タイトル: | 公開特許公報(A)_PCB捕集用充填材 |
出願番号: | 2005172602 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | G01N 30/00,B01J 20/24,B01J 20/26,B01J 20/34,C08F 6/00,C08F 212/36,G01N 1/10,G01N 1/22,G01N 1/34 |
藤本 悦男 藤原 嘉夫 JP 2006349376 公開特許公報(A) 20061228 2005172602 20050613 PCB捕集用充填材 昭和電工株式会社 000002004 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 青山 正和 100101465 鈴木 三義 100094400 西 和哉 100107836 村山 靖彦 100108453 藤本 悦男 藤原 嘉夫 G01N 30/00 20060101AFI20061201BHJP B01J 20/24 20060101ALI20061201BHJP B01J 20/26 20060101ALI20061201BHJP B01J 20/34 20060101ALI20061201BHJP C08F 6/00 20060101ALI20061201BHJP C08F 212/36 20060101ALI20061201BHJP G01N 1/10 20060101ALI20061201BHJP G01N 1/22 20060101ALI20061201BHJP G01N 1/34 20060101ALI20061201BHJP JPG01N30/00 EB01J20/24 AB01J20/26 AB01J20/34 GC08F6/00C08F212/36G01N1/10 CG01N1/22 LG01N1/34 12 1 OL 16 2G052 4G066 4J100 2G052AA01 2G052AA03 2G052AA06 2G052AB22 2G052AD02 2G052AD06 2G052AD26 2G052AD46 2G052BA14 2G052BA21 2G052ED01 2G052ED07 2G052ED11 2G052GA24 2G052GA27 2G052JA04 4G066AB01D 4G066AB03A 4G066AB03D 4G066AB05D 4G066AB06D 4G066AB07A 4G066AB09A 4G066AB09D 4G066AB12A 4G066AB18B 4G066AB21D 4G066AC14B 4G066AC17B 4G066AC35B 4G066AD06A 4G066AD08A 4G066CA33 4G066DA01 4G066FA11 4G066FA21 4G066GA11 4J100AB02Q 4J100AB16P 4J100AL03Q 4J100AN02Q 4J100AQ07Q 4J100BA14Q 4J100CA04 4J100CA05 4J100CA06 4J100DA37 4J100EA13 4J100GA19 4J100GC35 4J100JA15 本発明は、PCB捕集用充填材及びその製造方法、このPCB捕集用充填材が充填された固相抽出カートリッジ、並びに、この固相抽出カートリッジを用いたPCB精製濃縮方法に関する。 ポリ塩化ビフェニル(PCB:polychlorinated biphenyl)は、その高い化学的安定性のために長期間に亘り環境中に残留する一方で、その高い脂溶性のために水中のプランクトンなどの微生物に取り込まれると、食物連鎖により生体濃縮される。このため、環境基準は、例えば一日摂取許容量(ADI)を5μg/kg/day、大気の暫定環境濃度を0.5μg/m3以下と定めており、極めて低い値に設定されている。 また、下記非特許文献1による作業環境基準では、労働安全衛生法第65条の2の規定に基づく作業環境評価基準(昭和63年9月1日労働省告示)に従って、(屋内)作業環境中のPCB濃度を0.1mg/m3以下にすることが謳われている。 しかしながら、PCBは、例えば製造工場や使用工場から排水に流れ込んだり、大気中に放出されたりする。また、PCBを含む製品の廃棄や焼却によっても環境中に放出される。さらに、処理施設や保管場所からの漏洩(保管容器の破損や地震等の自然災害など)や、PCBを含有したシーラントや蛍光灯安定器の屋内での破損や漏洩、違法投棄などによっても環境中に放出される。これら放出されたPCBは、海洋や河川等の低泥の汚染や、土壌汚染、生物汚染等を引き起こすため、その処理が急がれている。 PCBの処理技術としては、脱塩素化分解法や、水熱酸化分解法、還元熱化学分解法、光分解法、プラズマ分解法、機械化学分解、溶融分解法などがある。そのほとんどは脱塩素化反応を経たビフェニルへの無害化処理を基本とするものである。 近年、環境汚染の要因となる環境中の微量化学物質のモニタリングが頻繁に行われるようになっている。従来のモニタリングでは、気体中からの試料の抽出には液体吸収法が、液体中からの試料の抽出には液−液抽出法が主に用いられている。しかしながら、これらの手法には、作業が繁雑で時間と経験を要すること、溶媒を多量に使用することなどの問題があった。 これに対して、分析対象となる化学物質を固体充填材に吸着させた後に、適切な溶媒で対象物質を脱着したり、濃縮したりする固相抽出法が近年多用されるようになっている。この固相抽出法は、作業が簡単な上に短時間で済み、しかも溶媒の使用量が少ないといった特徴があるため、多数の検体を短期間に処理しなければならない場合に特に有用であり、自動化も容易である。 固相抽出法の使用が近年になって急速に進んだ背景として、吸脱着性能が改良された多孔性粒子が開発されたこと、このような固相抽出用吸着材が複数のメーカーから市場に提供されたことなどが挙げられる。固相抽出に用いられる充填剤の基材には、無機系基材と有機系基材とが用いられる。