生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_レチノイン酸による腫瘍壊死因子および酸化窒素の生産の抑制方法
出願番号:2005118118
年次:2005
IPC分類:7,A61K31/203,A61P9/00,A61P19/02,A61P25/00,A61P29/00,A61P31/04,A61P33/06,A61P35/00,A61P37/00,A61P37/06,A61P43/00


特許情報キャッシュ

アガーワル,バラト,ビー. メイター,カピル JP 2005263808 公開特許公報(A) 20050929 2005118118 20050415 レチノイン酸による腫瘍壊死因子および酸化窒素の生産の抑制方法 リサーチ ディベロップメント ファンデーション 591026333 RESEARCH DEVELOPMENT FOUNDATION 五十嵐 和壽 100080115 アガーワル,バラト,ビー. メイター,カピル US 08/061,471 19930517 7A61K31/203A61P9/00A61P19/02A61P25/00A61P29/00A61P31/04A61P33/06A61P35/00A61P37/00A61P37/06A61P43/00 JPA61K31/203A61P9/00A61P19/02A61P25/00A61P29/00 101A61P31/04A61P33/06A61P35/00A61P37/00A61P37/06A61P43/00 111 12 1 1994525529 19940505 OL 13 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206DA05 4C206DA07 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA01 4C206ZA36 4C206ZA96 4C206ZB05 4C206ZB07 4C206ZB08 4C206ZB15 4C206ZB35 4C206ZB38 4C206ZC54 本発明は一般的には免疫学および生体応答調節物の生化学の分野に関するものである。より具体的には、本発明は腫瘍壊死因子および酸化窒素生産を抑制するための新しい方法に関するものである。 過去50年間以上、レチノイド類(ビタミンAの天然および合成類似物)は、皮膚病、ガン研究、および胎児の発達などの分野の研究者の大きな関心を集めてきた。レチノイド類の主要な生物学的影響は標的細胞の成長を抑制し、そして/あるいはその分化を誘発することである。しかしながら、これらの影響をつくりだすレチノイドの作用のメカニズムはまだよく分かっていない。 マクロファージは種々の生理学的なプロセスで多くの役割を果たす。受け取った信号に基づいて、単核食細胞は分化して、一定の組み合わせの機能を果たすことができるようになる場合がある。活性化(刺激)とマクロファージ機能の抑制との間の適切なバランスが必要である。例えば、過剰な刺激や不十分な抑制によって活性化の調整が不適切に行われた場合、広範な組織障害および損傷につながる可能性がある。この組織損傷は、場合によっては、非常に破壊的なものとなり、宿主の生存が脅かされる場合もある。単核食細胞を含んでいる炎症部位は、正常な細胞および組織に広範な損傷を与える。さらに、マクロファージが微生物や腫瘍由来の複製細胞に損傷を及ぼしたり破壊したりするメカニズムは、宿主細胞に対しても向けられる場合がある。感染性あるいは腫瘍性疾患によって開始される侵入性刺激に対する観察された生体応答の多くは宿主が分泌するサイトカイン、特に、活性化マクロファージの分泌生成物により媒介される。 レチノイド類は、何人かの研究者によって、単核食細胞の成長および分化を調節する機能を有すると報告されている。例えば、ATRAはフィトヘムアグルチニンあるいは抗胸腺グロブリン刺激リンパ球によってインターフェロンの生産を抑制することが示されている。IL−1およびIL−3生産の両方が、インビトロで、レチノイン酸(retinoic acid)の存在下で、投与量に比例して、それぞれヒト末梢血液単核細胞およびマウスWEHI−3細胞株によって誘発された。