生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_生体由来物質の吸着低減方法、生体由来物質保存溶液、生体由来物質保存容器、生体由来物質分析用キットおよび臨床診断キット
出願番号:2005077936
年次:2006
IPC分類:G01N 33/543,G01N 33/545,C07K 1/14,G01N 33/53


特許情報キャッシュ

田中 速雄 JP 2006258666 公開特許公報(A) 20060928 2005077936 20050317 生体由来物質の吸着低減方法、生体由来物質保存溶液、生体由来物質保存容器、生体由来物質分析用キットおよび臨床診断キット 住友ベークライト株式会社 000002141 田中 速雄 G01N 33/543 20060101AFI20060901BHJP G01N 33/545 20060101ALI20060901BHJP C07K 1/14 20060101ALN20060901BHJP G01N 33/53 20060101ALN20060901BHJP JPG01N33/543 501BG01N33/543 501JG01N33/545 ZC07K1/14G01N33/53 D 7 OL 7 4H045 4H045BA10 4H045CA40 4H045EA50 本発明は、生体由来物質の吸着低減方法、生体由来物質保存溶液、生体由来物質保存容器、生体由来物質分析用キットおよび臨床診断キットに関する。 蛋白質構造・機能解析分野および臨床研究、臨床診断において扱われる細胞、蛋白質、ペプチド、核酸、糖鎖等の生体由来物質が、使用する容器、器具、装置配管、センサーチップ等に吸着することで様々な問題を引き起こすことから、現在までにそれら生体由来物質の吸着を低減する為の方策が発明、開示されて来た。 例えば、蛋白質を溶解した溶媒中に夾雑蛋白質を添加し、吸着が競合反応である事を利用して目的とする蛋白質の吸着損失を相対的に低減する方法や、溶媒に界面活性剤を添加し、蛋白質と基材の間で発生する疎水性相互作用を低減させる方法がある。 しかし、溶媒に対する夾雑蛋白質の添加や界面活性剤の添加については充分な吸着低減効果が得られないことが多く、特に蛋白質の構造解析等の分析を行う場合には蛋白質や界面活性剤の添加は分析の際のノイズになるため好ましくない。 また、基材の表面改質からのアプローチとして、シリコーンコーティング等の疎水性処理やポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルメタクリレート等の親水性処理により吸着を低減させる検討がなされて来た。 基材の疎水性処理については、水溶液中に存在する生体由来物質の吸着の原動力は疎水性相互作用であることから理論的に吸着を防止する事は難しく、実際に生体由来物質の種類によっては吸着低減効果が無いばかりではなく、より多くの吸着が発生してしまう。 疎水性表面の基材を使用した場合、有機溶媒を使用する事で生体由来物質の吸着を低減する事が可能であるが、生体由来物質の変性や機能の低下の問題からどうしても有機溶媒を使用できない工程も多い。 一方、親水性処理については、水系の溶媒中に存在する生体由来物質の吸着を低減する効果はあるが、やはり生体由来物質の種類によっては静電的な相互作用で吸着を発生する場合があり、更に極性の低い有機溶媒もしくは有機溶媒と水の混合溶媒中に存在する蛋白質の吸着は低減することが出来ない。 上述の通り、従来の生体由来物質の吸着低減方法においては溶媒への添加物と基材表面の改質の両方について様々な検討がなされて来たにもかかわらず、生体由来物質の種類、溶媒の種類等について限られた条件下でのみ吸着低減効果を発揮するものしかなく、例えば蛋白質の構造解析の様に一連の工程において水系溶媒から有機溶媒を繰り返し使用する目的において有効な吸着低減方法は無かった。特開平10−215862号公報 本発明の目的は、生体由来物質の基材に対する吸着を低減する方法に関するものであり、水系溶媒および有機溶媒、または有機溶媒と水の混合溶媒に存在する幅広い種類の生体由来物質吸着を効果的に低減する方法およびその方法を使用した生体由来物質保存溶液および保存容器、生体由来物質分析用キット、臨床診断キットを提供することにある。(1)生体由来物質が溶解している溶媒のpHを0〜5.5にすることにより、水接触角が0〜50°である基材表面に対する、前記生体由来物質の吸着量を低減させることを特徴とする生体由来物質の吸着低減方法。(2)前記溶媒は、有機溶媒または、有機溶媒と水の混合溶媒である上記(1)に記載の生体由来物質の吸着低減方法。