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タイトル:公開特許公報(A)_成形用アルミニウム合金板
出願番号:2005065885
年次:2006
IPC分類:C22C 21/06,B22D 11/00,B22D 11/06,G01N 25/20,C22C 1/02,C22F 1/00,C22F 1/047


特許情報キャッシュ

松本 克史 JP 2006249480 公開特許公報(A) 20060921 2005065885 20050309 成形用アルミニウム合金板 株式会社神戸製鋼所 000001199 梶 良之 100089196 須原 誠 100104226 松本 克史 C22C 21/06 20060101AFI20060825BHJP B22D 11/00 20060101ALI20060825BHJP B22D 11/06 20060101ALI20060825BHJP G01N 25/20 20060101ALI20060825BHJP C22C 1/02 20060101ALN20060825BHJP C22F 1/00 20060101ALN20060825BHJP C22F 1/047 20060101ALN20060825BHJP JPC22C21/06B22D11/00 EB22D11/06 330BG01N25/20 BC22C1/02 503JC22F1/00 604C22F1/00 623C22F1/00 630AC22F1/00 630KC22F1/00 631ZC22F1/00 681C22F1/00 682C22F1/00 683C22F1/00 685ZC22F1/00 686BC22F1/00 691BC22F1/00 691CC22F1/00 692AC22F1/00 692BC22F1/00 694AC22F1/047 2 1 OL 18 2G040 4E004 2G040AA02 2G040AB12 2G040BA08 2G040CA01 2G040EB02 2G040EC08 4E004DA13 4E004NA05 4E004NB07 4E004NC08 本発明は、Mg含有量が8%を超えた高Mg含有Al-Mg 系アルミニウム合金板であって、高いプレス成形性を有するアルミニウム合金板に関するものである。 近年、自動車などの輸送機の車体分野では、近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、自動車の車体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、圧延板や押出形材など、より軽量なAl合金材適用が増加しつつある。 この内、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどの自動車ボディパネル (パネル構造体) の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内板) 等のパネルには、Al-Mg 系のAA乃至JIS 5000系 (以下、単に5000系、あるいはAl-Mg 系と言う) アルミニウム合金板や Al-Mg-Si 系のAA乃至JIS 6000系アルミニウム合金板の使用が検討されている。 前記自動車ボディパネル用のアルミニウム合金板 (以下、アルミニウムをAlとも言う) には、高プレス成形性が要求される。この成形性の点からは、前記Al合金のなかでも、強度・延性バランスに優れたAl-Mg 系Al合金が有利である。 このため、従来から、Al-Mg 系Al合金板に関して、成分系の検討や製造条件の最適化検討が行われている。このAl-Mg 系Al合金としては、例えばJIS A 5052、5182等が代表的な合金成分系である。しかし、このAl-Mg 系Al合金でも冷延鋼板と比較すると延性に劣り、成形性に劣っている。 これに対し、Al-Mg 系Al合金は、Mg含有量を増加させて、8%を超える高Mg化させると、強度延性バランスが向上する。しかし、このような高MgのAl-Mg 系合金は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法では、工業的に製造することは困難である。この理由は、鋳造の際に鋳塊にMgが偏析したり、通常の熱間圧延では、Al-Mg 系合金の延性が著しく低下するために、割れが発生し易くなるからである。 一方、高MgのAl-Mg 系合金を、上記割れの発生する温度域を避けて、低温での熱間圧延を行うことも困難である。このような低温圧延では、高MgのAl-Mg 系合金の材料の変形抵抗が著しく高くなり、現状の圧延機の能力では製造できる製品サイズが極端に限定されるためである。 また、高MgのAl-Mg 系合金のMg含有許容量を増加させるために、FeやSi等の第三元素を添加する方法等も提案されている。しかし、これら第三元素の含有量が増えると、粗大な金属間化合物を形成しやすく、アルミニウム合金板の延性を低下させる。このため、Mg含有許容量の増加には限界があり、Mgが8%を超える量を含有させることは困難であった。 このため、従来から、高MgのAl-Mg 系合金板を、双ロール式などの連続鋳造法で製造することが種々提案されている。双ロール式連続鋳造法は、回転する一対の水冷銅鋳型 (双ロール) 間に、耐火物製の給湯ノズルからアルミニウム合金溶湯を注湯して凝固させ、かつ、この双ロール間において、上記凝固直後に圧下し、かつ急冷して、アルミニウム合金薄板とする方法である。この双ロール式連続鋳造法はハンター法や3C法などが知られている。 双ロール式連続鋳造法の冷却速度は、従来のDC鋳造法やベルト式連続鋳造法に較べて1〜3桁大きい。このため、得られるアルミニウム合金板は非常に微細な組織となり、プレス成形性などの加工性に優れる。また、鋳造によって、アルミニウム合金板の板厚も比較的薄い1〜13mmのものが得られる。このため、従来のDC鋳塊(厚さ200 〜 600mm)のように、熱間粗圧延、熱間仕上げ圧延等の工程が省略できる。さらに鋳塊の均質化処理も省略出来る場合がある。 このような双ロール式連続鋳造法を用いて製造した高MgのAl-Mg 系合金板の、成形性向上を意図して組織を規定した例は、従来においても提案されている。例えば、6 〜10% の高MgであるAl-Mg 系合金板の、Al-Mg 系の金属間化合物の平均サイズを10μm 以下とした、機械的性質に優れた自動車用アルミニウム合金板が提案されている (特許文献1参照) 。また、10μm 以上のAl-Mg 系金属間化合物の個数を300 個/mm2以下とし、平均結晶粒径が10〜70μm とした自動車ボディーシート用アルミニウム合金板なども提案されている (特許文献2参照) 。特開平7 −252571号公報 (特許請求の範囲、1 〜2 頁)特開平8 −165538号公報 (特許請求の範囲、1 〜2 頁) これら特許文献1 、2 の通り、鋳造の際に晶出するAl-Mg 系金属間化合物は、プレス成形の際に破壊の起点となりやすい。したがって、双ロール式連続鋳造法を用いて製造した高MgのAl-Mg 系合金板のプレス成形性を向上させるためには、これらAl-Mg 系金属間化合物(Al-Mg 系化合物とも言う)を、特許文献1 、2 の通り、微細化させる、あるいは粗大なものを少なくすることが有効である。また、板の結晶粒を微細化させることもプレス成形性向上に有効である。 しかし、双ロール式連続鋳造法における冷却速度(鋳造速度)を速くして、鋳造の際に晶出するAl-Mg 系金属間化合物を抑制し得たとしても、更にその後の工程では、連続鋳造後の室温までの冷却の他にも、冷間圧延前の均質化熱処理、冷間圧延途中の中間焼鈍、冷間圧延後の溶体化処理など、板状鋳塊または薄板を400 ℃以上の温度に加熱する、あるいは加熱された板状鋳塊または薄板を冷却する工程が、工程設計上、選択的に入ってくる。そして、これらの熱履歴工程で、β相と称せられるAl-Mg 系金属間化合物が発生する可能性は十分にある。 したがって、単に、Al-Mg 系金属間化合物の発生を抑制することは難しく、新たに、例え、Al-Mg 系金属間化合物が存在しても、このAl-Mg 系金属間化合物の存在形態などを制御して、高MgのAl-Mg 系合金板のプレス成形性を向上させる技術が必要になっていると言える。 本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、双ロール式連続鋳造あるいはDC鋳造と、その後の熱履歴工程で必然的に発生するAl-Mg 系金属間化合物の存在状態を制御して、プレス成形性を向上させた高MgのAl-Mg 系合金板の製造方法を提供することである。 この目的を達成するために、本発明成形用アルミニウム合金板の要旨は、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl-Mg 系アルミニウム合金板であって、この板の融解過程における熱的変化を示差熱分析により測定して得られた固相からの加熱曲線の50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さが50.0μW 以上であることとする。 本発明者らは、双ロール式連続鋳造によって製造された高MgのAl-Mg 系合金板組織中の、β相と称せられるAl-Mg 系金属間化合物の存在形態について、プレス成形性を阻害する存在形態か否かについて、高MgのAl-Mg 系合金板の示差熱分析(DSC) により判別可能であることを知見した。 より具体的には、高MgのAl-Mg 系合金板の融解過程における熱的変化を示差熱分析により測定した場合、得られた固相からの加熱曲線の50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さは、室温におけるAl-Mg 系金属間化合物の固溶、析出状態の安定性、特に析出状態が安定であるか準安定であるかと、よく相関していることを知見した。 因みに、室温におけるAl-Mg 系金属間化合物の析出状態が安定であるほど、高MgのAl-Mg 系合金板の強度−延性バランスが低くなり、プレス成形性が低下する。 一方、室温におけるAl-Mg 系金属間化合物の析出状態が準安定 (不安定) であるほど、高MgのAl-Mg 系合金板の強度−延性バランスが高くなり、プレス成形性が向上する。 前記示差熱分析における、固相からの加熱曲線の50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さは、Al-Mg 系金属間化合物析出物の再固溶量を表している。この吸熱ピーク高さが高いほど、Al-Mg 系金属間化合物析出物の再固溶量が多くなる。そして、この再固溶量が多いほど、室温における(プレス成形される)板のAl-Mg 系金属間化合物の析出状態が安定では無く、準安定であることを意味している。 室温におけるAl-Mg 系金属間化合物は安定に析出しているほど、より高温でないと再固溶せず、前記示差熱分析における固相からの加熱曲線において、上記低温での吸熱ピーク高さは低くなる。 