生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_経口リン吸着剤及びそれを含有する食品
出願番号:2005238852
年次:2007
IPC分類:A61K 31/787,A23L 1/305,A61P 3/00,A61P 3/12,A61P 3/14,A61P 5/18,A61P 7/00,A61P 13/12,A61P 19/10


特許情報キャッシュ

大谷 佳代 松谷 尚美 今田 智之 中川 忠清 柘野 浩伸 JP 2007051113 公開特許公報(A) 20070301 2005238852 20050819 経口リン吸着剤及びそれを含有する食品 味の素株式会社 000000066 草間 攻 100083301 大谷 佳代 松谷 尚美 今田 智之 中川 忠清 柘野 浩伸 A61K 31/787 20060101AFI20070202BHJP A23L 1/305 20060101ALI20070202BHJP A61P 3/00 20060101ALI20070202BHJP A61P 3/12 20060101ALI20070202BHJP A61P 3/14 20060101ALI20070202BHJP A61P 5/18 20060101ALI20070202BHJP A61P 7/00 20060101ALI20070202BHJP A61P 13/12 20060101ALI20070202BHJP A61P 19/10 20060101ALI20070202BHJP JPA61K31/787A23L1/305A61P3/00A61P3/12A61P3/14A61P5/18A61P7/00A61P13/12A61P19/10 8 1 OL 11 4B018 4C086 4B018MD20 4B018ME14 4C086AA01 4C086AA02 4C086FA03 4C086FA07 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA52 4C086NA05 4C086NA06 4C086NA14 4C086ZA51 4C086ZA81 4C086ZA97 4C086ZC06 4C086ZC21 本発明は、高リン血症の治療もしくは予防に有効であり、副作用の少ない経口リン吸着剤に関する。さらに詳細には、過剰摂取等されたリンを、消化管内で吸着する経口リン吸着剤に係わり、特に、腎不全患者や透析患者等にとって安全に用いることができる、単位用量当たりのリン吸着能に優れ、服用しやすい経口リン吸着剤に関する。 一般的に血清リン濃度が5.0mg/dL以上となる場合を高リン血症というが、その原因としては、(i)細胞からのリン遊出の増加、(ii)体外から摂取したリン負荷の増加、さらには(iii)腎からのリン排泄の減少に分けられている。 細胞内の主要な陰イオンであるリンは、細胞崩壊(例えば、悪性腫瘍に対する癌化学療法の後の溶血、横紋筋壊死など)により血中に遊離されて高リン血症の原因となり、また体外からのリンの過剰摂取時においても同様である。この高リン血症状態が存在すると、低カルシウム血症も生じるため、リンの摂取を増加させることは好ましくないが、リン含有量の多い食物として知られている牛乳などの乳製品や魚肉などの練り製品等は、またカルシウム含量も多いため、カルシウム補強の観点から、大量に摂取せざるを得ないのが現状である。 また、ビタミンD欠乏症による中毒も、腸管からのカルシウムとリンの吸収を増し、高カルシウム血症と高リン血症を生じさせ得るものである。このような高リン血症は、二次的に低カルシウム血症を招き、二次的な副甲状腺機能の亢進が起こり、骨からカルシウムが動員され骨粗鬆症の誘因につながる。 また、腎不全などの腎機能に障害がある場合、例えばGFR(Glomerular Filtration Rate;糸球体濾過量)が正常の30%以下になると、血清リン濃度が増加してくる。そのうえ腎不全ではビタミンDの産生が障害されているので、低カルシウム血症を生じ、二次的にPTH(Parathyroide Hormone;副甲状腺ホルモン)の分泌が増すものの、次第にPTHのリン排泄作用が減弱し、PTHの過剰が目立つだけとなる。更に、副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症の場合は、PTHの作用がないため、高リン血症の原因となる。 従来から、このような高リン血症患者に対しては、経口製剤であるリン酸吸着剤の投与が行われている。特に、上記したように、慢性腎不全患者は、腎機能の低下により、体内にリンが蓄積する、いわゆる高リン血症を発症する。この高リン血症を治療もしくは予防するために、食事療法と併用してリン吸着剤を服用することが行われている。 代表的な経口用のリン吸着剤として、例えば日本薬局方には、高リン血症等に適応することができるリン酸の吸着剤として、沈降炭酸カルシウムが存在する(非特許文献1)。