タイトル: | 公開特許公報(A)_モルヒネ耐性抑制剤 |
出願番号: | 2005280022 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 35/64,A61P 25/36,A61P 25/04 |
只野 武 JP 2007091602 公開特許公報(A) 20070412 2005280022 20050927 モルヒネ耐性抑制剤 株式会社シャブロン 597032505 相坂 麻紗子 505363101 只野 武 505362850 曾我 道照 100057874 曾我 道治 100110423 古川 秀利 100084010 鈴木 憲七 100094695 梶並 順 100111648 大宅 一宏 100122437 只野 武 A61K 35/64 20060101AFI20070316BHJP A61P 25/36 20060101ALI20070316BHJP A61P 25/04 20060101ALI20070316BHJP JPA61K35/64A61P25/36A61P25/04 1 OL 7 特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本栄養・食糧学会 「第59回 日本栄養・食糧学会大会 講演要旨集」 平成17年 4月 1日発行 4C087 4C087AA01 4C087AA02 4C087BB22 4C087NA05 4C087NA06 4C087NA07 4C087NA14 4C087ZA08 4C087ZC39 本願発明は、プロポリスを含むモルヒネ耐性抑制剤に関する。 癌患者の多くは激しい痛みを伴う。癌の早い時期においても、約1/3の患者で痛みを訴える。末期の癌患者においては約7割の患者が、癌性疼痛をその主訴としている。その痛みの原因として、癌が広がっていった結果、神経を圧迫する場合やリンパ浮腫がある場合などがある。また、手術後の傷跡や、抗癌剤等の治療に伴う痛みも生じる。さらに、患者の心理的な影響、特に癌に対する恐れや緊張、あるいはうつ状態といったものが痛みをより一層強いものとする。 このような癌患者、特に末期の癌患者に対し、癌に伴う疼痛を緩和することが、癌患者のクオリティー・オブ・ライフ(Quality of Life)を高めるために重要な問題である。従来から癌性疼痛を除去するために、モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬が使用されてきた。 モルヒネは、ケシ(Papaver somniferum)の未熟果から採取されたアヘン(Opium)の主要成分である。紀元前より薬用に供されており、19世紀前より鎮痛薬として用いられてきた。しかしながら、モルヒネには、便秘、嘔吐、眠気および混乱等の副作用を生じる場合がある。また、モルヒネを長期に反復投与した場合、耐性が生じる場合も出てくる。 一般に耐性とは、薬物を連続的または間欠的に少し長い間投与したときに、時間、日または週単位で起こる薬物反応性の低下をいう。この耐性という現象は、正常な生理学的作用を保つための生体の自己防御反応と考えられている(Taylor, D.A., Fleming W.W., Unifying perspective of mechanism underlying the development of tolerance and physical dependence to opioids. J.Pharmacol.Exp.Ther.,297,11-18(2001)) モルヒネの薬物耐性による服用量の増加が、前記副作用の症状を増大させる可能性も考えられる。このためモルヒネの投与に関して、前記耐性を抑制もしくは軽減させることは、非常に有益であると考えられる。 従って、本願発明の目的は、モルヒネの耐性を抑制するもしくは軽減するモルヒネ耐性抑制剤を提供することである。 本願発明者は、上記課題に関して鋭意検討の結果、プロポリスにモルヒネの耐性作用があることを見出し、本願発明を完成するに至った。 つまり本願発明は、プロポリスを含むモルヒネ耐性抑制剤である。 本願発明のモルヒネ耐性抑制剤は、モルヒネに対し耐性が生じている患者、もしくはモルヒネ耐性が生じる恐れがある患者に対して投与することにより、モルヒネの耐性を抑制でき、その結果モルヒネの投与量の増量を防ぐことができる。 