タイトル: | 公開特許公報(A)_未反応モノマーを軽減した医科歯科用材料 |
出願番号: | 2005114020 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A61K 6/00,A61K 6/083 |
渕上 清実 吉岡 郁治 八穴 啓史 JP 2006290803 公開特許公報(A) 20061026 2005114020 20050411 未反応モノマーを軽減した医科歯科用材料 株式会社松風 390011143 渕上 清実 吉岡 郁治 八穴 啓史 A61K 6/00 20060101AFI20060929BHJP A61K 6/083 20060101ALI20060929BHJP JPA61K6/00 AA61K6/083 500 1 OL 7 4C089 4C089AA10 4C089BA13 4C089BD01本発明の技術分野は歯科領域におけるレジンモデファイドグラスアイオノマーセメントに関する。グラスアイオノマーセメントは、リン酸亜鉛セメント等に比べて生体適合性が高く、歯質接着性が良好なことや、その優れたフッ素徐放能のためウ蝕予防の可能性があるなど臨床的期待が高く、今日まで歯科臨床で日常的に使用されている。しかし該セメントに使用される不飽和カルボン酸のホモポリマーまたはコポリマーである酸性高分子電解質(ポリアルケン酸)は一般工業的にはラジカル重合により合成される為に、数%程度以上の未反応モノマーを含有する。該酸性高分子電解質(ポリアルケン酸)の基本骨格はアクリル酸モノマーやメタクリル酸モノマーであるが、これらの酸性モノマー類は他の不飽和カルボン酸モノマーと比較して比較的沸点が低く、このために独特な不快な臭気を有し、また細胞毒性が高いことで知られている。さらに最近、レジン成分(ラジカル重合性モノマー)を配合したレジンモディファイドグラスアイオノマーセメントが普及しつつある。特公第2869078号は、側鎖に不飽和二重結合基を導入したグラフト化ポリアルケン酸の効果を提案している。これらのセメントでは、従来型グラスアイオノマーセメントに比しレジンの化学重合や光重合反応を伴うため硬化速度は速くなり、感水の問題も改善されている。しかし、これらのセメントもラジカル重合により合成された不飽和カルボン酸のホモポリマーまたはコポリマーである酸性高分子電解質(ポリアルケン酸)を含有している点では先のグラスアイオノマー(グラスポリアルケノエート)セメントと基本的に変わらず、アクリル酸モノマーやメタクリル酸モノマーを数%以上含有するという欠点をいまだに有している。以上のように、臨床にて多量に消費される酸・塩基反応によるグラスアイオノマーセメントやレドックス重合を併用したレジンモディファイドグラスアイオノマーセメントでは、経済的側面からイオン重合等で不飽和カルボン酸のホモポリマーまたはコポリマーである酸性高分子電解質(ポリアルケン酸)を合成・使用することは事実上不可能であり、反応論的に未反応モノマーを数%以上含有するラジカル重合に頼らざるを得ない。特公第2869078号英国特許1,316,129号従来、医科・歯科の分野において使用される硬化性組成物に残存するアクリル酸モノマーやメタクリル酸モノマーを積極的に除去する試みは存在しなかった。その第一の原因としてラジカル重合を利用しアクリル酸やメタクリル酸を基本骨格とする酸性高分子電解質(ポリアルケン酸)を合成する場合、その反応機構よりどうしても未反応モノマーが残存することは回避できないことによる。また比較的残存モノマーが少ない合成法としてイオン重合が挙げられるが、本法は重合条件が厳密であり、医科・歯科分野において多量に消費されるグラスアイオノマーセメントやレジンモディファイドセメントへの適用は経済的側面から事実上困難であった。上述した問題を解決すべく鋭意検討した結果、我々は合成方法が経済的な溶液ラジカル重合後に透析膜分離、限外濾過膜分離、共沸点蒸留、再沈殿法、スプレードライイング法、真空乾燥法及び真空凍結乾燥法を単独または組み合わせる手法を行うことにより、効率的かつ経済的に未重合のアクリル酸モノマーやメタクリル酸モノマー等の低沸点化合物を除去し、該未重合アクリル酸モノマーやメタクリル酸モノマー等の含有率を1質量%以下含有するポリカルボン酸を組成中に含む医科・歯科用硬化性組成物に応用し本発明を完結した。本発明により合成・精製された未重合のアクリル酸モノマーやメタクリル酸モノマーの含有率が1質量%以下の酸性高分子電解質(ポリアルケン酸)を含有する医科・歯科用硬化性組成物は、従来より課題であった完全硬化前の不快な酸臭気を軽減し更に生体材料として特に求められる細胞毒性の著しい低下が認められた。本発明の医科・歯科用硬化性組成物はその実施において、ラジカル重合性レジン成分およびポリカルボン酸を含有するレジンモディファイドグラスアイオノマーセメントに好適に応用される。即ち、粉成分としてフルオロアルミノシリケートガラス粉末、重合開始材、重合促進材を基本とし、液成分として未反応モノマー0.00001〜1質量%を含む酸性高分子電解質(ポリアルケン酸)、精製水、ヒドロキシカルボン酸およびラジカル重合性単量体が挙げられる。これらを共存可能な組み合わせで任意に1以上選択して使用することにより、目的とする態様で本発明を実施することができる。ここで言うラジカル重合性単量体として2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−または3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、1,2−または1,3−または2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル−1,2−ジ(メタ)アクリレート、2,3,4−トリヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイル−1,3−ジヒドロキシプロピルアミン、ビニルピロリドンおよび1−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ナフトキシプロピル(メタ)アクリレートおよびビスフェノール−Aとグリシジル(メタ)アクリレートの付加物のごときフェノールのグリシジル(メタ)アクリレート付加物および、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)(メタ)アクリレートおよびビニルピロリドン等が挙げられるが、好ましくは水溶性のラジカル重合性単量体が挙げられる。