生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_イネトランスポゾンの利用
出願番号:2005059758
年次:2006
IPC分類:C12N 15/09,A01H 1/00,A01H 5/00,C12Q 1/68


特許情報キャッシュ

藤野 賢治 関口 博史 木口 忠彦 JP 2006238804 公開特許公報(A) 20060914 2005059758 20050303 イネトランスポゾンの利用 株式会社北海道グリーンバイオ研究所 592113500 ホクレン農業協同組合連合会 390022954 須藤 政彦 100102004 藤野 賢治 関口 博史 木口 忠彦 C12N 15/09 20060101AFI20060818BHJP A01H 1/00 20060101ALI20060818BHJP A01H 5/00 20060101ALI20060818BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20060818BHJP JPC12N15/00 AA01H1/00 AA01H5/00 AC12Q1/68 A 12 2 OL 26 2B030 4B024 4B063 2B030AA02 2B030AD14 2B030CA14 4B024AA08 4B024BA79 4B024CA02 4B024CA05 4B024CA09 4B024DA01 4B024HA14 4B063QA13 4B063QQ04 4B063QQ12 4B063QQ13 4B063QQ43 4B063QR32 4B063QR55 4B063QR62 4B063QR72 4B063QS25 4B063QS34 本発明は、イネトランスポゾンのnDart/Dartを利用した遺伝子及び/又は遺伝子機能の解析方法、イネ品種の作出方法及び該方法で作出されたイネ品種等に関するものであり、更に詳しくは、イネのトランスポゾンの非自律性因子nDartと、該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを利用した遺伝子の単離方法及び遺伝子機能の解析方法、変異型遺伝子の作出方法、及びイネ品種育成方法等に関するものである。本発明は、イネ品種の交配により、新しい遺伝的機能を発現するイネ品種を作出し、提供することを可能とする新しいイネ品種作出技術等を提供するものである。 トランスポゾンは、転移性のDNA因子であり、トウモロコシで最初に発見され、その後、多くの生物種に見出されている。トランスポゾンは、ゲノムのある部位から別の部位に転移し、更にまた別の部位に転移するDNA断片である。このように、トランスポゾンは、ゲノム中を転移することにより、DNAに変異を生じさせる。そのため、トランスポゾンは、ゲノム進化において重要な役割を果たしていると考えられている。また、トランスポゾンは、遺伝子領域への挿入により、その遺伝子を不活性化させることができるため、遺伝子単離あるいは遺伝子の機能解析に多くの生物種で用いられている。このようなトランスポゾンの特性については、先行文献(非特許文献1及び2参照)に記載されている。 近年のゲノム解析により、ゲノム塩基配列において、トランスポゾンは大きな比重で存在することが明らかとなっている。また、トランスポゾンは、その転移様式から大きく2種類に分類される。1つは、転移の際RNAを介するクラス1トランスポゾンであり、もう1つは、DNAで転移するクラス2である。更に、それらの分類の中で、塩基配列、転移・挿入特性などにより、更に細分化される。 イネのゲノム塩基配列も解読され、イネにおいても、トランスポゾンは大きな比重で存在していることが明らかとなった。また、これまでに多くの生物種で同定されているトランスポゾンの殆どの種類に、相同性のある多種類のトランスポゾンが存在していた(非特許文献3及び4参照)。このように、ゲノム中には多種類のトランスポゾンが存在するが、現在においても、転移活性を示すトランスポゾンは、極希である。そのため、上述のような遺伝子の単離等に用いられるトランスポゾンは、限られている。イネにおいても、転移活性があるトランスポゾンは、Tos17、Karma及びmPingの僅か3種類だけである(非特許文献5〜9参照)。 これらは、それぞれに異なる特徴を有し、Tos17及びKarmaは、組織培養により、転移活性が誘発されるトランスポゾンである。この場合、培養変異を生じるため、遺伝子単離等に用いる場合には、その効率が低下してしまう。一方の、mPingは、組織培養で転移活性が誘発されるが、ガンマ線照射によっても、誘発される。また、Karma及びmPingは、転移が誘発されたのち、通常の栽培条件において転移することが知られている。イネは、食料供給において、世界的に重要な作物であり、品種育成を効率化させるために、ゲノムの全塩基配列の解読が行われた。今後、遺伝子の単離、機能解析等を行う上で、上述の特徴をもつトランスポゾンは、極めて有用な解析ツールである。 