生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_キャンディダ・ユティリス由来のARS遺伝子
出願番号:2005082427
年次:2006
IPC分類:C12N 15/09


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岩切 亮 依田 幸司 足立 博之 野田 陽一 JP 2006101867 公開特許公報(A) 20060420 2005082427 20050322 キャンディダ・ユティリス由来のARS遺伝子 株式会社興人 000142252 依田 幸司 504347452 岩切 亮 依田 幸司 足立 博之 野田 陽一 JP 2004264941 20040913 C12N 15/09 20060101AFI20060324BHJP JPC12N15/00 A 3 OL 12 4B024 4B024AA20 4B024CA04 4B024DA12 4B024FA20 4B024GA11 本発明は、キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)に外来遺伝子を導入して形質転換する際に利用される、キャンディダ・ユティリス由来のARS(autonomously replicating sequence)遺伝子に関する。 キャンディダ・ユティリスは、炭素資化域が広く、好気的条件下での培養でエタノールを生成せず、その増殖阻害も受けないことから、高濃度での連続培養による菌体製造が可能であり、食飼料用のタンパク質源等として広く使用されているのみならず、グルタチオン等の生産株として広く工業的に利用されてきた。 組み換えDNA技術の発展によって、遺伝子を自在に改変しあるいは加工し、これを細胞に導入して遺伝子を組み換え、例えばその発酵特性の改良、工業的有用性の増大、などが行われており、種々の酵母で可能となってきた。 キャンディダ・ユティリスにおいても、そのゲノム中に相同組み換えにより、外来遺伝子を導入する方法、例えば、薬剤耐性マーカー、キャンディダ・ユティリス染色体DNAと相同な配列及び異種遺伝子を含んだベクターによりゲノム中に導入するキャンディダ・ユティリスの形質転換系は、既に知られている(特許文献1)。 酵母への形質転換系としては、この他、ARSを持ったプラスミドを導入して、染色体とは独立して細胞内に保持させる形式もよく知られている。ARS(autonomously replicating sequence)とは、自律複製能を持った染色体成分で、真核生物としては初めてSaccharomyces cerevisiaeにおいて取得された。染色体に組み込むタイプのベクターと比べARSを持ったベクターは顕著に形質転換効率が向上するため、それを指標に目的の宿主ゲノムDNAからARSを取得することが可能である。酵母のARSが高等真核生物と比べ小さいことも、比較的容易に取得できる要因である。そのため、他の様々な酵母、例えばCandida albicans(非特許文献1)、Candida maltosa(非特許文献2)、Candida tropicalis(特許文献2)、Kluyveromyces lactis(非特許文献3)、Schizosaccharomyces pombe(非特許文献4)等からARSが分離されている。ARSの構造は酵母の種類により異なることが知られており、表1に示すように、機能に必要なサイズもさまざまである。分裂酵母Schizosaccharomyces pombeでは0.5〜1.5kbpと言われており、同一種内でもサイズに差が認められる。 キャンディダ・ユティリスのARSは、1983年にHsuらによって、S.cerevisiaeで機能する成分として初めて取得された(非特許文献5)。また、Hoらは同様な手法で取得したARSがキャンディダ・ユティリスで機能することを確認している(非特許文献6)。しかしながら、これら文献にはいずれもキャンディダ・ユティリスでの形質転換効率が記載されておらず、取得されたARSが、キャンディダ・ユティリスでどの程度の活性を持つかは不明である。また、K.lactisのKARS101は、S.cerevisiaeでも自律複製能を有するが、S.cerevisiaeとK.lactisではARS機能に必要な配列が異なることが知られており(非特許文献7)、宿主に適した高活性型のARSを取得するうえでは、同種の酵母を宿主としてクローニングすることが望ましい。 一方、特許文献1には、キャンディダ・ユティリスを宿主としてキャンディダ・ユティリス由来のARSがクローニングされたことが開示され、取得された2種類のARSの機能領域は、最も短いもので1.9kbpに特定できることが示されている。これら短縮化したARSの形質転換効率は6〜7×102個/μgDNAと高いが、1.8kbp以下にすると、急激な効率の低下が認められている。更に、これらARSは細胞内でのコピー数が一つと少なく、プラスミドの安定性も20〜30%/2.5〜3.5世代と悪いことも示されており、ARS活性が低いものと推察される。 従って、キャンディダ・ユティリスのベクターを構築する上で、よりコンパクトでかつ高い活性を持つARSを取得することが強く望まれていた。WO95/32289号公報特開2000−78980号公報Mol Gen Genet 1990 221 210Agric Biol Chem 1987 51 1587Yeast 1990 6 69Mol Cell Biol 1998 18 7294J Bacteriol 1983 154 1033Biotechnology and Bioengineering Symp 1984 (14) 295Molecular microbiology 1996 19 757 本発明は、かかる従来の問題点を解決することにあり、形質転換効率の向上に適する、短縮化された、キャンディダ・ユティリス由来のARS遺伝子を提供することにある。 