生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_新規微生物産生酵素
出願番号:2005168543
年次:2005
IPC分類:7,C12N9/24


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亦野 浩 JP 2005253476 公開特許公報(A) 20050922 2005168543 20050608 新規微生物産生酵素 株式会社メニコン 000138082 朝日奈 宗太 100065226 秋山 文男 100117112 亦野 浩 JP 1999203730 19990716 7C12N9/24C12N9/24C12R1:01 JPC12N9/24C12N9/24C12R1:01 2 2000210497 20000711 OL 16 4B050 4B050CC01 4B050CC08 4B050DD02 4B050FF03E 4B050FF04E 4B050LL10 本発明は、セルロモナス(Cellulomonas)属に属する新規微生物K32A株、および同微生物が産生する繊維性多糖類分解酵素に関する。また本発明は、同微生物の菌体、菌体培養液、菌体もしくは菌体培養液の処理物またはそれらから分離した繊維性多糖類分解酵素を用いる植物繊維分解方法に関する。 農作物の収穫後の植物体などの植物繊維性廃棄物は、従来、おもに焼却などにより処分されている。しかしながら、植物繊維性廃棄物を焼却処分することについては、種々問題点が指摘されている。たとえば、コメの生産における稲ワラや籾殻は収穫後には不用物となり、コンバインなどで細かく裁断したのちに焼却処分されてきたが、焼却の際の噴煙などによる公害が生じており、社会問題として焼却処分の禁止などが検討されている。 植物繊維性廃棄物の焼却処分にかわる処分方法として、植物繊維性廃棄物を分解することができるセルラーゼなどの多糖類分解酵素やセルラーゼ産生菌などの微生物の利用による処理方法が注目されている。しかしながら、既存のセルラーゼなどの多糖類分解酵素およびそれら産生微生物では、植物繊維性廃棄物の分解能力が低く、所期の目的を達成するにはきわめて不充分であった。 植物繊維性廃棄物を難分解性の構造にしているのが、セルロースおよびヘミセルロースである。植物繊維性廃棄物を処理して有効に利用するためには、第一段階としてセルロースおよび/またはヘミセルロースを部分的にでも加水分解することが必要となる。セルロースおよび/またはヘミセルロースを加水分解する方法としては、高濃度の酸による方法と酵素による方法があるが、田畑における分解方法としては酵素処理が望ましい。 本発明は、セルロース、ヘミセルロースおよびキシロース等に対し強力な分解能を有する多糖類分解酵素を産生する新規な微生物、および同微生物が産生する繊維性多糖類分解酵素を提供することを目的とする。さらに本発明は、同微生物、その培養液または同微生物産生多糖類分解酵素を用いる植物繊維、たとえば植物繊維性廃棄物、の分解方法を提供することを目的とする。 本発明にかかる微生物は、新潟県の水田土壌から分離されたセルロモナス属に属する新規微生物であり、当該微生物は植物繊維、たとえば植物繊維性廃棄物、に対し強力な分解能を示す酵素を産生するという産業上優れた有用性を有することを見出し、本発明を完成するにいたった。 本発明にかかる当該セルロモナス属微生物の菌学的性質は、次に示すとおりである。A.形態的特徴(1)グラム染色:陽性(2)形態:培養初期においては、0.3〜0.5μm×2〜3μm内外の小さな桿菌であるが、培養期間が長くなるにつれて、分枝したり、球状の形態をとる多形性桿菌である。(3)内生胞子:陰性(4)運動性:有(5)鞭毛の着生状態:極鞭毛B.各種培地における生育状態(1)普通寒天培地:小さい凸状のスムースコロニーを形成。3日間以上の培養で黄色の色素を産生する。(2)ペプトン・トリプトン・酵母エキス・グルコース寒天培地(PTYG寒天培地(ATCC Medium #464)であり、組成は培地1000mLあたりペプトン5g、トリプトン5g、酵母エキス5g、グルコース5g、寒天15gである。):盛り上がり厚いコロニーを形成。C.生理的性質(1)最適発育温度:35〜40℃(2)最適発育pH:6.8〜7.2(3)普通寒天培地65℃での発育:65℃24時間では発育せず。(4)基質の利用性1.α−シクロデキストリン :利用できず2.