具体的に、無機系基材としては、シリカゲル又はシリカゲルの表面を化学修飾した化学結合型シリカゲルが用いられており、有機系基材としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合架橋体に代表される合成高分子系基材及びこれらの表面を化学修飾したものが用いられている(特許文献1,2を参照。)。 ここで、PCBに関するサンプリング方法について以下の方法を例示する。 環境大気及び排出ガス試料中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定法としては、JISのK0311:1999に示される「排ガス中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定法」がある。 この方法は、ハイボリュームエアーサンプラー法と呼ばれており、ハイボリュームエアーサンプラー(例えば、柴田化学株式会社製のHV−500Fや、HV−1000F(ダイオキシン用)を使用する。)に、試料採取用具(石英繊維濾紙及びポリウレタンフォーム)を取り付け、ここに700L/minの流量で24時間連続して、若しくは100L/minの流量で7日間連続して大気を採取し、その総吸引大気量を約1000m3とするものである。 この場合、試料採取用具からのPCB類の抽出には、石英繊維濾紙及びポリウレタンフォームをそれぞれ別々に取り出し、前者にトルエン、後者にアセトンを溶媒として用い、16〜24時間ソックスレー抽出を行う。しかしながら、このサンプリング方法は、非常に操作が煩雑になるなどの問題点も多い。 一方、比較的簡易な装置を用いてPCBをモニタリングする方法としては、固相吸着カラム(ウォーターズ社製のSep-Pak PS Air(商品名))を用いたローボリュームエアーサンプラー法(PSAir-Low-Vol法)がある。 この方法は、ローボリュームエアーサンプラー(例えば、ジーエルサイエンス社製の大気サンプリングポンプSP204−20Lを使用する。)に、上記固相吸着カラムを接続し、この固相吸着カラムに2〜5L/minの流速で大気を流し、24時間採取を行うというものである。 この場合、固相吸着カラムからのPCB類の抽出は、固相吸着カラムに溶媒を通液するだけよいので、上記方法よりも簡単である(非特許文献2を参照。)。すなわち、環境大気中、特に室内大気中におけるPCBの捕集及び濃縮に関しては、このような固相抽出法が有効である。したがって、今後は固相抽出法を用いたPCBのモニタリングの需要が高まっていくことが予想される。 ところで、環境中又は廃棄物中のPCBは、極めて低濃度である場合が多く、その定量分析には、ガスクロマトグラフ質量分析計が用いられる。例えば、このガスクロマトグラフ装置に用いられる分析カラムには、JISのK0311:1999「排ガス中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定法」(P.26 7.2.2. ガスクロマトグラフ質量分析計 a)ガスクロマトグラフ 2)カラムを参考。)が示す公定法の中で、内径が0.25mm〜0.32mm、長さが25〜60mの溶融シリカ製キャピラリーカラム(例えば、J&W社製のDB−5MSや、SGE社製のHP−8)が示されている。 また、このJISのK0311:1999に示される「工業用水・工場排水中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定法」においても、同様な分析・定量法が示されている。特開昭59−147606号公報特開平4−334546号公報特公昭63−398636号公報「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理施設における作業従事者の安全衛生管理について」、[online]、平成16年2月、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理事業検討委員会報告書、[平成17年5月25日検索]、インターネット<URL:http://www.jesconet.co.jp/pdf/1602sagyoanzen.pdf>中野武、外3名、「室内大気中のPCBのモニタリング手法」、第10回環境化学討論会講演要旨集、平成13年5月23日、p.582−583高菅卓三、井上毅、大井悦雅、環境化学(Journal of Environmental Chemistry)、Vol.5,No.3,947-675(1995)、「各種クリーンなpp法とHRGC/HRMSを用いたポリ塩化ビフェニル(PCBs)の全異性体詳細分析法」 ところで、多くのPCB処理設備で採用されつつあるPCBの処理過程では、反応の進行上、PCBが脱塩素されれば、モノクロルビフェニル(モノクロルPCB)の濃度が最終的に高まっていくものと考えられる。したがって、処理作業環境中、更には外部環境中に放出されるモノクロルビフェニルの濃度も高くなる可能性がある。 一方、上述した漏洩等によって既に環境中に放出されたPCBは、理論上塩素数が1〜10までであり、209種類の異性体が存在する。したがって、モノクロルビフェニルは、製品としての性質上、実際にはほとんど含まれていない。 このことから、今まではモノクロルビフェニルの分析を高感度に行う必要がなかったものの、今後は処理作業環境又は外部環境中のモノクロルビフェニル濃度を高感度に測定することがPCB濃度をモニタリングする上で極めて重要になると思われる。 本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、微量のモノクロルビフェニルを容易に定量化することができるPCB捕集用充填材及びその製造方法、並びに、このPCB捕集用充填材が充填された固相抽出カートリッジ及びこれを用いたPCB精製濃縮方法を提供することを目的とする。 上記目的を達成するために、本発明者らは、先ず、上記固相吸着カラム(ウォーターズ社製のSep-Pak PS Air)を用いたローボリュームエアーサンプラー法(PSAir-Low-Vol法)によるモノクロルビフェニルの定量分析を公定法に従いながら行った。