生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_グルタチオンレダクターゼ活性増強剤
出願番号:2005238858
年次:2007
IPC分類:A61K 8/36,A61K 8/37,A61Q 17/04,A61K 31/192,A61K 31/7028,A61P 17/16,A61P 39/06,A23L 1/30,A61K 31/216


特許情報キャッシュ

福永 巖 山羽 宏行 田中 浩 小杉 信彦 JP 2007051114 公開特許公報(A) 20070301 2005238858 20050819 グルタチオンレダクターゼ活性増強剤 日本メナード化粧品株式会社 592262543 福永 巖 山羽 宏行 田中 浩 小杉 信彦 A61K 8/36 20060101AFI20070202BHJP A61K 8/37 20060101ALI20070202BHJP A61Q 17/04 20060101ALI20070202BHJP A61K 31/192 20060101ALI20070202BHJP A61K 31/7028 20060101ALI20070202BHJP A61P 17/16 20060101ALI20070202BHJP A61P 39/06 20060101ALI20070202BHJP A23L 1/30 20060101ALI20070202BHJP A61K 31/216 20060101ALI20070202BHJP JPA61K8/36A61K8/37A61Q17/04A61K31/192A61K31/7028A61P17/16A61P39/06A23L1/30 ZA61K31/216 5 OL 12 4B018 4C083 4C086 4C206 4B018MD07 4B018ME06 4B018ME10 4C083AA082 4C083AA122 4C083AB232 4C083AB242 4C083AB282 4C083AB432 4C083AB442 4C083AC022 4C083AC072 4C083AC102 4C083AC122 4C083AC132 4C083AC182 4C083AC242 4C083AC302 4C083AC352 4C083AC422 4C083AC432 4C083AC442 4C083AC471 4C083AC472 4C083AC482 4C083AC542 4C083AD072 4C083AD201 4C083AD202 4C083AD222 4C083AD242 4C083AD262 4C083AD272 4C083AD352 4C083AD391 4C083AD392 4C083AD512 4C083CC04 4C083CC05 4C083CC12 4C083EE16 4C086AA01 4C086EA07 4C086MA17 4C086MA35 4C086MA52 4C086MA63 4C086MA66 4C086NA14 4C086ZA89 4C206AA01 4C206DA21 4C206MA37 4C206MA55 4C206MA72 4C206MA83 4C206MA86 4C206NA14 4C206ZA89 本発明は、グルタチオンレダクターゼ活性増強剤に関し、特に食品、化粧品、医薬部外品または医薬品等に配合してグルタチオンレダクターゼの活性を増強し、還元型グルタチオンの生成を促進することにより皮膚の酸化傷害や皮膚老化にその有効性を発揮する生体の酸化防止または予防剤に関する。 皮膚は生体の最外層に位置し、紫外線等の影響により活性酸素が発生しやすい臓器であり、絶えずその酸素ストレスに曝されている。一方、皮膚細胞内にはグルタチオンに代表される還元物質が存在しており、その能力を超える過酸化物が発生しないかぎり過酸化物の傷害から皮膚細胞を防衛している。グルタチオンは細胞内で酸化型と還元型の2種類の構造で存在し、グルタチオンレダクターゼにより酸化型のグルタチオンは還元型に変換され、細胞内の還元能力が保持されている。したがって、細胞の還元能力を保持するためには、還元型のグルタチオンの濃度を上げることが重要であり、還元型のグルタチオンの生成を促進するグルタチオンレダクターゼは、細胞の還元能力を保持する重要な酵素である。 ところが、紫外線などの酸化ストレスにより、皮膚中のグルタチオンレダクターゼ活性が低下することが知られている(非特許文献1参照)。グルタチオンレダクターゼ活性が低下すると、還元型グルタチオンの生成量が減少し、細胞の還元能力が低下する。したがって、過酸化物による傷害がその防御反応を凌駕したとき、皮膚は酸化され、細胞機能が劣化して老化してゆくと考えられる。Jurgen Fuchs M.D.,J.Invest.Dermatol,93:769−773,1989. そこで、過酸化物による傷害からの防御を目的として、特許文献1〜4などのように抗酸化剤や活性酸素消去剤が検討され、SODやカタラーゼ等の活性酸素消去酵素、SOD様活性物質などの活性酸素消去剤や抗酸化剤、細胞内のグルタチオン濃度を増強させる組成物を配合した食品、化粧品、医薬部外品または医薬品等が開発されている。特開平9−118630特開平9−208484特開平2002−275079特開平2003−321463 しかしながら、SODやカタラーゼ等の活性酸素消去酵素は安定性に問題があり、活性酸素消去剤や抗酸化剤は、その効果が充分ではない。また、細胞内のグルタチオン濃度を増強させる組成物も還元型グルタチオンの量が保持されなければ、十分な過酸化物による傷害からの防御効果が期待されないため、不充分である。 