本発明者らは、キャンディダ・ユティリス由来のARSをクローニングするため鋭意研究の結果、DNA取り込み能に優れたキャンディダ・ユティリス株を見出し、これを宿主として用いることで、キャンディダ・ユティリスのゲノムからARS活性を示す遺伝子DNA断片を多数クローニングし、活性の高いARSの取得に成功した。更に、細分化し、そのARS活性を示す部分配列を分離し、短縮化したDNA断片においてもARS活性が十分に保持されていることを確認し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、(1)配列表配列番号1の塩基配列で表されるキャンディダ・ユティリス(Candida utilis)由来のARS遺伝子、(2)配列表配列番号2の塩基配列で表されるキャンディダ・ユティリス(Candida utilis)由来のARS遺伝子、(3)上記(1)乃至(2)記載のARS遺伝子を含むキャンディダ・ユティリス(Candida utilis)由来のDNA配列、を提供するものである。 本発明が提供する約0.9kb及び1.5kbの2つのキャンディダ・ユティリス由来のARSは、キャンディダ・ユティリス細胞内においてDNA複製ができ、このDNA断片を挿入したプラスミドを用いることにより、一層効率よくキャンディダ・ユティリスを形質転換することができる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の、キャンディダ・ユティリス由来のARS活性を有するDNA断片、特にキャンディダ・ユティリスIAM4264株の染色体遺伝子からクローニングされたARS活性を有するDNA断片のうち、ARS活性を示す部分領域である。具体的には、配列番号1及び2に示す塩基配列で示されるものである。 染色体遺伝子から目的のDNA断片をクローニングする手順について、以下、説明する。1.ゲノムDNAライブラリーの構築 キャンディダ・ユティリスのゲノムDNAを予め選択してある制限酵素で処理し、適当なサイズのDNAを分取して、キャンディダ・ユティリスで機能するG418耐性モジュールを持ち大腸菌でのみ複製可能なプラスミドの同じ制限酵素サイトに連結した。このライゲーション液を用いて大腸菌を形質転換し、得られらた薬剤耐性マーカーを利用して得られたコロニーからDNAを回収して、ゲノムDNAライブラリーとした。2.ARSスクリーニング ゲノムDNAライブラリーをARSスクリーニングに適したキャンディダ・ユティリスに導入して、G418薬剤耐性を獲得したコロニーを取得した。この段階ではARS配列を持ちプラスミドとして細胞内に存在する場合に加えて、低頻度ながらG418耐性モジュールが染色体に組み込まれて存在するものも混在している。ARSを持ったプラスミドは染色体組み込み型に比べ著しく高い形質転換効率を示すことから、それを指標にARSの有無の判別が可能であり、形質転換株からプラスミドを回収し、再度、キャンディダ・ユティリスに導入し、形質転換効率を調べ、ARS活性の有無を確認した。3.ARS活性を有するDNA断片の短縮化 ARS活性を有するDNA断片を、適当な制限酵素処理、もしくは下記4で得られる塩基配列を基にしたPCRにより得られるさまざまなDNA断片を、大腸菌でのみ複製可能なプラスミドに挿入し、さらにこれにキャンディダ・ユティリスで機能するG418耐性モジュールを連結して、ARS活性を確認した。4.短縮化したARS断片のDNA塩基配列解析 短縮化したARSの塩基配列はプライマーウォーキング法により決定した。これは塩基配列を決定するごとにその配列の末端に新たな特異的プライマーを作製して、段階的に配列を読み続ける方法である。配列の解読にはキャピラリーDNAシーケンサー(ABI)を用いた。 S.cerevisiaeでは、ARS活性をもつ配列中に[T/A]TTTA[C/T][A/G]TTT[T/A]の11bpからなるACS(ARS consensus sequence)と呼ばれる保存配列があることが知られている(Current Biology 1993 3 752)。本発明のARSについては、図5、図7に示すように、ACS及びACS類似の塩基配列(1塩基又は2塩基異なる配列)の存在が認められた。 本発明において提供されるキャンディダ・ユティリス由来のARS活性を示すDNA断片は、キャンディダ・ユティリスIAM4264株から得られたものであるが、当該キャンディダ・ユティリスIAM4264株から誘導される種々の変異株のみならず、キャンディダ・ユティリスに属する他の菌株においても高いARS活性を示す。 以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。実施例11.キャンディダ・ユティリスのゲノムDNAライブラリーの構築(1)ライブラリー用ベクターの構築 選択マーカーには既に配列が明らかになっている構造遺伝子、および遺伝子調節領域を基に薬剤耐性カセットを構築し用いた。すなわち、種々の酵母の選択マーカーとして広く用いられており、S.cerevisiaeの遺伝子破壊株コレクションの作成にも使用されているG418耐性を付与するバクテリアのトランスポゾンTn903由来のkanMX(Yeast 1994 10 1793)、および解糖系の酵素で強い発現が知られているキャンディダ・ユティリス由来のグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)のプロモーター、ターミネーターである。 各遺伝子、遺伝子調節領域は以下のプライマーを用いてPCRにより取得した。 