タイトル: | 公開特許公報(A)_プライマーダイマーからの非特異的増幅を減少させる方法 |
出願番号: | 2005076529 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12Q 1/68 |
林崎 良英 三谷 康正 加藤 千晶 JP 2006254784 公開特許公報(A) 20060928 2005076529 20050317 プライマーダイマーからの非特異的増幅を減少させる方法 独立行政法人理化学研究所 503359821 株式会社ダナフォーム 501293666 奥山 尚一 100099623 有原 幸一 100096769 松島 鉄男 100107319 吉田 尚美 100118407 林崎 良英 三谷 康正 加藤 千晶 C12N 15/09 20060101AFI20060901BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20060901BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A 24 OL 15 4B024 4B063 4B024AA11 4B024AA20 4B024CA09 4B024HA12 4B063QA18 4B063QQ42 4B063QQ52 4B063QR08 4B063QR10 4B063QR62 4B063QS25 4B063QS34 本発明は、核酸の増幅方法の改良方法、より詳しくは、核酸増幅時に形成されるプライマーダイマーからの非特異的増幅を減少させる方法に関する。 PCRをはじめとして核酸の増幅技術は種々知られているが、プライマーを用いる増幅方法のすべてにおいて、プライマー同士が対合したプライマーダイマーの形成は共通した問題である。2種類のプライマーを用いた場合には特に、プライマーダイマー生じると、これが鋳型DNAとして働いて、非特異的な増幅産物が作られてしまう問題がある。これは、本来の目的であるDNA産物に、それ以外のDNA断片が混入するという問題だけでなく、非特異的な増幅反応にプライマーが消費され、目的とするDNA増幅の効率が低下するという問題を招く。 このような問題を解決するためには、まずプライマーダイマーを形成し辛いプライマーを設計することが重要である。プライマーの設計には、オリゴヌクレオチドの長さ、Tm値、配列の物理的特徴、プライマーの相互作用の可能性など様々な要素を考慮する必要があるが、これだけではプライマーダイマーの問題を完全に解決はできない。プライマーダイマーによる非特異的な増幅産物の問題を解決するために、電気泳動により非特異的増幅産物と目的とするDNA産物とを分離し、目的とする増幅物のバンドを切り出す方法や、増幅反応後の反応液をスピンカラムにかけるなどの方法があり、後者の例としてUltra PCR Clean−Up kit (日本ジェネティクス社)、Bay Gene PCR Clean−Up Kit(Bay Gene社)などが市販されている。 一方、プライマーダイマー形成に伴う非特異的増幅産物と目的産物とを区別できる検出方法も開発されている。例えばPCR法により増幅を行なう際、連続的なモニタリングにより目的産物に由来する蛍光とプライマーダイマーのような非特異的結合に由来する蛍光を区別できる検出方法がある。またプライマーの5’末端に色素QSY7またはQSY9を結合させ、プライマーダイマーに結合したSYBR Greenなどのフルオロフォア付近の蛍光をクエンチングするようにデザインされたプライマーも開発されている。目的とする増幅物の場合、結合したSYBR Greenなどの核酸色素分子は、クエンチャーから離れていき蛍光を発するが、プライマーダイマーのような短い鎖のものは、クエンチャーにより蛍光を発することがないので、目的とする増幅物のみのシグナルを得ることができる。 さらに、反応自体を抑制する方法も種々開発されてきた。増幅反応を行なう際、プライマーダイマーは低温においてより形成され易く、DNAポリメラーゼも通常は低温でもある程度活性を有しているため、プライマーダイマーからの非特異的核酸増幅が起きやすい。これを防ぐ方法としては、ホットスタート法があげられる。これは、DNAポリメラーゼの反応を反応液の温度を上昇させてからのみ起きるようにする方法である。具体的には、高温下で不足しているコンポーネントを追加する方法、ワックスバリアー法、DNAポリメラーゼの抗体やアプタマーを用いる方法、加熱処理することで活性化するDNAポリメラーゼを用いる方法などが挙げられる。