タイトル: | 公開特許公報(A)_クロロエチレンカーボネートの製造方法 |
出願番号: | 2005280033 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07D 317/42 |
谷川 潤彦 比嘉 宗弘 杉山 俊光 JP 2007091603 公開特許公報(A) 20070412 2005280033 20050927 クロロエチレンカーボネートの製造方法 日本軽金属株式会社 000004743 イハラニッケイ化学工業株式会社 393021967 成瀬 勝夫 100082739 中村 智廣 100087343 鳥野 正司 100110733 五十嵐 光永 100126882 佐々木 一也 100132230 谷川 潤彦 比嘉 宗弘 杉山 俊光 C07D 317/42 20060101AFI20070316BHJP JPC07D317/42 4 OL 11 本発明は、エチレンカーボネート(EC)を光塩素化するクロロエチレンカーボネート(CEC)の製造方法に関し、特に蒸留精製によっても分離・除去することの難しい不純物の少ないCECの製造方法に関する。 CECはECを塩素化することによって合成される。 CECはビニレンカーボネート(VC)を製造する際の原料となる物質である。 CECを脱塩化水素化することによって合成されるVCは、リチウムイオン二次電池電解液の溶媒および添加剤として有用な物質であり、電池性能を向上させるためには高純度化されたVCが求められている。この用途には、特に塩素を含有する不純物が注目され、全塩素含有量が100ppm以下、好ましくは20ppm以下の高純度VCが求められている。純度の低いCECを使用してVCを製造した場合、VCの純度も低下させることにつながり、高純度VCを合成することは困難である。よって、CECの段階で不純物の少ない製品が求められている。 ECを塩素化することによるCECの製造方法として、非特許文献1には、光照射下において塩素ガスによる光塩素化反応での製造方法が記載されている。また、特許文献1にはラジカル開始剤の共存下で塩化スルフリル等の塩素化剤を用いる製造方法、特許文献2にはAIBN存在下にハロゲン化スルフリルを塩素化剤とする製造方法、特許文献3には紫外線(UV)照射下にハロゲン化スルフリルを塩素化剤とする製造方法が記載されている。特開平11‐171882号公報特表2002‐529461号公報特表2002‐529460号公報J.Am.Chem.Soc.,75,1263−1264(1953) しかしながら、これらのいずれの方法でECの塩素化を行った場合でも、得られるCECには蒸留精製によっても分離・除去することの難しい不純物(難分離性不純物)が少なからず含まれているのが現状である。 原料であるECや、逐次反応の過塩素化で生成するジクロロエチレンカーボネート(DCEC)等については、主成分であるCECに対して比較的沸点が離れており(飽和蒸気圧が離れており)蒸留精製の工程により比較的容易に分離除去可能である。これに対して、塩素化反応で生成する副生成物には主成分であるCECと沸点の近い(飽和蒸気圧が近接した)化合物が複数ピーク検出されており、蒸留精製を行った場合でも、CECの純度を高めることは難しい。純度を良くするためこれらの副生成物を除去しようとすると収率が低くなってしまう。 ここで、分子内に塩素原子を持つ難分離性不純物は、所定の条件で得られるGCクロマトグラムにおいてCECのピーク付近、特にピークの後ろに検出される成分群であり、CECを脱HCl化してVCを合成する場合の品質悪化を招き易いものである。VC製造の中間体として好適なCECを得る為には、塩素化反応の段階で副生成物、特にこの難分離性不純物の生成をできるかぎり抑制する必要がある。 そこで、本発明は、以上の技術的課題を解決するためになされたものであって、副生成物のうち特に難分離性不純物の生成を抑制することができ、ビニレンカーボネート(VC)の製造の中間体として好適なクロロエチレンカーボネート(CEC)の製造方法の提供を目的とする。 