タイトル: | 特許公報(B2)_スポット溶接部の破断予測装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体 |
出願番号: | 2005112644 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 3/00,B23K 11/24,G01N 3/08,G01N 3/24,G06F 17/50 |
吉田 博司 野村 成彦 上西 朗弘 JP 4150383 特許公報(B2) 20080704 2005112644 20050408 スポット溶接部の破断予測装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体 新日本製鐵株式会社 000006655 國分 孝悦 100090273 吉田 博司 野村 成彦 上西 朗弘 JP 2004118201 20040413 20080917 G01N 3/00 20060101AFI20080828BHJP B23K 11/24 20060101ALI20080828BHJP G01N 3/08 20060101ALI20080828BHJP G01N 3/24 20060101ALI20080828BHJP G06F 17/50 20060101ALI20080828BHJP JPG01N3/00 QB23K11/24G01N3/08G01N3/24G06F17/50 G01N 3/00 B23K 11/24 G01N 3/08 G01N 3/24 G06F 17/50 特開2002−316267(JP,A) 鷹取収、森本准哉、畑弘敏,鉄道車両の衝突シミュレーション,自動車研究,日本,2002年 7月 1日,第24巻、第7号,p.265-268 中西栄三郎、井上輝明、渡辺茂雄,車体衝突時のスポット溶接破断予測に関する試み,自動車技術会 学術講演会前刷集,日本,2000年10月17日,No.88-00,p.1-4 井上輝明、中西栄三郎,溶接部破断を考慮した車体衝突シミュレーション,自動車技術会 学術講演会前刷集,日本,2000年10月17日,No.88-00,p.5-7 7 2005326401 20051124 14 20070905 ▲高▼見 重雄 本発明は、自動車用の構造部材のスポット溶接に利用して好適な、より詳しくは衝突変形時に部材のスポット溶接部が破断するのを予測するためのスポット溶接部の破断予測装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。 近年、自動車業界では、衝突時の乗員への傷害を低減しうる車体構造の開発が急務の課題となっている。そのような衝突安全性に優れた車体構造は、衝突時の衝撃エネルギーを客室部以外の構造部材で吸収させ、客室部の変形を最小限とし生存空間を確保することにより実現できる。つまり、構造部材により衝撃エネルギーを吸収させることが重要である。 自動車のフルラップ衝突やオフセット衝突での衝撃エネルギーを吸収させる主要な構造部材はフロントサイドメンバーである。フロントサイドメンバーは、プレス成形等で部材成形後、スポット溶接により部材を閉断面化している。通常このフロントサイドメンバーを座屈させることで、衝撃エネルギーを吸収させる。衝撃エネルギーの吸収を向上させるためには、座屈形態を安定化させ、途中で折れ曲りや破断をさせないことが重要である。 前記の部材のスポット溶接に関して、座屈を安定化させるためにはスポット溶接間隔やナゲット径や溶接条件を最適化しないと、座屈時に溶接点からの破断が起きてしまい、安定した座屈形態にならず衝撃エネルギーの吸収が低下するという問題がある。解説論文No.9705JSAE SYMPOSIUM「新しい車体構造成形技術」JIS Z3136JIS Z3137特開平6−182561号公報特開2002−31627号公報 従来からこの問題の解決のため、例えば非特許文献1にあるように、スポット溶接間隔をいろいろと変えて部材を試作し、座屈試験をして溶接点で破断せず安定に座屈する条件を調べていた。しかしながら、この方法では自動車ごと、また部材ごとに試作をつくり試験を行うという試行錯誤が必要となり、製作コストがかかり、設計にも時間を要するという問題を抱えていた。 また、特許文献1には、フロアパネルでの荷重のかかるところの溶接部の剥離防止構造が提案されているがフロアパネルについてのみの構造であり、すべての衝撃吸収部材で溶接点の剥離を防ぎ安定座屈により衝撃エネルギーを吸収するスポット溶接法には試作による試行錯誤になっていた。 さらに、特許文献2では、スポット溶接間隔の最適化が提案されているが、個々のスポット溶接強度については、単純な指標でしかなく、破断そのものの正確な予測になっていないため、精度の良いスポット溶接部破断の予測にもとづく設計ができない問題があった。 