生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_非標識バイオチップ
出願番号:2005066653
年次:2006
IPC分類:G01N 33/543,G01N 21/27


特許情報キャッシュ

遠藤 達郎 民谷 栄一 JP 2006250668 公開特許公報(A) 20060921 2005066653 20050310 非標識バイオチップ 遠藤 達郎 505089485 民谷 栄一 395015227 庄司 隆 100088904 資延 由利子 100124453 大杉 卓也 100135208 遠藤 達郎 民谷 栄一 G01N 33/543 20060101AFI20060825BHJP G01N 21/27 20060101ALI20060825BHJP JPG01N33/543 595G01N21/27 C 11 1 OL 13 2G059 2G059AA01 2G059BB13 2G059CC16 2G059CC17 2G059DD13 2G059EE02 2G059FF11 本発明は局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ、該チップの製造方法、並びに該チップを用いての多検体の検出方法、スクリーニング方法に関する。 従来酵素や抗体、DNAなどといった生体分子の高い認識能を利用した目的物質の検出および定量には、アルカリホスホターゼやペルオキシダーゼ等で生体分子を標識し、電気信号を増幅させる電気化学的測定手法や酵素反応による発色、蛍光の程度により目的物質を検出・定量するELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)法が主に用いられている。また、電気化学的手法では、電極表面へ目的物質を特異的に認識する生体分子を認識素子として固定化し、認識素子へ目的物質が結合した際に生じる電気化学的なシグナル変化あるいは酵素などの標識物質によるシグナル増幅を検出し、定量を行うものである。また、ELISA法においては生体分子と目的物質との結合後にあらかじめ標識した酵素による酵素反応や蛍光分子による、目的物質の濃度に依存した発色もしくは蛍光を検出する手法である。しかしながら、これらの測定手法では、生体分子へ標識作業を必要とし、一連の作業に長い時間を要するとともに、生体分子が有する高い認識能の阻害を招くことから、目的物質の微量測定や、高感度測定が困難である。また、簡便な測定手法として注目されているイムノクロマト法でも金コロイドやポリスチレン粒子等の修飾が必要である。これら背景から、生体分子へ酵素や蛍光分子などを標識することなく(非標識)、目的物質の検出および定量が行える測定手法が望まれてきた。そこで、非標識での目的物質の検出および定量が可能な共鳴角のシフトを検出する表面プラズモン共鳴(Surface plasmon resonance : SPR)法や振動数変化を検出する水晶振動子(Quartz crystal microbalance : QCM)法、また、共振周波数変化を検出するカンチレバーによる非標識に目的物質の検出・定量手法が開発されている。 電気化学的手法あるいはELISA法などの従来の生体分子を用いた目的物質の検出・定量システムでは、目的物質あるいは認識素子として用いる生体分子へ酵素や蛍光物質などの標識剤を必要とする。この標識作業は、従来高い認識能を有する生体分子の認識能を阻害すると同時に、標識作業を必要とするため、感度の低下および操作の煩雑化を招いている。また、これまでに開発された非標識測定法のSPR法の場合、共鳴角シフトを検出するために大型の光学系を構築する必要があるとともに、一連の操作が煩雑である。そのためオンサイトでの目的物質のモニタリングに適さない。また、QCM法では、簡便に測定は可能ではあるが、ノイズが大きく、高感度測定には適さない。そしてカンチレバー法ではデバイス作製が非常に困難という点とともに、簡易測定には適さないという点がある。 上記測定法とは別に、金や銀、白金などのナノメートルオーダーでの貴金属微粒子に発現する非線形光学現象である局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を利用した測定法がある。これらの先行文献として、特許公開2002-365210、2002-253233がある。特許公開2002-365210号公報特許公開2002-253233号公報 上記特許文献記載の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップでは、細密かつ再現良く単一の粒子層が形成できず、洗浄操作などの課程において、粒子の脱離も発生し、そのため低感度化を引き起こす。また、分子量の大きい分子認識素子を固定化することができず、検出対象が限定され、さらに多種類の分子認識素子を固定化することができず、スクリーニング用途として適用できない。 本発明は、上記記載した問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、良好な感度が得られ、かつ細胞のような分子量の大きい分子認識素子を固定化し、相互作用の検出および定量を可能とした局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップを提供することである。