生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_溶出試験方法及び装置
出願番号:2005090700
年次:2006
IPC分類:G01N 21/33,G01N 33/15


特許情報キャッシュ

岩田 庸助 毛利 元昭 浅川 直樹 JP 2006275545 公開特許公報(A) 20061012 2005090700 20050328 溶出試験方法及び装置 株式会社島津製作所 000001993 エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 506137147 野口 繁雄 100085464 岩田 庸助 毛利 元昭 浅川 直樹 G01N 21/33 20060101AFI20060915BHJP G01N 33/15 20060101ALI20060915BHJP JPG01N21/33G01N33/15 A 5 5 OL 12 2G059 2G059AA01 2G059BB04 2G059EE01 2G059EE11 2G059EE12 2G059FF04 2G059FF08 2G059GG10 2G059HH03 2G059HH06 2G059KK01 2G059MM01 2G059MM17 本発明は、医薬品製剤に含まれる特定成分の溶出性を評価する溶出試験に関し、特に、消化管内と似た状態(環境)の溶出試験液で錠剤やカプセル剤などの製剤から特定成分が溶出する量を測り、特定成分の溶出濃度を求める溶出試験方法及びその溶出試験方法に用いる溶出試験装置に関するものである。 一般に医薬品製剤は、剤形が同じ場合でも錠剤のサイズを変えただけでも溶出特性が変化するために効果が変わり、またサイズが同じ場合でも表面のコーティング技術が異なれば溶出特性が変化するために効果が変わる。特定成分を含む医薬品製剤を市場に出荷する際には、特定成分の溶出試験液への溶出性を評価する溶出試験が求められ、特定成分が規定時間内に溶出しない場合は、期待される薬効を発揮できないと判断される。ここで試験液とは、医薬品の溶出試験に用いる酸性(pH1付近)、弱酸性(pH4付近)及び中性(pH7付近)の溶出試験液を言い、特にin vitro-in vivo(生体外−生体内)の相関が求められる製剤の場合は、FDAのガイドラインにより中性試験液を用いることが推奨されている。 医薬品の製剤開発においては,特定成分が生体内で期待される薬効を充分に発揮できるように,特定成分の最適な溶出性を有する製剤処方を確立すべく,数多くの製剤処方について研究を行なっている。このような背景のため,医薬品の製剤開発における溶出試験は,評価すべき検体数が非常に多いのが現状である。その溶出試験は煩雑であり、分析に時間を要することから、医薬品の製剤開発においては、溶出試験操作の迅速化が必須要件になっている。 一般に薬物の溶出試験方法は日本薬局方に定められている。しかし、日本薬局方における溶出試験方法は、試験方法に関しては操作手順を定めているが、得られたデータから薬物の溶出濃度を求める算出方法に関しては詳細な規定をしていない。 薬物の定量法として、一般には吸光度測定法(UV法)と液体クロマトグラフ法(HPLC法)の2種類が多く採用されている。 吸光度測定法は、製剤から溶出した特定成分を含む試験液をガラスあるいは石英などの一定のセルに充填し所定の波長における吸光度を分光光度計にて測定し、検量線を基に溶出度を求める方法である。液体クロマトグラフ法は、製剤から溶出した特定成分を含む試験液を、液体クロマトグラフィーによって特定成分のみを分離し、分光光度計を用いて特定成分の吸光度から溶出度を求める方法である。 吸光度測定法は簡便でかつ精度が良いため、医薬品の品質管理試験に多く採用されている。そのメリットは、分析時間が短いことや、分析の際必要となるランニングコストが少ないことなどが挙げられる。しかし、製剤中に特定成分以外の夾雑成分が混在する場合は、特定成分のみを選択的に定量することは難しい。ここで夾雑成分とは、製剤に含まれている抗酸化剤(アスコルビン酸など)や防腐、防培剤(パラベン)、紫外領域あるいはまた可視領域に吸収を有する医薬品添加剤などに代表される、特定成分の定量を妨害する成分を総称して言う。 一方、液体クロマトグラフ法は、製剤に含まれる複数の成分を分離して定量することが可能であるが、その反面、分析時間が長くランニングコストも大きいというデメリットがある。さらに、特定成分が変化しやすい物質である場合は、分析時間に長時間要する液体クロマトグラフ法では分析中に特定成分が変化してしまい、正確な値を求めることが困難になる。 一般に医薬品の溶出試験は、特定成分をAとすると、特定成分Aの溶出過程のみを評価するものであり、特定成分Aから変化した分解物A’の定量は行なう必要がない。しかし、溶出試験では、変化する特定成分Aについては、「特定成分Aとその特定成分Aから変化した分解物A’を定量し、トータルの成分量A+A’を定量する」ことや、「特定成分Aを分解物A’又はそれらの誘導体A”に変換してから測定する」ことが例示されている(非特許文献1参照。)。 特定成分Aとその特定成分Aから変化した分解物A’を定量し、トータルの成分量A+A’を求めるためには,溶液中に存在する特定成分Aと分解物A’をHPLC法によりそれぞれ分離して,その量の総和として求める方法や,溶液中に存在する特定成分Aと分解物A’をHPLC法によりそれぞれ分離して,特定成分Aのみの量を求め,分解物A’に変換した特定成分Aの変化量を1次分解反応に基づくNelson-Wagner法により補正し、溶出率を求めることが一般的である。 図10はNelson-Wagner法による分解物A’の測定例を示す。この方法は、特定成分Aから分解物A’への変化量を反応速度から算出し、溶出プロファイルをシミュレートにより得る方法である。しかし、本法では、サンプリング直後に特定成分Aが分解物A’へ変化する反応を止める必要があり、操作が煩雑化する。日薬連発第412号、「品質再評価に伴う難溶性薬物、変化性薬物の扱いについて」 吸光度測定法による溶出試験液中の特定成分の定量では、特定成分以外に製剤中に紫外領域あるいはまた可視領域に吸収を有する夾雑成分が混在する場合には、特定成分のみを選択的に定量することが困難であった。