スポット溶接部の強度の指標は、非特許文献2、3に規定される、せん断引張試験及び十字形引張試験が代表的である。この他にも多様な荷重状態を想定した多様な試験形態での報告例はあるが、一般には、JISで規定された2種の試験により、せん断引張試験値を溶接部のせん断強度として、また、十字形引張試験値を溶接部の剥離強度として扱っている。 しかし、試験により得られたスポット溶接のせん断強度及び剥離強度が、幅等の構造影響を受けることから、実部材では、試験値を様様な観点から補正して推定せざるを得ない。近年飛躍的に進歩してきた計算機上で自動車の衝突のシミュレーションによる最適設計を行うシステムにおいては、この推定精度が十分とは言えず、衝突安全の最適な設計の信頼性を低下させていた。 本発明は、部材の試作・衝突試験によらず、コンピュータ上での有限要素法解析により、衝撃変形時におけるスポット溶接部の破断の予測を有限要素法解析中に組込んだ予測モデルにより判定して、部材の衝撃時の溶接部破断を防ぎ、変形座屈モードの適正化を図り、衝撃エネルギーの吸収を向上させることを目的とするものである。 本発明のスポット溶接部の破断予測装置は、スポット溶接継ぎ手において、十字型引張試験及び/又はせん断型引張試験を基に、材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかを入力する入力手段と、前記材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかから、十字型引張及び/又はせん断型引張でのスポット溶接部の破断強度パラメータを算出する演算手段と、前記鋼種毎の破断強度パラメータを記憶するパラメータ記憶手段と、前記パラメータ記憶手段に記憶した破断強度パラメータを、有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断予測式に導入して、スポット溶接部破断を判定する演算手段とを有することを特徴とする。 本発明の他のスポット溶接部の破断予測装置は、スポット溶接継ぎ手において、十字型引張試験及び/又はせん断型引張試験を基に、材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角を入力する入力手段と、前記材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかから、スポット溶接部の破断強度曲線を求め、前記破断強度曲線に基づき十字型引張及び/又はせん断型引張での破断強度パラメータを算出する演算手段と、前記鋼種毎の破断強度パラメータを記憶するパラメータ記憶手段と、前記パラメータ記憶手段に記憶した破断強度パラメータを、有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断限界線に導入して、スポット溶接部破断を判定する演算手段とを有することを特徴とする。 本発明のスポット溶接部の破断予測方法は、スポット溶接継ぎ手において、十字型引張試験及び/又はせん断型引張試験を基に、材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかを入力する工程と、前記材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかから、十字型引張及び/又はせん断型引張でのスポット溶接部の破断強度パラメータを算出する工程と、前記鋼種毎の破断強度パラメータをパラメータ記憶手段に記憶する工程と、前記パラメータ記憶手段に記憶した破断強度パラメータを、有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断予測式に導入して、スポット溶接部破断を判定する工程とを有することを特徴とする。 本発明の他のスポット溶接部の破断予測方法は、スポット溶接継ぎ手において、十字型引張試験及び/又はせん断型引張試験を基に、材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかを入力する工程と、前記材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかから、スポット溶接部の破断強度曲線を求め、前記破断強度曲線に基づき十字型引張及び/又はせん断型引張での破断強度パラメータを算出する工程と、前記鋼種毎の破断強度パラメータをパラメータ記憶手段に記憶する工程と、前記パラメータ記憶手段に記憶した破断強度パラメータを、有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断限界線に導入して、スポット溶接部破断を判定する工程とを有することを特徴とする。 