生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_コラーゲンおよび細胞等の分子配向用磁気回路およびそれを用いた装置
出願番号:2005101902
年次:2006
IPC分類:C12M 3/00


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篠原 肇 武井 光 斎藤 大輔 小谷 誠 増澤 正宏 三田 正裕 栗山 義彦 JP 2006280222 公開特許公報(A) 20061019 2005101902 20050331 コラーゲンおよび細胞等の分子配向用磁気回路およびそれを用いた装置 日立金属株式会社 000005083 学校法人東京電機大学 800000068 篠原 肇 武井 光 斎藤 大輔 小谷 誠 増澤 正宏 三田 正裕 栗山 義彦 C12M 3/00 20060101AFI20060922BHJP JPC12M3/00 A 8 1 OL 11 4B029 4B029AA02 4B029AA12 4B029AA21 4B029BB11 4B029CC02 4B029CC08 4B029DF10 本発明は、バイオ技術あるいは再生医療技術における細胞育成分野に係わる。 細胞は,接着や移動を行う際にコラーゲンを足場として用いる。これまでに骨再生,神経再生といった分野では,細胞を一方向生に並べ,より生体組織に近い構造を持たせることが重要とされている。また,細胞がコラーゲン繊維に沿って接着することも報告されており,反磁性物質であるコラーゲンに強磁場を曝露し、配向させる手法が用いられている。コラーゲンを配向させるためには,強力な磁場が必要であることから,現在では超伝導磁石を用いてコラーゲンや細胞の配向を行っている。特表2004−523484号公報特表2003−518379号公報特表平11−514229号公報 従来技術でも超伝導電磁石を用いて8T程度の平行磁場を曝露することによれば、コラーゲンの配向を平面状に行うことが可能である。しかしながら、現在コラーゲン配向に用いられている超伝導磁石は,設備が大型かつ高価であり,超伝導状態を維持するためには液体ヘリウムを使用するために,維持費も高くなる。さらに再生医療に超伝導磁石を用いると,時には磁場を曝露しながらの細胞の長期培養も必要となることから,費用がかさみ、実用化に向けて大きな課題となっている。また、骨細胞の培養時には37℃前後の温度で保持する必要があるが、超低温が必要な超伝導電磁石を37℃の環境内に設置する事は不可能であり、培養環境内に設置できる強磁場発生装置が強く望まれている。 したがって本発明の目的は、超伝導電磁石を用いることなく磁場を加えることにより、安価で効率的にコラーゲンや細胞を配向させることが出来る磁気回路および装置ならびにそれらを有するインキュベータを提供することにある。 上記の課題を解決する為に、本発明者等はコラーゲン配向を行うに当たって、コラーゲンおよび細胞等を配向させることを目的とした発生磁場強度が2T以上で、かつ、磁場発生源として永久磁石を用いたことを特徴とした磁気回路および装置を用いることを考案した。 上記装置において、使用する磁石はNdFeBを含む組成からなっている永久磁石であることが好ましい。 又、上記装置において、磁気回路構成はNdFeBを含む組成からなっている永久磁石及び軟磁性材料の組み合わせからなることでも実現可能である。 さらには、上記装置において、磁気回路構成はいわゆるハルバッハ磁気回路類似の構成であることも可能である。 又、上記永久磁石を用いた磁場発生磁気回路および磁場発生装置をインキュベータと一体化させることにより、コラーゲンおよび細胞等を配向させることを目的とした、発生磁場強度が2T以上で、かつ、磁場発生源として永久磁石を用いたことを特長とした磁気回路および装置を有するインキュベータによって問題を解決することも可能である。 上記インキュベータにおいて、使用する磁石はNdFeBを含む組成からなっている永久磁石であることを特徴とした磁気回路および装置であることが望ましい。 さらには、上記インキュベータにおいて、磁気回路構成はNdFeBを含む組成からなっている永久磁石及び軟磁性材料の組み合わせからなることであることが望ましい。 また、上記インキュベータにおいて、磁気回路構成はいわゆるハルバッハ磁気回路類似の構成であることも望ましい。 