タイトル: | 公開特許公報(A)_核酸の精製法 |
出願番号: | 2005168671 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12N 15/09 |
柄谷 肇 河野友治 水口 博義 JP 2006340649 公開特許公報(A) 20061221 2005168671 20050608 核酸の精製法 柄谷 肇 593046463 株式会社 京都モノテック 501155803 喜多 俊文 100098671 柄谷 肇 河野友治 水口 博義 C12N 15/09 20060101AFI20061124BHJP JPC12N15/00 A 5 2 OL 18 4B024 4B024AA20 4B024CA01 4B024HA11 4B024HA19本発明は、生体試料、例えば、DNA、RNA及びオリゴヌクレオチドなどすべての種類の核酸(以下、DNAと略記する)の吸着法・洗浄法・溶出法に関する。さらに詳しくは、アンチカオトロピック効果に基づくDNAの吸着法・洗浄法・溶出法に関する。また、要事アンチカオトロピック効果に対してファン・デル・ワールス相互作用の相乗効果を活用するDNAの吸着法・洗浄法・溶出法に関する。 近年、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、プラスミドDNA、PCR産物、など多種多様なDNAの分離精製法はバイオ研究分野における基盤要素技術として重要である。多様な種類のDNAの分離精製において、シリカゲル固定相を分離担体とする手法が最も広く用いられている。この理由として、単離精製に要する費用が安価であること、また比較的簡便で収率の高い点を上げることができる。DNA分子とシリカゲルとの吸着相互作用に関する研究の歴史的な背景からかんがみてもシリカゲル分離担体の活用は妥当である。シリカゲル分離担体はミクロ遠心チューブ゛あるいはミクロカラムに装着して利用される。さらに、磁性ビーズなどの粒子型充填剤やシリカメンブレン、ガラス繊維不綿布などとして用いられることもある。単離精製の手順の観点からは、DNAなどのシリカゲル担体への吸着、洗浄それに続く溶出・回収をすべての利用形態に共通する操作としてあげることができる。 シリカゲル分離担体を活用するDNAの単離精製法において、如何にして目的とするDNAを試料溶液からタンパク質など夾雑物質を除いて選択的に且つ収率よく回収するかが命題となる。この命題の解決策として、カオトロピック効果を利用する手法が現行法として実用化されている(特許文献1)。一般的にDNAの単離精製操作手順はつぎの三段階に要約される:1)DNAの吸着、シリカゲルのヒドロキシ基(以下、シラノール基)とDNAとの相互作用に基づくシリカゲルへのDNAの吸着;2)洗浄、未吸着夾雑物の溶出洗浄;3)DNAの溶出、回収。この操作手順において、第1段目の吸着操作が単離精製法の成否の鍵となる。成否の意味するところは、吸着率のみならず、溶出過程における回収率に大きな影響を及ぼす点にある。即ち、吸着はするが溶出の効率の効率が大きく低下する点にある。特開2003-144150号 現行法において、グアニジンを含む試薬、例えばグアニジン・塩酸(HCl)、とDNA試料を混合した試料溶液をシリカゲル分離担体に負荷してDNAを吸着させる手法が最良法として市場を席捲している。このようなグアニジン類を用いる手法の利点は、比較的高い吸着率を達成できる点にあるといえる。このことと関連して、G媒体を利用しないと回収率が大きく低下することが指摘されている。 しかしながら、DNA分子の種類に依存して吸着相互作用が不均一であり、且つ一旦吸着すると溶出が困難なほど強い相互作用を示すという重大な欠点がある。不均一且つ強すぎる吸着は結果的に目的DNAの高収率単離精製を妨げることとなる。これらの欠点は、G媒体に共通してあらわれるものである。この原因はシラノール基とG媒体の相互作用がカオトロピック効果(以下、C効果と記す)に基づく相互作用に起因する。具体的には、グアニジンがカオトロピックイオン(以下、Cイオンと記す)として作用して、シラノール基の負電荷を高めると共に、DNA分子のリン酸基などのイオン解離基が解離を促進される。結果的にシラノール基とDNA分子の静電相互が高められる。ところがDNA分子はリン酸基以外にもヒドロキシル基や塩基部位に解離基が存在しており、結果的に、DNAの種類によって相互作用の強さは不均一となる。また、このことが非特異的吸着の原因となる。一方、このイオン間静電相互作用の結果生じた化学結合は、ファン・デル・ワールス力に基づく結合などと比べて極めて強い結合であり、溶出過程において高い収率で回収することが困難となる。 上段に述べた点に関して、発明者らは逆転の発想をおこなった。即ち、アンチカオトロピック効果(以下、AC効果と記す)に基づく新規なDNAの分離精製法を創生することに成功した。現象論的には、AC効果はアンチカオトロピックイオン(以下、ACイオンと記す)が水の構造を安定化させる(強める)ことによって生じる。水の構造の安定化は、解離性リン酸基以外の解離を抑制し、DNA分子の構造の安定化をもたらす。結果的に、シラノール基とDNA分子間は、強いイオン結合(ca. 250 kJ/mol)ではなくファン・デル・ワールス相互作用に分類される双極子-イオン相互作用(ca. 15 kJ/mol) (双極子-双極子相互作用(ca. 2 kJ/mol)も含まれる)が支配的となる。双極子-イオン相互作用はDNA分子をシリカゲル表面上に吸着させる点において十分な静電引力を発現させる。且つ非特異的な吸着の回避が可能となる。即ちDNAの分子サイズや構成塩基のシーケンスに依存することなく、すべてのDNA分子を捉えることが可能となる。 さらに、双極子-イオン相互作用は、洗浄に用いるエタノールなどの極性有機溶媒によって相殺されないことから、精製の第2段階における洗浄においても問題点を見いださない。さらに、AC効果がもたらす双極子-イオン相互作用に基づく結合は、溶出溶媒のpHを弱塩基性にすることによって簡単に切ることができることから、100 %の回収率を期待できる。