より最近、マウス・ケラチノサイトによるIL−1生産へのレチノイン酸および13−シスレチノイン酸の増大効果も観察されている。EL−4細胞内でのIL−1レセプターおよび活性化ヒト胸腺リンパ球上でのIL−2レセプターの誘発も、レチノイン酸の存在下でこれらの細胞を培養した後で観察されている。さらに、腫瘍細胞増殖因子(TGF−β1)蛋白質とそのレセプターの両方が、レチノイド類によるその分化後にHL−60(promyelocytic leukemia)内で誘発される場合がある。一方、レチノイン酸はヒト表皮様悪性腫瘍ME180細胞内での表皮成長因子−レセプターの転写を下方調整することが示されている。同様に、高濃度のATRAはニューカッスル病ウィルスで感染されたL−929細胞によるインターフェロンの生産を抑制する。 腫瘍壊死因子−α(TNF)は炎症反応の重要な伝達因子であることが分かっている。活性化マクロファージによってつくりだされる非常に反応性の高い遊離基である酸化窒素(NO−)も、炎症応答の別の重要な伝達因子として新たに明らかになってきている。NO−および/または(インターロイキン−1およびインターロイキン−6などの)他のサイトカインと結びついたTNFも、乾癬、リューマチ性関節炎、骨関節症、およびその他の関節疾患など一定の自己免疫疾患で観察される組織破壊をもたらす。 腫瘍壊死因子および酸化窒素の生産を抑制する効果的な方法はこれまでの技術では十分ではなかった。さらに、これまでの技術では、体内の腫瘍壊死因子あるいは酸化窒素の望ましくないレベルで特徴づけられる病理生理学的状態を措置するための十分に効果的な方法も存在しなかった。発明の概要 したがって、本発明の目的は、腫瘍壊死因子の生産を抑制するための新しい方法を提供することである。 本発明の別の目的は、酸化窒素を抑制するための新しい方法を提供することである。 本発明のさらに別の目的は、体内の腫瘍壊死因子や酸化窒素の望ましくないレベルで特徴づけられる病理生理学的状態を措置するための新しい、そして効果的な方法を提供することである。 こうした目的を達成するために、本発明のひとつの実施例として、動物に薬理学的に有効な用量のレチノイン酸化合物を投与するステップを含む腫瘍壊死因子の生産を抑制するための方法が提供される。 本発明の他の実施例では、動物に薬理学的に有効な用量のレチノイン酸化合物を投与するステップを含む酸化窒素の生産を抑制する方法が提供される。 本発明のさらに別の実施例では、薬理学的に有効な用量のレチノイン酸化合物を投与するステップを含む望ましくないレベルの腫瘍壊死因子の生産によって特徴づけられる動物の病理生理学的状態を措置するための方法が提供される。 本発明のさらに別の実施例では、薬学的に有効な用量のレチノイン酸化合物を投与するステップを含む望ましくないレベルの酸化窒素の生産によって特徴づけられる動物の病理生理学的状態を措置するための方法が提供される。 本発明は感染症の2つの重要な伝達因子であるTNFおよびNO−生産に対する種々のレチノイド類の影響を示すものである。得られた結果は、オール−トランス−レチノイン酸(ATRA)が研究されたすべてのレチノイド類の中で最も有効であり、生理学および薬理学的に実現可能な投与レベル(0.1〜1.0μM)において、それが活性化されたマウスのマクロファージによるTNFおよびNO−生産のいずれをも抑制したことを示している。 本発明は、動物に対して、薬理学的に有効な用量のレチノイン酸化合物を投与するステップを含む、腫瘍壊死因子の生産を抑制する方法を提供するものである。本発明はまた、動物に対して、薬理学的に有効な用量のレチノイン酸化合物を投与するステップを含む、酸化窒素生産を抑制する方法を示したものである。 さらに、本発明はまた、薬理学的に有効な用量のレチノイン酸化合物を投与するステップを含む、望ましくないレベルの腫瘍壊死因子の生産によって特徴づけられる動物の病理生理学的状態を措置するための方法を提供するものである。同様に、本発明はまた、薬理学的に有効な用量のレチノイン酸化合物を投与するステップを含む、望ましくないレベルの酸化窒素の生産で特徴づけられる、動物の病理生理学的状態を措置するための方法を提供する。 