従来、特許文献には、例えば、イネ植物体で活発に転移するLINL型のレトロトランスポゾンが報告されている(特許文献1参照)。このトランスポゾンは、上述のイネのトランスポゾンと同じもので、レトロトランスポゾンに属するものであり、本発明のDNA型のnDart/Dartとは、違う種類に属している。また、他の文献には、植物の中に存在するトランスポゾンの転移反応を特徴とする遺伝子改変を品種改良に利用することが提案されている(特許文献2参照)。また、他の文献には、イネゲノムの散在するトランスポゾンをマーカーとして利用することを特徴とするイネゲノムの構造解析方法が提案されている(特許文献3参照)。また、他の文献には、トランスポゾン遺伝子が転移して形質転換したシロイヌナズナ、タバコ、トマト、ペチュニア、アブラナ、ワタ、トウモロコシ又はイネ等の植物の形質転換体が報告されている(特許文献4参照)。更に、他の文献には、トランスポゾン転移酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAが報告されている(特許文献5参照)。しかしながら、従来、イネトランスポゾンにおいて、同一品種内のnDart/Dartで転移が生じている例は報告されていない。特開2002−369691号公報特開2003−093074号公報特開2004−121032号公報特開2004−180592号公報特開2005−046093号公報Bennetzen JL (2000), Transposable element contributions to plant gene and genome evolution, Plant Mol. 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dimerization, Plant Cell, 12:211-223)のトランスポゾンに見られる、hAT二量化体の特徴を持つことが示された。本発明で同定された2因子トランスポゾンシステムは、イネの植物体中で活性を有している。本発明は、イネトランスポゾン非自律性因子nDartと、該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを利用した、遺伝子の単離方法及び遺伝子機能の解析方法、変異型遺伝子の作出方法、イネ品種作出及び育成方法、及びイネ品種、を提供することを目的とするものである。また、本発明は、特に、非自律性因子nDartによる遺伝子変異の作出と、該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartとを利用して、イネ品種の交配により、新しい遺伝的機能を発現するイネ品種を作出し、提供することを可能とする新しいイネ品種作出技術を提供することを目的とするものである。 上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。(1)イネトランスポゾンの非自律性因子nDartと該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを利用して、イネ品種におけるトランスポゾンの転移性に伴う遺伝子変異の変異性を解析することを特徴とする遺伝子及び/又は遺伝子機能の解析方法。(2)イネトランスポゾンの非自律性因子nDartを、該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを有するイネ品種に導入し、トランスポゾンの転移性に伴う遺伝子変異の変異性を解析する前記(1)に記載の遺伝子及び/又は遺伝子機能の解析方法。(3)イネトランスポゾンの非自律性因子nDartと該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを利用して、イネ優良品種において、その変異を利用して遺伝子機能を改変されたイネ品種を作出することを特徴とするイネ品種の作出方法。(4)イネトランスポゾンの非自律性因子nDartを、該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを有するイネ優良品種に導入し、その変異を利用して遺伝子機能を改変されたイネ品種を作出する前記(3)に記載のイネ品種の作出方法。(5)イネトランスポゾンの非自律性因子nDartと該因子を転移する活性型の自律性因子Dartを利用して、イネ品種において、トランスポゾンの転移に伴い形成される変異型遺伝子を作出、単離することを特徴とする変異型遺伝子の作出方法。(6)イネトランスポゾンの非自律性因子nDartを、該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを有するイネ品種に導入し、トランスポゾンの転移に伴い形成される変異型遺伝子を作出、単離する前記(5)に記載の変異型遺伝子の作出方法。(7)前記(5)又は(6)に記載の方法で作出した変異型遺伝子を、イネ優良品種に導入し、所定の遺伝子機能を発現するイネ品種を作出することを特徴とするイネ品種の作出方法。