タイトル: | 公開特許公報(A)_ラベプラゾールおよびファモチジンを含んでなる組合せ剤 |
出願番号: | 2005240078 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 31/4439,A61P 1/04,A61P 43/00 |
古 田 隆 久 白 井 直 人 杉 本 光 繁 中 村 明 子 JP 2007055905 公開特許公報(A) 20070308 2005240078 20050822 ラベプラゾールおよびファモチジンを含んでなる組合せ剤 エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 506137147 国立大学法人浜松医科大学 504300181 吉武 賢次 100075812 中村 行孝 100091487 紺野 昭男 100094640 横田 修孝 100107342 古 田 隆 久 白 井 直 人 杉 本 光 繁 中 村 明 子 A61K 31/4439 20060101AFI20070209BHJP A61P 1/04 20060101ALI20070209BHJP A61P 43/00 20060101ALI20070209BHJP JPA61K31/4439A61P1/04A61P43/00 123 9 OL 16 特許法第30条第1項適用申請有り (1)Sugimoto M.et al.,Clinical Pharmacology & Therapeutics − April 2005(Vol.77,Issue 4,Pages 302−311)(2005年4月6日発行。2005年4月5日http://www.ascpt.org/に掲載。) (2)Sugimoto M.et al.,Gastroenterology − April 2005(Vol.128,Issue 4(Supplement 2),Page A−529)(2005年4月19日発行。2005年4月18日http://www.gastrojournal.org/に掲載。) 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC82 4C086BC84 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA14 4C086NA15 4C086ZA66 4C086ZA68 4C086ZC75発明の分野 本発明は薬剤の新規な組合せに関し、更に詳細には、ラベプラゾールとファモチジンとを組み合わせて含んでなる医薬に関する。 胃酸は、胃、十二指腸、食道等の粘膜を損傷することがあり、様々な疾患(例えば、消化性潰瘍や逆流性食道炎)の発現に関連している。例えば、食道内pHが4.0未満であることが食道粘膜の損傷程度と直接相関していることから、胃酸分泌を長時間抑制することが逆流性食道炎の治療の主要な戦略となっている。胃内pHが4.0未満である時間をできれば2〜4時間未満(<16.7%)に短縮すべきであるという報告がいくつかなされている(N. J. Bell et al., Digestion 1992;51(Suppl 1):59-67; R. H. Hunt Arch Intern Med 1999;159:649-57)。 逆流性食道炎(GERD)のような胃酸の逆流に起因する疾患の治療薬として、プロトンポンプ阻害剤(PPI)やヒスタミン2受容体拮抗剤(H2RA)が、現在広く使用されている。特に、プロトンポンプ阻害剤は24時間、酸分泌を強く抑制する薬剤である。しかし、プロトンポンプ阻害剤は夜間には酸分泌を抑制できないことが多く、夜間の胃酸分泌が、プロトンポンプ阻害剤に基づく投与計画において直面する治療上の問題となっている(P. L. Peghini et al., Am J Gastroenterol 1998;93:763-7)。また、プロトンポンプ阻害剤とヒスタミン2受容体拮抗剤との併用は胃酸分泌抑制に効果的ではないと考えられてきた。すなわち、ヒスタミン2受容体拮抗剤で抑制された壁細胞では酸分泌が停止し、プロトンポンプ阻害剤の酸による活性化が期待できないことから(J. D. Graef et al., Gastroenterology 1986;91:333)、プロトンポンプ阻害剤の作用は酸分泌が抑制された状態では発揮されないと考えられてきた。 これまでに、ラベプラゾールとファモチジンの併用により歯ぎしりを治療できることが知られている(WO2004/080487号公報(特許文献1))。