プロポリスとは、蜜蜂が樹木の芽や花のつぼみなどから集めた樹脂成分や花粉をとって巣に帰り、それを別の蜜蜂がよく噛んで酵素分解したものである。このようなプロポリスは、蜜蜂が巣の補修時に六角形の隣接する単房間の隙間を埋め合わせて接着する接着剤として使用するとともに、各単房の内壁面に塗り付けることにより、プロポリスに含まれる揮発成分を巣内の空気と混合させて、巣内に殺菌作用を及ぼし、バクテリヤ、あるいはウイルスが巣内に侵入するのを防止し、さらには、その含有成分のヤニ(脂)類と蝋類による撥水性で雨滴などの巣への漏水を防止するために、使用しているものと推察される。 本発明で使用するプロポリスは、ブラジル産、中国産、オーストラリア産もしくは日本産等のいずれの産地のものを使用することが可能であり特に限定されないが、汎用性等を考慮するとブラジル産のプロポリスが好ましい。 本発明におけるプロポリスは、プロポリスの原塊の乾燥物および粉砕物、あるいはエタノール、エーテル等の有機溶媒または水の抽出物を使用することができる。さらに、前記有機溶媒や水の抽出物を処理し、不純物を除く等の加工をしたものを使用することもできる。 アルコールにより抽出する場合は、95〜99.5%の高濃度エタノールを使用することが望ましい。具体的に例を挙げると、プロポリス原塊1kgに対して、前記エタノールを約2〜3L加えてプロポリスを抽出し、さらにこれに濾過、殺菌等の処理を加える。現在プロポリスの品質向上のため様々な抽出法および製造法が検討されている(例えば、特開2001−275587号公報参照) 上記のように処理されたものを、抽出エキス剤として、あるいは常法により各製剤の形態に製造して、本発明であるモルヒネ耐性抑制剤として服用することができる。製剤として具体的には、液剤、エリキシル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、チュアブル錠等の経口用製剤とすることができる。 本発明で使用するモルヒネ耐性抑制剤は、効果が認められる限り、その服用量は限定されない。通常、経口投与する場合、成人で1回当たり、プロポリス自体の重量で280−850μgを含むものであることが望ましい。これ以下であると効果が認められない場合がある。これを1日1回から複数回服用する。また、本発明は、モルヒネを服用する前に服用してもよく、モルヒネと同時に服用してもよい。さらに、モルヒネを服用した後に投与することも可能である。 本発明は、モルヒネに対して耐性が生じている患者に投与することができ、またモルヒネを長期投与する予定があって、モルヒネに対する耐性が生じる可能性がある患者にも投与することができる。(実験材料および方法)1.使用動物 体重22〜28gのddY系雄性マウス(日本SLCより購入)を使用し、実験に供するまで室温22±2℃、湿度55±5%、明暗12時間サイクル(明期8:30〜20:30、暗期20:30〜8:30)の一定環境下で飼育した。なお、動物は固形飼料および水道水を自由に摂取させた。2.使用薬物および調製法 塩酸モルヒネ(三共(株)製)、プロポリス(ブラジル産、シャブロン社製)を使用した。プロポリスは、蒸留水で希釈して経口(p.o.)投与した。3.鎮痛作用の測定 熱侵害刺激であるtail−flick法により測定した。マウス尾先端部より約2cmの部位に輻射熱照射を行い、尾を振るまで潜時を仮性疼痛閾値とした。実験にはあらかじめ刺激に対し2〜3秒で反応するマウスを選択して用いた。また、刺激部位への損傷を最小限にするために、長時間刺激時間(cut−off time)は10秒とした。鎮痛作用は、% of maximum possible effect(% of MPE)を次式に従い算出し、モルヒネ投与後15分から120分までの時間反応曲線下面積(AUC)を求め評価した。T1;薬物投与前の潜時(秒)T2;薬物投与後の潜時(秒)10;最大刺激時間(cut−off time)4.統計処理 実験結果は平均値(mean)と標準誤差(SEM)で示した。有意差検定は分散分析後、post hocテストのFisher’s PLSD法を用い、危険率5%以下を有意差ありと判定した。 (実験結果)1.モルヒネ単回投与による鎮痛作用 モルヒネの単回投与による鎮痛作用をtail−flick法を用いて検討を行った。