本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、基板上に配置された金属膜(第1層)、該金属膜上に結合し得る官能基を有する自己組織化単分子膜層(第2層)、該自己組織化単分子膜層上と共有結合を介して固定化した粒子層(第3層)、該粒子層上に配置された金属膜(第4層)を含む局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップでは、分子量が大きい分子認識素子が固定化可能であり、さらに良好な感度が得られることを見出し、本発明を完成した。 本発明は、つまり本発明は以下よりなる。「1.基板、該基板上に配置された金属膜(第1層)、該金属膜上に結合し得る官能基を有する自己組織化単分子膜層(第2層)、該自己組織化単分子膜層上と共有結合を介して固定化された粒子層(第3層)、該粒子層上に配置された金属膜(第4層)を含むことを特徴とする局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ。2.前記粒子層(第3層)が、単一粒子層であることを特徴とする前項1に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ。3.前記金属膜(第1層)の膜厚が20〜40nm、前記金属膜(第4層)の膜厚が30〜50nmであることを特徴とする前項1又は2に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ。4.前項1−3のいずれか1に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップの金属膜(第4層)上に分子認識素子が固定化されていることを特徴とする局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー。5.前項1−3のいずれか1に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップの金属膜(第4層)上が複数の領域に区画されることなく複数の分子認識素子が固定化されていることを特徴とする局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー。6.前記分子認識素子が、以下のいずれか1又は1以上から選択されることを特徴とする前項4又5に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー。(1)抗体、(2)抗原、(3)DNA、(4)PNA、(5)細胞7.粒子層(第3層)を共有結合を介して自己組織化単分子膜層(第2層)上に単一粒子層に固定化する工程を含む、前項1―3のいずれか1に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップの製造方法。8.前記粒子層(第3層)を共有結合を介して自己組織化単分子膜層(第2層)上に単一粒子層に固定化する方法が、shaker法であることを特徴とする前項7に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップの製造方法。9.前項4に記載の分子認識素子が固定化されている局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサーと、目的物質を含む試料とを接触させて、該バイオセンサー 上に固定化された分子認識素子と目的物質との相互作用を検出および/または定量することを特徴とする、分子認識素子と相互作用する物質の測定する方法。10.前項5に記載の複数の領域に区画されることなく複数の分子認識素子が固定化されている局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサーと、候補目的物質を含む試料とを接触させて、該バイオセンサー 上の複数の分子認識素子と候補目的物質との相互作用を検出することを特徴とする、分子認識素子と相互作用する物質のスクリーニング方法。11.前項1−3のいずれか1に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ及び前項4―6のいずれか1に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサーの製造に使用する試薬の少なくとも1を含む、局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー用測定チップ又は局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー製造キット。」 本発明によれば、従来の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップと比較して、分子量が大きい分子認識素子が固定化可能な局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップチップを提供することができる。また本発明のチップは、抗原・抗体反応のみならずDNAや細胞を用いて、相互作用解析や、細胞代謝物の検出も可能であり、センサーの役割を果たすだけでなく、スクリーニング用途にも適用可能である。 本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップは、基板、金属膜の第1層、自己組織化単分子膜層の第2層、粒子層の第3層、金属膜の第4層を含む局在表面プラズモン共鳴(LSPR)センサーに使用されるものであって、照射された光を透過及び反射する部分、並びに分子認識素子を固定化する部分とを含む部材を言い、該センサーの本体に固着されるものであってもよく、また脱着可能なものであってもよい。 