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タイトル:特許公報(B2)_女性ホルモンバランス調整剤
出願番号:2005119010
年次:2012
IPC分類:A61K 36/18,A61K 36/48,A61K 36/896,A61P 15/12


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塩本 秀己 JP 4892856 特許公報(B2) 20120106 2005119010 20050415 女性ホルモンバランス調整剤 大正製薬株式会社 000002819 塩本 秀己 JP 2004120863 20040415 20120307 A61K 36/18 20060101AFI20120216BHJP A61K 36/48 20060101ALI20120216BHJP A61K 36/896 20060101ALI20120216BHJP A61P 15/12 20060101ALI20120216BHJP JPA61K35/78 CA61K35/78 JA61K35/78 VA61P15/12 A61K 36/804 A61K 36/488 A61K 36/896 A61P 15/12 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2001−322943(JP,A) 特開平7−53394(JP,A) J. Agric. Food. Chem.,2003年,Vol.51,p.2193-2199 3 2005325107 20051124 15 20080305 菊池 美香 本発明は、葛根、山帰来及び熟地黄といった生薬を含有し、女性ホルモンバランスを調整して更年期障害の予防又は改善に用いる薬剤に関する。 女性機能を代表する物質であるエストロゲンは1923年のAllen & Doisyによる発見以来、生殖医学・生物学の中心的な物質の一つとして研究が進められてきた。エストロゲン(卵胞ホルモン)はエステロン、エストラジオール、エストリオールが1930年代に単離・生成され、プロゲステロン(黄体ホルモン)とともに、男性ホルモン(アンドロゲン)に対比したものとして、女性が女性たるために最も重要な物質と位置づけられてきた。このエストロゲンは主に卵巣の顆粒膜細胞から産生され、その分泌は下垂体前葉より分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピンとも称され、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)とがある)により支配されるが、エストロゲンの血中レベルが低下するとFSHの分泌が促進され、エストロゲンの血中レベルが上昇するとFSHの分泌が抑制されるため、エストロゲンは卵巣機能の自己調整に働く巧妙なフィードバック機構の中心的役割を担っている。さらに、エストロゲンは標的組織である間脳−下垂体前葉−性器及び乳腺のみならず、種々の組織に受容体を有しており、生殖機能に作用するだけでなく、脳、心血管、骨格、皮膚、その他の全身の組織に作用が及ぶ。そのため、「女性の身体を創る」このホルモンの働きが女性のQOL(Quality of Life)に深く関わっている(以上、非特許文献1参照)。 そのため、このホルモンの分泌不足あるいはホルモンバランスの失調は月経異常を発症するだけでなく、器質的変化に相応しない自律神経失調症を中心とした不定愁訴をも発症する。このホルモンバランスの失調による「不定愁訴」の症状としては、その発症時期によって、性周期の変化に伴う月経困難症や月経前症候群(PMS)、閉経に伴う更年期障害などが挙げられる。さらに、近年、20〜40歳の女性において、社会進出に伴うストレスや喫煙、ダイエット等のため、ホルモンバランスの調整機能が低下し、更年期障害に類似の症状を呈する若年性更年期障害を発症するケースも増えている。 そして、前記諸症状には身体症状と精神症状とがあり、いずれもホルモンバランス調整機能(卵巣機能も含む)の低下若しくは衰退に伴うエストロゲンの低下を中心とした身体要因に精神的負荷・ストレスなどの精神的要因が加わって発症する。その具体的な症状としては、血管運動神経障害症状である、のぼせ、ほてり(ホットフラッシュ)、異常発汗、手足の冷え、むくみ、肩凝り、頭痛等と、精神神経障害症状である、易疲労感、脱力感、いらいら感、不安、睡眠障害、頭重感、めまい等が挙げられる。これらの諸症状は、ホルモンバランス調整機能と自律神経系とが密接に関係しあっていることから、過度の精神的ストレスを受けることにより増悪する。また、内因性エストロゲンの低下が続くと、肌の弾力性低下、泌尿生殖器の萎縮による性交痛や尿失禁を発症し、動脈硬化、高脂血症、肥満などの代謝異常、骨粗鬆症等を発症する虞も高くなる(非特許文献2及び3参照)。さらに、痛みに対する閾値が男性よりも低い女性とって、ストレスやホルモンバランスの乱れは、さらに痛みを強く感じやすくなる要因となっている(非特許文献4及び5参照)。 ここで、更年期障害を発症した患者では治療を目的にエストロゲンを投与するホルモン補充療法(HRT)が使用されているが、胃腸障害、血栓症、子宮出血、肝障害や、さらには、長期間投与すると子宮癌や乳癌などが発現等の虞があり、HRTの普及率は日本において2〜3%にすぎない(非特許文献6参照)。