本願発明者等は、このような課題を解決するため鋭意検討の結果、光照射下、エチレンカーボネートと塩素ガスとを反応させるCECの製造方法において、エチレンカーボネートと特定物質とを共存させた系に塩素ガスを導入することによって、光照射下の塩素化反応時に生成する副生成物のうち、特に、蒸留精製によって分離することが難しい不純物が大きく減少することを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明のクロロエチレンカーボネートの製造方法は、エチレンカーボネートと特定物質とを共存させた系に塩素ガスを導入し、光照射下、エチレンカーボネートと塩素ガスとを反応させるものである。 本発明のクロロエチレンカーボネートの製造方法において、反応生成物中の不純物量が減少する理由としては、(1)特定物質がECとともに共存することによって、特定物質がECに配位し、不純物を生成するような塩素化反応を起こりにくくしていること、(2)特定物質が共存することによって、目的生成物であるCECに配位し、不純物を生成するような分解反応を起こりにくくしていること、等が考えられる。そのため、共存させる特定物質が比較的少量であっても不純物の生成を低減させる効果がある。 すなわち、エチレンカーボネートと特定物質とを共存させた系に塩素ガスを導入し、光照射下、エチレンカーボネートと塩素ガスとを反応させることにより、蒸留によって容易に精製可能な、クロロエチレンカーボネートを高収率かつ高選択的に製造することができるものである。 本発明のクロロエチレンカーボネートの製造方法において、エチレンカーボネートと、エチレンカーボネートに対して0.1〜7.0倍モルの特定物質とを共存させた系に塩素ガスを導入し、光照射下、エチレンカーボネートと塩素ガスとを反応させることが好ましい。特に、被塩素化物質に対して約10倍モル以上の特定物質を共存させた系はいわゆる溶媒系と呼ばれ、特に、溶媒系で発現する効果を溶媒効果と呼ぶが、本発明のクロロエチレンカーボネートの製造方法においては、特定物質の存在比は小さく、一般的な溶媒効果とはそのメカニズムが異なると判断される。 本発明のクロロエチレンカーボネートの製造方法において、エチレンカーボネートとともに共存させる特定物質の量が少ないと、難分離性不純物の低減効果が少ない。したがって、反応系に共存させる特定物質の量は、エチレンカーボネートに対して0.1倍モル以上であることが好ましく、0.3倍モル以上であることがより好ましい。 一方、エチレンカーボネートとともに共存させる特定物質の量がエチレンカーボネートに対するモル比で1.0倍を超えると、難分離性不純物の低減効果が鈍ってくる。実際の製造装置において、共存させる特定物質の量を多くすると、体積効率が悪化し、生産性が低くなるため、不経済である。したがって、共存させる特定物質の量はエチレンカーボネートに対して7.0倍モル以下であることが好ましく、3.5倍モル以下であることがより好ましい。エチレンカーボネートとともに共存させる特定物質としては、炭化水素系塩素化合物が好ましく、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の芳香族塩化物がより好ましい。 光塩素化の為の光照射に用いる光源としては、波長ピークが313、365nm等の紫外線領域にあれば特に制限しないが、高圧水銀灯などを用いることができる。内部照射型の反応容器が光の効率上好ましいが、外部照射型の反応容器でもその効果を得ることができる。 光塩素化の反応温度は、原料であるECの融点(36〜38℃)以上である必要があり、低く設定すると塩素化反応速度が低下(反応性そのものが低下)することから50℃以上が好ましい。反応温度が高いと副生成物の生成量が増大することから80℃以下が好ましく70℃以下がより好ましい。 光塩素化反応の終点についての考え方としては、後工程での不純物除去を考慮して、特定不純物の含有量(濃度)を目安に反応を終了させることが好ましい。 たとえば、光塩素化反応の段階で難分離性不純物の生成を抑え、その含有量を少なくしておくとの本発明の趣旨から、除去にあまり負担のかからないよう、反応の終点における難分離性不純物の含有量は、2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。 