プライマー(1)KANMX−F 5'-GCTCTAGAATGGGTAAGGAAAAGACTCAC-3'(2)KANMX−R 5'-GGGGTACCTTAGAAAAACTCATCGAGCAT-3'(3)Pgap−F 5'-GGGGATCCAAGCTTACAGCGAGCACTCAA-3'(4)Pgap−R 5'-CCTCTAGATATGTTGTTTGTAAGTGTGTT-3'(5)Tgap−F 5'-GGGGTACCATTGTATGACTTTTATTTATG-3'(6)Tgap−R 5'-GGGGATCCACGTGTAATACCTCAGGAGTC-3' KANMX構造遺伝子の増幅には上記プライマーの(1)、(2)を、同様にGAPプロモーターにはプライマー(3)、(4)を、GAPターミネーターにはプライマー(5)、(6)を用いた。 鋳型としては、KANMXには を、GAPのプロモーター、ターミネーターにはキャンディダ・ユティリスIAM4264株の染色体をそれぞれ用いた。 PCRで合成したプロモーター0.98kbp、G418耐性構造遺伝子0.8kbp、およびターミネーター0.8kbpを、各断片の両端に付した制限酵素サイト(BamHIとXbaI、XbaIとKpnI、およびKpnIとBamHI)を用いてpBluescriptIISK(+)に連結し、G418カセットを構築した。さらに、BamHIで切り出されるG418カセットを、pBluescriptIISK(+)のマルチクローニングサイト内のXhoIとSalIの間にBglIIサイトを導入したベクターpYN141のBamHI−BglIIサイトに連結した(図1)。 なお、キャンディダ・ユティリスの3−イソプロピルマレイトデヒドロゲナーゼ(3−IMDH)遺伝子(J General Microbiology 1987 133 1089)の部分配列内のBamHIサイトに、上記G418耐性カセットを挿入した染色体組み込み型のベクター(図2)をキャンディダ・ユティリスに導入し、G418耐性が付与されることを確認している。 また、相同遺伝子として用いた3−IMDHのKpnIの下流からHindIIIまでの部分配列は、以下のプライマーを用いてIAM4264株からPCRにより取得した。Leu−F 5'-GCGCGGCCGCGGTGCCGTCAGACCAGAGCAA-3'Leu−R 5'-GGGCGGCCGCAGCTTGTGAGTGATGCATCCA-3'(2)ライブラリーの構築 キャンディダ・ユティリスで機能するG418耐性カセットを用いて、キャンディダ・ユティリスIAM4264株のゲノムDNAライブラリーを構築した。 キャンディダ・ユティリスIAM4264株のゲノムDNA90μgに、Sau3AIを5、2.5、1.5、0.75、0.35、0.175unitsとなるように加え、37℃、15分の反応後、氷上に移し4μlの500mM−EDTAを添加した。この溶液の一部を電気泳動で確認し、適度な切断が得られたものをショ糖密度勾配遠心に供してDNA断片を分画した。7〜10kbがメインのフラクションをライブラリーに用いた。 ライブラリーのベクターとしては、図1のG418耐性カセットを持つプラスミドを用いた。 BamHIで消化した後、CIAP処理を行い、上記キャンディダ・ユティリスIAM4264株のSau3AIで部分分解したDNAを連結した(図3)。この反応液をエレクトロポレーションにて大腸菌 TOP10F’に形質転換して、アンピシリン耐性コロニーを取得した。これらのコロニーを掻き集めて得た培養液を基に再度プレート上で菌体を増幅させDNAを回収して、DNAライブラリーとした。 ライブラリーのインサート平均サイズは5.69kbp、インサート組み込み率は92%であった。2.ARSスクリーニング 得られたゲノムDNAライブラリーをキャンディダ・ユティリスへ形質転換して、ARS活性を持つ断片のクローニングを行った。(1)形質転換に適したキャンディダ・ユティリス株へのゲノムライブラリーの導入 DNAライブラリー2.5μgを、常法である酢酸リチウム法(J Bacteriol 1983 153 163)により、キャンディダ・ユティリスIAM4264株とAHU3053株に形質転換した。酢酸リチウム法で処理した菌体は、30℃で1時間培養した後、プレートに塗沫した。終濃度50μg/mlのG418を含むYPD培地で30℃、2日間培養した結果、IAM4264株は12個、AHU3053株では432個のG418耐性コロニーが出現した。AHU3053株では、酢酸リチウム法で非常に高効率で形質転換できることが明らかとなった。(2)ARS活性の確認 AHU3053株由来の形質転換体98個からプラスミドを抽出して、大腸菌DH5αに導入し、形質転換体からプラスミドを回収した。回収したプラスミドを再度酵母へ形質転換したところ、73サンプルでG418耐性株を得た。プラスミドのPvuII消化パターンからスクリーニングしたプラスミドには、19種類のARSが含まれると推察された。そのうち良好な形質転換効率を示したARS3とARS4の2種類について短縮化を行った。3.ARS活性を有するDNA断片の短縮化 適当な制限酵素を用いてARSを分断して、得られた断片をpBluescriptIIにサブクローニングした。このプラスミドのNotIサイトに、図2のNotIで切り出されるG418耐性カセットを連結してARS活性測定用のプラスミドとした。ARS細分化様式を図4に、その形質転換効率を表2に示した。 ARS4では、SpeIとSalIで切り出される0.9kbpのARS4−2−2に、ARS4と比較して6割弱のARS活性が認められ、短縮後も、1.76×104個/μgDNAと、なお高い形質転換効率を示した。 一方、ARS3では、EcoRI、SalI、HindIIIを用いた短縮化で、活性が1/10以下に低下した。4.短縮したARS断片のDNA塩基配列解析 短縮化したARS3−2、ARS4−2−2について、プライマーウォーキング法によりDNA塩基配列を解析した。さらに決定した配列に関しては、塩基配列解析ソフトを用いてACSとの相同性解析を行った。 