本発明は、細胞内のグルタチオンレダクターゼの活性を増強させて、還元型のグルタチオンの生体濃度を高めるものであり、還元型グルタチオンの欠乏により生じる過酸化物の皮膚障害を防止するグルタチオンレダクターゼ活性増強剤を提供することを目的とする。また、細胞機能の低下により生じる皮膚細胞へのメラニンの沈着およびしわやハリの低下などの老化症状の改善を目的とする。一方、フェルラ酸の生理活性については、抗酸化作用(非特許文献2参照)、化学的発癌抑制作用(非特許文献3参照)、βアミロイド蛋白毒性抑制作用(非特許文献4参照)、子宮運動抑制作用(非特許文献5参照)などが知られている。しかし、フェルラ酸がグルタチオンレダクターゼの活性を増強する作用については全く知られていない。Gupta S, Sukhija PS, BhatiaIS,Milchwissenschaft,34:205−206,1979.Mori H, Kawabata K, YoshimiN, Tanaka T, Murakami T, Okada T, Murai H,Anticancer Res.,19:3775−3778,1999.Yan JJ, Cho JY, Kim HS, KimKL, Jung JS, Huh SO, Suh HW, Kim YH, Song DK,British Journal of Pharmacology,133:89−96,2001Ozaki Y, Ma JP, Hu GQ, LiYK, Harada M,Shoyakugakugaku Zasshi,45:299−305,1991 本発明者らは、過酸化物による傷害からの防御作用に優れた外用剤を得るために鋭意検討した結果、次の一般式(1)(式中、R1、R2、およびR3は、各々独立して水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、アルケニル基、環状アルキル基、環状アルケニル基、アルコキシアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、アシル基、またはグリコシル基から選択される基を示す。)の構造式で示されるフェルラ酸、イソフェルラ酸、又はそれらのエステル、グリコシド、ボルニル、およびそれらの塩の中から選ばれる一種または二種以上の物質が安定で、皮膚細胞のグルタチオンレダクターゼの活性を増強させて、還元型のグルタチオンの生体濃度を高めることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明で用いられる一般式(1)の構造式で示されるフェルラ酸、イソフェルラ酸、又はそれらのエステル、グリコシド、ボルニル、およびそれらの塩は、これを含有する天然物、特に植物から抽出することもでき、化学合成により工業的に製造することもできる。抽出によって得ても、合成によって得てもよい。 一般式(1)の構造式で示されるフェルラ酸、イソフェルラ酸、又はそれらのエステル、グリコシド、ボルニルは、塩にすることにより水溶性を向上させ、生理学的有効性を増大させることができる。塩形成用の塩基物質としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;水酸化アンモニウム等の無機塩基、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基が用いられる。本発明においては、これらの塩を調製してから、その他の成分からなる組成物中に添加したものでもよいし、別々に該組成物中に添加して、この中で塩を形成せしめたものでもよい。 植物から抽出する方法としては、例えば、コメの糠より得られた米糠油を、室温時弱アルカリ性下で含水エタノール及びヘキサンで分配した後、含水エタノール画分に得られたフェルラ酸エステルを、加圧下熱時硫酸で加水分解し、精製して得る方法があげられる。また、細菌(Pseudomonas)を、フトモモ科チョウジノキ(Syzygiumaromaticum MERRILL et PERRY)のつぼみおよび葉より水蒸気蒸留で得られた丁子油、又は丁子油から精製して得られたオイゲノールを含む培養液で培養し、その培養液を、分離、精製して得ることもできる。 またフェルラ酸は、化学合成、例えば、バニリンとマロン酸との縮合反応によって製造することができる。なお、一般式(1)の構造式で示されるフェルラ酸、イソフェルラ酸、又はそれらのエステル、グリコシド、ボルニル、およびそれらの塩には、立体異性体が存在するが、本発明では、純粋な立体異性体またはそれらの混合物を用いることができる。 本発明の一般式(1)の構造式で示されるフェルラ酸、イソフェルラ酸、又はそれらのエステル、グリコシド、ボルニル、およびそれらの塩は、効果を損なわない範囲内で、通常の外用剤に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤等の成分を配合することもできる。 本発明に用いるグルタチオンレダクターゼ活性増強剤は、食品、化粧品、医薬部外品または医薬品のいずれにも用いることができ、その剤型としては、例えば、錠菓、飲料、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、散剤、丸剤、錠剤、注射剤、坐剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤(チンキ剤、流エキス剤、酒精剤、懸濁剤、リモナーデ剤などを含む)等が挙げられる。 