即ち、C効果において生じるDNA溶出の不完全性は、AC効果を利用することによって完全に解消することが可能となる。かくして、本発明により、多種多様なDNA分子を100 %の回収率で分離精製することが可能となる。さらに、AC効果に基づくDNA分子の分離精製法が提供される。 本発明は、上記課題を解決するため、生体試料をアンチカオトロピック塩(以下AC塩と記す)を含む物質と混合し、混合物質を固定相に吸着させた後、該固定相を洗浄し、該混合物質を該固定相から遊離させることを特徴とする核酸の精製法を提供する。 生体試料とは、例えばDNAを含有する生物・医学試料(例えば全血、血清、尿、糞便、動植物細胞、細胞培養、PCR産物など)である。 本発明の原理は、前記の通り、AC効果に起因するファン・デル・ワールス相互作用に基づく。AC効果はACイオンが水の構造を安定化させることによって生じる。水の構造の安定化は,解離性リン酸基以外の解離を抑制し,DNA分子の構造の安定化をもたらす。結果的に,シラノール基とDNA分子間は,強いイオン結合ではなくファン・デル・ワールス相互作用に分類される双極子-イオン相互作用と双極子-双極子相互作用と塩基含有率が支配的となる。双極子-イオン相互作用はDNA分子をシリカゲル表面上に吸着させる点において十分な静電引力を発現させる。且つ非特異的な吸着の回避が可能となる。即ちDNAの分子サイズや構成塩基のシーケンスに依存することなく,すべてのDNA分子を固定相に捕らえることが可能となる。 本発明において、ACイオンを与えるAC塩とは硫酸イオン、酢酸陰イオン、フッ化物イオン、及び塩化物イオンを含む塩である。硫酸イオンとは硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムを含む単独あるいは、混合して使用する。特に硫酸アンモニウムを用いる単離精製法が好ましい。AC効果を発現する硫酸アンモニウムは無害であり、生体への影響が懸念されるグアニジン類とくらべて安全な単離精製法の提供が可能となる。硫酸アンモニウムはまたグアニジン類と比較と比べて化学的にきわめて安定な試薬であることから、安定性の高い試薬溶液が提供される。酢酸陰イオンとは、例えば、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウムフッ化物イオンとは、例えば、フッ化ナトリウム塩化物イオンとは、例えば、塩化アンモニウムである。 一般にC効果を発現するグアニジンなどの試薬はAC試薬と比べて高価であり、ランニングコストの視点からも本発明は有用である。 AC塩は、主に緩衝溶液中に共存させる。また、AC塩水溶液に緩衝能を付与することが、多様なDNAに対する適用範囲が広がる。具体的には、AC塩‐リン酸緩衝溶液である事を特徴とする。緩衝液は、リン酸緩衝液以外に、例えば、ほう酸緩衝液、炭酸ナトリウム-炭酸水素ナトリウム緩衝液を用いることもできる。 AC塩濃度は、通常、1 mol/L より高く、飽和状態のものが望ましい。しかし、試料中のDNA含有量に応じて低下させることが可能である。 さらにゲノムDNAなど、細胞より抽出した試料は金属イオンなどが混入している。このような試料に対して、EDTAなどのキレート試薬をAC塩水溶液に添加することによってDNA試料中から金属イオンを完全に除去することも可能である。EDTAの添加量は、例えば、4〜100 mmol/L(終濃度)が好ましい。さらに、EDTA以外にも、例えば、硫酸マグネシウムを用いることができる。 本発明の固定相は、微少量試量を対象とする磁性ビーズや大容量試量まで適応可能なカラム態使用まで、基本的にすべてのシリカゲル担体に適用できる。 本発明は、また形状加工性と表面化学修飾性能にすぐれ且つ細孔径制御が可能な一体型多孔質シリカ(モノリスシリカゲル)との応用適合性が高い。モノリスゲルにみられるこれらの特質を活用することによって、分離担体にクロマトグラフィー様機能を付与することが可能となり、多種多様なDNA混合物から種類別に目的DNAの単離精製法を提供する。 さらにモノリスシリカゲルの高い通液性能とモルホロジー性能は、微少量から大容量までのDNAの高速単離精製法を提供する。この通液性は不織布で生じる低回収率の原因とならない。 本発明において用いるモノリスシリカゲルはメソポアをなくした(メソポアフリー)点を特徴としてあげることができる。メソポアフリーモノリスシリカゲルの使用により通液性能が向上したDNAの単離精製法が提供される。 本発明におけるモノリスシリカゲルは、シリカを主成分とする反応溶液に相分離を伴うゾル−ゲル転移を起こさせることにより得られる。ゾル−ゲル反応に用いられるゲル形成を起こす網目成分の前駆体としては、金属アルコキシド、錯体、金属塩、有機修飾金属アルコキシド、有機架橋金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解生成物、部分重合生成物である多量体を用いることができる。水ガラスほかケイ酸塩水溶液のpHを変化させることによるゾル−ゲル転移も、同様に利用することができる。 水溶性高分子は、理論的には適当な濃度の水溶液と成し得る水溶性有機高分子であって、加水分解性の官能基を有する金属化合物によって生成するアルコールを含む反応系中に均一に溶解し得るものであれば良いが、具体的には高分子金属塩であるポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、高分子酸であって解離してポリアニオンとなるポリアクリル酸、高分子塩基であって水溶液中でポリカチオンを生ずるポリアリルアミンおよびポリエチレンイミン、あるいは中性高分子であって主鎖にエーテル結合を持つポリエチレンオキシド、側鎖にカルボニル基を有するポリビニルピロリドン等が好適である。また、有機高分子に代えてホルムアミド、多価アルコール、界面活性剤を用いてもよく、その場合多価アルコールとしてはグリセリンが、界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル類が最適である。 モノリスシリカゲルは、メソポアを焼成して消失させる。焼成温度は、例えば600℃から1200℃、好ましくは、950℃から1050℃である。