(3)前記溶媒に、酸または弱酸性物質を添加するものである上記(1)または(2)に記載の生体由来物質の吸着低減方法。(4)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体由来物質の吸着低減方法を用いた生体由来物質保存溶液(5)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体由来物質の吸着低減方法を用いた生体由来物質保存容器。(6)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体由来物質の吸着低減方法を用いた生体由来物質分析用キット。(7)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体由来物質の吸着低減方法を用いた臨床診断キット。 本発明によれば、水系溶媒、有機溶媒、更に有機溶媒と水の混合溶媒中に存在する生体由来物質の吸着を効果的に低減する事が可能で、臨床診断や蛋白質構造解析などの生化学実験において検体または生体由来物質のサンプルの安定な保存ができる生体由来物質保存溶液および保存容器または微量成分を高精度、高感度に検出しうる生体由来物質分析用キット、臨床診断キットを提供する事ができる。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明の生体由来物質の吸着低減方法は、生体由来物質が溶解している溶媒のpHが0〜6であり、基材表面の水接触角が0〜50°であることが特長であり、その溶媒条件と基材表面の組み合わせにより、効果的に生体由来物質の吸着を低減する事ができる。 本発明の吸着低減方法は生体由来物質と基材表面の吸着現象を詳細に検討することにより達成し得た技術であり、以下その理論について説明する。 生体由来物質と基材表面で発生する吸着力は、疎水性表面で発生する疎水性相互作用と親水性表面で発生する極性基間相互作用(静電相互作用や水素結合に起因するもの)に分類される。 ポリプロピレンやポリスチレンからなる一般的なプラスチック基材の疎水性表面と生体由来物質との間では疎水性相互作用が発生し、極性溶媒中に存在する生体由来物質は変性を伴い、不可逆的に吸着する。 一方、水接触角が0〜50°の親水性表面と生体由来物質との間では疎水性相互作用が低く抑えられる、もしくは発生しないため、極性溶媒中に存在する生体由来物質は吸着しない。ところが、親水性表面においても溶媒の極性が下がると、溶媒と生体由来物質の間で形成されていた極性基間相互作用が失われることで親水性表面と生体由来物質の間で発生する極性基間相互作用により吸着が発生してしまう。 ここで本発明の重要な点であるが、疎水性表面と生体由来物質の間で発生する疎水性相互作用は防止することは論理的に困難であるが、親水性表面と生体由来物質の間で発生する極性基間相互作用は溶媒のpHを0〜5.5にする事で効果的に防ぎうることを本発明者が見出した。 論理的には、生体由来物質のアミノ残基、カルボキシル残基をプロトン化することで親水性表面の極性基との間で発生する静電相互作用、水素結合を低減化し、結果として極性溶媒から極性の低い溶媒いずれの溶媒中に存在する生体由来物質の吸着を効率的に防止することができる。 溶媒のpHは0〜5.5の酸性〜弱酸性であればよく、またpHの調整方法についても特に限定するものではなく、酸または弱酸、具体的には酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、塩酸等を添加する事で達成する事ができ、緩衝液としてpHが調節されていても良い。 pHを調節する為に酸を添加する場合は、生体由来物質の種類および目的に応じて酸の種類と添加量を選択する事が好ましい。 基材表面の接触角は0〜50°であれば効果を得る事ができるが、可能な限り疎水性相互作用を低減した方がより高い効果を得る事ができるため、0〜5°の範囲がより好ましい。 接触角が0〜50°の基材表面を得る方法については特に限定するものではなく、ポリ−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート共重合体等の親水性材料を使用するか、ポリプロピレンやポリスチレンといった疎水性表面に前述の親水性材料をコーティングしても良い。 