β−シクロデキストリン :利用3.デキストリン :利用4.グリコーゲン :利用5.イヌリン :利用できず6.マンナン :利用できず7.ツイーン40 :利用できず8.ツイーン80 :利用できず9.N−アセチル−D−グルコサミン :利用できず10.N−アセチル−D−マンノサミン :利用できず11.アミグダリン :利用12.L−アラビノース :利用13.D−アラビトール :利用できず14.アルブチン :利用15.セロビオース :利用16.D−フルクトース :利用17.L−フコース :利用18.D−ガラクトース :利用19.D−ガラクツロン酸 :利用できず20.ゲンチオビオース :利用21.D−グルコン酸 :利用できず22.α−D−グルコース :利用23.m−イノシトール :利用できず24.α−D−ラクトース :利用25.ラクツロース :利用26.マルトース :利用27.マルトトリオース :利用28.D−マンニトール :利用できず29.D−マンノース :利用できず30.D−メレジトース :利用できず31.D−メリビオース :利用32.α−メチル−D−ガラクトシド :利用33.β−メチル−D−ガラクトシド :利用34.3−メチルグルコース :利用35.α−メチル−D−グルコシド :利用36.β−メチル−D−グルコシド :利用37.α−メチル−D−マンノシド :利用できず38.パラチノース :利用39.D−プシコース :利用40.D−ラフィノース :利用できず41.L−ラムノース :利用できず42.D−リボース :利用43.サリシン :利用44.セドヘプツロサン :利用できず45.D−ソルビトール :利用46.スタキオース :利用できず47.スクロース :利用48.D−タガトース :利用できず49.D−トレハロース :利用50.ツラノース :利用51.キシリトール :利用できず52.D−キシロース :利用53.酢酸 :利用54.α−ヒドロキシ酪酸 :利用できず55.β−ヒドロキシ酪酸 :利用できず56.γ−ヒドロキシ酪酸 :利用できず57.p−ヒドロキシフェニル酢酸 :利用できず58.α−ケトグルタル酸 :利用できず59.α−ケト吉草酸 :利用できず60.ラクトアミド :利用できず61.D−乳酸メチルエステル :利用できず62.L−乳酸 :利用できず63.D−リンゴ酸 :利用できず64.L−リンゴ酸 :利用できず65.ピルビン酸メチル :利用66.コハク酸モノメチル :利用できず67.プロピオン酸 :利用できず68.ピルビン酸 :利用69.スクシンアミド酸 :利用できず70.コハク酸 :利用できず71.N−アセチル−L−グルタミン酸 :利用72.アラニンアミド :利用できず73.D−アラニン :利用できず74.L−アラニン :利用できず75.L−アラニルグリシン :利用できず76.L−アスパラギン :利用できず77.L−グルタミン酸 :利用できず78.グリシル−L−グルタミン酸 :利用できず79.L−ピログルタミン酸 :利用できず80.L−セリン :利用できず81.プトレッシン :利用できず82.2,3−ブタンジオール :利用できず83.グリセロール :利用84.アデノシン :利用85.2’−デオキシアデノシン :利用86.イノシン :利用87.チミジン :利用88.ウリジン :利用89.アデノシン−5’−一リン酸 :利用90.チミジン−5’−一リン酸 :利用91.ウリジン−5’−一リン酸 :利用92.フルクトース−6−リン酸 :利用できず93.グルコース−1−リン酸 :利用できず94.グルコース−6−リン酸 :利用できず95.D−L−α−グリセロールリン酸 :利用できず(5)ゼラチンの液化:液化する。(6)デンプンの加水分解:分解する。(7)セルラーゼの生成:生成(8)キシラーゼの生成:生成(9)メチルカルビノールアセチル反応(VP反応):陰性(10)クリステンゼンのクエン酸ナトリウム培地(チトラーテ培地)における硫化水素の産生:陰性(11)インドールの生成:陰性(12)硝酸塩還元:還元(13)尿素の分解:分解せず。(14)酸素要求性:通性嫌気性(15)カタラーゼの生成:生成(16)オキシターゼの生成:生成(17)DNエース(DNase)の生成:陰性D.遺伝的性質DNAのGC含量(モル%):77.5〜78.5%(Tm) 本発明にかかる当該微生物は、水田畑土壌、森林土壌、倒木腐朽部を採取し、これを滅菌した界面活性剤添加生理的食塩水に懸濁し、この懸濁液を、カルボキシメチルセルロースを添加した普通寒天培地に塗布後25〜30℃で培養し、カルボキシメチルセルロースを加水分解せしめるコロニーを、ハロー形成の有無により判断し、ハロー形成の認められたコロニーを選抜して分離することができる。