タイトル: | 公開特許公報(A)_テアニンの製造法 |
出願番号: | 2005191678 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07C 231/24,A23L 1/30,C07C 237/06 |
岡田 幸隆 坂番 あかね 黒野 昌洋 小関 誠 青井 暢之 JP 2007008865 公開特許公報(A) 20070118 2005191678 20050630 テアニンの製造法 太陽化学株式会社 000204181 小林 洋平 100108280 岡田 幸隆 坂番 あかね 黒野 昌洋 小関 誠 青井 暢之 C07C 231/24 20060101AFI20061215BHJP A23L 1/30 20060101ALI20061215BHJP C07C 237/06 20060101ALI20061215BHJP JPC07C231/24A23L1/30 BC07C237/06 3 OL 8 4B018 4H006 4B018MD20 4B018MD59 4B018ME14 4B018MF01 4H006AA02 4H006AD17 4H006BB17 4H006BB31 4H006BS10 4H006BU32 4H006BV22 本発明は、テアニンの新規な製造法に関する。 テアニンは緑茶の旨味の主要成分として知られ、茶をはじめとする食品の香味成分として重要な物質である。テアニンを含むγ−グルタミル誘導体は、動・植物体における生理活性物質として作用することが指摘されている。テアニンやL−グルタミンは、カフェインによって誘発される痙攣に拮抗すると言われている。このことからこれらの化合物が中枢神経系に作用することが考えられ、生理活性物質としての有用性が期待されている。 茶抽出物よりテアニンを得る製造法としては、活性炭を用いたテアニンの製造法が報告されている(特許公開2002−153211号公報)。しかし、この方法ではテアニンの精製度が低いという問題点がある。また、合成吸着剤を用いたテアニンの製造法が報告されている(特許公開2004−10545号公報)。しかし、本方法では効率的な精製度を得る為、通液速度が1.5以下に限定されており、工業的に用いる際には非常に時間がかかるという問題点がある。 また、茶抽出物にはカテキン、カフェイン、サポニンなどの苦味成分・渋味成分や、金属イオン等等の呈味性を低減させる成分が存在し、茶抽出物自身もしくは添加食品の食品風味を著しく低減させるという問題がある。更にこれらの問題点により、飲食品に茶抽出物を添加する場合には量的な制限があり、大量に添加することができないという問題点がある。このような問題点に対して、各種のマスキング物質を添加して苦味・渋味を低減させるという報告がある(特許公開2005−73534号公報)。しかし、上記の従来技術に開示されているサイクロデキストリンやカゼインは、それらを単独で添加しても、呈味性に対する有効性が得られなかった。また、サイクロデキストリンやカゼインを多量に添加すると、それらの風味が強くなりすぎて、飲食品自体の風味が損なわれるという問題があることから、マスキング物質は極力使用しないことが好ましいと考えられる。特許公開2002−153211号公報特許公開2004−10545号公報特許公開2005−73534号公報 本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的はテアニンの効率的な製造法及び呈味性に優れたテアニン高純度の茶抽出物を提供することにある。 発明者らは前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、テアニンの純度を15%以上に高めた茶抽出物を用いることにより、従来報告されている通液速度以上での合成吸着剤への通液でも精製度が非常に高いことを見い出し、基本的には本発明を完成させるに至った。 即ち、本発明の要旨はテアニン純度15%以上からなる茶抽出物を吸着剤を充填した容器に通液速度=3以下の範囲で通液することにより、純度60%以上のテアニンを得ることを特徴とするテアニンの製造法に関する。 本発明によれば、テアニンの効率的な新規製造法を提供し、簡易かつ工業的有利な生産を可能とすることができる。すなわち、テアニンの茶抽出物と合成吸着剤を用いた精製方法のコンビネーションを用いることにより、従来よりも速くなおかつ高効率なテアニンの精製が可能になり、工業的な生産が可能になった。また得られたテアニン高純度の茶抽出物は、従来報告されていたものよりも呈味性に優れており、飲食物への大量の添加が可能である。 次に、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。 本発明に用いられるテアニンとは、茶の葉に含まれているグルタミン酸誘導体で、茶の旨味の主成分であって、呈味を用途とする食品添加物として使用されている。