DCECは蒸留で容易に分離できるので、除去の観点からは量がいくらあってもかまわない。しかし、DCECの含有量が多すぎると蒸留除去量及びこれに同伴して留去される主成分量が増え、反応の進行に伴う多様な不純物成分量が増えることにもなる。このため、反応の終点におけるDCECの含有量は8%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。 実際には、主成分であるCECの生成量がある程度確保できて、DCECと難分離性不純物のどちらかが目安の含有量(濃度)に達する塩素化度をもって反応を終了させることができる。ここで、反応の終点における塩素化度は、0.70〜1.00であることが好ましく、0.75〜0.90であることがより好ましい。 本発明によれば、エチレンカーボネート(EC)を光塩素化してクロロエチレンカーボネート(CEC)を製造するに際して、難分離性不純物の生成量を大幅に低減することができ、CECの精製コストの低廉化とともに蒸留精製後のCECの純度を容易に改善できる。更に、本発明の製造方法により得られるCECをビニレンカーボネート(VC)製造の中間体として用いた場合には、VCの精製コストをも低廉化できると期待される。 以下に示す実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はここに開示の実施例により限定されるものではない。<実施例1> 塩素ガスの導入口、熱電対、コンデンサーを介して排ガス除去装置に繋がる排気口等を備えた反応容器に、所定量のECと、ECに対するにモル比で0.33倍のモノクロロベンゼンとを共存させ、系内を窒素置換した後、反応系を60℃まで加熱したところで、この反応容器から15cm離れた位置から200W高圧水銀灯を点灯して光照射した。反応温度は60℃を保つように、所定量の塩素ガスを供給し反応を開始した。反応は、DCEC含有量が6.0%程度となるところ、もしくは難分離性不純物の含有量が2.0%以下となるところを終点とし、塩素ガスの供給を停止させ、反応終了とした。 反応液のサンプリングを反応開始から一定時間毎に実施して、ガスクロマトグラフィー(装置:GC14B(島津製作所社製)、カラム:TC−1701、(0.25mmIDX30m、膜厚1μm、GLサイエンス社製)、検出器:FlD、INJ(気化室温度):200℃、DET(検出器温度):200℃、カラム温度:140℃を5min維持し、1℃/minの昇温速度で150℃まで昇温し、更に5℃/minの昇温速度で250℃まで昇温し、その後250℃を維持する。)による定量分析を行うと共に、GC−MS分析によりEC、CEC及びDCECの各ピークを特定した。各反応液のGCクロマトグラムにおいて、更に、CECのピーク以降に、分子内に少なくとも塩素原子を持つ難分離性不純物が複数検出された。各成分の保持時間は、DCEC:6.6min、EC:11.4min、CEC:13.6minであり、保持時間でCEC以降に検出された難分離性不純物は13.6minを越えて30minまでに検出される成分の合計である。実施例1の定量分析結果を表2に示す。16h後の反応液のGC分析結果は、EC:15.2%、CEC:75.6%、DCEC:4.2%、保持時間でCEC以降に検出された難分離性不純物は合計で0.9%、また、塩素化度は0.89であった。 塩素化度は塩素がどれだけ置換されたかを評価する数値であって、塩素化度が1の場合、原料と同mol量の塩素が置換された状態であることを示す。以下の評価においては、EC=0、CEC=1、DCEC=2、CEC以降に検出された難分離性不純物=1、その他=1とし、各時刻にサンプリングした反応液の塩素化度を次式にしたがって求めた。ただし、組成量の値はGC検出強度比をそのまま利用した。 塩素化度={(EC組成量(%))×0+(CEC組成量(%))×1+(DCEC組成量(%))×2+(CEC以降に検出された難分離性不純物量(%))×1+(その他組成量(%))×1}/100 このようにして得られた反応液305.0gについて、理論段数21段の蒸留塔を用いて還流比5の条件で減圧下に蒸留を行い、112〜116℃/17〜20mmHgの精留分119.8gを得た。