本発明のコンピュータプログラムは、スポット溶接継ぎ手において、十字型引張試験及び/又はせん断型引張試験を基にして入力される材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかから、十字型引張及び/又はせん断型引張でのスポット溶接部の破断強度パラメータを算出する工程と、前記鋼種毎の破断強度パラメータをパラメータ記憶手段に記憶する工程と、前記パラメータ記憶手段に記憶した破断強度パラメータを、有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断予測式を導入して、スポット溶接部破断を判定する工程とをコンピュータに実行させることを特徴とする。 本発明の他のコンピュータプログラムは、スポット溶接継ぎ手において、十字型引張試験及び/又はせん断型引張試験を基にして入力される材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかから、スポット溶接部の破断強度曲線を求め、前記破断強度曲線に基づき十字型引張及び/又はせん断型引張でのスポット溶接部の破断強度パラメータを算出する工程と、前記鋼種毎の破断強度パラメータをパラメータ記憶手段に記憶する工程と、前記パラメータ記憶手段に記憶した破断強度パラメータを、有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断限界線に導入して、スポット溶接部破断を判定する工程とをコンピュータに実行させることを特徴とする。 本発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とする。 本発明によれば、コンピュータ上の有限要素法解析により、例えば自動車部材のスポット溶接をモデル化した部分での破断予測を正確に行うことができるので、実際の自動車の部材での衝突試験時のスポット溶接部破断の検証を省略することができるか、又は、検証試験の回数を大幅に削減することができる。また、例えば自動車の部材のスポット溶接条件を変えた試作・衝突試験の大規模な実験によるスポット溶接破断を防ぐ部材設計を、コンピュータ上の衝突解析によるスポット溶接部破断を防ぐ設計に置き換えることができるので、大幅なコスト削減・設計開発期間の短縮に寄与することができる。 以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、せん断型引張試験の概要を示す図である。試験片は、図のように母材2である2枚の鋼板を重ねてスポット溶接し、ナゲット1を形成する。この試験片を矢印3で示す方向に試験片が破断するまで引張試験を行う。このとき、引張方向3における試験片の変位と荷重を測定する。ナゲット1の周りで破断が発生し、このときに、最大荷重となり、これを破断限界荷重Ftss(N)とする。この限界荷重Ftssとなったとき、母材2の幅W(mm)、板厚t(mm)から、母材内の平均応力σo(MPa)は、Ftss/W・tである。 破断の起点となるナゲット1の周りにおいては、最大応力が引張強さTS(MPa)に達したと仮定すれば、ナゲット1の端部と母材2における応力集中係数αを、母材の引張強さTSと母材の平均引張応力σoの比として(1)式のように定義できる。 α=TS/σo=TS・W・t/Ftss・・・(1) 様々な引張り強さTSの材料で、様々な試験片幅W、板厚t、ナゲットの直径d(mm)で、破断限界荷重Ftssを測定することで、この応力集中係数αを、(1)式から算出してデータベースとして表を作成しておく。これから、任意の引張り強さTS、板厚t、幅W、ナゲット径dでの破断限界荷重Ftssは、表の応力集中係数αを用いて、(2)式で予測できる。 Ftss=TS・W・t/α・・・(2) また、応力集中係数αは、ナゲット径dと幅Wの比d/Wで整理すると一つの曲線になることから、(3)式から算出したαを用いて、(2)式からもFtssを予測しても良い。 α= k/(p・d/W−q)n+r・・・(3) ここで、k、p、q、n、及びrは、αとd/Wの曲線の関係を(3)式でフィッティングするためのパラメータであり、k=0.001〜100、p=0.01〜100、q=−10〜10、n=1〜10、r=−100〜100とすることが好ましい。但し、曲線をフィッティングする式は、必ずしも(3)式の形でなくても良く、曲線関係をフィッティングできる式であれば良い。また、(3)式を用いなくても、曲線のグラフから直接αを読み取っても良い。 次に、スポット溶接で結合した任意の形状の部材を、コンピュータ上で有限要素法を用いてモデル化する。