特に950℃焼成から1050℃焼成にかけてその比表面積、メソポア細孔径、細孔容積はそれぞれ大きく減少し,その分機械的強度が大きくなる。 なお、本発明において用いるモノリスシリカゲルは、現行法で汎用されているディスク型としてミクロ遠心チューブに取り付け、性能を評価した。 固定相を洗浄する溶液は、例えばエタノール、酢酸-エタノール、リン酸‐エタノール混合溶液等のアルコール等の有機溶剤を用いることができるが、これらに限定されない。洗浄液の濃度は、リン酸‐エタノール混合溶液の場合、10 〜200 mmol/Lが好ましい。洗浄液を添加して、遠心濾過を行う。遠心濾過は、遠心力速度10,000 rpm(1分)で十分達成できる。 また、固定相から吸着試料を遊離(溶出)させる溶媒は、例えば、Tris-HCl緩衝液、ドデシル硫酸ナトリウム水溶液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、Tris-酢酸緩衝液、及び水等を用いることができるが、これらに限定されない。溶媒濃度は、10〜100 mmol/Lが好ましい。溶媒を添加して、遠心濾過を行う。遠心濾過は、遠心速度5,000 〜10,000 rpmを実現できる汎用遠心機で十分である。 以上述べたように、本発明は、多種多様なDNAの高収率(回収率)且つ高速単離精製法として提供される。現行法と比して、性能評価の要となる回収率及び高速性の二点のいずれにおいてもすぐれた性能を有している。無害な試薬を使用する点、環境負荷のない試薬を使用する点、且つ安定な試薬を使用する点もまた従来法にない高性能の実現を達成したといえる。 本発明では、一度に負荷できる試料体積範囲は5μL から 300μLと広く、且つ単一試料に含まれるDNA量は5ngから最大14.4 mgまで、100 %の回収率の達成が可能である。 以下、本発明を、実施例に基づいて説明する。 実施例において、AC効果を発現する溶液をAC溶媒と記す。実施例におけるAC溶媒は通常、6 mol/L 硫酸アンモニウム水溶液(pH5.3)を指す。その他の場合は、明記する。C効果を発現する溶液をC溶媒と記す。最大のC効果を発現する試薬は6 mol/L グアニジン・HCl水溶液であり、実施例におけるC溶媒は通常、6 mol/L グアニジン・HCl水溶液(pH5.7)指す。その他の場合は明記する。 尚、実施例において、メソポアフリーモノリスシリカゲルディスクチューブは、MFMSDと記される。上記の単離精製操作手順における洗浄に用いる溶液は通常、0.01 mol/Lリン酸緩衝液(pH6.1)-エタノール混合溶媒(1:4 v/v)である(以下、PE洗浄液と記す)。その他の場合は明記する。また、吸着DNAの溶出に用いる溶媒は通常、 0.01 mol/L Tris-HCl緩衝液(pH8.5)である(以下、Tris溶出液と記す)。その他の場合は明記する。 AC効果に基づく単離精製条件の最適化に関して、AC試薬の選択、吸着条件、洗浄条件、及び溶出条件について詳細に検討した。実施例における評価結果は現段階における最適条件下において得られた。その他の場合は明記する。実施例1<市販標準DNA試料を用いる実施例> DNA試料として、ニッポンジーン製スマートラダー (含まれるDNAの分子サイズ200 bp〜10 kbp、 全DNA質量体積濃度、144 ng/μL)を用いた。図1にスマートラダーに含まれるDNAのアガロースゲル電気泳動パターン及び、全てのDNA分子サイズを示す。以下の実施例において、標準DNA試料はニッポンジーン社製スマートラダーを示す。DNA試料10 μL(全DNA質量、1.44 mg)に対し、AC溶媒を5倍容量となるように加えてボルテックスミキサーで混和した。このDNA溶液をMFMSDに負荷した後、溶媒を遠心除去した(10,000 rpm、 1 min)。遠心機はエッペンドルフ社製5804Rを用いた。遠心濾液は吸着性能評価用に供した。次に、DNAを吸着させたMFMSDに対して、PE洗浄緩衝液500 μLを添加して遠心した(10,000 rpm、 1 min)。遠心濾液は廃棄した。さらに遠心操作(10,000 rpm、 1 min)により溶媒を除いた。次に、MFMSDに、Tris溶出緩衝液 30 μL加えて遠心した(10,000 rpm、 1 min)。遠心濾液は溶出性能評価に供した。単離精製性能の評価はアガロースゲル電気泳動分析にもとづいて実施した。アガロースゲル濃度は1 %(w/v)とした。アガロースゲルは和光純薬製アガロースSを使用して調製した。各ウェルに負荷する試量体積は5 μLとした。単離調製したDNAは、アガロースゲル電気泳動分析を行い、収率を評価した。電気泳動装置はコスモバイオ社製 I-myrunncを用いた。電気泳動条件を以下に示す : 電気泳動用緩衝液、 TAE緩衝液;試料負荷容量(各ウェル当たり)、 5 μL;負荷電圧、50 V;泳動時間、60 min。 代表的なアガロースゲル電気泳動バンドパターンを図2に示す。比較として、従来法において最高性能とされているキアゲン社製DNA精製チップを用いて得た実験結果を示す。キアゲン社製DNA精製チップを用いる実験はキアゲン社プロトコールに忠実にしたがった。尚、MFMSDはこのキアゲン社製DNA精製チップと同形態をなす。 図2(A)吸着濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、AC効果に基づくDNAの存在を示すバンドは全く検出されなかった。このことから、ほぼ100 %の効率でDNAが吸着されたこと、及び洗浄操作においてDNAの脱着がおこらないことがわかった。 図2(B)溶出濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、溶出緩衝液を通して得られた溶出濾液は、標準試料に含まれる全てのDNAバンドが検出された。さらに、バンドパターン解析ソフト(PLN社 Gel-Pro Analyze)に基づく計算より、回収率はほぼ100 %であることがわかった。 一方、キアゲン社製DNA精製チップを用いて得られた結果から、吸着濾液中に負荷した試料に含まれる全てのDNAの存在を示すバンドが検出された(図2(A) Lane 5)。