その結果、この方法は、固相抽出カートリッジによるPCBのモニタリングとして、特に室内作業環境中のPCB濃度の測定に簡易的に用いられるものの、微量のモノクロロビフェニルの測定にはそのまま適用できないことがわかった。 次に、本発明者らは、モノクロルビフェニルの定量化を妨害する要因について検討を行った結果、上記固相吸着カラムには、モノクロルビフェニルの定量化を妨害する成分が含まれており、このモノクロルビフェニルの妨害成分がビスt−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)であることを見出した。 ここで、固相抽出カートリッジに充填される充填材は、高度な清浄度が求められており、多くの場合、製造時に水及び有機溶剤を用いて充分な洗浄が行われている。このうち、充填材の洗浄に用いられる有機溶剤としては、テトラヒドロフラン(THF)が用いられている。このTHFは、その強い溶解力や、水溶性、揮発性の高さなどから洗浄溶媒として広く用いられている(特許文献3を参照。)。しかしながら、この洗浄溶媒には、エーテル化合物であるTHFの過酸化物生成の危険を避けるため、通常は安定剤としてBHTが約300ppm程度添加されている。このBHTも、有機高分子の酸化防止剤として広く用いられている。 しかしながら、このBHTが添加されたTHFで充填材の洗浄を行った結果、充填材の表面の性質によってはBHTを僅かながら吸着し、この充填材に残留したBHTが実際の固相抽出過程において非常に僅かながら脱着し、モノクロルビフェニルの定量化を妨害することを本発明者らは見出した。また、充填材が有機高分子系材料の場合には、この充填材からBHTが溶出してくる可能性もあり、さらには、コーティング剤に由来したBHTの溶出の可能性もある。 以上の検討結果から、本発明者らは、BHTを含有しない溶剤(THF)を用いて充填材の洗浄を行えば、このBHTを実質的に含まない充填材を得ることができ、この充填材が充填された固相抽出カートリッジを用いることによって、微量のモノクロルビフェニルを定量化することができ、その結果、比較的簡単にPCBのサンプリング及び分析が可能となることを見い出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、以下の手段を提供する。(1) ビスt−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含まない溶剤により洗浄されたBHTを実質的に含まないポリ塩化ビフェニル(PCB)捕集用充填材。(2) 前記PCBが、モノクロルPCBであることを特徴とする前項(1)に記載のPCB捕集用充填材。(3) 前記充填材が、ジビニルベンゼンと他のモノマーとの共重合架橋物であることを特徴とする前項(1)又は(2)に記載のPCB捕集用充填材。(4) 前記他モノマーが、スチレン、メチルメタクリレート、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンの中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前項(3)に記載のPCB捕集用充填材。(5) 前記充填材が、フェニルシリカであること前項(1)又は(2)に記載のPCB捕集用充填材。(6) 前記溶剤が、エーテル化合物であることを特徴とする前項(1)乃至(5)の何れか一項に記載のPCB捕集用充填材。(7) 前記エーテル化合物が、テトラヒドロフラン(THF)であることを特徴とする前項(6)に記載のPCB捕集用充填材。(8) ビスt−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含まない溶剤を用いて充填材を洗浄することを特徴とするBHTを実質的に含まないポリ塩化ビフェニル(PCB)捕集用充填材の製造方法。(9) 前記溶剤として、エーテル化合物を用いることを特徴とする前項(8)に記載のPCB捕集用充填材の製造方法。(10) 前記エーテル化合物として、テトラヒドロフラン(THF)を用いることを特徴とする前項(9)に記載のPCB捕集用充填材の製造方法。(11) 前項(1)乃至(7)の何れか一項に記載のPCB捕集用充填材が充填された固相抽出カートリッジ。(12) 前項(11)に記載の固相抽出カートリッジに分析対象となる試料を流し、この試料中に含まれるPCBを前記充填材に吸着させた後に、前記固相抽出カートリッジにBHTを含まない溶媒を流して、前記充填材から前記溶媒に前記PCBを溶出させた溶出液を回収するPCB精製濃縮方法。 以上のように、本発明によれば、BHTを実質的に含まないPCB捕集用充填材が充填された固相抽出カートリッジを用いることによって、微量のモノクロルビフェニルを定量化することができ、比較的簡単にPCBのサンプリング及び分析を行うことができる。 以下、本発明を適用したPCB捕集用充填材及びその製造方法、並びに、このPCB捕集用充填材が充填された固相抽出カートリッジ及びこれを用いたPCB精製濃縮方法について、図面を参照して詳細に説明する。(PCB捕集用充填材) 本発明を適用したPCB捕集用充填材は、ビスt−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含まない溶剤により充填材が洗浄されることで、BHTを実質的に含まないことを特徴とするものである。 充填材には、内部に種々の構造の孔が形成された多孔質材料を用いることができる。また、充填材の形状については、特に限定されるものではなく、例えば、球状粒子や破砕粒子、或いは、膜状や、繊維状、塊状連続体など種々の形状のものを用いることができる。なお、塊状連続体は、例えば円筒型容器の中で塊状重合させたものを抜き出して得られる棒状重合体である。また、破砕粒子は、例えば塊状連続体や球状粒子などをハンマーや乳鉢、粉砕機などで更に小さな断片に砕いて得られる不規則又は規則的な形状を有する粒子である。 