ARS−4−2−2(配列番号2)は、全長874bpから成り、11bpからなるACS([T/A]TTTA[C/T][A/G]TTT[T/A])が+鎖と−鎖に12bp隔てて1つずつ確認された(図5)。加えて、ACSと1塩基異なる配列を6個、2塩基異なるものを19個含んでいた。5.ARS3−2のPCRを用いた短縮化 塩基配列を基に、PCRにより両端から欠失変異株を作製し、その活性を調べ、機能領域を特定した。 ARS3−2の5’上流より段階的に欠失させた変異ARSは、primer ARS3−2Uシリーズ(U378〜U1269)とARS3−2−D2874とにより、SalI−SpeI断片として増幅し、YIpKANのSalI−SpeIサイトに連結した。一方、ARS3−2の3’下流より段階的に欠失させた変異ARSは、primer ARS3−2−U7とARS3−2−Dシリーズ(D715〜D2231)とによりSalI−SpeI断片として増幅し、pRI77のSalI−SpeIサイトに連結した。 DelectionによりD1490の上流、及び7より下流の欠失により活性は緩やかに低下し、ARS3−2の完全なARS活性に必要な領域が広範囲に渡ることが明らかとなった。なお、U378−D1490のフラグメントはARS3−2の約1/3と低調であることから、U7−D1490で得られるARS3−2−D1490を高機能成分とした。この塩基配列を図7に示す。ACSと1塩基異なるものが5個、2塩基異なるものが24個存在した。また、ARS3−2−D1490のAT含量は69.6%であった。 なお、使用したprimerのリストを下記に示す。(1)SRS3−2−U7 5'-GGGTCGACCAAACTAATTTGAAAAGC-3'(2)ARS3−2−U378 5'-GGGTCGACGTCTGCTCTCTCAATATA-3'(3)ARS3−2−U656 5'-GGGTCGCCTCGAAAGTATTATATAT-3'(4)ARS3−2−U927 5'-GGGTCGACAGAACATTTCTTTTAGGA-3'(5)ARS3−2−U1269 5'-GGGTCGACTGGACTATCTTTAATAAA-3'(6)ARS3−2−D2874 5'-GGACTAGTTTATCAACACAAAATGAC-3'(7)ARS3−2−D2231 5'-GGACTAGTCAGATCAAACTTATACAT-3'(8)ARS3−2−D1756 5'-GGACTAGTATTGTCTTCCATTTACGT-3'(9)ARS3−2−D1490 5'-GGACTAGTTGCATTATGCGCTCTACT-3'(10)ARS3−2−D1220 5'-GGACTAGTTTAATAAATATTGCGTAT-3'(11)ARS3−2−D926 5'-GGACTAGTTAATATTGGTTTTCATAT-3'(12)ARS3−2−D715 5'-GGACTAGTTCCTAATAAAATTTATTT-3'6.短縮化したARSの他のキャンディダ・ユティリス内での活性 他のキャンディダ・ユティリスでも、短縮化したARSが機能するかどうか検討した。 他のキャンディダ・ユティリスとして、ATCC22033、ATCC9226、IAM4264の3株を用いた。これら菌株の最少阻止濃度−それぞれ、40、60、40μg/ml−に調製したG418添加YPD培地で、酢酸リチウム法により短縮化した2種類のARSの形質転換を行った。 結果を表3に示す。 表3に示される通り、効率に差はあるものの各種キャンディダ・ユティリスで形質転換が可能であった。 以上、述べてきた通り、本発明によれば、キャンディダ・ユティリス由来の、安定性がよく短縮化されたARS遺伝子が提供され、キャンディダ・ユティリスの効率的な形質転換が可能である。ライブラリーに用いたベクターの図である。染色体組み込み型のベクターの図である。キャンディダ・ユティリスゲノムDNAライブラリーの図である。取得したARSの細分化を示す図である。ARS4−2−2中に含まれるACSおよびその類似配列の存在様式を示す図である。 図中、□で囲んだ部分がACSを、実線が1塩基異なる配列を、破線が2塩基異なる配列を示す。また、左向きの矢印はマイナス鎖を示す。作製したARS3−2の欠失変異株(A)及びその形質転換効率(B)を示す図である。 A:一番上の太い実線がARS3−2を示し、その下の2本の細い実線がDNA二本鎖を示す。二本鎖上の三角シンボルは完全一致のACS、短い縦線が1塩基異なるACS類似塩基配列を示す。 その下の実線が作製した欠失変異株を示し、数値はその位置を示す。Uは上流からの、Dは下流からの欠失シリーズであることを示す。 B:図中、●はU、□はDの各シリーズの形質転換効率を示す(3回の平均値)。ARS3−2−D1490中に含まれるACS類似配列の存在様式を示す図である。 図中、実線が1塩基異なる配列を、破線が2塩基異なる配列を示す。また、左向きの矢印はマイナス鎖を示す。 配列表配列番号1の塩基配列で表されるキャンディダ・ユティリス(Candida utilis)由来のARS遺伝子。 配列表配列番号2の塩基配列で表されるキャンディダ・ユティリス(Candida utilis)由来のARS遺伝子。 請求項1乃至2記載のARS遺伝子を含むキャンディダ・ユティリス(Candida utilis)由来のDNA配列。 【課題】キャンディダ・ユティリスの形質転換効率を向上させる、キャンディダ・ユティリス由来の、安定性がよく短縮化されたARS遺伝子を提供する。【解決手段】キャンディダ・ユティリス染色体遺伝子由来の、約0.9kbp及び約1.5kbpのARS遺伝子、及び該ARS遺伝子を含むキャンディダ・ユティリス由来のDNA配列。【選択図】なし配列表


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特許公報(B2)_キャンディダ・ユティリス由来のARS遺伝子