さらにAC効果に基づく単離精製に比べて、溶出DNAバンドパターンは全体的に暗く不明瞭であり、また回収率にバラツキがみられた(図2(B) Lane 9、10)。 以上の実験を十数回繰り返して行い、再現性を確認した。 これらの実験結果より、AC効果に基づく単離精製はほぼ100%の回収率でDNAの単離精製が達成されることが判明した。さらに従来法に比べて回収率の点で優れていることが明らかになった。実施例2<種々のACイオンの検討> DNA試料として、標準DNA(ニッポンジーン製ラダーDNA、200 bp〜10 kbp,DNA質量体積濃度、144 ng/μL)を用いた。DNA試料50 μL(DNA、7.2 mg)に対し、AC溶媒を5倍容量となるように加えてボルテックスミキサーで混和した。AC溶媒として次の4種類の溶媒を準備した。AC溶媒1 1.0 mol/L硫酸ナトリウム水溶液AC溶媒2 2.0 mol/L硫酸ナトリウム水溶液AC溶媒3 3.0 mol/L硫酸ナトリウム水溶液AC溶媒4 6.0 mol/L硫酸アンモニウム水溶液このDNA溶液をMFMSDに負荷した後、溶媒を遠心除去した(10,000 rpm、 1 min)。遠心機はエッペンドルフ社製5804Rを用いた。遠心濾液は吸着性能に供した。次に、DNAを吸着させたMFMSDに対して、PE洗浄緩衝液500 μLを添加して遠心した(10,000 rpm、1 min)。遠心濾液は廃棄した。さらに遠心操作(10,000 rpm、1 min)により溶媒を除いた。次に、MFMSDに、溶出溶液 30 μL加えて遠心した(10,000 rpm、 1 min)。遠心濾液は溶出性能評価に供した。単離精製性能の評価はアガロースゲル電気泳動分析にもとづいて実施した。アガロースゲル濃度は1 %(w/v)とした。アガロースゲルには和光純薬製アガロースSを使用して調製した。各ウェルに負荷する試量体積は5 μLとした。単離精製したDNAは、アガロースゲル電気泳動分析を行い、収率を評価した。電気泳動装置はコスモバイオ社製 I-myrunncを用いた。電気泳動条件を以下に示す : 電気泳動用緩衝液、 TAE緩衝液;試量負荷量(各ウェル)、 5 μL;負荷電圧、50 V;泳動時間、60 min。 代表的なアガロースゲル電気泳動バンドパターンを図3に示す。 図3(A)吸着濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、AC効果に基づくDNAの存在を示すバンドは3.0 mol/L硫酸ナトリウム水溶液においても検出された(図3(A) Lane 6、7)。 図3(B)溶出濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、溶出緩衝液を通して得られた溶出濾液は、3.0 mol/L硫酸ナトリウム水溶液において、標準試料に含まれる全てのDNAバンドが検出された(図3(B) Lane15、16)。 これらの実験結果より、AC効果に基づくDNA単離精製を比較した結果、硫酸アンモニウムを用いた系において最も優れた単離精製が達成された。硫酸ナトリウムもまた、AC効果を示すが、DNAの単離精製の観点からは硫酸アンモニウムと比べて性能的には劣っていた。また、酢酸陰イオン、塩化物イオン、硝酸イオン及びフッ化物イオンの応用も可能であるが、DNA回収率において硫酸アンモニウムの系が優れている。実施例3<AC塩を含む溶媒組成の検討> DNA試料として、標準DNA(ニッポンジーン製ラダーDNA、200 bp〜10 kbp,DNA質量体積濃度、144 ng/μL)を用いた。DNA試料50μL(DNA、7.2 mg)に対し、AC溶媒を5倍容量となるように加えてボルテックスミキサーで混和した。AC溶媒は次の4種類の溶液を準備した。AC溶媒1 3.0 mol/L硫酸ナトリウム水溶液AC溶媒2 3.0 mol/L硫酸ナトリウム/pH6.9リン酸緩衝液AC溶媒3 6.0 mol/L硫酸アンモニウム水溶液AC溶媒4 6.0 mol/L硫酸アンモニウム/pH6.9リン酸緩衝液 このDNA溶液をMFMSDに負荷した後、溶媒を遠心除去した(エッペンドルフ社製5804R ; 10、000 rpm,1 min)。遠心濾液は吸着性能評価に供した。次に、DNAを吸着させたMFMSDに対して、PE洗浄緩衝液500 μLを添加して遠心した(10、000 rpm,1 min)。遠心濾液は廃棄した。さらに遠心操作(10、000 rpm,1 min)により溶媒を除いた。次に、MFMSDに、溶出溶液 30 μL加えて遠心した(10,000 rpm,1 min)。遠心濾液は溶出性能評価に供した。単離精製性能の評価はアガロースゲル電気泳動分析にもとづいて実施した。アガロースゲル濃度は1 %(w/v)とした。アガロースゲルは和光純薬製アガロースSを使用して調製した。各ウェルに負荷する試料体積は5μLとした。単離精製したDNAは、アガロースゲル電気泳動分析を行い、収率を評価した。電気泳動装置はコスモバイオ社製 I-myrunncを用いた。電気泳動条件を以下に示す : 電気泳動用緩衝液、 TAE緩衝液;試料負荷量(各ウェル)、 5 μL;負荷電圧、50 V;泳動時間、60 min。 代表的なアガロースゲル電気泳動バンドパターンを図4に示す。 図4(A)吸着濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、硫酸ナトリウム塩の場合、溶媒が水溶液、リン酸緩衝液ともDNAの存在を示すバンドが検出された(図4(A) Lane 2〜5)。しかし、硫酸アンモニウム塩の場合、溶媒が水溶液、リン酸緩衝液ともDNAの存在を示すバンドは全く検出されなかった。(図4(A) Lane 6〜9)。 図4(B)溶出濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、溶出緩衝液を通して得られた溶出濾液は、硫酸アンモニウム塩の場合、溶媒が水溶液、リン酸緩衝液に限らず、標準試料に含まれる全てのDNAバンドが検出された(図4(B) Lane 15〜18)。 