しかし、ラベプラゾールとファモチジンの併用により胃酸分泌が効果的に抑制されることはこれまで報告されていない。WO2004/080487号公報発明の概要 本発明者等は、今般、ラベプラゾールとファモチジンの併用により胃酸分泌、特に夜間の胃酸分泌を効果的に抑制できることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。 すなわち、本発明は、胃酸分泌を効果的に抑制できる医薬の提供をその目的とする。 本発明によれば、ラベプラゾールまたはその薬学上許容される塩若しくは溶媒和物あるいはそれらのプロドラッグ(本明細書において単に「ラベプラゾール」ということがある)と、ファモチジンまたはその薬学上許容される塩若しくは溶媒和物あるいはそれらのプロドラッグ(本明細書において単に「ファモチジン」ということがある)とを含んでなる、組合せ剤(以下「本発明による組合せ剤」という)が提供される。発明の具体的説明 ラベプラゾール原体およびファモチジン原体は市販されており、例えば、エーザイ社からパリエット(登録商標)として市販されているラベプラゾールナトリウムや、山之内製薬社からガスター(登録商標)として市販されているファモチジンを、それぞれ有効成分として使用することができる。 またラベプラゾールおよびファモチジンは常法に従って製造してもよく、製造に当たっては、例えば、それぞれ特開平1−6720号および特開昭56−55383号を参照することができる。 本発明による組合せ剤においては、ラベプラゾールおよびファモチジンの薬学上許容される塩または溶媒和物を有効成分として用いてもよい。 薬理学的に許容される塩およびその形成方法は当技術分野において周知であり、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、過塩素酸塩などの無機酸との塩;シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩などの有機酸との塩;アルギニン、アスパラギン酸およびグルタミン酸のようなアミノ酸との塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジクロロヘキシルアミンまたはN,N’−ジベンジルエチレン−ジアミンとの塩のような有機アミンとの塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属類との塩を挙げることができる。ラベプラゾールの好ましい塩としては、ナトリウム塩が挙げられる。 薬学上許容される溶媒和物およびその形成方法は当技術分野において周知であり、例えば、水和物、アルコール和物、エーテル和物が挙げられる。 本発明による組合せ剤においては、ラベプラゾールおよびファモチジンのプロドラッグを有効成分として用いてもよい。 本発明において「プロドラッグ」とは、バイオアベイラビリティ(bioavailability)の改善や副作用の軽減等を目的として、「薬剤の活性本体」(プロドラッグに対応する「薬剤」を意味する)を不活性な物質に化学修飾したものを意味し、吸収後、体内では活性本体へ代謝され、作用を発現する薬剤を意味する。従って、「プロドラッグ」という用語は、対応する「薬剤」よりも固有活性(intrinsic activity)は低いが、生物学的な系に投与されると、自発的な化学反応または酵素触媒反応または代謝反応の結果、その「薬剤」物質を生成する任意の化合物を指す。プロドラッグとしては、その薬剤のアミノ基、スルフィド基などがスルホニル化、アシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化、炭酸化、エステル化、アミド化またはウレタン化された化合物が挙げられる。但し、例示した群は包括的なものではなく、典型的なものに過ぎず、当業者であれば他の既知の各種プロドラッグを公知の方法によってラベプラゾールおよびファモチジンから調製することができる。 ラベプラゾールのプロドラッグの例としては、アミノ基がスルホニル化されたラベプラゾールが挙げられる。 ファモチジンのプロドラッグの例としては、アミノ基がアシル化されたファモチジンが挙げられる。 ラベプラゾールには立体異性体が存在し、いずれの立体異性体も「ラベプラゾール」に含まれるものとする。例えば、R(+)ラベプラゾールはWO99/55157号公報の記載に従って、S(−)ラベプラゾールはWO99/55158号公報の記載に従って、それぞれ製造することができる。 本発明による組合せ剤においては、原料化合物のまま投与してもよいが、有効成分を薬学的に許容され得る担体と配合してなる医薬組成物として投与することが好ましい。 