局在表面プラズモン共鳴(LSPR)の現象は、入射光の振動電場と金属微粒子などの内部の自由電子が、共鳴的に振動によるものである。この現象はバルクでの金や銀などでは起こることがない現象である。従って、可視領域における吸収スペクトルを測定することにより、試料中の目的物質の検出及び濃度を測定することができる。 本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップで使用することができる基板としては、例えば、局在表面プラズモン共鳴現象に影響を与えないものであればどのようなものでもよく、一般的にはガラス、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの白色光に対して透明な材料からなるもの、さらにはシリコン、石英等が使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。基板の厚さは特には限定されないが、通常0.1 〜20mm程度である。 本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップにおいて、「配置された」とは、金属膜が基板上に直接接触するように配置されている場合のほか、金属膜が基板に直接接触することなく、他の層を介して配置されている場合をも含む意味である。 本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップにおける金属膜としては、局在表面プラズモン共鳴が生じ得るようなものであれば特に限定されない。例えば、使用できる金属の種類としては、金、銀、銅、アルミニウム、白金等が挙げられ、それらを単独又は組み合わせて使用することができる。また、上記基板への付着性を考慮して、基板と金、銀等からなる層との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。 第1層及び第4層の金属膜の膜厚は任意であるが、高感度検出を考慮した場合、第1層及び第4層の膜厚は3〜100nm、好ましくは20〜60nmである、さらに好ましくは25-45nmである。なお、第1層と第4層の好適な組み合わせは、それぞれ20-40nm、30-50nmであり、さらに好ましくはそれぞれ30nm、40nmである。 本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップにおける第1層及び第4層の金属膜の形成は常法によって行えばよく、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気めっき法、無電解めっき法等によって行うことができる。好ましくは、均一に膜形成が可能な手法である、スパッタ法、蒸着法である。 本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップにおける第2層の「自己組織化単分子膜層」は、固体表面へ種々の分子が配向・集積された分子膜を意味する。第1層の金属表面にチオール基などの金属表面の原子と結合しうる官能基が存在し、さらにもう一方の末端に種々の官能基が存在している。具体的には、4,4'-dithiodibutylic acid (DDA)にて形成された単分子膜である。 本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップでは、「金属膜(第1層)上に結合し得る官能基を有する自己組織化単分子膜層(第2層)」とは、アルカンチオール化合物が金表面と反応し、Au-S結合するとともに、アルキル鎖同士の相互作用によって高い配向性を持つ単分子膜を意味する。現在ではチオール類のみならず基板結合部位としてジスルフィドやスルフィドを用いることでも形成が可能である。 具体的には、金属表面の原子と結合しうる官能基であるチオール基を介して金属膜上に固定化されている。また、チオールを有する試薬として、例えば、4,4'-dithiodibutylic acid (DDA)がある。 さらに、本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップにおける、第2層の形成は常法によって行えばよく、例えば、金属表面の原子と結合しうる官能基を含有する少なくとも1種類以上のシランカップリング剤により形成することができる。シランカップリング剤とは、その分子中にビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基のような有機材料と親和性のある有機官能基と、メトキシ基、エトキシ基のような無機材料と親和性のある加水分解基を有する有機ケイ素化合物のことをいう。 本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップにおける、「粒子」は、局在表面プラズモン共鳴に影響を与えないようなものであれば特に限定されない。例えば、使用できる粒子の種類としては、誘電体粒子等である。具体的には、ポリスチレン粒子、ポリエチレン粒子、シリカ粒子、ガラス粒子等が挙げることができる。また、誘電体粒子の直径は、3〜200nm、好ましくは70〜120nm、さらに好ましくは100nmである。また、使用する粒子の粒径に応じて、局在プラズモン共鳴が励起される波長域が異なる。 