一般的に、本発明による方法においては、腫瘍壊死因子の生産を抑制するどのようなレチノイン酸でも有効である。より好ましくは、レチノイン酸化合物は、オール−トランス−レチノイン酸、4−ヒドロキシレチノイン酸、および13−シス−レチノイン酸によって構成されるグループから選択される。最も好ましくは、レチノイン酸化合物はオール−トランス−レチノイン酸である。 本発明による方法は、どのような動物に対してでも適用することができる。最も好ましくは、本発明による方法で有効なレチノイン酸をヒトに対して投与する場合である。 一般的に、本発明による方法で投与されるレチノイン酸の用量は、動物の体内での腫瘍壊死因子あるいは酸化窒素の生産を抑制するものであればどのようなものでもよい。より好ましくは、レチノイン酸化合物の用量は10nMと1μMとの間の範囲である。 一般的に、本発明による病理生理学的な状態を措置するための方法は、望ましくないレベルの腫瘍壊死因子あるいは酸化窒素レベルによって特徴づけられるどのような疾患に対しても有効である可能性がある。好ましくは、これらの方法は、敗血症、悪液質、カポジ肉腫のような悪性化疾患、脳性マラリア、毛細血管漏出症候群、および自己免疫疾患で構成されるグループから選択される疾病に対して適用される。代表的な自己免疫疾患は全身性紅斑性狼瘡、リューマチ性関節炎、および多発性硬化症などである。さらに、本発明による方法は、ヒトにおける移植拒絶反応の措置において有効である可能性がある。 血液循環中の血清TNFのレベルの増大が観察されているのは、細菌性、ウィルス性および寄生虫による感染症、発熱、ガン、自己免疫疾患、敗血ショック、あるいは炎症性状態などの場合だけである。血清中のTNFのレベルは、生産の部位およびその判定方法に基づいてかなり変わる可能性がある。2つの異なったTNFの形態、つまり、膜に結合した形態(分子量:26kDa)および分泌される形態(分子量:17kDa)が存在しているので、血清サンプルは後者の形態についてのみ判定することができる。膜に結合したTNFは検出が難しく、組織分解あるいは組織のフロー・サイトメトリー検査を必要とする。したがって、ほとんどの病理状態で循環している血清のTNF濃度の適切性が問題とされている。循環血清のTNFレベルが検出されたり、検出されなかったりするのは適切ではない。 TNFが血液循環中で分泌されるほとんどの場合、可溶性形態のTNFレセプターであるTNF抑制因子の生産も観察される。この抑制因子は通常、TNFの生物学的活性を阻止する。したがって、バイオアッセイによるTNFレベルの判定は、サイトカインのレベルの本当の推定値はもたらさない。ほとんどの場合、TNFに特異的なイムノアッセイはこうした問題を回避に有効に用いることができる。したがって、本発明による上に述べたような病理生理学的状態を措置するための方法は、TNFの血清レベルの正確な判定なしで行うことができる。 投与される用量は、年齢、重量、および同時並列的に行われている措置があればその種類、そして、病理生理的な状態の性質に依存している。本発明による方法で有効な組成物は、経口投与用のカプセル、錠剤、リポソームでカプセル化したもの、溶液、懸濁液又はエリキシル、あるいは溶液、懸濁液、またはエマルジョンなどの無菌液形態など、どのような形態でも提供することができる。好ましくは、食塩水、あるいはリン酸緩衝塩水、または、その内部で、本発明の方法で用いられる化合物が適切な可溶性を発揮できるあらゆる担体のような不活性担体が用いられる。 本発明による方法で有用なレチノイン酸化合物は薬学的に受け入れ可能な担体とともに投与することができる。薬学的に受け入れ可能な担体とはそのレチノイン酸化合物が溶け込むことができ、投与される量で措置される個人に対して毒性がなければ、どんな溶剤でも差し支えない。本発明の方法で有用なレチノイン酸化合物の薬理学的用量とは、腫瘍壊死因子あるいは酸化窒素の生産を抑制する量のことである。 細胞系L−929(マウス結合組織)およびRAW264.7(マウス・マクロファージ)をアメリカンタイプカルチャーコレクション(メリーランド州ロックビル)から入手した。細胞系はマイコプラズマに対する検査は陰性であった。培地と血清はリムルス・変形細胞溶解物アッセイで内毒素がないかどうか検査し、その含有量が0.25ng/ml以下であることが確認された。 