本発明に用いる一般式(1)の構造式で示されるフェルラ酸、イソフェルラ酸、又はそれらのエステル、グリコシド、ボルニル、およびそれらの塩の中から選ばれる一種または二種以上の物質の配合量は特に限定されないが、0.00001〜20重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.0001〜10重量%である。0.00001重量%以下では効果が低く、また20重量%を超えても効果に大きな増強はみられにくく、効率的でない。また、添加の方法については、予め加えておいても製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。 本発明の一般式(1)の構造式で示されるフェルラ酸、イソフェルラ酸、又はそれらのエステル、グリコシド、ボルニル、およびそれらの塩の中から選ばれる一種または二種以上の物質を含有することを特徴とするグルタチオンレダクターゼ活性増強剤は、グルタチオンレダクターゼの活性を増強させて、還元型のグルタチオンの生体濃度を高める作用を有する。詳しくは、細胞機能の低下により生じる皮膚細胞へのメラニンの沈着およびしわやハリの低下などの老化症状の改善に有効なグルタチオンレダクターゼ活性増強剤に関するものである。 次に本発明を詳細に説明するため、実施例として処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量は重量%を示す。 本発明に係る実施例の処方を示す。 処方例1 クリーム処方 配合量(重量%) 1.フェルラ酸 0.1 2.スクワラン 5.5 3.オリーブ油 3.0 4.ステアリン酸 2.0 5.ミツロウ 2.0 6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5 7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0 8.ベヘニルアルコール 1.5 9.モノステアリン酸グリセリン 2.510.香料 0.111.1,3−ブチレングリコール 8.512.パラオキシ安息香酸エチル 0.0513.パラオキシ安息香酸メチル 0.214.精製水 68.05[製造方法]成分1〜9を加熱して混合し、70℃に保ち油相とする。成分11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。 処方例2 クリーム2 処方例1において、フェルラ酸をイソフェルラ酸に置き換えたものをクリーム2とした。 処方例3 クリーム3 処方例1において、フェルラ酸をフェルラ酸メチルに置き換えたものをクリーム3とした。 処方例4 クリーム4 処方例1において、フェルラ酸をフェルラ酸7−O−グルコシドに置き換えたものをクリーム4とした。 処方例5 クリーム5 処方例1において、フェルラ酸をフェルラ酸ボルニルに置き換えたものをクリーム5とした。 処方例6 クリーム6 処方例1において、フェルラ酸をフェルラ酸4−O−β−グルコピラノシドに置き換えたものをクリーム6とした。 処方例7 クリーム7 処方例1において、フェルラ酸を4−メトキシフェルラ酸に置き換えたものをクリーム7とした。 処方例8 クリーム8 処方例1において、フェルラ酸をフェルラ酸ナトリウムに置き換えたものをクリーム8とした。 比較例1 従来のクリーム 処方例1において、フェルラ酸を精製水に置き換えたものを従来のクリームとした。 処方例9 化粧水処方 配合量(重量%) 1.フェルラ酸7−O−グルコシド 0.05 2.1,3−ブチレングリコール 8.0 3.グリセリン 2.0 4.キサンタンガム 0.02 5.クエン酸 0.01 6.クエン酸ナトリウム 0.1 7.エタノール 5.0 8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1 9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.110.香料 0.111.精製水 84.52[製造方法]成分2〜6及び11と、成分1及び7〜10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。 処方例10 乳液処方 配合量(重量%) 1.4−メトキシフェルラ酸エチル 0.005 2.スクワラン 5.0 3.オリーブ油 5.0 4.ホホバ油 5.0 5.セタノール 1.5 6.モノステアリン酸グリセリン 2.0 7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0 8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート 2.0 9.香料 0.110.プロピレングリコール 1.011.グリセリン 2.012.パラオキシ安息香酸メチル 0.213.精製水 73.195[製造方法]成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び10〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。 処方例11 軟膏処方 配合量(重量%) 1.フェルラ酸ブチル 1.0 2.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0 3.モノステアリン酸グリセリン 10.0 4.流動パラフィン 5.0 5.セタノール 6.0 6.パラオキシ安息香酸メチル 0.1 7.プロピレングリコール 10.0 8.