さらに、特定成分が試験液中で容易に変化する場合は、正確に溶出量を定量することができなかった。一方、液体クロマトグラフ法による溶出試験液中の特定成分の定量では、サンプリング直後に特定成分の変化反応をpHの調整を行なうことなどにより止める必要があり、操作が更に煩雑化した。 そこで本発明は、吸光度測定法を用いた溶出試験において、特定成分が変化したり、試験液中に夾雑成分が共存したりする場合にも、試験液中の特定成分の選択性を高め、医薬品等の品質試験の迅速化を図ることを目的とする。 本発明の溶出試験方法は、溶出後に化学的特性が経時変化する特定成分と溶出後も化学的特性が経時変化しない夾雑成分とを少なくとも含む製剤が、試験液に溶出していく過程における前記特定成分の溶出過程を測定する溶出試験方法において、 前記特定成分とその分解物とからなる系での2つの等吸収点波長λ1,λ2で、前記夾雑成分の吸光度の比k及び前記特定成分の吸光度の比k’を求めておき、 前記製剤の溶出過程の複数の時点tで、前記試験液について前記2つの等吸収点波長λ1,λ2における吸光度C1(t),C2(t)を各時間tで測定し、前記特定成分の吸光度A1(t),A2(t)の少なくとも一方を、 k×C2(t)−C1(t)=k×A2(t)−A1(t) …(5)及び A1(t)/A2(t)=k’ …(6)の関係式を用いて算出して溶出濃度に変換するものである。 ここで、「特定成分とその分解物とからなる系」は特定成分と分解物との2成分に限らず、スペクトルが時間的に変化しない成分を含んでいてもよい。そのような成分は等吸収点波長を見つける上で影響がないからである。 本発明での「分解物」は、誘導体など化学的に変換された化合物をすべて含む概念として使用する。 特定成分とその分解物の吸収スペクトルを、全濃度を一定に保ちながら両成分の濃度の割合を変えて測定すれば、吸収曲線が一点で交わる交点をもつ場合が多い。この交点のことを「等吸収点」という。等吸収点は特定成分とその分解物のモル吸光度の等しい波長に相当する。本発明では等吸収点の吸光度は組成によらず一定であるという事実を利用する。 「溶出」とは、製剤C中の特定成分Aが試験液に溶け出すことを意味している。 また「分解」とは、試験液に溶出した特定成分Aが物理的又は化学な変化により化学的特性の異なる成分A’に変化することをいう。本発明での「分解物」は、誘導体など化学的に変換された化合物をすべて含む概念として使用する。 等吸収点波長は溶出試験液の吸収スペクトルそのものだけでなく、その微分値によっても求めることができる。溶出試験液には化学的特性が時間的に変化せず、したがってその吸収スペクトルの形状も変化しない夾雑成分も含まれているが、吸収スペクトルを時間微分すれば夾雑成分の影響を除くことができる。本発明では、吸光度及びその微分値が経時的に等強度である波長を等吸収点波長とする。 ここで用いる時間微分値は特に限定するものではなく、n次微分値であればよいが、例えば1次微分値、2次微分値又は3次微分値を挙げることができる。 本発明の溶出試験装置は、測定対象製剤を試験液に溶出する溶出試験器と、その溶出試験器からの溶出液に光照射を行ない、測定対象製剤に含まれる特定成分とその分解物とからなる系での2つの等吸収点波長λ1,λ2で吸光度を測定する検出器と、前記製剤の溶出過程の複数の時点tで測定した前記2つの等吸収点波長λ1,λ2における吸光度C1(t),C2(t)から前記特定成分の吸光度A1(t),A2(t)の少なくとも一方を、 k×C2(t)−C1(t)=k×A2(t)−A1(t)及び A1(t)/A2(t)=k’の関係式を用いて算出して溶出濃度に変換する演算処理部とを備えている。 ここで、kは前記2つの等吸収点波長λ1,λ2での前記夾雑成分の吸光度比、k’は同等吸収点波長λ1,λ2での前記特定成分の吸光度比である。 また、前記検出器の前又は後に、スペクトルのベースラインを補正するための参照液を貯蔵する参照液貯蔵容器をさらに備えてもよい。 本発明の溶出試験方法によれば、特定成分が変化しやすいものであっても、また夾雑物を含んでいる場合であっても、特定成分の溶出度を紫外線吸収法により測定することができるので、短い分析時間で溶出試験を行なうことができる。 2つの等吸収点波長を求めるのに吸収スペクトルそのものでなく、微分値を用いれば夾雑成分の影響を除くことができる。 本発明の溶出試験装置によれば、特定成分が変化しやすいものであったり、また夾雑物を含んでいたりしても、吸光度測定法により測定対象製剤の溶出試験を短い分析時間で行なうことができる。 また、溶出試験器にスペクトルのベースラインを補正するための参照液を貯蔵する参照液貯蔵容器をさらに備えるようにすれば、スペクトルを補正することができる。これにより、より精度の高い溶出度を算出する装置を提供することができる。 以下に本発明の実施例を説明する。 図1は特定成分Aを試験液に溶解した後の、特定成分Aの残存濃度の経時変化を示す。 特定成分Aは中性条件での溶出試験において不安定な医薬品であり、ラベプラゾールナトリウムである。溶出試験に用いる試験液は、特定成分Aの溶出条件を中性にするために、50mMのリン酸緩衝液(pH6.8、37℃)を用いた。 溶液中の特定成分Aの残存濃度は,特定成分Aをリン酸緩衝液中に0.1mg/mLになるように溶解させ、15〜20分ごとにHPLC分析を行ない特定成分Aのピーク面積値を求め,予め特定成分Aが変化しない溶液に溶かした標準液のピーク面積値を対照として算出した。 特定成分Aの残存濃度は、40分以内に初期濃度の半分である0.05mg/mLにまで減少したことが確認された。これにより,特定成分Aは試験液中で変化することが確認された。 図2は特定成分Aを50mMリン酸緩衝液(pH6.8、37℃)に溶解させた後の、溶解直後、30分後、60分後及び120分後における液体クロマトグラムを示した図であり、特定成分Aが分解物A’へ変化するときの推移を示している。 保持時間5分あたりの大きいピークが特定成分Aであり、その左右のピークは分解物A’についてのものである。