しかしこれらの方法には、操作が煩雑になること、抗体などの高価な試薬が必要であることなどの問題点があった。また、もともと反応温度が低い増幅反応には利用ができない。 上記の通り、プライマーダイマー形成に伴う、非特異的増幅産物と目的産物とを区別する方法や、非特異的増幅産物の増幅を減少させる方法が開発されているが、操作が容易であり、かつ、効果の高い方法は未だ見出されていない。 そこで、本発明は、プライマーダイマーの形成による非特異的増幅産物の増幅を防ぐ効率的かつ操作が容易な方法を提供することを目的とする。 今回の発明は、上記のようなプライマーダイマーの形成による非特異的な増幅を抑制する新しい方法を提供する。 発明者らは、ミスマッチ結合タンパク質あるいは組換え酵素タンパク質のようなプライマーダイマーに結合する物質を増幅反応溶液に添加することにより、プライマーダイマーの形成に起因する非特異的な増幅を著しく減少できることを発見した。これらのタンパク質は、プライマーダイマーの非相補的対合部分に結合し、DNAポリメラーゼによる3’末端からのDNA鎖伸長反応を中止させる。これにより、プライマーダイマーからは非特異的増幅が減少する。 すなわち、本発明は、核酸増幅反応においてプライマーダイマーに結合する物質をサンプルに添加することを特徴とする、プライマーダイマー形成に伴う非特異的な増幅反応を抑制する方法を提供する。 この方法において、プライマーダイマーに結合する物質として、ミスマッチ認識能を有する物質、好ましくはミスマッチ結合タンパク質を用いることができる。ミスマッチ結合タンパク質としては、MutS、MSH2、MSH6、またはこれらの混合物を例示できる。プライマーダイマーに結合する物質は、サンプルに0.1%〜10%、好ましくは0.5%〜2%、より好ましくは0.7%〜1.3%の濃度で添加することができる。 また、この方法において、プライマーダイマーに結合する物質として、DNA組換え能を有する物質、好ましくはDNA組換え酵素を用いることができる。DNA組換え酵素としては、RecAタンパク質、T4遺伝子または一本鎖結合タンパク質を例示できる。 また、本発明の別の側面として、プライマーダイマーに結合する物質と、プライマーとをサンプルに添加するステップと、前記サンプルをインキュベートするステップとを含むことを特徴とする、目的とする核酸領域を増幅する方法、標的核酸配列の有無を判定する方法、又は、標的核酸配列における変異、欠失及び/又は挿入の有無を判定する方法を提供する。 これらの方法において、プライマーダイマーに結合する物質として、ミスマッチ認識能を有する物質、好ましくは、ミスマッチ結合タンパク質を用いることができる。ミスマッチ結合タンパク質としては、MutS、MSH2、MSH6、またはこれらの混合物を例示できる。 また、これらの方法において、プライマーダイマーに結合する物質として、DNA組換え能を有する物質、好ましくはDNA組換え酵素を用いることができる。DNA組換え酵素としては、RecAタンパク質を例示できる。 これらの方法における核酸増幅方法には、PCR法又は等温増幅法を使用できる。等温増幅反応としては、SDA法、3SR法、NASBA法、TMA法、Qベータリプリカーゼ法、LAMP法、ICAN法を例示できる。 また、等温増幅法に用いられるプライマーには、標的核酸配列を増幅できる少なくとも2種のプライマーセットを含んでなり、前記プライマーセットに含まれる第一のプライマーは、標的核酸配列の3’末端部分の配列(A)にハイブリダイズする配列(Ac’)を第一のプライマーの3’側に含み、かつ前記標的核酸配列において前記配列(A)よりも5’側に存在する配列(B)の相補配列(Bc)にハイブリダイズする配列(B’)を前記配列(Ac’)の5’側に含んでなり、前記プライマーセットに含まれる第二のプライマーは、前記標的核酸配列の相補配列の3’末端部分の配列(C)にハイブリダイズする配列(Cc’)を3’末端部分にふくんでなり、かつ相互がハイブリダイズする2つの核酸配列を同一鎖上に含む折り返し配列(D−Dc’)を前記配列(Cc’)の5’側に含んでなるものを使用できる。このようなプライマーセットは、PCT/JP04/019349に詳細に記載されている。 本発明により、ミスマッチ結合タンパク質あるいは組換え酵素タンパク質がプライマー同士からなるミスマッチ配列に結合し、その増幅を抑制し、さらに、目的とする配列特異的な増幅のみを起こさせることで、目的配列を増幅するための感度、特異性が向上する効果が得られる。 