生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_リコンビナントタンパク質の新規な精製法
出願番号:2005154433
年次:2006
IPC分類:C07K 14/475,C07K 1/22,C12P 21/02


特許情報キャッシュ

三宅 正志 JP 2006327991 公開特許公報(A) 20061207 2005154433 20050526 リコンビナントタンパク質の新規な精製法 日本全薬工業株式会社 591281220 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 三宅 正志 C07K 14/475 20060101AFI20061110BHJP C07K 1/22 20060101ALI20061110BHJP C12P 21/02 20060101ALI20061110BHJP JPC07K14/475C07K1/22C12P21/02 C 8 OL 11 4B064 4H045 4B064AG01 4B064CA02 4B064CA10 4B064CA19 4B064CC24 4B064CE11 4B064CE12 4B064DA01 4H045AA20 4H045BA10 4H045CA40 4H045DA20 4H045EA28 4H045FA74 4H045GA23 4H045GA26 本発明は、組換えタンパク質を精製する方法、例えばカイコを用いて産生させた組換えタンパク質をカイコ体液から精製する方法に関し、硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィー精製、または陽イオン交換クロマトグラフィーを用いた精製工程に次いで硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィー精製の両方より精製する方法に関する。 現在バキュロウイルスベクターによる組換えタンパク質の発現系が広く医薬品等の有用タンパク質の生産方法として利用されている。バキュロウイルス系は、培養昆虫細胞のみならず、昆虫の個体そのものを用いても有用な組換えタンパク質を発現させることが可能である。昆虫個体を用いた場合、培養細胞を用いた場合に比べ、より低コストでかつ効率的に組換えタンパク質を生産することができる。特に、カイコは大量飼育の技術が確立しているため、有用な組換えタンパク質を生産する昆虫工場として用いられている(特許文献1参照)。 カイコ個体を用いて生産した組換えタンパク質は、カイコの体液から精製する必要がある。しかし、カイコの体液は粘性が高くまた不純物も非常に多く含まれているため、精製に多数の工程を要し、最終的な収率を高くすることも容易ではなかった。特に、肝細胞増殖因子(以下、HGFと略す)をはじめとする有用タンパク質については、カイコ由来の夾雑タンパク質の影響により医薬品として使用するために十分な高度な精製方法は確立されていなかった。特開平6-209785号公報 本発明は、少ない工程数で組換えタンパク質を精製し、例えば組換えタンパク質を含むカイコ体液から少ない工程数で組換えタンパク質を精製し、医薬品として使用するために充分な純度の高い組換えタンパク質を高収率で得る方法を提供する。 本発明者らは、組換えHGFを精製する方法について鋭意検討を行い、先にヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いた精製、ヘパリンカラムクロマトグラフィーを用いた精製を組合せた精製法により、高純度の組換えタンパク質を高収率で得ることができることを見出した(特願2003-412122)。しかし、市販のヘパリンカラムは、ブタ小腸由来のヘパリンを用いているものが多く、精製工程でヘパリンがカラム担体から脱落し、精製品に混入するおそれがあった。BSEの問題等から、医薬品製造に生物由来物質を用いることも困難であり、生物由来物質を用いずにHGFを精製する方法が望まれていた。 本発明者らは、鋭意検討の結果、硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製すると上記の問題点なしに、高純度でHGF(組換えタンパク)を精製し得ること、さらに陽イオン交換クロマトグラフィーを用いた精製を組み合せることにより、さらに高純度で精製し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は以下のとおりである。[1] 少なくとも硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製する工程を含む、組換えタンパク質を精製する方法。[2] さらに、陽イオンクロマトグラフィーを用いて精製する工程を含む[1]の方法。[3] 陽イオンクロマトグラフィーを用いて精製する工程に次いで、硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製する工程を含む組換えタンパク質を精製する方法。[4] 組換えタンパク質がHGFである、[1]から[3]のいずれかの方法。