また分離された当該微生物の単離・精製は、たとえばさらに必要に応じて、結晶性セルロース(商品名:Avicel PH−101、旭化成工業(株)製)をリン酸処理して得られたアモルファスセルロースを添加した培地で同様に選抜し、さらに結晶性セルロース(同上)を添加した培地で同様に選抜し、最後にキシランを添加した培地で同様に選抜するなど、4段階の選抜工程を経て、容易に実施することができる。 本微生物の性質をバージーのシステマチック バクテリオロジー 2巻(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology Vol.2)を参考に検索すると、前記A.形態的特徴およびC.生理的特徴からグラム陽性、セルラーゼ産生であると判断された。市販の基質利用性に基づいた微生物同定システム(微生物検索同定バイオログシステム、バイオログ社製)を用いた評価では、ジョネシア デニトリフィカンス(Jonesia denitrificans)が最も近縁であると考えられた。図1に前記同定システムにより作成した基質利用性に基づく系統樹を示す。しかしながら、DNAのGC含量は、ジョネシア デニトリフィカンスは40%程度であるのに対して、本微生物は既知のセルロモナス属のGC含量71−76%(Tm)をわずかに上回る77.5−78.5%(Tm)であり、明らかにジョネシア デニトリフィカンスとは異なる。 一方、16S rRNAに相補的なDNA配列の相同性比較を基にした系統樹(図2)においては、本微生物は明らかにセルロモナス属に属する。そして、近縁菌としてはセルロモナス フラビゲナ(Cellulomonas flavigena)、セルロモナス ゲリダ(C. gelida)、セルロモナス フィミ(C. fimi)などが存在する。しかしながら、運動性の有無、D−リボース、D−グルコン酸などの各種基質利用性の点でセルロモナス フラビゲナとは異なり、また同様にラクトースの利用の点でセルロモナス ゲリダおよびセルロモナス フィミとも明らかに異なる。表1に16S rRNAに相補的なDNA配列の相同性比較を基にした系統樹(図2)により最も近縁であることが明らかになったセルロモナス フラビゲナと本微生物の基質利用性の違いを示す。 このように、16S rRNAに相補的なDNA配列の相同性では、いずれのセルロモナス属の既知の種とも一致せず、また、DNAのGC含量においては報告されているセルロモナス属のどの種よりも高い含有量(77.5−78.5%)を示す。しかしながら、電子顕微鏡による鞭毛の着生状態の観察からは(図3)、セルロモナス属に一般的な極鞭毛であることが認められ、本微生物はセルロモナス属微生物の一種であると考えられる。なお、図3において、1は本発明のセルロモナス属微生物を、2は鞭毛を示す。 以上の点から、本微生物はセルロモナス属の微生物ではあるものの、既記載のセルロモナス属のいずれかの種に分類することが適当ではないと考えられる。これらのことから、本発明者は、本微生物を新規微生物と認定し、セルロモナス属微生物K32A株(Cellulomonas sp. K32A)と命名した。本微生物は国際寄託機関である通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に1999年6月25日に国際寄託されており、その菌受託番号はFERM BP−6766である。 本発明によれば、植物繊維を難分解性にしているセルロース、ヘミセルロースおよびキシラン等に対し強い分解能を有する繊維性多糖類分解酵素を産生する新規な微生物、ならびに同微生物が産生する繊維性多糖類分解酵素を提供することができる。また当該微生物およびその産生酵素は室温または室温付近において植物繊維に対し強力な分解能を有するため、植物繊維性廃棄物を輸送することなく、分解処理することができる。 さらに当該微生物またはその産生酵素を用いることにより、稲ワラ、籾殻、麦ワラ、バッカス(サトウキビの絞り粕、とうもろこしの芯)、芋のつる、落葉などの植物繊維性廃棄物などを強力に分解することも可能となり、農業に関する分野にとどまらず、現在社会で大量に消費・廃棄されている植物繊維物質を効率よく分解処理することができる。 