これらの実験結果より、AC効果に基づくDNA単離精製の比較の結果、硫酸ナトリウムにおいてはAC効果が確認されたが、硫酸アンモニウムにおいては水溶液、リン酸緩衝液のどちらにおいてもAC効果が確認された。実施例4<DNAとしてPCR産物を用いる実施例> PCR装置(ハ゛イオラット゛社 iCyclerサーマルサイクラー)を用いてPCR増幅生成物(含まれるDNA分子サイズ 0.6〜1.0 kbp、 全DNA質量体積濃度 5 ng/μL)を作製した。そのPCR生成物10 μL(全DNA質量 50 ng)に対し、AC溶媒を5倍容量となるように加えてボルテックスミキサーで混和した。このDNA溶液をMFMSDに負荷した後、溶媒を遠心除去した(10,000 rpm、1 min)。遠心機はエッペンドルフ社製5804Rを用いた。遠心濾液は吸着性能評価に供した。次に、DNAを吸着させたMFMSDに対して、PE洗浄緩衝液500μLを添加して遠心した(10,000 rpm、1 min)。遠心濾液は廃棄した。さらに遠心操作(10、000 rpm、 1 min)により溶媒を除いた。次に、MFMSDに、Tris溶出緩衝液 30 μL加えて遠心した(10,000 rpm、1 min)。遠心濾液は溶出性能評価に供した。単離精製性能の評価はアガロースゲル電気泳動分析にもとづいて実施した。アガロースゲル濃度は1 %(w/v)とした。アガロースゲルは和光純薬製アガロースSを使用して調製した。各ウェルに負荷する試量体積は5 μLとした。単離精製したDNAは、アガロースゲル電気泳動分析を行い、収率を評価した。電気泳動装置はコスモバイオ社製 I-myrunncを用いた。電気泳動条件を以下に示す : 電気泳動用緩衝液、 TAE緩衝液;試料負荷容量(各ウェル当たり)、 5 μL;負荷電圧、50 V;泳動時間、60 min。 代表的なアガロースゲル電気泳動バンドパターンを図5に示す。比較として、従来法において最高性能とされているキアゲン社製DNA精製チップを用いて得た実験結果を示す。キアゲン社製DNA精製チップを用いる実験はキアゲン社プロトコールに忠実にしたがった。尚、MFMSDはこのキアゲン社製DNA精製チップと同形態をなす。AC効果に基づくDNAの単離精製の場合、吸着濾液を負荷したレーンにおいてDNAバンドは全く検出されなかった。この結果から、100 %の効率でDNAが吸着されたこと、及び洗浄操作においてDNAの脱着がおこらないことがわかった。図5のアガロースゲル電気泳動のバンドパターンに示すように、溶出緩衝液を通して得られた溶出濾液は、標準試料に含まれる全てのDNAバンドを与えた。さらに、バンドパターン解析ソフト(PLN社 Gel-Pro Analyze)に基づく計算より、ほぼ100 %でDNAを回収できることがわかった。以上の実験を2〜3回繰り返して行い、再現性を確認した。実施例5<微生物ゲノムDNAを用いる実施例> 海洋発光微生物Vibrio fischeri細胞より定法に従い抽出した、微生物ゲノム(含まれるDNAの分子サイズ 20 kbp、 全DNA質量体積濃度 5 ng/μL)を用いた。微生物ゲノムDNA試料10 μL(DNA、50 ng)に対し、AC溶媒を5倍容量となるように加えてボルテックスミキサーで混和した。このDNA溶液をMFMSDに負荷した後、溶媒を遠心除去した(10,000 rpm、1 min)。遠心機はエッペンドルフ社製5804Rを用いた。遠心濾液は吸着性能評価に供した。次に、DNAを吸着させたMFMSDに対して、PE洗浄緩衝液500 μLを添加して遠心した(10,000 rpm、1 min)。遠心濾液は廃棄した。さらに遠心操作(10,000 rpm、1 min)により溶媒を除いた。次に、MFMSDに、Tris溶出緩衝液 30 μL加えて遠心した(10,000 rpm、1 min)。遠心濾液は溶出性能評価に供した。単離精製性能の評価はアガロースゲル電気泳動分析にもとづいて実施した。アガロースゲル濃度は1 %(w/v)とした。アガロースゲルには和光純薬製アガロースSを使用して調製した。各ウェルに負荷する試量体積は5 μLとした。単離精製したDNAは、アガロースゲル電気泳動分析を行い、収率を評価した。電気泳動装置はコスモバイオ社製 I-myrunncを用いた。電気泳動条件を以下に示す : 電気泳動用緩衝液、 TAE緩衝液;試料負荷容量(各ウェル当たり)、 5 μL;負荷電圧、50 V;泳動時間、60 min。 代表的なアガロースゲル電気泳動バンドパターンを図6に示す。比較として、従来法において最高性能とされているキアゲン社製DNA精製チップを用いて得た実験結果を比較に示す。キアゲン社製DNA精製チップを用いる実験はキアゲン社プロトコールに忠実にしたがった。なお、MFMSDはこのキアゲン社製DNA精製チップと同形態をなす。 図6(A) 吸着濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、AC効果に基づくDNAの存在を示すバンドは全く検出されなかった。このことから、100 %の効率でDNAが吸着されたこと、及び洗浄操作においてDNAの脱着がおこらないことがわかった。 一方、図6(B) 溶出濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、溶出緩衝液を通して得られた溶出濾液は、標準試料に含まれる全てのDNAバンドを与えた。 一方、キアゲン社製DNA精製チップを用いて得られた結果から、溶出DNAバンドが全体的に薄いことから(図6(B)Lane 16〜19)、溶出が不完全なものと判定された。以上の実験を2〜3回繰り返して行い、再現性を確認した。 これらの実験結果より、従来法に比べて回収率の点で優れていることが明らかになった。実施例6<吸着容量及び回収率の評価> DNA試料として、ニッポンジーン製スマートラダー(含まれるDNAの分子サイズ200 bp〜10 kbp、 全DNA質量体積濃度、144 ng/μL)を用いた。 DNA試料50 μL(全DNA質量 7.2 mg)に対し、AC溶媒を5倍容量となるように加えてボルテックスミキサーで混和した。