タイトル: | 公開特許公報(A)_インスリンシグナル活性化材 |
出願番号: | 2005089587 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | A61K 31/704,A61K 36/28,A61P 1/16,A61P 3/10,A61P 5/50,A61P 9/00,A61P 25/28,A61P 27/02,A61P 43/00,C07H 13/08 |
渡辺 和夫 佐藤 直彦 JP 2006265208 公開特許公報(A) 20061005 2005089587 20050325 インスリンシグナル活性化材 株式会社ビーアンドエル 505350488 鈴木 定子 100078042 渡辺 和夫 佐藤 直彦 A61K 31/704 20060101AFI20060908BHJP A61K 36/28 20060101ALI20060908BHJP A61P 1/16 20060101ALI20060908BHJP A61P 3/10 20060101ALI20060908BHJP A61P 5/50 20060101ALI20060908BHJP A61P 9/00 20060101ALI20060908BHJP A61P 25/28 20060101ALI20060908BHJP A61P 27/02 20060101ALI20060908BHJP A61P 43/00 20060101ALI20060908BHJP C07H 13/08 20060101ALI20060908BHJP JPA61K31/704A61K35/78 TA61P1/16A61P3/10A61P5/50A61P9/00A61P25/28A61P27/02A61P43/00 111C07H13/08 3 5 OL 10 4C057 4C086 4C088 4C057BB02 4C057BB03 4C057BB04 4C057DD01 4C057HH04 4C057JJ53 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA10 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZA15 4C086ZA33 4C086ZA36 4C086ZA75 4C086ZC03 4C086ZC35 4C086ZC41 4C088AB26 4C088AC05 4C088BA08 4C088BA13 4C088BA18 4C088BA21 4C088CA03 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZA15 4C088ZA16 4C088ZA33 4C088ZA36 4C088ZA75 4C088ZB22 4C088ZC03 4C088ZC19 4C088ZC33 4C088ZC41 本発明は、インスリンシグナルの伝達の上流に位置するインスリンリセプターサブストレイト(Insulin receptor Substrate) 〔以下、IRSとする)の発現、リン酸化に顕著に寄与する、ステビアの葉に含まれ、従来、砂糖代替天然甘味料として使用されてきたステビア配糖体のインスリンシグナル活性化材としての用途に関する。 近時、糖尿病患者数は増加の一途をたどっており、重大な社会問題となってきている。ランゲルハンス島B細胞から分泌されるインスリンの枯渇或いはインスリンの絶対量が不足しているI型糖尿病にはインスリン注射か必須である。しかしながら、現実の糖尿病患者又は通称糖尿病予備軍と呼ばれる、食後高くなった血糖値の減少率が低い人々の大部分はII型糖尿病であり、インスリンに対する反応性が低下している。これらの患者に対してはインスリンシグナル伝達を促進する医薬品が好ましい。特許文献1には、2−エトキシ−1−〔〔2’−(5−オキソ−2,5−ジヒドロ−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)ビフェニール−4−イル〕メチル〕−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボン酸またはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤が開示されている。 