スポット溶接をモデル化した、部材同士をつなぐ要素の、部材面に沿う方向のせん断力Fs(N)と、それに直交する部材同士をつなぐ方向の垂直力Fn(N)を有限要素法で再現した衝突解析の変形中に逐次、コンピュータに算出させる。このFs及びFnの算出手段は、汎用の解析コードに依存するが、例えば、ESI社製PAM-CRASH v2002 user's manualを参照する。コンピュータ上で破断判定は、(4)式が成立したときとする。 Fn2+Fs2≧Ftss2・・(4) 図2は、十字型引張試験方法の概要を示す図である。試験片は、図のように母材2である2枚の鋼板を重ねてスポット溶接し、ナゲット1を形成する。この試験片を矢印3で示す方向に試験片が破断するまで引張試験を行う。このとき、引張方向3の試験片の変位と荷重を測定する。ナゲット1の周りで破断が発生し、このときに、最大荷重となり、これを破断限界荷重Fcts(N)とする。この限界荷重Fctsとなったとき、母材2の幅W(mm)、板厚t(mm)から、母材の板面内の平均応力σoは、図3に示す角度θを用いて、Fcts/(2W・t・sinθ)である。 破断の起点となるナゲット1の周りにおいては、最大応力が引張強さTS(MPa)に達したと仮定すれば、ナゲット1の端部と母材2における応力集中係数αを、母材の引張強さTS(MPa)と母材の平均引張応力σo(MPa)の比として(5)式のように定義できる。 α=TS/σo=TS・W・t/Fcts・・・(5) これは、せん断型引張試験で求めた(1)式と全く同形式であり、引張方向が違うため、角度補正θが入る。従って、せん断型引張りと同じ方法で、任意の材料、幅、板厚、ナゲット径で、破断限界荷重Fctsは、(6)式から算出できる。 Fcts=2・TS・W・t・sinθ/α・・・(6) せん断型引張りの場合と同じように、任意の部材において、衝突変形時のスポット溶接部の破断判定をコンピュータ上で、(7)式が成立したときとする。 Fn≧Fcts・・・(7) 以上から、(1)式、(2)式、(3)式、(5)式及び(6)式で、破断限界荷重(破断強度パラメータ)Ftss及びFctsを算出し、任意の部材で有限要素法により衝突の変形を解析し、スポット溶接の破断判定を(4)式又は(7)式のどちらかが先に成立するか、同時に成立したときとする。 部材の形状及び荷重入力の方法から、変形の形式が分っている場合は、(4)式又は(7)式の片方のみをコンピュータ上で計算して判定しても良い。また、コンピュータ上で、Fn及びFsの比を逐次計算し、例えば、Fn>3Fsであれば(7)式を用い、それ以外では(4)式を用いて破断判定をしても良い。 このようにすることにより、スポット溶接の破断判定を、実際に部材を作成して衝突試験により検証することなく、コンピュータ上で正確に予測することができる。この方法を用いることで、コンピュータ上で、部材形状や、材料、板厚、ナゲット径、溶接位置を変えることでスポット溶接が破断しない条件を調べることができ、最適な部材を設計することができる。 上記の方法と異なり、特に材料の引張強さTSが590(MPa)より大きい場合のスポット溶接の破断限界荷重は、せん断型引張試験のFtssでは、(2)式、(3)式の代りに下記(2´)式、(3m)式を、十字型引張試験のFctsでは、(3)式、(6)式の代わりに下記(3m2)式、(3m3)式、(3m4)式、(6´)式を用いて算出するのが好適である。 Ftss=TS・W・t/α1・・・(2´) α1=(e(TS/f−g)h−i)/(d/W)j+1・・・(3m) ここで、e,f,g,h,i、及びjは、α1とd/Wの曲線の関係を(3m)式でフィッティングするためのパラメータであり、e=0.0001〜100、f=100〜2500(MPa)、g=0.1〜10、h=0.0001〜10、i=0.01〜100、j=1〜100である。 Fcts=2・TS・W・t・sinθ/α2・・・(6´) α2=β/(d/W)χ+δ・・・(3m2) χ=φ(TS/γ−η)Ψ−ξ・・・(3m3) δ=λ(TS/μ−ρ)ω−ζ・・・(3m4) ここで、β,χ,δ,φ,γ,η,Ψ,ξ,δ,λ,μ,ρ,ω,及びζは、α2とd/Wの曲線の関係を(3m2)式、(3m3)式、及び(3m4)式でフィッティングするためのパラメータであり、β=0.0001〜100、φ=0.1〜100、γ=100〜2500(MPa)、η=0.1〜10、Ψ=0.0001〜100、ξ=0.01〜100、λ=0.01〜100、μ=100〜2500(MPa)、ρ=0.1〜10、ω=0.0001〜100、ζ=0.01〜100である。 曲線をフィッティングする式は、必ずしもこれらの式の形でなくても良く、曲線関係をフィッティングできる式であれば良い。また、これらの式を用いなくても、α1又はα2とd/Wの曲線の関係は強度クラス毎に一つの曲線となることから、それぞれの曲線のグラフから直接α1又はα2を読み取っても良い。 