このDNA溶液をMFMSDに負荷した後、溶媒を遠心除去した(10,000 rpm、 1 min)。遠心機はエッペンドルフ社製5804Rを用いた。遠心濾液は吸着性能評価に供した。さらに、DNA試料50 μL(DNA、7.2 mg)に対し、AC溶媒を5倍容量となるように加えてボルテックスミキサーで混和した。このDNA溶液を再度MFMSDに負荷した後、溶媒を遠心除去した(10,000 rpm、1 min)。遠心濾液は吸着性能評価に供した。この操作で、MFMSDには合計14.4 mgのDNAが添加されたことになる。次に、DNAを吸着させたMFMSDに対して、PE洗浄緩衝液500 μLを添加して遠心した(10,000 rpm、1 min)。遠心濾液は廃棄した。さらに遠心操作(10,000 rpm、1 min)により溶媒を除いた。次に、MFMSDに、Tris溶出緩衝液 30μL加えて遠心した(10,000 rpm、1 min)。遠心濾液は溶出性能評価に供した。単離精製性能の評価はアガロースゲル電気泳動分析にもとづいて実施した。アガロースゲル濃度は1 %(w/v)とした。アガロースゲルは和光純薬製アガロースSを使用して調製した。各ウェルに負荷する試量体積は5 μLとした。単離精製したDNAは、アガロースゲル電気泳動分析を行い、収率を評価した。電気泳動装置はコスモバイオ社製 I-myrunncを用いた。電気泳動条件を以下に示す。 : 電気泳動用緩衝液、 TAE緩衝液;試料負荷容量(各ウェル当たり)、 5 μL;負荷電圧、50 V;泳動時間、60 min。 代表的なアガロースゲル電気泳動バンドパターンを図7に示す。カオトロピック塩を用いて得た実験結果及び現行法において最高性能とされているキアゲン社製DNA精製チップを用いて得た実験結果を比較に示す。カオトロピック塩を用いた実験はAC効果を用いた実験と同様の操作で実験を行った。キアゲン社製DNA精製チップを用いる実験はキアゲン社プロトコールに忠実にしたがった方法及び、AC効果を用いた実験を行った。尚、MFMSDはこのキアゲン社製DNA精製チップと同形態をなす。 図7(A)吸着濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、AC効果に基づくDNAの単離精製の場合、MFMSD及びキアゲン社製DNA精製チップを用いて、DNA量100 μL(14.4 mg)添加しても吸着濾液を負荷したレーンにおいてDNAバンドは全く検出されなかった。この結果から、100 %の効率でDNAが吸着されたこと、及び洗浄操作においてDNAの脱着がおこらないことがわかった(図7(A) Lane 5、Lane 7)。一方、塩酸グアニジン溶液を用いた実験結果から、7.2 mg / 50 μL DNAを付加した結果、吸着過程においてDNAが完全に吸着されていない(図7(A) Lane2)。また、キアゲン社製DNA精製チップの場合、14.4 mg / 100 μL DNAを付加した場合、吸着過程においてDNAの一部が溶出した(図7(A) Lane 9)。 図7(B)溶出濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、AC効果に基づくDNAの単離精製の場合、溶出緩衝液を通して得られた溶出濾液は、標準試料に含まれる全てのDNAバンドが検出された。 これらの実験結果より、AC効果に基づく単離精製は吸着容量の点においても本発明の優位性が認められた。実施例7<アンチカオトロピック塩濃度の効果の検討> DNA試料として、標準DNA(ニッポンジーン製ラダーDNA、200 bp〜10 kbp、 DNA質量体積濃度、144 ng/μL)を用いた。DNA試料10 μL(DNA、1.44 mg)に対し、AC溶媒を5倍容量となるように加えてボルテックスミキサーで混和した。AC溶媒は次の6種類の溶液を準備した。AC溶媒1 0.5 mol/L硫酸アンモニウム水溶液AC溶媒2 1.0 mol/L硫酸アンモニウム水溶液AC溶媒3 1.5 mol/L硫酸アンモニウム水溶液AC溶媒4 2.0 mol/L硫酸アンモニウム水溶液AC溶媒5 2.5 mol/L硫酸アンモニウム水溶液AC溶媒6 3.0 mol/L硫酸アンモニウム水溶液 このDNA溶液をMFMSDに負荷した後、溶媒を遠心除去した(10,000 rpm、1 min)。遠心機はエッペンドルフ社製5804Rを用いた。遠心濾液は吸着性能評価に供した。次に、DNAを吸着させたMFMSDに対して、PE洗浄緩衝液500 μLを添加して遠心した(10,000 rpm、1 min)。遠心濾液は廃棄した。さらに遠心操作(10,000 rpm、 1 min)により溶媒を除いた。次に、MFMSDに、Tris溶出緩衝液 30 μL加えて遠心した(10,000 rpm、1 min)。遠心濾液は溶出性能評価に供した。単離精製性能の評価はアガロースゲル電気泳動分析にもとづいて実施した。アガロースゲル濃度は1 %(w/v)とした。アガロースゲルは和光純薬製アガロースSを使用して調製した。各ウェルに負荷する試量体積は5 μLとした。単離精製したDNAは、アガロースゲル電気泳動分析を行い、収率を評価した。電気泳動装置はコスモバイオ社製 I-myrunncを用いた。電気泳動条件を以下に示す : 電気泳動用緩衝液、 TAE緩衝液;試料負荷容量(各ウェル当たり)、 5 μL;負荷電圧、50 V;泳動時間、60 min。 代表的なアガロースゲル電気泳動バンドパターンを図8に示す。 図8(A)吸着濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、AC効果に基づくDNAの存在を示すバンドは、硫酸アンモニウム水溶液濃度が3 mol/L以上であると吸着濾液を負荷したレーンにおいてDNAバンドは全く検出されなかった。この結果から、100 %の効率でDNAが吸着されたこと、及び洗浄操作においてDNAの脱着がおこらないことがわかった(図8(A) Lane 7)。 図8(B)溶出濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、溶出緩衝液を通して得られた溶出濾液は、硫酸アンモニウム水溶液濃度が1.5 mol/L以上でDNAが吸着されており(Lane 11)、 3 mol/L以上であると標準試料に含まれる全てのDNAバンドが検出された。