永久磁石を用いた磁気回路で、2T以上の磁場を加えることにより、コラーゲンや細胞を70パーセント以上配向させることが出来ることが明らかになった。従来の超伝導磁石を用いた場合と比べ、遜色ない配向度が得られることが分かった。 次に本発明を実施例と比較例とによって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。まず、磁場を曝露した場合と磁場曝露しない場合のコラーゲン細胞の配向を従来例で以下説明する。[比較例1] 磁場を曝露しない場合のコラーゲン細胞の配向実験を以下説明する。3mg/ml,pH3.0のコラーゲン溶液(TypeI型,日本ハム社製)800μlに1.5MのNaClを80μl加え,プラスチック製容器内で混合し,6.5×105cellsの骨芽細胞(MC3T3-E1,理化学研究所)を含むウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,L-グルタミン含有,IWAKI社製)400μlを混合した溶液に播種し,攪拌機を用いてよく攪拌した。これを直径35mmのプラスチックシャーレに入れ,温度を20度から37度に徐々に上げていき2時間保った。このとき磁場曝露しなかった。その後培養液1ml加え,インキュベータ内で5日間培養した。この試料を位相差顕微鏡(NIKON社製)を用いて観察した。さらにScion Image(Scion Corporation社,米国)を用いて細胞の配向方向と磁場方向との角度を計測し、配向度f2Dを求めた。 配向度は磁場とコラーゲンの配向角度をθとすると、として求められる。(1)式の配向係数は完全配向系に対しては値1となり,完全に無秩序な角度分布を持つ系に対しては値0となる。その結果配向度は0.21となった。観察写真を図―1に、配向分布を図―2に示す。[比較例2] 次に、超伝導電磁石を用いた場合のコラーゲン配向に関してその一例を以下に示す。3mg/ml,pH3.0のコラーゲン溶液(TypeI型,日本ハム社製)800μlに1.5MのNaClを80μl加え,プラスチック製容器内で混合し,6.5×105cellsの骨芽細胞(MC3T3-E1,理化学研究所)を含むウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,L-グルタミン含有,IWAKI社製)400μlを混合した溶液に播種し,攪拌機を用いてよく攪拌した。これを直径20mmのプラスチックシャーレに入れ,水平型超伝導マグネット装置(Oxford社,英国)内の中心部に静置した後,温度を20度から37度に徐々に上げていき2時間磁場曝露を行った。磁場強度は8Tで行った。磁場曝露後,培養液1ml加え,インキュベータ内で5日間培養した。配向度を測定した結果0.92となった。写真を図―7に、配向の分布を図―8に示す。[比較例3] 次に、超伝導電磁石を用いた場合のコラーゲン配向に関してさらに他の例を以下に示す。骨芽細胞(MC3T3E、理化学研究所)をウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,Lグルタミン含有、IWAKI社製)に播種し、攪拌後20mmのシャーレに入れ、水平型超伝導マグネット装置(Oxford社,英国)内の中心部に静置した後,温度を20度から37度に徐々に上げていき60時間磁場曝露を行った。磁場強度は8Tで行った。細胞の配向の測定をした結果、配高度は0.85となった。 3mg/ml,pH3.0のコラーゲン溶液(TypeI型,日本ハム社製)800μlに1.5MのNaClを80μl加え,プラスチック製容器内で混合し,6.5×105cellsの骨芽細胞(MC3T3E-1,理化学研究所)を含むウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,L-グルタミン含有,IWAKI社製)400μlを混合した溶液に播種し,攪拌機を用いてよく攪拌した。これを直径20mmのプラスチックシャーレに入れ,磁石を用いた磁気回路の中心部に静置した。磁場強度は2.0Tであった。その後,温度を20度から37度に徐々に上げていき2時間磁場曝露を行った。で行った。磁場曝露後,培養液1ml加え,インキュベータ内で5日間培養した。 上記コラーゲンに曝露された磁束密度は、NdFeBを主原料とする磁石を、いわゆる円筒型のハルバッハ磁気回路に構成することで実現した。