テアニンの他に、γ-グルタミルエチルアミド、L−グルタミン酸-γ-エチルアミドなどとも称する化合物である。 本発明における通液速度(Space Velocity:SV)とは、1時間あたりに、容器に充填された吸着剤の容量に対して、どの程度の量の溶液を通液させたかを示す単位であり、「通液量/吸着剤容量/時間」で示される。例えば、1時間あたりに、吸着剤の容量と等量の溶液を通過させると、SV=1となる。本発明では、通過させる溶液は、茶抽出物である。この溶液中には、所定の初期純度のテアニンが含有されている。 本発明における茶抽出物のテアニンの初期純度は、特に限定するものではないが、15%以上が好ましく、20%以上がさらに好ましい。茶抽出物のテアニン純度以外の諸性質(例えば、不純物の純度など)に関しては特に限定するものではない。本発明における茶とは、発酵、不発酵の別を問わず、緑茶、紅茶、ウーロン茶、プアール茶等の茶を示しその種別は問わない。茶葉のテアニン含有量としては、特に限定されるものではない。 本発明において、テアニンの純度とは、茶抽出物の全固形分中のテアニンの割合を意味している。 本発明における合成吸着剤としては、その母体が、(1)スチレンジビニルベンゼン系のもの、例えばSEPABEADSSP205(三菱化学(株)製)、SEPABEADSSP206(三菱化学(株)製)、SEPABEADSSP207(三菱化学(株)製)、XAD−2(ローム・アンド・ハース社製)、XAD−4(ローム・アンド・ハース社製)、XAD−2000(日本有機化学工業(株)製)、XAD−2010(日本有機化学工業(株)製)、XAD−2005(日本有機化学工業(株)製)等、または(2)スチレン系のもの、例えばSEPABEADSHP20(三菱化学(株)製)、SEPABEADSHP21(三菱化学(株)製)、SEPABEADSSP800(三菱化学(株)製)、SEPABEADSSP825(三菱化学(株)製)、SEPABEADSSP850(三菱化学(株)製)、SEPABEADSSP875(三菱化学(株)製)等が使用できその種類は問わない。 なかでも、テアニンと他のアミノ酸との分離が良好であり、また比重が大きいため濃縮液を流した場合も取扱いが容易である観点からSEPABEADSSP205、SEPABEADSSP206、SEPABEADSSP207(いずれも三菱化学(株)製)を用いることが好ましい。 本発明の方法によって得られたテアニンを単離精製するには、公知のいかなるアミノ酸精製法を用いても良く、例えばカラムクロマトグラフィー、溶媒を用いた分配、透析、晶析、限外濾過、電気泳動、中性塩による分別塩析、アルコール、アセトンを用いる分別沈殿法、HPLCなどを例示することができる。このうち溶媒分配および各種クロマトグラフィー、HPLCを組み合わせることが好ましい。さらにCM−セルロースカラムクロマトグラフィー、セファデックスG150カラムクロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー、ブチルトヨパールカラムクロマトグラフィーを組み合わせても良い。 以下、実施例および試験例により本発明を更に詳細に説明する。これらは、本発明の実施例の一部であり、本発明は当該実施例および試験例によって限定されるものではない。 実施例1 15%茶抽出物の調製方法 茶葉を熱水抽出した茶抽出物に対して酢酸エチルを添加し、分配により水画分を得た。得られた水画分を活性炭処理し、テアニン純度15%の茶抽出物を調製した。 実施例2 合成吸着剤への通液 芳香族重合体(スチレン−ジビニルベンゼン)を母体とする合成吸着剤セパピースSP207(SEPABEADSSP207/三菱化学(株)製)50mlをカラムに充填した。そして実施例1により得られた茶抽出物(テアニン純度15%)を前記合成吸着剤をSV = 1 - 4 で通液した。 実施例3 茶抽出物のテアニン純度測定 茶抽出物におけるテアニン純度測定は、溶液を濃縮・凍結乾燥して粉末化した後に、純水に溶解し、HPLCにかけることにより定量した。 HPLCの定量条件は、下表の通りであった。 試験例1 実施例1で調製した茶抽出物(テアニン純度15%)を用いて、実施例2に記載された方法に基づき、異なるSV条件におけるテアニン精製試験を行った。図1に示した結果より、SVが1−4の範囲では、SV=1の時に最も良好な結果が得られた。しかし、SV=2及び3における実験においてもテアニン純度60%以上と非常に良好な結果が得られた。一方で、SV=4では、テアニン純度が50%以下となった。このため、SV=4以上の速度での通液条件では、テアニンの精製効率が著しく低下することが明らかになった。 また、図2には、茶抽出物の通液前のHPLCパターンを、図3には、SV=3で通液・精製した後のHPLCパターンをそれぞれ示した。両図において、テアニンは、8.2 min.付近のピークである。これらの図を比較した結果、SV=3の高通液速度においても、テアニン以外の不純物ピークが大幅に除去され、テアニンが効率的に精製されていることを確認した。 