本法は、感染症から、SNP、変異など、幅広い増幅、検出の分野に応用可能なものである。 DNAの2本鎖において部分的に対合できない(ミスマッチ)塩基対が生じたときに、細菌や酵母等には、これを修復するための機構があることが既に知られている。この修復は「ミスマッチ結合タンパク質」と呼ばれるタンパク質(「ミスマッチ認識タンパク質」とも称される)によって行なわれるものであり、MutSタンパク質(特表平9−504699号公報)、MutMタンパク質(特開2000−300265号公報)、GFP(Green Fluorescence Protein)に結合したMutSタンパク質(国際公開第99/06591号パンフレット)などの様々なミスマッチ結合タンパクの使用が報告されている。さらに、近年、ミスマッチ結合タンパク質を利用してミスマッチを検出する遺伝子診断法が開発されている(M.Gotoh et al.,Genet.Anal.,14,47−50,1997)。核酸中における特定のヌクレオチドにおける多型および突然変異の検出法としては、例えば、変異のない対照核酸と、変異が存在することが疑われる被検核酸とをハイブリダイズさせ、そこにミスマッチ認識タンパク質を導入することによりミスマッチを検出する方法が知られている。 本発明において「ミスマッチ」とは、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、およびチミン(T)(RNAの場合はウラシル(U))から選択される一組の塩基対が正常な塩基対(AとTの組み合わせ、またはGとCの組み合わせ)ではないことを意味する。ミスマッチには、1つのミスマッチのみならず、複数の連続したミスマッチ、1または複数の塩基の挿入および/または欠失により生じるミスマッチ、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。 プライマーダイマーは、プライマーの一部あるいは全体が他のプライマーと対合し、非相補的な領域を含む二本鎖構造をとる。このようなヘテロ二本鎖構造により、本来的には生成しないはずの誤った増幅産物がもたらされる。そこで、核酸増幅反応に用いられる反応液中にミスマッチ結合タンパク質を添加しておけば、上記のようなヘテロ二本鎖構造にこのミスマッチ結合タンパク質が結合し、その後の増幅反応が妨げられる。従って、ミスマッチ結合タンパク質を利用することにより、誤った増幅産物の生成を防ぐことが可能となる。 本発明に用いられるミスマッチ結合タンパク質は、二本鎖核酸におけるミスマッチを認識し、そのミスマッチの部位に結合することが可能なタンパク質であればよく、例えば、当業者に公知のいずれのものであってもよい。使用されるミスマッチ結合タンパク質としては、MutS、MutH、MutL、HexA、MSH1〜6、Rep3、RNaseA、ウラシル−DNAグリコシダーゼ、T4エンドヌクレアーゼVII、レゾルバーゼなどが挙げられ、好ましくはMutS、MSH2もしくはMSH6、またはこれらの2種以上の混合物であり、より好ましくはMutSであるが、これらに限定されない。 また、本発明に用いられるミスマッチ結合タンパク質は、二本鎖核酸中のミスマッチを認識しうる限り、野生型タンパク質のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質(変異体)であってもよい。このような変異体は、自然界において生じることもあるが、人為的に作製することも可能である。 タンパク質にアミノ酸変異を導入する方法としては、多くの方法が知られている。例えば、部位特異的変異導入法としては、 W.P.DengとJ.A.Nickoloffの方法(Anal.Biochem.,200,81,1992)、K.L.MakamayeとF.Ecksteinの方法(Nucleic Adids Res.,14,9679−9698,1986)などが知られており、ランダム変異導入法としては、基本的な修復系を欠損した大腸菌 XL1−Red 株(Stratagene社)を用いる方法、亜硝酸ナトリウム等を用いて化学的に塩基を修飾する方法(J.−J.Diaz et al.,BioTechnique,11,204−211,1991)などが知られている。