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タイトル:公開特許公報(A)_血液エンドトキシン測定方法
出願番号:2005271032
年次:2007
IPC分類:G01N 33/579,G01N 33/48


特許情報キャッシュ

八重樫 泰法 稲田 捷也 遠藤 重厚 JP 2007078665 公開特許公報(A) 20070329 2005271032 20050916 血液エンドトキシン測定方法 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 リムロイドサイエンス株式会社 503372978 工藤 一郎 100109553 八重樫 泰法 稲田 捷也 遠藤 重厚 G01N 33/579 20060101AFI20070302BHJP G01N 33/48 20060101ALI20070302BHJP JPG01N33/579G01N33/48 H 10 5 OL 19 2G045 2G045AA01 2G045BB03 2G045CA25 本発明は、血液中のエンドトキシンの測定方法に関するものである。 「エンドトキシン(endotoxin:内毒素)」は、グラム陰性菌の外膜を構成する成分の一つであり、その活性の本体はLPS (lipopolysaccharide:リポ多糖)である。 生体内におけるエンドトキシンの存在は、図1に示すように、グラム陰性菌(0101)の表層に外膜の一部として存在する(0102)。また、一般的にはグラム陰性桿菌の死後、フリーのエンドトキシン(0103)として血流中に遊離して存在している。さらに、一部のエンドトキシンはBIPやCAP等の白血球由来の不活化因子、抗エンドトキシンタンパク質HDL、又はアルブミン等のタンパク質(0104)と結合して無毒化された状態で存在している(0105)。これらのうちフリーのエンドトキシンの多くは、血液中でLBP(LPS binding protein:LPS結合タンパク質)(0106)と複合体(0107)を形成した後に、白血球の1種である単球(0108)上の細胞表面抗原CD14(0109)と結合する。続いて、このCD14はTLR(Toll−like receptor:Toll様受容体)(0110)と会合する。当該会合によりエンドトキシン結合情報が細胞内シグナル伝達経路(0111)を介して核(0112)へと伝達され、TNFα(0113)やIL−6等の炎症性サイトカイン遺伝子の発現が誘導され、それらの炎症性サイトカインが産生される。「サイトカイン」とは、細胞外に分泌される極微量で生理活性を示す液性因子の総称で、生体機能の形成や維持において細胞間の情報伝達因子(メディエーター)として機能している。(非特許文献1) ところで、エンドトキシンが血液中に一定量以上存在する場合、当該エンドトキシンの刺激によって単球や顆粒球等で過剰の炎症性サイトカインが産生される。その結果、エンドトキシン血症と呼ばれる発熱、敗血症、敗血症性ショック、又は多臓器不全等の症状が惹起される。このエンドトキシン血症の発症は血液中に含まれるエンドトキシン量と相関関係がある。したがって、血液中のエンドトキシンを正確に測定することは、エンドトキシンと種々の病態との関係を解明し、また早期診断と治療法創案への情報を提供する上で極めて重要な行程と考えられる。 従来のエンドトキシンの測定法は、ウサギの体内に検査対象試料を直接注射し、その体温上昇からエンドトキシン量を測定する方法や、カブトガニの血球抽出液(amebocyte lysate)がエンドトキシンによってゲル化する現象を応用したリムルステストが知られている。前記のウサギに直接注射する方法は、コスト面、結果を得るまでの時間、及び感度の悪さ等に問題があることから、現在ではリムルステストがエンドトキシンの測定方法の主流となっている。 図2にエンドトキシンによるカブトガニの血球抽出液を用いたゲル化反応の過程を示す。カブトガニの血球抽出液中にはエンドトキシンと特異的に反応するC因子経路が存在する。「C因子経路」は、以下の反応カスケードによって構成されている。まず、エンドトキシンは、C因子(Factor C)と強固に結合してC因子を活性化する(0201)。次に、エンドトキシンの結合により活性化されたC因子はB因子(Factor B)を活性化する(0202)。続いて、活性化B因子によって、さらに前凝固酵素(proclotting enzyme)が活性化されて凝固酵素(clotting enzyme)が生成される(0203)。この凝固酵素が、その基質であるコアギュローゲン(coagulogen)を部分水解する。その結果、コアギュローゲンからペプチドC(peptide C)が遊離して凝固タンパク質であるコアギュリン(coagulin)が生成される。このコアギュリンの凝固作用によってゲル化が生じる(0204)。(非特許文献2) また、カブトガニの血球抽出液中には、C因子経路の他にも血球抽出液のゲル化を誘導するG因子経路が存在する。G因子経路の反応カスケードは、まず、β-D-グルカン(0205)等のグルカン様物質がG因子(Factor G)と結合してG因子を活性化する(0206)。次に、活性化されたG因子は、前記前凝固酵素を活性化して凝固酵素を生成する(0203)。以降はC因子経路と同様である。ところで、このβ-D-グルカンは植物多糖であり、酵母やカビ等の真菌細胞壁の構成成分としても知られている。酵母やカビ等は通常の環境下に広く存在することから、β-D-グルカンやBGLA等のグルカン様物質はエンドトキシン検査対象試料に混入しやすい。当該混入によって汚染された検査対象試料を用いた場合、前記リムルステストは当該検査対象試料中のエンドトキシン量を過大評価してしまう結果となる。したがって、リムルステストを行うためにカブトガニの血球抽出液を使用する場合は、通常G因子経路を不活性化したものが使用されている。G因子経路の不活性化は、試料中のG因子を除去する、又は不活性化する前処理を行うことによって達成される。 リムルステストによるエンドトキシン測定法は、カブトガニの血球抽出液がエンドトキシンによってゲル化するプロセスを応用したものである。リムルステストは、判定又は測定方法の違いから図3で示すゲル化転倒法(ゲル化法)、発色合成基質法(比色法)、そして比濁時間分析法(比濁法)等の方法が知られている。(非特許文献2) 「ゲル化転倒法」は、図3のAで示すように検査対象試料(0301)にC因子関連物質を含む液(0302)を試験管内で混合し、一定条件下(例えば37℃で30〜60分間)反応(0303)させた後に、その試験管を転倒(0304)、あるいは傾けた際に、試料が液状のままか(0305)、あるいは固化したか(0306)によって判定する方法である。前者の場合はエンドトキシン陰性、後者の場合はエンドトキシン陽性とされる。この方法は、特別な装置を必要とせず操作も比較的容易ではあるが、原料や製造のロットにより測定結果が変わりやすい点や、人による判定のため光学的方法に比べて客観性に欠けるという問題があることから通常は簡易的に用いられるに過ぎない。 「発色合成基質法」は、図3のBで示すように凝固酵素の基質に発色合成ペプチド基質を用い、遊離した発色基の量を吸光度により比色定量することでエンドトキシン量を算出する方法である(非特許文献4)。発色合成ペプチド基質(0307)は、天然基質であるコアグローゲンを凝固酵素(0308)が水解する部位のアミノ酸配列を模したもの(0309)が使用される。凝固酵素による切断部位にパラニトロアニリン(pNA)(0310)等の発色基を結合させ、この発色基が酵素による切断で遊離することによって発色する。発色基がパラニトロアニリンの場合は、パラニトロアニリンの最大吸収波長である405nmの吸光度を経時的に測定する。また、発色基がパラニトロアニリンをジアゾカップリングした場合(0311)は、545nmの吸光度を経時的に測定する。その後、得られた経時的な透過光量の変化をコンピューター解析してエンドトキシン濃度を測定する。発色合成基質法には、エンドポイント合成基質法とカイネティック合成基質法等が知られているが、現在では偽陽性反応が改善されたカイネティック合成基質法が主に用いられている。当該発色合成基質法は、試薬が比較的高価である点や操作が煩雑である等の問題もあるが、定量性、感度、そして客観性に非常に優れている。 「比濁時間分析法」は、図3のCで示すようにゲル化による濁度の増加を透過光量の変化として捉え、反応液の透過光量比が一定の閾値(通常90%前後)(0312)まで減少するのに要する時間をゲル化時間(0313)とし、ゲル化時間とエンドトキシン濃度の関係から作成された標準曲線を用いてエンドトキシン値を算出する方法である。専用装置を必要とするが、操作が容易で、また定量性や客観性に非常に優れている。 ところが、定量性や客観性に優れた前記発色合成基質法や比濁時間分析法等のリムルステストを用いても、なお血液中のエンドトキシンを測定する場合には種々の問題が指摘されている。例えば臨床症状とその結果が必ずしも対応しない等の問題である。具体的に説明すると、血液中にグラム陰性菌が感染することで発症する重症グラム陰性菌感染症であると臨床的に診断されているにもかかわらず、リムルステストによる血中エンドトキシン濃度レベルでは陽性を示さない場合が該当する。このような原因としては、リムルステストの感度の問題や、検体からの血液の採取時期、血漿の分離方法や保存方法等のように、むしろエンドトキシンの測定に供する試料の調製に大きな問題があると考えられている。 従来からリムルステストに供される血液試料には全血より分離した血漿が用いられている。これは、第一には赤血球やその血色素がリムルステストの結果に影響を及ぼすという理由による。血漿は血液中に大量に存在する赤血球やその血色素を除去した後の主成分であるため、リムルステストには適している。第二には、血液中でフリーの状態のエンドトキシンや血液中のタンパク質と結合した状態のエンドトキシンは血漿中に多く存在することや、細菌の菌体表層に存在するエンドトキシンも血漿調製の際に遠心条件を調整することで血漿中に残すことができるという理由による。したがって、血液中のエンドトキシン量の測定には血漿中のエンドトキシン量を測定すれば十分であると考えられていた。 しかし、血液中のエンドトキシンは、上記菌体表層の状態、フリーの状態、血液中のタンパク質と結合した状態以外にも白血球細胞の膜表面に結合した状態、あるいは白血球細胞内に取り込まれた状態で存在している。また、図1に示すように血液中のフリーのエンドトキシンや血液中の一部のタンパク質と結合したエンドトキシンの多くは、感染後時間経過により白血球細胞の膜表面に結合した状態や白血球細胞内に取り込まれた状態に移行する。さらに、すでに感染巣でエンドトキシンと結合した白血球が血液中に移動することもある。したがって、血漿中に含まれるエンドトキシン量の測定のみでは血液中のエンドトキシン量を正確に定量しているとは言い難い。感染後、血液を採取するまでに一定時間を経過した場合には、むしろ白血球細胞の膜表面に結合した状態、又は白血球細胞内に取り込まれた状態のエンドトキシン量が優位になっている可能性がある。また、敗血症性ショック等の症状等の病態は、前記のようにエンドトキシンが白血球細胞の膜表面に結合することでサイトカインの産生が誘導される結果、惹起されることが多い。このように白血球細胞の膜表面に結合したエンドトキシンや白血球細胞内に取り込まれたエンドトキシンの量を考慮しなければ病態との関連性を明確にすることはできない。特開平6−118086特開2004−117127竹田潔, 審良静男, 感染症とToll−like receptor. 最新医学, 2003;58(5); 123-128.遠藤重厚, 稲田捷也, エンドトキシンと病態. へるす出版, 1995http://www.bc-cytometry.com/reagent/productlist-Lysing.htm 前記のような理由から、本発明者らは白血球細胞に含まれるエンドトキシンの測定方法を、特許出願した(特許文献2)。この方法によれば、従来注目されることのなかった白血球細胞の膜表面に結合したエンドトキシンや白血球細胞内に取り込まれたエンドトキシン測定することが可能である。しかし、この方法では逆に従来の測定対象であった血漿中に含まれるエンドトキシンが除外されることになる。