本発明者らは特許文献1とは全く異なる化合物であるステビア由来配糖体に、顕著なインスリンシグナル伝達促進効果があることを見出して本発明を完成した。ステビオサイドに関しては、非特許文献1にインスリン分泌促進効果があることが開示されているが、その効果は微弱であり、インスリンシグナルに関しては何ら言及されていない。 ステビア由来配糖体及びその類縁化合物に関しては、特許文献2に上昇したプラズマグルコース濃度においてのみ応答可能である旨開示されている。しかしなから、この文献は血中のグルコース濃度のみを追求し、インスリンシグナルの伝達に関しては何ら言及していない。インスリン受容体は肝、筋肉、脂肪細胞のみならず神経細胞にも発現している。インスリン受容体シグナルは神経回路網の形成、維持、修復に関与しており、記憶学習をはじめとした脳の高次機能発現に必須である。特開2003−231636号公報特表2003−521528号公報Metabolism 2000 Feb;49(2):208-14 by Jeppesen PB. バラグァイ原産の菊科植物ステビアの全草からの煮沸抽出物を濃縮して製造したステビア抽出液が、糖尿病、痴呆症、肝炎、循環器疾患、眼疾患に有効であるとの情報が多く寄せられていた。しかしながら、その有効物質は明らかでなく、まして作用機序については全く解明されていなかった。 しかしながら、ステビア抽出液が現実に人体に服用され有効であるとの証言が多く存在することから、有効物質の特定及び作用機序を解明し、需要者が安心して効果を確信した上で服用できるインスリンシグナルの上位に作用する薬剤を供給する必要があった。 本発明は上記課題を解決することを目的とし、その構成は、ステビア葉由来配糖体及びその類縁化合物を有効成分とするインスリンシグナル活性化材である。動物は加齢と共にインスリンシグナルが低下する傾向にあり、インスリンシグナルの低下はアルツハイマー病の危険因子とも考えられている。ステビア配糖体及びその類縁化合物は、極端に微量に存在するのみで、インスリンのシグナル伝達の上位に位置するIRSの発現量を顕著に増大することを確認した。更に、より多く存在するIRSがチロシンリン酸化を受けることも確認し、ステビオサイド及びその類縁物質は、インスリンシグナル活性化材として服用して顕著な効果を有することを確認した。 安全性が確認されているステビア配糖体を有効成分とする本発明により、脳の活性化、II型糖尿病、肝炎、痴呆症、循環器疾患、眼疾患などに広く応用される内服薬を安価に提供することが可能になった。 本発明におけるステビア配糖体とは、下記の構造式を有するステビオサイド及びレバディオサイドと呼ばれる配糖体である。 ステビオサイドは、上記構造式中、R1 がβ−グルコース残基、R2 がβ−グルコース2量体残基である。その他ステビア葉から分離されたステビオール配糖体には表1に示したものがある。 本発明において、インスリンシグナルの上位に位置するIRSを大量に産生して、チロシンリン酸化IRSの産生に有効な物質は上記構造式中、R1 はβ−グルコース残基、β−グルコース 2−1 β−グルコース2量体残基或いは3量体残基である。R2 はβ−グルコース残基、β−グルコース 2−1 β−グルコース2量体残基、β−グルコース3量体残基或いはβ−グルコース4量体残基である。更に、R2 はβ−グルコース残基のいずれか1個がα−ラムノースであってもよい。これらのステビオサイド類縁化合物は粉末、顆粒剤、液剤、錠剤、カプセル剤等の服用容易な剤型に加工してインスリンシグナル活性化物質として服用することができる。更に、ステビアの葉をステビアの茎と共に煮沸抽出して濃縮した液をステビアエキスとして服用すれば茎に含まれる有効成分も共に摂取できる。或いは、食品に配合して飲食しても上記各種疾患を予防することができる。 次に、インスリンシグナルの伝達について説明する。脂肪細胞、筋肉細胞、肝細胞、神経細胞等の標的細胞の細胞膜には膜を貫通してインスリン受容体蛋白質が存在する。この受容体の細胞外側にはα−サブユニットが存在し、細胞内側にはβ−サブユニットが突出している。