(8)前記(3)又は(4)に記載の方法で作出された、遺伝子機能の改変された、あるいは所定の遺伝子機能を発現することを特徴とするイネ品種。(9)イネトランスポゾンの非自律性因子nDartと該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを利用して、イネ以外の植物種に遺伝子導入し、遺伝子を作出、単離することを特徴とする変異型遺伝子の作出方法。(10)nDartとして、nDart1−4(3−2)、nDart1−12、nDart1−4(3−1)及びnDart1−3(6)の中から選択された1種を用いる、前記(1)から(6)又は(9)のいずれかに記載の方法。(11)配列番号1〜14のいずれかの塩基配列を有する、又はそれと高い相同性を有する塩基配列を有し、かつ同一の活性を有することを特徴とするイネトランスポゾンの非自律性因子nDart。(12)配列番号15〜65の塩基配列を有する、又はそれと高い相同性を有する塩基配列を有し、かつ同一の活性を有することを特徴とするイネトランスポゾンの自律性因子Dart。 次に、本発明について更に詳細に説明する。 本発明は、イネトランスポゾンの非自律的因子nDartと、該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartとを利用した、遺伝子及び/又は遺伝子機能の解析方法、変異型遺伝子の作出方法、上記nDart/Dartをイネ優良品種に導入し、その変異を利用することによるイネ品種作出及び育成方法等を提供すること、また、本発明は、上記nDart/Dartをイネ以外の植物種(生物種)に遺伝子導入し、遺伝子を作出、単離する変異型遺伝子の作出方法を提供することを特徴とするものである。更に、本発明は、イネトランスポゾンの非自律性因子nDart及び自律性因子Dartの新規遺伝子配列を提供することを特徴とするものである。 本発明では、イネトランスポゾンの非自律性因子nDartとして、植物体で活性な、607bpのトランスポゾンが、イネ(Oryza sativa L.)において、同定された。後記する実施例に示されるように、このうち、4個は、塩基配列が全く同一であったが、その他は、数塩基置換、あるいは欠失により、それぞれ異なる塩基配列を有していた。これらのnDartは、イネ品種によって転移性が異なるが、例えば、イネ品種「日本晴」では、上記のうち、10個については、体細胞レベルでの転移性(切り出し)は見られなかった。イネ品種「ほしのゆめ」では、nDart1−4(3−2)及びnDart1−12において、体細胞レベルでの転移性が見られた。 本発明では、上記nDartの遺伝子座を利用して、その転移性を明らかにすることができる。例えば、各nDartを増幅するPCRプライマーを設計し、PCR増幅を行い、そのとき得られる増幅産物により、転移性を判定することができる。すなわち、nDartを含む大きさの1個のPCR産物が得られる場合は、転移性がないと判断され、一方、そのPCR産物と、nDartを含まない大きさのPCR産物との2産物が得られる場合は、体細胞レベルでの転移性があると判断される。また、転移性が認められた場合、nDartを含まない大きさのPCR産物をクローニングして塩基配列の決定を行うことで、トランスポゾンの転移性に伴う遺伝子変異を確認することが可能である。 トランスポゾンを、遺伝子あるいは遺伝子機能領域に挿入することにより、その機能は消失されるが、一方、その挿入部位から更にそのトランスポゾンが転移し、そのとき、トランスポゾンの転移性に伴う遺伝子変異が生じる。そこで、転移性が認められた品種及びnDartの遺伝子座について、PCR増幅を行い、nDartを含まない大きさのPCR産物をクローニングして、塩基配列の決定、比較を行い、nDartの遺伝子変異の特性を解析することにより、例えば、変異型遺伝子、及び遺伝子機能の改変されたイネ品種の作出が可能である。 本発明において、植物体における活性トランスポゾンが、イネ(Oryza satia L.)において同定され、nonautonomous DNA−based active rice transposon(nDart)と命名された。この607bpのトランスポゾンは、コーディング能を持たず、ジャポニカ品種の間の戻し交雑の後代から分離されたクロロフィル欠乏アルビノ(albino)変異体における、Mg−プロトポルフィリンIXメチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子中で見出された。nDartは、19bpの末端逆位反復(TIRS)を有し、8bpのターゲット重複配列(TSD)を生じる。少なくとも13のnDart因子は、「日本晴」のイネゲノムの中で見出された。データベース検索により、本発明者らは、DNA−based active rice transposon(Dart)と命名された、hAT二量体化の特徴に高い類似性を持つ一つのORFを含む、大きな因子を見出した。 