[5] 組換えタンパク質が、昆虫虫体を用いて作製されたものである、[1]から[4]のいずれかの方法。[6] 昆虫がカイコである[5]の方法。[7] 組換えタンパク質が、細菌を用いて製造される、[1]から[4]のいずれかの方法。[8] 組換えタンパク質が、動物細胞を用いて製造される、[1]から[4]のいずれかの方法。 本発明の硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いる精製法により、組換えタンパク質を、生物由来物質を混入させることなく、低コストかつ高収率で精製することができる。また、さらに、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いる精製法を用いることにより、さらに高収率で組換えタンパク質を精製することができる。 本発明は、組換えタンパク質を、硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製する方法である。本発明はさらに、組換えタンパク質を、陽イオン交換クロマトグラフィーならびに硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製する方法である。 本発明の精製方法が対象とするタンパク質としてHGF、上皮細胞増殖因子(EGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)等のタンパク質が挙げられる。該タンパク質は、例えばカイコを用いて産生され、カイコから抽出した体液中に含まれている組換えタンパク質であるが、組換えタンパク質の製造法や由来は限定されない。例えば、ここでHGFは、ヒト、ラット、マウス、イヌ、ネコ等HGFを発現しているいずれの動物由来であってもよい。また、HGFは、シグナルペプチドを含むHGF、血清中の活性化酵素等の作用により活性化されるHGF前駆体(pro型HGF)、活性型HGF、NK4等のHGFの断片などであってもよい。さらに、その一部のアミノ酸が欠失、置換または付加されていてもよい。また、組換えタンパク質の製造法も限定されず、公知の遺伝子工学的手法を用いて、大腸菌、枯草菌等の細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞、昆虫虫体、動物体、植物体を利用して作製した組換えタンパク質が含まれる。 本発明の一つの方法で精製しようとする組換えタンパク質のカイコを用いた製造は公知の方法で行うことができる。すなわち、バキュロウイルス等を用いた昆虫ウイルス遺伝子発現ベクターに産生させようとする目的のタンパク質をコードする遺伝子を導入し、該ベクターウイルスを昆虫個体に感染させることにより昆虫体内で、組換えタンパク質を産生させることができる。 このようにして組換えタンパク質をカイコ生体内で産生させ、組換えタンパク質を含むカイコ体液を抽出する。カイコからのカイコ体液の抽出は、カイコを切開し、回収またはリン酸緩衝液、酢酸緩衝液等の適当な緩衝液に浸漬する。この際、カイコ体内のタンパク質分解酵素と目的の組換えタンパク質が接触することにより、目的タンパク質が分解されてしまうおそれがあるので、浸漬の際には、PMSF(フェニルメタンスルホニルフルオリド)、DFP(ジイソプロピルフルオロリン酸)等のタンパク質分解酵素阻害剤を添加することもできる。さらに、カイコ個体より得られた体液中には、バキュロウイルスが含まれているため、バキュロウイルスを不活性化する必要がある。バキュロウイルスの不活性化は、例えば、塩化ベンゾルコニウム等の逆性石鹸等の界面活性剤を用いることによって処理すればよい。 本発明の精製工程により、カイコ体液から組換えタンパク質を精製する前にカイコ体液から固形分等を除去する必要がある。固形分の除去は、遠心分離により行うことができるし、またフィルターを用いて濾過してもよい。固形分の除去のための遠心分離の条件として、例えば10,000〜20,000Gで10〜30分という条件が挙げられる。また、濾過のためのフィルターとしては、適当なポアサイズのグラスフィルター、メンブランフィルター等を用いればよい。 このようにしてカイコ個体から抽出し、固形分を除去した組換えタンパク質を含むカイコ体液または種々の方法で得た組換えタンパク質を硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィー又は陽イオン交換クロマトグラフィーおよび硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーの両方を用いて精製する。 陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる陽イオン交換担体としては、公知のものを用いることができる。カラム作製のためのイオン交換クロマトグラフィー用樹脂として、イオン交換基を結合させたSepharose、Sephadex、Cellulofine等のセルロース、アガロース、デキストラン、シリカ、合成ポリマー等の樹脂を用いることができ、陽イオン交換基としては、カルボキシメチル(CM)基や、それより酸性度の強いスルホプロピル(SP)基、リン酸基等を選択すればよい。