一方、室温におけるAl-Mg 系金属間化合物は準安定なほど、より低温で再固溶しやすく、前記示差熱分析における固相からの加熱曲線において、上記50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さは高くなる。 本発明では、以上のように、単に、Al-Mg 系金属間化合物の発生を単に抑制するのでは無く、例え、Al-Mg 系金属間化合物が存在しても、このAl-Mg 系金属間化合物の存在形態を制御して、高MgのAl-Mg 系合金板のプレス成形性を向上させるものである。 なお、このAl-Mg 系金属間化合物は、ナノレベル以下の大きさであり、10万倍の透過型電子顕微鏡(FE-TEM)でも識別が難しい。また、本発明で言う、安定と準安定というAl-Mg 系金属間化合物の存在状態は、通常の固溶、析出状態を問題とする組織判別とは、また別の観点であり、TEM などのミクロ組織観察では判別できない。 しかも、これらFE-TEMなどのミクロ組織観察は、当然、板の超局所的な分析となるため、分析箇所や個数を増しても、板のマクロ的な特性であるプレス成形性を代表している、相関しているとは、必ずしも言い難い。 (DSC ) 図1に、後述する実施例の各発明例、比較例の高MgのAl-Mg 系合金板の示差熱分析(DSC) により測定した場合の、固相からの加熱曲線を示す。図1の加熱曲線1 には、50〜100 ℃の間の吸熱ピークは、室温における準安定なAl-Mg 系金属間化合物の再固溶量を表している。この吸熱ピーク高さh が高いほど、室温における高MgのAl-Mg 系合金板組織中に準安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が多いことを表している。 高MgのAl-Mg 系アルミニウム合金板では、冷延後の溶体化処理および急冷時の過飽和固溶体から室温時効で、GPゾーンと呼ばれるAl-Mg 系金属間化合物が、非常に微細なレベルで析出しているものと推考される。 この吸熱ピーク高さh が高く、室温における(プレス成形される)高MgのAl-Mg 系合金板の、準安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が多いほど、強度−延性バランスが高くなり、プレス成形性が向上する。 本発明では、プレス成形性が向上する目安として、この50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さh を50.0μW 以上と規定する。50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さh が50.0μW 未満では、室温における準安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が減り、逆に室温における安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が増す。このために、特に、高MgのAl-Mg 系合金板の伸びが低下し、強度−延性バランスが低下して、プレス成形性が低下する。 ここで、本発明で用いる示差熱分析方法は、DSC とも略称される、公知の示差走査熱量測定方法である。その概要は、測定温度範囲において熱的に変化しない基準物質と、測定対象物質である高MgのAl-Mg 系合金板とを各々相等しい容器に入れ (基準物質自体を容器とする場合もある) 、両者を、等価な条件のもとで (周囲の温度を) 、一定速度で加熱しながら、両者間の温度差 (示差温度) を連続的に測定して行く。そして、この温度変化の状況から、定性的定量的な分析を行うものである。 高MgのAl-Mg 系合金板の示差熱分析の場合、前記基準物質としては、測定対象Al合金材よりも融点が十分高く、測定の再現性ある金属として、白金を選択するのが好ましいが、測定温度範囲が300 ℃以下の低温である場合は、通常のアルミ容器でも問題ない。 また、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さh は、前記図1 に示す固相からの加熱曲線 (示差走査熱分析曲線) の一点鎖線で示す基準線から吸熱ピークまでの距離 (μW)である。この基準線は、図1 に示すように、示差走査熱分析曲線の100 ℃以下の温度範囲において共通して生じる水平な直線部分E に沿って引き出した水平な直線とする。 本発明における示差熱分析に用いる示差熱分析計は、市販の示差熱分析計を適宜選択することができる。 なお、アルミニウム合金の分野でも、例えば、特開2002−115019号公報では耐溶接割れ性の評価に、また、特開平10-219382 号、特開2000-273567 号、特開2003−27170 号公報などでは、過剰Si型6000系Al合金材の組織として、室温時効抑制と低温時効硬化能を阻害するSi/ 空孔クラスター(GPI) などを制御するための指標として、この示差熱分析における吸熱ピークあるいは発熱ピークを用いている。そして、上記した示差熱分析方法も、これらの公報に開示されている。 (平均結晶粒径) Al合金板表面の平均結晶粒径は100 μm 以下に微細化させることが成形性を向上させる前提条件として好ましい。結晶粒径をこの範囲に細かく乃至小さくすることによって、プレス成形性が確保乃至向上される。結晶粒径が100 μm を越えて粗大化した場合、プレス成形性が著しく低下し、成形時の割れや肌荒れなどの不良が生じ易くなる。一方、平均結晶粒径があまり細か過ぎても、5000系Al合金板に特有の、SS (ストレッチャーストレイン) マークがプレス成形時に発生するので、この観点からは、平均結晶粒径は20μm 以上とすることが好ましい。 本発明で言う結晶粒径とは板の長手(L) 方向の結晶粒の最大径である。この結晶粒径は、Al合金板を0.05〜0.1mm 機械研磨した後電解エッチングした表面を、100 倍の光学顕微鏡を用いて観察し、前記L 方向にラインインターセプト法で測定する。1 測定ライン長さは0.95mmとし、1 視野当たり各3 本で合計5 視野を観察することにより、全測定ライン長さを0.95×15mmとする。 (化学成分組成) 本発明Al合金板における化学成分組成の、各合金元素の意義及びその限定理由について以下に説明する。本発明Al合金板は、基本的には、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部がAlおよび不可避的な不純物からなる化学成分組成とする。(Mg:8%を超え14% 以下) MgはAl合金板の強度、延性を高める重要合金元素である。Mgが8%以下の含有量では、強度、延性が不足して、高MgのAl-Mg 系Al合金の特徴が出ず、特に本発明が意図する自動車用パネルへのプレス成形性が不足する。一方、Mgを14% を越えて含有すると、連続鋳造の際の冷却速度を高めたり、焼鈍後の冷却速度を高めるなどの製造方法や条件の制御を行なっても、Al-Mg 系化合物の晶析出が多くなる。この結果プレス成形性が著しく低下する。また、加工硬化量が大きくなり、冷間圧延性も低下させる。したがって、Mgは8%を超え14% 以下の範囲とする。(Fe:1.0%以下、Si:0.5% 以下) FeとSiは、できるだけ少ない量に規制すべき不純物である。FeとSiは、Al-Mg-(Fe 、Si) などから成るAl-Mg 系化合物量や、Al-Fe 、Al-Si 系などのAl-Mg 系以外の化合物量となって多く生成する。Feの含有量が1.0%、Siの含有量が0.5%、を各々超えた場合には、これらの化合物量が過大となって、破壊靱性や成形性を大きく阻害する。この結果プレス成形性が著しく低下する。したがって、Feは1.0%以下、好ましくは0.5%以下、Siは0.5%以下、好ましくは0.3%以下に各々規制する。 この他、Mn、Cu、Cr、Zr、Zn、V 、Ti、B なども不純物元素であり、含有量は少ない方が良い。しかし、例えば、Mn、Cr、Zr、V には圧延板組織の微細化効果、Ti、B には鋳造板 (鋳塊) 組織の微細化効果などの効果もある。また、Cu、Znには、強度を向上させる効果もある。このため、これら効果を狙って、敢えて含有させる場合もあり、本発明板の特性である成形性を阻害しない範囲で、これら元素を一種または二種以上含有させることは許容される。これらの許容量は、各々、質量% で、Mn:0.3% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.1% 以下、B:0.05% 以下、Cu:1.0% 以下、Zn:1.0% 以下、である。 (製造方法) 以下に、本発明におけるAl-Mg 系Al合金板の製造方法につき説明する。 本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法でも良いが、この通常の製造方法では、前記した通り、高MgのAl-Mg 系Al合金板を効率良く鋳造し工業的に製造することが難しい。 したがって、本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板を工業的に製造する場合は、現状では、双ロール式などの連続鋳造と、熱間圧延を省略した、冷間圧延、焼鈍とを組み合わせて製造された、板厚0.5 〜3mm の板とすることが好ましい。 また、アルミニウム合金板の材質特性として、より高いプレス成形性を確実に達成するために、前記アルミニウム合金板が、前記双ロール式連続鋳造の際に、質量% で、Mg:8〜14% 、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部の内の97% 以上がAlからなるアルミニウム合金溶湯を、回転する一対の双ロールに注湯して、この双ロールの冷却速度を100 ℃/s以上として、板厚1 〜13mmの範囲に、連続的に鋳造して製造されたものであることが好ましい。 更に、より高いプレス成形性を確実に達成するためには、上記連続鋳造に際して、上記双ロール表面が潤滑されていないことが好ましい。 (双ロール式連続鋳造) 連続鋳造方法としては、双ロール式の他に、ベルトキャスター式、プロペルチ式、ブロックキャスター式などがある。しかし、高MgのAl-Mg 系Al合金板鋳造の際の冷却速度を後述する通り速くするためには、双ロール式連続鋳造が好ましい。 この双ロール式連続鋳造は、前記した通り、回転する一対の水冷銅鋳型などの双ロール間に、耐火物製の給湯ノズルから、上記成分組成のAl合金溶湯を注湯して凝固させ、かつ、この双ロール間において、上記凝固直後に圧下し、かつ急冷して、Al合金薄板とする。 (ロール潤滑) この際、双ロールとしては、潤滑剤によって表面が潤滑されていないロールを用いることが望ましい。従来では、溶湯がロール表面に接触および急冷されて、双ロール表面に造形される凝固殻の割れを防止するために、酸化物粉末 (アルミナ粉、酸化亜鉛粉等) 、SiC 粉末、グラファイト粉末、油、溶融ガラスなどの潤滑剤 (離型剤) を、双ロール表面に塗布あるいは流下させて用いることが一般的であった。しかし、これら潤滑剤を用いた場合、冷却速度が遅くなって、必要な冷却速度が得られない。このため、結晶粒が粗大となって、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板の成形性が低下する。 