Dartは、nDartのいくつかの構造を共有し、同一のTIRS、類似のサブターミナル配列及び8bpTSDを含んでいる。これらの共有された構造は、非自律性因子nDartは、自律性因子Dartの内部の欠如した誘導体であることを示している。本発明者らは、イネの植物体における、これらの活性トランスポゾン、nDart及びDartは、クラス2トランスポゾンのhATスーパーファミリーに属すると結論付けた。このトランスポゾンは、イネの植物体では活性を有しており、イネの機能ゲノムにおける遺伝子の符号化(タギング)の突然変異誘発手段として、大きな利点を有する。次に、本発明のトランスポゾンを利用した遺伝子解析方法について、具体的に説明する。(1)アルビノ変異体の分離 2つのイネ品種、「ほしのゆめ」と「Italica Livorno」の間の戻し交雑した後代からアルビノ変異体を得た。これらの2品種は、緑の葉を有し、表現型において野生型である。変異体植物は、発芽後10−14日のみ生存し、その後、しおれて、枯れた。アルビノ変異体は、劣性遺伝子で支配されていた。アルビノ植物では、緑のスポットが良く観察された。このアルビノ変異は、トランスポゾンのアルビノ遺伝子座への挿入によることを示唆している。図1に、野生型及びアルビノ変異体における葉身の表現型を示す。最も下の葉が野生型であり、他は班入りの緑の区域を持った個別のアルビノ植物である。(2)アルビノ遺伝子のポジショナルクローニング アルビノ表現型の原因遺伝子を同定するために、アルビノ遺伝子のポジショナルクローニングを行った。図2に、アルビノ遺伝子のポジショナルクローニングを示す。1次マッピングから、この遺伝子は、第6染色体の短腕に位置していることが分かった。高精度マッピングから、遺伝子は、PACクローンAP002542の60kbゲノム領域に位置していることが分かった。この領域では、予測された14の遺伝子のうちの1つだけがクロロフィル生合成と関連し、この遺伝子は、Mg−プロトポルフィリンIXメチルトランスフェラーゼ(MgPIXMT)をコードしている。 この遺伝子は、深紅色バクテリア及びシアノバクテリアにおいて同定されており、酵素により、Mg−プロトポルフィリンIXは、Mg−プロトポルフィリンIXメチルエステルに変換される。タンパク質は、Arabidopsis及びホウレン草において、クロロプラスト外皮膜とチラコイドに二重に局在している。図2において、(a)は、1次マッピングで検出された遺伝子領域をイネ高密度遺伝子マップにおける第6染色体上に示したものである。(b)は、558個体のマッピング集団を用いて検出された遺伝子の高精度マップを示す。(c)は、PACクローンAP002542における、遺伝子予測ソフト「Rice GAAS」により予測される方向での、予測されたMgPIXMT遺伝子を示す。他の13の関連しないと予測された遺伝子は除いた。 「Italica Livorno」におけるMgPIXMTの配列は、「日本晴」におけるそれと同一であるので、アルビノ変異体における遺伝子の配列を調査した。プライマーTA12(図3)を用いて、PCR増幅を行い、「ほしのゆめ」と「Italica Livorno」は、単一のPCR産物を生じた。これに対して、アルビノ変異体は、2つのPCR産物を生じた。1つは、予測された産物と同一であり、他は、それよりも長い産物であった。この長い産物は、トランスポゾンを含むと推定された。野生型と同じPCR産物がアルビノ変異体でクリアーに生じたが、このことは、植物の葉組織において高い頻度でMgPIXMT遺伝子座からトランスポゾンが切り出されたことを示唆している。 図3に、アルビノ変異体におけるMgPIXMTの配列構造を示す。(a)は、MgPIXMT遺伝子における位置+8で挿入された607bpであり、矢印はプライマーTA12の位置と方向を示す。(b)は、MgPIXMT遺伝子のためのTA12プライマーで増幅したPCR産物であり、レーン1−5は、「ほしのゆめ」、「Italica Livorno」、及び3つのアルビノ変異体である。白の三角印は期待されるバンドを示し、黒の三角は挿入によるバンドを示す。(c)は、MgPIXMTにおける挿入領域の配列であり、小文字、アンダーライン、矢印及びボックスは、それぞれ、nDartの両側の遺伝子領域、TSDS、TIRS及びnDartを示す。(3)トランスポゾンの特徴 MgPIXMT遺伝子における607bpの挿入が、アルビノ変異体において見出された(図3)。配列は、ATGコドンから+8位置に挿入され、フレーム−シフトによりストップコドンが生じる。挿入遺伝子は、トランスポゾンの構造:19bpの末端逆位反復(TIRS)と8bpのターゲット重複配列(TSD)を含み、nonauonomous DNA−based active rice transposon(nDart)と命名された。 MgPIXMT遺伝子におけるnDart配列(nDart1−A)を用いたBLAST検索により、ジャポニカイネ品種の「日本晴」のイネゲノムにおけるnDartと高い類似性を有する配列が、少なくとも13個あった。