充填材には、例えば、微小粒子を焼結させた又はバインダーで固めた粒子凝集体や、内部に大きさの異なる比較的丸い孔が無数に分散したスポンジ構造体(気泡分散体)、高分子の生成過程中に架橋などにより網目構造が発達して全体として多孔質となった網目構造体、例えば繊維状の基本構造体を成形して大きな空洞を形成したハニカム(蜂の巣状)構造体等を用いることができる。また、充填材は、これらの構造体を2種以上含む多孔質材料であってもよい。 これらの構造体は、種々の無機系多孔質材料又は有機系多孔質材料によって形成されたものである。具体的に、無機系多孔質材料としては、例えば、シリカゲルや、アルミナ、ゼオライト、焼結金属等を挙げることができる。この無機系多孔質材料は、そのまま充填材として使用することもできるが、その表面における吸着特性を変更したい場合には、有機化合物を表面にコーティングしたものを使用してもよい。 有機化合物のコーティング方法としては、例えば、無機系多孔質材料の表面上でモノマーを重合させるモノマー吸着重合法がある。また、カップリング反応によって無機系多孔質材料の表面に有機化合物をカップリングさせる方法もある。無機系多孔質材料とカップリングさせる有機化合物としては、液体クロマトグラフィーでよく用いられるクロロシラン化合物が好適である。それ以外にも、無機系多孔質材料とのカップリングが可能な有機化合物を用いることができるが、特にPCBをより選択的に吸着する能力が高いフェニル基を持つものが好適である。 クロロシラン化合物としては、例えば、ジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、アミノメチルジメチルクロロシラン、ジメトキシメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、クロロメチルトリメチルシラン、クロロメチルメトキシジメチルシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アリルジメチルクロロシラン、ジメチルプロピルクロロシラン、1-クロロエチルトリメチルシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、メチルフェニルクロロシラン、ジメチルオクタデシルクロロシラン、トリベンジルクロロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン等を挙げることができる。 一方、有機系多孔質材料としては、有機多孔質高分子、又はコルクなどの天然物等を挙げることができる。有機多孔質高分子の中でも、合成多孔質高分子は、特に好ましい有機系多孔質材料である。合成多孔質高分子としては、例えば、3次元網目構造をもった架橋共重合体や、フルオロカーボン又は炭酸ガスなどの発泡剤による気泡が分散して多孔質化された高分子等を挙げることができる。これら合成多孔質高分子の中でも、特に架橋共重合体が好ましく、架橋剤として2つ以上の二重結合をもつ架橋性ポリビニルモノマーを用いて、3次元網目構造を発達させた架橋共重合体を用いることが好ましい。 架橋性ポリビニルモノマーとしては、例えば、芳香族ポリビニルモノマーや、多価アルコールポリ(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、ポリアリルエーテル、N,N’−低級アルキレンビス(N−ビニルカルボン酸アミド)等を挙げることができる。なお、ここで言う「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」の意味である(以下、同様)。 具体的に、芳香族ポリビニルモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、ジビニルフェノール等を挙げることができる。 多価アルコールポリ(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。 ポリアリルエーテルとしては、例えば、ジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、テトラアリロキシエタン等を挙げることができる。 N,N’−低級アルキレンビス(N−ビニルカルボン酸アミド)としては、例えば、N,N’−1,3−プロピレンビス(N−ビニルアセトアミド)、N,N’−1,2−メチレンビス(N−ビニルアセトアミド)等を挙げることができる。 これらの中でも、芳香族ポリビニルモノマーを用いることが好ましく、より好ましくはジビニルベンゼン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、ジビニルフェノールであり、さらに好ましくはジビニルベンゼンである。また、上記架橋性ポリビニルモノマーは、単独で使用することもできるが、共重合性などを考慮した場合には、2種以上を組み合わせて使用することもできる。 多孔質有機系材料は、必要に応じて上記架橋性ポリビニルモノマーと共に、上記架橋性ポリビニルモノマーと共重合可能な1つの重合性二重結合をもった非架橋性ビニルモノマーを用いてもよい。 非架橋性ビニルモノマーとしては、例えば、芳香族モノビニルモノマーや、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、カルボン酸不飽和エステル系モノマー、マレイン酸系モノマー、カルボキシル基を有するモノマー、不飽和エーテル系モノマー、N−アルケニルカルボン酸アミドモノマー等を挙げることができる。 具体的に、芳香族モノビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、o−,m−,p−メチルスチレン、o−,m−,p−エチルビニルベンゼン、o−,m−,p−(クロロメチル)スチレン、ヒドロキシスチレン、アセトキシスチレン、ジエチルアミノエチルスチレン、ビニルナフタレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。 (メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。 カルボン酸不飽和エステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、酢酸アリル、プロピオン酸ビニル等を挙げることができる。 マレイン酸系モノマーとしては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、2,3−ジメチル無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等を挙げることができる。 カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等を挙げることができる。 不飽和エーテル系モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ブチルアリルエーテル等を挙げることができる。 N−アルケニルカルボン酸アミドモノマーとしては、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−(2−プロペニル)ホルムアミド、N−(2−プロペニル)アセトアミド、N−ビニルブチロアミド、N−ビニルベンズアミド、N−ビニル(o−トルアミド)、N−ビニル(p−トルアミド)等を挙げることができる。 これらの中でも、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンが好ましい。また、上記非架橋性ビニルモノマーは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 また、重合後さらに官能基を導入できる可能性が高く、応用範囲の広い重合体を得るために、例えば、o−,m−,p−(クロロメチル)スチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどのように、クロロメチル基、エポキシ基、水酸基などの反応性基を有するものを用いることができる。 本発明を適用したPCB捕集用充填材は、そのまま固相抽出用の充填材として用いてもよく、適当なバインダーに保持させて吸着成形体として用いてもよい。なお、ここで言うバインダーとは、個々の吸着材をつなぎ合わせて、より大きな一定の形を保持させるために加えられる補助材料のことである。 具体的に、バインダーとしては、化学的に不活性なものが好ましく、例えばフィルター状又はディスク状に成形する際によく用いられるポリエチレン製又はポリ(テトラフルオロエチレン)製繊維のようなものを挙げることができるが、これらに特に限定されるものではない。 また、ここで言う吸着成形体とは、個々の吸着材をバインダーに保持させることで、より大きな一定の形を与えられた吸着材の集合体のことである。上記バインダーの例で言えば、成形後のフィルターやディスク等が吸着成形体に相当するが、吸着成形体については、これらものに特に限定されるものではない。 本発明を適用したPCB捕集用充填材は、上記充填材又は吸着成形体の中から少なくとも1種以上を、バインダー無しで又はバインダーと共に、支持体に塗布、散布、充填、設置、挿入、又は密閉して作製することができる。なお、ここで言う「吸着材をバインダーと共に」とは、支持体の中又は表面に直接、吸着成形体を作り上げることを意味する。また、塗布とは、主に刷毛のようなもので塗り込めたり、懸濁液に浸した後に引き上げたりする操作を言い、散布とは、主に気体、液体又は固体に分散させたり、それを吹き付けたりする操作を言い、充填とは、主に中空の容器や管にできるだけ隙間なく詰めていく操作を言い、設置とは、主に置いたり、留めたり、挟んだり、圧着したり、電着したり、化学結合したりする操作を言い、挿入とは、主に差し込んだり、埋め込んだりする操作を言い、密閉とは、主に封じ込めたり、閉じ込めたり、覆ったりする操作を言う。なお、本発明は、これら各操作によって特に限定されるものではない。(PCB捕集用充填材の製造方法) 本発明を適用したPCB捕集用充填材の製造方法は、BHTを含まない溶剤を用いて充填材を洗浄することを特徴としており、これにより、上記BHTを実質的に含まないPCB捕集用充填材を製造することができる。 ここで、上記PCB捕集用充填材の洗浄には、例えば、炭化水素系や、ハロゲン化炭化水素系、アルコール系、エーテル及びアセタール系、ケトン及びアルデヒド類系、エステル類系、多価アルコール類系、カルボン酸類系、フェノール類系、含窒素化合物類系、含硫黄化合物類系、フッ素化合物類系、無機溶剤系等のBHTを含まない各種溶媒を用いることができる。なお、有機溶剤のうち、エーテル化合物は、その分解を抑えるために、安定剤としてBHTが添加される場合があるが、このBHTが含有されていない溶剤を入手することも可能である。 具体的に、炭化水素系としては、例えば、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、オクタン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンタン、デカン、ドデカン、トルエン、ヘキサン、ベンゼン、ペンタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、石油エーテル、石油ベンジン、テトラリン、ノナン等を挙げることができる。 ハロゲン化炭化水素系としては、例えば、塩化エチル、塩化メチレン、塩化メチル、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、ジブロモエタン等を挙げることができる。 アルコール系としては、例えば、アミルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ブタノール、フルフリルアルコール、1−プロパノール、ヘキサノール、ペプタノール、ベンジルアルコール、ペンタノール、メタノール、メチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。 