結果として、感染後の間もない時期に採血した場合には、血液中に含まれるエンドトキシン量を過小評価してしまう可能性があり、血液中のエンドトキシン量を総括的に、かつ正確に把握し、血液中のエンドトキシン量と病態との関連性を明確にする結果を得る点においては、十分とは言えない課題を残していた。 本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、全血より赤血球のみを分別除去する方法の提供、及び、当該分別除去する方法によって得られる測定用血液中に含まれるエンドトキシン量を測定することによって、白血球に含まれるエンドトキシンと血漿中に含まれるエンドトキシンを総括的に測定することを可能とし、血液中のエンドトキシン測定の感度を向上することができる血液エンドトキシンの測定方法の提供を目的とする。 本発明により、従来の測定方法では不十分であった血液中のエンドトキシン量をより正確に把握することが可能となる。それによって、血液中のエンドトキシン量と病態との関連性を明確にすることがきる。このようなエンドトキシンと種々の病態との関連性の解明によって、エンドトキシン血症の早期診断と治療法創案への情報を提供に繋がることが期待できる。 以下に、本発明の実施を実施するための最良の形態を説明する。なお、本発明は、これら実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。なお、本発明に用いる器具や試薬、水等は全てエンドトキシ・フリーのもの、あるいはエンドトキシン測定結果に影響を及ぼさない程度の極めて微量しかエンドトキシンを含有していないものを使用することを前提とする。 実施形態1は、主に請求項1、2、3等について説明する。 実施形態2は、主に請求項4、6、7、8、9、10等について説明する。 実施形態3は、主に請求項4、5、7、8等について説明する。 <<実施形態1>> <実施形態1:概要>実施形態1について説明をする。本実施形態は、採取した全血から赤血球のみを除いた成分血液を抽出し、成分血液中のエンドトキシンが破壊されない条件の下で、成分血液中の白血球細胞を破壊して測定用血液を調製する血液エンドトキシン測定のための血液前処理方法である。 <実施形態1:構成> 図4に、実施形態1を模式的に例示する。本実施形態は、全血採取ステップ(S0401)と、成分血液抽出ステップ(S0402)と、測定用血液前処理ステップ(S0403)と、からなる。 「全血採取ステップ」(S0401)は、全血を採取するステップである。 本発明における「全血」とは採取した血液中に含まれる全ての物質を含む。 本発明における「全血を採取」とは、全血を生体から直接的に又は生体から採取した後に一旦保存したものから間接的に採取することを言う。例えば直接的な採取の場合、生体の血管に注射針を刺して採血する場合等が該当する。当該注射針を刺す血管は、静脈、動脈を問わない。 全血採取ステップにおいて全血を採取する回数と時期は、同一個体からであれば特には問わない。例えば同一個体から1回のみ採取した全血であってもよいし、ほぼ同一時期に複数回に分けて採取した全血であってもよいし、経時的に複数回に分けて採取した全血であってもよい。 前記全血採取に際して、血液が凝固しない手段を講じてもよい。例えば採血に用いる注射器内部を予めヘパリン等の血液凝固を阻止、又は阻害する物質でコーティングしておいてもよい。 採血後の血液は凝固を阻止、又は阻害する物質を適量加える等の抗凝固処理を施しておくことが好ましい。例えばヘパリンをリムルステストに影響を与えない濃度で加えてもよい。この場合、ヘパリンの終濃度は10〜100units/mLにすることが好ましい。 当該採取する全血は、ヒト、又はヒト以外の哺乳動物の血液のみを対象とすることができる。 「成分血液抽出ステップ」(S0402)は、全血より赤血球のみを除いた成分血液を抽出するステップである。 本発明において「赤血球」とは赤血球細胞と血色素(ヘモグロビン)を意味する。また、「白血球」とはリンパ球、好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージを意味する。本発明おいて断りの無い場合は、血小板も白血球に含むものとする。 本発明における「成分血液」とは、全血から赤血球を除いた残余成分を言う。すなわち、白血球等の赤血球以外の血球成分とそれ以外の血漿等の血液成分等が含まれる。また、血液中に含まれる細菌、およびその遺骸、フリーのエンドトキシン、血液中のタンパク質と結合したエンドトキシン等血液成分以外の物質も該当する。 全血から赤血球を分離方法は、採取した全血を遠心分離で分画することによって他の成分から分離する方法でもよいし、全血に比重液を加えて混合した後に一定時間静置することによって分離する若しくは遠心分離で分画することによって他の成分から分離する方法でもよいし、市販の血球分離剤のような試薬を用いて添付のプロトコルに従って分離する方法でもよい。 前記比重液は、血液と混合したとき赤血球の比重よりも小さく、かつ白血球の比重よりも大きくなる溶液を意味する。例えばデキストランやフィコールの溶液等が該当する。比重液の添加量は、当該エンドトキシンの測定に供する血液量の1/10量程度が好ましいが、この範囲に限られるものではない。また、血液と比重液を混合して静置して分離する場合は、30〜60分程度の静置でよいが、目視で十分に分離されていれば静置時間は問わない。全血から赤血球を分離する際の温度は室温〜37℃で構わないが、20℃前後が好ましい。 いずれの方法においても赤血球層以外の層を回収する。通常赤血球は最下層に移行するため、その場合は当該最下層よりも上層の全て回収するようにする。回収した上層である試料の容量が元の全血と等量になるように水を加えて調製した後、よく混合して液中の細胞の分布を均一化する。水の代わりにTrisバッファー等の緩衝液を用いてもよい。これを被験試料とする。この操作によって、例えば全血1mLあたりのエンドトキシン濃度を、従来の血漿中エンドトキシン濃度測定の場合に表現される血漿1mLあたりのエンドトキシン量と同じ単位で表現することができる。本発明においては、当該被験試料1mLあたりのエンドトキシン量のことを成分血液1mLあたりのエンドトキシン量と表現する。 成分血液抽出ステップの具体的な方法の一例を図5に示し、以下で説明する。まず、ヘパリンを加えて抗凝固処理をした全血1mL(0501)を遠心管に入れ、スウィング・ローターを用いて室温にて遠心加速度1400×gで5〜10分間遠心を行う。成分血液が分離できれば遠心分離の条件は当該条件に限られない。例えば血液によって分離が良くない場合には遠心力を高めてもよいし、遠心時間を延長してもよいし、スウィング・ローターではなくアングル・ローターを用いてもよい。遠心後、遠心管最下層に位置する赤血球層(0502)の上部で層を成すバフィーコート(buffy coat)(0503)と、当該バフィーコートの上層にある血漿(0504)とを注射器等を用いてそれぞれ別個に回収する。「バフィーコート」は、主として白血球と血小板から成る。次に、回収したバフィーコートに約1mLの水を加えて静かに混合し、30秒ほど静置してバフィーコート回収時に混入した赤血球を低浸透圧によって溶血処理する(0505)。このとき、加える水の分量は最終浸透圧によって赤血球のみ溶血し白血球細胞を破壊しない条件であれば特には問わない。また、塩化アンモニウムをベースにした溶血剤や市販されている溶血剤を用いてもよい(非特許文献3)。続いて、溶血処理済みのバフィーコートを再び遠心管に入れ、スウィング・ローターを用いて室温にて遠心加速度1400×gで5〜10分間遠心を行う。当該遠心分離の条件も白血球分画が分離できれば前記条件に限られない。遠心後、遠心管内の沈殿物を白血球分画(0506)として注射器等を用いて回収する。溶血処理により試料中に溶出した血色素を含む上層(0507)は廃棄する。当該白血球分画は赤血球を含まずに、白血球や血小板等を含有する分画である。前記回収した血漿に当該白血球分画を静かに加えて混合する。最後に、水等を加えて総量を元の1mLに調製したものを成分血液(0508)とする。このように、赤血球等の除去によって減少した分量を水によって元の分量に補充することで、元の全血試料中に存在するエンドトキシンの濃度を正確に算出できる。 「測定用血液前処理ステップ」(S0403)は、前記成分血液抽出ステップで抽出した成分血液中のエンドトキシンが破壊されない条件の下で、白血球細胞を破壊し破壊済み白血球を含有する測定用血液を調製するステップである。 本発明において「測定用血液」とは、前記成分血液中のエンドトキシンを正確、かつ高感度に測定するためにエンドトキシンの測定前に所定の処理を施した成分血液を言う。所定の処理とは、エンドトキシンが破壊されない条件の下で白血球細胞を破壊することを言う。 白血球細胞を破壊する方法としては、希釈高温加熱方法によるもの、超音波破壊方法によるもの、物理的破砕方法によるもの、凍結融解方法によるもの等が通常使用されるが、エンドトキシンが破壊されず白血球細胞を十分に破壊できる方法であれば、これらの方法に限られない。 「希釈高温加熱方法」は、前記成分血液に水を加えて3〜10倍希釈し、70〜100℃の範囲で、5〜10分間程度加熱することによって白血球細胞を破壊する方法である。成分血液が前期の温度で十分に加熱されるのであれば加熱方法は問わない。例えば容器ごと恒温槽に入れて加熱してもよい。「恒温槽」は、ウォーターバスであってもよいし、ヒートブロックであってもよい。また、エア・インキュベーターであってもよい。さらにこの時、比濁時間分析法ではTriton X−100等の界面活性剤をエンドトキシンの活性を低下させない濃度(終濃度0.02%)で、加えてもよい。試料は、加熱後に氷冷等によって冷却してもよい。 「超音波破壊方法」は、前記成分血液に超音波を加えることによって、超音波の振動で白血球細胞の細胞膜を破壊し、細胞内容物を溶出させる方法である。超音波処理は超音波細胞破砕機(ソニケーター)等の装置を用いて行ってもよい。当該方法における超音波の強さは、白血球細胞の細胞膜を破壊できるが、エンドトキシンを破壊しない範囲であればよく、成分血液の分量や超音波の発振出力、発信時間によって適宜調節すればよい。 「物理的破砕方法」は、前記成分血液に物理的な外力を加えて、白血球細胞を破壊する方法である。物理的破砕処理は、ホモジナイザー等の装置を用いてもよい。当該方法における外力の強さは、白血球細胞の細胞膜を破壊できるが、エンドトキシンを破壊しない範囲であればよい。 「凍結融解方法」は、前記成分血液を液体窒素中やドライアイス中で急速凍結した後に温湯等で融解する操作を行うことによって成分血液中の白血球細胞を破壊する方法である。急速凍結による細胞内水分の結晶化による体積膨張と、その後の結晶融解によって細胞膜を破壊する原理に基づくものである。凍結融解の操作は、前記成分血液中の白血球細胞が十分に破壊されるまで複数回繰り返してもよい。 測定用血液前処理ステップの希釈高温加熱方法による具体的な方法の一例を図6に示し、以下で説明する。まず、成分血液抽出ステップで得られた成分血液1mLから0.1mLを取り、1.5mLチューブに移す(0601)。当該チューブに水0.9mLを加えて10倍希釈した(0602)後、キャップをしてサンプル孔に予め水を充填したヒートブロック(0603)に当該チューブをセットし、70℃で10分間加熱する。加熱後は直ちに氷中で移して冷却する(0604)。冷却後の試料を測定用血液(0605)とする。 <実施形態1:効果>本実施形態による血液前処理方法によって、血液中に含まれるエンドトキシンを赤血球に影響をされることなく総括的、かつ正確に測定することが可能なエンドトキシン測定用の血液試料を提供することができる。 <<実施形態2>> <実施形態2:概要>実施形態2について説明をする。本実施形態は、全血より赤血球のみを除いた成分血液中に含まれるエンドトキシンを測定するために、前記実施形態1の測定用血液前処理ステップで得られる測定用血液中のエンドトキシンを測定する血液エンドトキシン測定方法である。特に、測定用血液からリムルステスト干渉因子を除去又は不活化した後に、C因子を含む物質であるC因子関連物質を用いて測定用血液中のエンドトキシンを測定することを特徴とする。 <実施形態2:構成> 図7に、実施形態3を模式的に例示する。本実施形態のうち全血採取ステップ(S0701)と、成分血液抽出ステップ(S0702)と、測定用血液前処理ステップ(S0703)は実施形態1と同様である。