しかしながら、この薬剤はカルシウムの過剰負荷により高カルシウム血症を誘引し、患者の予後を悪化させる危険性が指摘されている。 また、リン酸を吸着させるイオン交換樹脂を有効成分とする経口リン酸吸着剤のような薬剤も検討されている(特許文献1)が、これまで上市されたものはない。 近年、レナジェル(登録商標、中外製薬株式会社)のような、有機塩基性高分子を主骨格とするリン吸着剤(リン結合ポリマー)も上市されているが、服用量が多い上に、消化管内での膨潤を引き起こし、便秘などの副作用が起こることが分かってきており、さらに優れた吸着性能を有し、服用し易いリン吸着剤の開発が求められているのが現状である。 このような観点から、最近、塩基性アミノ酸の一種であるリジンのポリマー(ポリリジン)がリン吸着剤として提案されるに至った(特許文献2)。このポリリジンは、化学合成されたもの以外に、ストレプトマイセス属細菌により生合成された微生物由来のポリマーもあり、そのものの生体適合性も良好であり、かつリン吸着力に優れていることから、リン吸着剤としての開発が望まれている。特開平8−198760号公報特開2003−33651号公報第14改正日本薬局方「沈降カルシウム」の項 本発明者らも、安全性が高く、消化管内での膨潤を引き起こすことがなく、便秘などの消化器系に対する副作用がなく、優れたリン吸着性能を有し、服用し易いリン酸吸着剤の開発を検討してきた。その結果、特定のジアミノアルカン酸のポリマーが、安全であり、極めて良好なリン吸着能を有することを新規に見出し、本発明を完成させるに至った。 したがって、本発明が解決しようとする課題は、単位用量当たりのリン吸着能に優れると共に、服用しやすいものであって、かつ、副作用のない安全性に優れた新規なリン吸着剤、ならびに該吸着剤を含有する食品を提供することである。 かかる課題を解決するため、本発明者等は、種々検討した結果、特定のジアミノアルカン酸のポリマーが良好なリン吸着能を示し、かつ安全なものであって、食品及び医薬品として効果的に利用し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。 したがって、本発明は、以下の構成からなるものである。(1)次式(I)または(II):(式中、mは1〜3の整数を表し、nは整数である)で示されるジアミノアルカン酸からなるポリマーまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする経口リン吸着剤;(2)架橋剤により架橋されたポリマーである上記に記載の経口リン吸着剤;(3)架橋剤がエポキシ化合物である上記(2)に記載の経口リン吸着剤;(4)架橋剤がエピクロルヒドリンである上記(2)または(3)に記載の経口リン吸着剤;(5)ポリマーが、式中mが3である構造単位(α、δ−ジアミノ吉草酸:オルニチン)からなるポリマー(ポリオルニチン)である上記の(1)〜(4)のいずれかに記載の経口リン吸着剤;(6)ポリマーが、式中mが2である構造単位(α、γ−ジアミノブタン酸)からなるポリマーである上記の(1)〜(4)のいずれかに記載の経口リン吸着剤;(7)ポリマーが、式中mが1である構造単位(α、β−ジアミノプロピオン酸)からなるポリマーである上記の(1)〜(4)のいずれかに記載の経口リン吸着剤;(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の経口リン吸着剤を含有する食品;である。 本発明が提供する経口リン吸着剤は、その有効成分が特定のジアミノアルカン酸のポリマーからなるものであり、良好なリン吸着能を示す。また、その化学構造上、体内に吸収される、例えばアルミニウムやカルシウムなどを含んでいないものであることから、アルミニウム脳症や高カルシウム血症などの副作用を起こすことがない。 本発明が提供する経口リン吸着剤にあって、その有効成分としては、上記した式(I)または(II)で示される、ジアミノアルカン酸からなるポリマーまたはその薬理学的に許容される塩である。 かかるポリマーは、次式(III):(式中、mは1〜3の整数を表す)で示されるジアミノカルボン酸が重合したポリマーであり、その重合形式により、α位のアミノ基とカルボン酸基を介して重合した式(I)のα型ポリマーと、それ以外のβ、γあるいはδ位のアミノ基とカルボン酸基を介して重合した式(II)のβ、γあるいはδ型ポリマーのいずれであってもよい。 すなわち、式(III)中、mが1であるα、β−ジアミノプロピオン酸の場合には、本発明の経口リン吸着剤の有効成分となるポリマーは、次式(I−a)[すなわちα型]または(II−a)[すなわちβ型]で示される。 また、式(III)中、mが2であるα、γ−ジアミノブタン酸の場合には、本発明の経口リン吸着剤の有効成分となるポリマーは、次式(I−b)[すなわちα型]または(II−b)[すなわちγ型]で示される。 