また、これら潤滑剤を用いた場合、双ロール表面において、潤滑剤の濃度や厚みの不均一によって、冷却のムラが生じやすく、板の部位によっては凝固速度が不十分となりやすい。このため、Mg含有量が高くなるほど、マクロ偏析やミクロ偏析が大きくなり、Al-Mg 系合金板の成形性を均一にすることが困難となる可能性が高くなる。 因みに、特開平1-202345号公報でも、3.5%以上のMgを含むAl-Mg 系合金板の双ロール式連続鋳造において、潤滑剤によって表面が潤滑されていないロールを用いて、冷却ムラによる、シミ欠陥 (表面偏析) を防止して、表面品質を向上させることが開示されている。しかし、その実施例で開示されているのは、5%までのMg量であり、本発明のようなMgが8%を超える高Mg量のAl-Mg 系合金板の開示は無い。即ち、本発明のようなMgが8%を超える高Mg量のAl-Mg 系合金板の領域での双ロール式連続鋳造において、潤滑剤を使用した方が良いのか、悪いのかは、その効果を含めて、全く不明であり、前記した通り、潤滑剤を使用する方が一般的であった。 (冷却速度) 例えば、鋳造する板厚が1 〜13mmの比較的薄板の範囲であっても、高MgのAl-Mg 系合金板の平均結晶粒径を微細化するためには、この双ロールによる鋳造の冷却速度は100 ℃/s以上のできるだけ速い速度が必要である。上記潤滑剤を用いた場合、理論計算上は冷却速度が速くても、実質的な、あるいは実際における冷却速度が実質的に100 ℃/s未満となりやすい。このため、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板の平均結晶粒径を微細化できず、プレス成形性が著しく低下する。 なお、この冷却速度は、直接の計測は難しいので、鋳造された板 (鋳塊) のデンドライトアームスペーシング (デンドライト二次枝間隔、:DAS) から公知の方法(例えば、軽金属学会、昭和63年8.20発行、「アルミニウムデンドライトアームスペーシングと冷却速度の測定方法」などに記載)により求める。即ち、鋳造された板の鋳造組織における、互いに隣接するデンドライト二次アーム (二次枝) の平均間隔d を交線法を用いて計測し (視野数3 以上、交点数は10以上) 、このd を用いて次式、d = 62×C -0.337 (但し、d:デンドライト二次アーム間隔mm、C : 冷却速度℃/s) から求める。 (鋳造板厚) 双ロールにより連続鋳造する薄板の板厚は1 〜13mmの範囲とする。そして、好ましくは、1mm 以上、5mm 未満の薄い板厚とする。板厚1mm 未満の連続鋳造は、双ロール間への注湯や、双ロール間のロールギャップ制御などの鋳造限界から、困難である。他方、板厚が13mm、より厳しくは板厚が5mm を超えて厚くなった場合、鋳造の冷却速度が著しく遅くなり、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化したり、多量に晶出する傾向がある。この結果プレス成形性が著しく低下する可能性が高くなる。 (注湯温度) Al合金溶湯を双ロールに注湯する際の注湯温度は、液相線温度+30℃以下とすることが好ましい。注湯温度が液相線温度+30℃を超えた場合、後述する鋳造冷却速度が小さくなり、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化したり、多量に晶出する可能性がある。この結果、強度伸びバランスが低下し、プレス成形性が著しく低下する可能性がある。また、双ロールに圧下効果が小さくなり、中心欠陥が多くなって、Al合金板としての基本的の機械的性質自体が低下する可能性がある。 (双ロール周速) 回転する一対の双ロールの周速は1m /min 以上とすることが好ましい。双ロールの周速が1m /min 未満では、溶湯と鋳型 (双ロール) との接触時間が長くなり、鋳造薄板の表面品質が低下する可能性がある。この点、双ロールの周速は速いほど良く、好ましい周速は30m/min 以上である。 (冷間圧延) このように鋳造されたAl合金板は、オンラインでもオフラインでも熱間圧延せずに、自動車パネル用などの製品板の板厚0.5 〜3mm に冷間圧延されて、鋳造組織が加工組織化される。 この点、双ロールにより連続鋳造する薄板の板厚が上限の13mm側に厚い場合には、冷延途中に中間焼鈍を入れて、最終の冷間圧延における冷延率を60%以下とすることが好ましい。なお、冷間圧延における加工組織化の程度は冷間圧延の冷延率にもより、上記集合組織制御のために、鋳造組織が残留する場合もあるが、プレス成形性や機械的な特性を阻害しない範囲で許容される。 (最終焼鈍) Al合金冷延板は、400 ℃〜液相線温度で最終焼鈍することが好ましい。焼鈍温度が400 ℃未満では、溶体化効果が得られない可能性が高く、更に、室温における準安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が減り、逆に、室温における安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が増す可能性が高い。このため、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh が50.0μW 未満となりやすく、高MgのAl-Mg 系合金板の伸びが低下し、強度−延性バランスが低下して、プレス成形性が低下する可能性が高い。このため、最終焼鈍温度は好ましくは450℃以上が良い。 また、この最終焼鈍後には、500 〜300 ℃の温度範囲を10℃/s以上の、できるだけ速い平均冷却速度で冷却する必要がある。最終焼鈍後の平均冷却速度が遅く、10℃/s未満であれば、冷却過程で、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が多量に析出する。この結果、室温における準安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が減り、逆に、室温における安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が増す可能性が高い。このため、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh が50.0μW 未満となりやすく、高MgのAl-Mg 系合金板の伸びが低下し、強度−延性バランスが低下して、プレス成形性が低下する可能性が高い。このため、上記平均冷却速度は、好ましくは15℃/s以上が良い。 また、最終焼鈍後に再度以下に示す付加焼鈍を入れるとさらに吸熱ピークの高さhが増大され、強度−延性バランスの向上に有効である。昇温速度が遅いバッチ焼鈍(100 ℃/hr 以下)の場合では特に150 ℃以下で付加焼鈍を行うことで、準安定な微細析出物が析出促進され、強度−延性バランスが増大する。但し、付加焼鈍温度が150 ℃を越えると、安定なAl-Mg系金属間化合物の量が増大するため、強度−延性バランスが低下して、プレス成形性が低下する。好ましくは、付加焼鈍温度が50℃以上120 ℃以下がよい。 また、昇温速度が速い連続焼鈍(0.1℃/s以上)の場合では、120℃以上250℃以下の温度で保持時間も0s以上10min以下で付加焼鈍を行うことで同様な効果が得られる。付加焼鈍温度が250℃を越えると、あるいは保持時間が10minを越えると、安定なAl-Mg系金属間化合物の量が増大するため、強度−延性バランスが低下して、プレス成形性が低下する。付加焼鈍温度が120℃未満では効果がない。好ましくは、付加焼鈍温度が130℃以上220℃以下がよい。また、冷却速度は10℃/s以上、好ましくは15℃/s以上がよい。 以下に本発明の実施例を説明する。表1 に示す種々の化学成分組成のAl-Mg 系Al合金溶湯(発明例A〜M、比較例N〜X)を、前記した双ロール連続鋳造法により、表2(発明例) 、表3(比較例) に示す条件で各板厚(3〜5mm)に鋳造した。そして、これら各Al合金鋳造薄板を板厚1.5mm まで冷間圧延した。 また、これら各冷延板を、表2(発明例) 、表3(比較例) に示す温度と冷却条件及び付加焼鈍条件で、連続焼鈍炉で最終焼鈍および付加焼鈍を行った。なお、付加焼鈍は、焼鈍条件によってバッチ焼鈍炉あるいは連続焼鈍炉を使用した。また、バッチ焼鈍炉の場合は最終焼鈍後室温で5分経過後に付加焼鈍を行い、連続焼鈍炉の場合は最終焼鈍後室温で24時間経過後に付加焼鈍を行った。これら発明例、比較例とも、比較例16を除き、得られたAl合金板表面の平均結晶粒径は30〜60μm の範囲であった。 ここにおいて、双ロール連続鋳造の際の、双ロールの周速は70m /min、Al合金溶湯を双ロールに注湯する際の注湯温度は、液相線温度+20℃と、各例とも一定とした。SiC およびアルミナの粉末を水に懸濁させた潤滑剤による双ロール表面の潤滑は、表2 の比較例16のみ行い、他の例は全て双ロール表面の潤滑無し(無潤滑)で、連続鋳造した。 このように得られた、最終焼鈍後の高Mgの Al-Mg系Al合金板から、プレス成形される部位の、長手方向に亙って、互いの間隔を100mm 以上開けた任意の測定箇所、5 箇所における、示差熱分析(DSC) により前記した条件で測定した場合の、固相からの加熱曲線を求めた。そして、50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値 (μW)を求めた。表2 、3 に測定結果を示す。なお、示差熱分析条件は下記の条件で行なった。試験装置:セイコ−インスツルメンツ製DSC220G 標準物質: アルミ試料容器: アルミ昇温条件:15 ℃/min雰囲気: アルゴン(50ml/min)試料重量:24.5 〜26.5mg 更に、前記集合組織測定箇所から試験片を採取し、各試験片の機械的性質と、強度延性バランス [引張強度(TS:MPa)×全伸び(EL:%)](MPa%) の平均値を求め、また、プレス成形される板部位から、長手方向に亙って、互いの間隔を100mm 以上開けた任意の各試験片を各試験毎に5 枚採取して、成形性などの特性も計測、評価した。これらの結果も表2 、3 に示す。 引張試験はJIS Z 2201にしたがって行うとともに、試験片形状はJIS 5 号試験片で行い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。また、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。 成形性の材料試験評価としては、張出性の評価として、平面ひずみ状態の張出試験、伸びフランジ性の評価としてバーリング試験を行った。 張出試験は、直径101.6mmの球頭張出ポンチを用い、長さ180mm、幅110mmの試験片に潤滑剤としてR-303Pを塗布し、成形速度4mm/s、しわ押さえ荷重200kNで張出成形試験を行い、試験片が割れる際の高さ(mm)を測定した。 バーリング試験は、1辺が100mmの正方形の板に直径10mmの孔を打ち抜く。