本実施形態は、前記測定用血液前処理ステップに続き、さらに干渉因子排除ステップ(S0704)と、エンドトキシン測定ステップ(S0705)を有する。 本実施形態のうち全血採取ステップ(S0701)と、成分血液抽出ステップ(S0702)と、測定用血液前処理ステップ(S0703)と、実施形態1と同様であるので、その説明は省略する。 「干渉因子排除ステップ」(S0704)は、測定用血液前処理ステップで得られた破壊済み白血球を含有する成分血液に含まれるリムルステスト干渉因子を、除去又は不活化した成分血液を調製するステップである。 本発明において「リムルステスト干渉因子」とは、血漿中に含まれるリムルステストの阻害因子であるα2−plasmin inhibitor、antithrombin III、α1−antitrypsin等や、リムルステストの亢進因子であるfactor Xa、thrombin、trypsin等が該当する。血液中のエンドトキシン測定のためには、エンドトキシン測定試料を事前に処理することによって、前記リムルステスト干渉因子を除去又は不活化する必要がある。リムルステスト干渉因子の除去又は不活化は、リムルステスト測定方法によって多少異なる。以下、発色合成基質法と比濁時間分析法の場合における、一般的な除去又は不活化方法について、それぞれ説明する。 発色合成基質法では、主にPCA法、New PCA法等によって、リムルステスト干渉因子が除去又は不活化される。ただし、当該発色合成基質法に影響せず、かつリムルステスト干渉因子が除去又は不活化できれば方法はこれらに限られるものではない。 「PCA法」は、以下の手順によって行われる方法である。まず、対象試料にPCA(過塩素酸)を加える。次にPCA添加によって生じる変性物の沈殿を遠心分離によって除去する。続いて上清にNaOHを加えてアルカリ処理した後、測定に供する。 PCA法の具体的な一例を以下に示す。成分血液0.1mLに0.32MのPCAを添加し、37℃で20分間反応させた後、800×gで15分間遠心する。上清を回収し、0.18MのNaOHを50μL加えた後、十分に混合して測定に供する。 「New PCA法」は、対象試料をPCAで処理する前にNaOHを少量加えて、さらに、PCA処理で生じた沈殿をNaOHで可溶化したものを測定に供する方法である。 New PCA法の具体的な一例を以下に示す。成分血液0.1mLに0.18MのNaOHを0.1mL加えて混合し、37℃で5分間反応させた後、0.32MのPCAを添加し、再び37℃で10分間反応させる。続いて、生じた沈殿を0.18MのNaOHを0.2mL加えて十分に溶解する。試料を50μL取り、別容器に分注して0.2M Tris−HCl緩衝液(pH8.0)を50μL加えた後、十分に混合して測定に供する。 比濁時間分析法では主に希釈加熱法によって、リムルステスト干渉因子が除去又は不活化される。ただし、当該比濁時間分析法に影響せず、かつリムルステスト干渉因子が除去又は不活化できる方法であればこれに限られるものではない。 「希釈加熱方法」は、対象試料に水や緩衝液を加えて希釈した後、加熱によって干渉因子を不活化したものを測定に供する方法である。希釈率は、3〜10倍希釈し、温度は70〜100℃の範囲で、5〜10分間程度加熱することによってリムルステスト干渉因子を破壊する。このとき、Triton X−100等の界面活性剤を0.02%加えた水で希釈してもよい。成分血液が前記の温度で十分に加熱されるのであれば加熱方法は問わない。例えば容器ごと恒温槽に入れて加熱してもよい。恒温槽は、ウォーターバスであってもよいし、ヒートブロックであってもよい。また、エア・インキュベーターであってもよい。試料は、加熱後、氷冷してもよい。 希釈加熱法は、前記測定用血液前処理ステップの希釈高温加熱方法に準ずると考えることができる。したがって、比濁時間分析法でエンドトキシンを測定する場合には、当該干渉因子排除ステップを省略してもよい。 「エンドトキシン測定ステップ」(S0705)は、前記干渉因子排除ステップで得られた測定用血液に含まれるエンドトキシンを、C因子を含む物質であるC因子関連物質を用いて測定するステップである。 本実施形態において「C因子関連物質」とは、C因子を含みC因子経路に関与する物質等が該当する。 前記C因子関連物質は、カブトガニの血球抽出液から調製されたものであってもよい。カブトガニの血球抽出液から調製されたものは、カブトガニの血球抽出液にさらに加工を加えたものも該当する。例えばβ―D−グルカンと反応するカブトガニの血球抽出液中のG因子を除去したり、あるいはG因子を不活化させる等の加工を加えたものなどが該当する。 「測定用血液に含まれるエンドトキシンを、C因子を含む物質であるC因子関連物質を用いて測定する方法」は,測定用血液とC因子関連物質を混合した混合液を用いて、測定用血液に含まれるエンドトキシンを測定する方法である。 エンドトキシンの測定する方法は、例えば混合液の透過光量を測定する方法を用いてもよい。当該透過光量を測定する方法は、経時的な透過光量の変化の測定であってもよいし、透過光量の変化率の測定であってもよい。経時的な透過光量の変化の測定の場合は、例えばC因子関連物質を混合した直後の光の透過量を測定し、その後、当該直後の透過量からの変化を検出することによってエンドトキシンの量を測定するようにしてもよい。透過光量の変化率の測定の場合は、前記背景技術において説明した発色合成基質法を利用したものであってもよい。例えばC因子を混合した直後からの透過光量を測定し、混合液の透過光量比がある一定の値(例えば8%前後)まで変化するのに要する時間を測定することによってエンドトキシンの量を測定するようにしてもよい。この場合、予め濃度が判明している標準エンドトキシンから得られた変化率に基づいて作成された標準曲線を利用してもよい。当該方法は、前記背景技術において説明した比濁時間分析法を利用したものであってもよい。 エンドトキシン測定ステップは、全血採取ステップにおいて同一個体から経時的に複数回に分けて採取した血液それぞれに対して、前記成分血液抽出ステップと干渉因子排除ステップと測定用血液前処理ステップ後、採取の時間ごとに比較測定を行うことを含む。これによって、感染後の時間経過による血液中のエンドトキシン量の変化を把握することができ、正確なエンドトキシン血症診断を行うことができる。 <実施形態2:効果>本実施形態による血液エンドトキシン測定によって、赤血球に影響をされることなく血液中に含まれるエンドトキシンをC因子関連物質によって総括的、かつ正確に測定することが可能なエンドトキシン測定用の血液試料を提供することができる。 <<実施形態3>> <実施形態3:概要> 実施形態3について説明をする。本実施形態は、全血より赤血球のみを除いた成分血液中に含まれるエンドトキシンを測定するために、前記実施形態1の測定用血液前処理ステップで得られる測定用血液中のエンドトキシンを測定する血液エンドトキシン測定方法である。特に測定用血液からリムルステスト干渉因子を除去又は不活化する処理をすること無しに、C因子を含む物質であるC因子関連物質を用いて測定用血液中のエンドトキシンを測定することを特徴とする。 <実施形態3:構成> 図8に、実施形態3を模式的に例示する。本実施形態のうち全血採取ステップ(S0801)と、成分血液抽出ステップ(S0802)と、測定用血液前処理ステップ(S0803)は実施形態1と同様である。本実施形態は、前記測定用血液前処理ステップに続き、さらにエンドトキシン測定ステップ(S0804)を有する。 本実施形態のうち全血採取ステップ(S0801)と、成分血液抽出ステップ(S0802)と、測定用血液前処理ステップ(S0803)は実施形態1と同様であるので、その説明は省略する。また、エンドトキシン測定ステップ(S0804)は実施形態2のエンドトキシン測定ステップ(S0705)を基本とするので、ここでは本実施形態に特徴的な点についての以下で説明する。 本実施形態の「エンドトキシン測定ステップ」(S0804)は、測定用血液前処理ステップで得られた測定用血液に含まれるエンドトキシンを、C因子を用いて測定するステップである。 前記C因子は、カブトガニの血球抽出液から生成されたものであってもよい。カブトガニの血球抽出液から生成されたものとは、カブトガニの血球抽出液を処理したもの等が該当する。例えばアフィニティーカラム等の使用によって、カブトガニの血球抽出液中からC因子のみを分離したものであってもよい。 また、前記C因子は、カブトガニの血液成分であるC因子の特徴を基礎とするものであってもよい。「C因子の特徴を基礎とするもの」とは、リコンビナントC因子のようにカブトガニのC因子の遺伝子配列の一部、又は全部に基づいて合成された組み換え遺伝子由来のタンパク質(リコンビナントタンパク質)等が該当する。リコンビナントタンパク質を合成するタンパク質合成系は、最終産物であるリコンビナントタンパク質が、当該リコンビナントタンパク質のベースとなった遺伝子にコードされるアミノ酸配列を有していれば、その合成手段は問わない。例えば細菌系、昆虫細胞系、哺乳動物細胞系、無細胞系のいずれであってもよい。 さらに、前記C因子は、カブトガニの血球抽出液であるC因子に類似したものであってもよい。「C因子に類似したもの」とは、カブトガニ以外の生物種から生成されたカブトガニC因子のオルソログやそのオルソログの遺伝子配列の一部、又は全部に基づいて生合成されたリコンビナントタンパク質等が該当する。リコンビナントタンパク質を合成するタンパク質合成系は、最終産物であるリコンビナントタンパク質が、当該リコンビナントタンパク質のベースとなった遺伝子にコードされるアミノ酸配列を有していれば、その合成手段は問わない。例えば細菌系、昆虫細胞系、哺乳動物細胞系、無細胞系のいずれであってもよい。 「測定用血液に含まれるエンドトキシンを、C因子を用いて測定する方法」は、測定用血液とC因子関連物質を混合した混合液を用いて、測定用血液に含まれるエンドトキシンを測定する方法である。 「エンドトキシンを測定する方法」は、エンドトキシンとの結合によって活性化した活性型C因子を検出する方法が該当する。例えば活性型C因子の作用によって蛍光が産生されるような基質を加えることによって、産生された蛍光を適当な装置で受光し、その発行強度をコンピューターで定量測定することでエンドトキシンを測定するようにしてもよい。あるいは、活性型C因子の作用によって発色する発色合成基質を加えることによって、遊離した発色基の量を吸光度により比色定量することでエンドトキシン量を測定してもよい。さらに、PyoGene(CAMBREX,USA)等の市販のキットを用いて、添付のプロトコルに従って測定してもよい。 エンドトキシン測定ステップは、全血採取ステップにおいて同一個体から経時的に複数回に分けて採取した血液それぞれに対して、前記成分血液抽出ステップと測定用血液前処理ステップ後、採取の時間ごとに比較測定を行うことを含む。これによって、感染後の時間経過による血液中のエンドトキシン量の変化を把握することができ、正確なエンドトキシン血症診断を行うことが可能となる。 <実施形態3:効果>本実施形態による血液エンドトキシン測定によって、赤血球に影響をされることなく血液中に含まれるエンドトキシンをC因子の活性化によって総括的、かつ正確に測定することが可能なエンドトキシン測定用の血液試料を提供することができる。 以下に、本発明の実施例を示す。なお、以下の実施例は、本発明の特定の様態を例示するものであり、本発明の範囲を制限するためのものではない。また、本実施例で使用された温度、量、時間等の数値に関して、実験上の多少の誤差及び偏差は斟酌してよい。なお、本実施例に用いた器具や試薬、水等は全てエンドトキシ・フリーのもの、あるいはエンドトキシン測定結果に影響を及ぼさないきわめて微量のエンドトキシンを含有するものを使用したことを前提としている。<<実施例1>> エンドトキシンの添加回収実験 <目的> 血液中のフリーのエンドトキシンや血液中の一部のタンパク質と結合したエンドトキシンの多くが、感染後の時間経過にとともに白血球細胞の膜表面に結合した状態、あるいは白血球細胞内に取り込まれた状態に移行することを確認する。また、赤血球を除いた成分血液中に含まれるエンドトキシンの測定が、血漿分画や白血球分画よりも血液中のエンドトキシンの量を正確に測定できることを確認する。 <方法> まず、健常者(男性、33歳)の静脈から10mLの全血を採取した後、ヘパリンを10〜100units/mL加えて抗凝固処理を行った。