また、種々の危険性からWHI(Women’s Health Initiative)におけるエストロゲン単独投与群の試験の中止が報告され(非特許文献7参照)、HRTへの不安が拡大している。近年、ホルモンバランスの概念やその失調に伴う疾患、その対処方法についての理解は深まっており、多くの女性は安全性と利便性を求め、自己の生活スタイルに合わせて、エストロゲン作用物質を含む植物エキスあるいは分画成分が配合された医薬品や健康食品・サプリメントを服用している。なお、エストロゲン作用物質を含む植物、エキス、分画を植物性エストロゲンと称し、例えば、ゲニステイン、ダイゼインなどの大豆イソフラボン類(非特許文献8参照)、プエラリアミリフィカ(ガウクレア)(非特許文献9参照)、レッドクローバー(非特許文献10参照)、ブラックコホッシュ(非特許文献11参照)、甘草(リコリス)(非特許文献10参照)、葛根、ヨクイニン(非特許文献12参照)等もエストロゲン様作用を有することが報告されている。鈴木秋悦ら編「エストロゲン−新しい視点から見た作用−」メジカルビュー社、1999年、p.10武谷雄二編「女性と予防医学」中山書店、1998年、p.239渡部清明ら編「臨床病理レビュー特集大31号 シリーズ 女の一生と臨床検査 −更年期をめぐる身体の変化とその臨床−」克誠堂出版、2004年、p1労働大臣官房制作調査部統計調査第二課編「平成9年労働者健康状況調査報告」1998年貴邑富久子監修「性差精査医学 女と男のよりよい健康と医療のために」じほう、2003年、p121鈴木秋悦ら編「エストロゲン−新しい視点から見た作用−」メジカルビュー社、1999年、p.68「NIH Asks Participants in Women’s Health Initiative Estrogen−Alone Study to Stop Study Pills、 Begin Follow−up Phase Statement from Barbara Alving、 M.D.、 Director of the Women’s Health Initiative and Acting Director of the National Heart、Lung、and Blood Institute」NIH News、2004年3月2日、http://www.nhlbi.nih.gov/new/press/04-03-02.htmE.Chengら「Science」120巻、p.575、1954年、A.L.Murkiesら「J.Clin.Endocrinol.Metab.」83巻、p.497、1998年S.Chansakaowら「Planta Med」66巻、p.572、2000年D.T.Zavaら「Proc.Soc.Exp.Biol.Med.、」217巻、p.369、1998年Z.Liuら「Wei Sheng Yan Jiu」30巻、p.77、2001年鈴木秋悦ら編「エストロゲン−新しい視点から見た作用−」メジカルビュー社、1999年、p.114 したがって、本発明の課題は、更年期障害、若年性更年期障害、月経前症候群(PMS)などの女性ホルモンバランスの崩れによって生ずる全身倦怠感をはじめ、ほてり、冷え、むくみ、肩凝り、腰痛、いらいら、不安などの不定愁訴、並びに、肌の弾力性低下、泌尿生殖器の萎縮による性交痛や尿失禁、高脂血症、肥満、骨粗鬆症に極めて有効で副作用の少ない更年期症候群の予防又は改善剤を提供することである。 本発明者は、葛根がエストロゲン様作用を有するゲニステイン、ダイゼインなどのイソフラボン類を含有し、不定愁訴の肩凝りなどに効果があること、山帰来がエストロゲン様作用を有し、不定愁訴のむくみを利尿作用によって改善すること、熟地黄が末梢循環改善作用を有し、エストロゲンの作用を増強することに着目し、これらの併用投与によって、葛根、山帰来及び熟地黄が互いの作用を増強せしめることを見いだし、本発明を完成するに到った。 かかる本発明の態様の一つは、葛根、山帰来及び熟地黄からなる群より選ばれる2種又は3種を含有することを特徴とする女性ホルモンバランス調整剤である。 本発明の他の態様は、葛根、山帰来及び熟地黄からなる群より選ばれる2種又は3種を含有することを特徴とする更年期障害の予防又は改善剤である。 本発明の他の態様は、葛根、山帰来及び熟地黄からなる群より選ばれる2種又は3種を含有することを特徴とする若年性更年期障害の予防又は改善剤である。 本発明の他の態様は、葛根、山帰来及び熟地黄からなる群より選ばれる2種又は3種を含有することを特徴とする月経前症候群の予防又は改善剤である。 本発明の他の態様は、葛根の抽出溶媒のエタノール含量が30%以上であるエキスを用いた前記各予防又は改善剤である。 本発明により、女性ホルモンバランスの失調あるいはエストロゲン欠乏によって生じる全身倦怠感をはじめ、ほてり、冷え、むくみ、肩凝り、腰痛、いらいら、不安などの不定愁訴、肌の弾力性低下、泌尿生殖器の萎縮による性交痛や尿失禁、高脂血症、肥満、骨粗鬆症等の諸疾患の予防及び改善に有効な医薬品等を提供することが可能となった。 