蒸留収率はCEC基準で68.4%、CECの純度は99.31%、難分離性不純物の含有量は0.12%であった。<実施例2> 表1に示すように、ECとともに共存させるモノクロロベンゼンの対ECモル比を0.66倍とし、それ以外は実施例1と同様に光塩素化反応を実施した。実施例2のGC分析結果を表3に示す。<実施例3> 表1に示すように、ECとともに共存させるモノクロロベンゼンの対ECモル比を1.05倍とし、それ以外は実施例1と同様に光塩素化反応を実施した。実施例3のGC分析結果を表4に示す。<実施例4> 表1に示すように、ECとともに共存させるモノクロロベンゼンの対ECモル比を3.28倍とし、それ以外は実施例1と同様に光塩素化反応を実施した。実施例4のGC分析結果を表5に示す。<実施例5> 表1に示すように、所定量のECと、ECに対するにモル比で1.18倍のオルソジクロロベンゼンとを共存させた。それ以外は、実施例1と同様に光塩素化反応を実施した。実施例5のGC分析結果を表6に示す。<比較例1> 表1に示すように、特定物質としてはECに何も加えず、実施例1と同様に光塩素化反応を実施した。比較例のGC分析結果を表7に示す。 このようにして得られた反応液209.5gについて、理論段数21段の蒸留塔を用いて還流比5の条件で減圧下に精製蒸留を行い、112〜116℃/17〜20mmHgの精留分82.0gを得た。蒸留収率はCEC基準で70.7%、CECの純度は98.88%、難分離性不純物の含有量は0.51%であった。 実施例1〜4及び比較例1の結果について、共存させるモノクロロベンゼンの対ECモル比(MCB共存比)をパラメータとして、塩素化度に対する難分離性不純物精製量の関係を図1に示した。また、図2に図1の塩素化度0.6におけるMCB共存比と難分離性不純物の生成量との関係を示した。 MCB共存比に対する難分離性不純物の生成量の違いとして、図1及び図2に示すとおり、MCB共存比0.33倍で反応を行うと、特定物質を無しとした場合に比べて、難分離性不純物の生成量が1/3となることがわかった。また、特定物質の共存比(対ECモル比)を増やすことで、さらに難分離性不純物の生成量が減少する傾向がみられた。 しかし、特定物質の共存比(対ECモル比)を増やせば、容積効率が悪化し、生産性が低下する。実機を想定した条件では、特定物質の共存比(対ECモル比)を7.0倍以下とすることが好ましいと考えられる。図1は、共存させるモノクロロベンゼンの対ECモル比(MCB共存比)をパラメータとして塩素化度に対する難分離性不純物生成量の関係を示したグラフである。図2は、図1の塩素化度0.6における共存させるモノクロロベンゼンの対ECモル比(MCB共存比)と難分離性不純物生成量との関係を示したグラフである。 エチレンカーボネートと特定物質とを共存させた系に塩素ガスを導入し、光照射下、エチレンカーボネートと塩素ガスとを反応させるクロロエチレンカーボネートの製造方法。 エチレンカーボネートとこれに対して0.1〜7.0倍モルの特定物質とを共存させた系に塩素ガスを導入する、請求項1記載のクロロエチレンカーボネートの製造方法。 前記特定物質が炭化水素系塩素化合物である、請求項1又は2記載のクロロエチレンカーボネートの製造方法。 前記炭化水素系塩素化合物が芳香族塩化物である、請求項3記載のクロロエチレンカーボネートの製造方法。 【課題】副生成物のうち特に難分離性不純物の生成を抑制することによって、ビニレンカーボネート(VC)の製造の中間体として好適なクロロエチレンカーボネート(CEC)を提供する。【解決手段】エチレンカーボネート(EC)と特定物質とを共存させた系に塩素ガスを導入し、光照射下エチレンカーボネートと塩素ガスとを反応させるクロロエチレンカーボネートの製造方法。エチレンカーボネートと共存させる特定物質は、エチレンカーボネートに対して0.1〜7.0倍モルであることが好ましく、特定物質としては炭化水素系塩素化合物が好ましい。【選択図】なし