以下の実施例は本発明による方法の種々の実施例を示すためのものであって、いかなる意味においても本発明を限定するためのものではない。細胞培養 マウスL−929およびRAW264.7細胞培養株は週継代による継続的な指数増殖状態に保持された。両方の細胞株とも、5%のCO2を含んだ空気で加湿されたインキュベータ内でグルタミン(2mM)、10%仔ウシ胎児血清、10mMヘペス緩衝液、および抗生物質(ペニシリン100U/mlおよびストレプトマイシン100μg/ml)で補強したRPMI1640培地で成長させられた。マウス・マクロファージの単離 定住腹腔マクロファージは、メフタら(Mehta et al.),ジャーナルオブイムノロジー(J. Immunol.),136:4206−4212(1986)に述べられているようにジェンタマイシン(40μg/ml)を含んでいる5mlの氷冷ダルベッコ・リン酸緩衝食塩水を用いて、腹腔洗浄によって得られたものである。簡単に言うと、プールされた細胞は400×gで10分間沈降させられ、培地内で1.5×106/mlの濃度まで再懸濁させた。細胞懸濁液の1ミリリットル・サンプルを、底面積2cm2の各ウェル組織培養プレートに加えた。これらの細胞を60分間、37℃の温度で、CO2を5%加えた空気を満たしたインキュベータで培養した。非付着細胞は暖めた培養液で3回洗浄して取り除いた。このようにして得られた付着細胞(24−ウェル・プレートの各ウェル中、2mlあたり106個の細胞)は食細胞により取り込み、および非特異エステラーゼ染色によって95%以上マクロファージと判定された。 指数増殖期においては、RAW−264.7細胞には、24−ウェル・プレートの各ウェルで(2mlで2×106)、示されているような試薬を用いて刺激が与えられた。示されている時間的な間隔で、細胞を含まない上澄液を採取して、アリコートはTNFおよびNO−判定にすぐ用いられた。別のアリコートは後でマウスTNF−ELISAキットを用いてのTNF蛋白質判定に用いるために、−80℃の温度で保存した。培養上澄液内でのTNFの判定 アクチノマイシンD(1μg/ml)とTNFで24時間処理した20×103個の細胞を用いて、細胞毒性アッセイを行った。この目的のために、細胞は96−ウェル・ファルコン・プレートで、0.1mlの培地内に1夜置かれた。その後、培養液を取り出して、系列希釈されたヒトTNF、あるいはアッセイ用上澄液を体積で0.1ml入れた。37℃で24時間インキュベーションした後、培養液を取り出して、成長し得る細胞を、ル−ら(Leu et al.)ジャーナルオブイムノロジー(J. Immunol)147:1816(1991)で述べられているような手順に従って、クリスタル・バイオレット染色でモニターした。相対的な細胞成長可能性のパーセントをテスト・サンプルが存在している場合の光学濃度をテスト・サンプルが存在していない場合の光学濃度で割って100倍した値で示してある。マウスTNFは、高感度ELISAを用いて、培養上澄液から測定した。要約的に言うと、細胞を室温で15分間、20%メタノール中の0.5%クリスタル・バイオレットで染色した。過剰な染色剤をタップ・ウォーターの存在下で取り除いて、プレートは空気で乾燥した。染色された細胞はソレンソンの緩衝液(5%エタノール中に0.1Mナトリウムを加えたもの、pH:4.2)で可溶化され、可溶化された色素の吸光度をDynatech MR5000マイクロプレート・リーダーで540nmで読み取った。相対的な細胞成長可能性は、テスト・サンプルが存在している場合の光学的濃度を培地が存在している場合のそれで割って100倍して求めた。 TNF活性の抑制因子はその活性が隠されている場合もある。このことで、バイオアッセイでは、TNFを低く見積もることがある。そうした場合、ELISAアッセイ(R&D System Inc.)を用いて、TNFを判定した。このアッセイは高度に定量的で、感受性が高く(ピコグラム単位での感度を有している)、そして、テスト対象に固有の結果を提供してくれる。この方法は、定量的『サンドウィッチ』酵素免疫アッセイ技術を用いるものである。TNFに固有の反応を示すモノクローナル抗体を1夜マイクロタイター・プレート上にコーティングした。