その上、これらの分解処理物は、単糖、または二単糖・三単糖その他のオリゴ糖などであるため、糖原料として再利用することもできる。 本発明によれば、当該微生物は、通常この技術分野で用いられる培地および培養条件下で培養することができる。炭素源としては、濾紙、セルロース粉末などの各種繊維質原料を、窒素源としては硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸塩およびペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー、コーングルーテンミール、綿実油、脱脂大豆などの有機物を用いることができる。その他微量の無機金属類、ビタミン類、成長促進因子、たとえばチアミン、ビオチンを含む酵母エキスなどを添加してもよい。これらの培地成分は本微生物の生育を阻害しない濃度であればよく、炭素源は通常0.025〜0.5重量%用いるのが適当である。窒素源は通常0.05〜1重量%用いるのが適当である。培地は通常pH6.5〜8.5、好ましくはpH6.8〜7.5、さらに好ましくはpH7.0〜7.2に調整し、滅菌して使用する。培養温度の範囲は本微生物が生育し得る温度であればよく、通常20〜40℃が適当である。本微生物を液体培養するばあいは、振とう培養または通気撹拌培養するのが好ましい。培養時間は種々の培養条件によって異なるが、振とう培養または通気撹拌培養のばあいは1〜5日間、好ましくは2〜3日間が適当である。 得られた培養液は、所望により、遠心分離または濾過することにより、粗酵素溶液を得ることができる。当該粗酵素溶液は、さらに所望とあれば、ウルトラフィルトレーションによる濃縮または硫安塩析法、溶媒沈殿法、透析法などの公知の方法を適用して粗酵素粉末としてもよい。 またさらに、当該培養液、粗酵素溶液および粗酵素は、イオン交換クロマトグラフィーによる吸着および溶出、分子量の差によるゲル濾過法等一般的酵素精製法を適宜選択、組み合わせて精製することもできる。前記培養液、粗酵素溶液または精製酵素として得られる本発明の繊維性多糖類分解酵素はセルロースのみではなく、農業上の稲ワラ、麦ワラなどの植物繊維性廃棄物を分解し、さらに、これまで分解が難しいとされた籾殻なども分解する強力なセルラーゼおよびキシラーゼを分泌するという特徴を有する。また、植物に含まれるヘミセルロースの本体であるキシロースやプルランをも分解し、これらの酵素が同時に働くことにより天然の多糖類を容易に分解することができるという特徴も有する。さらに当該多糖類分解酵素は、酵素活性の最適pHは中性域であるが、pH6〜10の間で活性の80%以上を維持し、温度に関しては、65℃まで活性を維持する。 本微生物は、その産生酵素、とくにセルラーゼの作用により、セルロースをたとえばセロビオースにまで分解し、また稲ワラを基質として用いた場合にも、たとえば二単糖を生成させることができる。すなわち、本微生物を用いれば、従来産業廃棄物とされてきた植物繊維性廃棄物から単糖、または二単糖・三単糖その他のオリゴ糖を生産することができる。 当該繊維性多糖類分解酵素の理化学的性質をより具体的に示すと、次のとおりである。(1)作用:セルロース、キシロース、プルラン等の繊維質に作用し、これらを可溶化、分解する。(2)基質特異性:カルボキシメチルセルロース、アモルファスセルロース、結晶性セルロース、キシラン、キチンによく作用する。(3)至適pH:pH4〜11で優れた多糖類分解能を有する。カルボキシメチルセルロース分解活性の至適pHは、pH6〜9である。(4)至適温度:20℃〜60℃で強いカルボキシメチルセルロース分解活性を示し、カルボキシメチルセルロース分解活性の至適温度は50℃である。(5)酵素組成:9個の酵素の混合物である。本発明の前記培養液または粗酵素溶液をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分画したところ、図6に示すとおり、CbpA、CbpB、CbpC、CbpD、CbpE、CbpF、CbpG、CbpH、CbpIの9個の画分を与えた。ここでCbpは、セルロース結合タンパク質(cellulose binding protein)を意味している。またこれら各画分のエンドグカナーゼ、エクソグルカナーゼおよびキシラナーゼ活性は表5記載のとおりである。 さらに、分画された9個の酵素は、アミノ末端に次に示すアミノ酸配列を有する。アミノ酸配列の決定は、アクリルアミドゲルから各画分を採取し、公知の方法(Matudaira.P.