TIRSは、これら全ての配列中に保存されていた。18の単一の塩基の置換と1つの1bpの挿入が観察された。10bpと6bpの欠失が、nDart1−12とnDart1−11遺伝子座にそれぞれ観察された。13配列のうち、4個、nDart1−3(6)、nDart1−3(8)、nDart1−4(3−2)及びnDart1−4(3−1)は、完全にnDart1−Aと同一であった。(4)2因子トランスポゾンシステム nDart因子は、コーディング能のない非自律性因子である。更なるデータベース検索により、1個のORF(図4)を含む因子を、「日本晴」のゲノムに少なくとも51因子を見出した。この因子は、DNA−based active rice transposon(Dart)と名付けられた。Dart配列は、平均して3,584bp(3,501−3,669bpの範囲)の長さで、nDartと高い相同性で19bpのTIRSを含んでいた。Dartは、8bpのTSDも有していた。Dartの末端配列、TIRSを含む両末端における183bpは、nDartのそれらとほとんど同一であった。Dart因子のうち、末端配列及びORFは、高度に保存されていた(図4)。 これに対し、ORFと末端領域の境界となる2つの領域は、相対的に低い相同性の配列であった。これらの構造的な構成は、nDart因子は、ORFを含む内部領域の欠失によってDart因子から生じたことを示唆している。これは、トウモロコシ中のAc/Ds及びPIF/mPIF、イネ中のPing/mPingのような、クラス2トランスポゾンでも観察されている。 図4に、Dartの構造を示す。nDart因子と同一の配列は、Dart因子の上に矢印として示した。グレーと黒のボックスは、ORFのエクソンとhAT二量体化の特徴と類似の領域をそれぞれ示す。Pのバーは、サザンブロット分析で用いられたプローブを示す。数字は、51Dart因子中の相同性を示す。Dart中のORFは、hATスーパーファミリーのトランスポゼースと著しい相同性を有している。 ORFは、推定されるhAT二量体化の特徴(Essers L, Adolphs RH, Kunze R (2000), A highly conserved domain of the maize activator transposase is involved in dimerization, Plant Cell, 12:211-223)を含んでおり、それは、hATスーパーファミリーのメンバーの中に、高度に保存されている。8bpのTSD、TIRS、及びhAT二量体化の特徴は、Dart因子は、クラス2トランスポゾンのhATスーパーファミリーに属することを示している。12の配列の推定されるトランスポゾンは、植物、菌類及び昆虫からの配列を含む、DartのORFを用いたホモロジー検索から得られた。集められた全ての配列は、hAT二量体化の特徴を有していた。系統分類の関係は、Dart因子は、hATスーパーファミリーの植物タイプに属するという考えを示した。 図5に、Dart因子のhATスーパーファミリーにおいて推定されるトランスポゾンの系統分類の関係を示す。これは、データベース検索により同定された配列を用いてCLUSTALXアラインメントからneighbor−joining法で構築されたunrooted treeである。Bootstrap値(1,000のくり返し)は、植物、菌類及び昆虫タンパク質のグルーピングを支持している。種及びGenBank登録番号は、次の通りである:hAT−element,A.thaliana AC068324; Tam3,A.majas X55078; Homer,B.tryoni AF110403; Cryptl,C.parasitica AF283502; Hobo,D.melanogaster X04705; hermit,L.cuprina U22467; hobo,M.brassicae AF487501; Hermes,M.domestica L34807; Slide,N.tabacum X97569; THELMA13,S.latifolia AY172036; Restless,T.inflatum Z69893。(5)Dart及びnDartの存在における多型性 予期されるように、Dartのサザンブロット分析により、多くのバンドがジャポニカ品種で検出された(図6)。インディカ品種でも、また、多くのバンドが検出された。しかし、インディカにおけるバンドのパターンは、ジャポニカにおけるそれと相違していた。 図6に、Dartの多型について、サザンブロット解析した結果を示す。レーン1−5は、「IR36」、「Kasalath」、「日本晴」、「ほしのゆめ」、「Italica Livorno」である。DNAは、XbalIとHindIIIで消化した。図4に示されたDart中のORFの296bpがプローブとして用いられた。