さらに、バンドパターン解析ソフト(PLN社 Gel-Pro Analyze)に基づく計算より、回収率はほぼ100 %であることがわかった(図8(B) Lane 15)。 AC効果に基づくDNAの単離精製の場合、AC塩濃度が濃いほど、DNA分離・精製性能がよいことが分かった。実施例8<PCR産物に対するAC塩濃度の効果の検討> PCR装置(ハ゛イオラット゛社 iCyclerサーマルサイクラー)を用いてPCR増幅生成物(DNA、約0.5 kbp、DNA質量体積濃度、5 ng/μL)を作製した。そのPCR生成物10 μL(DNA、50 ng)に対し、AC溶媒を5倍容量となるように加えてボルテックスミキサーで混和した。AC溶媒は次の6種類の溶液を準備した。AC溶媒1 0.5 mol/L硫酸アンモニウム水溶液AC溶媒2 1.0 mol/L硫酸アンモニウム水溶液AC溶媒3 1.5 mol/L硫酸アンモニウム水溶液AC溶媒4 2.0 mol/L硫酸アンモニウム水溶液AC溶媒5 2.5 mol/L硫酸アンモニウム水溶液AC溶媒6 3.0 mol/L硫酸アンモニウム水溶液 このDNA溶液をMFMSDに負荷した後、溶媒を遠心除去した(10、000 rpm、1 min)。遠心機はエッペンドルフ社製5804Rを用いた。遠心濾液は吸着性能評価に供した。 次に、DNAを吸着させたMFMSDに対して、PE洗浄緩衝液500 μLを添加して遠心した(10,000 rpm、1 min)。遠心濾液は廃棄した。さらに遠心操作(10、000 rpm、1 min)により溶媒を除いた。次に、MFMSDに、Tris溶出緩衝液 30 μL加えて遠心した(10,000 rpm、1 min)。遠心濾液は溶出性能評価に供した。単離精製性能の評価はアガロースゲル電気泳動分析にもとづいて実施した。アガロースゲル濃度は1 %(w/v)とした。アガロースゲルは和光純薬製アガロースSを使用して調製した。各ウェルに負荷する試量体積は5 μLとした。単離精製したDNAは、アガロースゲル電気泳動分析を行い、収率を評価した。電気泳動装置はコスモバイオ社製 I-myrunncを用いた。電気泳動条件を以下に示す : 電気泳動用緩衝液、 TAE緩衝液;試料負荷容量(各ウェル当たり)、 5 μL;負荷電圧、50 V;泳動時間、60 min。 代表的なアガロースゲル電気泳動バンドパターンを図9に示す。 図9(A)吸着濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、AC効果に基づくDNAの存在を示すバンドは、硫酸アンモニウム水溶液濃度が1 mol/L以上であると吸着濾液を負荷したレーンにおいてDNAバンドは全く検出されなかった。この結果から、100 %の効率でDNAが吸着されたこと、及び洗浄操作においてDNAの脱着がおこらないことがわかった(図9(A) Lane 3)。 図9(B)溶出濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、溶出緩衝液を通して得られた溶出濾液は、硫酸アンモニウム水溶液濃度が2 mol/L以上であると標準試料に含まれる全てのDNAバンドが検出された。さらに、バンドパターン解析ソフト(PLN社 Gel-Pro Analyze)に基づく計算より、回収率はほぼ100 %であることがわかった(図9(B) Lane 12)。 以上の実験を2〜3回繰り返して行い、再現性を確認した。 AC効果に基づくDNAの単離精製の場合、AC塩濃度が濃いほど、DNA分離・精製性能がよいことがわかった。実施例9<試薬の添加の効果> DNA試料として、標準DNA(ニッポンジーン製ラダーDNA、200 bp〜10 kbp、DNA質量体積濃度、144 ng/μL)を用いた。DNA試料50 μL(DNA、7.2 mg)に対し、AC溶媒を5倍容量となるように加えてボルテックスミキサーで混和した。このDNA溶液をMFMSDに負荷した後、溶媒を遠心除去した(10,000 rpm、 1 min)。遠心機はエッペンドルフ社製5804Rを用いた。遠心濾液は吸着性能評価に供した。次に、DNAを吸着させたMFMSDに対して、PE洗浄緩衝液500 μLを添加して遠心した(10,000 rpm、 1 min)。遠心濾液は廃棄した。さらに遠心操作(10,000 rpm、1 min)により溶媒を除いた。次に、MFMSDに、溶出溶液 30 μL加えて遠心した(10,000 rpm、1 min)。溶出溶液は次の6種類の溶液を準備し、それぞれ実験を行った。溶出溶液1 0.01 mol/L pH 8.5 Tris-HCl緩衝液。溶出溶液2 0.01 mol/L pH 8.5 Tris-HCl緩衝液に 4 mmol/L EDTAを添加した。溶出溶液3 0.01 mol/L pH 8.5 Tris-HCl緩衝液に 20 mmol/L EDTAを添加した。溶出溶液4 0.01 mol/L pH 8.5 Tris-HCl緩衝液に 40 mmol/L EDTAを添加した。溶出溶液5 0.01 mol/L pH 8.5 Tris-HCl緩衝液に100 mmol/L EDTAを添加した。溶出溶液6 0.01 mol/L pH 8.5 Tris-HCl緩衝液に200 mmol/L EDTAを添加した。遠心濾液は溶出性能評価に供した。単離精製性能の評価はアガロースゲル電気泳動分析にもとづいて実施した。アガロースゲル濃度は1 %(w/v)とした。アガロースゲルは和光純薬製アガロースSを使用して調製した。各ウェルに負荷する試量体積は5 μLとした。単離精製したDNAは、アガロースゲル電気泳動分析を行い、収率を評価した。電気泳動装置はコスモバイオ社製 I-myrunncを用いた。電気泳動条件を以下に示す : 電気泳動用緩衝液、 TAE緩衝液;試料負荷容量(各ウェル当たり)、 5 μL;負荷電圧、50 V;泳動時間、60 min。 代表的なアガロースゲル電気泳動バンドパターンを図10に示す。 AC効果に基づくDNAの単離精製の場合、吸着濾液を負荷したレーンにおいてDNAバンドは全く検出されなかった。