当該抗凝固処理を行った全血に大腸菌O111:B4由来エンドトキシン(LPS)を120pg/mL添加し、湿潤させた37℃の5%CO2インキュベーター内においての条件の元で加温した。エンドトキシンの添加後、10分、30分、2時間後に当該血液からそれぞれ1mLずつ取り出した。 次に、取り出した全血を採取した時間ごとに1mLずつ2本の1.5mLの先細(コニカル)遠心管に移し、それぞれの試料について以下の操作を行って各分画を調製した。(1)一の先細遠心管は、スウィング・ローターを用いて20℃にて遠心加速度1400×gで5分間遠心した。最上層の血漿層のみを注射器を用いて回収し、新たな1.5mLチューブに移した後、水を加えて総計1mLに調整した。静かに混合した後、これを血漿分画とした。(2)前記血漿を除いた試験管のバフィーコートを注射器を用いて回収し、新たな1.5mL遠心管に移し、水を1mL加えて静かに混合して溶血処理を行った後、再びスウィング・ローターを用いて室温にて遠心加速度1400×gで5分間遠心を行った。遠心後、沈殿を注射器で回収し、1.5mLチューブに移した後、水を加えて総計1mLに調整した。静かに混合した後、これを白血球分画とした。(3)残った一の先細遠心管は、スウィング・ローターを用いて室温にて遠心加速度1400×gで5分間遠心した。最上層の血漿層のみを注射器を用いて回収し、新たな1.5mLチューブに移した。また、バフィーコートのみを注射器を用いて回収し、別の新たな1.5mL遠心管に移し、水を1000μL加えて静かに混合して溶血処理を行った後、再びスウィング・ローターを用いて室温にて遠心加速度1400×gで90秒間遠心を行った。遠心後、沈殿を注射器で回収し、当該沈殿を血漿分画を移した1.5mLチューブに移した。これに水を加えて総計1mLに調整した。静かに混合した後、これを成分血液分画とした。 続いて、上記(1)から(3)で調製した各分画に対して希釈高温加熱方法による測定用血液前処理を行った。すなわち、各1.5mLチューブにそれぞれの試料を100μLと水を900μL加えて混合した後、ヒートブロックを用いて70℃で10分間加熱処理を行った後、氷上にて冷却し、これを測定用血液とした。 エンドトキシンの標準液として、市販のエンドトキシン標準液(大腸菌O111:B4由来エンドトキシン)をエンドトキシン標準溶解液で希釈し、1/10倍希釈の標準液1mLを調製した後、これを標準液とした。詳細はエンドトキシン標準セット(和光純薬工業株式会社)に添付のプロトコルに従った。 その次に、前記測定用血液と前記標準液エンドトキシンから200μLずつ取り出し、ぞれぞれ別個に200μLのリムルス試薬が入ったトキシノメーター専用反応試験管に移した後、ボルテックスミキサーで数秒間混合した。これらを測定標準試料、および測定試料とした。「リムルス試薬」は比濁時間分析法用の試薬であるエンドトキシン‐シングルテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いた。詳細な取り扱いについては添付のプロトコルに従った。 最後に、測定標準試料、および測定試料をトキシノメーターMT−358(和光純薬工業株式会社)にセットし、試料中のエンドトキシン濃度を比濁時間分析法によって測定した。得られた各分画の測定値を全血採取時間ごとにプロットし、グラフ化した。 <結果> 実施例1の結果を表1に示し、以下で説明する。健常者の血液中に添加されたエンドトキシンは、添加10分後には血漿分画から74.5pg/mLと、添加したエンドトキシン量の約70%検出された。血漿分画中のエンドトキシン量は、その後時間経過と共に減少し、加120分後には約1/3以下となった。一方、白血球分画中のエンドトキシン量は、添加10分後では15.0pg/mLに過ぎなかったが、その後増加し、添加30分後には37.4pg/mLの高い値を示した。120分後には血漿分画中のエンドトキシン量よりも高い値を示した。これに対して、成分血液分画中に含まれるエンドトキシン量は、添加10分後に94.9pg/mLもの高い値を示した。また、添加120分後においても66.3pg/mLと高い値を維持していた。 <考察> 実施例1の結果から、血液中に添加されたエンドトキシンは添加後、すなわち感染後当初は血漿分画にそのほとんどが存在するが、それらは時間経過と共に減少し、逆に白血球分画で増大することが示された。これは、添加後に血漿中で菌体表層の状態、フリーの状態、又は血液中のタンパク質と結合した状態で存在していたエンドトキシンが、時間経過と共に白血球細胞の膜表面に結合した状態又は白血球細胞内に取り込まれた状態へと移行したことを示唆している。つまり、血液中のエンドトキシンは感染後の時間によって、その状態や局在が変化すると考えられる。 成分血液分画中に含まれるエンドトキシンの測定は、従来用いられていた血漿中のみのエンドトキシン量に比べて、血漿分画から白血球分画に移行したと考えられるエンドトキシン量を補正することが可能である。その結果、その添加後の時間経過にかかわらず、血液中のエンドトキシンの量を正確に測定できることが示された。 <<実施例2>>臨床病状と各分画中のエンドトキシン量の関係 <目的>臨床症状と血中エンドトキシン濃度の結果とが、成分血液を用いたエンドトキシンの測定では一致することを確認する。 <方法> 臨床的に重症のグラム陰性菌感染症と診断された以下の2症例について当該実験を行った。(1)検体例1は、特発性S状結腸壊死により大腸穿孔を起こした67歳の女性患者から、敗血症性ショックの発症後1時間後に静脈より5mL採血した。(2)検体例2は、卵巣留膿腫を起こした56歳の女性患者から、敗血症性ショックの発症後25時間後に静脈より5mL採血した。 採血後の方法については、採血後直ちにエンドトキシンの測定をおこなった点を除けば、実施例1と同様であることから省略する。 <結果> 実施例2の結果を表1に示し、以下で説明する。なお、当該実施例において、血漿中のエンドトキシン濃度のカットオフ値は1.1pg/mLに設定し、それ以上の値の場合をエンドトキシン血症陽性と診断した。また、白血球、成分血液のエンドトキシン濃度のカットオフ値は暫定的に血漿中エンドトキシン濃度と同等とした。 表中の「ET」はエンドトキシンを意味する。また、「+」はエンドトキシン血症陽性を、「−」はエンドトキシン血症陰性を意味する。(1)検体例1では、血漿中から4.9pg/mLのエンドトキシンが検出されたことから、エンドトキシン血症陽性と診断される。すなわち、当該検体の場合、通常行われる血漿中のエンドトキシン測定でも臨床症状と血中エンドトキシン濃度の結果とが一致す結果となる。一方、白血球分画中のエンドトキシンは0.8pg/mLであることからエンドトキシン血症陰性と診断される。すなわち、当該検体の場合、本発明者が以前に発明した白血球細胞に含まれるエンドトキシンの測定方法(特許文献2)では臨床症状と血中エンドトキシン濃度の結果とが一致しない結果となる。 (2)検体例2では、血漿中からは0.7pg/mLのエンドトキシンしか検出されなかったことから、エンドトキシン血症陰性と診断される。すなわち、当該検体の場合、血漿中のエンドトキシン測定では臨床症状と血中エンドトキシン濃度の結果とが一致しない結果となる。一方、白血球分画中のエンドトキシンは3.5pg/mLでありエンドトキシン血症陽性と診断される。すなわち、当該検体の場合、前記白血球細胞に含まれるエンドトキシンの測定方法(特許文献2)では臨床症状と血中エンドトキシン濃度の結果とが一致する結果となる。 ところが、本発明である全血から赤血球のみを除いた成分血液中のエンドトキシン測定では、検体例1と検体例2において、それぞれ6.5pg/mLと9.7pg/mLのエンドトキシンが検出された。したがって、いずれの場合においても当該患者はエンドトキシン血症陽性と診断され、臨床症状と血中エンドトキシン濃度の結果とが一致する結果となる。 <考察> 実施例1で示したように血液中のエンドトキシンは感染後の経過時間によって、その状態や局在が変化すると考えられる。つまり、感染後採血までの時間如何によって、採取した血液中のエンドトキシンの局在は異なることになる。したがって、本実施例のように検体例1、検体例2ともに実際はエンドトキシン血症による重症のグラム陰性菌感染症であるにもかかわらず、血漿中のエンドトキシン測定のみ、あるいは白血球分画中のエンドトキシン測定では、エンドトキシン血症陰性として診断しまう場合がある。これに対して、本発明である全血から赤血球のみを除いた成分血液中のエンドトキシン測定では、いずれの検体もエンドトキシン血症陽性と診断できた結果から、エンドトキシンの測定感度を向上させ、エンドトキシン血症の臨床上の正確な診断という点において、血漿のみ、又は白血球分画のみのエンドトキシン測定よりも明らかに優れていることが確認できた。本発明によりエンドトキシン血症の診断感度が向上し、早期診断が可能となる。また、臨床症状とエンドトキシン血症の関連性を明確にすることが可能となる。あるいは、治療法創案への情報を提供に繋がることが期待できる。生体内におけるエンドトキシンの存在エンドトキシンによるカブトガニ血球抽出液のゲル化反応の過程リムルステストの各方法を説明するための概念図実施形態1の流れ図成分血液抽出を説明するための概念図希釈高温加熱方法を説明するための概念図実施形態2の流れ図実施形態3の流れ図符号の説明0501:全血(1ml)0502:赤血球層0503:バフィーコート0504:血漿0505:溶血処理0506:白血球分画0507:溶血した血色素を含む上層0508:成分血液 全血を採取する全血採取ステップと、 全血より赤血球のみを除いた成分血液を抽出する成分血液抽出ステップと、 前記成分血液抽出ステップで抽出した成分血液中のエンドトキシンが破壊されない条件の下で、白血球細胞を破壊し、破壊済み白血球を含有する成分血液を調製する測定用血液前処理ステップと、からなる血液前処理方法。前記全血は、ヒト又はヒト以外の脊椎動物の血液である請求項1に記載の血液前処理方法。前記測定用血液前処理ステップで白血球を破壊する方法は、希釈高温加熱方法によるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の血液前処理方法。 請求項1から3のいずれか一に記載の血液前処理方法の測定用血液前処理ステップで得られる測定用血液中のエンドトキシンを測定する血液エンドトキシン測定方法。 前記血液前処理方法の測定用血液前処理ステップに続いて、 前記測定用血液前処理ステップで得られる測定用血液中のエンドトキシンをC因子を用いて測定するエンドトキシン測定ステップからなる請求項4に記載の血液エンドトキシン測定方法。 前記血液前処理方法の測定用血液前処理ステップに続いて、 前記測定用血液前処理ステップで得られる破壊済み白血球を含有する成分血液に含まれるリムルステスト干渉因子を、除去又は不活化した成分血液を調製する干渉因子排除ステップと、 前記干渉因子排除ステップで得られる成分血液中に含まれるエンドトキシンをC因子を含む物質であるC因子関連物質を用いて測定するエンドトキシン測定ステップと、からなる請求項4に記載の血液エンドトキシン測定方法。前記エンドトキシン測定ステップは、同一個体から経時的に複数回に分けて採取した血液に対して行い、その採取の時間ごとの比較測定を含む請求項5又は6に記載の血液前処理方法。前記C因子関連物質は、カブトガニの血球抽出液から生成されたものであることを特徴とする請求項5から7のいずれか一に記載の血液エンドトキシン測定方法。前記C因子は、カブトガニの血液成分であるC因子の特徴を基礎とするものであることを特徴とする請求項5から7のいずれか一に記載の血液エンドトキシン測定方法。前記C因子は、カブトガニの血液成分であるC因子に類似したものであることを特徴とする請求項5から7のいずれか一に記載の血液エンドトキシン測定方法。 【課題】従来の方法では成し得なかった血液中のエンドトキシン量を総括的に、かつ正確に把握し、血液中のエンドトキシン量と病態との関連性を明確にするエンドトキシンの測定方法を提供する。【解決手段】全血より赤血球のみを分別除去し、残った成分血液中に含まれるエンドトキシン量を測定することによって、白血球に含まれるエンドトキシンと血漿中に含まれるエンドトキシンを総括的に測定することが可能となる。これによって、血液中のエンドトキシン測定の感度が飛躍的に向上し、エンドトキシン量と病態との関連性を明確にすることができる。【選択図】図5