エーテル及びアセタール系としては、例えば、エチルイソアミルアルコール、エチルーt−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルアセタール、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジグリシジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、トリオキサン、フラン、フルフラール、メチルーt−ブチルエーテル、メチルフラン等を挙げることができる。 ケトン及びアルデヒド類系としては、例えば、アセチルアセトン、アセトフェノン、アセトン、イソホロン、エチルーnーブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジーnープロピルケトン、ホロン、メチルーn−アミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチルーn−ブチルケトン、メチルーn−プロピルケトン、メチルーn−ヘキシルケトン、メチルーn−ヘプチルケトン等を挙げることができる。 エステル類系としては、例えば、アジピン酸エチル、アジピン酸ジオクチル、安息香酸イソアミル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸プロピル、安息香酸メチル、イソ吉香酸アミル、イソ吉香酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、ギ酸ヘキシル、ギ酸ベンジル、ギ酸メチル、酢酸アミル、酢酸アリル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸n−ブチル、酢酸s−ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、ガンマーブチロラクトン、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸メチル等を挙げることができる。 多価アルコール類系としては、例えば、エチレンカーボネート、エチレングリコール、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、プロピレンカーボナート、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタエチスリトール、1,5−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール等を挙げることができる。 カルボン酸類系としては、例えば、ギ酸、酢酸等を挙げることができる。 フェノール類系としては、例えば、フェノール、エチルフェノール、クレゾール、ドデシルフェノール、ノニルフェノール、p−メトキシエチルフェノール等を挙げることができる。 含窒素化合物類系としては、例えば、アセトニトリル、アニリン、アミルアミン、イソキノリン、イソブチルアミン、イソプロピルアミン、イミダゾール、Nーエチルエタノールアミン、N−エチルヘキシルアミン、Nーエチルモルホリン、エチレンジアミン、カプロラクタム、キノリン、ジアミルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジエタノールアミン、ジオクチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、トリアミルアミン、トリエチルアミン、トリプロプルアミン、ニトロベンゼン、ヒドラジン、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、2−ピロリドン、Nーフェニルモルホリン、Nーブチルアニリン、ブチルアミン、ブチロニトリル、プロピオニトリル、プロピレンンジアミン、ヘキサメチルホスホリルトリアミド、ホルムアミド、Nーメチルピロリドン、Nーメチルホルムアミド、モノエタノールアミン、モノエチルアミン、モルホリン等を挙げることができる。 含硫黄化合物類系としては、例えば、ジフェニルスルホン、ジエチル硫酸、ジメチル硫酸、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオアニソール、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、二硫化炭素、プロパンスルホン等を挙げることができる。 フッ素化合物類系としては、例えば、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、ドデカフルオロシクロヘキサン、トルフルオロエタノール、パーフルオロアルカン、2−パーフルオロアルキルエタノール、パーフルオロテトラヒドロフラン、パーフルオロトリアルキルアミン、ヘキサフルオロイソプロパノール等を挙げることができる。 無機溶剤系としては、例えば、アンモニア水、液体アンモニア、液体炭酸、水等を挙げることができる。 この中でも、水、メタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフランが好ましく、更に好ましくは、テトラヒドロフランである。 以上のように、本発明を適用したPCB捕集用充填材は、BHTを実質的に含まない充填材であれば特に限定されるものではなく、上記BHTを含まない溶剤を用いて上記充填材の洗浄を行えば、BHTを実質的に含有しない本発明のPCB捕集用充填材を容易に得ることができる。 なお、ここで言う「BHTを実質的に含有しない」とは、「充填材1gにつきBHTが1ng以下であること」ことを意味する。また、BHTの含有量については、以下の方法によって測定することができる。