このようなミスマッチ結合タンパク質としては、MutM、MutSおよびそれらの類似体など、多くのものが知られている(Radman,M.et al.,Annu.Rev.Genet.20:523−538(1986);Radaman,M.etal.,Sci.Amer.,August 1988,pp40−46;Modrich,P.,J.Biol.Chem.264:6597−6600(1989);Lahue,R.S.et al.,Science245:160−164(1988);Jiricny,J.et al,.Nucl.Acids Res.16:7843−7853(1988);Su,S.S.et al.,J.Biol.Chem.263:6829−6835(1988);Lahue,R.S.et al.,Mutat.Res.198:37−43(1988);Dohet,C.et al.,Mol.Gen.Gent.206:181−184(1987);Jones,M.et al.,Gentics 115:605−610(1987);Salmonella typhimuriumのMuts(Lu,A.L.,Genetics 118:593−600(1988);HaberL.T. et al.,J.Bacteriol.170:197−202(1988);Pang、P.P.et al.,J.Bacteriol.163:1007−1015(1985));及びPriebe S.D.et al.,J.Bacterilo.170:190−196(1988))。 ミスマッチ結合タンパク質は、一本鎖核酸にも結合することがあり、このようなミスマッチ結合タンパク質の一本鎖核酸への結合は、一本鎖結合タンパク質により阻害されることが知られている。従って、本発明による変異検出法においてミスマッチ結合タンパク質を用いる場合には、一本鎖結合タンパク質を併用することが好ましい。 一本鎖核酸にミスマッチ結合タンパク質が結合するのを阻害するために使用する一本鎖結合タンパク質(SSB)は、当技術分野において公知の任意のSSBとすることができる。好ましいSSBとしては、大腸菌、ショウジョウバエ、およびアフリカツメガエルに由来する一本鎖結合タンパク質、およびT4バクテリオファージ由来の遺伝子32タンパク質、ならびに他の種に由来するこれらの相当物が挙げられるが、これらに限定されない。 また、本発明に用いられる一本鎖結合タンパク質は、一本鎖核酸に結合しうる限り、野生型タンパク質のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質(変異体)であってもよい。このような変異体は、自然界において生じることもあるが、人為的に作製することも可能である。 また、ミスマッチ結合タンパク質は、ミスマッチを含まない二本鎖核酸にも結合することがあり、あらかじめ活性剤を用いてミスマッチ結合タンパク質を活性化しておくことにより、このようなミスマッチ結合タンパク質の誤った結合が防止できることが知られている。従って、本発明による変異検出法においてミスマッチ結合タンパク質を用いる場合には、ミスマッチ結合タンパク質の活性剤によりあらかじめ活性化されたものを用いることが好ましい。 ミスマッチ結合タンパク質を活性化するための活性剤は、当業者であれば適宜選択することができる。ミスマッチ結合タンパク質を活性化するための活性剤として、好ましくは、ATP(アデノシン5’−三リン酸)、ADP(アデノシン5’−二リン酸)、ATP−γ−S(アデノシン5’−O−(3−チオ三リン酸))、AMP−PNP(アデノシン5’−[β、γ−イミド]三リン酸)などの化合物であり、あるいは、ミスマッチ結合タンパク質に結合できるヌクレオチドの一つとされるが、これらに限定されない。ミスマッチ結合タンパク質の活性化は、ミスマッチ結合タンパク質と活性剤とを、室温で数秒間から数分間インキュベートすることにより行うことができる。 本発明に用いる組換え酵素タンパク質は、当業者が適宜選択することができる。例えば、RecAタンパク質を用いることができる。 以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本実施例により本発明を制限または限定することを意図するものではない。[ヒトSTS DYS237遺伝子中の標的核酸配列の増幅] 本例では、鋳型としてヒトゲノムDNA(Clontech社製)を使用して、その中に含まれるヒトSTS DYS237遺伝子中の標的核酸配列の増幅を行なった。プライマーとしては、下記の配列を有するプライマーペアを用いた。また、鋳型に対する各プライマー領域の位置関係は図1(配列番号1)に示す通りとした。フォワードプライマーF1は、その3’末端側にある配列(22mer:下線部)が鋳型にアニーリングし、5’末端側にある配列(16mer:下線部以外)がその領域内で折り畳まれて図2に示す構造をとるように設計されている。