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特許公報(B2)_血液エンドトキシン測定方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_血液エンドトキシン測定方法
出願番号:2005271032
年次:2011
IPC分類:G01N 33/579,G01N 33/48


特許情報キャッシュ

八重樫 泰法 稲田 捷也 遠藤 重厚 JP 4761448 特許公報(B2) 20110617 2005271032 20050916 血液エンドトキシン測定方法 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 リムロイドサイエンス株式会社 503372978 工藤 一郎 100109553 八重樫 泰法 稲田 捷也 遠藤 重厚 20110831 G01N 33/579 20060101AFI20110811BHJP G01N 33/48 20060101ALI20110811BHJP JPG01N33/579G01N33/48 H G01N 33/579 G01N 33/48 特開平06−118086(JP,A) 特開2004−117127(JP,A) 特表平08−507150(JP,A) 特開2003−304865(JP,A) 10 2007078665 20070329 19 20080908 淺野 美奈 本発明は、血液中のエンドトキシンの測定方法に関するものである。 「エンドトキシン(endotoxin:内毒素)」は、グラム陰性菌の外膜を構成する成分の一つであり、その活性の本体はLPS (lipopolysaccharide:リポ多糖)である。 生体内におけるエンドトキシンの存在は、図1に示すように、グラム陰性菌(0101)の表層に外膜の一部として存在する(0102)。また、一般的にはグラム陰性桿菌の死後、フリーのエンドトキシン(0103)として血流中に遊離して存在している。さらに、一部のエンドトキシンはBIPやCAP等の白血球由来の不活化因子、抗エンドトキシンタンパク質HDL、又はアルブミン等のタンパク質(0104)と結合して無毒化された状態で存在している(0105)。これらのうちフリーのエンドトキシンの多くは、血液中でLBP(LPS binding protein:LPS結合タンパク質)(0106)と複合体(0107)を形成した後に、白血球の1種である単球(0108)上の細胞表面抗原CD14(0109)と結合する。続いて、このCD14はTLR(Toll−like receptor:Toll様受容体)(0110)と会合する。当該会合によりエンドトキシン結合情報が細胞内シグナル伝達経路(0111)を介して核(0112)へと伝達され、TNFα(0113)やIL−6等の炎症性サイトカイン遺伝子の発現が誘導され、それらの炎症性サイトカインが産生される。「サイトカイン」とは、細胞外に分泌される極微量で生理活性を示す液性因子の総称で、生体機能の形成や維持において細胞間の情報伝達因子(メディエーター)として機能している。(非特許文献1) ところで、エンドトキシンが血液中に一定量以上存在する場合、当該エンドトキシンの刺激によって単球や顆粒球等で過剰の炎症性サイトカインが産生される。その結果、エンドトキシン血症と呼ばれる発熱、敗血症、敗血症性ショック、又は多臓器不全等の症状が惹起される。このエンドトキシン血症の発症は血液中に含まれるエンドトキシン量と相関関係がある。したがって、血液中のエンドトキシンを正確に測定することは、エンドトキシンと種々の病態との関係を解明し、また早期診断と治療法創案への情報を提供する上で極めて重要な行程と考えられる。 従来のエンドトキシンの測定法は、ウサギの体内に検査対象試料を直接注射し、その体温上昇からエンドトキシン量を測定する方法や、カブトガニの血球抽出液(amebocyte lysate)がエンドトキシンによってゲル化する現象を応用したリムルステストが知られている。前記のウサギに直接注射する方法は、コスト面、結果を得るまでの時間、及び感度の悪さ等に問題があることから、現在ではリムルステストがエンドトキシンの測定方法の主流となっている。 図2にエンドトキシンによるカブトガニの血球抽出液を用いたゲル化反応の過程を示す。カブトガニの血球抽出液中にはエンドトキシンと特異的に反応するC因子経路が存在する。「C因子経路」は、以下の反応カスケードによって構成されている。まず、エンドトキシンは、C因子(Factor C)と強固に結合してC因子を活性化する(0201)。次に、エンドトキシンの結合により活性化されたC因子はB因子(Factor B)を活性化する(0202)。続いて、活性化B因子によって、さらに前凝固酵素(proclotting enzyme)が活性化されて凝固酵素(clotting enzyme)が生成される(0203)。この凝固酵素が、その基質であるコアギュローゲン(coagulogen)を部分水解する。その結果、コアギュローゲンからペプチドC(peptide C)が遊離して凝固タンパク質であるコアギュリン(coagulin)が生成される。このコアギュリンの凝固作用によってゲル化が生じる(0204)。(非特許文献2) また、カブトガニの血球抽出液中には、C因子経路の他にも血球抽出液のゲル化を誘導するG因子経路が存在する。G因子経路の反応カスケードは、まず、β-D-グルカン(0205)等のグルカン様物質がG因子(Factor G)と結合してG因子を活性化する(0206)。次に、活性化されたG因子は、前記前凝固酵素を活性化して凝固酵素を生成する(0203)。以降はC因子経路と同様である。ところで、このβ-D-グルカンは植物多糖であり、酵母やカビ等の真菌細胞壁の構成成分としても知られている。酵母やカビ等は通常の環境下に広く存在することから、β-D-グルカンやBGLA等のグルカン様物質はエンドトキシン検査対象試料に混入しやすい。当該混入によって汚染された検査対象試料を用いた場合、前記リムルステストは当該検査対象試料中のエンドトキシン量を過大評価してしまう結果となる。したがって、リムルステストを行うためにカブトガニの血球抽出液を使用する場合は、通常G因子経路を不活性化したものが使用されている。G因子経路の不活性化は、試料中のG因子を除去する、又は不活性化する前処理を行うことによって達成される。 リムルステストによるエンドトキシン測定法は、カブトガニの血球抽出液がエンドトキシンによってゲル化するプロセスを応用したものである。リムルステストは、判定又は測定方法の違いから図3で示すゲル化転倒法(ゲル化法)、発色合成基質法(比色法)、そして比濁時間分析法(比濁法)等の方法が知られている。(非特許文献2) 「ゲル化転倒法」は、図3のAで示すように検査対象試料(0301)にC因子関連物質を含む液(0302)を試験管内で混合し、一定条件下(例えば37℃で30〜60分間)反応(0303)させた後に、その試験管を転倒(0304)、あるいは傾けた際に、試料が液状のままか(0305)、あるいは固化したか(0306)によって判定する方法である。前者の場合はエンドトキシン陰性、後者の場合はエンドトキシン陽性とされる。この方法は、特別な装置を必要とせず操作も比較的容易ではあるが、原料や製造のロットにより測定結果が変わりやすい点や、人による判定のため光学的方法に比べて客観性に欠けるという問題があることから通常は簡易的に用いられるに過ぎない。 「発色合成基質法」は、図3のBで示すように凝固酵素の基質に発色合成ペプチド基質を用い、遊離した発色基の量を吸光度により比色定量することでエンドトキシン量を算出する方法である(非特許文献4)。発色合成ペプチド基質(0307)は、天然基質であるコアグローゲンを凝固酵素(0308)が水解する部位のアミノ酸配列を模したもの(0309)が使用される。凝固酵素による切断部位にパラニトロアニリン(pNA)(0310)等の発色基を結合させ、この発色基が酵素による切断で遊離することによって発色する。発色基がパラニトロアニリンの場合は、パラニトロアニリンの最大吸収波長である405nmの吸光度を経時的に測定する。また、発色基がパラニトロアニリンをジアゾカップリングした場合(0311)は、545nmの吸光度を経時的に測定する。その後、得られた経時的な透過光量の変化をコンピューター解析してエンドトキシン濃度を測定する。発色合成基質法には、エンドポイント合成基質法とカイネティック合成基質法等が知られているが、現在では偽陽性反応が改善されたカイネティック合成基質法が主に用いられている。当該発色合成基質法は、試薬が比較的高価である点や操作が煩雑である等の問題もあるが、定量性、感度、そして客観性に非常に優れている。 「比濁時間分析法」は、図3のCで示すようにゲル化による濁度の増加を透過光量の変化として捉え、反応液の透過光量比が一定の閾値(通常90%前後)(0312)まで減少するのに要する時間をゲル化時間(0313)とし、ゲル化時間とエンドトキシン濃度の関係から作成された標準曲線を用いてエンドトキシン値を算出する方法である。専用装置を必要とするが、操作が容易で、また定量性や客観性に非常に優れている。 ところが、定量性や客観性に優れた前記発色合成基質法や比濁時間分析法等のリムルステストを用いても、なお血液中のエンドトキシンを測定する場合には種々の問題が指摘されている。例えば臨床症状とその結果が必ずしも対応しない等の問題である。具体的に説明すると、血液中にグラム陰性菌が感染することで発症する重症グラム陰性菌感染症であると臨床的に診断されているにもかかわらず、リムルステストによる血中エンドトキシン濃度レベルでは陽性を示さない場合が該当する。このような原因としては、リムルステストの感度の問題や、検体からの血液の採取時期、血漿の分離方法や保存方法等のように、むしろエンドトキシンの測定に供する試料の調製に大きな問題があると考えられている。 従来からリムルステストに供される血液試料には全血より分離した血漿が用いられている。これは、第一には赤血球やその血色素がリムルステストの結果に影響を及ぼすという理由による。血漿は血液中に大量に存在する赤血球やその血色素を除去した後の主成分であるため、リムルステストには適している。第二には、血液中でフリーの状態のエンドトキシンや血液中のタンパク質と結合した状態のエンドトキシンは血漿中に多く存在することや、細菌の菌体表層に存在するエンドトキシンも血漿調製の際に遠心条件を調整することで血漿中に残すことができるという理由による。したがって、血液中のエンドトキシン量の測定には血漿中のエンドトキシン量を測定すれば十分であると考えられていた。 しかし、血液中のエンドトキシンは、上記菌体表層の状態、フリーの状態、血液中のタンパク質と結合した状態以外にも白血球細胞の膜表面に結合した状態、あるいは白血球細胞内に取り込まれた状態で存在している。また、図1に示すように血液中のフリーのエンドトキシンや血液中の一部のタンパク質と結合したエンドトキシンの多くは、感染後時間経過により白血球細胞の膜表面に結合した状態や白血球細胞内に取り込まれた状態に移行する。さらに、すでに感染巣でエンドトキシンと結合した白血球が血液中に移動することもある。したがって、血漿中に含まれるエンドトキシン量の測定のみでは血液中のエンドトキシン量を正確に定量しているとは言い難い。感染後、血液を採取するまでに一定時間を経過した場合には、むしろ白血球細胞の膜表面に結合した状態、又は白血球細胞内に取り込まれた状態のエンドトキシン量が優位になっている可能性がある。また、敗血症性ショック等の症状等の病態は、前記のようにエンドトキシンが白血球細胞の膜表面に結合することでサイトカインの産生が誘導される結果、惹起されることが多い。このように白血球細胞の膜表面に結合したエンドトキシンや白血球細胞内に取り込まれたエンドトキシンの量を考慮しなければ病態との関連性を明確にすることはできない。特開平6−118086特開2004−117127竹田潔, 審良静男, 感染症とToll−like receptor. 最新医学, 2003;58(5); 123-128.遠藤重厚, 稲田捷也, エンドトキシンと病態. へるす出版, 1995http://www.bc-cytometry.com/reagent/productlist-Lysing.htm 前記のような理由から、本発明者らは白血球細胞に含まれるエンドトキシンの測定方法を、特許出願した(特許文献2)。