、1987年、 J.Biol.Chem. 第262号、10035頁〜10038頁)で、アミノ酸分析装置(商品名:Procise 492 gas-phase sequencer、パーキン−エルマー社(Perkin-Elmer)製)により分析した。その結果を表2に示す。(6)分子量:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定した推定分子量は、CbpA 130kDa、CbpB 100kDa、CbpC 90kDa、CbpD 80kDa、CbpE 73kDa、CbpF 65kDa、CbpG 62kDa、CbpH 53kDa、CbpI 45kDaである。 本発明によれば、植物繊維の分解反応は、前記培養によって得た微生物の菌体、菌体培養液またはそれらの処理物、あるいは菌体もしくは菌体培養液から分離した繊維性多糖類分解酵素に基質となる植物繊維を作用させて実施することができる。当該分解反応において、菌体の処理物としては、たとえば洗浄菌体、乾燥菌体、菌体磨砕物、菌体の自己消化物、超音波処理物、菌体抽出物等をいずれも使用でき、また培養処理液としては、遠心分離、濾過または共沈等の慣用手段によって培養液から菌体細胞壁などの不溶物を除去したもの、ないしそれらの濃縮液をいずれも使用することができる。菌体もしくは菌体培養液から分離された繊維性多糖類分解酵素は、通常、前記9種の混合物のまま用いるのが好ましく、また所望とあれば、9種の酵素混合物のうち任意の組合せからなる酵素混合物として用いてもよい。一方、当該分解反応に際し、基質としては、植物繊維を主な構成成分とするものであればとくに限定されることはなく、幅広く使用することができる。このような基質の具体例としては、稲作や小麦生産、とうもろこし、サトウキビ等の穀物、豆類、芋類の生産において排出される植物繊維性廃棄物、たとえば稲ワラ、籾殻、麦ワラ、バッカス(サトウキビの絞り粕、トウモロコシの芯)、芋のつる等、さらには落葉を挙げることができる。また、現在大量に消費されている紙、板紙および紙製品、またはパルプ、ビスコース、木材、木粉、綿毛等を基質として用いることもできる。当該分解反応の反応条件は、たとえば酵素の使用量、基質の種類に応じて適宜選択すれば良く、溶媒としては、通常、水、含水アルコール等を用いるのが好ましい。 当該分解反応は、pH約6〜約9で実施することができる。また反応温度にとくに制約はなく、一般的には室温、たとえば約25℃〜約30℃で好適に実施することができる。 本発明を以下に実施例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 実施例1 前培養には50mLのL−Broth(酵母エキス 5g/L、ペプトン 10g/L、塩化ナトリウム 5g/L)を用いた。該前培養培地にK32A株のシングルコロニーを接種し、旋回振とう機(商品名:G10 Gyrotory shaker、ニューブランスウィックサイエンティフィック社(New Brunswick scientific)製)にて37℃で一晩かけて振とう培養(250rpm、振幅10mm)することにより、前培養液を得る。本培養の培地には、0.05%アビセル(商品名)を添加した1/5PTY培地(酵母エキス1g/L、トリプトン 1g/L、塩化ナトリウム 1g/L)250mLを用いた。該本培養培地に前培養液を1%接種して、基質のアビセルが消失するまで37℃で振とう培養(250rpm、振幅10mm)する(約72時間)。培養終了後、遠心分離(6000rpm、10分間)して培養上清を得る。培養上清をろ過滅菌し、硫安を加えて80%飽和硫安とし上清中のタンパク質を沈殿させた。沈殿したタンパク質を50mM モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、10mM CaCl2および1mM NaN3の緩衝液に溶解透析し、これを粗酵素溶液とした。調製した粗酵素溶液中のタンパク質濃度は2mg/mLであった。 実施例2 実施例1と同様にして粗酵素溶液を得る。該粗酵素溶液に含まれる多糖類分解酵素の酵素活性のpH依存性の測定は、50mMリン酸−クエン酸緩衝液、50mMリン酸緩衝液または50mMトリス塩酸緩衝液を用いて37℃で行なった。基質として0.1gのカルボキシメチルセルロースを用い、粗酵素溶液10mL(タンパク質濃度5μg/mL)と30分間反応させ、還元糖の産生量を測定した。