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_キャンディダ・ユティリス由来のARS遺伝子
出願番号:2005082427
年次:2010
IPC分類:C12N 15/09


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岩切 亮 依田 幸司 足立 博之 野田 陽一 JP 4563228 特許公報(B2) 20100806 2005082427 20050322 キャンディダ・ユティリス由来のARS遺伝子 株式会社興人 000142252 依田 幸司 504347452 岩切 亮 依田 幸司 足立 博之 野田 陽一 JP 2004264941 20040913 20101013 C12N 15/09 20060101AFI20100922BHJP JPC12N15/00 A C12N1/00―15/90 CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN) JSTPlus(JDreamII) Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq PubMed 特開平08−173170(JP,A) 特開2000−078980(JP,A) Molecular Microbiology,1996年,Vol.19, No.4,p.757-766 Journal of Bacteriology,1983年,Vol.154, No.3,p.1033-1039 3 2006101867 20060420 11 20070508 福澤 洋光 本発明は、キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)に外来遺伝子を導入して形質転換する際に利用される、キャンディダ・ユティリス由来のARS(autonomously replicating sequence)遺伝子に関する。 キャンディダ・ユティリスは、炭素資化域が広く、好気的条件下での培養でエタノールを生成せず、その増殖阻害も受けないことから、高濃度での連続培養による菌体製造が可能であり、食飼料用のタンパク質源等として広く使用されているのみならず、グルタチオン等の生産株として広く工業的に利用されてきた。 組み換えDNA技術の発展によって、遺伝子を自在に改変しあるいは加工し、これを細胞に導入して遺伝子を組み換え、例えばその発酵特性の改良、工業的有用性の増大、などが行われており、種々の酵母で可能となってきた。 キャンディダ・ユティリスにおいても、そのゲノム中に相同組み換えにより、外来遺伝子を導入する方法、例えば、薬剤耐性マーカー、キャンディダ・ユティリス染色体DNAと相同な配列及び異種遺伝子を含んだベクターによりゲノム中に導入するキャンディダ・ユティリスの形質転換系は、既に知られている(特許文献1)。 酵母への形質転換系としては、この他、ARSを持ったプラスミドを導入して、染色体とは独立して細胞内に保持させる形式もよく知られている。ARS(autonomously replicating sequence)とは、自律複製能を持った染色体成分で、真核生物としては初めてSaccharomyces cerevisiaeにおいて取得された。染色体に組み込むタイプのベクターと比べARSを持ったベクターは顕著に形質転換効率が向上するため、それを指標に目的の宿主ゲノムDNAからARSを取得することが可能である。酵母のARSが高等真核生物と比べ小さいことも、比較的容易に取得できる要因である。そのため、他の様々な酵母、例えばCandida albicans(非特許文献1)、Candida maltosa(非特許文献2)、Candida tropicalis(特許文献2)、Kluyveromyces lactis(非特許文献3)、Schizosaccharomyces pombe(非特許文献4)等からARSが分離されている。ARSの構造は酵母の種類により異なることが知られており、表1に示すように、機能に必要なサイズもさまざまである。分裂酵母Schizosaccharomyces pombeでは0.5〜1.5kbpと言われており、同一種内でもサイズに差が認められる。 キャンディダ・ユティリスのARSは、1983年にHsuらによって、S.cerevisiaeで機能する成分として初めて取得された(非特許文献5)。また、Hoらは同様な手法で取得したARSがキャンディダ・ユティリスで機能することを確認している(非特許文献6)。しかしながら、これら文献にはいずれもキャンディダ・ユティリスでの形質転換効率が記載されておらず、取得されたARSが、キャンディダ・ユティリスでどの程度の活性を持つかは不明である。また、K.lactisのKARS101は、S.cerevisiaeでも自律複製能を有するが、S.cerevisiaeとK.lactisではARS機能に必要な配列が異なることが知られており(非特許文献7)、宿主に適した高活性型のARSを取得するうえでは、同種の酵母を宿主としてクローニングすることが望ましい。 一方、特許文献1には、キャンディダ・ユティリスを宿主としてキャンディダ・ユティリス由来のARSがクローニングされたことが開示され、取得された2種類のARSの機能領域は、最も短いもので1.9kbpに特定できることが示されている。これら短縮化したARSの形質転換効率は6〜7×102個/μgDNAと高いが、1.8kbp以下にすると、急激な効率の低下が認められている。更に、これらARSは細胞内でのコピー数が一つと少なく、プラスミドの安定性も20〜30%/2.5〜3.5世代と悪いことも示されており、ARS活性が低いものと推察される。 従って、キャンディダ・ユティリスのベクターを構築する上で、よりコンパクトでかつ高い活性を持つARSを取得することが強く望まれていた。