「葛根(カッコン、プエラリア ラディックス:Pueraria Radix)」とはマメ科(Leguminosae)のクズ(プエラリア ロバータ:Pueraria lobata Ohwiの周皮を除いた根である。葛切りや葛湯として嗜好されたり、風邪や肩凝りの改善を期待して葛根湯などに配合される生薬である。薬理作用としては解熱、鎮痙、降圧、消化管運動亢進、血糖降下作用等が知られている。また、含有成分のダイゼイン、 ダイズイン、プエラリン等のイソフラボンはエストロゲン様作用を有することが知られている。さらに、葛根と同じマメ科クズ属のプエラリアミリフィカ(プエラリア、ガウクレア)もエストロゲン様作用を有し、タイでは古くから女性の生理的機能を助ける働きがある伝承民間薬として用いられ、近年、日本においてもサプリメントとして用いられている。 「山帰来(サンキライ、スミラックス リゾマ:Smilax Rhizoma)」とは日本薬局方に収載されるユリ科(Liliaceae)のスミラック チャイナ:Smilax chainaやスミラックス グラブラ:S.glabraの塊茎である。「土茯苓(ドブクリョウ)」「バッカツ」とも称される。慢性皮膚疾患に対する排膿、アトピー性皮膚炎の治療、解毒、利尿、体質改善に用いられる。含有成分としてサポニン(スミラックスサポニンA、B、C)、シトステロール、スティグマステロールがある。また、この生薬の同属植物としてはスミラックス オフィシナリス:S.Officinalis、スミラックス ヤピカンガ:S.japicanga、スミラックス フェブリフューガ:S.febrifuga等のサルサパリラ(Sarsaparilla)が知られ、その含有成分のサルササポニン、サルササポゲニン、スミラゲニンは痴呆症、物忘れ、アルツハイマー病などの治療に有効であるという報告がある(特表2002−50752号公報参照)。 「熟地黄(ジュクジオウ、レーマニアエ ラディックス:Rhemanniae Radix)」とは、ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)のカイケイジオウ(レーマニア グルチノーサ:Rhemannia glutinosa LIBOSCH)の地下部の肥大根を、黄酒に漬けて蒸し、光沢のあるまっ黒な外観を呈するまで十分に加工(修治)したものである。日本薬局方では「ジオウ(地黄)」はアカヤジオウ(Rhemannia glutinosa Liboschitz var.purpurea Makino又はRhemannia glutinosa Liboschitz)の根又はそれを蒸したものであり、修治(加工法)の違いにより、掘り取った生の新鮮根を生地黄(鮮地黄)、乾燥したものを乾地黄、酒に漬け、蒸したものを熟地黄と称し、作用が異なるものとして用いられてきた。特に、熟地黄は末梢循環改善作用、造血作用などを有することが知られている。 本発明における「葛根」と「熟地黄」の配合比は原生薬換算量で、葛根1質量部に対して0.05〜5質量部であり、女性ホルモンバランスの失調による不定愁訴又はそれに伴う疾患の予防若しくは改善の点で、0.5〜4質量部が好ましい。 本発明における「葛根」と「山帰来」の配合比は原生薬換算量で、葛根1質量部に対して0.05〜5質量部であり、女性ホルモンバランスの失調による不定愁訴又はそれに伴う疾患の予防若しくは改善の点で、0.2〜3質量部が好ましい。 本発明における「山帰来」と「熟地黄」の配合比は原生薬換算量で、山帰来1質量部に対して0.05〜5質量部であり、女性ホルモンバランスの失調による不定愁訴又はそれに伴う疾患の予防若しくは改善の点で、0.5〜3質量部が好ましい。 葛根、山帰来及び熟地黄は、生薬末であってもよいが、抽出物であってもよい。抽出物は、水抽出物、流エキス、軟エキス、乾燥エキス、チンキの何れであってもよい。葛根をエキスとして用いる場合については、抽出溶媒のエタノール含量が30%以上であるエキスが好ましい。 葛根、山帰来及び熟地黄の有効投与量は原生薬換算量として、健康成人で1日50mg〜10000mgであり、好ましくは100mg〜5000mgである。 本発明の予防又は改善剤は、葛根、山帰来及び熟地黄の各エキスの2種又は3種を配合し、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤などを混合して常法により、顆粒剤、散剤、カプセル剤、錠剤、ドライシロップ剤、液剤などの経口製剤とすることができる。 さらに、必要に応じて他の生理活性成分、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、ホルモン、栄養成分、香料等を混合することにより、嗜好性をもたせることもできる。また生薬としては、特に限定すべきものではないが、イズイ、インヨウカク(イカリソウ)、茴香、鬱金、烏薬、エゾウコギ(刺五加、五加皮)、営実、延胡索、黄蓍、黄ゴン、黄精、黄柏、黄連、遠志、何首烏、莪述、霍香、カノコソウ、カロコン、乾姜、甘草、桔梗、桔梗根、枳実、羌活、枸杞子、枸杞葉、ケツジツ、桂皮、肉桂、桂枝、苦参、苦楝皮、玄参、紅花、紅参、香附子、厚朴、牛膝、呉茱萸、五味子、胡蘆巴、虎杖根、柴胡、細辛、石榴、山梔子、山茱萸、山査子、鎖陽、山椒、山奈、山扁豆、山稜、酸棗仁、西洋山査子、山薬、地骨皮、生姜、縮砂、蛇床子、女貞子、芍薬、沙参、菖蒲根、升麻、商陸、沈香、川キュウ、川骨、川楝皮、蒼朮、桑白皮、菖蒲根、石斛、石菖根、接骨木、前胡、桑白皮、蘇葉、蒼朮、続断、大蒜、大棗、大豆、沢瀉、竹節人参、知母、丁字(母丁香、公丁香)、陳皮、当帰、杜仲、党参、橙皮、莵絲子、桃仁、人参、巴戟天、反鼻、麦門冬、白シ、白朮、茯苓、覆盆子、防己、蒲公英、補骨脂、ムイラプアマ、木香、牡丹皮、益母草、益智、良姜、竜眼肉、ヨクイニン、ローヤルゼリー、イカリソウなどを配合することができる。 