本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップにおける第3層の「自己組織化単分子膜層上と共有結合を介して固定化された粒子層」は、粒子が第2層へ細密に二次元的な層が形成された状態を意味する。また、検出感度を向上させるために好適には、粒子層は単一粒子層であることが望ましい。 さらに、本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップにおける、第3層の形成は、表面修飾がなされた粒子を第2層の表面と化学結合によって行うことができる。具体的には、粒子の表面のアミノ基が第2層の自己組織化単分子膜上のカルボキシル基と共有結合(アミド結合)を行うことである。 さらに、第3層を単一粒子層とするために、従来の表面修飾した粒子溶液を、単に第2層表面へ展開したのではなく、粒子溶液を第2層である自己組織化単分子膜層表面へ展開する際に、shakerを用いて、自己組織化単分子膜層表面へ均一に、粒子がいきわたるようにすることで、細密かつ単一粒子の粒子層を形成することが可能となる。なお、このような方法を「shaker法」と称する。 本発明の分子認識素子は、特異結合物質が存在しうる全ての物質である。すなわち、分子認識素子は、試料中の目的物質又は候補目的物質と特異的に結合できかつ金属膜に固定化できればどのようなものでもよい。例えば、抗原に対しては抗体、抗体に対しては抗原、ハプテンに対しては抗ハプテン抗体、抗ハプテン抗体に対してはハプテン、DNAに対してはハイブリダイズすることができるDNA又はPNA、ビオチンに対してはアビジンあるいはストレプトアビジン、アビジンあるいはストレプトアビジンに対してはビオチンあるいはビオチン化タンパク、ホルモン受容体(例えばインスリン受容体)に対してはホルモン(例えばインスリン)、ホルモン(例えばインスリン)に対してはホルモン受容体(例えばインスリン受容体)、レクチンに対しては対応する糖鎖、糖鎖に対しては対応するレクチンなどが分子認識素子の例として挙げられる。また、分子認識素子は、特異的結合能を有するそれらのフラグメントあるいはサブユニットなどをも含む。さらに、細胞自体を分子認識素子として選択可能であり、この場合の目的物質又は候補目的物質は、該細胞のある一部(受容体等)を特異的に認識するものでよい。なお、実施例の分子認識素子として、PNA、抗体(抗Fibriogen抗体、抗Dinitrophenyl(DNP)抗体)、細胞(マウス脾臓中に存在するB細胞)を使用した。 さらに、本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップにおける、分子認識素子の金属膜(第4層)への固定化は、物理的吸着、化学結合によって行うことができる。しかしこれらの方法に限定されない。 本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップにおける、分子認識素子の第4層の金属膜への固定化は、化学結合で行うことができる。また、分子認識素子を化学結合で金属膜(第4層)に固定化するために、分子認識素子と結合することができる官能基を別途導入してもよい。例えば、金属膜(第4層)表面に3−メルカプトプロピルトリメトキシシランで処理後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ化シランカップリング剤で再び処理して、該表面にアミノ基を導入することもできる。アミノ化シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシランなどが挙げられる。あるいは、例えば、金属膜(第4層)表面に3−メルカプトプロピルトリメトキシシランと3−アミノプロピルトリエトキシシランの混合物を同時に処理することで、1段階で、金属膜(第4層)表面にアミノ基を導入を導入することができる。 また、自体公知のスポッター装置を用いて金属膜(第4層)上の複数の領域に区画されることなく複数の分子認識素子を固定化することができ、多検体検出用又はスクリーニング用局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップとすることができる。また、金属膜(第4層)の全面に分子認識素子を固定化する必要はなく、高価並びに合成又は抽出が困難な貴重な物質を分子認識素子として利用することができる。ここで、「複数」とは、2種以上の分子認識素子を意味する。 本発明の目的物質は、分子認識素子と特異的に結合できるものを指す。種類によって分類すると、目的物質は、抗原、抗体、レセプター、リガンド、レクチン、糖鎖化合物、RNA、DNA、PNA、ハプテンなどが挙げられる。目的物質の機能から分類すると、ホルモン、イムノグロブリン、凝固因子、酵素、薬剤などと呼ばれるものを含む。物質名では、血清アルブミン、マクログロブリン、フェリチン、α−フェトプロテイン、CEA、前立腺特異抗原(PSA)、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)、HIV−1p24などが目的物質の例として挙げられる。なお、実施例の目的物質としては、DNA、抗原(Fibriogen抗原、Dinitrophenyl抗原)、細胞代謝産物である。 また、候補目的物質とは、分子認識素子と特異的に結合することが予測される物質群であり、本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップを用いたスクリーニングによって決定される。具体的な物質名は、目的物質と同じである。 