その後、サンプルをウェルにピペットで注入して、サイトカインが存在する場合は、固定化抗体によって捕捉された。結合していないサンプル蛋白質はすべて水で洗い流した後、酵素と結合したTNFに特異的な反応を示すポリクローナル抗体をウェルに加えて、最初のインキュベーション期間中にサイトカイン結合に結合させた。結合してないすべての抗体−酵素試薬を除去するための洗浄に続いて、ウェルに基質溶液を加えたところ、最初の段階で結合したサイトカインの量に比例して、色が濃く発色した。テストされるサンプルと共に、公知の濃度のTNF標準を用いて、一連のウェルを用意した。そして、これらの標準ウェルにおけるサイトカインの濃度と光学的濃度との相関を示す曲線を作成した。サンプルの光学的濃度をこの標準曲線と比較することによって、未知のサンプル内のサイトカインの濃度を計算することができる。酸化窒素の測定 種々の条件下での活性化マクロファージ産出酸化窒素の最終産物である安定した亜硝酸塩の量を、ディングら(Ding et. al.)ジャーナルオブイムノロジー(J. Immunol.)145:940(1990)の方法に従って判定した。要約して言うと、コントロール、あるいはLPS(100ng/ml)および/またはIFN−γ(10U/ML)で刺激を与えたマクロファージのみ、またはATRAの存在する条件の下で培養されたマクロファージからの培養上澄液、あるいはホルボールミリスチン酸アセテート(PMA,20ng/ml)で刺激を与えた細胞株から得た上澄液を同じ量のグリース試薬(1%スルファニルアミド;0.1%ナフチルエチレン・ジアミン・ジヒドロクロライド;2.5%H3PO4)を室温で10分間混合した。550nmでのその吸光度をVmaxマイクロプレート・リーダーで判定した。各テスト・サンプルの亜硝酸塩については、各実験で得られた亜硝酸ナトリウム標準曲線から外挿して判定した。トランスグルタミナーゼ・アッセイによる測定 細胞溶解物内のトランスグルタミナーゼ活性をメフタら(Mehta et. al.),(1986)に詳しく述べられている方法にしたがって、37℃の温度でトリチウム標識プトレッシンのCa2+に依存した取り込みを判定することによって評価した。要約的に言うと、細胞を等張食塩水内で三度洗い、皿から150mMのNaCl、1mMのEDTA、および15mMのβ−メルカプトメタノールを含んだ最低20mMのトリス−塩酸、pH7.6に入れて、超音波処理で溶解した。細胞溶解物中の組織トランスグルタミナーゼ活性を、50mMトリス−塩酸、pH7.5、30mM NaCl、2mg/ml N,N’−ジメチルカゼイン、10mMジチオトレイトール、5mM CaCl2、0.2mMプトレッシン、0.4mM 3Hプトレッシン(固有活性33.1Ci/mmole)を含む最終容積100μl反応混合物内で、37℃の温度下で判定した。酵素活性は細胞蛋白質1ミリグラム、1時間あたりにジメチルカゼイン内に共有結合で取り込まれるプトレッシンのナノモルで示した。細胞抽出物内の蛋白質含有物はBiorad社のBradford試薬によって判定した。TNF生産に対するATRAの影響 図1は、IFN−γ(10U/ml)と組み合わせたLPS(100ng/ml)が、標的細胞としてL929を用いた生物学的アッセイで判定して、マウス定住腹腔マクロファージ内での高いTNF生産を誘発することを示している。活性化マクロファージから得た培養上澄液の細胞毒性活性は、培養中にTNFに対する単一特異性抗体とL929細胞を同時に添加することで、完全になくなった。活性化段階中のATRAと細胞のコカルチャーは、TNF放出をかなり抑制した。ATRAは活性化マクロファージによるTNF生産の最も強力な抑制因子であり、それに対して、レチンアルデヒドはまったく不活性であった(表1参照)。他のビタミンA類似物のTNF生産抑制度は以下のような順番であった:ATRA>4−ヒドロキシ ATRA>13−cisレチノ酸>レチノール(ビタミンA)>レチンアルデヒド(表1参照)。 TNF生産に対するATRAに誘発された抑制効果は特異性のある効果であり、薬剤の細胞に対する非特異的毒性によるものではなかった。ATRAによって処理したマクロファージは、処理されなかったコントロール細胞と比較して、その形態に特に変化は認められなかった。