精製水 65.9[製造方法]成分2〜5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び6〜8を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。 処方例12 ファンデーション処方 配合量(重量%) 1.4−メトキシフェルラ酸イソプロピル 0.5 2.ステアリン酸 2.4 3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート 1.0 (20E.O.) 4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0 5.セタノール 1.0 6.液状ラノリン 2.0 7.流動パラフィン 3.0 8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5 9.パラオキシ安息香酸ブチル 0.110.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.111.ベントナイト 0.512.プロピレングリコール 4.013.トリエタノールアミン 1.114.パラオキシ安息香酸メチル 0.215.二酸化チタン 8.016.タルク 4.017.ベンガラ 1.018.黄酸化鉄 2.019.香料 0.120.精製水 60.5[製造方法]成分2〜9を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分20に成分10をよく膨潤させ、続いて、成分1及び11〜14を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分15〜18を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分19を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。 処方例13 錠菓処方 配合量(重量%) 1.フェルラ酸 1.0 2.フェルラ酸ブチル 1.0 3.乾燥コーンスターチ 50.0 4.エリスリトール 40.0 5.クエン酸 4.0 6.ショ糖脂肪酸エステル 3.0 7.香料 0.1 8.水 0.9[製造方法]成分1〜5及び8を混合し、顆粒成形する。成形した顆粒に成分6及び7を加えて打錠する。1粒1.0gとする。 処方例14 錠剤処方 配合量(重量%) 1.フェルラ酸7−O−グルコシド 10.0 2.トウモロコシデンプン 10.0 3.精製白糖 20.0 4.カルボキシメチルセルロース 10.0 5.微結晶セルロース 35.0 6.ポリビニルピロリドン 5.0 7.タルク 10.0[製造方法]成分1〜5を混合し、次いで成分6の水溶液を結合剤として加えて常法により顆粒化した。これに滑沢剤として成分7を加えて配合した後、1錠100mgの錠剤に打錠した。 処方例15 注射剤処方 配合量(重量%) 1.フェルラ酸4−O−β−グルコピラノシド 0.0001 2.ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 3.7 3.ゴマ油 0.2 4.塩化ナトリウム 0.9 5.プロピレングリコール 4.0 6.リン酸緩衝液(0.1M、pH6.0) 10.0 7.蒸留水 81.1999[製造方法]成分1、2、3および成分5の半量を混合して約80℃で加温溶解し、これに成分4、6と成分5を予め溶解した成分7を約80℃に加温して加え全量を1000mLの水溶液とした。この水溶液を1mLのアンプルに分注して熔閉した後、加熱滅菌した。 次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例をあげる。 実験例1 細胞内グルタチオンレダクターゼの活性化試験 細胞内グルタチオンレダクターゼの活性化効果を下記の条件にて測定した。 コンフルエントな状態のヒト表皮角化細胞を、1μg/mLの試料を含むDMEM培地でさらに24時間培養した後、細胞を剥離し、1mM EDTAを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.5)1mLを加えて超音波破砕し、15,000rpmで15分間遠心分離を行い、上澄を試料溶液とした。試料溶液900μLに、9.5mM酸化型グルタチオン/リン酸緩衝溶液100μL及び2mM NADPH/リン酸緩衝溶液120μLを加え、340nmの吸光度の時間変化(φA340nm/min、3分間)を測定し、標準のグルタチオンレダクターゼ0,5,10および20mU/mLから作成した検量線より試料溶液のグルタチオンレダクターゼ活性を算出した。同時に、試料溶液のタンパク濃度を測定し、単位タンパク当りのグルタチオンレダクターゼ活性を算出した。試料未添加の細胞のグルタチオンレダクターゼ活性をコントロールとし、コントロールを100としたときの試料添加のグルタチオンレダクターゼ活性の値を細胞内グルタチオンレダクターゼ活性として算出した。 これらの試験結果を表1に示した。その結果、フェルラ酸、イソフェルラ酸、フェルラ酸メチル、フェルラ酸7−O−グルコシド、フェルラ酸ボルニル、フェルラ酸4−O−β−グルコピラノシド、および4−メトキシフェルラ酸は優れた細胞内グルタチオンレダクターゼの活性化作用が認められた。 実験例2 細胞内還元型グルタチオン比の増加作用の評価 細胞内還元型グルタチオン比の増加作用を下記の条件にて測定した。 