本発明による医薬組成物は、ヒトまたはヒト以外の生物、例えば、非ヒト哺乳動物(例えば、ウシ、サル、トリ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、イヌなど)、鳥類などに、種々の形態、経口または非経口(例えば、静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で投与することができる。即ち、本発明による医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物に、種々の形態、経口または非経口(例えば、静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で投与することができる。従って、本発明による医薬組成物は、投与経路に応じて慣用される方法により薬学的に許容され得る担体を用いて適当な剤形に製剤化することが可能である。 好ましい剤形としては、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤等による経口剤、吸入剤、坐剤、注射剤(点滴剤を含む)が挙げられる。 これらの製剤の製剤化に用いる担体には、例えば、通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、無痛化剤等を使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化することが可能である。使用可能な無毒性のこれらの成分としては、例えば、大豆油、牛脂、合成グリセライド等の動植物油;例えば、流動パラフィン、スクワラン、固形パラフィン等の炭化水素;例えば、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;例えば、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の水溶性高分子;例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);例えば、グルコース、ショ糖等の糖;例えば、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの無機塩;精製水等が挙げられる。 賦形剤としては、例えば、乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素等が、結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、メグルミン等が、崩壊剤としては、例えば、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム等が、滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が、それぞれ用いられる。上記の成分は、その塩またはその水和物であってもよい。 経口製剤は、本発明において使用する有効成分に、賦形剤、さらに必要に応じて、例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤等を加えた後、常法により例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤等とする。錠剤・顆粒剤の場合には、例えば、糖衣、その他必要により適宜コーティングしてもよい。シロップ剤や注射用製剤等の場合は、例えば、pH調整剤、溶解剤、等張化剤等と、必要に応じて溶解補助剤、安定化剤等とを添加し、常法により製剤化する。 有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。本発明による医薬組成物の有効成分は、少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましい。 本発明による組合せ剤は、ラベプラゾールおよびファモチジンが同時あるいは逐次投与される形態である限り、単一の配合製剤として提供しても、それぞれの有効成分を別個の製剤として提供してもよい。コンプライアンスの観点から、単一の配合製剤が好ましい。ラベプラゾールおよびファモチジンを別個の製剤として提供する場合には、ラベプラゾール製剤とファモチジン製剤とを同時あるいは逐次投与することができ、同時投与することが好ましい。 本発明による組合せ剤におけるラベプラゾールおよびファモチジンの比率(重量比)は、好ましくは約4:約1〜約1:約12であり、より好ましくは約1:約1〜約1:約4であり、より一層好ましくは約1:約1〜約1:約2である。 