Mは、λ−HindIIIで消化されたサイズマーカーを示す。「日本晴」では、nDartは、テストされた全ての10の遺伝子座の上に存在していた(表1)。nDartの存在における多型性は、ジャポニカ品種の中で観察された。「ほしのゆめ」は、nDartの6つの因子を持ち、2つの遺伝子座、nDart1−4(3−2)及びnDart1−12は、高い頻度の切り出しがみられた。「ほしのゆめ」におけるnDart1−4(3−1)遺伝子座の配列は、nDartは、育種の過程の間に切り出されたことを示しており、nDart1−4(3−1)は、活性であることを示している(図7)。 「Italica Livorno」は、3つのnDartを持ち、それらは、nDart1−4(3−2)、nDart1−9及びnDart1−11の遺伝子座にあった。「Italica Livorno」では、体細胞での切り出しは、どの遺伝子座においても観察されなかった。「Italica Livorno」におけるnDart1−12遺伝子座の配列は、nDartは育種の過程の間に切り出されたことを示している(図7)。これに対し、インディカ「Kasalath」は、nDart1−7の1つの因子だけを有している。10のテストされた遺伝子座で検出されたこれらの多型性は、2つの亜種への分化の後にnDartが増幅したことを示唆している。 MgPIXMT遺伝子座に挿入されたnDart−Aの配列は、nDart1−3(6)、nDart1−3(8)、nDart1−4(3−2)及びnDart1−4(3−1)と完全に同一であった。このうち、nDart1−4(3−2)遺伝子座のみが、親品種で存在した。加えて、「ほしのゆめ」のnDart1−4(3−2)において、高い頻度の切り出しが観察された。本発明者らは、第3染色体上のnDart1−4(3−2)が、アルビノ変異体における第6染色体のMgPIXMT遺伝子に転移したと結論付けた。 図7に、MgPIXMT、nDart1−4(3−1)及びnDart1−12遺伝子座における、nDartの挿入の種々の種類の遺伝子変異を示す。欠失された塩基は、バーで示される。挿入された塩基は、nDart領域の下にボックスで示される。MgPIXMTにおける番号は、一つのアルビノ個体、アルビノ39からの12クローンにおける配列の割合を示す。(6)MgPIXMT遺伝子における遺伝子変異 MgPIXMT遺伝子におけるnDartの切り出しに伴う遺伝子変異を、一つのアルビノ植物から由来した12のクローンの中で比較した(図7)。それらは、4つの異なる種類の配列に分けられた。これらの11クローンにおいて、8bp及び6bpの挿入が検出された(#2−4)。これは、遺伝子にフレーム−シフトを起こし、遺伝子の機能の消失になると考えられた。あるいは、アミノ酸の付加によりタンパク質の機能の変化が生じると考えられた。一つのクローンのみがnDart(#5)の正確な欠如を示す配列を有していた。(7)結論 アルビノ変異体を用いて、本発明者らは、植物体における活性な2因子トランスポゾンを同定した。このトランスポゾンは、クラス2トランスポゾンのhATスーパーファミリーに属していた。イネ植物体におけるnDart活性の品種的な違いは、ジャポニカ品種で観察された。「ほしのゆめ」は、2つの活性nDart因子を持ち、また、「日本晴」は、非活性のnDart因子を持っていた。これらの違いは、各品種での活性Dartの違いによると考えられる。「ほしのゆめ」は、活性Dartを持つ。「日本晴」におけるDartは、遺伝的に又は後成的に不活性であると考えられる。 イネゲノムにおけるnDart因子の数は少ないが、これは、イネの機能ゲノム学における遺伝子の符号化(タギング)のための突然変異誘発の手段として利点をもたらす。すなわち、転移したnDart因子を生物学的手法でゲノム中を探索する場合に、既存の因子数が少ないと、新規因子を発見する上で、労力が少なくてすむ。 本発明のトランスポゾンは、トウモロコシのAc/Ds、キンギョソウのTam3と同型のDNA型のトランスポゾンである。本トランスポゾンは、607bpからなる非自律性因子nDartと、約3,500bpからなる自律性因子Dartである。Dartは、転移酵素(トランスポボース)をコードすると考えられる遺伝子を有している。非自律性因子nDartは、それ自身では転移することができない。自律性因子Dartの存在下において、非自律性因子nDartは転移する。 本発明のトランスポゾンは、イネ品種「ほしのゆめ」と「Italica Livorno」の交雑後代で生じたアルビノ突然変異遺伝子から見出されたものであるが、両品種は、いずれも正常型の遺伝子を持っており、非自律性因子nDartがクロロフィル合成遺伝子に転移(挿入)したことによって、機能を消失し、アルビノ突然変異となったものである。イネ品種「日本晴」のゲノム塩基配列に対して、相同性検索を行ったところ、nDartは13個、Dartは51個見出された。しかしながら、「日本晴」では、いずれのnDartにおいても、転移が見られなかった。 