これらの陽イオン交換担体をカラムに充填することにより、陽イオン交換クロマトグラフィー用カラムを製造することができる。また、市販の陽イオン交換カラムを用いることもできる。市販の陽イオン交換カラムとしては、東ソー社製TOYOPEARL SP 550C、Amersham Biosciences社製SP Sepharose FF、CM Sepharose FF、Applied Biosystems社製Poros 50 HS等がある。 硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体は、クロマトグラフィー担体に硫酸エステル(ROSO3HまたはROSO3R’;RおよびR’は炭水化物である)を結合させた、すなわち硫酸エステル化したものである。クロマトグラフィー担体への硫酸エステルの結合は公知の方法で行うことができる。クロマトグラフィー担体は、限定されないが種々のクロマトグラフィーにおいて担体として用い得るセルロース、アガロースやデキストランなどのポリサッカライド、シリカ、ビニルポリマー、アクリルアミドポリマー等が含まれる。クロマトグラフィー担体は、市販のものを用いればよく、例えば、Sephadex、Sephacel、Sepharose(以上、Pharmacia社)、Bio-Gel、Macro-Prep、Affi-Gel(以上、Bio Rad社)、セルロファイン(チッソ社)、アビセル(旭化成工業社)等がある。例えば、セルロース硫酸エステルは、セルロースを硫酸エステル化することにより得られ、セロビオース基の6位の炭素に硫酸基がエステル結合した構造を有する。セルロースは、球状の結晶セルロースまたは結晶領域および非結晶領域からなるセルロースを用いればよい。また、架橋ポリサッカライド硫酸エステルは、デキストラン、セルロース類、アガロースなどのポリサッカライドを、例えばエピクロルヒドリン、ジクロルヒドリン、ジブロムヒドリン、エチレングリコールビスエポキシプロピルエーテルなどの架橋剤で架橋して得られる架橋ポリサッカライドを硫酸エステル化することにより得られる。架橋ポリサッカライドをピリジン等の有機溶媒の存在下にクロルスルホン酸、無水酢酸等で処理することにより架橋ポリサッカライド硫酸エステルを得ることができる。また、硫酸エステル化されたクロマトグラフィー用ゲルも市販されており、例えば、硫酸化セルファイン(セルファインサルフェイト)(ミリポア社製)、硫酸化−セルロファイン(チッソ社製)等を用いることができる。 上記の硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体をカラムに充填することにより硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィー用カラムを製造することができる。 以下、組換えタンパク質として、HGFを用いた場合のクロマトグラフィー条件について記載する。但し、本発明はこの例に限定されることはなく、当業者ならば精製しようとする目的のタンパク質に応じて、用いる緩衝液等の種類、吸着・溶出条件等を適宜決定することができる。特に以下の例ではカイコ体液から組換えタンパク質を精製する条件を記載しているが、精製しようとする組換えタンパク質を含む試料の性状に応じて適宜変更を加えることができる。この際、例えば、新生化学実験講座1 タンパク質I 分離・精製・性質 日本生化学会編、東京化学同人 第1版1990年2月26日発行 等の記載を参考に条件を決定することが可能である。 まず、組換えHGFを含むカイコ体液を適当な緩衝液でpH4.0〜9.0、好ましくは6.0〜8.0に調整する。緩衝液は、0.1〜0.5 Mの塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを含むリン酸カリウム緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液等のリン酸緩衝液を用いればよく、緩衝液の濃度は10〜100 mMが好ましい。また、用いる緩衝液にはTween20、Tween80、TritonX100等の界面活性剤を0.001〜0.1%添加するのが好ましい。カイコ体液に対する緩衝液の容積比は、カイコ体液のpHが4.0〜9.0、好ましくは6.0〜8.0に調整され、かつカイコ体液の粘度が低くなりクロマトグラフィー担体と充分な接触が可能になるような比であり、例えば50 mMリン酸緩衝液pH6.5を用いる場合、カイコ体液1に対して、緩衝液を5〜20添加すればよい。 このようにして緩衝液を添加してpHを調整したカイコ体液を陽イオン交換クロマトグラフィー担体と接触させ、カイコ体液中の組換えタンパク質を陽イオン交換クロマトグラフィー担体に吸着させる。この際、カイコ体液と陽イオン交換クロマトグラフィー担体は、ビーカ等の容器を用いてバッチ法で接触させてもよいし、陽イオン交換クロマトグラフィー担体を充填したカラムに緩衝液を添加したカイコ体液を添加してもよい。陽イオン交換クロマトグラフィー担体は、カイコ体液と接触させる前にあらかじめ適当な緩衝液で平衡化しておく。平衡化には、カイコ体液に添加した緩衝液を用いればよく、バッチ法で精製する場合は、陽イオン交換クロマトグラフィー担体の10〜100倍量の緩衝液で1分〜24時間平衡化を行えばよい。