本発明による組合せ剤におけるラベプラゾールおよびファモチジンの投与量は、投与経路、症状の重篤度、体重、年齢等の要因に従って変化し、最終的には医師の判断により決定されることができる。一般的には、ラベプラゾールの投与量は、1日当たり5〜40mgであり、好ましくは1日当たり10〜20mgである。また、ファモチジンの投与量は、1日当たり10〜60mgであり、好ましくは1日当たり20〜40mgである。 本発明による組合せ剤は、実施例において示すように、胃酸分泌を効果的に抑制することができる。胃酸分泌により、胃、十二指腸、食道に消化性びらんや消化性潰瘍が生じる。従って、本発明による組合せ剤は、胃酸分泌が関与する疾患または胃酸分泌抑制が治療上有効な疾患の治療に用いることができる。 胃酸分泌が関与する疾患および胃酸分泌抑制が治療上有効な疾患としては、消化性潰瘍(例えば、消化性胃潰瘍、消化性十二指腸潰瘍)、胃食道逆流疾患(例えば、夜間胃食道逆流疾患)、ゾリンジャー−エリソン氏症候群、逆流性食道炎が挙げられる。 胃食道逆流疾患とは、食道に胃内容物が逆流することを含む臨床症候群を意味し、一般的に胸焼け、咳、喘鳴、嗄声、吐出、上腹部疼痛、燕下困難、および胸痛の一つまたはそれ以上の症状を特徴とする。 本明細書において「治療」とは、一般的に、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾病および/または症状を完全にまたは部分的に防止する点では予防的であり、疾病および/または疾病に起因する悪影響の部分的または完全な治癒という点では治療的である。本明細書において「治療」とは、哺乳動物、特にヒトの疾病の任意の治療を含み、例えば、以下の治療を含む: ・疾病または症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病または症状が起こることを予防すること;・疾病症状を阻害する、即ち、その進行を阻止または遅延すること;・疾病症状を緩和すること、即ち、疾病または症状の後退、または症状の進行の逆転を引き起こすこと。 本発明による組合せ剤は、実施例において示すように、シトクロムP450(CYP)2C19遺伝子型がホモ接合体EM(高代謝群:extensive metabolizers)またはヘテロ接合体EMである患者において、夜間の胃酸分泌を効果的に抑制した。従って、本発明の好ましい態様によれば、逆流性食道炎のような夜間胃酸分泌の効果的な抑制が必要とされている疾患の治療を目的として、CYP2C19遺伝子型がホモ接合体EMまたはヘテロ接合体EMである患者に、本発明による組合せ剤を投与することができる。この場合のラベプラゾールとファモチジンの投与比率(重量比)は、好ましくは、約4:約1〜約1:約12であり、より好ましくは約1:約1〜約1:約4であり、より一層好ましくは約1:約1〜約1:約2である。 このように遺伝子型を調べることは、本発明の組合せ剤の効果が高い患者群を特定することによって当該効果が低い患者群への投与を避けることができ、医療経済上有用である。但し、PM(低代謝群:poor metabolizers)群への投与を制限するものではない。従って、CYP2C19遺伝子型の検査をせずに本剤を投与してもよく、その効果が期待できると考えられる。 CYP2C19遺伝子型の決定は当技術分野において周知であり、例えば、CYP2C19野生型遺伝子および突然変異遺伝子を検出できるプライマーを用いてPCR法により遺伝子型を決定することができる(S. M. de Morais et al., Mol Pharmacol 1994;46:594-8; S. M. de Morais et al., J Biol Chem 1994;269:15419-22; T. Kubota et al., Clin Pharmacol Ther 1996;60:661-6)。 本発明によればまた、ラベプラゾールおよびファモチジンから選択される少なくとも1種類の有効成分と、両有効成分の併用に関する指示が記載された添付文書とを含んでなる、医薬品が提供される。 この場合、ラベプラゾールとファモチジンはそれぞれ別個の製剤として、好ましくは、それぞれ別個の単位投与剤形として、本発明による医薬品に包含されていてもよい。 両有効成分の併用に関する指示としては、それぞれの有効成分の1日当たりの投与量、投与回数、投与経路など、用法、用量に関する情報が挙げられる。本発明による医薬品が一方の有効成分のみを含む場合には、併用すべきもう一方の有効成分に関する情報を添付文書に記載することができる。 