以下に実施例及び試験例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。なお、各生薬をエキスとして配合した場合にはその原生薬換算量を括弧書きで併記する。実施例1 葛根乾燥エキス 110 g (500g) 熟地黄乾燥エキス 192 g (480g) 当帰乾燥エキス 150 g (600g) 芍薬乾燥エキス 85.8g (600g) 川キュウ乾燥エキス 142.8g (600g) アビセル−PH01 192 g コンスターチ−JP 513 g エロジール−200 90 g HPL−L−微粉 90 g 上記組成の粉体1466.6gの混合末にアルコールを適量添加後、バーチカルグラニュレータ(パウレック社製)で湿式造粒し、流動層乾燥機(フロイント社製)で乾燥した。24メッシュの篩で分級し、篩残はスピードミル(岡田精工社製)で粗砕した。これにビタミンB6 10g、エロジール−200 9g、ステアリン酸マグネシウム 9gを添加して混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒を8.5mm径2段R面の杵を使い、コレクト19型打錠機(菊水製作所製)で打錠し、1錠重量200mgの錠剤を得た。実施例2 葛根末 500 g 山帰来末 250 g 熟地黄末 550 g ビタミンB2 50 g ビタミンB6 150 g 乳糖 500 g トウモロコシデンプン 245 g メタケイ酸アルミン酸マグネシウム 32.5g 軽質無水ケイ酸 37.5g 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 50 g ヒドロキシプロピルセルロース 50 g 上記組成の粉体1567gをバーチカルグラニュレータで湿式造粒し、流動層乾燥機で乾燥した。24メッシュの篩で分級し、篩残はスピードミルで粗砕した。これにステアリン酸マグネシウム20g及びタルク30gを添加して混合した。得られた顆粒を400mgずつ1号カプセルに充填し、カプセル剤を得た。試験例1 実験材料:エストラジオール、葛根水抽出エキス(P−W)、葛根30%エタノール抽出エキス(P−A)及び葛根95%エタノール抽出エキス(P−E)を用いた。 実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入) 実験方法:子宮重量を指標としたエストロゲン効果測定試験 子宮重量を指標としたエストロゲン効果測定試験は石見らの方法(Y.Ishimiら、Endocrinology、140巻、p.1893、1999年)に準じて実施した。すなわち、無菌環境下において、ラットをペントバルビタール麻酔下、背部を切開し、卵巣を摘出した(以下、「OVX」と称する)。OVX4日後から、葛根水抽出エキス(P−W)、葛根30%エタノール抽出エキス(P−A)、葛根95%エタノール抽出エキス(P−E)(それぞれ0.5%カルボキシルメチルセルロース・ナトリウムに懸濁、0.2mL/100g体重)を1日1回13日間連続経口投与した。最終経口投与1日後、ペントバルビタール麻酔下にて、開腹後、子宮を摘出し、その内容液を除去した後、子宮重量を測定した。なお、正常(疑似手術)群は、上記と同様に背部を切開、擬似的に卵巣を処理し、体内に戻した後、縫合した。正常群及び対照群は0.5%カルボキシルメチルセルロース・ナトリウムを0.2mL/100gの投与割合で投与した。抽出方法の異なる葛根エキスの投与量は、エストロゲン様作用を有する主成分のプエラリン含量を一律にして効果を比較するため、P−W、P−A、P−Eの投与量はプエラリン7.9mg/kg相当量としてそれぞれ132、80、50mg/kg、プエラリン19.8mg/kg相当量としてそれぞれ330、200、125mg/kgとした。[実験結果]子宮重量を指標とした葛根の抽出方法の違いによる効果の差異 正常(疑似手術)群に比較し、OVXを施したラットの子宮重量は有意に減少した。これに対して、P−A及びP−Eはともに、卵巣摘出による子宮重量低下を有意に抑制し、エストロゲン様作用が観察され、葛根がエストロゲン様作用を発揮するためには抽出溶媒のアルコール含量が30%以上であることが好ましいことが明らかとなった。一方、エストラジオールは0.1mg/kgの投与量において子宮重量の低下を抑制した(図1参照)。試験例2 実験材料:エストラジオール、葛根30%エタノール抽出エキス、熟地黄40%エタノール抽出エキス及び乾地黄40%エタノール抽出エキスを用いた。 実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入) 実験方法:子宮重量を指標としたエストロゲン効果測定試験 実験は試験例1に準拠して行った。