モルヒネ(5及び10mg/kg)を投与した群においては投与後15分から鎮痛作用が観察され、そのピークは投与後30〜45分であり、投与後120分においてもその作用は認められた(図1)。モルヒネあるいは対照の生理食塩液投与後15分から120分の時間反応曲線下面積(AUC)を算出してモルヒネの鎮痛作用を評価した結果、モルヒネは5および10mg/kgの用量において生理食塩液投与群と比較し、有意な鎮痛作用を示した(図2)。2.モルヒネ反復投与による鎮痛耐性 モルヒネの鎮痛耐性を形成させる条件を探る目的で1日2回、2日間以下の二つのスケジュールでモルヒネを投与し、3日目にモルヒネの鎮痛作用を測定した。 スケジュール1;1日目30mg/kgを2回、2日目60mg/kgを2回、3日目に10mg/kg投与を1回投与 スケジュール2;1日目30mg/kgと45mg/kg、2日目60mg/kgと90mg/kg、3日目に10mg/kg投与を1回投与 図3に示すように、いずれのスケジュールでモルヒネを前処理することによってもモルヒネ(5及び10mg/kg)単回投与で認められる鎮痛作用は有意かつ著しく抑制され、鎮痛体制が形成された。従って、モルヒネ鎮痛耐性に及ぼすプロポリスの効果を検討する実験では、スケジュール1に従い、耐性を形成させたマウスを用いた。3.モルヒネ鎮痛耐性に及ぼすプロポリスの効果 モルヒネ鎮痛耐性に及ぼすプロポリスの効果を検討する目的で、モルヒネ投与前30分前にプロポリスを処理した。この結果、モルヒネ反復投与で認められる鎮痛作用の減弱は300倍および100倍希釈の用量において有意に抑制された(図4)。4.モルヒネ単回投与時の鎮痛作用に及ぼすプロポリスの効果モルヒネ(2.5mg/kg)を単回投与した際のAUCは22.3±5.3であったのに対し、100倍希釈のプロポリスをモルヒネ投与30分前に投与した群のAUCは23.5±5.3であり、プロポリスはモルヒネ単回投与による鎮痛作用に対し影響を及ぼさなかった。 以上より、プロポリスがモルヒネ鎮痛耐性を抑制することがわかった。マウスtail−flick法におけるモルヒネ誘発鎮痛効果の時間的経過。モルヒネと生理食塩液を投与した。1群8−16匹のマウスを用い、データの実験結果は平均値(mean)と標準誤差(SEM)で示した。マウスtail−flick法におけるモルヒネ誘発鎮痛効果の用量依存性。モルヒネ投与後15分から120分の間AUCとして結果を表した。一群8−16匹のマウスを用い、データの実験結果は平均値(mean)と標準誤差(SEM)で示した。**P<0.01(生理食塩液投与マウスに対して)マウスtail−flick法におけるモルヒネ誘発鎮痛効果に対する耐性の進行を表したものである。モルヒネを、2日間2度事前に投与した[初日(30および30mg/kg)、2日目(60および60mg/kg)の群、初日(30および45mg/kg)、2日目(60および90mg/kg)の群]。3日目に、モルヒネ10mg/kg)を投与し、鎮痛効果を測定した。なお、横軸の数字は、比較のため単回投与したマウスのモルヒネの濃度を示している。モルヒネ20ml/kgを単回投与したものについては、高濃度であったため鎮痛効果の測定ができなかった。一群8−16匹のマウスを用い、データの実験結果は平均値(mean)と標準誤差(SEM)で示した。**P<0.01(単回投与のマウスに対して)マウスtail−flick法におけるモルヒネ誘発鎮痛効果の耐性に対するプロポリスの効果を表したものである。モルヒネを2日間事前に投与した[初日(30および30mg/kg)、2日目(60および60mg/kg)]。3日目にモルヒネ(10mg/kg)を投与し、鎮痛効果を測定した。プロポリス(p.o.)はモルヒネを投与する30分前に投与した。一群8−16匹のマウスを用い、データの実験結果は平均値(mean)と標準誤差(SEM)で示した。*P<0.05、**P<0.01(プロポリス非投与マウスに対して) プロポリスを含むことを特徴とするモルヒネ耐性抑制剤。 【課題】モルヒネの耐性を抑制するもしくは軽減するモルヒネ耐性抑制剤を提供すること。【解決手段】プロポリスを含むことを特徴とするモルヒネ耐性抑制剤。モルヒネの鎮痛効果に対し耐性が生じているもしくは耐性が生じる可能性がある患者に対し、本発明のモルヒネ抑制剤を投与する。【選択図】なし