の治療剤を提供すること。【解決手段】本発明の血管新生阻害剤は、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを有効成分として含有する。本発明の血管新生阻害剤は、血管新生を伴う癌または疾病の治療に有用であり得る。【選択図】なし


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