なお、検体は葛根30%エタノール抽出エキス120mg/kg、熟地黄40%エタノール抽出エキス200mg/kg及び乾地黄40%エタノール抽出200mg/kgを単独あるいは併用投与した。[実験結果]子宮重量を指標とした葛根と熟地黄あるいは乾地黄との併用効果 正常(疑似手術)群に比較し、OVXを施したラットの子宮重量は有意に減少した。これに対して、葛根30%エタノール抽出エキス120mg/kg単独投与は有意に抑制した。この葛根エキスに作用の認められない熟地黄40%エタノール抽出エキス200mg/kgを併用投与するとそのエストロゲン様作用は有意に増強された。一方、乾地黄40%エタノール抽出200mg/kgは葛根の作用に影響を及ぼさなかった(図2参照)。このことから、熟地黄は葛根のエストロゲン様作用を促進する働きを有しているが、修治の異なる乾地黄にはそのような働きがないことが分かった。試験例3 実験材料:エストラジオール、葛根末及び山帰来末を用いた。 実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入) 実験方法:子宮重量の低下を指標としたエストロゲン効果測定試験 実験は試験例1に準拠して行った。なお、検体は葛根末300mg/kg、山帰来末150mg/kgを単独あるいは併用投与し、投与用量は10mL/kgで行った。[実験結果]子宮重量の低下を指標とした葛根と山帰来の併用効果 正常(疑似手術)群に比較し、OVXを施したラットの子宮重量は有意に低下した。これに対して、葛根末及び山帰来末は、単独投与では1000mg/kgの投与量で有意なエストロゲン様作用を発揮し、子宮重量の低下を抑制するが、葛根末300mg/kg、山帰来末150mg/kgでは、卵巣摘出による子宮重量の低下を抑制しなかった。これに対して、この投与量の葛根末と山帰来末とを併用投与すると子宮重量低下を有意に抑制し、有意なエストロゲン様作用が発現され、葛根と山帰来の併用効果が明らかとなった。エストラジオール0.1mg/kg経口投与はその低下を抑制した(図3参照)。試験例4 実験材料:エストラジオール、葛根30%エタノール抽出エキス及び熟地黄40%エタノール抽出エキスを用いた。 実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入) 実験方法:ホットフラッシュ発現を指標としたエストロゲン効果測定試験 前記試験例1に示した方法にて卵巣を摘出し、検体を21日間連日経口投与したOVXラットを用いホットフラッシュの発現を測定した。ホットフラッシュの測定は小林らの方法(T.Kobayashiら、J. Endocrinol.、146巻、p.431、1995年)を一部改良して実施した。すなわち、検体最終投与4時間後、無拘束下、OVXラット尾部(尾根部1cm〜5cmの部分)の最高温度をサーモグラフ(サーモビュア JTG−6300、日本電子(株))を用いて測定した。なお、検体は葛根30%エタノール抽出エキス120mg/kg、熟地黄40%エタノール抽出エキス150mg/kgを単独あるいは併用投与した。測定環境は室温23±1℃、湿度45±5%であった。[実験結果]ホットフラッシュ発現を指標とした葛根と熟地黄との併用効果 正常(疑似手術)群に比較し、OVXを施したラットの尾部最高温度は有意に増加した。これに対して、葛根30%エタノール抽出エキス120mg/kg及び熟地黄40%エタノール抽出エキス150mg/kgの単独投与は卵巣摘出によるホットフラッシュの発現に対して抑制傾向を示した。この投与量の葛根エキスと熟地黄エキスを併用投与するとホットフラッシュの発現が有意に抑制され、その作用はそれぞれの単独投与群の尾部温度に比較しても有意な差異が認められた。このことから、熟地黄が葛根のエストロゲン様作用を促進する働きが、ホルモンバランスの乱れによって生ずる代表的な愁訴であるホットフラッシュの評価モデルにおいて確認された。一方、エストラジオール0.1mg/kg経口投与はその発現を抑制した(図4参照)。試験例5 実験材料:エストラジオール、葛根末、山帰来末、熟地黄末を用いた。 実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入) 実験方法:ホットフラッシュ発現を指標としたエストロゲン効果測定試験 実験は試験例4に準拠して行った。なお、検体は葛根末150mg/kg、山帰来末75mg/kg及び熟地黄末165mg/kgを単独あるいは併用投与し、投与用量は10mL/kgで行った。[実験結果]ホットフラッシュ発現を指標とした葛根、山帰来、熟地黄との併用効果 正常(疑似手術)群に比較し、OVXを施したラットの尾部最高温度は有意に増加した。これに対して、本試験での投与量の葛根末、山帰来末及び熟地黄末の単独投与は卵巣摘出によるホットフラッシュの発現に影響しなかった.これに対して、葛根末、山帰来末、熟地黄末のうち、それぞれ2種ずつを併用投与すると有意にホットフラッシュの発現を抑制した。さらに、3種の生薬全てを併用投与するとその効果はさらに増強され、2種の生薬を併用した群に比較しても有意な作用であった(図5参照)。このことから、葛根、山帰来及び熟地黄の2種以上の組み合わせが、ホルモンバランスの乱れによって生じる代表的な愁訴であるホットフラッシュの発現を改善することが明らかとなった。