特定成分Aは試験液中で経時的に分解物A’に変化していくことから、従来の選択性のない吸光度測定法によっては特定成分Aのみを定量することは困難であることがわかる。 図3は特定成分Aの紫外線吸収スペクトルの200nm〜360nmにおける経時変化を示す図である。特定成分Aとして0.02mg/mLのラベプラゾールナトリウムを用い、試験液として50mMのリン酸緩衝液(pH6.8、37℃)を用いた。 特定成分Aはこの条件において変化しやすい性質であるため、吸収スペクトルは図中に矢印で示されるように経時的に変化した。しかし、波長234nmと287nmにおける吸光度はそれぞれほとんど変化することなく、等吸収点の存在が確認された。 特定成分が試験液で容易に変化する場合、特定成分Aとその分解物A’を含む系の吸光度が経時的に変化しない波長を等吸収点波長として選択して測定を行なうことができる。 特定成分Aを含む製剤Cには、特定成分Aに対する夾雑成分B、例えば約0.01mg/mLのハイプロメロースフタレートが含まれている。夾雑成分Bとしては、他にアスコルビン酸やパラベンなどが挙げられる。 図4は200nm〜360nmにおける、夾雑成分Bとしてのハイプロメロースフタレートの紫外線吸収スペクトルを示す。夾雑成分Bの吸光度は経時的に変化することなく一定であり、300nm以下の紫外領域に吸収をもつ。 図5は試験液中での特定成分A単独、夾雑成分B単独及び両成分A,Bが混在した場合の200nm〜360nmにおける、ある時間tでの吸収スペクトルを示す。 ここで、製剤Cから特定成分Aと夾雑成分Bが溶出した試験液から、定量を妨害する夾雑成分Bの影響を排除して、特定成分Aのみを定量する方法を以下のように設定した。 設定波長は、製剤Cにおける特定成分Aとその分解物との系における等吸収点波長である234nm(λ1)と287nm(λ2)とする。ある時間tにおける特定成分Aの吸光度をA234nm(t)、及びA287nm(t)とし、夾雑成分Bの吸光度をB234nm(t)、B287nm(t)とすると、その合成スペクトルの吸光度C234nm(t)、C287nm(t)は、以下のように表される。 C234nm(t)=A234nm(t)+B234nm(t) …(1) C287nm(t)=A287nm(t)+B287nm(t) …(2)また、夾雑成分Bのスペクトルに注目し、波長234nmと287nmの吸光度の比は時間(つまり濃度)に依存せずに一定であるため、次の(3)式が導き出される。 B234nm(t)/B287nm(t)=k …(3) ここでkは夾雑成分の234nmと287nmでの吸光度比であり、時間に依存せず一定であることから定数として予め算出可能な吸光度比である。 (1)式及び(2)式を(3)式に代入すると、 {C234nm(t)−A234nm(t)}/{C287nm(t)−A287nm(t)}=k …(4)これを展開すると、(5)式が導かれる。 k×C287nm(t)−C234nm(t)=k×A287nm(t)−A234nm(t) …(5) また、A234nm(t)とA287nm(t)の比率も経時変化せずに一定であるから、 A234nm(t)/A287nm(t)=k’ …(6) (5)式は、溶出試験液の吸収スペクトルの234nm及び287nmでの吸光度測定値と、定数kが求められれば、夾雑成分と特定成分Aが混在した溶液下でも特定成分Aが定量できることを意味している。 k及びk’は定数であるから、溶出試験液の2つの等吸収点波長での吸光度測定値から特定成分Aのみの濃度が(5),(6)式の連立方程式を解くことにより定量できる。 次に(3)式を説明する一例を図6を参照して示す。図6の縦軸は吸光度、横軸は夾雑成分Bの濃度である。 各濃度(0〜700mg/mL)の夾雑成分Bを含む溶液を調製し、二波長(234nm,287nm)での吸光度を濃度に対してプロットした直線の傾きから吸光度の比を算出すると、k=5.9を得た。 図7は特定成分Aの溶出濃度を1つの波長で測定した一波長吸光度測定法(右側の図)及び本発明である2つの波長で測定した二波長吸光度測定法(左側の図)の、それぞれの結果を示した図である。溶出試験方法では、「試料6個について試験を行ない、個々の試料からの溶出率がすべて医薬品各条に規定する値のとき適合とする」と規定しているので、6個の試料について行なった。本発明の方法によるそれらの6つの測定結果はよい一致を示している。 一波長法(234nm)での結果は、溶出率140%となっているが、二波長法(234nm及び287nm)の結果では、溶出率は約100%付近であり、夾雑成分の影響を除くことができたことが確認できる。 ここで、本発明の二波長吸光度測定法が上式(1)〜(6)を用いるのに対して、一波長法による測定法とは、日本薬局方が定めているものであり、例えばセファレキシン徐放顆粒法では、試料溶液の溶出液及び標準溶液の溶出液につき、崩壊試験液を対照液とし、波長262nmにおける吸光度AT及びASを測定することで下記の式(7)より算出するものである。 溶出率(%)=WS×(AT/AS)×(V’/V)×(1−C)×90 …(7) ここでWSは、例えばセファレキシン標準溶液などの量(mg(力価))である。Vは初めのろ液(例えば10mL)を除いた後のろ液量VmLであり、V’はそのろ液量VmLに、例えば、セファレキシンを含む液となるように崩壊試験を加えた試料溶液量V’mLである。また、Cは1包中のセファレキシンの表示量(mg(力価))である。 図8は本発明の二波長吸光度測定法による結果(左側の図)と、Nelson-Wagner法に基づくHPLC法の結果(右側の図)を比較したものである。この実施例でも6個の試料について試験を行なった。 本発明の二波長による吸光度測定法では、HPLC法の結果(Nelson-wager補正後)と、ほぼ同等の結果が得られることが確認できる。 図9は本発明を実施する溶出試験装置の構成図である。 本発明の溶出試験装置は、測定対象製剤を溶出試験液に溶出させる溶出試験器3と、検出器5と、演算処理部7を備えている。 検出器5はフローセルを備え、溶出試験器3の溶出試験液を定期的又は任意の時点で採取してそのフローセルに流し、フローセルを経て再び溶出試験器3に戻す流路を備えている。