本発明によれば、治療上の有効量のラベプラゾールおよびファモチジンを含んでなる組合せを、それを必要とする哺乳類に投与する工程を含んでなる、胃酸分泌が関与する疾患または胃酸分泌抑制が治療上有効な疾患の治療方法が提供される。 本発明によればまた、胃酸分泌が関与する疾患または胃酸分泌抑制が治療上有効な疾患の治療剤の製造のための、ラベプラゾールおよびファモチジンを含んでなる組合せの使用が提供される。 本発明によればまた、ファモチジンと同時にまたは逐次に投与する、胃酸分泌が関与する疾患または胃酸分泌抑制が治療上有効な疾患の治療剤の製造のための、ラベプラゾールの使用が提供される。 本発明によれば更に、ラベプラゾールと同時にまたは逐次に投与する、胃酸分泌が関与する疾患または胃酸分泌抑制が治療上有効な疾患の治療剤の製造のための、ファモチジンの使用が提供される。 以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、下記実施例は本発明の範囲を限定するものではない。 本実施例では、シトクロムP450(CYP)2C19遺伝子型の点から、ラベプラゾールの単独投与と、ファモチジンとラベプラゾールの同時投与とを、夜間の胃酸分泌阻害効果について比較した。1:実験手法1−1:被験者とCYP2C19遺伝子型の決定 44人の健康な日本人被験者から、それぞれ書面によるインフォームド・コンセントを得た上で血液サンプルを得た。各被験者の白血球から、市販のキット(IsoQuick: ORCA Research, Inc., Bothell, Wash)を用いてデオキシリボ核酸を抽出した。CYP2C19野生型(*1)遺伝子と2種類の突然変異対立遺伝子、すなわち、エクソン5のCYP2C19*2およびエクソン4のCYP2C19*3、を同定するための遺伝子型決定手順を、対立遺伝子特異的プライマーを用いるポリメラーゼ鎖反応−制限酵素断片長多型法により実施した。 血清検査(HM−CAPキット、Enteric Product, Inc, Westbury, NY)および炭素13−尿素呼気試験によりヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)に感染していないと判定された40人の被験者(ホモ接合体EM(高代謝群:extensive metabolizers)14人およびへテロ接合体EM22人、PM(低代謝群:poor metabolizers)4人)のうち、任意に選択したホモ接合体EM5人およびへテロ接合体EM6人、そしてPM4人に調査への参加を要請した(表1)。3種類の異なるCYP2C19遺伝子型を有する被験者では、年齢、体重または身長に人口統計学的差が示されなかった(表1)。アルコールを多量摂取する人も喫煙習慣のある人もいなかった。調査前の少なくとも1週間、そして、調査期間中は一切薬物を服用させなかった。1−2:調査プロトコール 全ての被験者に、プラシーボ、ラベプラゾール(商品名「パリエット」: エーザイ株式会社)20mgもしくは40mg、またはラベプラゾール20mgとファモチジン(商品名「ガスター」:山之内製薬株式会社)20mgとを、無作為二重盲検、4種(four-way)クロスオーバー方式にて、8日間、1日1回、午後10時に投与した。8日目に、4種類の投与を行った各被験者において胃内pHの24時間監視を実施した。全ての患者に対して1日3回の食事を提供した(午前8:00に朝食[2100kJ]、午後12:30に昼食[4284kJ]、午後6:00に夕食[3570kJ])。ミネラルウォーターは自由に飲めるようにしたが、その他の飲料は認めなかった。2つの調査期間の間に少なくとも2週間のウォッシュアウト期間を設けた。調査への参加前に、再度、書面によるインフォームド・コンセントを各被験者から得た。プロトコールは、浜松医科大学医学部附属病院治験審査委員会医の倫理委員会より事前に認可を受けた。1−3:胃内pHの24時間監視 一晩絶食した後、患者に局部麻酔を使ってガラスpH電極(Chemical Instruments Co Ltd, Tokyo, Japan)またはアンチモンpH電極(Medtronic Functional Diagnostics, Inc, Shoreview, Minn)を経鼻挿入し、噴門より5cm遠位部に配置した。各試験段階の8日目に、胃内pHの24時間監視を実施した。胃内pHのデータをメモリー付きpHメーター(Chemical Instruments Co Ltd)またはディジットラッパー MK III(Synectics Medical AB, Stockholm, Sweden)で記録した。