試験例6 実験材料:エストラジオール、葛根末、山帰来末及び熟地黄末を用いた。 実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入) 実験方法:疲労蓄積ラットの限界水泳時間測定試験 ホルモンバランスの乱れにストレス等が加わることにより疲労を感じやすくなることから、渡辺らの疲労蓄積モデルにて疲れやすさに対する検討を実施した(M.Tanaka、Y.Watanabeら、Neurosci Lett.、352巻、p.159、2003年)。本モデルは水深約10mmの水(23±1℃)を溜めた飼育ケージ(200×300×125mm)に、ラットを5日間個別飼育するものである。すなわち、OVX処置4週間後、体重を測定し、平均値が同等になるように群構成を行った後、ラットを水浸飼育した。ラットは水を嫌うと共に全身が濡れることを避けるため、水浸飼育されると、自主的に立位となり、さらに、断眠状態ともなる。そのため、ラットに疲労及びストレスが複合的に、かつ、持続的に負荷せしめられるため、そのラットには疲労が蓄積していく。この様な処置を施したラットの疲労状態を観察するために、ラットに重りを負荷し、強制水泳試験を行った。つまり、ラットを水浸飼育ケージから取り出し、2時間放置後、尾根部から2cmの位置に体重の6%に相当する重りを負荷し、直径150mm、高さ650mm、水深500mmの水槽にて、ラットを強制的に遊泳させた。遊泳開始後、ラットの鼻先が水面から5cm以上潜った状態が10秒間継続した時点で遊泳終了とし、その時間を限界水泳時間として表した。なお、検体は葛根末300mg/kg、山帰来末150mg/kg及び熟地黄末330mg/kgを単独あるいは併用投与し、水浸飼育初日から1日1回5日間連日経口投与し、強制水泳試験実施日は投与しなかった。[実験結果]疲労蓄積ラットの限界水泳時間に対する葛根、山帰来、熟地黄の作用 正常(疑似手術)ラット及びOVXラットの通常の飼育した動物の限界水泳時間はそれぞれ7.8±0.7分及び8.5±0.7分であり,OVXラットの方が体重は20〜30%多いにも関わらず、限界水泳は増加傾向にあった。これらラットを水浸飼育すると、それぞれの限界水泳時間は1.9±0.2分及び1.9±0.3分に減少し、その減少は有意なものであり、減少率はOVXラットの方が大きかった。これに対して、葛根末300mg/kg、山帰来末150mg/kg及び熟地黄末330mg/kgの単独投与はOVXラットの水浸飼育による限界水泳時間の減少を抑制せず、各生薬末の投与量を1000mg/kgまで増量すると、葛根末にこの限界水泳時間の減少を抑制する作用が見出された。これに対して、葛根末、山帰来末、熟地黄末のうち、それぞれ2種ずつを併用投与するとこの減少を有意に抑制し、その作用は各生薬末1000mg/kg単独投与群の作用強度と同程度であった。さらに、3種の生薬全てを併用投与するとその効果はさらに増強され、2種の生薬を併用した群に比較しても有意な作用であった(図6参照)。このことから、葛根、山帰来及び熟地黄の2種以上の組み合わせは、ホルモンバランスが乱れ、さらにストレスなどの精神的要因が加わることによって引き起こされる疲労感や疲れやすさを改善すると考えられる。試験例7 実験材料:エストラジオール、葛根末、山帰来末及び熟地黄末を用いた。 実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入) 実験方法:疲労蓄積ラットの後肢足容積測定試験 試験例6で作製した疲労蓄積OVXラットを用いて実験を行った。OVX処置4週間後、体重、足容積を測定し、平均値が同等になるように群構成を行った後、ラットを5日間個別に水浸飼育し、疲労蓄積させた。検体は水浸飼育初日から1日1回5日間連日経口投与し、最終実験日には投与しなかった。足容積は、室町機械(株)製足容積測定装置を用い、水浸飼育前及び水浸飼育終了日に、ラット右後肢足にて測定した。[実験結果]水浸飼育によるむくみ発現に対する葛根、山帰来及び熟地黄の作用 正常(疑似手術)ラット及びOVXラットを水浸飼育すると、正常飼育したラットの足容積に比して、正常ラットは12.6±3.6%腫脹しているのに対して、OVXラットは26.7±3.3%腫脹しており、OVXを施すことによりむくみが発現しやすいことが明らかとなった。このむくみの発現に対して、エストラジオール0.1mg/kg(経口)は有意に抑制することから、むくみの発現はホルモンバランスの乱れによって増強されることを裏付けるものと考えられた。これに対して、葛根末300mg/kg、山帰来末150mg/kg及び熟地黄末330mg/kgの単独投与はOVXラットの水浸飼育によるむくみの発現を抑制せず、各生薬末の投与量を1000mg/kgまで増量すると、山帰来末及び熟地黄末にこのむくみの発生を有意に抑制する作用が認められた。これに対して、葛根末、山帰来末及び熟地黄末のうち、それぞれ2種ずつを併用投与するとこのむくみの発現を有意に抑制し、その作用は各生薬末の1000mg/kg単独投与群の作用強度と同程度であった。さらに、葛根末、山帰来末及び熟地黄末の3種の生薬全てを併用投与すると、このむくみを有意に回復させ、2種の生薬を併用した群に比較しても有意な作用であった(図7参照)。