培養されるマクロファージ内でATRAによって特異的に誘発される酵素であるトランスグルタミナーゼの発現は、ATRAおよび他の類似物の存在下で増大した(表1)。培養物にATRAを伝達するために用いられる媒体であるDMSOは活性化されたマクロファージによるTNF生産に対して、それ自体では影響を及ぼさなかった。さらに、ATRAあるいはDMSOをL929細胞培養株に追加しても、これらの細胞を殺す外部から加えたTNFの能力に対する影響は認められなかった。活性化されたTNF生産のATRAによって媒介された抑制効果は用量および時間経過に依存していた。 図2は、TNF分泌におけるATRA用量関連抑制を示している。ATRAのTNF分泌に対する抑制効果は10-8Mで開始され、最大抑制効果は1−2.5×10-6Mで観察された。他の、それぞれ独自に行われた2つの実験でも同様の結果が得られた。ATRAで処理した培養物におけるTNF活性の低下が可溶性TNFレセプターの加速された放出によるものではない可能性を排除するために、培養上澄液をELISAにかけてTNF蛋白質の判定を行った。図2Bは、TNF活性の低下がTNF分泌の低下によるものであることを明白に示している。さらに、ATRAで処理したマクロファージは125Iラベル−TNFへの結合に特別の変化はもたらさなかった。 図3は、活性化段階中の培養期間全体を通じてATRAが継続的に存在することは、ATRAが活性化マクロファージによるTNF放出の最大抑制を達成する上で基本的に重要であることを示している。したがって、TNF生産の抑制は、IFN−γおよびLPSによる活性化の開始後、マクロファージ培養物に対するATRAの添加を遅らせることによって、時間経過に依存した形態にすることができる。RAW264.7細胞におけるATRAの影響 いくつかの形質変換された細胞株が、腫瘍プロモーターフォリボル・エステル(TPA)による活性化に応じてTNFを生産することが示されている。ATRAによって媒介されたTNFの抑制が一般的な現象であるかどうかを確かめるために、マウスのマクロファージに似た細胞株であるRAW−264.7が、ATRA(1μM)の存在している条件と存在していない条件の下でTPA(10μg/ml)に応えてTNFを生産する能力があるかどうかを調べた。図4は、ATRAがRAW−264.7細胞において、TPAが引き金となるTNF生産の強力な抑制因子であることを示している。培養上澄液におけるTNF活性の低下は、マウス−TNF固有ELISAキットで判定して、TNF蛋白質の量の低下と同時並行的に起きることが認められた。活性化されたマクロファージからのNO−生産に対するATRAの影響 図5に示すように、ATRAが存在している条件でのIFN−γおよびLPSによる定住腹腔マウス・マクロファージの活性化は、培養上澄液におけるNO−生産を大幅に低下させた。活性化マクロファージによるNO−生産に対するATRAの影響は用量に依存している(図6A)と同時に時間とも依存していた(図6B)。したがって、ATRA(10nM)の生理学的に許容される投与レベルではその抑制効果は明らかであり、薬理学的に可能な投与レベル(1μM)で最大となった。 TNF生産に対するその影響と同様、NO−生産に対する最大の抑制効果を達成するためには、活性化期間全体を通じて、ATRAの継続的な存在が必要であった。したがって、種々の濃度(図6A)、およびIFN−γ/LPSによる活性化の開始後の異なった時間間隔(図6B)でATRAを添加したところ、培養上澄液におけるNO−の時間経過に依存した蓄積が認められた。 マクロファージは感染性作用因子および腫瘍に対する宿主防衛において極めて重要な役割を果たす。それらはまた、炎症応答など、いくつかの免疫機能の調節にも関与する。こうした応答の大部分はサイトカインと呼ばれる可溶性の伝達因子の生産を通じて修正される。本発明はATRAおよびその類似物のLPS/IFN−γを引き金とする、インビトロでのマウス腹腔マクロファージによるTNFおよびNO−生産に対する下方調節効果について開示するものである。生理学的濃度として10nM程度の低い投与量で、TNFおよびNO−の抑制が認められた。したがって、観察された効果は生理学的な意義を有している。