α−サブユニットが血流中のインスリンと接合すると、その情報はβ−サブユニット先端に存在するインスリンチロシンキナーゼに伝達される。標的細胞内には、特に多くのIRSが存在し、活性化したチロシンキナーゼはこの蛋白質のチロシン残基をリン酸化する。チロシンリン酸化IRSはPI3キナーゼを活性化し、……更に次々と情報は伝達されて最終的に細胞中に浮いているGLT4(4型グルコース輸送担体)を細胞膜に移動させ、遂に細胞膜を貫通する。GLT4の中央部にはグルコース、アミノ酸のみを血液や体液から取込むことのできる貫通孔を有し、これによりグルコースが細胞内に取込まれ、細胞は活性化する。 IRSには1型から4型までが見出されているが、主として活躍するのは1型と2型であり、本発明においてはIRS-1及びIRS-2を追跡した。ステビオサイド及びその類縁物質には細胞核のDNAに作用してIRSの翻訳を促す作用があるものと推測される。 インスリンシグナルの伝達は次の細胞、試薬及び機器を用いて行った。(1) 細胞 ラット肝癌由来細胞 H4−II−E−C3(ATCCより入手) マウス由来脂肪繊維芽細胞 3T3−L1(千葉大学医学部より分与)(2) 試薬 Dulbeddo's modified essential medium, DMEM D5796 (Sigma社製) ステビオサイド(Sigma社製) Dc Protain Assay Kit (Bio-Rad 社製) Nitrocellulose blotting membrane (Pall Corp 社製) AntiIRS-1 rabbit polyclonal (Santa Cruz 社製) AntiIRS-2 rabbit polyclonal (Santa Cruz 社製) Anti phosphotyrosine rabbit polyclonal (Upstate 社製) Goat anti-rabbit lgG, HRP-conjugate (Upstate 社製) Immun-Star HRP Chemilumination Kit (Bio-Rad 社製) ■ 機器 ラピタスミニスラブ電気泳動槽 (アトー科学社製) ミニトランスブロットセル (Bio-Rad 社製) LAS 1000 Plus Image Analyzer ( 富士フィルム社製) 試験方法は次の方法で行った。 各細胞はシャーレ表面に薄播きし、80〜90%コンフルエントになるまで通常の10%牛胎児血清を含む培地で培養し、無血清培地、DMEMで16時間スターベーションして実験に供した。各ウェルにステビオサイドを1pMから10mMまでの広範囲の濃度で添加し、37℃で1時間刺激した。更に、必要に応じてインスリン100nMで10分間刺激した。刺激後、冷PBSで細胞を洗浄し、細胞のみを液体窒素で凍結、解凍を3回繰返し、細胞膜を破壊した。 この破壊した細胞をTris Lysis Buffer を用いて溶解し、全可溶化ライセイトを得た。ラピタスミニスラブ電気泳動槽を用いたSDSポリアクリルアミド電気泳動法により、目的とする分子量範囲の蛋白質を分離した。ミニトランスブロットセルを用いて、この蛋白質をNitrocellulose blotting membraneに転写し、一次抗体としてAntiIRS-1 rabbit polyclonalと結合させ、二次抗体として Goat anti-rabbit lgG, HRP-conjugateを結合させ、更に発光構造体 Immun- Star HRP Chemilumination Kit を結合して測定に供した。上記記述はIRS-1に関するものであり、IRS-2に関しては、一次抗体としてAntiIRS-2 rabbit polyclonalを使用する以外はIRS−1の場合と同様に処理すればよい。 上記の方法でIRSに一次抗体を結合させ、次いで二次抗体を結合させた蛋白質にのみ結合する発光構造体を結合させ、発光量を増幅させてその光度をLAS 1000 Plus Image Analyzer で検出した。 図1〜図4は発光の強さを測定し、その測定値からバックグラウンドを差引いた(AU−BC)を数値として縦軸に表現し、IRS-1及びIRS-2の発現量を相対的に示すものである。インスリンは100nM/ウェルであり、ステビオサイドは1pMから10mMまで横軸に表した。 