記録が完了したところで、データをコンピュータに転送し、各専用ソフトウェアプログラムにより解析するまで保存した。1−4:データ解析 胃内pHの24時間監視の時間を昼間帯(午前7時〜午後11時)と夜間帯(午後11時〜午前7時)に分けた。一般的に利用されている酸分泌の指標である胃内pH値の各範囲の中央値と胃内pHが4.0未満である時間の割合を調べた。全24時間を通してのpH中央値、夜間におけるpH中央値および各1時間ごとのpH中央値をpHの生データから算出した。3種類のCYP2C19遺伝子型群間でのpH中央値とpHが4.0未満である時間の割合の中央値の統計学的有意差をマン・ホイットニーU検定によって判定した(クラスカル・ワリス検定により有意差が認められた場合)。これらのデータが異なる投与調査間で差があるかどうかを判定するために、ウイルコクソンの符号順位検定を利用した(フリードマン検定により有意差が認められた場合)。全てのP値を両側に設け、統計学的有意性をP<.05で示した。2:結果2−1:24時間の胃内pHの経時的推移(図1) ホモ接合体EMおよびへテロ接合体EMでは、昼間のpH中央値の経時的推移が3種類の投薬調査間でかなり類似していた(図1、AおよびB)。しかし、3種類の投薬調査で得られた夜間のpH中央値の経時的推移は次のように異なるものであった:ホモ接合体EMおよびへテロ接合体EMでは、ラベプラゾール20mgとファモチジン20mgとの併用投与によって4.0より高い夜間pHが得られたが、ラベプラゾール20mgまたは40mg単独投与では得られなかった。PMでは、3種類の24時間にわたる投薬調査で得られたpH中央値の経時的推移は互いに類似しており、3種類全ての投薬調査でpH値が4.0より高い状態が24時間連続した(図1、C)。2−2:夜間および24時間の胃内pH(図2) ホモ接合体EMでは、ラベプラゾール40mgの単独投与、そして、ラベプラゾール20mgとファモチジン20mgとの併用投与で得られた夜間のpH中央値は、それぞれ、4.4と6.1であった。これらはラベプラゾール20mgで得られた値(2.4)よりも有意に高い値であった(両方ともP=.043)(図2、A、左)。へテロ接合体EMでは、併用投与した場合にpH中央値が5.9に達した(図2、A、中央)。これはラベプラゾール40mg(4.7)またはラベプラゾール20mg(4.6)で得られた値よりも有意に高い値であった(両方ともP=.043)。一方、PMでは、3種類全ての投薬調査で得られたpH中央値が6.0より高かった(図2、A、右)。 24時間においては、ホモ接合体EMで、ラベプラゾール20mgで得られたpH中央値は、3.8であり、これらはラベプラゾール40mgで得られた値(4.6)よりも有意に低い値であった(図2、B、左)。へテロ接合体EMおよびPMでは、3種類の投薬調査によって得られたpH中央値は、それぞれ、約5.0と6.0であった(図2、B、中央と右)。2−3:夜間および24時間のうち胃内pHが4.0未満となる時間の割合(図3、表2) ホモ接合体EMでは、ラベプラゾール20mgおよび40mg投与での治療期間中の夜間pHが4.0未満であった時間の割合の中央値は、それぞれ、78.8%と45.3%であった(図3、A、左)。一方、ラベプラゾール20mgとファモチジン20mgとの併用投与において得られた値は、15.5%まで有意に低下していた(両方ともP=.043)。へテロ接合体EMでは、ラベプラゾールを20mgから40mg投与での治療期間中の夜間pH値が4.0未満であった時間の割合の中央値は、それぞれ、51.0%と41.3%であった。一方、併用投与の場合ではこの値が18.5%まで有意に低下していた(P=.043および.028)(図3、A、中央)。PMでは、ラベプラゾール20mgまたは40mg、そして、併用投与で得られた値は、それぞれ、4.5%または9.5%、そして9.3%であった。3種類の投薬調査間に有意差は認められなかった(図3、A、右)。 24時間においては、ホモ接合体EMでは、ラベプラゾール20mgの場合のpHが4.0未満であった時間の割合の中央値は60.0%、ラベプラゾール40mgの場合は42.0%、そして、ラベプラゾール20mgとファモチジン20mgとの併用投与の場合は28.8%であった(P=.196)(図3、B、左)。へテロ接合体EMでは、3種類の投薬調査間にこの値についての差はなく、約40%であった(P=.751)(図3、B、中央)。