13個のnDartのうち、10個について、稲品種「ほしのゆめ」を用いて転移活性を調べた結果、2個のnDartが転移活性を示した。このことから、「ほしのゆめ」には、転移活性のあるDartが存在していると考えられた。本発明の非自律性因子には、配列番号1〜14のいずれかの塩基配列を有するnDart及びそれと高い相同性を有する塩基配列を有し、かつ同一の活性を有する非自律性因子が含まれる。また、本発明の自律性因子には、配列番号15〜65のいずれかの塩基配列を有するDart及びそれと高い相同性を有する塩基配列を有し、かつ同一の活性を有する自律性因子が含まれる。本発明において、上記配列番号の塩基配列と高い相同性を有する塩基配列を有し、かつ同一の活性を有するとは、上記配列番号で示される塩基配列の一部の塩基が置換、付加又は欠失し、かつ同一の活性を維持しているものを意味する。 自律性因子Dart及び非自律性因子nDartは、共に広く多くの栽培イネ品種に分布している。しかしながら、転移活性を有する自律性因子のDartは、極限られた品種にしか存在していない。そのため、非自律性因子nDartの転移を利用した遺伝子破壊法の開発においては、転移活性を有する自律性因子Dartが必要不可欠となるが、本発明のnDart/Dartは、同一品種内のnDart/Dartで転移が生じているので、従来のトランスポゾンと比べて、遺伝子解析、機能変異、機能消失、及び新品種育種等の試験を実施する上で、極めて有利であると言える。 本発明のイネトランスポゾンを特定の生物種に遺伝子導入することにより、遺伝子破壊が可能であり、また、それにより、遺伝子破壊体が作製される。この場合、遺伝子破壊は、イネに限らず、イネ以外の植物種、微生物、動物及びその組織にも適用可能であり、生物種の種類は特に制限されるものではない。本発明のトランスポゾンは、例えば、イネ遺伝子の機能解析に代表される遺伝子機能解析等の手法として、好適に利用することができる。 本発明により、(1)イネトランスポゾンの非自律性因子nDartが提供される、(2)該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartが提供される、(3)イネトランスポゾンnDart/Dartを利用した遺伝子の単離方法及び遺伝子機能の解析方法を提供できる、(4)イネトランスポゾンnDart/Dartを利用した変異型遺伝子の作出方法を提供できる、(5)イネトランスポゾンnDart/Dartをイネ優良品種に導入し、その変異を利用することによるイネ品種作出及び育成方法を提供できる、(6)上記nDart及びDartの新規塩基配列を提供できる、(7)イネ品種の交配により、非自律性因子nDartを転移させることが可能となり、それにより、遺伝子機能の改変された品種を作出することが可能となる、(8)イネ品種の交配により、新しい遺伝子機能を発現する品種を作出することが実現できる、(9)上記nDart/Dartをイネ以外の植物種(生物種)に遺伝子導入し、変異型遺伝子を作出、単離する方法を提供することができる、という効果が奏される。 次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。(1)アルビノ変異体の分離 アルビノ変異体は、野生型の表現型を示す、温帯ジャポニカイネ品種「ほしのゆめ」と「Italica Livorno」の間の戻し交雑された後代から分離された。これらの2つの品種の間のF1植物に「ほしのゆめ」を戻し交雑し、BC3F1を作出した。BC3F1植物の自家授粉から得られたBC3F2集団において、劣性変異として、アルビノ変異体が観察された。(2)ポジショナルクローニング BC3F2集団における16のアルビノ植物を用いて、アルビノ遺伝子の1次マッピングを行い、遺伝子は、第6染色体の短腕に位置し、SSRマーカーRM1369近傍にあることが分かった。次に、BC2F2及びBC3F2からの558個体を用いて、高精度マッピングを行った。公開されているSSRマーカー及び独自開発の2つのSSR(P3−2,P3−13)及び3つのCAPS(CAPSX,CAPSY,CAPSZ)マーカーを用いて、連鎖分析を行った。連鎖分析とマーカーの開発を文献(Fujino K, Sekiguchi H, Sato T, Kiuchi H, Nonoue Y, Takeuchi Y, Ando T, Lin SY, Yano M (2004), Mapping of quantitative trait loci controlling low-temperature germinability in rice (Oryza sativa L.), Theor. Appl. Genet., 108:794-799)に記載の方法で行った。(3)分子解析 アルビノ遺伝子座及び10nDart遺伝子座における多型性の検出のために、ExTaq(Takara)を用いて、葉組織の全ゲノムDNAからPCR産物を増幅した。各遺伝子座におけるnDartの存在又は欠如は、シークエンシングにより確認した。