この方法によれば、従来注目されることのなかった白血球細胞の膜表面に結合したエンドトキシンや白血球細胞内に取り込まれたエンドトキシン測定することが可能である。しかし、この方法では逆に従来の測定対象であった血漿中に含まれるエンドトキシンが除外されることになる。結果として、感染後の間もない時期に採血した場合には、血液中に含まれるエンドトキシン量を過小評価してしまう可能性があり、血液中のエンドトキシン量を総括的に、かつ正確に把握し、血液中のエンドトキシン量と病態との関連性を明確にする結果を得る点においては、十分とは言えない課題を残していた。 本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、全血より赤血球のみを分別除去する方法の提供、及び、当該分別除去する方法によって得られる測定用血液中に含まれるエンドトキシン量を測定することによって、白血球に含まれるエンドトキシンと血漿中に含まれるエンドトキシンを総括的に測定することを可能とし、血液中のエンドトキシン測定の感度を向上することができる血液エンドトキシンの測定方法の提供を目的とする。 本発明により、従来の測定方法では不十分であった血液中のエンドトキシン量をより正確に把握することが可能となる。それによって、血液中のエンドトキシン量と病態との関連性を明確にすることがきる。このようなエンドトキシンと種々の病態との関連性の解明によって、エンドトキシン血症の早期診断と治療法創案への情報を提供に繋がることが期待できる。 以下に、本発明の実施を実施するための最良の形態を説明する。なお、本発明は、これら実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。なお、本発明に用いる器具や試薬、水等は全てエンドトキシ・フリーのもの、あるいはエンドトキシン測定結果に影響を及ぼさない程度の極めて微量しかエンドトキシンを含有していないものを使用することを前提とする。 実施形態1は、主に請求項1、2、3等について説明する。 実施形態2は、主に請求項4、6、7、8、9、10等について説明する。 実施形態3は、主に請求項4、5、7、8等について説明する。 <<実施形態1>> <実施形態1:概要>実施形態1について説明をする。本実施形態は、採取した全血から赤血球のみを除いた成分血液を抽出し、成分血液中のエンドトキシンが破壊されない条件の下で、成分血液中の白血球細胞を破壊して測定用血液を調製する血液エンドトキシン測定のための血液前処理方法である。 <実施形態1:構成> 図4に、実施形態1を模式的に例示する。本実施形態は、全血採取ステップ(S0401)と、成分血液抽出ステップ(S0402)と、測定用血液前処理ステップ(S0403)と、からなる。 「全血採取ステップ」(S0401)は、全血を採取するステップである。 本発明における「全血」とは採取した血液中に含まれる全ての物質を含む。 本発明における「全血を採取」とは、全血を生体から直接的に又は生体から採取した後に一旦保存したものから間接的に採取することを言う。例えば直接的な採取の場合、生体の血管に注射針を刺して採血する場合等が該当する。当該注射針を刺す血管は、静脈、動脈を問わない。 全血採取ステップにおいて全血を採取する回数と時期は、同一個体からであれば特には問わない。例えば同一個体から1回のみ採取した全血であってもよいし、ほぼ同一時期に複数回に分けて採取した全血であってもよいし、経時的に複数回に分けて採取した全血であってもよい。 前記全血採取に際して、血液が凝固しない手段を講じてもよい。例えば採血に用いる注射器内部を予めヘパリン等の血液凝固を阻止、又は阻害する物質でコーティングしておいてもよい。 採血後の血液は凝固を阻止、又は阻害する物質を適量加える等の抗凝固処理を施しておくことが好ましい。例えばヘパリンをリムルステストに影響を与えない濃度で加えてもよい。この場合、ヘパリンの終濃度は10〜100units/mLにすることが好ましい。 当該採取する全血は、ヒト、又はヒト以外の哺乳動物の血液のみを対象とすることができる。 「成分血液抽出ステップ」(S0402)は、全血より赤血球のみを除いた成分血液を抽出するステップである。 本発明において「赤血球」とは赤血球細胞と血色素(ヘモグロビン)を意味する。また、「白血球」とはリンパ球、好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージを意味する。本発明おいて断りの無い場合は、血小板も白血球に含むものとする。 本発明における「成分血液」とは、全血から赤血球を除いた残余成分を言う。すなわち、白血球等の赤血球以外の血球成分とそれ以外の血漿等の血液成分等が含まれる。また、血液中に含まれる細菌、およびその遺骸、フリーのエンドトキシン、血液中のタンパク質と結合したエンドトキシン等血液成分以外の物質も該当する。 全血から赤血球を分離方法は、採取した全血を遠心分離で分画することによって他の成分から分離する方法でもよいし、全血に比重液を加えて混合した後に一定時間静置することによって分離する若しくは遠心分離で分画することによって他の成分から分離する方法でもよいし、市販の血球分離剤のような試薬を用いて添付のプロトコルに従って分離する方法でもよい。 前記比重液は、血液と混合したとき赤血球の比重よりも小さく、かつ白血球の比重よりも大きくなる溶液を意味する。例えばデキストランやフィコールの溶液等が該当する。比重液の添加量は、当該エンドトキシンの測定に供する血液量の1/10量程度が好ましいが、この範囲に限られるものではない。また、血液と比重液を混合して静置して分離する場合は、30〜60分程度の静置でよいが、目視で十分に分離されていれば静置時間は問わない。全血から赤血球を分離する際の温度は室温〜37℃で構わないが、20℃前後が好ましい。 いずれの方法においても赤血球層以外の層を回収する。通常赤血球は最下層に移行するため、その場合は当該最下層よりも上層の全て回収するようにする。回収した上層である試料の容量が元の全血と等量になるように水を加えて調製した後、よく混合して液中の細胞の分布を均一化する。水の代わりにTrisバッファー等の緩衝液を用いてもよい。これを被験試料とする。この操作によって、例えば全血1mLあたりのエンドトキシン濃度を、従来の血漿中エンドトキシン濃度測定の場合に表現される血漿1mLあたりのエンドトキシン量と同じ単位で表現することができる。本発明においては、当該被験試料1mLあたりのエンドトキシン量のことを成分血液1mLあたりのエンドトキシン量と表現する。 成分血液抽出ステップの具体的な方法の一例を図5に示し、以下で説明する。まず、ヘパリンを加えて抗凝固処理をした全血1mL(0501)を遠心管に入れ、スウィング・ローターを用いて室温にて遠心加速度1400×gで5〜10分間遠心を行う。成分血液が分離できれば遠心分離の条件は当該条件に限られない。例えば血液によって分離が良くない場合には遠心力を高めてもよいし、遠心時間を延長してもよいし、スウィング・ローターではなくアングル・ローターを用いてもよい。遠心後、遠心管最下層に位置する赤血球層(0502)の上部で層を成すバフィーコート(buffy coat)(0503)と、当該バフィーコートの上層にある血漿(0504)とを注射器等を用いてそれぞれ別個に回収する。「バフィーコート」は、主として白血球と血小板から成る。次に、回収したバフィーコートに約1mLの水を加えて静かに混合し、30秒ほど静置してバフィーコート回収時に混入した赤血球を低浸透圧によって溶血処理する(0505)。このとき、加える水の分量は最終浸透圧によって赤血球のみ溶血し白血球細胞を破壊しない条件であれば特には問わない。また、塩化アンモニウムをベースにした溶血剤や市販されている溶血剤を用いてもよい(非特許文献3)。続いて、溶血処理済みのバフィーコートを再び遠心管に入れ、スウィング・ローターを用いて室温にて遠心加速度1400×gで5〜10分間遠心を行う。当該遠心分離の条件も白血球分画が分離できれば前記条件に限られない。遠心後、遠心管内の沈殿物を白血球分画(0506)として注射器等を用いて回収する。溶血処理により試料中に溶出した血色素を含む上層(0507)は廃棄する。当該白血球分画は赤血球を含まずに、白血球や血小板等を含有する分画である。前記回収した血漿に当該白血球分画を静かに加えて混合する。最後に、水等を加えて総量を元の1mLに調製したものを成分血液(0508)とする。このように、赤血球等の除去によって減少した分量を水によって元の分量に補充することで、元の全血試料中に存在するエンドトキシンの濃度を正確に算出できる。 「測定用血液前処理ステップ」(S0403)は、前記成分血液抽出ステップで抽出した成分血液中のエンドトキシンが破壊されない条件の下で、白血球細胞を破壊し破壊済み白血球を含有する測定用血液を調製するステップである。 本発明において「測定用血液」とは、前記成分血液中のエンドトキシンを正確、かつ高感度に測定するためにエンドトキシンの測定前に所定の処理を施した成分血液を言う。所定の処理とは、エンドトキシンが破壊されない条件の下で白血球細胞を破壊することを言う。 白血球細胞を破壊する方法としては、希釈高温加熱方法によるもの、超音波破壊方法によるもの、物理的破砕方法によるもの、凍結融解方法によるもの等が通常使用されるが、エンドトキシンが破壊されず白血球細胞を十分に破壊できる方法であれば、これらの方法に限られない。 「希釈高温加熱方法」は、前記成分血液に水を加えて3〜10倍希釈し、70〜100℃の範囲で、5〜10分間程度加熱することによって白血球細胞を破壊する方法である。成分血液が前期の温度で十分に加熱されるのであれば加熱方法は問わない。例えば容器ごと恒温槽に入れて加熱してもよい。「恒温槽」は、ウォーターバスであってもよいし、ヒートブロックであってもよい。また、エア・インキュベーターであってもよい。さらにこの時、比濁時間分析法ではTriton X−100等の界面活性剤をエンドトキシンの活性を低下させない濃度(終濃度0.02%)で、加えてもよい。試料は、加熱後に氷冷等によって冷却してもよい。 「超音波破壊方法」は、前記成分血液に超音波を加えることによって、超音波の振動で白血球細胞の細胞膜を破壊し、細胞内容物を溶出させる方法である。超音波処理は超音波細胞破砕機(ソニケーター)等の装置を用いて行ってもよい。当該方法における超音波の強さは、白血球細胞の細胞膜を破壊できるが、エンドトキシンを破壊しない範囲であればよく、成分血液の分量や超音波の発振出力、発信時間によって適宜調節すればよい。 「物理的破砕方法」は、前記成分血液に物理的な外力を加えて、白血球細胞を破壊する方法である。物理的破砕処理は、ホモジナイザー等の装置を用いてもよい。当該方法における外力の強さは、白血球細胞の細胞膜を破壊できるが、エンドトキシンを破壊しない範囲であればよい。 「凍結融解方法」は、前記成分血液を液体窒素中やドライアイス中で急速凍結した後に温湯等で融解する操作を行うことによって成分血液中の白血球細胞を破壊する方法である。急速凍結による細胞内水分の結晶化による体積膨張と、その後の結晶融解によって細胞膜を破壊する原理に基づくものである。凍結融解の操作は、前記成分血液中の白血球細胞が十分に破壊されるまで複数回繰り返してもよい。 測定用血液前処理ステップの希釈高温加熱方法による具体的な方法の一例を図6に示し、以下で説明する。まず、成分血液抽出ステップで得られた成分血液1mLから0.1mLを取り、1.5mLチューブに移す(0601)。当該チューブに水0.9mLを加えて10倍希釈した(0602)後、キャップをしてサンプル孔に予め水を充填したヒートブロック(0603)に当該チューブをセットし、70℃で10分間加熱する。加熱後は直ちに氷中で移して冷却する(0604)。冷却後の試料を測定用血液(0605)とする。 <実施形態1:効果>本実施形態による血液前処理方法によって、血液中に含まれるエンドトキシンを赤血球に影響をされることなく総括的、かつ正確に測定することが可能なエンドトキシン測定用の血液試料を提供することができる。 <<実施形態2>> <実施形態2:概要>実施形態2について説明をする。本実施形態は、全血より赤血球のみを除いた成分血液中に含まれるエンドトキシンを測定するために、前記実施形態1の測定用血液前処理ステップで得られる測定用血液中のエンドトキシンを測定する血液エンドトキシン測定方法である。