このハルバッハ磁気回路は、永久磁石の残留磁束密度よりも高い磁束密度を空間中に生成する為に考案された、永久磁石を用いた磁気回路のことである。ここで今回使用した円筒型のハルバッハ磁気回路を例にとってハルバッハ磁気回路を説明する。図9に8方向着磁磁石の組み合わせによるハルバッハ磁気回路例の円筒断面図を図示する。永久磁石の組み合わせを円筒の回転方向の角度θに対して、永久磁石着磁方向を−2θ(マイナス2θ)とする事で円筒内部にほぼ平行な磁界を発生することが可能になる。理想的な無限円筒においては円筒内部の磁束密度Biは、永久磁石組み立て品の内径をRi,永久磁石組み立て品の外径をRo、永久磁石の残留磁束密度をBrとすると、Bi=Br・Ln(Ro/Ri)で表される。Lnは自然対数である。 なお、図9には8方向に着磁された磁石による組み合わせを図示しているが、おのおのの永久磁石部分は単一の永久磁石で作成することも、複数の永久磁石を組み合わせることによって作成することも可能である。又、8方向ではなく、他の方向の組み合わせ、たとえば4方向、12方向、16方向などの組み合わせによって内部に並行で強力な磁場を発生させることも可能である。 永久磁石により形成される磁石円筒が有限長の場合は、磁石円筒の両端において中心部分に比べて小さい磁束密度しか得られない。このため、所望の磁束密度を得るには十分長い円筒を作成するか、外径を上記数式によるよりも大きくする事が必要である。 又、円筒内において精密な平行磁界を得るには上記各部分の永久磁石の強度および着磁方向を精密に合わせる必要があるが、本実施例ではほぼ平行な強力磁場を得ることが必要であり、円筒内での平行度あるいは磁場強度一様性の精密性は、例えばハードディスクドライブの磁気抵抗ヘッドの製造工程に使用する磁気回路の場合に比べて、あまり必要ない。このため、上記各磁石部分の着磁角度は、その角度に近いことは必要であるが、正確にその角度であることは必ずしも必要とはしない。 実施例1においては、永久磁石の種類にはいわゆるネオジム・鉄・ボロン磁石を用いた。この磁石は希土類磁石と称される永久磁石の一種であり、現在残留磁束密度が最も高い磁石として知られている。本実施例において用いられた永久磁石は、NEOMAX社製のネオジム・鉄・ボロン系磁石の残留磁束密度1.3T以上のものを、使用場所によって組み合わせて使用した。すなわち、永久磁石の配置場所によって当該永久磁石が受ける逆磁界が異なる為、逆磁界の大きい部分には残留磁束密度の比較的低い、すなわち、逆磁界に対して強い磁石を使用した。当該永久磁石が、逆磁界をあまり受けない部分では必要箇所の磁束密度の増加と磁気回路の小型化を両立させる為に高い残留磁束密度を有する磁石を用いた。 円筒内部の直径20mm、長さ10mmの円筒部分に2.0T以上の磁束密度を発生させる為に、分割数(磁石着時方位)12、内径25mm、外径150mm、長さ200mmのハルバッハ磁気回路を作成した。比較例と同様に本永久磁石による磁場曝露実験によるコラーゲンの配向度を測定した結果0.70であった。 3mg/ml,pH3.0のコラーゲン溶液(TypeI型,日本ハム社製)800μlに1.5MのNaClを80μl加え,プラスチック製容器内で混合し,6.5×105cellsの骨芽細胞(MC3T3E-1,理化学研究所)を含むウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,L-グルタミン含有,IWAKI社製)400μlを混合した溶液に播種し,攪拌機を用いてよく攪拌した。これを直径35mmのプラスチックシャーレに入れ,温度を20度から37度に徐々に上げていき、磁石を用いた磁気回路の中心で2時間磁場曝露を行った。磁場強度は2.5T,で行った。磁場曝露後,培養液1ml加え,インキュベータ内で5日間培養した。2.5Tの磁場強度は実施例1と同様にハルバッハ永久磁石磁気回路を用いて実現した。 前述の方法でコラーゲンの配向度を測定した結果、配向度は0.75であった。写真を図―3に、配向の分布を図―4に示す。 3mg/ml,pH3.0のコラーゲン溶液(TypeI型,日本ハム社製)800μlに1.5MのNaClを80μl加え,プラスチック製容器内で混合し,6.5×105cellsの骨芽細胞(MC3T3E-1,理化学研究所)を含むウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,L-グルタミン含有,IWAKI社製)400μlを混合した溶液に播種し,攪拌機を用いてよく攪拌した。