検出器5ではフローセル中の溶出試験液に光源1から光照射を行ない、2つの波長λ1,λ2での吸光度を測定する。その2波長λ1,λ2は測定対象製剤に含まれる特定成分とその分解物とからなる系での2つの等吸収点波長λ1,λ2である。 演算処理部7は製剤の溶出過程の複数の時点tで測定した2つの等吸収点波長λ1,λ2における吸光度C1(t),C2(t)から特定成分の吸光度A1(t),A2(t)の少なくとも一方を、 k×C2(t)−C1(t)=k×A2(t)−A1(t)及び A1(t)/A2(t)=k’の関係式を用いて算出して溶出濃度に変換する。ここで、kは2つの等吸収点波長λ1,λ2での前記夾雑成分の吸光度比、k’は同等吸収点波長λ1,λ2での前記特定成分の吸光度比である。 溶出試験器3は既知のいずれのものであってもよい。 また、溶出試験器3には、スペクトルのベースラインを補正するための参照液を貯蔵する参照液貯蔵容器をさらに備えてもよい。 本発明では夾雑成分の影響を取り除いた特定成分の溶出度を算出する装置を提供することができ、また、参照液を貯蔵する参照液貯蔵容器をさらに備えるようにすれば、スペクトルを補正することができるので、より精度の高い溶出度を算出する装置を提供することができる。 本発明は前記説明した実施例に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲で実施可能である。例えば、特定成分の微分スペクトルの吸収強度が経時変化しない波長を選ぶことにより等吸収点波長を決定してもよく、その場合、スペクトルの1次微分又は2次微分のみならず、3次微分以上の高次微分を行なった値によってもよい。 また、等吸収点波長が3個以上得られた場合は、その中から選んだ2つの等吸収点波長を用いて本発明を実施することができる。 本発明は、紫外領域あるいはまた可視領域に吸収を有する化合物を含む,市場に流通するいかなる医薬品製剤の溶出試験に利用することができる。特定成分Aを試験液に溶解させた後の、特定成分Aの残存濃度の経時変化を示した図である特定成分Aを試験液に溶解させた後の、液体クロマトグラムを示す図である。特定成分Aの吸収スペクトルの200nm〜360nmにおける経時変化を示す図である。等吸収点波長が234nmと287nmに確認された。夾雑成分Bの吸収スペクトルを示す図である。特定成分A単独、夾雑成分B単独及び両成分A,Bが混在した系の吸収スペクトルを示す図である。吸光度の比kの算出についての一例を示した図である。特定成分Aの溶出濃度を一波長吸光度測定法及び二波長吸光度測定法で演算した結果を示す図である。特定成分Aの溶出濃度について、二波長吸光度測定法とHPLC法の結果をNelson-Wagner法により補正した結果とを比較した図である。本発明の溶出試験装置の一実施例を示す図である。Nelson-Wagner法により算出した溶出プロファイルである。符号の説明 1 光源 3 溶出試験器 5 検出器 7 演算処理部 溶出後に化学的特性が経時変化する特定成分と溶出後も化学的特性が経時変化しない夾雑成分とを少なくとも含む製剤が、試験液に溶出していく過程における前記特定成分の溶出過程を測定する溶出試験方法において、 前記特定成分とその分解物とからなる系での2つの等吸収点波長λ1,λ2で、前記夾雑成分の吸光度の比k及び前記特定成分の吸光度の比k’を求めておき、 前記製剤の溶出過程の複数の時点tで、前記試験液について前記2つの等吸収点波長λ1,λ2における吸光度C1(t),C2(t)を各時間tで測定し、前記特定成分の吸光度A1(t),A2(t)の少なくとも一方を、 k×C2(t)−C1(t)=k×A2(t)−A1(t)及び A1(t)/A2(t)=k’の関係式を用いて算出して溶出濃度に変換することを特徴とする溶出試験方法。 前記2つの等吸収点波長は吸光度の微分値に基づいて求められたものである請求項1に記載の溶出試験方法。 前記微分値は1次微分値、2次微分値又は3次微分値である請求項2に記載の溶出試験方法。 測定対象製剤を試験液に溶出する溶出試験器と、 前記溶出試験器からの溶出液に光照射を行ない、測定対象製剤に含まれる特定成分とその分解物とからなる系での2つの等吸収点波長λ1,λ2で吸光度を測定する検出器と、 前記製剤の溶出過程の複数の時点tで測定した前記2つの等吸収点波長λ1,λ2における吸光度C1(t),C2(t)から前記特定成分の吸光度A1(t),A2(t)の少なくとも一方を、 k×C2(t)−C1(t)=k×A2(t)−A1(t)及び A1(t)/A2(t)=k’の関係式を用いて算出して溶出濃度に変換する演算処理部とを備えた溶出試験装置。 ここで、kは前記2つの等吸収点波長λ1,λ2での前記夾雑成分の吸光度比、k’は同等吸収点波長λ1,λ2での前記特定成分の吸光度比である。 前記検出器の前又は後に、スペクトルのベースラインを補正するための参照液を貯蔵する参照液貯蔵容器をさらに備えている請求項4に記載の溶出試験装置。 【課題】 試験液中の特定成分の選択性を高め、紫外線吸収法による溶出試験の迅速化を図る。【解決手段】 溶出後に化学的特性が変化する特定成分と、経時変化しない夾雑成分とを含む製剤が、試験液に溶出していく過程を測定する溶出試験方法において、特定成分とその分解物とを合わせたスペクトルにおける、2つの等吸収点波長λ1,λ2での夾雑成分の吸光度の比k及び特定成分の吸光度の比k’を求め、製剤の溶出過程の複数の時点tで、試験液について2つの等吸収点波長における吸光度C1(t),C2(t)を各時間tで測定し、k×C2(t)−C1(t)=k×A2(t)−A1(t)及びA1(t)/A2(t)=k’の関係式を用いて特定成分の吸光度A1(t),A2(t)の少なくとも一方を算出して溶出濃度に変換する。【選択図】図5


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特許公報(B2)_溶出試験方法及び装置

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_溶出試験方法及び装置
出願番号:2005090700