そして、直径25mmの60°円錐ポンチを用いて、バリを上面(ダイス面)側とし潤滑油として防錆油を用いて、しわ押さえ力4.0トン、ポンチ速度10m/minでバーリング試験を行い、前記打ち抜き孔の縁に破断が発生した段階でポンチを止め、破断後の孔内径(ds)と成形試験前の初期孔径(d0)から下記式によってバーリング率(λ)を求めた。λ:(ds−d0)/d0×100 破断後の孔内径については、圧延方向と、圧延方向に垂直な方向でそれぞれ測定し、バーリング率を各々求めた後に平均を取って、各サンプルのバーリング率とした。さらに、各サンプルについて3回のバーリング試験を行い、その平均値を最終的にバーリング率(λ%)とした。これらの結果も表2 、3 に示す。 表1 、2 の通り、表1 のA 〜M の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金板例であって、本発明範囲内の条件で、双ロール連続鋳造、冷延、最終焼鈍乃至付加焼鈍された発明例1 〜16は、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 以上である。この結果、強度延性バランス、限界張出高さ、λが高く、プレス成形性に優れている。 ただ、表1 のB の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金例同士の比較において、発明例2 及び4 は、発明例3 及び5 に比して、付加焼鈍が無いか、付加焼鈍における冷却速度が比較的遅い。この結果、発明例2 及び4 は、発明例3 及び5 に比して、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh が比較的低く、強度延性バランスやλが比較的低い。 これに対して、表3 の通り、比較例17は、表1 のB の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金例ではあるが、双ロールの潤滑を行ない、冷却速度が100 ℃/s未満となった好ましい製造条件の範囲外で製造されている。このため、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 未満となり、得られたAl合金板表面の平均結晶粒径が100 μm を超え、強度延性バランスが低く、プレス成形性に劣っている。 比較例18、19は、表1 のB の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金例ではあるが、最終焼鈍における冷却速度が遅過ぎる。このため、比較例18、19は、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 未満となって、強度延性バランスが低く、プレス成形性に劣っている。 比較例20は、表1 のB の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金例ではあるが、最終焼鈍における焼鈍温度が低過ぎる。このため、比較例20は、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 未満となって、強度延性バランスが低く、プレス成形性に劣っている。 比較例21は、表1 のB の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金例ではあるが、付加焼鈍における焼鈍温度が高過ぎる。このため、比較例21は、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 未満となって、強度延性バランスが低く、プレス成形性に劣っている。 これらの結果から、前記発明例の結果と併せて、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値を50.0μW 以上とするための、最終焼鈍や付加焼鈍における焼鈍温度や冷却速度の条件の意味が裏付けられる。 表1 のN 〜X の発明範囲外の組成を有する合金を用いた比較例22〜32は、表3 の通り、好ましい条件の範囲内で、双ロール連続鋳造、最終冷延、最終焼鈍されているにもかかわらず、また、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 以上であるものの、プレス成形性が、発明例に比して著しく劣っている。 比較例22は、Mg含有量が下限を下回って少な過ぎるN の合金を用いている。 比較例23は、Mg含有量が上限を上回って多過ぎるO の合金を用いている。 比較例24は、Fe含有量が上限を上回って多過ぎるP の合金を用いている。 比較例25は、Si含有量が上限を上回って多過ぎるQ の合金を用いている。 比較例26は、Mn含有量が上限を上回って多過ぎるR の合金を用いている。 比較例27は、Cr含有量が上限を上回って多過ぎるS の合金を用いている。 比較例28は、Zr含有量が上限を上回って多過ぎるT の合金を用いている。 比較例29は、V 含有量が上限を上回って多過ぎるU の合金を用いている。 比較例30は、Ti含有量が上限を上回って多過ぎるV の合金を用いている。 比較例31は、Cu含有量が上限を上回って多過ぎるW の合金を用いている。 比較例32は、Zn含有量が上限を上回って多過ぎるX の合金を用いている。 したがって、これらから、各元素の強度、延性、強度延性バランス、成形性に対する臨界的な意義が分かる。 表1 に示す種々の化学成分組成のAl-Mg 系Al合金板状鋳塊(発明例A、B、C、D、E)を、DC鋳造法により溶解、鋳造し、板厚100mmの鋳塊を得た。この鋳塊に480℃×10hrの均質化熱処理を施した後、熱延開始温度320℃で熱延を行って板厚(3〜5mm)にし、さらに昇温速度6℃/s、到達温度450℃、保持時間60s、冷却速度6℃/sで中間焼鈍を施したのち、冷間圧延を行って板厚1.5mmtとした。その後、表4に示す条件で最終焼鈍および付加焼鈍を行い、供試材とした。 なお、付加焼鈍は、焼鈍条件によってバッチ焼鈍炉あるいは連続焼鈍炉を使用した。また、バッチ焼鈍炉の場合は最終焼鈍後室温で5分経過後に付加焼鈍を行い、連続焼鈍炉の場合は最終焼鈍後室温で24時間経過後に付加焼鈍を行った。 このように得られた、最終焼鈍後の高Mgの Al-Mg系Al合金板の示差熱分析(DSC) における50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値 (μW)を実施例1 と同様に求めた。表4 に測定結果を示す。 更に、機械的性質と、強度延性バランス [引張強度(TS:MPa)×全伸び(EL:%)](MPa%) の平均値、、限界張出高さ、λなども実施例1 と同様に求めた。表4 に測定結果を示す。 表4 の通り、本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金板例であって、本発明範囲内の条件で、熱延、冷延、最終焼鈍乃至付加焼鈍された発明例33〜42は、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 以上である。この結果、強度延性バランス、限界張出高さ、λなどが高く、プレス成形性に優れている。 これに対して、比較例43〜49は、本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金例ではあるが、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 未満である。この結果、発明例33〜42に比して、強度延性バランス、限界張出高さ、λなどが低く、プレス成形性が著しく劣っている。 比較例43は付加焼鈍における焼鈍温度が高過ぎる。 比較例44、45は最終焼鈍における冷却速度が遅過ぎる。 比較例46は付加焼鈍における焼鈍温度が低過ぎる。 比較例47は付加焼鈍における焼鈍温度が高過ぎる。 比較例48は付加焼鈍における焼鈍温度が高過ぎる。 比較例49は付加焼鈍における冷却速度が低過ぎる。 これらの結果からも、前記発明例の結果と併せて、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値を50.0μW 以上とするための、最終焼鈍や付加焼鈍における焼鈍温度や冷却速度の条件の意味が裏付けられる。 以上説明したように、本発明によれば、高Mg含有Al-Mg 系アルミニウム合金板であって、自動車のアウタパネルやインナパネルへの適用が可能な、より高いプレス成形性を有するアルミニウム合金板を提供することができる。この結果、自動車パネルなど、プレス成形用としての高Mg含有Al-Mg 系アルミニウム合金板の適用を拡大できるものである。高MgのAl-Mg 系合金板の、示差熱分析により測定した場合の、固相からの加熱曲線と50〜100 ℃の間の吸熱ピークを示す説明図である。 質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl-Mg 系アルミニウム合金板であって、この板の融解過程における熱的変化を示差熱分析により測定して得られた固相からの加熱曲線の50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さが50.0μW 以上であることを特徴とする成形用アルミニウム合金板。 前記アルミニウム合金板が、更に、質量% で、Mn:0.3% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.1% 以下、Cu:1.0% 以下、Zn:1.0% 以下、の一種または二種以上を含む、請求項1に記載の成形用アルミニウム合金板。 【課題】 高いプレス成形性を有する高Mg含有Al-Mg 系アルミニウム合金板を提供することを目的とする。【解決手段】 質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl-Mg 系アルミニウム合金板であって、この板の融解過程における熱的変化を示差熱分析により測定して得られた固相からの加熱曲線の50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さhが50.0μW 以上であることとして、強度延性バランスを高くし、プレス成形性を向上させる。【選択図】 図1


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特許公報(B2)_成形用アルミニウム合金板の製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_成形用アルミニウム合金板の製造方法
出願番号:2005065885
年次:2010
IPC分類:C22F 1/047,C22C 21/06,B22D 11/00,B22D 11/06,G01N 25/20,C22F 1/00


特許情報キャッシュ