これを直径20mmのプラスチックシャーレに入れ,温度を20度から37度に徐々に上げていき磁石を用いた磁気回路で3Tの磁束密度空間にて 2時間磁場曝露を行った。磁場曝露後,培養液1ml加え,インキュベータ内で5日間培養した。3Tの磁場強度は実施例1と同様にハルバッハ永久磁石磁気回路を用いて実現した。 前述の方法でコラーゲンの配向度を測定した。その結果、配向度は0.82であった。写真を図―5に、配向の分布を図―6に示す。 骨芽細胞(MC3T3−E1、理化学研究所)をウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,Lグルタミン含有、IWAKI社製)に播種し、攪拌後直径20mmのシャーレに入れ、磁石を用いた磁気回路にいれ、温度を20℃から37℃に徐々に上げて行き、磁場強度3Tに40時間連続曝露し、細胞の配向の測定をした。その結果配向度は0.81となった。 以上の結果から、永久磁石を用いた磁気回路で、2T以上の磁場を加えることにより、コラーゲンや細胞を70パーセント以上配向させることが出来ることが明らかになった。従来の超伝導磁石を用いた場合と比べ、遜色ない配向度が得られることが分かった。従来行われていた、高価でかつ莫大な維持費を必要とする超伝導磁石より、安価で維持費のかからないコラーゲンおよび細胞を配向させる装置を提供できることが明らかになった。また、永久磁石を用いた磁気回路とインキュベータを一体とした装置によれば、さらに簡便にコラーゲンおよび細胞の配向、培養を行うことが可能となり、以上の結果本発明の医学、生物学、工学に寄与する意味は大きい。比較例1で配向したコラーゲン細胞の観察写真である。比較例1のコラーゲン細胞の配向度を表す配向分布である。実施例2で配向したコラーゲン細胞の観察写真である。実施例2のコラーゲン細胞の配向度を表す配向分布である。実施例3で配向したコラーゲン細胞の観察写真である。実施例3のコラーゲン細胞の配向度を表す配向分布である。比較例2で配向したコラーゲン細胞の観察写真である。比較例2のコラーゲン細胞の配向度を表す配向分布である。本発明のハルバッハ磁気回路の円筒断面図である。コラーゲンおよび細胞等を配向させることを目的とした、発生磁場強度が2T以上で、かつ、磁場発生源として永久磁石を用いたことを特徴とする磁気回路および装置。使用する磁石はNdFeBを含む組成からなっている永久磁石であることを特徴とする請求項1記載の磁気回路および装置。磁気回路構成はNdFeBを含む組成からなっている永久磁石及び軟磁性材料の組み合わせからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気回路および装置。磁気回路構成はいわゆるハルバッハ型磁気回路類似の構成であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の磁気回路および装置。コラーゲンおよび細胞等を配向させることを目的とした、発生磁場強度が2T以上で、かつ、磁場発生源として永久磁石を用いたことを特徴とする磁気回路および装置を有するインキュベータ。使用する磁石はNdFeBを含む組成からなっている永久磁石であることを特徴とする請求項5に記載の磁気回路および装置を有するインキュベータ。磁気回路構成はNdFeBを含む組成からなっている永久磁石及び軟磁性材料の組み合わせからなることを特徴とする請求項5又は6に記載の磁気回路および装置を有するインキュベータ。磁気回路構成はいわゆるハルバッハ磁気回路類似の構成であることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載の磁気回路および装置を有するインキュベータ。 【課題】 従来,コラーゲンや細胞を配向させるためには、磁場配向方法が採用され、そのために強磁場が必要とされ、強磁場の発生には超伝導磁石が用いられてきた.超伝導磁石は設備に莫大な費用を必要とし、更に設備の維持にも多大な経費を必要とする。【解決手段】 コラーゲンおよび細胞等を配向させることを目的とした、発生磁場強度が2T以上で、かつ、磁場発生源として永久磁石を用いたことを特徴とする磁気回路および装置。本装置により、コラーゲンおよび細胞を容易に効率よく配向させる磁気回路および装置を実現した。【選択図】 図1