また、試料は、目的物質又は候補目的物質を含む溶液を示す。例としては、血液、唾液、尿、鼻汁、涙液、糞便、組織抽出液、培養液等などが挙げられるが、これらに限定されない。 本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップは、上記分子認識素子を固定化することにより本発明の局在プラズモン共鳴センサーとすることができる。 また、本発明の局在プラズモン共鳴センサーは、通常の用いられる方法であるチップ上の分子認識素子が固定化された部分に対して垂直方向の入射光を照射し、その反射光に対する吸収スペクトルを分光器を用いて測定する。 また、本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップは、粒子を共有結合させて単一粒子層の形成を行うことで、粒子層の細密化を実現でき、従来のLSPR局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップのように粒子層を区画する必要がなく、複数の分子認識素子を固定化できる。よって、従来の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップと比較して大面積の(20mm×60mm)の基板をも用いることができる。これにより、本発明の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップは、分子認識素子、使用用途、サンプル数、試料量に柔軟に対応することが可能である。(分子認識素子と相互作用する物質の検出および/または定量方法) 試料中の目的物質の測定は以下のように行われる。1)スポッターや分注器を用いて分子認識素子のチップ表面への固定化2)目的物質の非特異的吸着を防ぐため、ウシ血清アルブミンやカゼインを用いたブロッキング操作3)スポッターや分注器を用いた目的物質の添加4)分子認識素子と目的物質との相互作用5)界面活性剤やその他分子認識素子と相互作用をしない試薬を用いた洗浄操作による非特異的吸着の除去6)分光器を用いた吸収スペクトル測定 なお、ここで「相互作用」とは、分子認識素子が、試料中の目的物質又は候補目的物質と特異的に認識することをだけを意味するのではなく、例えば、疎水性相互作用、静電的相互作用等の何らかの影響を与えることも意味する。(分子認識素子と相互作用する物質のスクリーニング方法) 試料中の候補目的物質の測定は以下のように行われる。1)スポッターや分注器を用いて分子認識素子のチップへの固定化2)候補目的物質の非特異的吸着を防ぐため、ウシ血清アルブミンやカゼインを用いたブロッキング操作3)スポッターや分注器を用い候補目的物質の添加4)分子認識素子と候補目的物質との相互作用5)界面活性剤やその他分子認識素子と相互作用をしない試薬を用いた洗浄操作による非特異的吸着の除去6)分光器を用いた吸収スペクトル測定(キット) 本発明の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ及び局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサーの製造に使用する少なくとも1の試薬を局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ又は局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー製造用キットとすることができる。該キットの購入者は、目的物質又は候補目的物質を選択し、目的物質又は候補目的物質に対応する分子認識素子を本発明の局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー用測定チップに固定化し、局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー装置を用意に製造することができる。なお、キット中の試薬例としては、局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー用測定チップ、固定化試薬、ブロッキング試薬、洗浄試薬等が挙げられるが、これらには限定されない。 以下で本発明を実施例によって説明するが、本発明は、基板上に配置された金属膜(第1層)、該金属膜上に結合し得る官能基を有する自己組織化単分子膜層(第2層)、該自己組織化単分子膜層上と共有結合を介して固定化した粒子層(第3層)、該粒子層上に配置された金属膜(第4層)を含むことを特徴とする局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップであって、この基本原理を含む限り本発明はその対象を限定するものではない。 以下の方法により局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップの作製を行った。スライドガラス表面(75nm×25nm)に、金を真空蒸着にて膜厚30nmに堆積させた(第1層)。続いて、第1層表面へ1mM 4,4'-Dithiodibutyric acid(DDA)を用いて自己組織化単分子層(Self assembled monolayer: SAM)形成をした(第2層)。そして、第2層表面へ400 mM EDCを添加し、該表面へ導入されたカルボキシル基の活性化を行った後、3-aminopropyltriethoxyxsilane(γ-APTES)にて、表面修飾を行った粒径100 nmのシリカ粒子を第2層表面へ共有結合させた(第3層)。