リバースプライマーR1は、その3’末端側にある配列(20mer:下線部)が鋳型にアニーリングし、伸長反応の後、5’末端側にある配列(10mer:下線部以外)が、そのプライマーによる伸長鎖上の、該プライマーの3’末端残基の16塩基下流から始まる領域にハイブリダイズするように設計されている。プライマーペア:F1:GGATATATATATATCCACTGAACAAATGCCACATAAAG(配列番号1)R1:GCAGCATCACCAACCCAAAAGCACTGAGTA(配列番号2)。 次の組成を有する25μLの反応液を調製し、60℃で1時間インキュベートした。鋳型は二本鎖のまま反応させた。また、鋳型の代わりに滅菌水を添加した溶液についても同様に実験を行なった。 反応液の組成は、以下の通りである。Tris−HCl(20mM,pH8.8)、KCl(10mM)、(NH4)2SO4(10mM)、MgSO4(8mM)、DMSO(3%)、Triton X−100(1%)、dNTP(1.4mM)、それぞれ2000nMの上記のプライマー対および鋳型(100ng)、さらに16UのBst DNAポリメラーゼ(NEW ENGLAND BioLabs)、SYBR GREEN I(Molecular Probe社)(最終的に100,000倍希釈となる濃度)、MutS(0.8μg)を25μL中に含有する。各サンプルの組成を表1に示す。 結果を図3に示す。図中、●はサンプル1を、○はサンプル2を、▲はサンプル4をそれぞれ表す。サンプル3、サンプル5及びサンプル6は、蛍光強度が測定期間中、常に0であった。サンプル1とサンプル2の結果を比較すると、サンプル2の方が若干増幅速度が遅くなっている。これはMutSを添加しない場合、形成されたプライマーダイマーを鋳型とした非特異的な増幅反応によるプライマーの消費されるため、目的とする領域の増幅効率に若干の影響があったことが理由として考えられる。サンプル4では、本来鋳型DNAがないため,増幅反応は起こらないはずであるが、時間の経過につれて増幅が見られる。これは、プライマーダイマーの形成に起因する非特異的増幅と考えられる。これに対し、サンプル3では増幅が見られず、MutSが非特異的増幅の抑制に効果的であることが判った。[ヒトCYP2C19遺伝子の検出] ヒトCYP2C19の遺伝子の検出を行なった。プライマーとして、次の塩基配列からなるプライマーを設計した。各プライマーと標的塩基配列の関係は、図4に示したとおりである。RA(R1+R2)/配列番号35’−GGGAACCCATAACAAATTACTTAAAAACCTGTGTTCTTTTACTTTCTCCAAAATATC−3’アウタープライマーR3/配列番号45’−AGGGTTGTTGATGTCCATC−3’FA(F1+F2)/配列番号55’−CGGGAAATAATCAATGATAGTGGGAAAATATGCTTTTAATTTAATAAATTATTGTTTTCTCTTAG−3’アウタープライマーF3/配列番号6 5’−CCAGAGCTTGGCATATTGTATC−3’ 上記塩基配列からなるプライマーを用い、ヒトCPY2C遺伝子を組み込んだpBluescript II(EcoRIで直鎖状にしたもの)10〜19 mol/tube(約60000分子)を鋳型とし、60℃で2時間反応させた。鋳型は2本鎖のまま反応させた。反応液の組成は次のとおりである。・反応液組成(25μL中)20 mM Tris−HCl pH 8.810 mM KCl10 mM (NH4 )2 SO44 mM MgSO41M Betaine0.1% TritonX−1000.4 mM dNTP8U Bst DNAポリメラーゼ(NEW ENGLAND BioLabs)SYBR GREEN I(Molecular Probe社)(最終的に100,000倍希釈となる濃度)0.8μg MutSプライマー:1600nM FA1600nM RA200nM F3200nM R3 各サンプル反応液の組成を表2に示す。 結果を図5に示す。図中、●はサンプル1を、▲はサンプル2を、×はサンプル3をそれぞれ表す。サンプル4は、蛍光強度が測定期間中、常に0であった。サンプル3と4を増幅した結果を比べると、MutSが無い場合、鋳型DNAが無い場合でも1時間を過ぎると非特異的な増幅が観察されたが、MutSの添加により、この非特異的増幅をほぼ完全に抑制できることが判った。これによりMutSは特異的配列を検出する感度、特異性が向上する効果があると考えられる。