即ち2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや重合度9以上のポリエチレングリコールジメタクリレートが好適である。その含有量は液材中に好ましくは1質量%から70質量%、より好ましくは10質量%から50質量%、さらに好ましくは20質量%から40質量%の範囲である。重合開始剤としては過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ベンゾイルパーオキサイド、4,4'−ジクロロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシッド等が挙げられる。特に好ましくはベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーベンゾエートおよびtert−ブチルパーオキシマレイン酸が挙げられるが、好ましくは水溶性の重合開始材が挙げられる。即ち、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムが好適である。これらの含有量はラジカル重合性モノマーに対して、好ましくは0.0001質量%から3質量%、より好ましくは0.001質量%から2質量%、さらに好ましくは0.005質量%から1質量%の範囲である。重合促進剤としてアミン類、バルビツール酸誘導体、有機錫化合物およびスルフィン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、あるいはアミド塩から硬化方式に応じて選択すればよい。好ましい重合促進剤としては、アスコルビン酸、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルホスフィン、アリルチオ尿素、およびN,N−ジメチル−p−トルイジンが挙げられる。さらに、光重合の場合には、アミン類およびバルビツール酸類のごとき有機窒素化合物または有機錫化合物が含まれ、特にN,N−ジメチル−P−トルイジン、N,N−(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、トリエチルアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−フェニルグリシン−グリシジルメタクリレート、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1−メチルバルビツール酸、1,3−ジフェニルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−イソプロピルバルビツール酸、5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−n−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロペンチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、チオバルビツール酸、1,3,5−トリメチル−2−チオバルビツール酸、5−ブチル−2−チオバルビツール酸、これらのバルビツール酸誘導体の塩類(特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩)、ジ−n−ブチル−錫−マレエート、ジ−n−ブチル−錫−マレエート(ポリマー);ジ−n−オクチル−錫−マレエート、ジ−n−オクチル−錫−マレエート(コポリマー)、ジ−n−オクチル−錫−ラウレートおよびジ−n−ブチル−錫−ジラウレートが挙げられる。スルフィン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属あるいはアミド塩としては、芳香族スルフィン酸またはその塩が好適に用いられる。好ましくは歯科領域において通常使用されるベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、アルキル基置換ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等が例示される。芳香族スルフィン酸アミドとしてはN,N−ジメチル−p−トルエンスルフィン酸アミド、ベンゼンスルフィン酸アミド、N,N−ジメチル−p−トルエンスルフィン酸アミド、ベンゼンスルフィン酸アミド、N,N−ジメチル−p−トルエンスルフィン酸モルホリド、p−トルエンスルフィン酸モルホリドが挙げられるが、好ましくは水溶性化合物である。即ち、アスコルビン酸、バルビツール酸誘導体が好適である。これらの含有量はラジカル重合性モノマーに対して、好ましくは0.001質量%から3質量%、より好ましくは0.01質量%から2質量%、さらに好ましくは0.05質量%から1質量%の範囲である。未重合モノマーを1質量%以下含む酸性高分子電解質としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸から適宜組み合わせられる共重合体か単独重合体が好適である。これらの含有量は液材に対して、好ましくは5質量%から80質量%、より好ましくは10質量%から60質量%、さらに好ましくは20質量%から40質量%の範囲である。