この際、基材表面が使用する溶媒に対して耐性を有する事が重要であり、特に水系から有機溶媒系の幅広い範囲の溶媒を使用する場合は、それら全ての溶媒に対する耐性を有する材料を選択する必要があるため、特に好ましくは疎水性表面に親水性材料を化学的に固定化する方法であり、例えばポリ酢酸ビニルのけん化物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ポリペンタエリスリトールトリアクリレート等の水溶性材料に、感光性、感熱性、放射線重合性等の官能基を付与した材料を用いることで疎水性表面に化学的に固定、もしくは架橋させることによって幅広い範囲の溶媒に対して耐性を有する親水性表面が得られ、幅広い種類の溶媒を使用する用途に用いることができる点において特に好ましい。 本発明の生体由来物質吸着低減方法を用いた生体由来物質保存溶液および保存容器としては、例えば保存する生体由来物質の種類や保存する目的に応じた溶媒を使用し、酸または弱酸の添加によりpH0〜5.5に調節した溶媒と水接触角が0〜50°の表面を有する保存容器の組み合わせにより、基材への吸着による生体由来物質の変性や濃度変化の少ない安定した保存をおこなうことができる。 保存容器の形状としては特に限定するものではなく、凍結保存チューブやマイクロチューブの形状またはマルチウェルプレートの形状等、目的に応じて使い分ければよい。 保存方法については室温保存、冷凍保存、凍結保存の何についても、本発明の効果に影響を与えるものではなく、保存する生体由来物質の種類、保存目的に応じて使い分ける事ができる。 また、本発明の生体由来物質吸着低減方法は生体由来物質分析用キットとして使用することも可能で、例えばPMF解析の一連の工程において水接触角が0〜50°の表面を有する容器と酸性領域の溶媒を使用することで、ペプチドの種類(酸性、塩基性、親水性、疎水性)に依る吸着損失の影響を抑える事ができるため高感度・高精度の分析が可能となる。 このような蛋白質構造解析の一連の工程においては様々な濃度の有機溶媒を使用するため本発明の生体由来物質吸着低減方法を用いた生体由来物質分析用キットは特に有効である。 また、本発明の生体由来物質吸着低減方法を臨床診断キットとして用いる事も可能で、例えば検体の保存容器として0〜50°の表面を有する容器を使用し、検体への添加剤として酸を用いる事で検体中の生体由来物質の吸着損失を防止する事が出来る。 更に、臨床診断の反応容器に0〜50°の表面を有する容器を使用し、酸の添加や緩衝液の添加により弱酸性〜酸性領域で反応をおこなうことで、高感度・高精度な診断が可能となる。 以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。(実施例1) 樹脂材料としてポリプロピレン樹脂(住友ノーブレン社製、WP708)を用いて、射出成形(成形機:日精樹脂工業製 60t、シリンダー温度:225℃−220℃−195℃−185℃、射出速度:25%−20%−15%、射出圧力:40%−30%−25%)、金型冷却:30℃)によりマイクロチューブを形成した。得られたチューブにプラズマ処理装置 (BRANSON/IPC社製 SERIES7000)を用いてプラズマ処理(酸素プラズマ5分)を行い、チューブの表面に官能基を形成した。 なお、得られたチューブの形状は、高さ39mm、外径10mm、容量1.5mLのV底チューブであった。 次に、側鎖にアジド基を有するポリビニルアルコール(東洋合成工業社製 AWP)をアルミ箔で遮光をしたガラス容器中で、20容量%エタノール水溶液に溶解し、1.0重量%の溶液を調整した。 上述の第2の官能基を形成したチューブを前記アルミ箔で遮光をしたガラス容器に1分間、浸漬した後、取り出し、40℃で60分一次乾燥した後、UVランプでUV光を0.1mW/cm2×5分間照射して硬化した後、純水で洗浄して得られたチューブの表面には、前記ポリビニルアルコールで形成される層が形成されており、水接触角は0°であった。 前記で作製したチューブに0.1%酢酸を添加した60%アセトン水溶液(pH4.08)にペルオキシターゼ標識アビジン(43−4423 ZYMED社製)を0.4μg/mLの濃度になるように調製した溶液を添加し、37℃1時間インキュベートした後、リン酸緩衝液pH7.4で3回洗浄し、ぺルオキシターゼ用発色キット(SUMILON ML−1120T 住友ベークライト社製)を使用して発色させた後プレートリーダーを使用して、容器に残留しているペルオキシターゼ標識アビジンを450/630nmの吸光度で測定した。 (実施例2) 60%アセトン水溶液の代わりに純水に0.1%酢酸を添加した(pH3.34)溶液を用いた以外は実施例1と同一のチューブおよび方法を用いて、容器に残留しているペルオキシターゼ標識アビジンを450/630nmの吸光度で測定した。 (実施例3) チューブにプラズマ処理を行い、チューブの表面に官能基を形成した後、側鎖にアジド基を有するポリビニルアルコールの処理工程を省いた水接触角31°のチューブを用いた以外は実施例1と同一の方法を用いて、容器に残留しているペルオキシターゼ標識アビジンを450/630nmの吸光度で測定した。 (比較例1) 60%アセトン水溶液に0.1%酢酸を添加しない(pH6.01)溶液を用いた以外は実施例1と同一のチューブおよび方法を用いて、容器に残留しているペルオキシターゼ標識アビジンを450/630nmの吸光度で測定した。 (比較例2) プラズマ処理と、側鎖にアジド基を有するポリビニルアルコールの処理工程を省いた水接触角62°のチューブを用いた以外は実施例1と同一の方法を用いて、容器に残留しているペルオキシターゼ標識アビジンを450/630nmの吸光度で測定した (比較例3) プラズマ処理と、側鎖にアジド基を有するポリビニルアルコールの処理工程を省いた水接触角62°のチューブを用い、60%アセトン水溶液の代わりに純水に0.1%酢酸を添加した(pH3.34)溶液を用いた以外は実施例1と同一のチューブおよび方法を用いて、容器に残留しているペルオキシターゼ標識アビジンを450/630nmの吸光度で測定した。 実施例1〜3および比較例1〜3で求められた吸光度の結果を表1に示す。 表1から明らかなように、基材表面の水接触角が31°の容器を使用し、溶媒のpHが4.08である実施例3、および基材表面の水接触角が0°の容器を使用し、かつ溶媒のpHが4.08またはpHが3.34である実施例1および実施例2においては、60%アセトン水溶液および純水溶液いずれの場合も吸光度値は低く、特に実施例1および実施例2においてはペルオキシターゼ標識アビジンの吸着は殆ど認められなかった。 一方比較例1では基材表面の接触角が0°であるにもかかわらず溶媒のpHが6.01になれば60%アセトン水溶液中のペルオキシターゼ標識アビジンは容器表面に吸着残留している。 表面処理を施さない、基材表面の接触角が62°ポリプロピレン容器を用いて、60%アセトン水溶液を使用した比較例2においては吸着の値は低いが、表面処理を施さない、基材表面の接触角が62°ポリプロピレン容器を用いて、純水を使用した比較例3においてはpHが3.34の酸性であるにもかかわらず、高い吸着性を示している。 以上の結果から、本発明の生体由来物質の吸着低減方法である生体由来物質が溶解している溶媒のpHを0〜5.5にすることにより、水接触角が0〜50°である基材表面に対する生体由来物質の吸着を、有機系溶媒および水系溶媒何れの系においても低減することができることが明らかである。 本発明は基材表面に対する生体由来物質の吸着量を低減させる方法およびその方法を利用した保存容器、分析用キット、臨床診断用キットに関するものであり、蛋白質構造解析、医薬品の創薬、臨床診断等で使用することで、基材表面への吸着による生体由来物質の減少を抑え、分析、診断時の精度と感度を向上させることができる。 生体由来物質が溶解している溶媒のpHを0〜5.5にすることにより、水接触角が0〜50°である基材表面に対する、前記生体由来物質の吸着量を低減させることを特徴とする生体由来物質の吸着低減方法。 前記溶媒は、有機溶媒または、有機溶媒と水の混合溶媒である請求項1に記載の生体由来物質の吸着低減方法。 前記溶媒に、酸または弱酸性物質を添加するものである請求項1または2に記載の生体由来物質の吸着低減方法。 請求項1ないし3のいずれかに記載の生体由来物質の吸着低減方法を用いた生体由来物質保存溶液 請求項1ないし3のいずれかに記載の生体由来物質の吸着低減方法を用いた生体由来物質保存容器。 請求項1ないし3のいずれかに記載の生体由来物質の吸着低減方法を用いた生体由来物質分析用キット。 請求項1ないし3のいずれかに記載の生体由来物質の吸着低減方法を用いた臨床診断キット。 【課題】 本発明の目的は、生体由来物質の基材に対する吸着を低減する方法に関するものであり、水系溶媒および有機溶媒、または有機溶媒と水の混合溶媒に存在する幅広い種類の生体由来物質吸着を効果的に低減する方法およびその方法を使用した生体由来物質保存溶液および保存容器、生体由来物質分析用キット、臨床診断キットを提供することにある。【解決手段】 生体由来物質が溶解している溶媒のpHを0〜5.5にすることにより、水接触角が0〜50°である基材表面に対する前記生体由来物質の吸着量を低減させることを特徴とする生体由来物質の吸着低減方法である。【選択図】 なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る