図4は、(1)式、(2)式、(3)式、及び、(5)式、(6)式、又は(3)式の代わりに(3m)式、(3m2)式、(3m3)式、(3m4)式のように、数式を用いて破断限界荷重を算出する以外に、実験データに基づくグラフから算出する方法を模式的に表したものであり、d/Wを変えた試験で破断限界荷重を実測し、グラフ化すると、材料強度TSによって、様々な線で、破断荷重曲線を書くことができる。ここで、材料強度はTS1<TS2<TS3である。この曲線から直接、条件に合う破断限界荷重を同定することができる。この曲線は、板厚tを第3軸に採ることで、破断限界荷重曲面となり、任意の板厚t、材料強度TS、幅W、ナゲット径dで、曲面上の値を読み取ることで破断限界荷重を同定できる。 さらに、(4)式及び(7)式を用いる代わりに、様々な回転角θで同定した破断限界荷重で、図5に示すように、破断限界線を作成し、これと、有限要素法の解析で逐次計算されるFn,Fsとを比較して、曲線上及び曲線の外側にきたときに破断と判定しても良い。 この方法は、鉄鋼材料だけでなく、あらゆる材料に適用することができる。また、スポット溶接だけなく、レーザー溶接、アーク溶接、シーム溶接、マッシュシーム溶接等のあらゆる溶接、さらにはTOX接合、リベット接合等のあらゆる機械接合、摩擦接合や拡散接合、摩擦拡散接合、接着剤による接合すべてに応用することができる。コンピュータ上での計算方法は、有限要素法に限らず、境界要素法、差分法、メッシュレス法や、初等解析やあらゆる計算方法に適用でき、材料力学やコンピュータによらない計算方法に適用しても良い。 実験による応力集中係数αの算出方法も、上記のせん断型引張試験、十字型引張試験に限らず、あらゆる試験片形状、荷重負荷方法で、算出することができる。 上記の破断判定の予測は、自動車全体、部材の衝突解析だけでなく、自動車以外の部品にも適用でき、衝突以外の準静的な変形での解析にも適用できることは言うまでもない。 図8は、スポット溶接部の破断予測装置を構成可能なコンピュータシステムの一例を示すブロック図である。同図において、1200はコンピュータPCである。PC1200は、CPU1201を備え、ROM1202又はハードディスク(HD)1211に記憶された、或いはフレキシブルディスクドライブ(FD)1212より供給されるデバイス制御ソフトウェアを実行し、システムバス1204に接続される各デバイスを総括的に制御する。 前記PC1200のCPU1201、ROM1202又はハードディスク(HD)1211に記憶されたプログラムにより、本実施形態の各機能手段が構成される。 1203はRAMで、CPU1201の主メモリ、ワークエリア等として機能する。1205はキーボードコントローラ(KBC)であり、キーボード(KB)1209から入力される信号をシステム本体内に入力する制御を行う。1206は表示コントローラ(CRTC)であり、表示装置(CRT)1210上の表示制御を行う。1207はディスクコントローラ(DKC)で、ブートプログラム(起動プログラム:パソコンのハードやソフトの実行(動作)を開始するプログラム)、複数のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイルそしてネットワーク管理プログラム等を記憶するハードディスク(HD)1211、及びフレキシブルディスク(FD)1212とのアクセスを制御する。 1208はネットワークインタフェースカード(NIC)で、LAN1220を介して、ネットワークプリンタ、他のネットワーク機器、或いは他のPCと双方向のデータのやり取りを行う。 上述した実施形態の機能は、コンピュータがコンピュータプログラムを実行することによっても実現される。また、コンピュータプログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、前記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。前記のコンピュータプログラム、記録媒体、伝送媒体及びコンピュータプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性メモリ、ROM等を用いることができる。(実施例1) 上述した破断予測モデルを使い、汎用衝突解析FEMコードにサブルーチンプログラムとして、部材の衝突変形の解析中にスポット溶接部の破断を自動判定するシステムを構築した。使用したコードはESI社製PAM-CRASH v2002であり、シェル要素でモデル化した部材について、Multi-PLINKを用いてスポット溶接部をモデル化している。 破断予測モデルの精度検証には、せん断型引張試験、十字型引張試験そのものをモデル化した解析と実験の比較が、厳密な比較が可能となるので最も良い。