図1〜図4より、ステビオサイドの存在は細胞中のIRS−1及び−2の総量を濃度依存的に増大させることが判明した。 次に、増大したIRS−1及びIRS−2のチロシンリン酸化に、ステビオサイドが如何に関与しているかについて検討した。1)3T3−L1細胞を96ウェルのプレートに播種し、約80%コンフルエントまで培養した。2)無血清培地、DMEMにて12時間スターベーションし、ステビオサイド濃度を1〜104 pMを添加して24時間インキュベーションした。3)次いで、インスリン100nMで30分間刺激した。同時に、インスリンを添加することなく、ステビオサイドのみ1〜104 pM24時間インキュベーションした検体も作成した。4)各ウェルの細胞を冷PBSで洗浄後、液体窒素にて急速冷凍と解凍を3回繰返し、細胞膜を破壊した。5)前述のLysis bufferでライセイトを抽出し、総蛋白量を、Dc protain kit(BIO-Rad社製)で定量した。6)1ウェルあたり10μg−蛋白質(BSA換算) のサンプルをSDSポリアクリルアミド電気泳動法で泳動した。7)電気泳動により分離した蛋白質をミニトランスブロットセルを用いてNitrocellulose blotting membraneに転写し、ウサギ由来抗リン酸化チロジンを一次抗体として結合させた。二次抗体として、 Goat anti-rabbit lgG, HRP-conjugateを用いて免疫染色し、リン酸化IRS-1及びIRS-2をECL反応で検出し、その光量からリン酸化IRS−1及びIRS−2の相対的量を図5に示した。 図5より、インスリンとステビオサイドの共存はIRS−1及びIRS−2のチロシンリン酸化を濃度依存的に増大していることが判明した。 図5においては、ステビオサイドのみを0から10倍希釈法で104 pMまで希釈して予め24時間刺激し、インスリンを添加した試料と、添加しない試料を作成した。インスリン刺激は100nMで30分間である。マウス由来脂肪繊維芽細胞、3T3−L1におけるステビオサイド濃度とIRS−1の発現量を示すグラフである。マウス由来脂肪繊維芽細胞、3T3−L1におけるステビオサイド濃度とIRS−2の発現量を示すグラフである。ラット肝癌由来細胞、H4−II−E−C3におけるステビオサイド濃度とIRS−1の発現量を示すグラフである。ラット肝癌由来細胞、H4−II−E−C3におけるステビオサイド濃度とIRS−2の発現量を示すグラフである。マウス由来脂肪繊維芽細胞、3T3−L1におけるステビオサイド単独添加、インスリン単独添加、インスリン100nM、0.5時間接触とステビオサイド刺激濃度との関係を示すグラフである。ステビア葉由来配糖体及びその類縁化合物を有効成分とし、標的細胞中のインスリンリセプターサブストレイト(Insulin receptor Substrate) の総数及びチロシンリン酸化を促進し、インスリンシグナルを上流から迅速に伝達するインスリンシグナル活性化材。ステビア葉由来配糖体及びその類縁化合物が、に示す構造式を有し、構造式中、R1 はβ−グルコース残基、β−グルコース 2−1 β−グルコース2量体残基或いは3量体残基であり、R2 はβ−グルコース残基、β−グルコース 2−1 β−グルコース2量体残基、β−グルコース3量体残基或いはβ−グルコース4量体残基であることを特徴とする請求項1に記載するインスリンシグナル活性化材。ステビア葉由来配糖体がステビオサイドであることを特徴とする請求項1に記載するインスリンシグナル活性化材。 【課題】 ステビアの全草を微粉砕して長時間にわたり抽出したステビア抽出エキスが肝炎、糖尿病、循環器疾患、脳の活性化、眼疾患に有効であると民間で言われていた。その真偽に関して、インスリンの作用メカニズムから解明し、学術的裏付けを行った。【解決手段】 ステビオサイドを始め、ステビア配糖体及びその類縁物質は複雑なインスリンシグナル伝達の上位に存在し、インスリンシグナルの伝達に欠くことのできないIRS(インスリン リセプター サブストレイト)を神経細胞等の標的細胞内で顕著に増量し、IRSのチロシンリン酸化も顕著に促進し、インスリンシグナルを有効に伝達し、各種成人病に有効であることが判明した。【選択図】 図5