WO95/32289号公報特開2000−78980号公報Mol Gen Genet 1990 221 210Agric Biol Chem 1987 51 1587Yeast 1990 6 69Mol Cell Biol 1998 18 7294J Bacteriol 1983 154 1033Biotechnology and Bioengineering Symp 1984 (14) 295Molecular microbiology 1996 19 757 本発明は、かかる従来の問題点を解決することにあり、形質転換効率の向上に適する、短縮化された、キャンディダ・ユティリス由来のARS遺伝子を提供することにある。 本発明者らは、キャンディダ・ユティリス由来のARSをクローニングするため鋭意研究の結果、DNA取り込み能に優れたキャンディダ・ユティリス株を見出し、これを宿主として用いることで、キャンディダ・ユティリスのゲノムからARS活性を示す遺伝子DNA断片を多数クローニングし、活性の高いARSの取得に成功した。更に、細分化し、そのARS活性を示す部分配列を分離し、短縮化したDNA断片においてもARS活性が十分に保持されていることを確認し、本発明を完成するに至った。 すなわち本発明は、(1)配列表配列番号1の塩基配列で表されるキャンディダ・ユティリス(Candida utilis)由来のARS遺伝子、(2)配列表配列番号2の塩基配列で表されるキャンディダ・ユティリス(Candida utilis)由来のARS遺伝子、(3)上記(1)乃至(2)記載のARS遺伝子を含む含むプラスミド、を提供するものである。 本発明が提供する約0.9kb及び1.5kbの2つのキャンディダ・ユティリス由来のARSは、キャンディダ・ユティリス細胞内においてDNA複製ができ、このDNA断片を挿入したプラスミドを用いることにより、一層効率よくキャンディダ・ユティリスを形質転換することができる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の、キャンディダ・ユティリス由来のARS活性を有するDNA断片、特にキャンディダ・ユティリスIAM4264株の染色体遺伝子からクローニングされたARS活性を有するDNA断片のうち、ARS活性を示す部分領域である。具体的には、配列番号1及び2に示す塩基配列で示されるものである。 染色体遺伝子から目的のDNA断片をクローニングする手順について、以下、説明する。1.ゲノムDNAライブラリーの構築 キャンディダ・ユティリスのゲノムDNAを予め選択してある制限酵素で処理し、適当なサイズのDNAを分取して、キャンディダ・ユティリスで機能するG418耐性モジュールを持ち大腸菌でのみ複製可能なプラスミドの同じ制限酵素サイトに連結した。このライゲーション液を用いて大腸菌を形質転換し、得られらた薬剤耐性マーカーを利用して得られたコロニーからDNAを回収して、ゲノムDNAライブラリーとした。2.ARSスクリーニング ゲノムDNAライブラリーをARSスクリーニングに適したキャンディダ・ユティリスに導入して、G418薬剤耐性を獲得したコロニーを取得した。この段階ではARS配列を持ちプラスミドとして細胞内に存在する場合に加えて、低頻度ながらG418耐性モジュールが染色体に組み込まれて存在するものも混在している。ARSを持ったプラスミドは染色体組み込み型に比べ著しく高い形質転換効率を示すことから、それを指標にARSの有無の判別が可能であり、形質転換株からプラスミドを回収し、再度、キャンディダ・ユティリスに導入し、形質転換効率を調べ、ARS活性の有無を確認した。3.ARS活性を有するDNA断片の短縮化 ARS活性を有するDNA断片を、適当な制限酵素処理、もしくは下記4で得られる塩基配列を基にしたPCRにより得られるさまざまなDNA断片を、大腸菌でのみ複製可能なプラスミドに挿入し、さらにこれにキャンディダ・ユティリスで機能するG418耐性モジュールを連結して、ARS活性を確認した。4.短縮化したARS断片のDNA塩基配列解析 短縮化したARSの塩基配列はプライマーウォーキング法により決定した。これは塩基配列を決定するごとにその配列の末端に新たな特異的プライマーを作製して、段階的に配列を読み続ける方法である。配列の解読にはキャピラリーDNAシーケンサー(ABI)を用いた。 S.cerevisiaeでは、ARS活性をもつ配列中に[T/A]TTTA[C/T][A/G]TTT[T/A]の11bpからなるACS(ARS consensus sequence)と呼ばれる保存配列があることが知られている(Current Biology 1993 3 752)。本発明のARSについては、図5、図7に示すように、ACS及びACS類似の塩基配列(1塩基又は2塩基異なる配列)の存在が認められた。 本発明において提供されるキャンディダ・ユティリス由来のARS活性を示すDNA断片は、キャンディダ・ユティリスIAM4264株から得られたものであるが、当該キャンディダ・ユティリスIAM4264株から誘導される種々の変異株のみならず、キャンディダ・ユティリスに属する他の菌株においても高いARS活性を示す。 以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。実施例11.キャンディダ・ユティリスのゲノムDNAライブラリーの構築(1)ライブラリー用ベクターの構築 選択マーカーには既に配列が明らかになっている構造遺伝子、および遺伝子調節領域を基に薬剤耐性カセットを構築し用いた。すなわち、種々の酵母の選択マーカーとして広く用いられており、S.cerevisiaeの遺伝子破壊株コレクションの作成にも使用されているG418耐性を付与するバクテリアのトランスポゾンTn903由来のkanMX(Yeast 1994 10 1793)、および解糖系の酵素で強い発現が知られているキャンディダ・ユティリス由来のグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)のプロモーター、ターミネーターである。 