さらに、式(III)中、mが3であるα、δ−ジアミノ吉草酸(すなわち、オルニチン)の場合には、本発明の経口リン吸着剤の有効成分となるポリマー(すなわち、ポリオルニチン)は、次式(I−c)[すなわちα型]または(II−c)[すなわちδ型]で示される。(上記した各式中、nは整数である) 本発明者等の検討の結果、これらのポリマー及び架橋ポリマーには、極めて良好なリン吸着能があることが判明した。 なお、上記のポリマーは、その分子構造単位中に存在する不斉炭素により、D体またはL体、あるいはDL体混合物の形態をとることができるが、本発明にあっては、D体またはL体のいずれであってもよく、またそれらの混合体であってもよい。 これらのポリマーの中でも、本発明にあっては特に式(I−c)または(II−c)で示されるポリオルニチンが、リン吸着能に優れ、好ましいことが判明した。 これらのポリマーは薬理学的に許容される塩の形態をとることができる。そのような塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩や、ギ酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩などの有機酸塩をあげることができる。 本発明で用いるポリマーにあっては、その重合度、すなわち式(I)及び(II)中のnの数によりその分子量が異なってくる。その場合の分子量は特に限定されるものではないが、500〜2,000,000の範囲と広範囲のものを使用することができる。 本発明にあっては、これらポリマーを架橋構造としたものであってもよく、さらには、上記のポリマーの2種以上を、任意の配合比で混合したものであってもよい。その場合にあっては、同一のジアミノアルカン酸から誘導されるポリマー同士でも、また他のジアミノアルカン酸から誘導されるポリマーと組み合わせ混合してもよい。 架橋剤によって架橋されたポリマーは、架橋構造をとる架橋剤によって製造される。そのような架橋剤としては、ポリマーを架橋するどのような架橋剤を用いたものであってもよい。かかる架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の二官能性試薬、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物などを挙げることができる。そのなかでも、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物、特にエピクロルヒドリンは容易に開環し、その結果、ポリマーの遊離アミノ基同士で架橋し、容易に架橋構造を形成することから、特に好ましい架橋剤である。 架橋剤を用いた架橋反応の方法、その条件は、使用する架橋剤に応じて適宜好ましいものを選択することができる。一般的には、反応に対してそれ自体不活性な分散媒体中で、ポリマーと架橋剤を攪拌しながら行うことにより、あるいは水溶液中で架橋剤と懸濁重合させることにより、架橋構造とすることができる。 その場合の架橋剤の添加量は特に制限されるものではなく、所望の分子量の架橋ポリマーを得る範囲内で適宜選択することができる。具体的には、ポリマーに対して、2〜100mol%の範囲内であることが好ましい。 具体的には、ポリマーの水溶液に架橋剤を添加することにより架橋ポリマーを製造することができる。本発明の式(I)または(II)で示されるポリマーは本来水溶性であり、ポリマーの水溶液に架橋剤を添加することで、架橋構造となり、不溶化する。この場合に用いるポリマーは、α型であっても、またα型以外のβ、γあるいはδ型ポリマーのいずれであってもよい。またさらにその分子量も特に限定されるものではなく、架橋反応における水溶液中のポリマー濃度も特に限定されるものではない。 反応温度及び反応時間は、用いる架橋剤の反応性、及びポリマーの種類、更には添加量によって異なり、一概に限定できない。例えば、エピクロルヒドリンを架橋剤として用いた場合には、室温〜40℃前後の反応温度で、12〜20時間程度攪拌することで、目的とする架橋ポリマーを製造することができる。 本発明の経口リン吸着剤においては、上記のポリマーあるいは架橋ポリマーであれば、その形状としていずれの形状のものであっても、本発明の目的とする効果を得ることができる。その形状としては、板状やフィルムのような平板状であってもよく、また粒子状であってもよい。 なお、本発明の架橋ポリマーの物性としては、以下のとおりのものであることが好ましい。(1)窒素含量 10〜40%(2)リン吸着能 50〜200mg/g 本発明のポリマーまたは架橋ポリマーは、副作用が少なく安全であると同時に、上記したように優れたリン吸着能を有するものであり、特に経口で服用した場合には消化管内に存在するリンを有効に吸着し、その排泄を促進する作用を有している。 したがって、上記のポリマーまたは架橋ポリマーは、経口リン吸着剤として有効なものであり、種々の食品等に含有させることができる。