タイトル: | 公開特許公報(A)_ポリウレタンの均質性評価用試料調製方法 |
出願番号: | 2005263423 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | G01N 33/44,C08G 18/48,G01N 33/40,C08G 101/00 |
上 真樹 田畑 憲一 橋阪 和彦 JP 2007078390 公開特許公報(A) 20070329 2005263423 20050912 ポリウレタンの均質性評価用試料調製方法 東レ株式会社 000003159 上 真樹 田畑 憲一 橋阪 和彦 G01N 33/44 20060101AFI20070302BHJP C08G 18/48 20060101ALI20070302BHJP G01N 33/40 20060101ALI20070302BHJP C08G 101/00 20060101ALN20070302BHJP JPG01N33/44C08G18/48 FG01N33/40C08G18/48 FC08G101:00 4 OL 9 4J034 4J034BA03 4J034DG01 4J034HA01 4J034KB02 4J034KB05 4J034KD12 4J034NA03 4J034NA08 4J034QB01 4J034QD02 4J034SA01 本発明は、ポリウレタンの均質性の評価用試料の調製方法に関するものである。 ポリウレタンは基本的には多官能ポリイソシアネートとポリオールの2種類の主原料を混合/反応させることによって生成されるポリマーであり、配合処方および成形方法を変えることにより、フォーム、エラストマ−、塗料、接着剤、弾性繊維など幅広い材料物性を発現できる優れた高分子素材である。 例えばポリウレタンエラストマーは、弾性率、引張強さ、引裂強さが高く耐摩耗性、ゴム弾性が優れ、衝撃吸収性、耐油・耐ガソリン性、耐オゾン性、耐熱性、耐加水分解性など、多くの特長をもっており、その特性を利用してロール、タイヤ、ベルト、パッキン、フィルム、ホース、靴底などに用いられている。 一方、ポリウレタンフォームは軽く、クッション性・耐久性に優れ、密度と硬さのバリエーションが豊富であり、衝撃吸収性・断熱性・耐熱性・耐候性・耐薬品性・吸音特性が良く、さらに着色自由、裁断・打抜・接着等の種々加工が容易であるなど、数多くの特長を持っている。そのため電気冷蔵庫、自動販売機、ショーケース、コンテナ船などの断熱材、自動車部材(パネル、シートなど)、建築分野における、断熱パネル、防水材、シーリング材、床材、吸音材や、家具、衣料、マットレスなどの家庭日用品、スポーツ分野における舗装材(テニスコートなど)、ゴルフボ−ル、スキー、ラケットなど、非常に多岐にわたる分野で使われている。 さらには近年、医療、IT分野など、従来よりも高品質性、高機能性が求められる分野においても応用展開がなされるようになった。例えば医療分野では生体適合性に優れていることから人工臓器(人工心臓用ポンプ、人工腎臓)、血液透析機等などの人工透析膜のポッティング材として使用されている。また、IT分野では半導体製造工程におけるCMP研磨工程で使用される研磨パッド素材として精力的に開発が進められている(例えば特許文献1、2参照)。 このような医療分野やIT分野のように、より高品質性、高機能性が求められる分野においては従来の用途では問題とはならなかったポリウレタンの均質性が重要な問題として浮かび上がってきた。ポリイソシアネート構造部とポリオール構造部のどちらかがよりリッチになるような化学組成的均質性不良部分が存在した場合、例えば医療材料においては生体適合性が損なわれたり、CMP研磨材料においては平坦化特性が悪化したり、不均質部でのスラリーの凝集によるスクラッチ発生というトラブルが生じてしまう。そこでこのようなトラブルを防ぐために均質性不良部分の有無を評価する必要がある。 例えば特許文献1では研磨面が円形の内側領域と気泡密度の大きい内側領域と、それを取り囲む気泡密度の小さいドーナツ形の外側領域からなる硬質発泡ポリウレタンCMP研磨パッドが提案されている。研磨時の平坦化特性を良好なものとするためには、研磨面の均一性を確保することが重要であり、材料の均一性を表面硬度(D硬度)や気泡密度により評価している。 