そこで、590MPa級の厚さt=1.8mmの鋼板で、JIS規格 3136、3137に準じたせん断型引張試験片及び十字型引張試験片を作成した。スポット溶接のナゲット径は、5√tである。インストロンタイプ試験機を用いて試験を実施し、その際のスポット溶接部破断までの荷重と変位を計測した。同時に、試験と同一形状のせん断型引張試験と十字型引張試験をコンピュータ上でモデル化し、上記のサブルーチンプログラムを実装したFEMコードで引張試験の解析を行いスポット溶接部の破断を自動判定させて、実験と同様のスポット溶接の破断までの荷重と変位を計算した。入力した初期パラメータは、TS=642(MPa)、t=1.8(mm)、d=6.7(mm)、θ=23°を、共通のパラメータとし、せん断型引張試験では、 α=1.80(−)、W=40(mm)を用い、十字型引張試験では、 α=2.17(−)、W=50(mm)を用いた。これより得られた破断強度パラメメータFtss=25680(N)、Fcts=20798(N)を有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断予測式に導入して、スポット溶接部破断を判定した。 試験モデルは、実際の部材の衝突解析で適用できることを考慮して、実車の衝突解析レベルの粗いシェル要素で作成し、境界条件も単純化している。 図6及び図7は、このシステムの検証例であり、せん断型引張試験、十字型引張試験のそれぞれで,破断モードが異なるが、実験とFEM解析の荷重−ストローク曲線上で破断荷重が一致していることが分る。せん断型引張試験では、破断荷重に至るまでの荷重−変位曲線の形状が実験と解析で異なるように見える。これは実験では試験片チャックがユニバーサルジョイントを介してクロスヘッドにつながっているため、荷重立上がり時にチャック部の回転が起きており、解析ではこの回転をモデルの単純化で考慮していないために異なるように見えるだけである。これは初期のストローク変化の挙動を変えるだけであるので、破断発生時の荷重には本質的に影響されない。十字型引張試験でも荷重−変位曲線の挙動が実験と解析で、やや異なるもの同様に実験のチャックの問題であり、初期の挙動への影響のみで、破断荷重では実験と解析は一致する。もちろんチャック部分も含めて解析上でモデル化すれば、この部分の挙動も実験と一致するが、ここでは本質的問題でないので省略する。むしろ、この試験を単純なモデル化をしたFEM解析でも、実際の試験の破断荷重を正確に予測できていることにより、実車の全体モデルや部分モデルの大規模な衝突解析で、詳細部を単純化した実用レベルの解析でも、正確にスポット破断を予測できることを示している。 このように、基本的な試験で精度よくスポット溶接の破断を予測できる解析方法であることを検証することができた。また、部品レベルでの衝突変形時のスポット溶接破断の予測について実験・解析両面から検証しており、解析での破断予測が実験と一致することを確かめている。以上から、スポット溶接部の破断の可否により、部材の変形モード、吸収エネルギーの制御・設計が可能なシステムであることが確かめられた。 この方法は、汎用ソルバーPAM-CRASHだけでなく、LSTC社製LS-DYNA3Dや、MECALOG社製RADIOSS等の汎用ソルバーや、個別に開発されたソルバーにも導入することができる。また、スポット溶接部のモデルも、Multi-PLINKのような接触タイプだけでなく、ビーム要素や,シェル要素,ソリッド要素等にも適用可能である。(実施例2) 次に、破断強度曲線を用いて、せん断型引張強度の予測精度の検証を行った。材料は、実施例1と同じ590MPa級、厚さ=1.8mmの鋼板である。まず、せん断型引張試験の試験片の幅Wを20〜50mmと変化させると同時に、ナゲット直径dも4〜7mmと変化させて、試験を行い、破断強度パラメータFtssを実測する。この結果から、図9に示す破断強度曲線を得ることができる。実施例1と同じ、d=6.7mm、W=40mmの条件では、この破断強度曲線から、図9の○印で示すように、破断強度パラメータFtss=25.5(kN)と読み取ることができる。これは、実施例1の同じ条件のFtssとほぼ同じ値であり、以下、実施例1と同じく試験をモデル化した有限要素法(FEM)解析を行うことにより、図6に示すように、実験とFEM解析の荷重−ストローク曲線上で破断荷重が一致していることが確認できる。従って、幅Wとナゲット直径dを実用に対応する広い範囲で変えて、破断強度曲線を作成しておけば、実用でのあらゆる条件での破断強度パラメータを得ることができることを示している。上記は、材料の強度と板厚が決まっている場合を示したが、強度と板厚が変わる場合も、それぞれについて破断強度曲線を作成すればよい。