特に、リンの過剰摂取等に起因する種々の疾患、例えば、高リン血症、腎不全、骨粗鬆症等の患者に対してリン摂取を緩和することができ、その予防及び治療用の医薬として極めて有用なものである。 また、本発明が提供するポリマーあるいは架橋ポリマーは、糞便中に多量にリンを排泄することから、腎疾患等の腎機能が低下した患者のリン排泄に特に有効である。 本発明の経口リン吸着剤は、上記の方法で得たポリマーまたは架橋ポリマーを通常の方法により各種の形態に加工することで製造できる。例えば、固体状物、液状物、乳化状物、ペースト状物、ゼリー状物等の形態に加工して、医薬品として、また食品として製造することができる。 すなわち、本発明が提供する経口リン吸着剤は、医薬品の他に、食品として有効に適用することができる。本発明のリン吸着剤には、そのまま直ちに食品として摂取し得るものとして、また、その他調理して摂取し得るもの、あるいは食品製造用のプレミックスされた材料として提供することができる。 本発明の経口リン吸着剤を含有する食品としては、固形状、粉末状、顆粒状のいずれの形態であってもよい。具体的には、例えば、ビスケット、クッキー、ケーキ、スナック、煎餅などの各種の菓子類、パン、粉末飲料(粉末コーヒー、粉末ココアなど)が含まれるが、これらに限定されるものではない。 また、液状、乳化状、ペースト状、ゼリー状のものとしては、ジュース、炭酸飲料、乳酸菌飲料などの各種の飲料を挙げることができ、これらに限定されるものではない。そのなかでも、好ましくはペースト状、ゼリー状のものである。 本発明の経口リン吸着剤を、特に医薬品として使用する場合には、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、液剤等の形態である通常の製剤とすることができる。これらの製剤は、適宜製剤学的に許容される他の添加剤、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤等の担体と共に、常法にしたがって、製剤化することができる。 また、甘味剤、着色剤等を添加して服用させることもできる。これらの製剤化にあたっては、日本薬局方の製剤総則に記載の方法によって行うことができる。 本発明の経口リン吸着剤において、有効成分として使用するポリマーまたは架橋ポリマーは、そのリンの吸着能を標準として、1日約1〜20g程度、好ましくは、2〜10g程度を摂取するのがよく、一般的には、1日3回毎食直前に服用する有効成分の含有量を設定し、その用量を摂取する製剤として設計すればよい。 以下本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。実施例1:ポリ(α−L−オルニチン)臭化水素酸塩の製造[工程1]δ,N−カルボベンジルオキシ−L−オルニチン無水物の合成 Z−Orn−(Z)−OH 31.8g(79.5mmol)にジクロロメタン108mLを加え、氷冷下、五塩化リン24g(115mmol)を加え1時間攪拌した。溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、その後、ジクロロメタン−石油エーテルにて再結晶を2回繰り返し、標題化合物13g(44.5mmol)を得た。H-NMR (DMSO-d6)δ:1.38-1.80 (4H, m), 3.00 (2H, dd), 4.42 (1H, dd), 4.99 (2H, s), 7.26-7.39 (6H, m), 9.07 (1H, br s).[工程2]ポリ(α−L−オルニチン)臭化水素酸塩の合成 アルゴン雰囲気下、δ,N−カルボベンジルオキシ−L−オルニチン無水物32.4g(110.9mmol)を脱水1,4−ジオキサン180mLに溶解し、トリエチルアミン1.03mL(7.39mmol)を加え室温で7日間撹拌した。反応液を0.1N塩酸200mLに注ぎ、得られた白色沈殿を水で洗浄したのち、乾燥させた。クロロホルム100mLに溶解し、30%臭化水素酸−酢酸溶液80mLを加え、室温で1.5時間撹拌した後、黄白色沈殿をグラスフィルターで濾取した。更に酢酸、エタノール:メタノール=2:1、ヘキサンで洗浄した後、水に溶解し凍結乾燥させて白色の表題化合物19.0gを得た。H-NMR (D2O)δ:1.67-1.69 (4H, m), 2.94 (2H, br s), 4.27 (1H, br s).実施例2:ポリ(α−L−オルニチン)の製造 ポリ(α−L−オルニチン)臭化水素酸塩10g(51.3mmol)を水に溶解し、Amberlite IRA900(OH−)を通した。得られた水溶液を凍結乾燥して、表題化合物5.84g(51.2mmol)を得た。H-NMR (D2O)δ:1.39-1.41 (2H, m), 1.58-1.70 (2H, m), 2.53-2.58 (2H, m), 4.13-4.18 (1H,m).[分子量の測定]実施例2の平均分子量は以下の方法で測定した。