また特許文献2では良好な研磨特性を有するCMP研磨パッドを得るために、その材料となる発泡ポリウレタンブロックの最適化のための重要な物性として、表面硬度(A硬度)による均質性評価が重要な指標であることが述べられている。特開2005−197408号公報特開2005−169578号公報 ポリウレタン材料の均質性を評価する方法としては上述の例のように材料の密度や硬度、弾性率等の力学特性を測定する方法があげられるが、このような評価方法は簡便ではあるものの、均質性、特に化学組成の均質性をダイレクトに反映したデータが得られないという欠点がある。一方、IRやUVなどの分光学的評価方法や、NMR、元素分析による評価では化学組成の均質性をある程度反映したデータが得られるという点では優れている。しかしながら、いずれの方法においてもポリウレタン材料から評価サンプルを取得して評価を行うのであるが、どの部分が均質性不良であるか、どの部分が均質性良好であるかについては評価後のデータを考察して初めてわかるため、均質性の有無を判断するにはポリウレタン材料のほぼ全体を評価しなければならず、そのためには膨大な時間と手間がかかってしまうため、実用的ではなかった。 本発明はポリウレタンの均質性評価において、簡便かつ実用的な評価用試料調整方法を提供するものである。 本発明者らは上記課題に対して鋭意検討を重ね、ポリウレタン材料を有機化合物に浸漬することでポリウレタンの均質性評価用試料を調製する方法を見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち「溶解度パラメーターが14〜25MPa1/2である液体の有機化合物に浸漬することを特徴とするポリウレタンの均質性評価用試料調製方法」である。 本発明によって、ポリウレタン材料の均質性を簡便かつ効果的に評価するための試料を調製することが可能となる。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明ではポリウレタンを溶解度パラメーターが14〜25MPa1/2である液体の有機化合物に浸漬することで、上述の化学組成の均質性を簡便に評価できる試料を調製するものである。評価対象のポリウレタンに対し、特定の溶解度パラメーターが14〜25MPa1/2である液体の有機化合物に浸漬することで、ポリウレタンの組成の不均一部と均質部における有機化合物の親和性、浸透性、膨潤性が異なることから、浸漬後のポリウレタンに目視外観上の明らかな不均一性が認められるようになる。この目視外観上の明らかな不均一性とは、例えば透明性の高い部分と不透明な部分が帯状、縞状、海島状などの形状で認められるものである。さらにこの目視外観で違いの見受けられた部分を有機化合物を減圧留去などにより除去した後、上述のIRやUVなどの分光学的評価方法や、NMR、元素分析による評価を行い、さらに詳細な化学組成の均質性を評価することが可能となる。 溶解度パラメーターとは、J.H.Hildebrandによって提唱された、液体のモル蒸発熱をΔH、モル体積をVとするとき、δ=(ΔH/V)1/2で定義される物質定数である。 溶解度パラメーターδは、Hildebrandら(J. H. Hildebrand and R. L. Scott著、“The Solubility of Nonelectrolytes”、Reinhold Publishing Corp.出版、1950年発行)が提唱したもので、式1のように表される。 δ[MPa1/2]=(ΔE/V)1/2 (式1) ここで、ΔEは分子凝集エネルギー[J/mol]、Vは分子容[ml/mol]である。すなわち、溶解性パラメーターは凝集エネルギー密度の平方根に相当する。溶解性パラメーターの値が近いものほど凝集エネルギー密度が小さく、親和性が高いといえる。しかし初期の溶解性パラメーターは、分子間力の分散力が主体で、双極子間力や水素結合力については、あまり考慮されていなかった。のちに、Hansenら(C. M. Hansen著、J. Paint Technol.39巻505号104〜117ページ1967年発行や、C. M. Hansen著、J. Paint Technol.39巻511号505〜510ページ1967年発行やC. M. Hansen andK.Skaarup著、J. Paint Technol.39巻511号511〜514ページ、1967年発行)やHoy(K. L. Hoy著、J. Paint Technol.42巻541号76〜118ページ1970年発行)によって、これらを定量化したいわゆる三次元溶解性パラメーターが提唱された。