なお、第2層表面への単一粒子層の形成にはshaker法を用いた。そして超純水を用いた洗浄操作による残余シリカ微粒子の除去の後、第3層表面へ金蒸着(40nm)を行い、局在表面プラズモン共鳴用測定チップとした。 次に、バネ定数18 N/mのAFMプローブを用いてタッピングモード条件にて、作製したチップ表面を走査し、表面解析を行った。 なお、局在表面プラズモン共鳴用測定チップの作製方法の概略図を図1に示す。 図2に、実施例1で作製した局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ表面のAFM画像の結果を示す。図2により、第3層の粒子層が単一粒子層を形成していた。(DNA-peptide nucleic acid (PNA)相互作用のモニタリング) PNAはDNAと構造が類似しており、化学的にも安定であるという長所から、医薬などへの応用が期待されている。そこで、実施例1で作製した局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップへPNAプローブを固定化し、PNA-DNA相互作用の検出および定量を行った。 実地例1で作製したチップへ、PNAプローブ(配列番号1:5'-Biotin- ACC ACC ACT TC -3')の固定化を行った。PNAプローブの固定化には、チップ表面へ1mM DDAを用いてSAMを形成した後、400mM EDCにてDDA末端カルボキシル基を活性化させ、100mM NHSを結合させた。そして、ストレプトアビジンとNHS活性基を結合させた後、1μM のPNAプローブ溶液を添加し、PNAプローブ末端に修飾したビオチンとストレプトアビジンとのアビジン-ビオチン結合によってプローブの固定化を行った。そしてPNAプローブ固定化チップ表面へ、相補鎖となるDNA(配列番号2:5' - GGT TTC GAA GTG GTG GTC TTG -3')あるいはミスマッチDNA(配列番号3:5'- GGT TTC GAA GCG GTG GTC TTG -3')を添加し、特異的な結合である相互作用をさせた後、吸収スペクトル変化の観察を行った。 図3に、PNA-DNA相互作用の検出および定量の結果を示す。相補鎖DNA(ターゲットDNA)の検出限界は10 pMであった。また、PNA固定化局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップでは1μMのミスマッチDNA溶液を添加した場合、吸収スペクトルの変化は検出されなかった。よって本発明のPNA固定化局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップは、生体分子相互作用の特異的検出および低濃度の定量を行うことができた。(抗原抗体反応の検出および定量・多検体検出) 実施例1で作製したチップへ、スポッター装置(Biodot社 Biojet quanti 3000)を用いて、100μg/ml抗Fibrinogen抗体(140スポット)および抗Dinitrophenyl(DNP)抗体(140スポット)を固定化し、チップ上へ計280スポットの抗体固定化部位を有するアレイ状の局在プラズモン共鳴マルチバイオセンサーとした。そのチップ表面の各スポットへ異なる濃度のFibrinogen抗原溶液を滴下し、吸収スペクトル変化の観察を行った。 チップ上の抗体が固定化された任意のスポット(図4の左図:Antibody immobilized region)は、抗体が固定されていない任意のスポット(図4の左図:Bare gold region)と比較して吸収スペクトルの変化が観察された(図4の左図)。また、チップ上の抗Fibrinogen抗体が固定化された各スポットにおいては、抗原濃度(Fibrinogen)に応じた吸収スペクトルの変化が観察された(図4の右図:●:Anti-fibrinogen antibody)。なお、抗原濃度の検出限界は、1 pg/mlであった。また、抗Dinitrophenyl(DNP)抗体が固定化された各スポットにおいては、各濃度のFibrinogenを添加しても、吸収スペクトル変化が観察されなかった(図4の右図:×:Anti-DNP antibody)。よって、本発明のPNA固定化局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップは、多検体検出および低濃度の目的物質の検出を行うことができ、さらにはスクリーニング用途としても利用できる。(細胞刺激による代謝物の検出) 実地例1より作製したチップ表面へ一定濃度(107個/ml)の摘出したマウス脾臓細胞を添加し、IgMを用いて脾臓細胞中に存在するB細胞を刺激し、時間変化に伴う、細胞代謝物の検出を行った。 細胞刺激後の細胞代謝物の検出を行った結果、時間を追うごとに吸収スペクトル変化が観察され、細胞代謝物の検出を行うことが可能であった(図5:Cell+IgM)。また、細胞+IgM(Cell+IgM)は、コントロール実験の細胞のみ(Only cells)、IgMのみ(Only IgM)での吸収スペクトルと比較した結果、これらのコントロール実験よりも大きい吸収スペクトル変化が観察された(図5)。よって、本発明のPNA固定化局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップは、分子量の大きい細胞を分子認識素子として使用ができ、さらに目的物質である細胞代謝物の継時的検出及び定量が可能である。 