年次:2010
IPC分類:G01N 21/33,G01N 33/15


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岩田 庸助 毛利 元昭 浅川 直樹 JP 4436778 特許公報(B2) 20100108 2005090700 20050328 溶出試験方法及び装置 株式会社島津製作所 000001993 エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 506137147 野口 繁雄 100085464 岩田 庸助 毛利 元昭 浅川 直樹 20100324 G01N 21/33 20060101AFI20100304BHJP G01N 33/15 20060101ALI20100304BHJP JPG01N21/33G01N33/15 A G01N21/00−21/61 G01N33/15 JSTPlus(JDreamII) 特開2000−356632(JP,A) 特開平01−170837(JP,A) 特開平01−165957(JP,A) 特開平04−016750(JP,A) VINOD P.SHAH and KATHRYN E.OGGER,“Comparison of Ultraviolet and Liquid Chromatographic Methods for Dissolution Testing of Sodium Phenytoin Capsules”,Journal of Pharmaceutical Sciences,1986年,Vol.75, No.11,p.1113-1115 Lei Wang and Mandana Asgharnejad,“Second-derivative UV spectrometric determination of simvastatin in its tablet dosage form”,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,2000年,Vol.21, No.6,p.1243-1248 5 2006275545 20061012 12 20070730 島田 英昭 本発明は、医薬品製剤に含まれる特定成分の溶出性を評価する溶出試験に関し、特に、消化管内と似た状態(環境)の溶出試験液で錠剤やカプセル剤などの製剤から特定成分が溶出する量を測り、特定成分の溶出濃度を求める溶出試験方法及びその溶出試験方法に用いる溶出試験装置に関するものである。 一般に医薬品製剤は、剤形が同じ場合でも錠剤のサイズを変えただけでも溶出特性が変化するために効果が変わり、またサイズが同じ場合でも表面のコーティング技術が異なれば溶出特性が変化するために効果が変わる。特定成分を含む医薬品製剤を市場に出荷する際には、特定成分の溶出試験液への溶出性を評価する溶出試験が求められ、特定成分が規定時間内に溶出しない場合は、期待される薬効を発揮できないと判断される。ここで試験液とは、医薬品の溶出試験に用いる酸性(pH1付近)、弱酸性(pH4付近)及び中性(pH7付近)の溶出試験液を言い、特にin vitro-in vivo(生体外−生体内)の相関が求められる製剤の場合は、FDAのガイドラインにより中性試験液を用いることが推奨されている。 医薬品の製剤開発においては,特定成分が生体内で期待される薬効を充分に発揮できるように,特定成分の最適な溶出性を有する製剤処方を確立すべく,数多くの製剤処方について研究を行なっている。このような背景のため,医薬品の製剤開発における溶出試験は,評価すべき検体数が非常に多いのが現状である。その溶出試験は煩雑であり、分析に時間を要することから、医薬品の製剤開発においては、溶出試験操作の迅速化が必須要件になっている。 一般に薬物の溶出試験方法は日本薬局方に定められている。しかし、日本薬局方における溶出試験方法は、試験方法に関しては操作手順を定めているが、得られたデータから薬物の溶出濃度を求める算出方法に関しては詳細な規定をしていない。 薬物の定量法として、一般には吸光度測定法(UV法)と液体クロマトグラフ法(HPLC法)の2種類が多く採用されている。 吸光度測定法は、製剤から溶出した特定成分を含む試験液をガラスあるいは石英などの一定のセルに充填し所定の波長における吸光度を分光光度計にて測定し、検量線を基に溶出度を求める方法である。液体クロマトグラフ法は、製剤から溶出した特定成分を含む試験液を、液体クロマトグラフィーによって特定成分のみを分離し、分光光度計を用いて特定成分の吸光度から溶出度を求める方法である。 吸光度測定法は簡便でかつ精度が良いため、医薬品の品質管理試験に多く採用されている。そのメリットは、分析時間が短いことや、分析の際必要となるランニングコストが少ないことなどが挙げられる。しかし、製剤中に特定成分以外の夾雑成分が混在する場合は、特定成分のみを選択的に定量することは難しい。ここで夾雑成分とは、製剤に含まれている抗酸化剤(アスコルビン酸など)や防腐、防培剤(パラベン)、紫外領域あるいはまた可視領域に吸収を有する医薬品添加剤などに代表される、特定成分の定量を妨害する成分を総称して言う。 一方、液体クロマトグラフ法は、製剤に含まれる複数の成分を分離して定量することが可能であるが、その反面、分析時間が長くランニングコストも大きいというデメリットがある。さらに、特定成分が変化しやすい物質である場合は、分析時間に長時間要する液体クロマトグラフ法では分析中に特定成分が変化してしまい、正確な値を求めることが困難になる。 一般に医薬品の溶出試験は、特定成分をAとすると、特定成分Aの溶出過程のみを評価するものであり、特定成分Aから変化した分解物A’の定量は行なう必要がない。しかし、溶出試験では、変化する特定成分Aについては、「特定成分Aとその特定成分Aから変化した分解物A’を定量し、トータルの成分量A+A’を定量する」ことや、「特定成分Aを分解物A’又はそれらの誘導体A”に変換してから測定する」ことが例示されている(非特許文献1参照。)。 