すなわち、BHTを含有しないアセトン(例えば、残留農薬試験用レベルの試薬)20mlに、充填材2gを分散させ、室温にて30分間超音波洗浄器による振動を与える。その後、上澄み液10mlを試験管に取り、穏やかに窒素を吹き付けることにより1mlに濃縮する。これは、充填材1g当たりに相当する量である。そして、この濃縮液を公定法(JISのK0311)に従って、GC−MS法により定量した結果から、「充填材1gにつきBHTが1ng以下であること」を確認する。(固相抽出カートリッジ) 本発明を適用した固相抽出カートリッジは、上記BHTを実質的に含まないPCB捕集用充填材が充填されてなるものであり、例えば図1に示すような構造を有している。すなわち、この固相抽出カートリッジ10は、上記PCB捕集用充填材11が充填された略円筒状のカートリッジ本体10aを備え、このカートリッジ本体10aの長手方向の両端部に、それぞれノズル10b,10cが設けられた構造を有している。 カートリッジ本体10aの材質については、有機溶媒に不溶、且つ、試料濃縮作業中に充填材11が漏れ出たりしないものであればよく、例えば、ポリプロピレンや、ポリエチレン等を挙げることができる。また、カートリッジ本体10aの形状や大きさ等については、図1に示すものに特に限定されるものではなく、例えば、容積が1〜500ml、好ましくは2〜100mlの注射筒型シリンジ、或いはバレル型であって、樹脂製又は多孔性ガラス製のフィルターがセットされたものなどであってもよい。 カートリッジ本体10aへの充填材11の充填量についても、特に限定されるものではなく、充填材粒子のかさ密度、試料の濃縮量などにより、例えばカートリッジ本体10aの容積が3〜6mlの場合には、100〜2000mgであり、好ましくは200〜1000mgである。また、充填材11は、必要に応じてバインダーを併用することができ、例えば、固相抽出用のウェルプレートやフィルターなどの形態とすることもできる。(PCB精製濃縮方法) 本発明を適用したPCBの精製濃縮方法は、上記固相抽出カートリッジ10に分析対象となる試料を流し、この試料中に含まれるPCBを充填材11に吸着させた後に、固相抽出カートリッジ10にBHTを含まない溶媒を流して、充填材11から溶媒にPCBを溶出させた溶出液を回収することを特徴としている。 具体的に、処理作業環境又は外部環境中のモノクロルビフェニル(モノクロルPCB)を固相抽出法により精製したり、濃縮したりする際には、先ず、固相抽出カートリッジ10のノズル10c側(或いはノズル10b側)から分析対象となる気体又は液体の試料を流することによって、この試料中のモノクロルビフェニルを吸着材11に吸着させる。その後に、固相抽出カートリッジ10のノズル10b側からBHTを含まない溶媒を流すことによって、吸着材11から溶媒にモノクロルビフェニルを溶出させる。この溶出させた溶出液は、固相抽出カートリッジ10のノズル10c側から排出されて回収されることになる。なお、この固相抽出に用いられるBHTを含まない溶媒としては、先の洗浄に用いたBHTを含まない溶媒とは同じ種類のものを使用してもよい。 以上のように、本発明では、BHTを含有しない溶剤(THF)を用いて充填材11の洗浄を行えば、このBHTを実質的に含まない充填材11を得ることができ、この充填材11が充填された固相抽出カートリッジ10を用いることによって、微量のモノクロルビフェニルを定量化することができ、その結果、比較的簡単にPCBのサンプリング及び分析を行うことができる。 以下、実施例により本発明の効果を明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。 本実施例では、充填材として、スチレン−ジビニルベンゼン共重合架橋体粒子を作製した。具体的には、先ず、精製したスチレン39g、ジビニルベンゼン(三共化成株式会社製のDVB−H、純度約80質量%)24g、トルエン70gの混合溶液に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを溶解して、油相を調製した。次に、0.6質量%ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製のクラレポバールPVA−224)水溶液700mlに、上記トルエン溶液を加えた。また、目的の粒子径分布を得るために、油滴の最大粒径が300μmになるように高速攪拌して調整した。次に、攪拌翼を通常攪拌用のものに交換し、150rpmで攪拌しながら、70℃で6時間反応を行った。次に、生成した共重合架橋体粒子をろ取し、70℃の温水9リットル、次いでアセトン1.5リットルで洗浄した後に、ステンレス製バットに広げて風乾し、さらに70℃で24時間減圧乾燥した。次に、得られた粒子を適切な目開きの篩にて分級して十分に乾燥させた後に、目的のスチレン−ジビニルベンゼン共重合架橋体粒子を得た。(実施例1) 実施例1では、上記スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子10gに、洗浄溶媒としてBHTを含んでいないTHF(和光純薬製のTHF、安定剤を含まず。)を加えてスラリー状とし、ガラスカラムに気泡ができないように静かに流し込んだ。そして、この洗浄溶媒を定量ポンプを用いて上向流(液空間速度(LSV)=0.34)で6時間通液した後に、アセトン5000(和光純薬工業製の残留農薬試験用)を同条件で10時間通液し、充填材の洗浄を行った。次に、洗浄溶媒を抜き取り、活性炭カラムを通した窒素を100ml/minで12時間通気し、充填材を乾燥させた後、この充填材をステンレス皿に取り出して60℃で12時間の減圧乾燥を行った。 次に、得られた充填材2gを20mlのアセトン5000に分散させ、室温にて30分間超音波洗浄器による振動を与えた。その後、上澄み液10mlを試験管に取り、穏やかに窒素を吹き付けることにより1mlに濃縮した。この濃縮液中に含まれるPCBを公定法(JISのK0311)に従って、GC−MSにより定量した。 