ATRA投与に続いて、100万分の1モルレベルのATRAの血漿濃度(plasma concentration)を達成することができる。この程度の濃度で、活性化されたマクロファージによるTNF生産の75〜90%程度が阻止された(図1)。 TNFおよびNO−は、いずれも、マクロファージで媒介された炎症応答と、腫瘍細胞を殺すことにおいて、重要な役割を果すことが示された。マウス・アデノカルシノーマ(EMT−6)標的細胞に対する内発性および外来性レチノイド(ATRAを含む)は活性化されたマクロファージで媒介されたサイトスタシス(cytostasis)の強力な抑制因子である。一方、活性化したマクロファージによるアルギニンに依存したNO2/NO3生産は最終的にはEMT−6細胞の成長抑制につながるミトコンドリアによる呼吸の抑制を引き起こすことが示されている。 観察されたTNFおよびNO−生産に対するATRAの抑制効果は、プロスタグランジン生産に対する影響によるものではなかった。ATRAは、投与された濃度では、活性化マクロファージによるプロスタグランジンE生産に対しては何の影響も及ぼさなかった。同様に、本発明による方法で用いられる程度の濃度(最大2.5μM)では、ATRAは培養されたマクロファージに対して、観察できる程の毒性影響は与えなかった。IFN−γなど、他のサイトカインとの組み合わせで用いられた場合、TNFはマクロファージによるNO−生産を誘発することができる。 本明細書で触れられているすべての特許および公開資料は本発明が関連する分野の当業者が理解できる程度のものである。これらすべての特許および公開資料は、各個別の公開資料それぞれの場合と同様に、引例として本文に組み込まれる。 本発明が上に述べたような目的および利点、およびそれらに本質的に付随した目的や利点を実行するのによく適合していることは、当業者ならすぐ分かるであろう。ここに示されている諸例は、方法、手順、措置、分子、および具体的な化合物と共に、現在の段階で好ましい実施例を示しており、例として示すものであって、本発明の発明を限定するためのものではない。特許請求の範囲において定義されているような本発明の精神の範囲内において、その変更および他の使用法などは当業者が想到できるであろう。 開示のために以下に示される、現段階での本発明の好ましい実施例の説明と、関連する図面を参照すれば、他の、そしてさらなる特徴や利点が明らかになるであろう。 これらの図面は必ずしも正確な寸法ではない。本発明のいくつかの特徴は、明瞭、簡潔に示すために、寸法的に誇張して示している場合もある。図1は、活性化されたマウス腹腔マクロファージによるTNF放出に対するオール−トランス−レチノイン酸(ATRA)措置の影響を示している。インターフェロン−γ(IFN−γ)(10U/ml)およびリポポリサッカライド(LPS)(100ng/ml)を用いて、ATRA(1μM)の存在している条件、および存在していない条件の下で、24−ウェル・プレート内で200万個のマクロファージを活性化した。4時間後、細胞を含まない上澄液を採取して、実施例1に述べるようにTNF活性の評価を行った。示してある結果は、類似の実験を4回行ったものの一つである。図2は、腹腔マクロファージにおけるTNF生産のATRA用量依存抑制を示している。マクロファージ単層を示されている用量レベルのATRA存在下でIFN−γ+LPSによって活性化させた。標的としてL929細胞を用いて(図2A)、あるいは、実施例3に示すように、マウスTNF−特異的エンザイム結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)を用いて(図2B)、4つの細胞を含まない上澄液のTNFに関する分析を行った。示されている結果は2回の実験のひとつから得た4つ組の値の平均(±SD)である。図3は、活性化腹腔マクロファージとATRAによるTNF生産の依存度の時間経過を示している。マクロファージ単層は培地だけ(○)、あるいは活性因子(IFN−γ+LPS、●)を含んだ培地の存在している条件で、全部で5時間培養された。ATRA(1μM)は、上澄液採取前のいろいろな時点で異なった培養株に加えられた。