実施例4 3%茶抽出物の調製方法 茶葉を熱水抽出した茶抽出物を濃縮し、テアニン純度3%の茶抽出物を調製した。 比較例1 実施例4で調製した茶抽出物(テアニン純度3%)を用いて、実施例2に記載された方法に基づき、SV = 1 - 4の条件におけるテアニン精製試験を行った。 結果を図4に示した。試験例1の結果と同様に、SVの増加とともに、テアニン純度は減少した。最も良いテアニン純度の茶抽出物は、SV=1における25%であった。 実施例5 テアニン65%茶抽出物の調製方法 比較例1で得られたSV=1での茶抽出物(テアニン純度25%)を用いて、再度同様のSV=1にて合成吸着剤による精製を行った。その結果、テアニン純度65%の茶抽出物を得た。 試験例2 実施例5で得られた茶抽出物(SV=1、テアニン純度65%)と、試験例1で得られた茶抽出物(SV=2、テアニン純度64%)のそれぞれについて、電気伝導度をHORIBA CONDUCTIVITY METER ES-12にて測定した。 結果を図5に示した。SV=1で得られた茶抽出物は、SV=2で得られた茶抽出物よりも電気伝導度が高い値を示した。両抽出物ともテアニン純度が同程度であることから、金属イオンを初めとする電解質がSV=1で得られた抽出物の方が多く存在することが判明した。 試験例3 実施例5で得られた茶抽出物(SV=1、テアニン純度65%)と、試験例1で得られた茶抽出物(SV=2、テアニン純度64%)のそれぞれについて、スポーツ飲料に1重量%で添加した。両スポーツ飲料を用いて、男女合計20名のパネラーに官能テストを行った。評価項目は、(1)風味、及び(2)苦味・渋味の二点とした。茶抽出物を含まないスポーツ飲料(無添加)を3点とし、(1)風味については、悪いものを1点、良いものを5点とし、5点満点とした。また、(2)苦味・渋味については、強いものを1点、弱いものを5点とし、5点満点とした。 結果を図6に示した。図には、20名のパネラーの平均点を示した。この結果、SV=2で得られた茶抽出物は、SV=1で得られた抽出物に比較して、風味の向上及び苦味・渋味の低下という良好な結果が得られた。試験例2と関連付けて推測すると、SV=2で得られた茶抽出物は、SV=1で得られた茶抽出物に比べると、風味に影響する夾雑物が低減したために、呈味性が向上したと考えられる。 実施例6 テアニンの精製 抽出後の溶液からのテアニンの単離精製方法は、次の通りであった。すなわち、溶液を活性炭処理した後に、RO膜による脱塩を行い、その後Dowex50×8、Dowex1×2カラムクロマトグラフィーにかけ、これをエタノール処理することにより行った。 この単離物質をアミノ酸アナライザー、ペーパークロマトグラフィーにかけたところ、テアニン標準物質と同じ挙動を示した。また、単離物質を塩酸あるいはグルタミナーゼで加水分解処理を行ったところ、1:1の割合でL−グルタミン酸とエチルアミンを生じた。このように、単離物質がグルタミナーゼによって加水分解されたことから、エチルアミンがL−グルタミン酸のγ位に結合していたことが示された。また、加水分解で生じたL−グルタミン酸がL型であることは、L−グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GluDH)により確認された。図7には、テアニン標品及び単離物質のIRスペクトルを示した。両物質は、共に同等のスペクトルを示した。これらのことから、単離物質がテアニンであることが確認された。SV= 1 - 4 の条件における茶抽出物(テアニン初期純度15%)の合成吸着剤への通液結果を示す表図である。合成吸着剤通液前の茶抽出物のHPLCチャートである。合成吸着剤通液後(SV=3)の茶抽出物のHPLCチャートである。SV= 1 - 4 の条件における茶抽出物(テアニン初期純度3%)の合成吸着剤への通液結果を示す表図である。茶抽出物の電気伝導度の測定結果を示す表図である。茶抽出物をスポーツ飲料に添加した時の官能試験結果を示す表図である。テアニン標品及び単離物質のIRスペクトルを示したグラフである。テアニン純度が15%以上からなる茶抽出物を吸着剤を充填した容器に通液速度=3以下の範囲で通液することにより、純度60%以上のテアニンを得ることを特徴とするテアニンの製造法。前記吸着剤が芳香族重合体を母体とする合成吸着剤であることを特徴とする請求項1に記載のテアニンの製造法。請求項1または2に記載のテアニンの製造法により得られるテアニンを添加してなるテアニンの強化飲食物。 【課題】 テアニンの効率的な製造法及び呈味性に優れたテアニン高純度の茶抽出物を提供すること。【解決手段】 テアニンの初期純度が15%以上の茶抽出物を吸着剤を充填した容器に通液速度(SV)=3以下の範囲で通液することにより、純度60%以上のテアニンを得ることができる。この方法で精製されたテアニンは、呈味性に優れていることから、飲食物への大量添加が可能である。