GC−MS法による分析条件は、以下に示すとおりである。キャリアーガス:ヘリウム 2.0ml/min コンスタントフロー分析カラム:J&W DB−5 60m×0.25mm 膜厚 0.25μmカラム昇温条件:50℃、0min→20℃/min→180℃、0min→ 2℃/min→280℃イオン化法:EI 70eV 測定法:SCAN および SIM モード測定イオン:188(モノクロルPCBの定量イオン) なお、この測定条件において、モノクロルPCB(♯1)は、Rt(リテンションタイム)=10.86である(非特許文献3を参照。)。 実施例1のSCAN測定でのトータルイオンクロマトグラムを図2に示す。また、モノクロルビフェニルの定量イオン:188について、実施例1のイオンンクロマトグラムを図3に示す。 図2では、このSCAN測定によるBHTの存在の確認はできなかった。また、図3では、Rt=10.86にピークが存在するが、その強度は小さく、BHT濃度はモノクロルPCBの測定を妨害しないレベルである1ng/充填材1g未満であることがわかった。(比較例1) 比較例1では、上記スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子10gに、洗浄溶媒としてTHF(和光純薬工業製のTHF、BHT0.03%を含有する。)を加えてスラリー状とし、ガラスカラムに気泡ができないように静かに流し込んだ。そして、この洗浄溶媒を定量ポンプを用いて上向流(液空間速度(LSV)=0.34)で6時間通液した後に、アセトン5000(和光純薬工業製の残留農薬試験用)を同条件で10時間通液し、充填材の洗浄を行った。次に、洗浄溶媒を抜き取り、活性炭カラムを通した窒素を100ml/minで12時間通気し、充填材の乾燥させた後、この充填材をステンレス皿に取り出して60℃で12時間の減圧乾燥を行った。 次に、得られた充填材2gを20mlのアセトン5000に分散させ、室温にて30分間超音波洗浄器による振動を与えた。その後、上澄み液10mlを試験管に取り、穏やかに窒素を吹き付けることにより1mlに濃縮した。この濃縮液中に含まれるPCBを実施例1と同じ分析条件でGC−MSにより定量した。 比較例1のSCAN測定でのトータルイオンクロマトグラムを図4に示す。また、モノクロルビフェニルの定量イオン:188について、比較例1のイオンンクロマトグラムを図5に示す(なお、図5は、図3に対して縦軸のスケールを約5倍にして示している。)。 図4では、Rt=10.8付近に大きなピークが認められ、BHTが存在することがわかった。また、図5では、Rt=10.8付近にBHTに由来すると考えられる非常に多数のピークが見られ、モノクロルPCBの測定を妨害していることがわかった。図1は、固相抽出カートリッジの一例を示す斜視図である。図2は、実施例1のトータルイオンクロマトグラムを示すグラフである。図3は、実施例1のイオン188のクロマトグラムを示すグラフである。図4は、比較例1のトータルイオンクロマトグラムを示すグラフである。図5は、比較例1のイオン188のクロマトグラムを示すグラフである。符号の説明 10…固相抽出カートリッジ 10a…カートリッジ本体 10b,10c…ノズル 11…吸着材 ビスt−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含まない溶剤により洗浄されたBHTを実質的に含まないポリ塩化ビフェニル(PCB)捕集用充填材。前記PCBが、モノクロルPCBであることを特徴とする請求項1に記載のPCB捕集用充填材。前記充填材が、ジビニルベンゼンと他のモノマーとの共重合架橋物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のPCB捕集用充填材。前記他モノマーが、スチレン、メチルメタクリレート、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンの中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のPCB捕集用充填材。前記充填材が、フェニルシリカであること請求項1又は2に記載のPCB捕集用充填材。前記溶剤が、エーテル化合物であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のPCB捕集用充填材。前記エーテル化合物が、テトラヒドロフラン(THF)であることを特徴とする請求項6に記載のPCB捕集用充填材。 ビスt−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含まない溶剤を用いて充填材を洗浄することを特徴とするBHTを実質的に含まないポリ塩化ビフェニル(PCB)捕集用充填材の製造方法。前記溶剤として、エーテル化合物を用いることを特徴とする請求項8に記載のPCB捕集用充填材の製造方法。 前記エーテル化合物として、テトラヒドロフラン(THF)を用いることを特徴とする請求項9に記載のPCB捕集用充填材の製造方法。 前記請求項1乃至7の何れか一項に記載のPCB捕集用充填材が充填された固相抽出カートリッジ。 前記請求項11に記載の固相抽出カートリッジに分析対象となる試料を流し、この試料中に含まれるPCBを前記充填材に吸着させた後に、前記固相抽出カートリッジにBHTを含まない溶媒を流して、前記充填材から前記溶媒に前記PCBを溶出させた溶出液を回収するPCB精製濃縮方法。 【課題】 微量のモノクロルビフェニルを比較的簡単に定量化することができるPCB捕集用充填材、このPCB捕集用充填材が充填された固相抽出カートリッジ、並びに、この固相抽出カートリッジを用いたPCB精製濃縮方法を提供する。【解決手段】 ビスt−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含まない溶剤により洗浄されたBHTを実質的に含まないポリ塩化ビフェニル(PCB)捕集用充填材11が充填された固相抽出カートリッジ10を用いる。【選択図】 図1