松本 克史 JP 4541934 特許公報(B2) 20100702 2005065885 20050309 成形用アルミニウム合金板の製造方法 株式会社神戸製鋼所 000001199 梶 良之 100089196 須原 誠 100104226 松本 克史 20100908 C22F 1/047 20060101AFI20100819BHJP C22C 21/06 20060101ALI20100819BHJP B22D 11/00 20060101ALI20100819BHJP B22D 11/06 20060101ALI20100819BHJP G01N 25/20 20060101ALI20100819BHJP C22F 1/00 20060101ALN20100819BHJP JPC22F1/047C22C21/06B22D11/00 EB22D11/06 330BG01N25/20 BC22F1/00 604C22F1/00 623C22F1/00 630AC22F1/00 630KC22F1/00 631ZC22F1/00 681C22F1/00 682C22F1/00 683C22F1/00 685ZC22F1/00 686BC22F1/00 691BC22F1/00 691CC22F1/00 692AC22F1/00 692BC22F1/00 694A C22F 1/04 − 1/057 C22C 21/00 − 21/18 特開平07−252571(JP,A) 特開平07−310153(JP,A) 特開平08−199278(JP,A) 特開平07−310136(JP,A) 特開平04−276040(JP,A) 特開平04−263034(JP,A) 特開平04−214834(JP,A) 2 2006249480 20060921 18 20070928 鈴木 毅 本発明は、Mg含有量が8%を超えた高Mg含有Al-Mg 系アルミニウム合金板であって、高いプレス成形性を有するアルミニウム合金板の製造方法に関するものである。 近年、自動車などの輸送機の車体分野では、近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、自動車の車体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、圧延板や押出形材など、より軽量なAl合金材適用が増加しつつある。 この内、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどの自動車ボディパネル (パネル構造体) の、アウタパネル (外板) やインナパネル( 内板) 等のパネルには、Al-Mg 系のAA乃至JIS 5000系 (以下、単に5000系、あるいはAl-Mg 系と言う) アルミニウム合金板や Al-Mg-Si 系のAA乃至JIS 6000系アルミニウム合金板の使用が検討されている。 前記自動車ボディパネル用のアルミニウム合金板 (以下、アルミニウムをAlとも言う) には、高プレス成形性が要求される。この成形性の点からは、前記Al合金のなかでも、強度・延性バランスに優れたAl-Mg 系Al合金が有利である。 このため、従来から、Al-Mg 系Al合金板に関して、成分系の検討や製造条件の最適化検討が行われている。このAl-Mg 系Al合金としては、例えばJIS A 5052、5182等が代表的な合金成分系である。しかし、このAl-Mg 系Al合金でも冷延鋼板と比較すると延性に劣り、成形性に劣っている。 これに対し、Al-Mg 系Al合金は、Mg含有量を増加させて、8%を超える高Mg化させると、強度延性バランスが向上する。しかし、このような高MgのAl-Mg 系合金は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法では、工業的に製造することは困難である。この理由は、鋳造の際に鋳塊にMgが偏析したり、通常の熱間圧延では、Al-Mg 系合金の延性が著しく低下するために、割れが発生し易くなるからである。 一方、高MgのAl-Mg 系合金を、上記割れの発生する温度域を避けて、低温での熱間圧延を行うことも困難である。このような低温圧延では、高MgのAl-Mg 系合金の材料の変形抵抗が著しく高くなり、現状の圧延機の能力では製造できる製品サイズが極端に限定されるためである。 また、高MgのAl-Mg 系合金のMg含有許容量を増加させるために、FeやSi等の第三元素を添加する方法等も提案されている。しかし、これら第三元素の含有量が増えると、粗大な金属間化合物を形成しやすく、アルミニウム合金板の延性を低下させる。このため、Mg含有許容量の増加には限界があり、Mgが8%を超える量を含有させることは困難であった。 このため、従来から、高MgのAl-Mg 系合金板を、双ロール式などの連続鋳造法で製造することが種々提案されている。双ロール式連続鋳造法は、回転する一対の水冷銅鋳型 (双ロール) 間に、耐火物製の給湯ノズルからアルミニウム合金溶湯を注湯して凝固させ、かつ、この双ロール間において、上記凝固直後に圧下し、かつ急冷して、アルミニウム合金薄板とする方法である。この双ロール式連続鋳造法はハンター法や3C法などが知られている。 双ロール式連続鋳造法の冷却速度は、従来のDC鋳造法やベルト式連続鋳造法に較べて1〜3桁大きい。このため、得られるアルミニウム合金板は非常に微細な組織となり、プレス成形性などの加工性に優れる。また、鋳造によって、アルミニウム合金板の板厚も比較的薄い1〜13mmのものが得られる。このため、従来のDC鋳塊(厚さ200 〜 600mm)のように、熱間粗圧延、熱間仕上げ圧延等の工程が省略できる。さらに鋳塊の均質化処理も省略出来る場合がある。 このような双ロール式連続鋳造法を用いて製造した高MgのAl-Mg 系合金板の、成形性向上を意図して組織を規定した例は、従来においても提案されている。例えば、6 〜10% の高MgであるAl-Mg 系合金板の、Al-Mg 系の金属間化合物の平均サイズを10μm 以下とした、機械的性質に優れた自動車用アルミニウム合金板が提案されている (特許文献1参照) 。また、10μm 以上のAl-Mg 系金属間化合物の個数を300 個/mm2以下とし、平均結晶粒径が10〜70μm とした自動車ボディーシート用アルミニウム合金板なども提案されている (特許文献2参照) 。特開平7 −252571号公報 (特許請求の範囲、1 〜2 頁)特開平8 −165538号公報 (特許請求の範囲、1 〜2 頁) これら特許文献1 、2 の通り、鋳造の際に晶出するAl-Mg 系金属間化合物は、プレス成形の際に破壊の起点となりやすい。したがって、双ロール式連続鋳造法を用いて製造した高MgのAl-Mg 系合金板のプレス成形性を向上させるためには、これらAl-Mg 系金属間化合物(Al-Mg 系化合物とも言う)を、特許文献1 、2 の通り、微細化させる、あるいは粗大なものを少なくすることが有効である。また、板の結晶粒を微細化させることもプレス成形性向上に有効である。 しかし、双ロール式連続鋳造法における冷却速度(鋳造速度)を速くして、鋳造の際に晶出するAl-Mg 系金属間化合物を抑制し得たとしても、更にその後の工程では、連続鋳造後の室温までの冷却の他にも、冷間圧延前の均質化熱処理、冷間圧延途中の中間焼鈍、冷間圧延後の溶体化処理など、板状鋳塊または薄板を400 ℃以上の温度に加熱する、あるいは加熱された板状鋳塊または薄板を冷却する工程が、工程設計上、選択的に入ってくる。そして、これらの熱履歴工程で、β相と称せられるAl-Mg 系金属間化合物が発生する可能性は十分にある。 したがって、単に、Al-Mg 系金属間化合物の発生を抑制することは難しく、新たに、例え、Al-Mg 系金属間化合物が存在しても、このAl-Mg 系金属間化合物の存在形態などを制御して、高MgのAl-Mg 系合金板のプレス成形性を向上させる技術が必要になっていると言える。 本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、双ロール式連続鋳造と、その後の熱履歴工程で必然的に発生するAl-Mg 系金属間化合物の存在状態を制御して、プレス成形性を向上させた高MgのAl-Mg 系合金板の製造方法を提供することである。 この目的を達成するために、本発明成形用アルミニウム合金板の製造方法の要旨は、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl-Mg 系アルミニウム合金溶湯を、回転する一対の双ロールに注湯して、この双ロールによる鋳造の冷却速度を850 ℃/s以上として、板厚1 〜13mmの範囲の薄板に連続的に鋳造し、この鋳造された薄板を熱間圧延することなしに冷間圧延し、この冷延板を400 ℃〜液相線温度で最終焼鈍後に、バッチ焼鈍の場合は50℃以上150 ℃以下で、連続焼鈍の場合は120℃以上250℃以下で付加焼鈍を行い、このAl-Mg 系アルミニウム合金板の融解過程における熱的変化を下記条件による示差熱分析により測定して得られた固相からの加熱曲線の50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さを50.0μW 以上とすることである。 但し、前記示差熱分析の条件は、前記 Al-Mg系Al合金板から、プレス成形される部位の、長手方向に亙って、互いの間隔を100mm 以上開けた任意の測定箇所5 箇所における、試験装置:セイコ−インスツルメンツ製DSC220G 、標準物質: アルミ、試料容器: アルミ、昇温条件:15 ℃/min、雰囲気: アルゴン(50ml/min)、試料重量:24.5 〜26.5mgの条件で測定した場合の、前記吸熱ピークの高さh の平均値 (μW)とした。 本発明者らは、双ロール式連続鋳造によって製造された高MgのAl-Mg 系合金板組織中の、β相と称せられるAl-Mg 系金属間化合物の存在形態について、プレス成形性を阻害する存在形態か否かについて、高MgのAl-Mg 系合金板の示差熱分析(DSC) により判別可能であることを知見した。 より具体的には、高MgのAl-Mg 系合金板の融解過程における熱的変化を示差熱分析により測定した場合、得られた固相からの加熱曲線の50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さは、室温におけるAl-Mg 系金属間化合物の固溶、析出状態の安定性、特に析出状態が安定であるか準安定であるかと、よく相関していることを知見した。 因みに、室温におけるAl-Mg 系金属間化合物の析出状態が安定であるほど、高MgのAl-Mg 系合金板の強度−延性バランスが低くなり、プレス成形性が低下する。 一方、室温におけるAl-Mg 系金属間化合物の析出状態が準安定 (不安定) であるほど、高MgのAl-Mg 系合金板の強度−延性バランスが高くなり、プレス成形性が向上する。 前記示差熱分析における、固相からの加熱曲線の50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さは、Al-Mg 系金属間化合物析出物の再固溶量を表している。この吸熱ピーク高さが高いほど、Al-Mg 系金属間化合物析出物の再固溶量が多くなる。そして、この再固溶量が多いほど、室温における(プレス成形される)板のAl-Mg 系金属間化合物の析出状態が安定では無く、準安定であることを意味している。 