(実施例3) 次に、特に引張強度が590MPa級より大きい場合の破断予測モデルを使い、汎用衝突解析FEMコードにサブルーチンプログラムとして、部材の衝突変形の解析中にスポット溶接部の破断を自動判定するシステムを構築した。使用したコードはESI社製PAM-CRASH v2003であり、シェル要素でモデル化した部材について、Multi-PLINKを用いてスポット溶接部をモデル化している。 破断予測モデルの精度検証には、せん断型引張試験そのものをモデル化した解析と実験の比較が、厳密な比較が可能となるので最も良い。そこで、980MPa級の厚さt=1.4mmの鋼板で、実施例1と同じようにせん断型引張試験片を作成した。スポット溶接のナゲット径は、6√tである。インストロンタイプ試験機を用いて試験を実施し、その際のスポット溶接部破断までの荷重と変位を計測した。同時に、試験と同一形状のせん断型引張試験と十字型引張試験をコンピュータ上でモデル化し、上記のサブルーチンプログラムを実装したFEMコードで引張試験の解析を行いスポット溶接部の破断を自動判定させて、実験と同様のスポット溶接の破断までの荷重と変位を計算した。入力した初期パラメータは、TS=983(MPa)、t=1.4(mm)、d=7.2(mm)、θ=23°、α1=2.12(−)、W=40(mm)を用いた。α1は、図9に示すように、実験から求めたα1とd/Wの曲線のグラフから読み取ることにより決定した。これより得られた破断強度パラメメータFtss=26340(N)を有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断予測式に導入して、スポット溶接部破断を判定した。 試験モデルは、実際の部材の衝突解析で適用できることを考慮して、実車の衝突解析レベルの粗いシェル要素で作成し、境界条件も単純化している。 図11は、このシステムの検証例であり、せん断型引張試験で実験とFEM解析の荷重−ストローク曲線上で破断荷重が一致していることが分る。せん断型引張試験では、破断荷重に至るまでの荷重−変位曲線の形状が実験と解析で異なるように見えるが、実施例1で述べたものと同じ原因であり、問題はない。 さらに、単純な部材の軸圧潰試験で、予測モデルの検証を行った。部材は、図12に示すように、断面がハット型と当て板のスポット溶接で構成され、ハット頂部、たて壁がそれぞれ50mmで、フランジが20mm、圧潰方向の長さが300mmである。部材に使用した材料は、上記と同じ980MPa級の鋼材であり、スポット溶接のナゲット径は、4√tmmである。落錘の重さを500kg、圧潰時の初期速度を6m/sとして、動的な圧潰試験を実施し、それと同じ条件で、FEM解析を行った。圧潰後の部材形状で、試験結果とFEM解析結果を比較すると、座屈の形状が同じで、特に、どちらもスポット溶接部が破断することにより、当て板が外れている形態が一致する。これにより、実車の全体モデルや部分モデルの大規模な衝突解析で、詳細部を単純化した実用レベルの解析でも、正確にスポット破断を予測できることを示している。せん断型引張試験方法の概要を示す図である。十字型引張試験方法の概要を示す図である。十字型引張試験の試験時の側面図である。破断強度曲線の一例を示す図である。破断限界線と計算の強度Fn,Fsの関係を示す図である。せん断型試験の破断時の荷重と変位の関係を実験とシミュレーション(FEM)で比較した図である。十字型試験の破断時の荷重と変位の関係を実験とシミュレーション(FEM)で比較した図である。スポット溶接部の破断予測装置を構成可能なコンピュータシステムの一例を示すブロック図である。実際の590MPa級、厚さ1.8mmの破断強度曲線を示す図である。実験から求めたα1とd/Wの曲線関係を示す図である。980MPa級の高強度鋼でのせん断型試験の破断時の荷重と変位の関係を実験とシミュレーション(FEM)で比較した図である。980MPa級の高強度鋼での部材の動的圧潰試験時のスポット溶接部の破断の様子を実験とシミュレーション(FEM)で比較した図である。符号の説明 1 ナゲット 2 母材 3 試験片両端部の引張方向 4 せん断型引張試験片のシミュレーション 5 十字型引張試験のシミュレーション 6 部材形状 7 部材の圧潰のシミュレーション 8 部材の圧潰の実験 スポット溶接継ぎ手において、十字型引張試験及び/又はせん断型引張試験を基に、材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかを入力する入力手段と、 前記材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかから、十字型引張及び/又はせん断型引張でのスポット溶接部の破断強度パラメータを算出する演算手段と、 前記鋼種毎の破断強度パラメータを記憶するパラメータ記憶手段と、 前記パラメータ記憶手段に記憶した破断強度パラメータを、有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断予測式に導入して、スポット溶接部破断を判定する演算手段とを有することを特徴とするスポット溶接部の破断予測装置。 