試験例8 実験材料:葛根末、山帰来末及び熟地黄末を用いた。 実験動物:SD系雄性ラット(9週令、チャールズリバーから購入) 実験方法:後肢大腿部拘束ラットの足容積測定試験 SD系雄性ラットの後肢の足容積を測定した後、後肢大腿部の体幹部に近い部分をシリコンチューブ(外径×内径:9×5mm、長さ40mm)を通した結束バンド(長さ×幅/最大結束径:150×3.6/φ39mm)で鬱血が生じない程度の強度で縛り、血行障害に伴うむくみを誘引した。結束2時間後、結束を解放した直後に足容積を測定した。各群の足容積の平均値が同等になるように検体を経口投与し、5時間放置した後、再び足容積を測定した。足容積の測定は前記試験例7と同様に行い、拘束前の足容積と拘束開放直後の足容積の差を100とした時の5時間後の足容積浮腫率(%)を求めた。[実験結果]後肢大腿部拘束によるむくみ発現に対する葛根、山帰来、熟地黄の作用 ラットの後肢大腿部を2時間拘束すると、拘束前の足容積に比較し、足容積は70%程度増加した。各群の浮腫率の平均が同等になるように群構成したラットに検体を経口投与し、5時間放置した結果、対照群は、拘束解放直後の足容積の腫れを100とすると、浮腫率は77.9±18.5%まで回復した。これに対して、葛根末300mg/kg、山帰来末150mg/kg及び熟地黄末330mg/kgの単独投与はこのむくみの回復に影響しなかった.これに対して、葛根末、山帰来末及び熟地黄末の3種の生薬全てを併用投与すると、このむくみを有意に回復させた(図8参照)。 試験例7及び8の結果から、葛根、山帰来及び熟地黄の2種以上の組み合わせは、ホルモンバランスの乱れや同じ姿勢を続けることによる血行障害によって生じるむくみに対して有用であることが明らかとなった。試験例9 実験材料:葛根末、山帰来末及び熟地黄末を用いた。 実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入) 試験方法:疲労蓄積ラットの後肢足部温度測定試験 試験例6で作製した疲労蓄積OVXラットを用いて実験を行った。OVXラットを水浸飼育ケージから取り出し、後肢足部の水分を拭き取った後、ラット後肢の甲から指先の温度をサーモグラフ(サーモビュア JTG−6300、日本電子(株))を用いて測定し、その測定部位での最低温度を求めた。なお、測定環境は室温23±2℃、湿度45±8%であった。[実験結果]水浸飼育による後肢足部最低温度の低下(冷え)に対する葛根、山帰来及び熟地黄の作用 通常飼育のOVXラットの後肢足部最低温度は20.8±0.5℃であるのに対して、水浸飼育したOVXラットのそれは19.1±0.4℃であり、有意な温度低下が確認された。さらに、後肢足部の中での温度差を観察すると、甲側よりも指側の方で温度差が大きく、OVXラットの方に冷えが生じやすいことが確認された。これに対して、葛根末300mg/kg、山帰来末150mg/kg及び熟地黄末330mg/kgの単独投与は卵巣摘出ラットの水浸飼育による冷えの発現を抑制しなかった。また、葛根末、山帰来末及び熟地黄末のうち、それぞれ2種ずつを併用投与すると冷えを改善する傾向が観察された。さらに、3種の生薬全てを併用投与すると冷えを有意に改善し、2種の生薬を併用した群に比較しても有意な作用であった。また、各生薬末の投与量を1000mg/kgまで増量すると、山帰来末及び熟地黄末はその減少を抑制したが、その作用は3種の生薬全てを併用する群には及ばなかった(図9参照)。 以上の検討結果から、葛根、山帰来及び熟地黄の2種以上の組み合わせは、女性特有な疾患の一つであり、さらに、ホルモンバランスの乱れにより陥りやすい冷えの発現を改善すると考えられる。試験例10 実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入) 実験方法:疲労蓄積ラットの痛み閾値測定試験 試験例6で作製した疲労蓄積OVXラットを用いて実験を行った。ラットを水浸飼育ケージから取り出した直後に、尾部の水分を拭き取り、室町機械製デジタル・ランダルセリット式鎮痛効果測定装置(MK−201D)にて尾部の痛み閾値を測定した。[実験結果]水浸飼育による痛み閾値低下に対する葛根、山帰来及び熟地黄の作用 正常(疑似手術)ラット及びOVXラットの痛み閾値はそれぞれ188±17mmHg及び158±20mmHgであり、OVXのみでは、痛み閾値の差は生じなかった。これらラットを水浸飼育すると痛み閾値がそれぞれ低下し、その値は133±27mmHg(29%低下)及び69±8mmHg(56%低下)であり、OVXラットが疲労及びストレスを複合的に曝されることにより、痛みに対する反応が増していることが確認された。OVXラットのこの痛み閾値低下に対して、エストラジオール0.1mg/kg(経口)は有意に抑制し、この痛みに対する行動変化がホルモンバランスを整えることにより改善されることが明らかとなった。これに対して、葛根末300mg/kg、山帰来末150mg/kg及び熟地黄末330mg/kgの単独投与はOVXラットの水浸飼育による痛み閾値の低下を抑制せず、各生薬末の投与量を1000mg/kgまで増量することにより、葛根末、山帰来末はこの痛み閾値低下を有意に抑制した。