この結果から、100 %の効率でDNAが吸着されたこと、及び洗浄操作においてDNAの脱着がおこらないことがわかった。 図10で溶出濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、溶出溶液に添加したEDTA濃度40 mmol/Lまでは添加したEDTA添加量を増加させるにつれてアガロースゲルバンドパターンは明瞭に検出された。このことより、EDTAを添加することによって溶出性能が向上することが判明した。実施例10<種々のアンチカオトロピックイオンの検討> DNA試料として、標準DNA(ニッポンジーン製ラダーDNA,200 bp〜10 kbp, DNA質量体積濃度,144 ng/μL)を用いた。DNA試料5μL(DNA,720 ng)に対し、AC溶媒を5倍容量となるように加えてボルテックスミキサーで混和した。AC溶媒は次の6種類の溶液を準備した。AC溶媒1 8.0 mol/L塩化アンモニウム水溶液AC溶媒2 16.0 mol/L酢酸ナトリウム水溶液AC溶媒3 6.0 mol/L硫酸アンモニウム水溶液AC溶媒4 25.0 mol/L酢酸アンモニウム水溶液AC溶媒5 5.0 mol/L硫酸マグネシウム七水和物水溶液AC溶媒6 2.0 mol/Lフッ化ナトリウム水溶液 このDNA溶液をMFMSDに負荷した後,溶媒を遠心除去した(10,000 rpm, 1 min)。遠心機は日立工機社製を用いた。遠心濾液は吸着性能に供した。次に、DNAを吸着させたMFMSDに対して,PE洗浄緩衝液500 μLを添加して遠心した(10,000 rpm, 1 min)。遠心濾液は廃棄した。さらに遠心操作(10,000 rpm, 1 min)により溶媒を除いた。次に、MFMSDに、溶出溶液 30 μL加えて遠心した(10,000 rpm, 1 min)。遠心濾液は溶出性能評価に供した。単離精製性能の評価はアガロースゲル電気泳動分析にもとづいて実施した。アガロースゲル濃度は1 %(w/v)とした。アガロースゲルには和光純薬製アガロースSを使用して調製した。各ウェルに負荷する試量体積は5?Lとした。単離精製したDNAは、アガロースゲル電気泳動分析を行い、収率を評価した。電気泳動装置はコスモバイオ社製 I-myrunncを用いた。電気泳動条件を以下に示す : 電気泳動用緩衝液, TAE緩衝液;試量負荷量(各ウェル), 5 μL;負荷電圧,50 V;泳動時間,60 min。 代表的なアガロースゲル電気泳動バンドパターンを図11、12に示す。 図11(A)及び図12(A) 吸着濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、DNAの存在を示すバンドは8.0 mol/L塩化アンモニウム水溶液、16.0 mol/L酢酸ナトリウム水溶液、25.0 mol/L酢酸アンモニウム水溶液、5.0 mol/L硫酸マグネシウム七水和物水溶液及び2.0 mol/Lフッ化ナトリウム水溶液において検出された(図11(A) Lane 2〜5、図12(A) Lane 2〜7)。 図11(B)及び図12(B) 溶出濾液のアガロースゲル電気泳動バンドパターンに示すように、溶出緩衝液を通して得られた溶出濾液は、8.0 mol/L塩化アンモニウム水溶液、 6.0 mol/L硫酸アンモニウム水溶液、5.0 mol/L硫酸マグネシウム七水和物水溶液及び、2.0 mol/Lフッ化ナトリウム水溶液において、標準試料に含まれる全てのDNAバンドが検出された(図11(A) Lane10,11,14,15、図12(A) Lane 12〜15)。 これらの実験結果より、AC効果に基づくDNA単離精製を比較した結果、硫酸アンモニウムを用いた系において最も優れた単離精製が達成された。他のアンチカオトロピックイオンもまた、AC効果を示すが、DNAの単離精製の観点からは硫酸アンモニウムと比べて性能的には劣っていた。標準DNAのアガロースゲル電気泳動バンドパターンアガロースゲル電気泳動バンドパターン種々のAC塩を用いた場合のアガロースゲル電気泳動バンドパターン種々の溶媒を用いた場合のアガロースゲル電気泳動バンドパターンPCR増幅生成物のアガロースゲル電気泳動バンドパターン微生物ゲノムDNAのアガロースゲル電気泳動バンドパターンアガロースゲル電気泳動バンドパターン電気泳動分析結果パターンPCR産物に対するAC塩濃度効果キレート試薬添加の効果種々のAC塩を用いた場合のアガロースゲル電気泳動バンドパターン種々のAC塩を用いた場合のアガロースゲル電気泳動バンドパターン生体試料をアンチカオトロピック塩を含む物質と混合し、混合物質を固定相に吸着させた後、当該固定相を洗浄し、当該混合物質を当該固定相から遊離させることを特徴とする核酸の精製法。アンチカオトロピック塩が硫酸イオン、酢酸陰イオン、フッ化物イオン、塩化物イオンを生じる塩である請求項1記載の核酸の精製法。アンチカオトロピック塩を緩衝溶液中に共存させてなる請求項1又は2記載の核酸の精製法。緩衝溶液中にキレート試薬を含ませてなる請求項1乃至3記載の核酸の精製法。固定相がシリカ粒子、シリカ繊維、一体型多孔質シリカである請求項1記載の核酸の精製法。 【課題】本発明は、多種多様なDNA分子を100 %の回収率で分離精製することが可能となる核酸の分離精製法が提供される。【解決手段】本発明は、生体試料をアンチカオトロピック(AC)効果に起因するファン・デル・ワールス相互作用に基づく。AC効果はACイオンが水の構造を安定化させることによって生じる。水の構造の安定化は,解離性リン酸基以外の解離を抑制し,DNA分子の構造の安定化をもたらす。結果的に,シラノール基とDNA分子間は,強いイオン結合ではなくファン・デル・ワールス相互作用に分類される双極子-イオン相互作用と双極子-双極子相互作用と塩基含有率が支配的となる。双極子-イオン相互作用はDNA分子をシリカゲル表面上に吸着させる点において十分な静電引力を発現させる。且つ非特異的な吸着の回避が可能となる。即ちDNAの分子サイズや構成塩基のシーケンスに依存することなく,すべてのDNA分子を固定相に捕らえることが可能となる。【選択図】 図2