三次元溶解性パラメーターδは、式1,式2より式3のように表される。 ΔE=ΔEd+ΔEp+ΔEh (式2) δ2=δd2+δp2+δh2 (式3) ここで、ΔEdは分散力[J/mol]、ΔEpは双極子間力[J/mol]、ΔEhは水素結合力[J/mol]、δdは溶解度パラメータの分散力項[ml/mol]、δpは溶解度パラメータの双極子間力項[ml/mol]、δhは溶解度パラメータの水素結合力[ml/mol]である。 一般的なポリイソシアネートとポリオールから製造されるポリウレタンの溶解度パラメータは16〜20MPa1/2であることから、求められる有機化合物の溶解度パラメータは15〜25MPa1/2であることが好ましい。より好ましくは16〜23MPa1/2である。溶解度パラメータが14MPa1/2未満、あるいは25MPa1/2を超える有機化合物を用いた場合は、ポリウレタンとの親和性に乏しいことから不均質部分を顕著に確認できない場合がある。 浸漬したポリウレタンの状態を浸漬したまま観察することができることから、用いられる有機化合物は透明であることが好ましい。無色透明であることが最も好ましいが、着色している場合、あるいは着色かつ非透明の液体であっても、ポリウレタンを取り出し目視外観を観察することができる。 さらに用いられる有機化合物は常温で液体であることが好ましい。ただし融点が常温以上である有機化合物でも、浸漬温度を上げて液体状態とすることで本発明の適応が可能である。 また当然のことではあるが、評価対象のポリウレタンと何らかの反応を起こしてしまうような有機化合物は用いることが出来ない。 本発明に好適に用いられる有機化合物を例示すると、アクリロニトリル、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、メチルメタクリレート、酢酸エチル、スチレン、トルエン、キシレン、メチルイソプロピルケトン、ジクロロエチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、フラン、ヘキサン、シクロヘキサンなどである。 評価対象のポリウレタンを有機化合物に浸漬する時間については、ポリウレタン材料の大きさや厚みなどの違いや、ポリウレタン材料と有機化合物との親和性、浸漬温度などにより有機化合物の浸透速度が大きく左右されるため、一概に規定されるものではないが、一般的に溶解度パラメータが14〜25MPa1/2の有機化合物を用いてポリウレタン材料を常温で浸漬した場合、12時間〜24時間である。必要以上に浸漬を継続させた場合、ポリウレタン材料全体への有機化合物の浸透が飽和状態となり、結果として不均一性を判断できないことがあることから、浸漬開始後、定期的に(例えば1時間おきに)状態を観測することが好ましい。 以下に本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて説明するが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、これによって本発明の範囲を限定するものではない。 (1)発泡ポリウレタンの製造 液温を40℃に保った、ポリエーテルポリオール:"サンニックス(登録商標)FA−909"(三洋化成工業(株)製)100重量部、鎖伸長剤:モノエチレングリコール8重量部、アミン触媒:"Dabco(登録商標)33LV"(エアープロダクツジャパン(株)製)1.95重量部、アミン触媒:"Toyocat(登録商標)ET"(東ソー(株)製)0.14重量部、シリコーン整泡剤:"TEGOSTAB(登録商標)B8462"(Th.Goldschmidt AG社製)1重量部、発泡剤:水0.55重量部を混合してなるA液と、液温を40℃に保ったイソシアネート:"サンフォーム(登録商標)NC−703"(三洋化成工業(株)製)96.2重量部からなるB液を、RIM成型機により、吐出圧16MPaで衝突混合した後、40℃に保った金型内に吐出量800g/secで吐出し、10分間放置することで、平均厚み15.0mmの発泡ポリウレタンブロック(密度:0.75g/cm3、平均気泡径:35μm、大きさ:300×300mm)を作製した。 (2)発泡ポリウレタン評価サンプルの作成 得られた発泡ポリウレタンブロックを室田製作所製バンドナイフ式スライサーを用い、スライス厚み設定0.5mmで表裏スキン層を除去したのち、スライス厚み設定2.0mmで7枚のシートに加工した。得られた7枚のシートの各中央部から50×50mmの大きさで各シート2枚ずつ評価サンプルを切り出した。 実施例 7枚のシートから2枚ずつ切り出した評価サンプルから各シート1枚を選び、常温で24時間、メチルメタクリレート(溶解度パラメータ18.0MPa1/2、出典:Polymer Handbook 4th Ed.)に浸漬して、均質性評価用試料を調製した。これを目視により外観をチェックした。この時、評価サンプルの不均一性を目視により簡便に評価することができ、部分的に透明性の高い部分が評価サンプル全面に認められるものを×、やや認められるものを△、全く認められないものを○に三段階で評価した。 さらに各シートからの残りの1枚の評価サンプルを熱風オーブンにて130℃、12時間加熱した。加熱後のサンプルを目視で外観チェックを行い、膨れや裂けが認められたものを×、やや認められるものを△、全く認められないものを○の三段階で評価した。 評価結果については表1にまとめた。均質性評価用試料の目視による外観チェックと、加熱後のサンプルの目視による外観チェックとは良い相関を示した。さらに図1および図2にポリウレタンシートNo.1(図1)とNo.4(図2)のサンプルのメチルメタクリレート浸漬後の外観写真を示す。 比較例1 実施例と同様に7枚のシートから2枚ずつ切り出した評価サンプルから各シート1枚を選び、常温で24時間、n−デカン(溶解度パラメータ13.5MPa1/2出典:Polymer Handbook 4th Ed.)に浸漬して、均質性評価用試料を調製した。これを目視により外観をチェックしたが、均質性は評価できなかった。 比較例2 実施例と同様に7枚のシートから2枚ずつ切り出した評価サンプルから各シート1枚を選び、常温で24時間、ジメチルスルホキシド(溶解度パラメータ29.7 MPa1/2、出典:Polymer Handbook 4th Ed.)に浸漬して、均質性評価用試料を調製した。これを目視により外観をチェックしたが、均質性は評価できなかった。 以上で明らかなようにポリウレタンシートNo.4の評価サンプルではメチルメタクリレートへの浸漬により組成の不均一性に起因する透明性の高い部分(図2における濃色部)と不透明白色部(図2における白色部)の混在が顕著に認められるとともに、加熱試験の結果からもこのような不均一性がポリウレタンの耐熱性に悪影響を及ぼしていることが明らかとなった。 実施例で示したとおり、本発明によってポリウレタン材料の不均一性を簡便かつ効果的に評価することが可能となった。図1は本発明の評価方法を用いて評価したポリウレタンの均質性の高い部分の外観写真である。図2は本発明の評価方法を用いて評価したポリウレタンの不均質性の高い部分の外観写真である。ポリウレタンの試料調製方法であって、溶解度パラメーターが14〜25MPa1/2である液体の有機化合物に浸漬することを特徴とするポリウレタンの均質性評価用試料調製方法。ポリウレタンが発泡ポリウレタンであることを特徴とする請求項1記載のポリウレタンの均質性評価用試料調製方法。 ポリウレタンが多官能イソシアネートとポリエーテルポリオールから製造されることを特徴とする請求項1記載のポリウレタンの均質性評価用試料調製方法。ポリウレタンが研磨パッドあるいはその原材料に用いられることを特徴とする請求項1記載のポリウレタンの均質性評価用試料調製方法。 【課題】ポリウレタン材料の均質性を評価する上で有効かつ簡便な評価用試料の調製方法を提供する。【解決手段】液体で溶解度パラメーターが14〜25MPa1/2の有機化合物にポリウレタン材料を浸漬する事でポリウレタンの組成の不均一部と均質部における有機化合物の親和性、浸透性、膨潤性が異なることから、浸漬後のポリウレタンに目視外観上の明らかな不均一性が認められるようになる。この目視外観上の明らかな不均一性とは、例えば透明性の高い部分と不透明な部分が帯状、縞状、海島状などの形状で認められるものである。【選択図】なし