その後、細胞を含まない上澄液を用いて、バイオアッセイ(図3A)またはELISA(図3B)でTNFレベルの判定を行った。示されている結果は、2つの実験の1つから得た3つ組の値の平均値である。図4は、RAW−264.7細胞からのTNF生産に対するATRA−措置の影響を示している。細胞成長の指数増殖期中のRAW264.7細胞を24−ウェル・プレート(2×106細胞/ウェル)で、ホルボールエステル(TPA,20ng/ml)および/またはATRA(1μM)の存在している条件、および存在していない条件の下で培養された。48時間後、細胞を含まない上澄液を採取して、TNF活性の評価を行った。示されている結果は3回の同様の実験のひとつから得た3つ組の値の平均値である。図5は、インビトロで活性化されたマウス腹腔マクロファージからのATRAによるNO−生産の抑制を示している。1μMのATRAと組み合わせた、あるいは組み合わせていない活性因子の存在している条件、および存在していない条件の下で、200万個の細胞をインキュベートした。24時間後、細胞を含まない上澄液を採取して、実施例4に示してあるようなNO−レベルの評価を行った。示されている結果は、代表的な実験から得た4つ組の値からの平均値である。図6は、ATRAによるNO−生産と腹腔マクロファージとの投与量および時間経過で見た関係を示している。マクロファージ単層は示されている投与量(図6A)で、IFN−γ(10U/ml)およびLPS(100ng/ml)とATRAとの組み合わせによって活性化された。また、ATRAは24時間の活性期間後上澄液(図6B)を採取する前に、異なった時間間隔で加えられた。細胞を含まない上澄液について、NO−が生産されていないかどうかについての評価が行われた。示されている結果は4つ組の値の平均値±SDである。酸化窒素の生産を抑制するために効果的な濃度である10nM〜1μMのレチノイン酸化合物を含有する薬剤組成物であって、前記酸化窒素が全身性狼瘡紅斑症、多発性硬化症、悪液質、脳性マラリア、移植拒否反応及び毛細血管漏出症候群(capillary leak syndrome)で構成されるグループから選択される病理生理学的状態において生産されるものであることを特徴とする薬剤組成物。レチノイン酸化合物が、オール−トランス−レチノイン酸、4−ヒドロキシ−レチノイン酸、および13−シス−レチノイン酸で構成されるグループから選択される請求項1の薬剤組成物。 病理生理学的状態が、全身性狼瘡紅斑症である請求項1の薬剤組成物。 病理生理学的状態が、多発性硬化症である請求項1の薬剤組成物。 病理生理学的状態が、悪液質である請求項1の薬剤組成物。 病理生理学的状態が、脳性マラリアである請求項1の薬剤組成物。 病理生理学的状態が、移植拒否反応である請求項1の薬剤組成物。 病理生理学的状態が、毛細血管漏出症候群(capillary leak syndrome)である請求項1の薬剤組成物。 酸化窒素の生産を抑制するために効果的な濃度である10nM〜1μMのオール−トランス−レチノイン酸、4−ヒドロキシ−レチノイン酸および13−シス−レチノイン酸を含有する薬剤組成物であって、前記酸化窒素は自己免疫疾患及び敗血症で構成されるグループから選択される病理生理学的状態において生産されるものであることを特徴とする薬剤組成物。 病理生理学的状態が、自己免疫疾患である請求項9の薬剤組成物。 自己免疫疾患がリューマチ性関節炎である請求項10の薬剤組成物。病理生理学的状態が、敗血症である請求項9の薬剤組成物。 【課題】 細胞機能の2つの重要な伝達因子である、腫瘍壊死因子および酸化窒素の生産を抑制し、腫瘍壊死因子あるいは酸化窒素の望ましくない生産あるいはレベルによって特徴づけられる病理生理学的な状態を措置するための新しい方法の提供。【解決手段】 感染症の2つの重要な伝達因子であるTNF及びNO−生産に対する種々のレチノイド類の影響を示すものである。オール−トランス−レチノイン酸(ATRA)が生理学および薬理学的に実現可能な投与レベルにおいて、それが活性化されたマウスのマクロファージによるTNFおよびNO−生産のいずれも抑制したことを示している。【選択図】図1


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