ヒトSTS DYS237遺伝子に対する各プライマー領域の位置関係を示す図である。フォワードプライマーF1の立体構造を示す図である。実施例1の結果を示す図である。CYP2C19配列に対する各プライマーの位置関係を示す図である。実施例2の結果を示す図である。 核酸増幅反応においてプライマーダイマーに結合する物質をサンプルに添加することを特徴とする、プライマーダイマー形成に伴う非特異的な増幅反応を抑制する方法。 プライマーダイマーに結合する物質が、ミスマッチ認識能を有する物質である請求項1の方法。 ミスマッチ認識能を有する物質が、ミスマッチ結合タンパク質である請求項2の方法。 ミスマッチ結合タンパク質が、MutS、MSH2、MSH6、またはこれらの混合物である請求項3の方法 プライマーダイマーに結合する物質を0.1%〜10%の濃度でサンプルに添加する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 プライマーダイマーに結合する物質を0.5%〜2%の濃度でサンプルに添加する請求項5の方法。 プライマーダイマーに結合する物質を0.7%〜1.3%の濃度でサンプルに添加する請求項6の方法。 プライマーダイマーに結合する物質が、DNA組換え能を有する物質である請求項1の方法。 DNA組換え能を有する物質が、DNA組換え酵素である請求項8の方法。 DNA組換え酵素が、RecAタンパク質、T4遺伝子または一本鎖結合タンパク質である請求項9の方法。 目的とする核酸領域を増幅する方法であって、プライマーダイマーに結合する物質とプライマーとをサンプルに添加するステップと、前記サンプルをインキュベートするステップとを含むことを特徴とする方法。 標的核酸配列の有無を判定する方法であって、プライマーダイマーに結合する物質とプライマーとをサンプルに添加するステップと、前記サンプルをインキュベートするステップとを含むことを特徴とする方法。 標的核酸配列における変異、欠失及び/又は挿入の有無を判定する方法であって、プライマーダイマーに結合する物質とプライマーとをサンプルに添加するステップと、前記サンプルをインキュベートするステップとを含むことを特徴とする方法。 プライマーダイマーに結合する物質が、ミスマッチ認識能を有する物質である請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。 ミスマッチ認識能を有する物質が、ミスマッチ結合タンパク質である請求項14方法。 ミスマッチ結合タンパク質が、MutS、MSH2、MSH6、またはこれらの混合物である請求項15の方法。 プライマーダイマーに結合する物質が、DNA組換え能を有する物質である請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。 DNA組換え能を有する物質が、DNA組換え酵素である請求項17の方法。 DNA組換え酵素が、RecAタンパク質、T4遺伝子または一本鎖結合タンパク質である請求項18の方法。 核酸増幅方法が、PCR法である請求項11〜19のいずれか1項に記載の方法。 核酸増幅反応が、等温増幅法である請求項11〜19のいずれか1項に記載の方法。 等温増幅反応が、SDA法、3SR法、NASBA法、TMA法、Qベータリプリカーゼ法、LAMP法、ICAN法からなる群から選択される方法である請求項21の方法。 プライマーが、標的核酸配列を増幅できる少なくとも2種のプライマーセットを含んでなり、 前記プライマーセットに含まれる第一のプライマーは、標的核酸配列の3’末端部分の配列(A)にハイブリダイズする配列(Ac’)を第一のプライマーの3’側に含み、かつ前記標的核酸配列において前記配列(A)よりも5’側に存在する配列(B)の相補配列(Bc)にハイブリダイズする配列(B’)を前記配列(Ac’)の5’側に含んでなり、 前記プライマーセットに含まれる第二のプライマーは、前記標的核酸配列の相補配列の3’末端部分の配列(C)にハイブリダイズする配列(Cc’)を3’末端部分に含んでなり、かつ相互がハイブリダイズする2つの核酸配列を同一鎖上に含む折り返し配列(D−Dc’)を前記配列(Cc’)の5’側に含んでなる ことを特徴とする請求項11〜22のいずれか1項に記載の方法。 【課題】 核酸の増幅方法の改良方法、より詳しくは、核酸増幅時に形成されるプライマーダイマーからの非特異的増幅を減少させる。【解決手段】 核酸増幅反応において、プライマーダイマーに結合する物質をサンプルに添加することを特徴とする、プライマーダイマー形成に伴う非特異的な増幅反応を抑制する。