特定成分Aとその特定成分Aから変化した分解物A’を定量し、トータルの成分量A+A’を求めるためには,溶液中に存在する特定成分Aと分解物A’をHPLC法によりそれぞれ分離して,その量の総和として求める方法や,溶液中に存在する特定成分Aと分解物A’をHPLC法によりそれぞれ分離して,特定成分Aのみの量を求め,分解物A’に変換した特定成分Aの変化量を1次分解反応に基づくNelson-Wagner法により補正し、溶出率を求めることが一般的である。 図10はNelson-Wagner法による分解物A’の測定例を示す。この方法は、特定成分Aから分解物A’への変化量を反応速度から算出し、溶出プロファイルをシミュレートにより得る方法である。しかし、本法では、サンプリング直後に特定成分Aが分解物A’へ変化する反応を止める必要があり、操作が煩雑化する。日薬連発第412号、「品質再評価に伴う難溶性薬物、変化性薬物の扱いについて」 吸光度測定法による溶出試験液中の特定成分の定量では、特定成分以外に製剤中に紫外領域あるいはまた可視領域に吸収を有する夾雑成分が混在する場合には、特定成分のみを選択的に定量することが困難であった。さらに、特定成分が試験液中で容易に変化する場合は、正確に溶出量を定量することができなかった。一方、液体クロマトグラフ法による溶出試験液中の特定成分の定量では、サンプリング直後に特定成分の変化反応をpHの調整を行なうことなどにより止める必要があり、操作が更に煩雑化した。 そこで本発明は、吸光度測定法を用いた溶出試験において、特定成分が変化したり、試験液中に夾雑成分が共存したりする場合にも、試験液中の特定成分の選択性を高め、医薬品等の品質試験の迅速化を図ることを目的とする。 本発明の溶出試験方法は、溶出後に化学的特性が経時変化する特定成分と溶出後も化学的特性が経時変化しない夾雑成分とを少なくとも含む製剤が、試験液に溶出していく過程における前記特定成分の溶出過程を測定する溶出試験方法において、 前記特定成分とその分解物とからなる系での2つの等吸収点波長λ1,λ2で、前記夾雑成分の吸光度の比k及び分解物を含む前記特定成分の吸光度の比k’を求めておき、 前記製剤の溶出過程の複数の時点tで、前記試験液について前記2つの等吸収点波長λ1,λ2における吸光度C1(t),C2(t)を各時間tで測定し、分解物を含む前記特定成分の吸光度A1(t),A2(t)の少なくとも一方を、 k×C2(t)−C1(t)=k×A2(t)−A1(t) …(5)及び A1(t)/A2(t)=k’ …(6)の関係式を用いて算出して溶出濃度に変換するものである。 ここで、「特定成分とその分解物とからなる系」は特定成分と分解物との2成分に限らず、スペクトルが時間的に変化しない成分を含んでいてもよい。そのような成分は等吸収点波長を見つける上で影響がないからである。 本発明での「分解物」は、誘導体など化学的に変換された化合物をすべて含む概念として使用する。 特定成分とその分解物の吸収スペクトルを、全濃度を一定に保ちながら両成分の濃度の割合を変えて測定すれば、吸収曲線が一点で交わる交点をもつ場合が多い。この交点のことを「等吸収点」という。等吸収点は特定成分とその分解物のモル吸光度の等しい波長に相当する。本発明では等吸収点の吸光度は組成によらず一定であるという事実を利用する。 「溶出」とは、製剤C中の特定成分Aが試験液に溶け出すことを意味している。 また「分解」とは、試験液に溶出した特定成分Aが物理的又は化学な変化により化学的特性の異なる成分A’に変化することをいう。本発明での「分解物」は、誘導体など化学的に変換された化合物をすべて含む概念として使用する。 等吸収点波長は溶出試験液の吸収スペクトルそのものだけでなく、その微分値によっても求めることができる。溶出試験液には化学的特性が時間的に変化せず、したがってその吸収スペクトルの形状も変化しない夾雑成分も含まれているが、吸収スペクトルを時間微分すれば夾雑成分の影響を除くことができる。本発明では、吸光度及びその微分値が経時的に等強度である波長を等吸収点波長とする。 ここで用いる時間微分値は特に限定するものではなく、n次微分値であればよいが、例えば1次微分値、2次微分値又は3次微分値を挙げることができる。 本発明の溶出試験装置は、測定対象製剤を試験液に溶出する溶出試験器と、その溶出試験器からの溶出液に光照射を行ない、測定対象製剤に含まれる特定成分とその分解物とからなる系での2つの等吸収点波長λ1,λ2で吸光度を測定する検出器と、前記製剤の溶出過程の複数の時点tで測定した前記2つの等吸収点波長λ1,λ2における吸光度C1(t),C2(t)から分解物を含む前記特定成分の吸光度A1(t),A2(t)の少なくとも一方を、 k×C2(t)−C1(t)=k×A2(t)−A1(t)及び A1(t)/A2(t)=k’の関係式を用いて算出して溶出濃度に変換する演算処理部とを備えている。 ここで、kは前記2つの等吸収点波長λ1,λ2での前記夾雑成分の吸光度比、k’は同等吸収点波長λ1,λ2での分解物を含む前記特定成分の吸光度比である。 また、前記検出器の前又は後に、スペクトルのベースラインを補正するための参照液を貯蔵する参照液貯蔵容器をさらに備えてもよい。 本発明の溶出試験方法によれば、特定成分が変化しやすいものであっても、また夾雑物を含んでいる場合であっても、特定成分の溶出度を紫外線吸収法により測定することができるので、短い分析時間で溶出試験を行なうことができる。 2つの等吸収点波長を求めるのに吸収スペクトルそのものでなく、微分値を用いれば夾雑成分の影響を除くことができる。 本発明の溶出試験装置によれば、特定成分が変化しやすいものであったり、また夾雑物を含んでいたりしても、吸光度測定法により測定対象製剤の溶出試験を短い分析時間で行なうことができる。 また、溶出試験器にスペクトルのベースラインを補正するための参照液を貯蔵する参照液貯蔵容器をさらに備えるようにすれば、スペクトルを補正することができる。これにより、より精度の高い溶出度を算出する装置を提供することができる。 以下に本発明の実施例を説明する。 図1は特定成分Aを試験液に溶解した後の、特定成分Aの残存濃度の経時変化を示す。 特定成分Aは中性条件での溶出試験において不安定な医薬品であり、ラベプラゾールナトリウムである。