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特許公報(B2)_コラーゲンおよび細胞を配向させる磁気回路およびそれを有するインキュベータ

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_コラーゲンおよび細胞を配向させる磁気回路およびそれを有するインキュベータ
出願番号:2005101902
年次:2011
IPC分類:C12M 3/00


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篠原 肇 武井 光 斎藤 大輔 小谷 誠 増澤 正宏 三田 正裕 栗山 義彦 JP 4761437 特許公報(B2) 20110617 2005101902 20050331 コラーゲンおよび細胞を配向させる磁気回路およびそれを有するインキュベータ 日立金属株式会社 000005083 学校法人東京電機大学 800000068 篠原 肇 武井 光 斎藤 大輔 小谷 誠 増澤 正宏 三田 正裕 栗山 義彦 20110831 C12M 3/00 20060101AFI20110811BHJP JPC12M3/00 A C12M 1/00−3/10 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 医学・薬学予稿集全文データベース BIOSIS/MEDLINE/CAPLUS/WPIDS/EMBASE(STN) 日本応用磁気学会誌,2001年,Vol.25,p.1167-1170 小谷博子他,直流磁界中におけるコラーゲンおよび骨芽細胞の磁界配向,電気学会研究会資料,社団法人電気学会,1999年,MAG-99(93-115),p.85-89 小谷博子他,運動・物理療法(J. Physical Medicine),2000年,Vol.11, No4,p.269-273 日立金属技報,2004年,Vol.20,p.12 Proceedings. Electrical Electronics Insulation Conference and Electrical Manufacturing & Coil Winding Conference,1999年,Vol.25th,p.437-440 IEE Proc. Electr. Power Appl.,2001年,Vol.148, No.4,p.299-308 J. Torbet,Materials Processing In Magnetic Fields,World Scientific,2004年 3月,p.249-256 3 2006280222 20061019 10 20080214 長谷川 茜 本発明は、バイオ技術あるいは再生医療技術における細胞育成分野に係わる。 細胞は,接着や移動を行う際にコラーゲンを足場として用いる。これまでに骨再生,神経再生といった分野では,細胞を一方向生に並べ,より生体組織に近い構造を持たせることが重要とされている。また,細胞がコラーゲン繊維に沿って接着することも報告されており,反磁性物質であるコラーゲンに強磁場を曝露し、配向させる手法が用いられている。コラーゲンを配向させるためには,強力な磁場が必要であることから,現在では超伝導磁石を用いてコラーゲンや細胞の配向を行っている。特表2004−523484号公報特表2003−518379号公報特表平11−514229号公報 従来技術でも超伝導電磁石を用いて8T程度の平行磁場を曝露することによれば、コラーゲンの配向を平面状に行うことが可能である。しかしながら、現在コラーゲン配向に用いられている超伝導磁石は,設備が大型かつ高価であり,超伝導状態を維持するためには液体ヘリウムを使用するために,維持費も高くなる。さらに再生医療に超伝導磁石を用いると,時には磁場を曝露しながらの細胞の長期培養も必要となることから,費用がかさみ、実用化に向けて大きな課題となっている。また、骨細胞の培養時には37℃前後の温度で保持する必要があるが、超低温が必要な超伝導電磁石を37℃の環境内に設置する事は不可能であり、培養環境内に設置できる強磁場発生装置が強く望まれている。 したがって本発明の目的は、超伝導電磁石を用いることなく磁場を加えることにより、安価で効率的にコラーゲンや細胞を配向させることが出来る磁気回路および装置ならびにそれらを有するインキュベータを提供することにある。