各遺伝子、遺伝子調節領域は以下のプライマーを用いてPCRにより取得した。 プライマー(1)KANMX−F 5'-GCTCTAGAATGGGTAAGGAAAAGACTCAC-3'(2)KANMX−R 5'-GGGGTACCTTAGAAAAACTCATCGAGCAT-3'(3)Pgap−F 5'-GGGGATCCAAGCTTACAGCGAGCACTCAA-3'(4)Pgap−R 5'-CCTCTAGATATGTTGTTTGTAAGTGTGTT-3'(5)Tgap−F 5'-GGGGTACCATTGTATGACTTTTATTTATG-3'(6)Tgap−R 5'-GGGGATCCACGTGTAATACCTCAGGAGTC-3' KANMX構造遺伝子の増幅には上記プライマーの(1)、(2)を、同様にGAPプロモーターにはプライマー(3)、(4)を、GAPターミネーターにはプライマー(5)、(6)を用いた。 鋳型としては、KANMXには を、GAPのプロモーター、ターミネーターにはキャンディダ・ユティリスIAM4264株の染色体をそれぞれ用いた。 PCRで合成したプロモーター0.98kbp、G418耐性構造遺伝子0.8kbp、およびターミネーター0.8kbpを、各断片の両端に付した制限酵素サイト(BamHIとXbaI、XbaIとKpnI、およびKpnIとBamHI)を用いてpBluescriptIISK(+)に連結し、G418カセットを構築した。さらに、BamHIで切り出されるG418カセットを、pBluescriptIISK(+)のマルチクローニングサイト内のXhoIとSalIの間にBglIIサイトを導入したベクターpYN141のBamHI−BglIIサイトに連結した(図1)。 なお、キャンディダ・ユティリスの3−イソプロピルマレイトデヒドロゲナーゼ(3−IMDH)遺伝子(J General Microbiology 1987 133 1089)の部分配列内のBamHIサイトに、上記G418耐性カセットを挿入した染色体組み込み型のベクター(図2)をキャンディダ・ユティリスに導入し、G418耐性が付与されることを確認している。 また、相同遺伝子として用いた3−IMDHのKpnIの下流からHindIIIまでの部分配列は、以下のプライマーを用いてIAM4264株からPCRにより取得した。Leu−F 5'-GCGCGGCCGCGGTGCCGTCAGACCAGAGCAA-3'Leu−R 5'-GGGCGGCCGCAGCTTGTGAGTGATGCATCCA-3'(2)ライブラリーの構築 キャンディダ・ユティリスで機能するG418耐性カセットを用いて、キャンディダ・ユティリスIAM4264株のゲノムDNAライブラリーを構築した。 キャンディダ・ユティリスIAM4264株のゲノムDNA90μgに、Sau3AIを5、2.5、1.5、0.75、0.35、0.175unitsとなるように加え、37℃、15分の反応後、氷上に移し4μlの500mM−EDTAを添加した。この溶液の一部を電気泳動で確認し、適度な切断が得られたものをショ糖密度勾配遠心に供してDNA断片を分画した。7〜10kbがメインのフラクションをライブラリーに用いた。 ライブラリーのベクターとしては、図1のG418耐性カセットを持つプラスミドを用いた。 BamHIで消化した後、CIAP処理を行い、上記キャンディダ・ユティリスIAM4264株のSau3AIで部分分解したDNAを連結した(図3)。この反応液をエレクトロポレーションにて大腸菌 TOP10F’に形質転換して、アンピシリン耐性コロニーを取得した。これらのコロニーを掻き集めて得た培養液を基に再度プレート上で菌体を増幅させDNAを回収して、DNAライブラリーとした。 ライブラリーのインサート平均サイズは5.69kbp、インサート組み込み率は92%であった。2.ARSスクリーニング 得られたゲノムDNAライブラリーをキャンディダ・ユティリスへ形質転換して、ARS活性を持つ断片のクローニングを行った。(1)形質転換に適したキャンディダ・ユティリス株へのゲノムライブラリーの導入 DNAライブラリー2.5μgを、常法である酢酸リチウム法(J Bacteriol 1983 153 163)により、キャンディダ・ユティリスIAM4264株とAHU3053株に形質転換した。酢酸リチウム法で処理した菌体は、30℃で1時間培養した後、プレートに塗沫した。終濃度50μg/mlのG418を含むYPD培地で30℃、2日間培養した結果、IAM4264株は12個、AHU3053株では432個のG418耐性コロニーが出現した。AHU3053株では、酢酸リチウム法で非常に高効率で形質転換できることが明らかとなった。(2)ARS活性の確認 AHU3053株由来の形質転換体98個からプラスミドを抽出して、大腸菌DH5αに導入し、形質転換体からプラスミドを回収した。回収したプラスミドを再度酵母へ形質転換したところ、73サンプルでG418耐性株を得た。プラスミドのPvuII消化パターンからスクリーニングしたプラスミドには、19種類のARSが含まれると推察された。そのうち良好な形質転換効率を示したARS3とARS4の2種類について短縮化を行った。3.ARS活性を有するDNA断片の短縮化 適当な制限酵素を用いてARSを分断して、得られた断片をpBluescriptIIにサブクローニングした。このプラスミドのNotIサイトに、図2のNotIで切り出されるG418耐性カセットを連結してARS活性測定用のプラスミドとした。ARS細分化様式を図4に、その形質転換効率を表2に示した。 