溶出試験に用いる試験液は、特定成分Aの溶出条件を中性にするために、50mMのリン酸緩衝液(pH6.8、37℃)を用いた。 溶液中の特定成分Aの残存濃度は,特定成分Aをリン酸緩衝液中に0.1mg/mLになるように溶解させ、15〜20分ごとにHPLC分析を行ない特定成分Aのピーク面積値を求め,予め特定成分Aが変化しない溶液に溶かした標準液のピーク面積値を対照として算出した。 特定成分Aの残存濃度は、40分以内に初期濃度の半分である0.05mg/mLにまで減少したことが確認された。これにより,特定成分Aは試験液中で変化することが確認された。 図2は特定成分Aを50mMリン酸緩衝液(pH6.8、37℃)に溶解させた後の、溶解直後、30分後、60分後及び120分後における液体クロマトグラムを示した図であり、特定成分Aが分解物A’へ変化するときの推移を示している。 保持時間5分あたりの大きいピークが特定成分Aであり、その左右のピークは分解物A’についてのものである。特定成分Aは試験液中で経時的に分解物A’に変化していくことから、従来の選択性のない吸光度測定法によっては特定成分Aのみを定量することは困難であることがわかる。 図3は特定成分Aの紫外線吸収スペクトルの200nm〜360nmにおける経時変化を示す図である。特定成分Aとして0.02mg/mLのラベプラゾールナトリウムを用い、試験液として50mMのリン酸緩衝液(pH6.8、37℃)を用いた。 特定成分Aはこの条件において変化しやすい性質であるため、吸収スペクトルは図中に矢印で示されるように経時的に変化した。しかし、波長234nmと287nmにおける吸光度はそれぞれほとんど変化することなく、等吸収点の存在が確認された。 特定成分が試験液で容易に変化する場合、特定成分Aとその分解物A’を含む系の吸光度が経時的に変化しない波長を等吸収点波長として選択して測定を行なうことができる。 特定成分Aを含む製剤Cには、特定成分Aに対する夾雑成分B、例えば約0.01mg/mLのハイプロメロースフタレートが含まれている。夾雑成分Bとしては、他にアスコルビン酸やパラベンなどが挙げられる。 図4は200nm〜360nmにおける、夾雑成分Bとしてのハイプロメロースフタレートの紫外線吸収スペクトルを示す。夾雑成分Bの吸光度は経時的に変化することなく一定であり、300nm以下の紫外領域に吸収をもつ。 図5は試験液中での特定成分A単独、夾雑成分B単独及び両成分A,Bが混在した場合の200nm〜360nmにおける、ある時間tでの吸収スペクトルを示す。 ここで、製剤Cから特定成分Aと夾雑成分Bが溶出した試験液から、定量を妨害する夾雑成分Bの影響を排除して、特定成分Aのみを定量する方法を以下のように設定した。 設定波長は、製剤Cにおける特定成分Aとその分解物との系における等吸収点波長である234nm(λ1)と287nm(λ2)とする。ある時間tにおける特定成分Aの吸光度をA234nm(t)、及びA287nm(t)とし、夾雑成分Bの吸光度をB234nm(t)、B287nm(t)とすると、その合成スペクトルの吸光度C234nm(t)、C287nm(t)は、以下のように表される。 C234nm(t)=A234nm(t)+B234nm(t) …(1) C287nm(t)=A287nm(t)+B287nm(t) …(2)また、夾雑成分Bのスペクトルに注目し、波長234nmと287nmの吸光度の比は時間(つまり濃度)に依存せずに一定であるため、次の(3)式が導き出される。 B234nm(t)/B287nm(t)=k …(3) ここでkは夾雑成分の234nmと287nmでの吸光度比であり、時間に依存せず一定であることから定数として予め算出可能な吸光度比である。 (1)式及び(2)式を(3)式に代入すると、 {C234nm(t)−A234nm(t)}/{C287nm(t)−A287nm(t)}=k …(4)これを展開すると、(5)式が導かれる。 k×C287nm(t)−C234nm(t)=k×A287nm(t)−A234nm(t) …(5) また、A234nm(t)とA287nm(t)の比率も経時変化せずに一定であるから、 A234nm(t)/A287nm(t)=k’ …(6) (5)式は、溶出試験液の吸収スペクトルの234nm及び287nmでの吸光度測定値と、定数kが求められれば、夾雑成分と特定成分Aが混在した溶液下でも特定成分Aが定量できることを意味している。 k及びk’は定数であるから、溶出試験液の2つの等吸収点波長での吸光度測定値から特定成分Aのみの濃度が(5),(6)式の連立方程式を解くことにより定量できる。 次に(3)式を説明する一例を図6を参照して示す。図6の縦軸は吸光度、横軸は夾雑成分Bの濃度である。 各濃度(0〜700mg/mL)の夾雑成分Bを含む溶液を調製し、二波長(234nm,287nm)での吸光度を濃度に対してプロットした直線の傾きから吸光度の比を算出すると、k=5.9を得た。 図7は特定成分Aの溶出濃度を1つの波長で測定した一波長吸光度測定法(右側の図)及び本発明である2つの波長で測定した二波長吸光度測定法(左側の図)の、それぞれの結果を示した図である。溶出試験方法では、「試料6個について試験を行ない、個々の試料からの溶出率がすべて医薬品各条に規定する値のとき適合とする」と規定しているので、6個の試料について行なった。本発明の方法によるそれらの6つの測定結果はよい一致を示している。 一波長法(234nm)での結果は、溶出率140%となっているが、二波長法(234nm及び287nm)の結果では、溶出率は約100%付近であり、夾雑成分の影響を除くことができたことが確認できる。 ここで、本発明の二波長吸光度測定法が上式(1)〜(6)を用いるのに対して、一波長法による測定法とは、日本薬局方が定めているものであり、例えばセファレキシン徐放顆粒法では、試料溶液の溶出液及び標準溶液の溶出液につき、崩壊試験液を対照液とし、波長262nmにおける吸光度AT及びASを測定することで下記の式(7)より算出するものである。 溶出率(%)=WS×(AT/AS)×(V’/V)×(1−C)×90 …(7) ここでWSは、例えばセファレキシン標準溶液などの量(mg(力価))である。