特に、測定用血液からリムルステスト干渉因子を除去又は不活化した後に、C因子を含む物質であるC因子関連物質を用いて測定用血液中のエンドトキシンを測定することを特徴とする。 <実施形態2:構成> 図7に、実施形態3を模式的に例示する。本実施形態のうち全血採取ステップ(S0701)と、成分血液抽出ステップ(S0702)と、測定用血液前処理ステップ(S0703)は実施形態1と同様である。本実施形態は、前記測定用血液前処理ステップに続き、さらに干渉因子排除ステップ(S0704)と、エンドトキシン測定ステップ(S0705)を有する。 本実施形態のうち全血採取ステップ(S0701)と、成分血液抽出ステップ(S0702)と、測定用血液前処理ステップ(S0703)と、実施形態1と同様であるので、その説明は省略する。 「干渉因子排除ステップ」(S0704)は、測定用血液前処理ステップで得られた破壊済み白血球を含有する成分血液に含まれるリムルステスト干渉因子を、除去又は不活化した成分血液を調製するステップである。 本発明において「リムルステスト干渉因子」とは、血漿中に含まれるリムルステストの阻害因子であるα2−plasmin inhibitor、antithrombin III、α1−antitrypsin等や、リムルステストの亢進因子であるfactor Xa、thrombin、trypsin等が該当する。血液中のエンドトキシン測定のためには、エンドトキシン測定試料を事前に処理することによって、前記リムルステスト干渉因子を除去又は不活化する必要がある。リムルステスト干渉因子の除去又は不活化は、リムルステスト測定方法によって多少異なる。以下、発色合成基質法と比濁時間分析法の場合における、一般的な除去又は不活化方法について、それぞれ説明する。 発色合成基質法では、主にPCA法、New PCA法等によって、リムルステスト干渉因子が除去又は不活化される。ただし、当該発色合成基質法に影響せず、かつリムルステスト干渉因子が除去又は不活化できれば方法はこれらに限られるものではない。 「PCA法」は、以下の手順によって行われる方法である。まず、対象試料にPCA(過塩素酸)を加える。次にPCA添加によって生じる変性物の沈殿を遠心分離によって除去する。続いて上清にNaOHを加えてアルカリ処理した後、測定に供する。 PCA法の具体的な一例を以下に示す。成分血液0.1mLに0.32MのPCAを添加し、37℃で20分間反応させた後、800×gで15分間遠心する。上清を回収し、0.18MのNaOHを50μL加えた後、十分に混合して測定に供する。 「New PCA法」は、対象試料をPCAで処理する前にNaOHを少量加えて、さらに、PCA処理で生じた沈殿をNaOHで可溶化したものを測定に供する方法である。 New PCA法の具体的な一例を以下に示す。成分血液0.1mLに0.18MのNaOHを0.1mL加えて混合し、37℃で5分間反応させた後、0.32MのPCAを添加し、再び37℃で10分間反応させる。続いて、生じた沈殿を0.18MのNaOHを0.2mL加えて十分に溶解する。試料を50μL取り、別容器に分注して0.2M Tris−HCl緩衝液(pH8.0)を50μL加えた後、十分に混合して測定に供する。 比濁時間分析法では主に希釈加熱法によって、リムルステスト干渉因子が除去又は不活化される。ただし、当該比濁時間分析法に影響せず、かつリムルステスト干渉因子が除去又は不活化できる方法であればこれに限られるものではない。 「希釈加熱方法」は、対象試料に水や緩衝液を加えて希釈した後、加熱によって干渉因子を不活化したものを測定に供する方法である。希釈率は、3〜10倍希釈し、温度は70〜100℃の範囲で、5〜10分間程度加熱することによってリムルステスト干渉因子を破壊する。このとき、Triton X−100等の界面活性剤を0.02%加えた水で希釈してもよい。成分血液が前記の温度で十分に加熱されるのであれば加熱方法は問わない。例えば容器ごと恒温槽に入れて加熱してもよい。恒温槽は、ウォーターバスであってもよいし、ヒートブロックであってもよい。また、エア・インキュベーターであってもよい。試料は、加熱後、氷冷してもよい。 希釈加熱法は、前記測定用血液前処理ステップの希釈高温加熱方法に準ずると考えることができる。したがって、比濁時間分析法でエンドトキシンを測定する場合には、当該干渉因子排除ステップを省略してもよい。 「エンドトキシン測定ステップ」(S0705)は、前記干渉因子排除ステップで得られた測定用血液に含まれるエンドトキシンを、C因子を含む物質であるC因子関連物質を用いて測定するステップである。 本実施形態において「C因子関連物質」とは、C因子を含みC因子経路に関与する物質等が該当する。 前記C因子関連物質は、カブトガニの血球抽出液から調製されたものであってもよい。カブトガニの血球抽出液から調製されたものは、カブトガニの血球抽出液にさらに加工を加えたものも該当する。例えばβ―D−グルカンと反応するカブトガニの血球抽出液中のG因子を除去したり、あるいはG因子を不活化させる等の加工を加えたものなどが該当する。 「測定用血液に含まれるエンドトキシンを、C因子を含む物質であるC因子関連物質を用いて測定する方法」は,測定用血液とC因子関連物質を混合した混合液を用いて、測定用血液に含まれるエンドトキシンを測定する方法である。 エンドトキシンの測定する方法は、例えば混合液の透過光量を測定する方法を用いてもよい。当該透過光量を測定する方法は、経時的な透過光量の変化の測定であってもよいし、透過光量の変化率の測定であってもよい。経時的な透過光量の変化の測定の場合は、例えばC因子関連物質を混合した直後の光の透過量を測定し、その後、当該直後の透過量からの変化を検出することによってエンドトキシンの量を測定するようにしてもよい。透過光量の変化率の測定の場合は、前記背景技術において説明した発色合成基質法を利用したものであってもよい。例えばC因子を混合した直後からの透過光量を測定し、混合液の透過光量比がある一定の値(例えば8%前後)まで変化するのに要する時間を測定することによってエンドトキシンの量を測定するようにしてもよい。この場合、予め濃度が判明している標準エンドトキシンから得られた変化率に基づいて作成された標準曲線を利用してもよい。当該方法は、前記背景技術において説明した比濁時間分析法を利用したものであってもよい。 エンドトキシン測定ステップは、全血採取ステップにおいて同一個体から経時的に複数回に分けて採取した血液それぞれに対して、前記成分血液抽出ステップと干渉因子排除ステップと測定用血液前処理ステップ後、採取の時間ごとに比較測定を行うことを含む。これによって、感染後の時間経過による血液中のエンドトキシン量の変化を把握することができ、正確なエンドトキシン血症診断を行うことができる。 <実施形態2:効果>本実施形態による血液エンドトキシン測定によって、赤血球に影響をされることなく血液中に含まれるエンドトキシンをC因子関連物質によって総括的、かつ正確に測定することが可能なエンドトキシン測定用の血液試料を提供することができる。 <<実施形態3>> <実施形態3:概要> 実施形態3について説明をする。本実施形態は、全血より赤血球のみを除いた成分血液中に含まれるエンドトキシンを測定するために、前記実施形態1の測定用血液前処理ステップで得られる測定用血液中のエンドトキシンを測定する血液エンドトキシン測定方法である。特に測定用血液からリムルステスト干渉因子を除去又は不活化する処理をすること無しに、C因子を含む物質であるC因子関連物質を用いて測定用血液中のエンドトキシンを測定することを特徴とする。 <実施形態3:構成> 図8に、実施形態3を模式的に例示する。本実施形態のうち全血採取ステップ(S0801)と、成分血液抽出ステップ(S0802)と、測定用血液前処理ステップ(S0803)は実施形態1と同様である。本実施形態は、前記測定用血液前処理ステップに続き、さらにエンドトキシン測定ステップ(S0804)を有する。 本実施形態のうち全血採取ステップ(S0801)と、成分血液抽出ステップ(S0802)と、測定用血液前処理ステップ(S0803)は実施形態1と同様であるので、その説明は省略する。また、エンドトキシン測定ステップ(S0804)は実施形態2のエンドトキシン測定ステップ(S0705)を基本とするので、ここでは本実施形態に特徴的な点についての以下で説明する。 本実施形態の「エンドトキシン測定ステップ」(S0804)は、測定用血液前処理ステップで得られた測定用血液に含まれるエンドトキシンを、C因子を用いて測定するステップである。 前記C因子は、カブトガニの血球抽出液から生成されたものであってもよい。カブトガニの血球抽出液から生成されたものとは、カブトガニの血球抽出液を処理したもの等が該当する。例えばアフィニティーカラム等の使用によって、カブトガニの血球抽出液中からC因子のみを分離したものであってもよい。 また、前記C因子は、カブトガニの血液成分であるC因子の特徴を基礎とするものであってもよい。「C因子の特徴を基礎とするもの」とは、リコンビナントC因子のようにカブトガニのC因子の遺伝子配列の一部、又は全部に基づいて合成された組み換え遺伝子由来のタンパク質(リコンビナントタンパク質)等が該当する。リコンビナントタンパク質を合成するタンパク質合成系は、最終産物であるリコンビナントタンパク質が、当該リコンビナントタンパク質のベースとなった遺伝子にコードされるアミノ酸配列を有していれば、その合成手段は問わない。例えば細菌系、昆虫細胞系、哺乳動物細胞系、無細胞系のいずれであってもよい。 さらに、前記C因子は、カブトガニの血球抽出液であるC因子に類似したものであってもよい。「C因子に類似したもの」とは、カブトガニ以外の生物種から生成されたカブトガニC因子のオルソログやそのオルソログの遺伝子配列の一部、又は全部に基づいて生合成されたリコンビナントタンパク質等が該当する。リコンビナントタンパク質を合成するタンパク質合成系は、最終産物であるリコンビナントタンパク質が、当該リコンビナントタンパク質のベースとなった遺伝子にコードされるアミノ酸配列を有していれば、その合成手段は問わない。例えば細菌系、昆虫細胞系、哺乳動物細胞系、無細胞系のいずれであってもよい。 「測定用血液に含まれるエンドトキシンを、C因子を用いて測定する方法」は、測定用血液とC因子関連物質を混合した混合液を用いて、測定用血液に含まれるエンドトキシンを測定する方法である。 「エンドトキシンを測定する方法」は、エンドトキシンとの結合によって活性化した活性型C因子を検出する方法が該当する。例えば活性型C因子の作用によって蛍光が産生されるような基質を加えることによって、産生された蛍光を適当な装置で受光し、その発行強度をコンピューターで定量測定することでエンドトキシンを測定するようにしてもよい。あるいは、活性型C因子の作用によって発色する発色合成基質を加えることによって、遊離した発色基の量を吸光度により比色定量することでエンドトキシン量を測定してもよい。さらに、PyoGene(CAMBREX,USA)等の市販のキットを用いて、添付のプロトコルに従って測定してもよい。 エンドトキシン測定ステップは、全血採取ステップにおいて同一個体から経時的に複数回に分けて採取した血液それぞれに対して、前記成分血液抽出ステップと測定用血液前処理ステップ後、採取の時間ごとに比較測定を行うことを含む。これによって、感染後の時間経過による血液中のエンドトキシン量の変化を把握することができ、正確なエンドトキシン血症診断を行うことが可能となる。 <実施形態3:効果>本実施形態による血液エンドトキシン測定によって、赤血球に影響をされることなく血液中に含まれるエンドトキシンをC因子の活性化によって総括的、かつ正確に測定することが可能なエンドトキシン測定用の血液試料を提供することができる。 以下に、本発明の実施例を示す。なお、以下の実施例は、本発明の特定の様態を例示するものであり、本発明の範囲を制限するためのものではない。また、本実施例で使用された温度、量、時間等の数値に関して、実験上の多少の誤差及び偏差は斟酌してよい。なお、本実施例に用いた器具や試薬、水等は全てエンドトキシ・フリーのもの、あるいはエンドトキシン測定結果に影響を及ぼさないきわめて微量のエンドトキシンを含有するものを使用したことを前提としている。<<実施例1>> エンドトキシンの添加回収実験 <目的> 血液中のフリーのエンドトキシンや血液中の一部のタンパク質と結合したエンドトキシンの多くが、感染後の時間経過にとともに白血球細胞の膜表面に結合した状態、あるいは白血球細胞内に取り込まれた状態に移行することを確認する。