また、カラム法で精製する場合は、陽イオン交換クロマトグラフィー担体を充填したカラムに陽イオン交換クロマトグラフィー担体の2〜100倍量の緩衝液を流せばよい。 陽イオン交換クロマトグラフィー担体とカイコ体液の接触は、バッチ法の場合は、緩衝液を添加したカイコ体液に陽イオン交換クロマトグラフィー担体を添加することにより行う。添加する陽イオン交換クロマトグラフィー担体の量は、容積比でカイコ体液1に対して、0.1〜10である。接触は、静置することにより行ってもよいが、好ましくは、陽イオン交換クロマトグラフィー担体粒子が沈殿しない程度の速度で攪拌する。攪拌はスターラーを用いても、振とう装置を用いてもよい。接触時間は、1時間以上が好ましい。カラム法の場合は、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに緩衝液を添加したカイコ体液を添加することにより行う。この際、カイコ体液の流速は、カラムサイズにもよるが、例えば内径4.4 cm長さ10 cmのカラムを用いる場合、緩衝液を添加したカイコ体液5,000 mLを10 mL/分の速度で流せばよい。 次いで、バッチ法の場合は、遠心分離により組換えタンパク質が吸着した陽イオン交換クロマトグラフィー担体粒子を沈降または濾過回収する。このときの遠心分離は6,000〜12,000Gで5〜10分行えばよく、濾過はガラスフィルターなどを用いればよい。 その後、組換えタンパク質を吸着した陽イオン交換クロマトグラフィー担体を適当な緩衝液で洗浄する。緩衝液は、平衡化に用いた緩衝液を用いればよい。バッチ法の場合は、陽イオン交換クロマトグラフィー担体に洗浄用緩衝液を添加して、攪拌し再度遠心分離または濾過により陽イオン交換クロマトグラフィー担体を回収する。遠心操作は1〜5回繰り返すのが好ましい。カラム法の場合は、カラムに緩衝液を流速1〜50 mL/分で陽イオン交換クロマトグラフィー担体の3〜5倍量流すことにより洗浄を行う。 次いで、陽イオン交換クロマトグラフィー担体に吸着した組換えタンパク質を溶出する。溶出は溶出用緩衝液を用いて行う。溶出は、塩濃度を上げることにより行うことができ、リン酸緩衝液濃度を上げるか、添加する塩化ナトリウムまたは塩化カリウム濃度を上げればよい。例えば、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム濃度を0.8〜2.0 Mの緩衝液を用いればよい。バッチ法の場合は、組換えタンパク質の吸着した陽イオン交換クロマトグラフィー担体に3〜10倍量の溶出用緩衝液を添加し、1〜30分間攪拌した後、遠心分離またはフィルター濾過により陽イオン交換クロマトグラフィー担体を分離させ上清を回収すればよい。カラム法の場合は、陽イオン交換クロマトグラフィー担体の3〜10倍量の溶出用緩衝液をカラムに1〜50 mL/分の流速で流せばよい。回収した上清または溶出液は、適当な緩衝液でpHを6.0〜8.0に調整する。 硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いる精製において、硫酸エステルは、非常に高い負荷電を有し血液凝固因子や核酸関連酵素等のある種のタンパク質が強く吸着する。硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを行う際に用いる緩衝液の種類、濃度、pHも精製しようとする組換えタンパク質に応じて、適宜決定することができる。以下では、HGFの精製の場合について述べる。 上記の陽イオン交換クロマトグラフィーにより得られた上清を、10〜500 mM、好ましくは10〜100 mMのリン酸カリウム緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液等のリン酸緩衝液で2〜5倍に希釈する。この際、上清中に界面活性剤が含まれる場合は蒸留水に界面活性剤が同濃度で含まれるように界面活性剤を添加しておく。次いで、濃度を調整した溶液を硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーカラムに1〜50 mL/分の流速で添加する。次いで、調整後の緩衝液の濃度と同じ濃度の緩衝液をカラムに1〜50 mL/分の流速で流し、洗浄する。この際流す量はカラムサイズの3〜5倍量である。その後、吸着した組換えタンパク質を、溶出緩衝液により溶出回収する。この際、塩濃度の高い緩衝液を用いることにより、吸着した組換えタンパク質を溶出することができる。例えば、吸着の際に用いた緩衝液に0.5〜2.0 Mの塩化ナトリウム、塩化カリウム等を添加したものを用いればよい。この際の、流速は1〜50 mL/分であり、流す溶出液の量はカラムサイズの3〜10倍量である。 フラクションを回収し、各クラクション中の組換えタンパク質の量を測定し、高濃度のフラクションを回収・プールすることにより高純度の組換えタンパク質を得ることができる。 また、上記陽イオン交換クロマトグラフィーと同様に、ビーカ等の容器を用いてバッチ法で精製することもできる。 