本発明によれば、分子量が大きい分子認識素子が固定化可能な局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップチップを提供することができる。また本発明のチップは、抗原・抗体反応のみならずDNAや細胞を用いて、相互作用解析や、細胞代謝物の検出も可能であり、センサーの役割を果たすだけでなく、スクリーニング用途にも適用可能である。局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ作製の概略図局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップの表面のAFM画像PNA-DNA相互作用の検出および定量の結果抗原・抗体結合の多検体検出および定量の結果細胞代謝物の継時的検出及び定量の結果符号の説明 1 第1層 2 第2層 3 第3層 4 第4層基板、該基板上に配置された金属膜(第1層)、該金属膜上に結合し得る官能基を有する自己組織化単分子膜層(第2層)、該自己組織化単分子膜層上と共有結合を介して固定化された粒子層(第3層)、該粒子層上に配置された金属膜(第4層)を含むことを特徴とする局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ。前記粒子層(第3層)が、単一粒子層であることを特徴とする請求項1に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ。前記金属膜(第1層)の膜厚が20〜40nm、前記金属膜(第4層)の膜厚が30〜50nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ。前記請求項1−3のいずれか1に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップの金属膜(第4層)上に分子認識素子が固定化されていることを特徴とする局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー。前記請求項1−3のいずれか1に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップの金属膜(第4層)上が複数の領域に区画されることなく複数の分子認識素子が固定化されていることを特徴とする局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー。前記分子認識素子が、以下のいずれか1又は1以上から選択されることを特徴とする請求項4又5に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー。(1)抗体、(2)抗原、(3)DNA、(4)PNA、(5)細胞粒子層(第3層)を共有結合を介して自己組織化単分子膜層(第2層)上に単一粒子層に固定化する工程を含む、請求項1―3のいずれか1に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップの製造方法。前記粒子層(第3層)を共有結合を介して自己組織化単分子膜層(第2層)上に単一粒子層に固定化する方法が、shaker法であることを特徴とする請求項7に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップの製造方法。請求項4に記載の分子認識素子が固定化されている局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサーと、目的物質を含む試料とを接触させて、該バイオセンサー 上に固定化された分子認識素子と目的物質との相互作用を検出および/または定量することを特徴とする、分子認識素子と相互作用する物質の測定する方法。請求項5に記載の複数の領域に区画されることなく複数の分子認識素子が固定化されている局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサーと、候補目的物質を含む試料とを接触させて、該バイオセンサー 上の複数の分子認識素子と候補目的物質との相互作用を検出することを特徴とする、分子認識素子と相互作用する物質のスクリーニング方法。請求項1−3のいずれか1に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップ及び請求項4―6のいずれか1に記載の局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサーの製造に使用する試薬の少なくとも1を含む、局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー用測定チップ又は局在プラズモン共鳴(LSPR)バイオセンサー製造キット。 【課題】良好な感度が得られ、かつ細胞のような分子量の大きい分子認識素子を固定化可能とした局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップを提供することである。【解決手段】基板上に配置された金属膜(第1層)、該金属膜上に結合し得る官能基を有する自己組織化単分子膜層(第2層)、該自己組織化単分子膜層上と共有結合を介して固定化した粒子層(第3層)、該粒子層上に配置された金属膜(第4層)を含む局在表面プラズモン共鳴(LSPR)用測定チップからなる。【選択図】図1配列表


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