上記の課題を解決する為に、本発明者等はコラーゲン配向を行うに当たって、永久磁石で円筒型のハルバッハ磁気回路を構成し、永久磁石の組み合わせを円筒の回転方向の角度θに対して、永久磁石着磁方向を−2θ(マイナス2θ)とすることで円筒内部に強度2T以上で平行な磁場を発生させることを特徴とするコラーゲンおよび細胞を配向させる磁気回路を用いることを発明した。 上記装置において、使用する磁石はNdFeBを含む組成からなっている永久磁石であることが好ましい。 又、上記装置において、磁気回路構成はNdFeBを含む組成からなっている永久磁石及び軟磁性材料の組み合わせからなることでも実現可能である。 さらには、上記装置において、磁気回路構成はいわゆるハルバッハ磁気回路類似の構成であることも可能である。 又、上記永久磁石を用いた磁場発生磁気回路および磁場発生装置をインキュベータと一体化させることにより、コラーゲンおよび細胞等を配向させることを目的とした、発生磁場強度が2T以上で、かつ、磁場発生源として永久磁石を用いたことを特長とした磁気回路および装置を有するインキュベータによって問題を解決することも可能である。 上記インキュベータにおいて、使用する磁石はNdFeBを含む組成からなっている永久磁石であることを特徴とした磁気回路および装置であることが望ましい。 さらには、上記インキュベータにおいて、磁気回路構成はNdFeBを含む組成からなっている永久磁石及び軟磁性材料の組み合わせからなることであることが望ましい。 また、上記インキュベータにおいて、磁気回路構成はいわゆるハルバッハ磁気回路類似の構成であることも望ましい。 永久磁石を用いた磁気回路で、2T以上の磁場を加えることにより、コラーゲンや細胞を70パーセント以上配向させることが出来ることが明らかになった。従来の超伝導磁石を用いた場合と比べ、遜色ない配向度が得られることが分かった。 次に本発明を実施例と比較例とによって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。まず、磁場を曝露した場合と磁場曝露しない場合のコラーゲン細胞の配向を従来例で以下説明する。[比較例1] 磁場を曝露しない場合のコラーゲン細胞の配向実験を以下説明する。3mg/ml,pH3.0のコラーゲン溶液(TypeI型,日本ハム社製)800μlに1.5MのNaClを80μl加え,プラスチック製容器内で混合し,6.5×105cellsの骨芽細胞(MC3T3-E1,理化学研究所)を含むウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,L-グルタミン含有,IWAKI社製)400μlを混合した溶液に播種し,攪拌機を用いてよく攪拌した。これを直径35mmのプラスチックシャーレに入れ,温度を20度から37度に徐々に上げていき2時間保った。このとき磁場曝露しなかった。その後培養液1ml加え,インキュベータ内で5日間培養した。この試料を位相差顕微鏡(NIKON社製)を用いて観察した。さらにScion Image(Scion Corporation社,米国)を用いて細胞の配向方向と磁場方向との角度を計測し、配向度f2Dを求めた。 配向度は磁場とコラーゲンの配向角度をθとすると、として求められる。(1)式の配向係数は完全配向系に対しては値1となり,完全に無秩序な角度分布を持つ系に対しては値0となる。その結果配向度は0.21となった。観察写真を図―1に、配向分布を図―2に示す。[比較例2] 次に、超伝導電磁石を用いた場合のコラーゲン配向に関してその一例を以下に示す。3mg/ml,pH3.0のコラーゲン溶液(TypeI型,日本ハム社製)800μlに1.5MのNaClを80μl加え,プラスチック製容器内で混合し,6.5×105cellsの骨芽細胞(MC3T3-E1,理化学研究所)を含むウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,L-グルタミン含有,IWAKI社製)400μlを混合した溶液に播種し,攪拌機を用いてよく攪拌した。これを直径20mmのプラスチックシャーレに入れ,水平型超伝導マグネット装置(Oxford社,英国)内の中心部に静置した後,温度を20度から37度に徐々に上げていき2時間磁場曝露を行った。磁場強度は8Tで行った。磁場曝露後,培養液1ml加え,インキュベータ内で5日間培養した。配向度を測定した結果0.92となった。写真を図―7に、配向の分布を図―8に示す。