Vは初めのろ液(例えば10mL)を除いた後のろ液量VmLであり、V’はそのろ液量VmLに、例えば、セファレキシンを含む液となるように崩壊試験を加えた試料溶液量V’mLである。また、Cは1包中のセファレキシンの表示量(mg(力価))である。 図8は本発明の二波長吸光度測定法による結果(左側の図)と、Nelson-Wagner法に基づくHPLC法の結果(右側の図)を比較したものである。この実施例でも6個の試料について試験を行なった。 本発明の二波長による吸光度測定法では、HPLC法の結果(Nelson-wager補正後)と、ほぼ同等の結果が得られることが確認できる。 図9は本発明を実施する溶出試験装置の構成図である。 本発明の溶出試験装置は、測定対象製剤を溶出試験液に溶出させる溶出試験器3と、検出器5と、演算処理部7を備えている。 検出器5はフローセルを備え、溶出試験器3の溶出試験液を定期的又は任意の時点で採取してそのフローセルに流し、フローセルを経て再び溶出試験器3に戻す流路を備えている。検出器5ではフローセル中の溶出試験液に光源1から光照射を行ない、2つの波長λ1,λ2での吸光度を測定する。その2波長λ1,λ2は測定対象製剤に含まれる特定成分とその分解物とからなる系での2つの等吸収点波長λ1,λ2である。 演算処理部7は製剤の溶出過程の複数の時点tで測定した2つの等吸収点波長λ1,λ2における吸光度C1(t),C2(t)から特定成分の吸光度A1(t),A2(t)の少なくとも一方を、 k×C2(t)−C1(t)=k×A2(t)−A1(t)及び A1(t)/A2(t)=k’の関係式を用いて算出して溶出濃度に変換する。ここで、kは2つの等吸収点波長λ1,λ2での前記夾雑成分の吸光度比、k’は同等吸収点波長λ1,λ2での前記特定成分の吸光度比である。 溶出試験器3は既知のいずれのものであってもよい。 また、溶出試験器3には、スペクトルのベースラインを補正するための参照液を貯蔵する参照液貯蔵容器をさらに備えてもよい。 本発明では夾雑成分の影響を取り除いた特定成分の溶出度を算出する装置を提供することができ、また、参照液を貯蔵する参照液貯蔵容器をさらに備えるようにすれば、スペクトルを補正することができるので、より精度の高い溶出度を算出する装置を提供することができる。 本発明は前記説明した実施例に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲で実施可能である。例えば、特定成分の微分スペクトルの吸収強度が経時変化しない波長を選ぶことにより等吸収点波長を決定してもよく、その場合、スペクトルの1次微分又は2次微分のみならず、3次微分以上の高次微分を行なった値によってもよい。 また、等吸収点波長が3個以上得られた場合は、その中から選んだ2つの等吸収点波長を用いて本発明を実施することができる。 本発明は、紫外領域あるいはまた可視領域に吸収を有する化合物を含む,市場に流通するいかなる医薬品製剤の溶出試験に利用することができる。特定成分Aを試験液に溶解させた後の、特定成分Aの残存濃度の経時変化を示した図である特定成分Aを試験液に溶解させた後の、液体クロマトグラムを示す図である。特定成分Aの吸収スペクトルの200nm〜360nmにおける経時変化を示す図である。等吸収点波長が234nmと287nmに確認された。夾雑成分Bの吸収スペクトルを示す図である。特定成分A単独、夾雑成分B単独及び両成分A,Bが混在した系の吸収スペクトルを示す図である。吸光度の比kの算出についての一例を示した図である。特定成分Aの溶出濃度を一波長吸光度測定法及び二波長吸光度測定法で演算した結果を示す図である。特定成分Aの溶出濃度について、二波長吸光度測定法とHPLC法の結果をNelson-Wagner法により補正した結果とを比較した図である。本発明の溶出試験装置の一実施例を示す図である。Nelson-Wagner法により算出した溶出プロファイルである。符号の説明 1 光源 3 溶出試験器 5 検出器 7 演算処理部 溶出後に化学的特性が経時変化する特定成分と溶出後も化学的特性が経時変化しない夾雑成分とを少なくとも含む製剤が、試験液に溶出していく過程における前記特定成分の溶出過程を測定する溶出試験方法において、 前記特定成分とその分解物とからなる系での2つの等吸収点波長λ1,λ2で、前記夾雑成分の吸光度の比k及び分解物を含む前記特定成分の吸光度の比k’を求めておき、 前記製剤の溶出過程の複数の時点tで、前記試験液について前記2つの等吸収点波長λ1,λ2における吸光度C1(t),C2(t)を各時間tで測定し、分解物を含む前記特定成分の吸光度A1(t),A2(t)の少なくとも一方を、 k×C2(t)−C1(t)=k×A2(t)−A1(t)及び A1(t)/A2(t)=k’の関係式を用いて算出して溶出濃度に変換することを特徴とする溶出試験方法。 前記2つの等吸収点波長は吸光度の微分値に基づいて求められたものである請求項1に記載の溶出試験方法。 前記微分値は1次微分値、2次微分値又は3次微分値である請求項2に記載の溶出試験方法。 測定対象製剤を試験液に溶出する溶出試験器と、 前記溶出試験器からの溶出液に光照射を行ない、測定対象製剤に含まれる特定成分とその分解物とからなる系での2つの等吸収点波長λ1,λ2で吸光度を測定する検出器と、 前記製剤の溶出過程の複数の時点tで測定した前記2つの等吸収点波長λ1,λ2における吸光度C1(t),C2(t)から分解物を含む前記特定成分の吸光度A1(t),A2(t)の少なくとも一方を、 k×C2(t)−C1(t)=k×A2(t)−A1(t)及び A1(t)/A2(t)=k’の関係式を用いて算出して溶出濃度に変換する演算処理部とを備えた溶出試験装置。 ここで、kは前記2つの等吸収点波長λ1,λ2での前記夾雑成分の吸光度比、k’は同等吸収点波長λ1,λ2での分解物を含む前記特定成分の吸光度比である。 前記検出器の前又は後に、スペクトルのベースラインを補正するための参照液を貯蔵する参照液貯蔵容器をさらに備えている請求項4に記載の溶出試験装置。


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