さらに、陽イオン交換クロマトグラフィーを行うことなく、硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーのみで精製することもできる。この場合緩衝液は、100〜500 mMの塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを含むリン酸カリウム緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液等のリン酸緩衝液を用いればよく、緩衝液の濃度は10〜100 mMが好ましい。また、用いる緩衝液にはTween20、Tween80、TritonX100等の界面活性剤を0.001〜0.1%添加するのが好ましい。組換えHGFを含むカイコ体液を適当な緩衝液でpH6.0〜8.0に調整して、硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体と接触させる。カイコ体液に対する緩衝液の容積比は、カイコ体液のpHが6.0〜9.0、好ましくは6.5〜7.5に調整され、かつカイコ体液の粘度が低くなりクロマトグラフィー担体と充分な接触が可能になるような比であり、例えば50 mMリン酸緩衝液pH6.5を用いる場合、カイコ体液1に対して、緩衝液を5〜20添加すればよい。 各ステップ後の純度や、収率はさらにHPLC分析にかけたり、SDS-PAGE等の電気泳動手法、およびウエスタンブロッティング等の手法により測定することができる。 陽イオンクロマトグラフィーによる精製後の純度は、80%以上であり、さらに、硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーによる精製後の純度は、85〜95%である。最終的にカイコ体液中の組換えタンパク質の20〜70%を回収することができる。比活性としては、陽イオンクロマトグラフィーによる精製後の比活性は、カイコ体液中の10倍以上であり、さらに、セルロース硫酸エステルまたは架橋ポリサッカライド硫酸エステルを用いたアフィニティークロマトグラフィーによる精製後の比活性は、カイコ体液中の千〜数万倍である。 なお、本発明の精製方法は、高速液体クロマトグラフィーや中圧液体クロマトグラフィー等の分取機器を用いることにより、自動化することが可能である。 WO 01/092332に記載した方法により、ネコHGF組換えバキュロウイルスを感染させたカイコ体液より、組換えネコHGFを精製した。<組換えネコHGFの生物活性測定> 得られた組換えネコHGFの活性は、イヌ腎由来細胞(MDCK細胞)の遊走活性を指標として測定した。MDCK細胞は、10%ウシ胎児血清(Moregate社製)、0.3%Tryptose Phosphate broth(DIFCO社製)を含むE-MEM(日水製薬社製)培地中で、37℃、5%CO2存在下で継代を行った。飽和細胞密度まで増殖させたMDCK細胞を、PBS緩衝液で洗浄後、トリプシン-EDTA溶液を加え、37℃で約5分間静置した。次いで上記の増殖用培地を加え細胞を良く懸濁した後、1,200 rpm、4℃にて5分間遠心した。上清を除き、再度増殖用培地に懸濁した後、常法に従い細胞数を測定し、3×104個/mLとなるように細胞数を調整した。この細胞懸濁液を96穴プレート(FALCON社製)1ウェルあたり100 μLずつ分注した。次いで、増殖用培地を用いて2倍階段希釈された組換えネコHGFを含む被験試料を50 μLずつ細胞上清に加え、インキュベーター内で培養を行った。24時間後、15 μLの25%グルタルアルデヒド溶液(和光純薬社製)を各ウェルに加え細胞を固定し、次いでギムザ染色を行い顕微鏡下で細胞の運動性、形態について観察した。なお、本明細書中においてHGF活性を単位(U)で示す場合は、被験試料を2倍階段希釈し、MDCK細胞遊走活性が最大となる希釈倍率数を単位として定義する。<陽イオン交換クロマトグラフィーの操作> カイコ体液500 mLに0.01%Tween 80を含む50 mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5) 4,500 mLを加え、よく混和した。これを0.3 M塩化ナトリウムおよび0.01%Tween 80を含む50 mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)で平衡化した陽イオン交換カラム(TOYOPEARL SP-550C、東ソー社製、カラムサイズ内径4.4cm、高さ10 cm)にかけた。カラムを平衡化緩衝液、次いで約0.6 M塩化ナトリウムおよび0.01% Tween 80を含む50 mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5) 450 mLで各々洗浄した後、約1.2 M塩化ナトリウムおよび0.01% Tween80を含む50 mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)を用いて溶出させた。 