[比較例3] 次に、超伝導電磁石を用いた場合のコラーゲン配向に関してさらに他の例を以下に示す。骨芽細胞(MC3T3E、理化学研究所)をウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,Lグルタミン含有、IWAKI社製)に播種し、攪拌後20mmのシャーレに入れ、水平型超伝導マグネット装置(Oxford社,英国)内の中心部に静置した後,温度を20度から37度に徐々に上げていき60時間磁場曝露を行った。磁場強度は8Tで行った。細胞の配向の測定をした結果、配高度は0.85となった。 3mg/ml,pH3.0のコラーゲン溶液(TypeI型,日本ハム社製)800μlに1.5MのNaClを80μl加え,プラスチック製容器内で混合し,6.5×105cellsの骨芽細胞(MC3T3E-1,理化学研究所)を含むウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,L-グルタミン含有,IWAKI社製)400μlを混合した溶液に播種し,攪拌機を用いてよく攪拌した。これを直径20mmのプラスチックシャーレに入れ,磁石を用いた磁気回路の中心部に静置した。磁場強度は2.0Tであった。その後,温度を20度から37度に徐々に上げていき2時間磁場曝露を行った。で行った。磁場曝露後,培養液1ml加え,インキュベータ内で5日間培養した。 上記コラーゲンに曝露された磁束密度は、NdFeBを主原料とする磁石を、いわゆる円筒型のハルバッハ磁気回路に構成することで実現した。このハルバッハ磁気回路は、永久磁石の残留磁束密度よりも高い磁束密度を空間中に生成する為に考案された、永久磁石を用いた磁気回路のことである。ここで今回使用した円筒型のハルバッハ磁気回路を例にとってハルバッハ磁気回路を説明する。図9に8方向着磁磁石の組み合わせによるハルバッハ磁気回路例の円筒断面図を図示する。永久磁石の組み合わせを円筒の回転方向の角度θに対して、永久磁石着磁方向を−2θ(マイナス2θ)とする事で円筒内部にほぼ平行な磁界を発生することが可能になる。理想的な無限円筒においては円筒内部の磁束密度Biは、永久磁石組み立て品の内径をRi,永久磁石組み立て品の外径をRo、永久磁石の残留磁束密度をBrとすると、Bi=Br・Ln(Ro/Ri)で表される。Lnは自然対数である。 なお、図9には8方向に着磁された磁石による組み合わせを図示しているが、おのおのの永久磁石部分は単一の永久磁石で作成することも、複数の永久磁石を組み合わせることによって作成することも可能である。又、8方向ではなく、他の方向の組み合わせ、たとえば4方向、12方向、16方向などの組み合わせによって内部に並行で強力な磁場を発生させることも可能である。 永久磁石により形成される磁石円筒が有限長の場合は、磁石円筒の両端において中心部分に比べて小さい磁束密度しか得られない。このため、所望の磁束密度を得るには十分長い円筒を作成するか、外径を上記数式によるよりも大きくする事が必要である。 又、円筒内において精密な平行磁界を得るには上記各部分の永久磁石の強度および着磁方向を精密に合わせる必要があるが、本実施例ではほぼ平行な強力磁場を得ることが必要であり、円筒内での平行度あるいは磁場強度一様性の精密性は、例えばハードディスクドライブの磁気抵抗ヘッドの製造工程に使用する磁気回路の場合に比べて、あまり必要ない。このため、上記各磁石部分の着磁角度は、その角度に近いことは必要であるが、正確にその角度であることは必ずしも必要とはしない。 実施例1においては、永久磁石の種類にはいわゆるネオジム・鉄・ボロン磁石を用いた。この磁石は希土類磁石と称される永久磁石の一種であり、現在残留磁束密度が最も高い磁石として知られている。本実施例において用いられた永久磁石は、NEOMAX社製のネオジム・鉄・ボロン系磁石の残留磁束密度1.3T以上のものを、使用場所によって組み合わせて使用した。すなわち、永久磁石の配置場所によって当該永久磁石が受ける逆磁界が異なる為、逆磁界の大きい部分には残留磁束密度の比較的低い、すなわち、逆磁界に対して強い磁石を使用した。当該永久磁石が、逆磁界をあまり受けない部分では必要箇所の磁束密度の増加と磁気回路の小型化を両立させる為に高い残留磁束密度を有する磁石を用いた。 円筒内部の直径20mm、長さ10mmの円筒部分に2.0T以上の磁束密度を発生させる為に、分割数(磁石着時方位)12、内径25mm、外径150mm、長さ200mmのハルバッハ磁気回路を作成した。