ヒドロキシカルボン酸としては酒石酸、リンゴ酸が挙げられる。これらの含有量は液材に対して、好ましくは0.1質量%から20質量%、より好ましくは0.5質量%から20質量%、さらに好ましくは1質量%から10質量%の範囲である。酸反応性フィラーとしては酸化アルミニウム−酸化ケイ素を基本骨格とし、修飾イオンンとしてカルシウム及び/またはストロンチウムを含むフルオロアルミノシリケート粉末が好適である。また該酸反応性フィラーは液材とのなじみ性や寿命性を共存させる目的でシランカップリング剤にて表面処理を施してもよい。次に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。1.酸性高分子電解質の調整株式会社松風製グラスアイオノマーCX-Plusの液材100mlに蒸留水900mlを加水し、ベーンポンプにて日本ミリポア製限外濾過膜(バイオマックス 分画分子量 濾過面積0.1m2)にて最終体積が100mlになるまで限外濾過を行った。その後、さらに蒸留水を400ml加え予備凍結し東京理科器械製フリーズドライヤーを使用し、凍結乾燥した。得られたポリアルケン酸粉末を蒸留水にて固形分濃度が45wt%になるように溶液調整した。この酸性高分子電解質溶液をリン酸緩衝液にて希釈しGPC測定を行ったが、未重合モノマーは認められなかった。この45wt%溶液を標準液1(実施例用液1)とする。2.比較酸性高分子電解質の調整標準液1にアクリル酸モノマーを表1に示した濃度になるように添加した。3.医科・歯科用硬化性組成物の調整例1~5実施例用液又は比較例用液を用いて粉液型レジンモディファイドグラスアイオノマーセメントの液材を表2の調合組成で調整した。また粉材は表3の調合組成にて調整した。なお表3に記載した過硫酸カリウムおよびアスコルビン酸は市販薬品の結晶をアルミナ乳鉢にて50μm以下に微粉砕し株式会社松風製CX-PLUS粉材に均一混合した。9EG:ポリエチレングリコールジメタクリレートでエチレングリコールの平均重合度が9である水溶性ラジカル重合性モノマー2-HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.熱脱離GC−MSによる液材から揮発するアクリル酸モノマー類の定量分析医科・歯科用硬化性組成物の実施例用液材又は比較例用液材から揮発するアクリル酸モノマーの定量分析を以下の分析方法にて行った。試料前処理試料50mgを石英製試料皿に秤量し、加熱炉に設置した加熱管(室温25℃)中央部に導入した。窒素ガスを50ml/minの流速で流し、追い出される揮発性成分を吸着管(Carbotrap400)に捕集した。捕集時間は20分とした。(気体採取量1L)GC/MS-EI法による分析捕集した吸着管を熱脱離GC/MS分析システムのチャンバー部にセットした。チャンバー部(吸着管)を急速加熱して有機成分を離脱させ、GC/MSに導入し測定した。得られたトータルイオンクロマトグラム(TIC)で試料間の比較を行い、検出された成分のスペクトル同定を行った。なお、GC/MS測定条件は以下のとうりである。GC/MS分析条件(熱離脱条件)装置 :スペルコ社製 熱離脱装置(TDU)離脱条件 :300℃まで急速昇温し5分間保持(GC/MS測定条件)GC/MS :HP6890/HP5973分離カラム:SPB-1(sulfur)30m×0.32mmI.D 4.0μm FilmGC温度 :‐30℃→300℃ 昇温10℃/minGC注入口:TDU使用キャリアー:ヘリウム 3ml/min検出器 :質量分析計(MS)230℃測定質量範囲:m/Z=33~600分析結果上述した分析の結果を表4に記載する。5.調整した各セメント組成物から溶出する成分のヒト皮膚細胞への毒性試験東洋紡績株式会社製三次元培養皮膚モデル「テストスキン」を用いて以下に記載した方法にて抽出した溶液を該細胞に10時間原液のまま作用させた後に細胞生存率を算出した。なお実験操作は「テストスキン」使用方法に従い行った。実施例用液材又は比較例用液材1.0gに対して粉材1.6gを紙練板上にて均一に混合した後、直径10mm/厚さ1.5mmのフッ素樹脂モールドに充填しカバーグラスにて圧接後し練和開始から2分後に温度37℃‐相対湿度100%の環境にて1時間放置し硬化させた試験体に10ml/cm2となるように蒸留水を加え37℃にて24時間溶出成分を抽出した。表5に細胞生存率の試験結果を記載する。以上記載した様に、本発明によるアクリル酸のような低沸点未重合モノマーを意図的に除去し含有率を1質量%以下にすることにより酸性高分子電解質を含有する系からの臭気は大幅に低減可能となり(参考表参照)、またそれに起因する細胞毒性も大幅に低減したことは明らかであり、医科・歯科用材料として有用である。実施例用液材1〜3は刺激臭をほとんど感じず、比較例用液材1,2は刺激臭が認められた。レジンモディファイドグラスアイオノマーセメントにおいて、フルオロアルミノシリケートガラス粉末、重合開始材、重合促進材を含む粉成分と、液成分として未反応モノマー0.00001〜1質量%を含む酸性高分子電解質、精製水、ヒドロキシカルボン酸およびラジカル重合性単量体からなるレジンモディファイドグラスアイオノマーセメント。 【課題】医科歯科用材料において、効率的かつ経済的に未重合のアクリル酸モノマーやメタクリル酸モノマー等の低沸点化合物を除去し、該未重合アクリル酸モノマーやメタクリル酸モノマー等の含有率を1質量%以下含有するポリカルボン酸を組成中に含む医科歯科用硬化性組成物の提供。【解決手段】レジンモディファイドグラスアイオノマーセメントにおいて、フルオロアルミノシリケートガラス粉末、重合開始材、重合促進材を含む粉成分と、液成分として未反応モノマー0.00001〜1質量%を含む酸性高分子電解質、精製水、ヒドロキシカルボン酸およびラジカル重合性単量体が挙げられ、これらを共存可能な組み合わせで使用することにより目的を達成できる。【選択図】なし