その結果、図4に示すとおり、少なくともpH4〜11の範囲で明らかな活性が認められ、最適pHは6〜9であった。 実施例3 実施例1と同様にして粗酵素溶液を得る。該粗酵素溶液に含まれる多糖類分解酵素の酵素活性の温度依存性は、10mLの粗酵素溶液(タンパク質濃度5μg/mL)、基質として0.1gのカルボキシメチルセルロースを用い、pH7.0の50mMリン酸−クエン酸緩衝液またはpH10の50mMトリス塩酸緩衝液を用いて、20℃〜70℃で30分間反応させ、還元糖の産生量を測定した。その結果、図5に示すとおり、20℃〜60℃にわたって明らかな活性が認められ、最適温度は50℃であった。 実施例4 実施例1と同様にして粗酵素溶液を得る。50mM モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液(pH7.0)、10mM CaCl2、1mM NaN3および1%の基質からなる10mLの反応溶液を調製する。この反応溶液を30℃でプレインキュベーションした後、100μgの粗酵素を加え、37℃で30分間反応を行なった。反応終了後、1mLのサンプルを採取し、遠心(15000×g、5分間)して不溶物を除き、3,5−ジニトロサリチル酸法により上清の還元糖の産生量を測定した。結果を表3に示す。なお、スタンダードはグルコースを用いた。 実施例5 実施例1と同様にして粗酵素溶液を得る。50mM モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液(pH7.0)、10mM CaCl2、1mM NaN3および1%の基質からなる10mLの反応溶液を調製する。この反応溶液を30℃でプレインキュベーションした後、100μgの粗酵素を加え、37℃で反応を開始した。反応開始後、15分間毎に1mLのサンプルを採取し、遠心(15000×g、5分間)して不溶物を除き、3,5−ジニトロサリチル酸法により上清の還元糖の産生量を測定した。結果を表4に示す。なお、スタンダードはグルコースを用いた。 実施例6 実施例1と同様にして粗酵素溶液を得る。該粗酵素溶液にアビセル(商品名)を1g加え、氷温で10分間結合させる。ついで、遠心(4500×g、5分間)で沈殿物を集め、これに5mLの1M NaCl添加50mMリン酸−12mMクエン酸緩衝液pH7.0を加え撹拌し、再度遠心操作を行なう。次に5mLの50mMリン酸−12mMクエン酸緩衝液pH7.0を加えて撹拌遠心を2回実施し、最後に5mLの滅菌水で同様に洗浄を1回行なう。セルラーゼが結合したアビセル(商品名)に2mLのエチレングリコールを加え、結合した画分を溶出し、この画分をバインディングフラクションとした。このバインディングフラクションを8%のゲルを用いてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により展開し、クーマシーブリリアントブルー(CBB)染色によって展開されたタンパク質を検出した。 その結果、当該粗酵素溶液に含まれる多糖類分解酵素は、図6に示すとおり、CbpA、CbpB、CbpC、CbpD、CbpE、CbpF、CbpG、CbpHおよびCbpIからなる9個のバンドとして検出された。 さらに、各タンパク質の定性を行なった。各バンドを採取し、それぞれのエンドグルカナーゼ活性およびキシラナーゼ活性を従来法(Walfgang. H. 1987年、Anatical Biochem.、第164号、72頁〜77頁)により測定した。エンドグルカナーゼ活性の測定には基質としてカルボキシメチルセルロースを用い、キシラナーゼ活性の測定には基質としてOst−speltキシランを用いた。またエクソグルカナーゼ活性は、基質を含まないSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を実施した後、前記の従来法にしたがってSDSを除いた。ついで、これに蛍光基質である4−メチルウンベリフェリルd−セルロバイオサイド(4-methylumbelliferyl d-cellobioside)を作用させ、ブラックライト(360nm)で観察し、蛍光が観察されたタンパク質バンドをエクソグルカナーゼ活性ありと判断した。これらの結果を表5に示す。 実施例7 実施例1にしたがって粗酵素溶液を調製した。粗酵素溶液5mL中に基質として1gの稲ワラまたは籾殻を加え、指定の温度で72時間および1週間反応させた。