また、赤血球を除いた成分血液中に含まれるエンドトキシンの測定が、血漿分画や白血球分画よりも血液中のエンドトキシンの量を正確に測定できることを確認する。 <方法> まず、健常者(男性、33歳)の静脈から10mLの全血を採取した後、ヘパリンを10〜100units/mL加えて抗凝固処理を行った。当該抗凝固処理を行った全血に大腸菌O111:B4由来エンドトキシン(LPS)を120pg/mL添加し、湿潤させた37℃の5%CO2インキュベーター内においての条件の元で加温した。エンドトキシンの添加後、10分、30分、2時間後に当該血液からそれぞれ1mLずつ取り出した。 次に、取り出した全血を採取した時間ごとに1mLずつ2本の1.5mLの先細(コニカル)遠心管に移し、それぞれの試料について以下の操作を行って各分画を調製した。(1)一の先細遠心管は、スウィング・ローターを用いて20℃にて遠心加速度1400×gで5分間遠心した。最上層の血漿層のみを注射器を用いて回収し、新たな1.5mLチューブに移した後、水を加えて総計1mLに調整した。静かに混合した後、これを血漿分画とした。(2)前記血漿を除いた試験管のバフィーコートを注射器を用いて回収し、新たな1.5mL遠心管に移し、水を1mL加えて静かに混合して溶血処理を行った後、再びスウィング・ローターを用いて室温にて遠心加速度1400×gで5分間遠心を行った。遠心後、沈殿を注射器で回収し、1.5mLチューブに移した後、水を加えて総計1mLに調整した。静かに混合した後、これを白血球分画とした。(3)残った一の先細遠心管は、スウィング・ローターを用いて室温にて遠心加速度1400×gで5分間遠心した。最上層の血漿層のみを注射器を用いて回収し、新たな1.5mLチューブに移した。また、バフィーコートのみを注射器を用いて回収し、別の新たな1.5mL遠心管に移し、水を1000μL加えて静かに混合して溶血処理を行った後、再びスウィング・ローターを用いて室温にて遠心加速度1400×gで90秒間遠心を行った。遠心後、沈殿を注射器で回収し、当該沈殿を血漿分画を移した1.5mLチューブに移した。これに水を加えて総計1mLに調整した。静かに混合した後、これを成分血液分画とした。 続いて、上記(1)から(3)で調製した各分画に対して希釈高温加熱方法による測定用血液前処理を行った。すなわち、各1.5mLチューブにそれぞれの試料を100μLと水を900μL加えて混合した後、ヒートブロックを用いて70℃で10分間加熱処理を行った後、氷上にて冷却し、これを測定用血液とした。 エンドトキシンの標準液として、市販のエンドトキシン標準液(大腸菌O111:B4由来エンドトキシン)をエンドトキシン標準溶解液で希釈し、1/10倍希釈の標準液1mLを調製した後、これを標準液とした。詳細はエンドトキシン標準セット(和光純薬工業株式会社)に添付のプロトコルに従った。 その次に、前記測定用血液と前記標準液エンドトキシンから200μLずつ取り出し、ぞれぞれ別個に200μLのリムルス試薬が入ったトキシノメーター専用反応試験管に移した後、ボルテックスミキサーで数秒間混合した。これらを測定標準試料、および測定試料とした。「リムルス試薬」は比濁時間分析法用の試薬であるエンドトキシン‐シングルテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いた。詳細な取り扱いについては添付のプロトコルに従った。 最後に、測定標準試料、および測定試料をトキシノメーターMT−358(和光純薬工業株式会社)にセットし、試料中のエンドトキシン濃度を比濁時間分析法によって測定した。得られた各分画の測定値を全血採取時間ごとにプロットし、グラフ化した。 <結果> 実施例1の結果を表1に示し、以下で説明する。健常者の血液中に添加されたエンドトキシンは、添加10分後には血漿分画から74.5pg/mLと、添加したエンドトキシン量の約70%検出された。血漿分画中のエンドトキシン量は、その後時間経過と共に減少し、加120分後には約1/3以下となった。一方、白血球分画中のエンドトキシン量は、添加10分後では15.0pg/mLに過ぎなかったが、その後増加し、添加30分後には37.4pg/mLの高い値を示した。120分後には血漿分画中のエンドトキシン量よりも高い値を示した。これに対して、成分血液分画中に含まれるエンドトキシン量は、添加10分後に94.9pg/mLもの高い値を示した。また、添加120分後においても66.3pg/mLと高い値を維持していた。 <考察> 実施例1の結果から、血液中に添加されたエンドトキシンは添加後、すなわち感染後当初は血漿分画にそのほとんどが存在するが、それらは時間経過と共に減少し、逆に白血球分画で増大することが示された。これは、添加後に血漿中で菌体表層の状態、フリーの状態、又は血液中のタンパク質と結合した状態で存在していたエンドトキシンが、時間経過と共に白血球細胞の膜表面に結合した状態又は白血球細胞内に取り込まれた状態へと移行したことを示唆している。つまり、血液中のエンドトキシンは感染後の時間によって、その状態や局在が変化すると考えられる。 成分血液分画中に含まれるエンドトキシンの測定は、従来用いられていた血漿中のみのエンドトキシン量に比べて、血漿分画から白血球分画に移行したと考えられるエンドトキシン量を補正することが可能である。その結果、その添加後の時間経過にかかわらず、血液中のエンドトキシンの量を正確に測定できることが示された。 <<実施例2>>臨床病状と各分画中のエンドトキシン量の関係 <目的>臨床症状と血中エンドトキシン濃度の結果とが、成分血液を用いたエンドトキシンの測定では一致することを確認する。 <方法> 臨床的に重症のグラム陰性菌感染症と診断された以下の2症例について当該実験を行った。(1)検体例1は、特発性S状結腸壊死により大腸穿孔を起こした67歳の女性患者から、敗血症性ショックの発症後1時間後に静脈より5mL採血した。(2)検体例2は、卵巣留膿腫を起こした56歳の女性患者から、敗血症性ショックの発症後25時間後に静脈より5mL採血した。 採血後の方法については、採血後直ちにエンドトキシンの測定をおこなった点を除けば、実施例1と同様であることから省略する。 <結果> 実施例2の結果を表1に示し、以下で説明する。なお、当該実施例において、血漿中のエンドトキシン濃度のカットオフ値は1.1pg/mLに設定し、それ以上の値の場合をエンドトキシン血症陽性と診断した。また、白血球、成分血液のエンドトキシン濃度のカットオフ値は暫定的に血漿中エンドトキシン濃度と同等とした。 表中の「ET」はエンドトキシンを意味する。また、「+」はエンドトキシン血症陽性を、「−」はエンドトキシン血症陰性を意味する。(1)検体例1では、血漿中から4.9pg/mLのエンドトキシンが検出されたことから、エンドトキシン血症陽性と診断される。すなわち、当該検体の場合、通常行われる血漿中のエンドトキシン測定でも臨床症状と血中エンドトキシン濃度の結果とが一致す結果となる。一方、白血球分画中のエンドトキシンは0.8pg/mLであることからエンドトキシン血症陰性と診断される。すなわち、当該検体の場合、本発明者が以前に発明した白血球細胞に含まれるエンドトキシンの測定方法(特許文献2)では臨床症状と血中エンドトキシン濃度の結果とが一致しない結果となる。 (2)検体例2では、血漿中からは0.7pg/mLのエンドトキシンしか検出されなかったことから、エンドトキシン血症陰性と診断される。すなわち、当該検体の場合、血漿中のエンドトキシン測定では臨床症状と血中エンドトキシン濃度の結果とが一致しない結果となる。一方、白血球分画中のエンドトキシンは3.5pg/mLでありエンドトキシン血症陽性と診断される。すなわち、当該検体の場合、前記白血球細胞に含まれるエンドトキシンの測定方法(特許文献2)では臨床症状と血中エンドトキシン濃度の結果とが一致する結果となる。 ところが、本発明である全血から赤血球のみを除いた成分血液中のエンドトキシン測定では、検体例1と検体例2において、それぞれ6.5pg/mLと9.7pg/mLのエンドトキシンが検出された。したがって、いずれの場合においても当該患者はエンドトキシン血症陽性と診断され、臨床症状と血中エンドトキシン濃度の結果とが一致する結果となる。 <考察> 実施例1で示したように血液中のエンドトキシンは感染後の経過時間によって、その状態や局在が変化すると考えられる。つまり、感染後採血までの時間如何によって、採取した血液中のエンドトキシンの局在は異なることになる。したがって、本実施例のように検体例1、検体例2ともに実際はエンドトキシン血症による重症のグラム陰性菌感染症であるにもかかわらず、血漿中のエンドトキシン測定のみ、あるいは白血球分画中のエンドトキシン測定では、エンドトキシン血症陰性として診断しまう場合がある。これに対して、本発明である全血から赤血球のみを除いた成分血液中のエンドトキシン測定では、いずれの検体もエンドトキシン血症陽性と診断できた結果から、エンドトキシンの測定感度を向上させ、エンドトキシン血症の臨床上の正確な診断という点において、血漿のみ、又は白血球分画のみのエンドトキシン測定よりも明らかに優れていることが確認できた。本発明によりエンドトキシン血症の診断感度が向上し、早期診断が可能となる。また、臨床症状とエンドトキシン血症の関連性を明確にすることが可能となる。あるいは、治療法創案への情報を提供に繋がることが期待できる。生体内におけるエンドトキシンの存在エンドトキシンによるカブトガニ血球抽出液のゲル化反応の過程リムルステストの各方法を説明するための概念図実施形態1の流れ図成分血液抽出を説明するための概念図希釈高温加熱方法を説明するための概念図実施形態2の流れ図実施形態3の流れ図符号の説明0501:全血(1ml)0502:赤血球層0503:バフィーコート0504:血漿0505:溶血処理0506:白血球分画0507:溶血した血色素を含む上層0508:成分血液 血液中のエンドドキシンを測定するための前処理であって、 全血を採取する全血採取ステップと、 全血より赤血球のみを除いた成分血液を抽出する成分血液抽出ステップと、 前記成分血液抽出ステップで抽出した成分血液中のエンドトキシンが破壊されない条件の下で、白血球細胞を破壊し、破壊済み白血球を含有する成分血液を調製する測定用血液前処理ステップと、からなる血液前処理方法。前記全血は、ヒト又はヒト以外の脊椎動物の血液である請求項1に記載の血液前処理方法。前記測定用血液前処理ステップで白血球を破壊する方法は、希釈高温加熱方法によるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の血液前処理方法。 請求項1から3のいずれか一に記載の血液前処理方法の測定用血液前処理ステップで得られる測定用血液中のエンドトキシンを測定する血液エンドトキシン測定方法。 前記血液前処理方法の測定用血液前処理ステップに続いて、 前記測定用血液前処理ステップで得られる測定用血液中のエンドトキシンをC因子を用いて測定するエンドトキシン測定ステップからなる請求項4に記載の血液エンドトキシン測定方法。 前記血液前処理方法の測定用血液前処理ステップに続いて、 前記測定用血液前処理ステップで得られる破壊済み白血球を含有する成分血液に含まれるリムルステスト干渉因子を、除去又は不活化した成分血液を調製する干渉因子排除ステップと、 前記干渉因子排除ステップで得られる成分血液中に含まれるエンドトキシンをC因子を含む物質であるC因子関連物質を用いて測定するエンドトキシン測定ステップと、からなる請求項4に記載の血液エンドトキシン測定方法。前記エンドトキシン測定ステップは、同一個体から経時的に複数回に分けて採取した血液に対して行い、その採取の時間ごとの比較測定を含む請求項5又は6に記載の血液エンドトキシン測定方法。前記C因子関連物質は、カブトガニの血球抽出液から生成されたものであることを特徴とする請求項5から7のいずれか一に記載の血液エンドトキシン測定方法。前記C因子は、カブトガニの血液成分であるC因子の特徴を基礎とするものであることを特徴とする請求項5から7のいずれか一に記載の血液エンドトキシン測定方法。前記C因子は、カブトガニの血液成分であるC因子に類似したものであることを特徴とする請求項5から7のいずれか一に記載の血液エンドトキシン測定方法。


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