プライマーダイマーに結合する物質としては、ミスマッチ結合タンパク質のようなミスマッチ認識能を有する物質や、DNA組換え酵素のようなDNA組換え能を有する物質を用いることができる。【選択図】 なし配列表20050526A16333全文3 核酸増幅反応においてプライマーダイマーに結合する物質をサンプルに添加することを特徴とする、プライマーダイマー形成に伴う非特異的な増幅反応を抑制する方法。 プライマーダイマーに結合する物質が、ミスマッチ認識能を有する物質である請求項1の方法。 ミスマッチ認識能を有する物質が、ミスマッチ結合タンパク質である請求項2の方法。 ミスマッチ結合タンパク質が、MutS、MSH2、MSH6、またはこれらの混合物である請求項3の方法 プライマーダイマーに結合する物質を0.1%〜10%の濃度でサンプルに添加する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 プライマーダイマーに結合する物質を0.5%〜2%の濃度でサンプルに添加する請求項5の方法。 プライマーダイマーに結合する物質を0.7%〜1.3%の濃度でサンプルに添加する請求項6の方法。 プライマーダイマーに結合する物質が、DNA組換え能を有する物質である請求項1の方法。 DNA組換え能を有する物質が、DNA組換え酵素である請求項8の方法。 DNA組換え酵素が、RecAタンパク質、T4遺伝子または一本鎖結合タンパク質である請求項9の方法。 核酸増幅反応においてRecAタンパク質、MutS、MSH2及びMSH6からなる群から選択される一種以上のタンパク質をサンプルに添加することを特徴とする、非特異的な産物の合成及び/又は増幅を防止する方法。 目的とする核酸領域を増幅する方法であって、プライマーダイマーに結合する物質とプライマーとをサンプルに添加するステップと、前記サンプルをインキュベートするステップとを含むことを特徴とする方法。 標的核酸配列の有無を判定する方法であって、プライマーダイマーに結合する物質とプライマーとをサンプルに添加するステップと、前記サンプルをインキュベートするステップとを含むことを特徴とする方法。 標的核酸配列における変異、欠失及び/又は挿入の有無を判定する方法であって、プライマーダイマーに結合する物質とプライマーとをサンプルに添加するステップと、前記サンプルをインキュベートするステップとを含むことを特徴とする方法。 プライマーダイマーに結合する物質が、ミスマッチ認識能を有する物質である請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。 ミスマッチ認識能を有する物質が、ミスマッチ結合タンパク質である請求項15の方法。 ミスマッチ結合タンパク質が、MutS、MSH2、MSH6、またはこれらの混合物である請求項16の方法。 プライマーダイマーに結合する物質が、DNA組換え能を有する物質である請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。 DNA組換え能を有する物質が、DNA組換え酵素である請求項18の方法。 DNA組換え酵素が、RecAタンパク質、T4遺伝子または一本鎖結合タンパク質である請求項19の方法。 核酸増幅方法が、PCR法である請求項12〜20のいずれか1項に記載の方法。 核酸増幅反応が、等温増幅法である請求項12〜20のいずれか1項に記載の方法。 等温増幅反応が、SDA法、3SR法、NASBA法、TMA法、Qベータリプリカーゼ法、LAMP法、ICAN法からなる群から選択される方法である請求項22の方法。 プライマーが、標的核酸配列を増幅できる少なくとも2種のプライマーセットを含んでなり、 前記プライマーセットに含まれる第一のプライマーは、標的核酸配列の3’末端部分の配列(A)にハイブリダイズする配列(Ac’)を第一のプライマーの3’側に含み、かつ前記標的核酸配列において前記配列(A)よりも5’側に存在する配列(B)の相補配列(Bc)にハイブリダイズする配列(B’)を前記配列(Ac’)の5’側に含んでなり、 前記プライマーセットに含まれる第二のプライマーは、前記標的核酸配列の相補配列の3’末端部分の配列(C)にハイブリダイズする配列(Cc’)を3’末端部分に含んでなり、かつ相互がハイブリダイズする2つの核酸配列を同一鎖上に含む折り返し配列(D−Dc’)を前記配列(Cc’)の5’側に含んでなる ことを特徴とする請求項12〜23のいずれか1項に記載の方法。