これに対して、葛根末、山帰来末及び熟地黄末のうち、それぞれ2種ずつを併用投与するとこの痛み閾値の低下を有意に抑制し、その作用は各生薬末1000mg/kg単独投与群の作用強度と同程度であった。さらに、葛根末、山帰来末及び熟地黄末の3種の生薬全てを併用投与するとその効果はさらに増強され、2種の生薬を併用した群に比較しても有意な作用であった(図10参照)。これらのことから、葛根、山帰来及び熟地黄の2種以上の組み合わせは、痛みを過敏に感じやすい女性にとって、痛みが主訴となる肩こり、頭痛、腰痛などの痛みの緩和に有効であると考えられる。試験例11 実験材料:エストラジオール、葛根末、山帰来末及び熟地黄末を用いた。 実験動物:SD系雌性ラット(10週令、チャールズリバーから購入) 実験方法:強制水泳時不動時間測定試験 ホルモンバランスを乱した際に生じる精神神経症状には、無気力、いらいら、不安などの不定愁訴が挙げられる。そこで、そのようなホルモンバランスを乱した際に生じる、うつ的症状を、強制水泳時の不動時間を指標に検討した。まず、試験例1に示した方法によって卵巣を摘出し、群構成のためOVX10日目に不動時間を測定した後、エストラジオール等の各検体を21日間連日経口投与した。各検体の効果は最終投与の1時間後に再び10分間の強制水泳を行わせ、その間に見られる不動時間を測定して評価した。なお、不動時間の測定は茶木らの方法(S.Chakiら、J.Pharmacol Exp.Ther.304巻、p.818、2003年)に準じて実施した。すなわち、水温25℃±2℃、直径200mm、高さ450mm、水深300mmの水槽にて、ラットを10分間強制水泳させ、その間に見られる不動時間の累計を画像解析システム(スマートビデオ行動解析システム、バイオリサーチセンター(株))にて測定した。[実験結果]強制水泳時の不動時間に対する葛根、山帰来及び熟地黄の作用 正常(疑似手術)群の不動時間に比較し、OVXラットの不動時間は有意に延長した。この不動時間の延長に対して,エストラジオール0.1mg/kg(経口投与)及びSNRIのミルナシプラン10mg/kgは共に有意な抑制作用を示した。このことから、OVXによる不動時間の延長は、ホルモンバランスの乱れから生じ、ストレスや疲労によって増強される、うつ症状や易疲労感を反映するものと考えられる。これに対して、葛根末、山帰来末及び熟地黄末を100〜1000mg/kgにて経口投与したところ、葛根末1000mg/kgのみがホルモンバランスの乱れによる不動時間の延長を有意に抑制し、山帰来末1000mg/kgはその延長に対して抑制傾向を示し、熟地黄は全ての投与量において無効であった。これに対して、葛根末300mg/kg、山帰来末150mg/kg及び熟地黄末330mg/kgの単独投与は卵巣摘出ラットの不動時間には影響を及ぼさなかった。また、葛根末、山帰来末及び熟地黄末のうち、それぞれ2種ずつを併用投与するとこの不動時間の延長を抑制する傾向を示した。さらに、3種の生薬全てを併用投与するとその効果は増強され、2種の生薬を併用した群に比較しても有意な作用であった。(図11参照)。 本発明により、副作用が少なく、長期間の経口投与に適した更年期障害、若年性更年期障害、月経前症候群の予防及び改善用医薬品の開発が期待される。葛根水抽出エキス(P−W)、葛根30%エタノール抽出エキス(P−A)、葛根95%エタノール抽出エキス(P−E)の卵巣摘出ラットの子宮重量低下に対する作用を示すグラフである。葛根30%エタノール抽出エキスと熟地黄40%エタノール抽出エキスあるいは乾地黄40%エタノール抽出エキスとの併用による卵巣摘出ラットの子宮重量低下に対する作用を示すグラフである。葛根末と山帰来末との併用による卵巣摘出ラットの子宮重量低下に対する作用を示すグラフである。葛根30%エタノール抽出エキスと熟地黄40%エタノール抽出エキスとの併用による卵巣摘出ラットのホットフラッシュ発現に対する作用を示すグラフである。葛根末、山帰来末及び熟地黄末との併用による卵巣摘出ラットのホットフラッシュ発現に対する作用を示すグラフである。葛根末、山帰来末及び熟地黄末との併用による水浸飼育した卵巣摘出ラットの限界水泳時間減少に対する作用を示すグラフである。葛根末、山帰来末及び熟地黄末との併用による水浸飼育した卵巣摘出ラットのむくみ発現に対する作用を示すグラフである。葛根末、山帰来末及び熟地黄末の併用によるラット後肢の拘束により発現するむくみに対する作用を示すグラフである。葛根末、山帰来末及び熟地黄末との併用による水浸飼育した卵巣摘出ラットの足部最低温度低下(冷え)発現に対する作用を示すグラフである。葛根末、山帰来末及び熟地黄末との併用による水浸飼育した卵巣摘出ラットの限界水泳時間減少に対する作用を示すグラフである。葛根末、山帰来末及び熟地黄末との併用による卵巣摘出ラットの不動時間に対する作用を示すグラフである。 葛根、山帰来及び熟地黄からなる群より選ばれる2種又は3種を含有することを特徴とする更年期障害の予防又は改善剤。 葛根、山帰来及び熟地黄からなる群より選ばれる2種又は3種を含有することを特徴とする若年性更年期障害の予防又は改善剤。 葛根の抽出溶媒のエタノール含量が30%以上であるエキスを用いた請求項1又は2に記載の予防又は改善剤。


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