室温におけるAl-Mg 系金属間化合物は安定に析出しているほど、より高温でないと再固溶せず、前記示差熱分析における固相からの加熱曲線において、上記低温での吸熱ピーク高さは低くなる。 一方、室温におけるAl-Mg 系金属間化合物は準安定なほど、より低温で再固溶しやすく、前記示差熱分析における固相からの加熱曲線において、上記50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さは高くなる。 本発明では、以上のように、単に、Al-Mg 系金属間化合物の発生を単に抑制するのでは無く、例え、Al-Mg 系金属間化合物が存在しても、このAl-Mg 系金属間化合物の存在形態を制御して、高MgのAl-Mg 系合金板のプレス成形性を向上させるものである。 なお、このAl-Mg 系金属間化合物は、ナノレベル以下の大きさであり、10万倍の透過型電子顕微鏡(FE-TEM)でも識別が難しい。また、本発明で言う、安定と準安定というAl-Mg 系金属間化合物の存在状態は、通常の固溶、析出状態を問題とする組織判別とは、また別の観点であり、TEM などのミクロ組織観察では判別できない。 しかも、これらFE-TEMなどのミクロ組織観察は、当然、板の超局所的な分析となるため、分析箇所や個数を増しても、板のマクロ的な特性であるプレス成形性を代表している、相関しているとは、必ずしも言い難い。 (DSC ) 図1に、後述する実施例の各発明例、比較例の高MgのAl-Mg 系合金板の示差熱分析(DSC) により測定した場合の、固相からの加熱曲線を示す。図1の加熱曲線1 には、50〜100 ℃の間の吸熱ピークは、室温における準安定なAl-Mg 系金属間化合物の再固溶量を表している。この吸熱ピーク高さh が高いほど、室温における高MgのAl-Mg 系合金板組織中に準安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が多いことを表している。 高MgのAl-Mg 系アルミニウム合金板では、冷延後の溶体化処理および急冷時の過飽和固溶体から室温時効で、GPゾーンと呼ばれるAl-Mg 系金属間化合物が、非常に微細なレベルで析出しているものと推考される。 この吸熱ピーク高さh が高く、室温における(プレス成形される)高MgのAl-Mg 系合金板の、準安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が多いほど、強度−延性バランスが高くなり、プレス成形性が向上する。 本発明では、プレス成形性が向上する目安として、この50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さh を50.0μW 以上と規定する。50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さh が50.0μW 未満では、室温における準安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が減り、逆に室温における安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が増す。このために、特に、高MgのAl-Mg 系合金板の伸びが低下し、強度−延性バランスが低下して、プレス成形性が低下する。 ここで、本発明で用いる示差熱分析方法は、DSC とも略称される、公知の示差走査熱量測定方法である。その概要は、測定温度範囲において熱的に変化しない基準物質と、測定対象物質である高MgのAl-Mg 系合金板とを各々相等しい容器に入れ (基準物質自体を容器とする場合もある) 、両者を、等価な条件のもとで (周囲の温度を) 、一定速度で加熱しながら、両者間の温度差 (示差温度) を連続的に測定して行く。そして、この温度変化の状況から、定性的定量的な分析を行うものである。 高MgのAl-Mg 系合金板の示差熱分析の場合、前記基準物質としては、測定対象Al合金材よりも融点が十分高く、測定の再現性ある金属として、白金を選択するのが好ましいが、測定温度範囲が300 ℃以下の低温である場合は、通常のアルミ容器でも問題ない。 また、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さh は、前記図1 に示す固相からの加熱曲線 (示差走査熱分析曲線) の一点鎖線で示す基準線から吸熱ピークまでの距離 (μW)である。この基準線は、図1 に示すように、示差走査熱分析曲線の100 ℃以下の温度範囲において共通して生じる水平な直線部分E に沿って引き出した水平な直線とする。 本発明における示差熱分析に用いる示差熱分析計は、市販の示差熱分析計を適宜選択することができる。 なお、アルミニウム合金の分野でも、例えば、特開2002−115019号公報では耐溶接割れ性の評価に、また、特開平10-219382 号、特開2000-273567 号、特開2003−27170 号公報などでは、過剰Si型6000系Al合金材の組織として、室温時効抑制と低温時効硬化能を阻害するSi/ 空孔クラスター(GPI) などを制御するための指標として、この示差熱分析における吸熱ピークあるいは発熱ピークを用いている。そして、上記した示差熱分析方法も、これらの公報に開示されている。 (平均結晶粒径) Al合金板表面の平均結晶粒径は100 μm 以下に微細化させることが成形性を向上させる前提条件として好ましい。結晶粒径をこの範囲に細かく乃至小さくすることによって、プレス成形性が確保乃至向上される。結晶粒径が100 μm を越えて粗大化した場合、プレス成形性が著しく低下し、成形時の割れや肌荒れなどの不良が生じ易くなる。一方、平均結晶粒径があまり細か過ぎても、5000系Al合金板に特有の、SS (ストレッチャーストレイン) マークがプレス成形時に発生するので、この観点からは、平均結晶粒径は20μm 以上とすることが好ましい。 本発明で言う結晶粒径とは板の長手(L) 方向の結晶粒の最大径である。この結晶粒径は、Al合金板を0.05〜0.1mm 機械研磨した後電解エッチングした表面を、100 倍の光学顕微鏡を用いて観察し、前記L 方向にラインインターセプト法で測定する。1 測定ライン長さは0.95mmとし、1 視野当たり各3 本で合計5 視野を観察することにより、全測定ライン長さを0.95×15mmとする。 (化学成分組成) 本発明Al合金板における化学成分組成の、各合金元素の意義及びその限定理由について以下に説明する。本発明Al合金板は、基本的には、質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部がAlおよび不可避的な不純物からなる化学成分組成とする。(Mg:8%を超え14% 以下) MgはAl合金板の強度、延性を高める重要合金元素である。Mgが8%以下の含有量では、強度、延性が不足して、高MgのAl-Mg 系Al合金の特徴が出ず、特に本発明が意図する自動車用パネルへのプレス成形性が不足する。一方、Mgを14% を越えて含有すると、連続鋳造の際の冷却速度を高めたり、焼鈍後の冷却速度を高めるなどの製造方法や条件の制御を行なっても、Al-Mg 系化合物の晶析出が多くなる。この結果プレス成形性が著しく低下する。また、加工硬化量が大きくなり、冷間圧延性も低下させる。したがって、Mgは8%を超え14% 以下の範囲とする。(Fe:1.0%以下、Si:0.5% 以下) FeとSiは、できるだけ少ない量に規制すべき不純物である。FeとSiは、Al-Mg-(Fe 、Si) などから成るAl-Mg 系化合物量や、Al-Fe 、Al-Si 系などのAl-Mg 系以外の化合物量となって多く生成する。Feの含有量が1.0%、Siの含有量が0.5%、を各々超えた場合には、これらの化合物量が過大となって、破壊靱性や成形性を大きく阻害する。この結果プレス成形性が著しく低下する。したがって、Feは1.0%以下、好ましくは0.5%以下、Siは0.5%以下、好ましくは0.3%以下に各々規制する。 この他、Mn、Cu、Cr、Zr、Zn、V 、Ti、B なども不純物元素であり、含有量は少ない方が良い。しかし、例えば、Mn、Cr、Zr、V には圧延板組織の微細化効果、Ti、B には鋳造板 (鋳塊) 組織の微細化効果などの効果もある。また、Cu、Znには、強度を向上させる効果もある。このため、これら効果を狙って、敢えて含有させる場合もあり、本発明板の特性である成形性を阻害しない範囲で、これら元素を一種または二種以上含有させることは許容される。これらの許容量は、各々、質量% で、Mn:0.3% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.1% 以下、B:0.05% 以下、Cu:1.0% 以下、Zn:1.0% 以下、である。(製造方法) 以下に、本発明におけるAl-Mg 系Al合金板の製造方法につき説明する。 本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板は、DC鋳造などで鋳造した鋳塊を均熱処理後に熱間圧延を施す、通常の製造方法では、前記した通り、高MgのAl-Mg 系Al合金板を効率良く鋳造し工業的に製造することが難しい。 したがって、本発明の高MgのAl-Mg 系Al合金板を工業的に製造する場合は、現状では、双ロール式などの連続鋳造と、熱間圧延を省略した、冷間圧延、焼鈍とを組み合わせて製造された、板厚0.5 〜3mm の板とすることが好ましい。 また、アルミニウム合金板の材質特性として、より高いプレス成形性を確実に達成するために、前記アルミニウム合金板が、前記双ロール式連続鋳造の際に、質量% で、Mg:8〜14% 、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部の内の97% 以上がAlからなるアルミニウム合金溶湯を、回転する一対の双ロールに注湯して、この双ロールの冷却速度を100 ℃/s以上として、板厚1 〜13mmの範囲に、連続的に鋳造して製造されたものであることが好ましい。 更に、より高いプレス成形性を確実に達成するためには、上記連続鋳造に際して、上記双ロール表面が潤滑されていないことが好ましい。 (双ロール式連続鋳造) 連続鋳造方法としては、双ロール式の他に、ベルトキャスター式、プロペルチ式、ブロックキャスター式などがある。しかし、高MgのAl-Mg 系Al合金板鋳造の際の冷却速度を後述する通り速くするためには、双ロール式連続鋳造が好ましい。 この双ロール式連続鋳造は、前記した通り、回転する一対の水冷銅鋳型などの双ロール間に、耐火物製の給湯ノズルから、上記成分組成のAl合金溶湯を注湯して凝固させ、かつ、この双ロール間において、上記凝固直後に圧下し、かつ急冷して、Al合金薄板とする。 (ロール潤滑) この際、双ロールとしては、潤滑剤によって表面が潤滑されていないロールを用いることが望ましい。従来では、溶湯がロール表面に接触および急冷されて、双ロール表面に造形される凝固殻の割れを防止するために、酸化物粉末 (アルミナ粉、酸化亜鉛粉等) 、SiC 粉末、グラファイト粉末、油、溶融ガラスなどの潤滑剤 (離型剤) を、双ロール表面に塗布あるいは流下させて用いることが一般的であった。