スポット溶接継ぎ手において、十字型引張試験及び/又はせん断型引張試験を基に、材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角を入力する入力手段と、 前記材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかから、スポット溶接部の破断強度曲線を求め、前記破断強度曲線に基づき十字型引張及び/又はせん断型引張での破断強度パラメータを算出する演算手段と、 前記鋼種毎の破断強度パラメータを記憶するパラメータ記憶手段と、 前記パラメータ記憶手段に記憶した破断強度パラメータを、有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断限界線に導入して、スポット溶接部破断を判定する演算手段とを有することを特徴とするスポット溶接部の破断予測装置。 スポット溶接継ぎ手において、十字型引張試験及び/又はせん断型引張試験を基に、材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかを入力する工程と、 前記材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかから、十字型引張及び/又はせん断型引張でのスポット溶接部の破断強度パラメータを算出する工程と、 前記鋼種毎の破断強度パラメータをパラメータ記憶手段に記憶する工程と、 前記パラメータ記憶手段に記憶した破断強度パラメータを、有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断予測式に導入して、スポット溶接部破断を判定する工程とを有することを特徴とするスポット溶接部の破断予測方法。 スポット溶接継ぎ手において、十字型引張試験及び/又はせん断型引張試験を基に、材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかを入力する工程と、 前記材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかから、スポット溶接部の破断強度曲線を求め、前記破断強度曲線に基づき十字型引張及び/又はせん断型引張での破断強度パラメータを算出する工程と、 前記鋼種毎の破断強度パラメータをパラメータ記憶手段に記憶する工程と、 前記パラメータ記憶手段に記憶した破断強度パラメータを、有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断限界線に導入して、スポット溶接部破断を判定する工程とを有することを特徴とするスポット溶接部の破断予測方法。 スポット溶接継ぎ手において、十字型引張試験及び/又はせん断型引張試験を基にして入力される材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかから、十字型引張及び/又はせん断型引張でのスポット溶接部の破断強度パラメータを算出する工程と、 前記鋼種毎の破断強度パラメータをパラメータ記憶手段に記憶する工程と、 前記パラメータ記憶手段に記憶した破断強度パラメータを、有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断予測式を導入して、スポット溶接部破断を判定する工程とをコンピュータに実行させることを特徴とするスポット溶接部の破断予測のためのコンピュータプログラム。 スポット溶接継ぎ手において、十字型引張試験及び/又はせん断型引張試験を基にして入力される材料強度、板厚、スポット溶接のナゲット径、継ぎ手の板幅、及び引張試験の継ぎ手の回転角のすべて或いはいずれかから、スポット溶接部の破断強度曲線を求め、前記破断強度曲線に基づき十字型引張及び/又はせん断型引張でのスポット溶接部の破断強度パラメータを算出する工程と、 前記鋼種毎の破断強度パラメータをパラメータ記憶手段に記憶する工程と、 前記パラメータ記憶手段に記憶した破断強度パラメータを、有限要素法によりスポット溶接周りの変形をモデル化した破断限界線に導入して、スポット溶接部破断を判定する工程とをコンピュータに実行させることを特徴とするスポット溶接部の破断予測のためのコンピュータプログラム。 請求項5又は6記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。