比較例と同様に本永久磁石による磁場曝露実験によるコラーゲンの配向度を測定した結果0.70であった。 3mg/ml,pH3.0のコラーゲン溶液(TypeI型,日本ハム社製)800μlに1.5MのNaClを80μl加え,プラスチック製容器内で混合し,6.5×105cellsの骨芽細胞(MC3T3E-1,理化学研究所)を含むウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,L-グルタミン含有,IWAKI社製)400μlを混合した溶液に播種し,攪拌機を用いてよく攪拌した。これを直径35mmのプラスチックシャーレに入れ,温度を20度から37度に徐々に上げていき、磁石を用いた磁気回路の中心で2時間磁場曝露を行った。磁場強度は2.5T,で行った。磁場曝露後,培養液1ml加え,インキュベータ内で5日間培養した。2.5Tの磁場強度は実施例1と同様にハルバッハ永久磁石磁気回路を用いて実現した。 前述の方法でコラーゲンの配向度を測定した結果、配向度は0.75であった。写真を図―3に、配向の分布を図―4に示す。 3mg/ml,pH3.0のコラーゲン溶液(TypeI型,日本ハム社製)800μlに1.5MのNaClを80μl加え,プラスチック製容器内で混合し,6.5×105cellsの骨芽細胞(MC3T3E-1,理化学研究所)を含むウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,L-グルタミン含有,IWAKI社製)400μlを混合した溶液に播種し,攪拌機を用いてよく攪拌した。これを直径20mmのプラスチックシャーレに入れ,温度を20度から37度に徐々に上げていき磁石を用いた磁気回路で3Tの磁束密度空間にて 2時間磁場曝露を行った。磁場曝露後,培養液1ml加え,インキュベータ内で5日間培養した。3Tの磁場強度は実施例1と同様にハルバッハ永久磁石磁気回路を用いて実現した。 前述の方法でコラーゲンの配向度を測定した。その結果、配向度は0.82であった。写真を図―5に、配向の分布を図―6に示す。 骨芽細胞(MC3T3−E1、理化学研究所)をウシ胎児血清(FBS)が8%の培養液(DME,Lグルタミン含有、IWAKI社製)に播種し、攪拌後直径20mmのシャーレに入れ、磁石を用いた磁気回路にいれ、温度を20℃から37℃に徐々に上げて行き、磁場強度3Tに40時間連続曝露し、細胞の配向の測定をした。その結果配向度は0.81となった。 以上の結果から、永久磁石を用いた磁気回路で、2T以上の磁場を加えることにより、コラーゲンや細胞を70パーセント以上配向させることが出来ることが明らかになった。従来の超伝導磁石を用いた場合と比べ、遜色ない配向度が得られることが分かった。従来行われていた、高価でかつ莫大な維持費を必要とする超伝導磁石より、安価で維持費のかからないコラーゲンおよび細胞を配向させる装置を提供できることが明らかになった。また、永久磁石を用いた磁気回路とインキュベータを一体とした装置によれば、さらに簡便にコラーゲンおよび細胞の配向、培養を行うことが可能となり、以上の結果本発明の医学、生物学、工学に寄与する意味は大きい。比較例1で配向したコラーゲン細胞の観察写真である。比較例1のコラーゲン細胞の配向度を表す配向分布である。実施例2で配向したコラーゲン細胞の観察写真である。実施例2のコラーゲン細胞の配向度を表す配向分布である。実施例3で配向したコラーゲン細胞の観察写真である。実施例3のコラーゲン細胞の配向度を表す配向分布である。比較例2で配向したコラーゲン細胞の観察写真である。比較例2のコラーゲン細胞の配向度を表す配向分布である。本発明のハルバッハ磁気回路の円筒断面図である。 永久磁石で円筒型のハルバッハ磁気回路を構成し、永久磁石の組み合わせを円筒の回転方向の角度θに対して、永久磁石着磁方向を−2θ(マイナス2θ)とすることで円筒内部に強度2T以上で平行な磁場を発生させることを特徴とするコラーゲンおよび細胞を配向させる磁気回路。 前記永久磁石はNdFeBを含む組成からなっていることを特徴とする請求項1記載のコラーゲンおよび細胞を配向させる磁気回路。 請求項1又は2に記載のコラーゲンおよび細胞を配向させる磁気回路を有することを特徴とするインキュベータ。


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