しかし、これら潤滑剤を用いた場合、冷却速度が遅くなって、必要な冷却速度が得られない。このため、結晶粒が粗大となって、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板の成形性が低下する。 また、これら潤滑剤を用いた場合、双ロール表面において、潤滑剤の濃度や厚みの不均一によって、冷却のムラが生じやすく、板の部位によっては凝固速度が不十分となりやすい。このため、Mg含有量が高くなるほど、マクロ偏析やミクロ偏析が大きくなり、Al-Mg 系合金板の成形性を均一にすることが困難となる可能性が高くなる。 因みに、特開平1-202345号公報でも、3.5%以上のMgを含むAl-Mg 系合金板の双ロール式連続鋳造において、潤滑剤によって表面が潤滑されていないロールを用いて、冷却ムラによる、シミ欠陥 (表面偏析) を防止して、表面品質を向上させることが開示されている。しかし、その実施例で開示されているのは、5%までのMg量であり、本発明のようなMgが8%を超える高Mg量のAl-Mg 系合金板の開示は無い。即ち、本発明のようなMgが8%を超える高Mg量のAl-Mg 系合金板の領域での双ロール式連続鋳造において、潤滑剤を使用した方が良いのか、悪いのかは、その効果を含めて、全く不明であり、前記した通り、潤滑剤を使用する方が一般的であった。 (冷却速度) 例えば、鋳造する板厚が1 〜13mmの比較的薄板の範囲であっても、高MgのAl-Mg 系合金板の平均結晶粒径を微細化するためには、この双ロールによる鋳造の冷却速度は100 ℃/s以上のできるだけ速い速度が必要である。上記潤滑剤を用いた場合、理論計算上は冷却速度が速くても、実質的な、あるいは実際における冷却速度が実質的に100 ℃/s未満となりやすい。このため、8%を超える高MgのAl-Mg 系合金板の平均結晶粒径を微細化できず、プレス成形性が著しく低下する。 なお、この冷却速度は、直接の計測は難しいので、鋳造された板 (鋳塊) のデンドライトアームスペーシング (デンドライト二次枝間隔、:DAS) から公知の方法(例えば、軽金属学会、昭和63年8.20発行、「アルミニウムデンドライトアームスペーシングと冷却速度の測定方法」などに記載)により求める。即ち、鋳造された板の鋳造組織における、互いに隣接するデンドライト二次アーム (二次枝) の平均間隔d を交線法を用いて計測し (視野数3 以上、交点数は10以上) 、このd を用いて次式、d = 62×C -0.337 (但し、d:デンドライト二次アーム間隔mm、C : 冷却速度℃/s) から求める。 (鋳造板厚) 双ロールにより連続鋳造する薄板の板厚は1 〜13mmの範囲とする。そして、好ましくは、1mm 以上、5mm 未満の薄い板厚とする。板厚1mm 未満の連続鋳造は、双ロール間への注湯や、双ロール間のロールギャップ制御などの鋳造限界から、困難である。他方、板厚が13mm、より厳しくは板厚が5mm を超えて厚くなった場合、鋳造の冷却速度が著しく遅くなり、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化したり、多量に晶出する傾向がある。この結果プレス成形性が著しく低下する可能性が高くなる。 (注湯温度) Al合金溶湯を双ロールに注湯する際の注湯温度は、液相線温度+30℃以下とすることが好ましい。注湯温度が液相線温度+30℃を超えた場合、後述する鋳造冷却速度が小さくなり、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が粗大化したり、多量に晶出する可能性がある。この結果、強度伸びバランスが低下し、プレス成形性が著しく低下する可能性がある。また、双ロールに圧下効果が小さくなり、中心欠陥が多くなって、Al合金板としての基本的の機械的性質自体が低下する可能性がある。 (双ロール周速) 回転する一対の双ロールの周速は1m /min 以上とすることが好ましい。双ロールの周速が1m /min 未満では、溶湯と鋳型 (双ロール) との接触時間が長くなり、鋳造薄板の表面品質が低下する可能性がある。この点、双ロールの周速は速いほど良く、好ましい周速は30m/min 以上である。 (冷間圧延) このように鋳造されたAl合金板は、オンラインでもオフラインでも熱間圧延せずに、自動車パネル用などの製品板の板厚0.5 〜3mm に冷間圧延されて、鋳造組織が加工組織化される。 この点、双ロールにより連続鋳造する薄板の板厚が上限の13mm側に厚い場合には、冷延途中に中間焼鈍を入れて、最終の冷間圧延における冷延率を60%以下とすることが好ましい。なお、冷間圧延における加工組織化の程度は冷間圧延の冷延率にもより、上記集合組織制御のために、鋳造組織が残留する場合もあるが、プレス成形性や機械的な特性を阻害しない範囲で許容される。 (最終焼鈍) Al合金冷延板は、400 ℃〜液相線温度で最終焼鈍することが好ましい。焼鈍温度が400 ℃未満では、溶体化効果が得られない可能性が高く、更に、室温における準安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が減り、逆に、室温における安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が増す可能性が高い。このため、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh が50.0μW 未満となりやすく、高MgのAl-Mg 系合金板の伸びが低下し、強度−延性バランスが低下して、プレス成形性が低下する可能性が高い。このため、最終焼鈍温度は好ましくは450℃以上が良い。 また、この最終焼鈍後には、500 〜300 ℃の温度範囲を10℃/s以上の、できるだけ速い平均冷却速度で冷却する必要がある。最終焼鈍後の平均冷却速度が遅く、10℃/s未満であれば、冷却過程で、Al-Mg 系などの金属間化合物全般が多量に析出する。この結果、室温における準安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が減り、逆に、室温における安定なAl-Mg 系金属間化合物の量が増す可能性が高い。このため、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh が50.0μW 未満となりやすく、高MgのAl-Mg 系合金板の伸びが低下し、強度−延性バランスが低下して、プレス成形性が低下する可能性が高い。このため、上記平均冷却速度は、好ましくは15℃/s以上が良い。 また、最終焼鈍後に再度以下に示す付加焼鈍を入れるとさらに吸熱ピークの高さhが増大され、強度−延性バランスの向上に有効である。昇温速度が遅いバッチ焼鈍(100 ℃/hr 以下)の場合では特に150 ℃以下で付加焼鈍を行うことで、準安定な微細析出物が析出促進され、強度−延性バランスが増大する。但し、付加焼鈍温度が150 ℃を越えると、安定なAl-Mg系金属間化合物の量が増大するため、強度−延性バランスが低下して、プレス成形性が低下する。好ましくは、付加焼鈍温度が50℃以上120 ℃以下がよい。 また、昇温速度が速い連続焼鈍(0.1℃/s以上)の場合では、120℃以上250℃以下の温度で保持時間も0s以上10min以下で付加焼鈍を行うことで同様な効果が得られる。付加焼鈍温度が250℃を越えると、あるいは保持時間が10minを越えると、安定なAl-Mg系金属間化合物の量が増大するため、強度−延性バランスが低下して、プレス成形性が低下する。付加焼鈍温度が120℃未満では効果がない。好ましくは、付加焼鈍温度が130℃以上220℃以下がよい。また、冷却速度は10℃/s以上、好ましくは15℃/s以上がよい。 以下に本発明の実施例を説明する。表1 に示す種々の化学成分組成のAl-Mg 系Al合金溶湯(発明例A〜M、比較例N〜X)を、前記した双ロール連続鋳造法により、表2(発明例) 、表3(比較例) に示す条件で各板厚(3〜5mm)に鋳造した。そして、これら各Al合金鋳造薄板を板厚1.5mm まで冷間圧延した。 また、これら各冷延板を、表2(発明例) 、表3(比較例) に示す温度と冷却条件及び付加焼鈍条件で、連続焼鈍炉で最終焼鈍および付加焼鈍を行った。なお、付加焼鈍は、焼鈍条件によってバッチ焼鈍炉あるいは連続焼鈍炉を使用した。また、バッチ焼鈍炉の場合は最終焼鈍後室温で5分経過後に付加焼鈍を行い、連続焼鈍炉の場合は最終焼鈍後室温で24時間経過後に付加焼鈍を行った。なお、表2 において、最終焼鈍および付加焼鈍を行っていない例および付加焼鈍の温度が低すぎる例は全て比較例である。これら発明例、比較例とも、比較例16を除き、得られたAl合金板表面の平均結晶粒径は30〜60μm の範囲であった。 ここにおいて、双ロール連続鋳造の際の、双ロールの周速は70m /min、Al合金溶湯を双ロールに注湯する際の注湯温度は、液相線温度+20℃と、各例とも一定とした。SiC およびアルミナの粉末を水に懸濁させた潤滑剤による双ロール表面の潤滑は、表2 の比較例16のみ行い、他の例は全て双ロール表面の潤滑無し(無潤滑)で、連続鋳造した。 このように得られた、最終焼鈍後の高Mgの Al-Mg系Al合金板から、プレス成形される部位の、長手方向に亙って、互いの間隔を100mm 以上開けた任意の測定箇所、5 箇所における、示差熱分析(DSC) により前記した条件で測定した場合の、固相からの加熱曲線を求めた。そして、50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値 (μW)を求めた。表2 、3 に測定結果を示す。なお、示差熱分析条件は下記の条件で行なった。試験装置:セイコ−インスツルメンツ製DSC220G 標準物質: アルミ試料容器: アルミ昇温条件:15 ℃/min雰囲気: アルゴン(50ml/min)試料重量:24.5 〜26.5mg 更に、前記集合組織測定箇所から試験片を採取し、各試験片の機械的性質と、強度延性バランス [引張強度(TS:MPa)×全伸び(EL:%)](MPa%) の平均値を求め、また、プレス成形される板部位から、長手方向に亙って、互いの間隔を100mm 以上開けた任意の各試験片を各試験毎に5 枚採取して、成形性などの特性も計測、評価した。これらの結果も表2 、3 に示す。 引張試験はJIS Z 2201にしたがって行うとともに、試験片形状はJIS 5 号試験片で行い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。また、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。 成形性の材料試験評価としては、張出性の評価として、平面ひずみ状態の張出試験、伸びフランジ性の評価としてバーリング試験を行った。 張出試験は、直径101.6mmの球頭張出ポンチを用い、長さ180mm、幅110mmの試験片に潤滑剤としてR-303Pを塗布し、成形速度4mm/s、しわ押さえ荷重200kNで張出成形試験を行い、試験片が割れる際の高さ(mm)を測定した。 