PMでは、ラベプラゾール20mgまたは40mg、そして、併用投与で得られた値は、それぞれ、10.5%または13.0%、そして25.1%であった(P=.794)(図3、B、右)。 ラベプラゾール20mgまたは40mgを用いた場合のPMにおける24時間および夜間のpH中央値は、ホモ接合体EMおよびへテロ接合体EMよりも有意に高く、pHが4.0未満となる時間の割合の中央値は、ホモ接合体EMおよびへテロ接合体EMよりも有意に低かった(全てP<.05)(表2)。ラベプラゾール20mgまたは40mgを用いた場合、ホモ接合体EMおよびへテロ接合体EM間では胃酸抑制に関するパラメーターに有意差はなかった。しかし、併用投与の場合、3種類のCYP2C19遺伝子型群間ではpH中央値(24時間においてはP=.2351および夜間においてはP=.9347)および胃内pHが4.0未満となる時間の割合の中央値(24時間においてはP=.0851および夜間においてはP=.2064)に有意差を示さなかった。2−4:夜間の胃酸分泌の発生率(表3) ラベプラゾール20mgまたは40mgで処置した場合、PMにおける夜間の胃酸分泌の発生率は25%(1/4)であり、この値はへテロ接合体EM(両方とも83%[5/6])やホモ接合体EM(両方とも100%[5/5])の場合よりも低かった(両方ともP=.150)(表3)。併用投与した場合、夜間の胃酸分泌の発生率は、それぞれ、PMでは0%(0/4)まで低下し、へテロ接合体EMでは33.3%(2/6)まで低下し、そして、ホモ接合体EMでは40%(2/5)まで低下した(P=.570)。プラシーボ(黒四角)、ラベプラゾール20mg(白四角)および40mg(黒三角)単独、そしてラベプラゾール20mgとファモチジン20mg(白丸)の投与(午後10時)から8日目の、異なるCYP2C19遺伝子型群についての24時間のpH中央値の経時的推移を示した図である。四分位範囲を棒線で示したが、これらは明確性を維持するために他のデータポイントには加えず、データセットにおける分散も同様であった。ラベプラゾール20mgおよび40mg、そしてラベプラゾール20mgとファモチジン20mgに関する、異なるCYP2C19遺伝子型群についての夜間(A)および24時間(B)のpH中央値を示した図である。CYP2C19遺伝子型に応じた、夜間(A)および24時間(B)のpHが4.0未満となる時間割合の中央値を示した図である。 ラベプラゾールまたはその薬学上許容される塩若しくは溶媒和物あるいはそれらのプロドラッグと、ファモチジンまたはその薬学上許容される塩若しくは溶媒和物あるいはそれらのプロドラッグとを含んでなる、組合せ剤。 ラベプラゾールまたはその薬学上許容される塩若しくは溶媒和物あるいはそれらのプロドラッグと、ファモチジンまたはその薬学上許容される塩若しくは溶媒和物あるいはそれらのプロドラッグとを、1:1〜1:2の比率(重量比)で含んでなる、請求項1に記載の組合せ剤。 単一の配合製剤である、請求項1または2に記載の組合せ剤。 薬学上許容される担体を更に含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組合せ剤。 胃酸分泌が関与する疾患または胃酸分泌抑制が治療上有効な疾患の治療に用いられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組合せ剤。 シトクロムP450(CYP)2C19遺伝子型がホモ接合体EMまたはヘテロ接合体EMである患者に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組合せ剤。 ラベプラゾールまたはその薬学上許容される塩若しくは溶媒和物あるいはそれらのプロドラッグ、およびファモチジンまたはその薬学上許容される塩若しくは溶媒和物あるいはそれらのプロドラッグから選択される少なくとも1種類の有効成分と、両有効成分の併用に関する指示が記載された添付文書とを含んでなる、医薬品。 胃酸分泌が関与する疾患または胃酸分泌抑制が治療上有効な疾患の治療に用いられることに関する記載が添付文書にあることを特徴とする、請求項7記載の医薬品。 シトクロムP450(CYP)2C19遺伝子型がホモ接合体EMまたはヘテロ接合体EMである患者に投与されることに関する記載が添付文書にあることを特徴とする、請求項7または8記載の医薬品。 【課題】 胃酸分泌を効果的に抑制できる医薬の提供。【解決手段】 ラベプラゾールまたはその薬学上許容される塩若しくは溶媒和物あるいはそれらのプロドラッグと、ファモチジンまたはその薬学上許容される塩若しくは溶媒和物あるいはそれらのプロドラッグとを含んでなる、組合せ剤。【選択図】 なし