コンフルエントな状態になった表皮角化細胞を1μg/mL濃度の試料を添加したEagle’s MEM培地にてさらに24時間培養した後、細胞を剥離し、1mM EDTAを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.5)0.5mLを加えて超音波破砕し、15,000rpmで15分間遠心分離を行い、上清を試料溶液とした。96wellプレートを用い試料溶液100μLに0.5mM NADPH/リン酸緩衝溶液と1U/mLグルタチオンレダクターゼ/リン酸緩衝溶液の1:1混合液25μLを添加し、室温で10分間反応させた。さらに10mM5,5’−dithiobis−2−nitrobenzoic acid/リン酸緩衝溶液25μLを添加し、室温で10分間反応させた後、405nmにおける吸光度を測定した。標準の還元型グルタチオン(GSH)から作成した検量線より試料溶液の総グルタチオン量を算出した。また、試料溶液150μLに1M2−vinylpyridine2.5μLを添加し、室温で1時間反応させGSHを除いた後、同様な反応により酸化型グルタチオン(GSSG)量を求めた。同時に、試料溶液のタンパク濃度を測定し、単位タンパク当りの総グルタチオン量とGSSG量からGSH量を算出し、GSH/GSSG比を求めた。試料未添加の細胞のGSH/GSSG比をコントロールとし、コントロールを100としたときの試料添加のGSH/GSSG比の値を細胞内還元型グルタチオン比として算出した。 これらの試験結果を表2に示した。その結果、フェルラ酸、イソフェルラ酸、フェルラ酸メチル、フェルラ酸7−O−グルコシド、フェルラ酸ボルニル、フェルラ酸4−O−β−グルコピラノシド、および4−メトキシフェルラ酸は優れた細胞内還元型グルタチオン比の増加作用が認められ、細胞の還元型グルタチオン割合を増加させる作用が認められた。 実験例3 使用試験 処方例1〜8のクリーム及び比較例1の従来のクリームを用いて、しわ、シミに悩む女性30人(20〜45才)を対象に6ヶ月間の使用試験を行った。使用後、しわ、シミの改善についてのアンケート調査を行って、皮膚性状の改善効果を判定した。アンケートの評価基準は、有効なものを「優」、やや有効なものを「良」、わずかに有効なものを「可」、無効なものを「不可」として評価した。 これらの結果を表3に示した。処方例1〜8のグルタチオンレダクターゼ活性増強剤を含む皮膚外用剤は優れたしわ、シミの改善効果を示した。なお、試験期間中皮膚トラブルは一人もなく、安全性においても問題なかった。 処方例9〜14の化粧水、乳液、軟膏、ファンデーション、錠菓、および錠剤の使用試験を行ったところ、いずれも安全で優れたしわ、シミの改善効果を示した。 本発明の活用例として、食品、化粧品、医薬部外品または医薬品のいずれにも用いることができる。その剤型としては、錠菓、飲料、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、散剤、丸剤、錠剤、注射剤、坐剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤(チンキ剤、流エキス剤、酒精剤、懸濁剤、リモナーデ剤などを含む)等が挙げられ、皮膚細胞の還元能力の低下に由来する皮膚のしわ、シミの防止等の改善効果が得られる。次の一般式(1)(式中、R1、R2、およびR3は、各々独立して水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、アルケニル基、環状アルキル基、環状アルケニル基、アルコキシアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、アシル基、またはグリコシル基から選択される基を示す。)の構造式で示されるフェルラ酸、イソフェルラ酸、又はそれらのエステル、グリコシド、ボルニル、およびそれらの塩の中から選ばれる一種又は二種以上の物質を含有することを特徴とするグルタチオンレダクターゼの活性増強剤。一般式(1)の構造式で示されるフェルラ酸、イソフェルラ酸、又はそれらのエステル、グリコシド、ボルニル、およびそれらの塩の中から選ばれる一種又は二種以上の物質を含有することを特徴とする還元型グルタチオン生成促進剤。請求項1記載のグルタチオンレダクターゼの活性増強剤を含む還元型グルタチオンの生成促進による抗酸化剤。請求項1記載のグルタチオンレダクターゼの活性増強剤を含む還元型グルタチオンの生成促進による美白用組成物。請求項1記載のグルタチオンレダクターゼの活性増強剤を含む還元型グルタチオンの生成促進による老化防止用組成物。 【課題】本発明は、細胞内のグルタチオンレダクターゼの活性を増強させて、還元型のグルタチオンの生体濃度を高めるものであり、還元型のグルタチオンの欠乏により生じる過酸化物の皮膚障害を防止するグルタチオンレダクターゼ活性増強剤を提供することを目的とする。【解決手段】次の一般式(1)【化1】 (式中、R1、R2、およびR3は、各々独立して水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、アルケニル基、環状アルキル基、環状アルケニル基、アルコキシアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、アシル基、またはグリコシル基から選択される基を示す。)の構造式で示されるフェルラ酸、イソフェルラ酸、又はそれらのエステル、グリコシド、ボルニル、およびそれらの塩の中から選ばれる一種又は二種以上の物質を含有することを特徴とするグルタチオンレダクターゼ活性増強剤を提供する。


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