バーリング試験は、1辺が100mmの正方形の板に直径10mmの孔を打ち抜く。そして、直径25mmの60°円錐ポンチを用いて、バリを上面(ダイス面)側とし潤滑油として防錆油を用いて、しわ押さえ力4.0トン、ポンチ速度10m/minでバーリング試験を行い、前記打ち抜き孔の縁に破断が発生した段階でポンチを止め、破断後の孔内径(ds)と成形試験前の初期孔径(d0)から下記式によってバーリング率(λ)を求めた。λ:(ds−d0)/d0×100 破断後の孔内径については、圧延方向と、圧延方向に垂直な方向でそれぞれ測定し、バーリング率を各々求めた後に平均を取って、各サンプルのバーリング率とした。さらに、各サンプルについて3回のバーリング試験を行い、その平均値を最終的にバーリング率(λ%)とした。これらの結果も表2 、3 に示す。 表1 、2 の通り、表1 のA 〜M の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金板例であって、本発明範囲内の条件で、双ロール連続鋳造、冷延、最終焼鈍乃至付加焼鈍された発明例1 〜16は、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 以上である。この結果、強度延性バランス、限界張出高さ、λが高く、プレス成形性に優れている。但し、表2 において、最終焼鈍および付加焼鈍を行っていない1 、2 、4 、9 、12、15および付加焼鈍の温度が低すぎる13は比較例である。また発明例6 は欠番とする。 ただ、表1 のB の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金例同士の比較において、比較例2 及び4 は、発明例3 及び5 に比して、付加焼鈍が無いか、付加焼鈍における冷却速度が比較的遅い。この結果、比較例2 及び4 は、発明例3 及び5 に比して、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh が比較的低く、強度延性バランスやλが比較的低い。 これに対して、表3 の通り、比較例17は、表1 のB の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金例ではあるが、双ロールの潤滑を行ない、冷却速度が100 ℃/s未満となった好ましい製造条件の範囲外で製造されている。このため、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 未満となり、得られたAl合金板表面の平均結晶粒径が100 μm を超え、強度延性バランスが低く、プレス成形性に劣っている。 比較例18、19は、表1 のB の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金例ではあるが、最終焼鈍における冷却速度が遅過ぎる。このため、比較例18、19は、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 未満となって、強度延性バランスが低く、プレス成形性に劣っている。 比較例20は、表1 のB の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金例ではあるが、最終焼鈍における焼鈍温度が低過ぎる。このため、比較例20は、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 未満となって、強度延性バランスが低く、プレス成形性に劣っている。 比較例21は、表1 のB の本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金例ではあるが、付加焼鈍における焼鈍温度が高過ぎる。このため、比較例21は、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 未満となって、強度延性バランスが低く、プレス成形性に劣っている。 これらの結果から、前記発明例の結果と併せて、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値を50.0μW 以上とするための、最終焼鈍や付加焼鈍における焼鈍温度や冷却速度の条件の意味が裏付けられる。 表1 のN 〜X の発明範囲外の組成を有する合金を用いた比較例22〜32は、表3 の通り、好ましい条件の範囲内で、双ロール連続鋳造、最終冷延、最終焼鈍されているにもかかわらず、また、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 以上であるものの、プレス成形性が、発明例に比して著しく劣っている。 比較例22は、Mg含有量が下限を下回って少な過ぎるN の合金を用いている。 比較例23は、Mg含有量が上限を上回って多過ぎるO の合金を用いている。 比較例24は、Fe含有量が上限を上回って多過ぎるP の合金を用いている。 比較例25は、Si含有量が上限を上回って多過ぎるQ の合金を用いている。 比較例26は、Mn含有量が上限を上回って多過ぎるR の合金を用いている。 比較例27は、Cr含有量が上限を上回って多過ぎるS の合金を用いている。 比較例28は、Zr含有量が上限を上回って多過ぎるT の合金を用いている。 比較例29は、V 含有量が上限を上回って多過ぎるU の合金を用いている。 比較例30は、Ti含有量が上限を上回って多過ぎるV の合金を用いている。 比較例31は、Cu含有量が上限を上回って多過ぎるW の合金を用いている。 比較例32は、Zn含有量が上限を上回って多過ぎるX の合金を用いている。 したがって、これらから、各元素の強度、延性、強度延性バランス、成形性に対する臨界的な意義が分かる。 表1 に示す種々の化学成分組成のAl-Mg 系Al合金板状鋳塊(発明例A、B、C、D、E)を、DC鋳造法により溶解、鋳造し、板厚100mmの鋳塊を得た。この鋳塊に480℃×10hrの均質化熱処理を施した後、熱延開始温度320℃で熱延を行って板厚(3〜5mm)にし、さらに昇温速度6℃/s、到達温度450℃、保持時間60s、冷却速度6℃/sで中間焼鈍を施したのち、冷間圧延を行って板厚1.5mmtとした。その後、表4に示す条件で最終焼鈍および付加焼鈍を行い、供試材とした。 なお、付加焼鈍は、焼鈍条件によってバッチ焼鈍炉あるいは連続焼鈍炉を使用した。また、バッチ焼鈍炉の場合は最終焼鈍後室温で5分経過後に付加焼鈍を行い、連続焼鈍炉の場合は最終焼鈍後室温で24時間経過後に付加焼鈍を行った。 このように得られた、最終焼鈍後の高Mgの Al-Mg系Al合金板の示差熱分析(DSC) における50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値 (μW)を実施例1 と同様に求めた。表4 に測定結果を示す。 更に、機械的性質と、強度延性バランス [引張強度(TS:MPa)×全伸び(EL:%)](MPa%) の平均値、、限界張出高さ、λなども実施例1 と同様に求めた。表4 に測定結果を示す。 表4 の通り、本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金板例であって、本発明範囲内の条件で、熱延、冷延、最終焼鈍乃至付加焼鈍された発明例35、37、39〜42は、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 以上である。この結果、強度延性バランス、限界張出高さ、λなどが高く、プレス成形性に優れている。但し、表4 において、最終焼鈍および付加焼鈍を行っていない33、34、36、38は比較例である。 これに対して、比較例43〜49は、本発明範囲内の組成を有する高MgのAl-Mg 系Al合金例ではあるが、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値が50.0μW 未満である。この結果、発明例35、37、39〜42に比して、強度延性バランス、限界張出高さ、λなどが低く、プレス成形性が著しく劣っている。 比較例43は付加焼鈍における焼鈍温度が高過ぎる。 比較例44、45は最終焼鈍における冷却速度が遅過ぎる。 比較例46は付加焼鈍における焼鈍温度が低過ぎる。 比較例47は付加焼鈍における焼鈍温度が高過ぎる。 比較例48は付加焼鈍における焼鈍温度が高過ぎる。 比較例49は付加焼鈍における冷却速度が低過ぎる。 これらの結果からも、前記発明例の結果と併せて、前記50〜100 ℃の間の吸熱ピークの高さh の平均値を50.0μW 以上とするための、最終焼鈍や付加焼鈍における焼鈍温度や冷却速度の条件の意味が裏付けられる。 以上説明したように、本発明によれば、高Mg含有Al-Mg 系アルミニウム合金板であって、自動車のアウタパネルやインナパネルへの適用が可能な、より高いプレス成形性を有するアルミニウム合金板を提供することができる。この結果、自動車パネルなど、プレス成形用としての高Mg含有Al-Mg 系アルミニウム合金板の適用を拡大できるものである。高MgのAl-Mg 系合金板の、示差熱分析により測定した場合の、固相からの加熱曲線と50〜100 ℃の間の吸熱ピークを示す説明図である。 質量% で、Mg:8% を超え14% 以下、Fe:1.0% 以下、Si:0.5% 以下を含み、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl-Mg 系アルミニウム合金溶湯を、回転する一対の双ロールに注湯し、この双ロールによる鋳造の冷却速度を850 ℃/s以上として、板厚1 〜13mmの範囲の薄板に連続的に鋳造し、この鋳造された薄板を熱間圧延することなしに冷間圧延し、この冷延板を400 ℃〜液相線温度で最終焼鈍後に、バッチ焼鈍の場合は50℃以上150 ℃以下で、連続焼鈍の場合は120℃以上250℃以下で付加焼鈍を行い、このAl-Mg 系アルミニウム合金板の融解過程における熱的変化を下記条件による示差熱分析により測定して得られた固相からの加熱曲線の50〜100 ℃の間の吸熱ピーク高さを50.0μW 以上とすることを特徴とする成形用アルミニウム合金板の製造方法。 但し、前記示差熱分析の条件は、前記 Al-Mg系Al合金板から、プレス成形される部位の、長手方向に亙って、互いの間隔を100mm 以上開けた任意の測定箇所5 箇所における、試験装置:セイコ−インスツルメンツ製DSC220G 、標準物質: アルミ、試料容器: アルミ、昇温条件:15 ℃/min、雰囲気: アルゴン(50ml/min)、試料重量:24.5 〜26.5mgの条件で測定した場合の、前記吸熱ピークの高さh の平均値 (μW)とした。 前記アルミニウム合金板が、更に、質量% で、Mn:0.3% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Ti:0.1% 以下、Cu:1.0% 以下、Zn:1.0% 以下、の一種または二種以上を含む、請求項1に記載の成形用アルミニウム合金板の製造方法。


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