ARS4では、SpeIとSalIで切り出される0.9kbpのARS4−2−2に、ARS4と比較して6割弱のARS活性が認められ、短縮後も、1.76×104個/μgDNAと、なお高い形質転換効率を示した。 一方、ARS3では、EcoRI、SalI、HindIIIを用いた短縮化で、活性が1/10以下に低下した。4.短縮したARS断片のDNA塩基配列解析 短縮化したARS3−2、ARS4−2−2について、プライマーウォーキング法によりDNA塩基配列を解析した。さらに決定した配列に関しては、塩基配列解析ソフトを用いてACSとの相同性解析を行った。 ARS−4−2−2(配列番号2)は、全長874bpから成り、11bpからなるACS([T/A]TTTA[C/T][A/G]TTT[T/A])が+鎖と−鎖に12bp隔てて1つずつ確認された(図5)。加えて、ACSと1塩基異なる配列を6個、2塩基異なるものを19個含んでいた。5.ARS3−2のPCRを用いた短縮化 塩基配列を基に、PCRにより両端から欠失変異株を作製し、その活性を調べ、機能領域を特定した。 ARS3−2の5’上流より段階的に欠失させた変異ARSは、primer ARS3−2Uシリーズ(U378〜U1269)とARS3−2−D2874とにより、SalI−SpeI断片として増幅し、YIpKANのSalI−SpeIサイトに連結した。一方、ARS3−2の3’下流より段階的に欠失させた変異ARSは、primer ARS3−2−U7とARS3−2−Dシリーズ(D715〜D2231)とによりSalI−SpeI断片として増幅し、pRI77のSalI−SpeIサイトに連結した。 DelectionによりD1490の上流、及び7より下流の欠失により活性は緩やかに低下し、ARS3−2の完全なARS活性に必要な領域が広範囲に渡ることが明らかとなった。なお、U378−D1490のフラグメントはARS3−2の約1/3と低調であることから、U7−D1490で得られるARS3−2−D1490を高機能成分とした。この塩基配列を図7に示す。ACSと1塩基異なるものが5個、2塩基異なるものが24個存在した。また、ARS3−2−D1490のAT含量は69.6%であった。 なお、使用したprimerのリストを下記に示す。(1)SRS3−2−U7 5'-GGGTCGACCAAACTAATTTGAAAAGC-3'(2)ARS3−2−U378 5'-GGGTCGACGTCTGCTCTCTCAATATA-3'(3)ARS3−2−U656 5'-GGGTCGCCTCGAAAGTATTATATAT-3'(4)ARS3−2−U927 5'-GGGTCGACAGAACATTTCTTTTAGGA-3'(5)ARS3−2−U1269 5'-GGGTCGACTGGACTATCTTTAATAAA-3'(6)ARS3−2−D2874 5'-GGACTAGTTTATCAACACAAAATGAC-3'(7)ARS3−2−D2231 5'-GGACTAGTCAGATCAAACTTATACAT-3'(8)ARS3−2−D1756 5'-GGACTAGTATTGTCTTCCATTTACGT-3'(9)ARS3−2−D1490 5'-GGACTAGTTGCATTATGCGCTCTACT-3'(10)ARS3−2−D1220 5'-GGACTAGTTTAATAAATATTGCGTAT-3'(11)ARS3−2−D926 5'-GGACTAGTTAATATTGGTTTTCATAT-3'(12)ARS3−2−D715 5'-GGACTAGTTCCTAATAAAATTTATTT-3'6.短縮化したARSの他のキャンディダ・ユティリス内での活性 他のキャンディダ・ユティリスでも、短縮化したARSが機能するかどうか検討した。 他のキャンディダ・ユティリスとして、ATCC22033、ATCC9226、IAM4264の3株を用いた。これら菌株の最少阻止濃度−それぞれ、40、60、40μg/ml−に調製したG418添加YPD培地で、酢酸リチウム法により短縮化した2種類のARSの形質転換を行った。 結果を表3に示す。 表3に示される通り、効率に差はあるものの各種キャンディダ・ユティリスで形質転換が可能であった。 以上、述べてきた通り、本発明によれば、キャンディダ・ユティリス由来の、安定性がよく短縮化されたARS遺伝子が提供され、キャンディダ・ユティリスの効率的な形質転換が可能である。ライブラリーに用いたベクターの図である。染色体組み込み型のベクターの図である。キャンディダ・ユティリスゲノムDNAライブラリーの図である。取得したARSの細分化を示す図である。ARS4−2−2中に含まれるACSおよびその類似配列の存在様式を示す図である。 図中、□で囲んだ部分がACSを、実線が1塩基異なる配列を、破線が2塩基異なる配列を示す。また、左向きの矢印はマイナス鎖を示す。作製したARS3−2の欠失変異株(A)及びその形質転換効率(B)を示す図である。 A:一番上の太い実線がARS3−2を示し、その下の2本の細い実線がDNA二本鎖を示す。二本鎖上の三角シンボルは完全一致のACS、短い縦線が1塩基異なるACS類似塩基配列を示す。 その下の実線が作製した欠失変異株を示し、数値はその位置を示す。Uは上流からの、Dは下流からの欠失シリーズであることを示す。 B:図中、●はU、□はDの各シリーズの形質転換効率を示す(3回の平均値)。ARS3−2−D1490中に含まれるACS類似配列の存在様式を示す図である。 図中、実線が1塩基異なる配列を、破線が2塩基異なる配列を示す。また、左向きの矢印はマイナス鎖を示す。配列表配列番号1の塩基配列で表されるキャンディダ・ユティリス(Candida utilis)由来のARS遺伝子。配列表配列番号2の塩基配列で表されるキャンディダ・ユティリス(Candida utilis)由来のARS遺伝子。請求項1又は2記載のARS遺伝子を含むプラスミド。配列表


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