すなわち、液体クロマトグラフポンプ(HITACHI L−6200 Intelligent Pump)、UV検出器(HITACHI L−4000 UV Detector)、ゲル濾過カラム(TSKgel GMPWXL、(株)東ソー製)を使用し、溶離液に5%リン酸二水素アンモニウム+3%アセトニトリルを用いて流速0.7mL/分で測定を行った。分子量既知のポリオルニチン又はポリリジン(シグマ社製)を標準試料とし、その保持時間から得られた近似曲線をもとに、未知試料の平均分子量を算出した。この方法によって求めた実施例2の平均分子量は、29,000であった。実施例3:架橋ポリオルニチン ポリ(α−L−オルニチン/エピクロロヒドリン)の合成 ポリ(α−L−オルニチン)臭化水素酸塩300mg(1.54mmol)を1N−水酸化ナトリウム水溶液2.0mLに溶解し、エピクロロヒドリン12μL(0.15mmol)を加えて5分間撹拌した。一晩静置後、ゲル状の反応物に水8mLを加えて膨潤させた後、イソプロパノール40mLを加えて凝集させた。上清を除き、ゲルの膨潤−凝集を3回繰り返した後、ゲルを凍結乾燥させた。得られた個体を粉砕して標題化合物152mgを得た。実施例4:ポリ(α−L−オルニチン)臭化水素酸塩のリン吸着剤としての薬効評価 実施例1で得たポリ(α−L−オルニチン)臭化水素酸塩を使用して、リン吸着剤としての薬効を以下により評価した。[方法] 実験動物は7週齢の雄性SD系ラット(三協ラボサービス(株))を、普通食(固形CRF−1、オリエンタル酵母(株)製)で馴化飼育し、一夜絶食をして用いた。注射用蒸留水(大塚製薬(株))に溶解したポリ(α−L−オルニチン)臭化水素酸塩300mg/5mL/kgを動物に投与し、その5分後に32P(PerkinElmer社製)を含むNaH2PO4溶液(1mg/mL)を3mL/kg、1MBq/kgで経口投与した。その後、経時的に尾静脈より採血を行って血清を採取し、血清40μL中の放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定した。[結果] その結果、ポリ(α−L−オルニチン)臭化水素酸塩投与群は対照群に比して、血清中放射活性(cpm)が低値で推移することが確認された。その結果を図1として示した。 以上より、ポリ(α−L−オルニチン)臭化水素酸塩は摂取したリンを吸着することにより、体内へのリンの吸収を阻害する作用を有することが示された。 本発明が提供する経口リン吸着剤は、その有効成分が特定のジアミノアルカン酸のポリマーからなるものであり、良好なリン吸着能を示す。また、その化学構造上、体内に吸収される、例えばアルミニウムやカルシウムなどを含んでいないものであることから、アルミニウム脳症や高カルシウム血症などの副作用を起こすことがない。 さらに、腎不全患者や透析患者等にとって安全に用いることができる、単位用量当たりのリン吸着能に優れ、服用しやすい経口リン吸着剤である。実施例4による本発明のポリ(α−L−オルニチン)臭化水素酸塩の、リン吸着剤としての薬効評価の結果を示す図である。 次式(I)または(II):(式中、mは1〜3の整数を表し、nは整数である)で示されるジアミノアルカン酸からなるポリマーまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする経口リン吸着剤。 架橋剤により架橋されたポリマーである請求項1に記載の経口リン吸着剤。 架橋剤がエポキシ化合物である請求項2に記載の経口リン吸着剤。 架橋剤がエピクロルヒドリンである請求項2または3に記載の経口リン吸着剤。 ポリマーが、式中mが3である構造単位(α、δ−ジアミノ吉草酸:オルニチン)からなるポリマー(ポリオルニチン)である請求項1〜4のいずれかに記載の経口リン吸着剤。 ポリマーが、式中mが2である構造単位(α、γ−ジアミノブタン酸)からなるポリマーである請求項1〜4のいずれかに記載の経口リン吸着剤。 ポリマーが、式中mが1である構造単位(α、β−ジアミノプロピオン酸)からなるポリマーである請求項1〜4のいずれかに記載の経口リン吸着剤。 請求項1〜7のいずれかに記載の経口リン吸着剤を含有する食品。 【課題】 単位用量当たりのリン吸着能に優れると共に、服用しやすいものであって、かつ、副作用のない安全性に優れた新規なリン吸着剤、ならびに該吸着剤を含有する食品を提供すること。【解決手段】 次式(I)または(II): 【化1】(式中、mは1〜3の整数を表し、nは整数である)で示されるジアミノアルカン酸からなるポリマーまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする経口リン吸着剤、また、架橋剤により架橋されたポリマーである経口リン吸着剤である。【選択図】 図1


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