反応終了後に遠心(3500rpm、2000×gで15分間)し、得られた沈殿物に滅菌水を加えて遠心機(商品名:KN−70、クボタ製)で遠心(3500rpm、15分間)することにより3回洗浄し、凍結乾燥後に沈殿物の重量を天秤で測定した。反応後の重量を初期重量から引いた重量が初期重量に占める百分率を除去率とした。この結果を表6および表7に示す。 実施例8 10mM CaCl2および1mM NaN3を含んだ50mM モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液(pH 7.0)に基質として籾殻を1%加えたもの50mLに、K32A株の粗酵素溶液をタンパク質量として1mg加え、50℃で24時間保温した。保温後、遠心分離し、沈殿画分を凍結乾燥して、乾燥重量を対照群(粗酵素溶液を加えなかったもの)と比較した。その結果、粗酵素溶液を加えたものは対照群に比較しその重量が30−32%減少していた。また、目視により遠心分離前の溶液を観察すると、籾殻が一部溶解していることが観察された。セルロモナス属微生物K32A株の基質利用性に基づき、バイオログ社データベースを用いて作成した系統樹を示す図である。セルロモナス属微生物K32A株の16S rRNAに相補的なDNA配列の相同性比較に基づき、BLAST(データベース)を用いて作成した系統樹を示す図である。セルロモナス属微生物K32A株の鞭毛の着生状態(倍率:1万倍)を示す図である。セルロモナス属微生物K32A株産生セルラーゼ活性のpH依存性を示すグラフである。セルロモナス属微生物K32A株産生セルラーゼ活性の温度依存性を示すグラフである。K32A産生多糖類分解酵素とアビセルとの結合実験を示す図である。符号の説明 1 セルロモナス属微生物K32A株 2 鞭毛配列番号1:セルロース結合タンパク質として同定されたアミノ末端アミノ酸配列配列番号2:セルロース結合タンパク質として同定されたアミノ末端アミノ酸配列配列番号3:セルロース結合タンパク質として同定されたアミノ末端アミノ酸配列配列番号4:セルロース結合タンパク質として同定されたアミノ末端アミノ酸配列配列番号5:セルロース結合タンパク質として同定されたアミノ末端アミノ酸配列配列番号6:セルロース結合タンパク質として同定されたアミノ末端アミノ酸配列配列番号7:セルロース結合タンパク質として同定されたアミノ末端アミノ酸配列配列番号8:セルロース結合タンパク質として同定されたアミノ末端アミノ酸配列配列番号9:セルロース結合タンパク質として同定されたアミノ末端アミノ酸配列次の理化学的性質を有する繊維性多糖類分解酵素(1)作用:セルロース、キシロース、プルラン等の繊維質に作用し、これらを可溶化、分解する。(2)基質特異性:カルボキシメチルセルロース、アモルファスセルロース、結晶性セルロース、キシラン、キチンによく作用する。(3)至適pH:pH4〜11で優れた多糖類分解能を有する。カルボキシメチルセルロース分解活性の至適pHは、pH6〜9である。(4)至適温度:20〜60℃で強いカルボキシメチルセルロース分解活性を示し、カルボキシメチルセルロース分解活性の至適温度は50℃である。(5)酵素組成:9個の酵素の混合物である。(6)分子量:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定した推定分子量は約130kDa、約100kDa、約90kDa、約80kDa、約73kDa、約65kDa、約62kDa、約53kDaおよび約45kDaである。セルロモナス属微生物K32A株が産生する多糖類分解酵素であることを特徴とする請求項1記載の繊維性多糖類分解酵素。 【課題】本発明は、植物繊維性廃棄物の分解をきわめて高効率に行ないうる酵素を分泌する新規な微生物を提供することを目的とする。さらに本発明は、当該微生物およびその産生酵素を用いる植物繊維、たとえば植物繊維性廃棄物、の分解方法を提供することを目的とする。【解決手段】水田土壌等から、各種植物繊維性に対し強力な分解能を発揮する新規セルロモナス属微生物K32A株を分離・採取した。当該微生物の菌体、菌体培養液またはそれらから分離された多糖類分解酵素をセルロース、稲ワラ等の植物繊維性廃棄物に作用させることにより、高効率でこれを分解処理することができる。【選択図】なし配列表


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