得られた画分について、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)およびクマシー染色を行い、分子量約85 kDaの位置にバンドが確認された画分を混合し、0.01% Tween 80を含む50 mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)を用いて3倍希釈した。<セルロース硫酸エステルクロマトグラフィーの操作> 希釈を行った陽イオン交換クロマトグラフィー溶出液を、0.3 M塩化ナトリウムおよび0.01% Tween 80を含む10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)で平衡化した硫酸化セルロファインカラム(チッソ社製、カラムサイズ内径2.6 cm、高さ5 cm)に流速4 mL/分で添加した。平衡化緩衝液、次いで約0.5 M塩化ナトリウムおよび0.01% Tween 80を含む10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)で各々洗浄後、約1.2 M塩化ナトリウムおよび0.01% Tween 80を含む10m Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)を用いて流速2 mL/分で溶出を行い、2 mLずつフラクションを回収した。各画分からサンプルの一部を取り、SDS-PAGEおよびクマシー染色を行い、組換えネコHGFのバンドが確認された画分を混合し、硫酸エステル溶出液とした。<ゲル濾過クロマトグラフィーの操作> ゲル濾過クロマトグラフィーは、装置はAKTA exploler 100を、カラムは、HiLoad 26/60 Superdex 200 pg(両者ともアマシャムバイオサイエンス社製)を用いた。展開液には、0.15 M塩化ナトリウムおよび0.01% Tween 80を含む10 mMクエン酸緩衝液(pH6.0)を用いた。流速は2.5 mL/分とし、ピークの検出は280 nmの吸光度を測定することで行った。サンプル添加から約75分前後にネコHGFのメインピークが現れ、これらのフラクションを回収した。<SDS-PAGEの操作> 上記3段階のクロマトグラフィーで精製された組換えネコHGFを2-メルカプトエタノール還元下でSDS-PAGEを行い、次いで銀染色を行った(銀染色キットIIワコー、和光純薬社製)。結果を図1に示す。精製組換えネコHGFは、分子量(約85kDa)相当領域に単一のバンドが認められた。この精製物は抗ネコHGFモノクローナル抗体(日本全薬工業株式会社中央研究所において樹立)を用いたウエスタンブロッティングにより、組換えネコHGFであることが確認された。この結果を図2に示す。 以上の結果から、本精製法によりカイコ体液中の夾雑物が効率よく除去され、高純度の組換えネコHGFが製造できることが明らかとなった。各工程による精製過程を表1に示した。精製組換えネコHGFのSDS-PAGEの結果を示す図である。精製組換えネコHGFのクマシー染色およびウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図中、Mはマーカー、rFeHGFは組換えネコHGF、BSAはウシ血清アルブミンを示す。 少なくとも硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製する工程を含む、組換えタンパク質を精製する方法。 さらに、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製する工程を含む請求項1記載の方法。 陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製する工程に次いで、硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製する工程を含む組換えタンパク質を精製する方法。 組換えタンパク質が肝細胞増殖因子である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。 組換えタンパク質が、昆虫虫体を用いて作製されたものである、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。 昆虫がカイコである請求項5記載の方法。 組換えタンパク質が、細菌を用いて製造される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。 組換えタンパク質が、動物細胞を用いて製造される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。 【課題】 少ない工程数で組換えタンパク質を精製し、純度の高い組換えタンパク質を高収率で得る方法の提供。【解決手段】 少なくとも硫酸エステルを結合させたクロマトグラフィー担体を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製する工程を含む、組換えタンパク質を精製する方法ならびにさらに、陽イオンクロマトグラフィーを用いて精製する工程を含む方法。【選択図】 なし


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