PCR産物は、TAクローニングキット(プロメガ社)を用いてクローン化した。シークエンシングは、BigDyeTerminator1.1(ABI)を用いて行った。サザンブロット分析には、3つのジャポニカ品種、「日本晴」、「ほしのゆめ」及び「Italica Livorno」、2つのインディカ品種、「Kasalath」及び「IR36」を使用した。全DNAは、XbaIあるいはHindIIIで消化し、DartにおけるORF中の296bpをプローブとして用いた。DNA抽出、PCR増幅及びサザンブロット分析は、文献(Fujino K, Sekiguchi H, Sato T, Kiuchi H, Nonoue Y, Takeuchi Y, Ando T, Lin SY, Yano M (2004), Mapping of quantitative trait loci controlling low-temperature germinability in rice (Oryza sativa L.), Theor. Appl. Genet., 108:794-799)に記載された方法に従って行った。尚、nDart調査のPCRプライマーは、表4に示した。(4)データベース解析 データベース検索は、ライス ゲノム リサーチ プログラム(RGP)(http://riceblast.dna.affrc.go.jp)あるいは日本DNAデータバンク(DDBJ)(http:ddbj.nig.ac.jp/)を用いた。系統分析は、ネイバージョイニング法及びCLUSTALXアライメントで行った。(1)転移性nDartの同定 本発明によるトランスポゾンの非自律性因子nDartは、イネ品種「日本晴」には、少なくとも13個存在する。このうち、4個は塩基配列が全く同一であったが、その他は数塩基置換あるいは欠失により、それぞれ異なる塩基配列を有していた。「日本晴」では、このうち10個については、体細胞レベルでの転移性(切り出し)はみられなかった。イネ品種「ほしのゆめ」では、nDart1−4(3−2)及びnDart1−12において、体細胞レベルでの転移性(切り出し)がみられた。このことから、nDartは、転移性のある因子とない因子があり、また、品種によっても各因子の転移性が異なることが考えられた。 「日本晴」のnDart遺伝子座を利用して、その転移性を明らかにした。各nDartを増幅するPCRプライマーを設計し、PCR増幅を行った。このとき、得られる増幅産物により体細胞レベルでの転移性(切り出し)が判定できる。すなわち、nDartを含む大きさの1個のPCR産物が得られる場合は、転移性がない。一方、そのPCR産物に加え、nDartを含まない大きさのPCR産物の2産物が得られる場合は、体細胞レベルでの転移性(切り出し)があると判断される。更に、体細胞レベルでの転移性(切り出し)が認められた場合には、nDartを含まない大きさのPCR産物をクローニングして塩基配列の決定を行った。これにより、トランスポゾンの転移性(切り出し)に伴う遺伝子変異(footprint)を確認できる。 「日本晴」の10個のnDartの遺伝子座について、70種類のイネ品種を用いて、上記の解析を行った。その結果、表2の通りの4個のnDartの遺伝子座において、転移性が認められ、それらは、各品種においてのみ転移性があった。また、このことは、非自律性因子nDartを転移させる活性型の自律性因子Dartを、これら品種が有していることを示す。(2)非自律性因子nDartによる遺伝子変異の作出 トランスポゾンは、遺伝子あるいは遺伝子機能領域に挿入することによりその機能を欠失させる。一方、その挿入部位から更にそのトランスポゾンが転移(切り出し)する。このとき、トランスポゾンの転移性(切り出し)に伴う遺伝子変異(footprint)が生じる。この遺伝子変異の変異性を明らかにすることで、nDartの利用性が示される。そこで、体細胞レベルでの転移性(切り出し)が認められた品種及びnDartの遺伝子座について、PCR増幅を行い、nDartを含まない大きさのPCR産物をクローニングして、塩基配列の決定を行った。この塩基配列を比較し、nDartの遺伝子変異(footprint)の特性を解析した。 7品種、8遺伝子座、56クローンについて、遺伝子変異の解析を行った。43クローン(76.8%)では、フレームシフトとなる塩基の挿入がみられた。1クローン(1.8%)において、正確なnDartの転移性(切り出し)がみられた。また、3bp及び6bpの挿入は、12クローン(21.4%)でみられた。これは、アミノ酸で1及び2残基の挿入となり、遺伝子機能の改変が期待される変異であった。表3に、遺伝子変異体、表4に、nDart増幅プライマーを示す。 尚、本実施例で用いた実験手法は、以下の通りである。(1)DNA抽出方法;イネの葉から、CTAB法により抽出した。(2)PCR法;抽出したDNAを鋳型として、目的領域のPCR増幅を行った。各nDart遺伝子座を増幅するプライマーを、表4に示した。PCR産物は、アガロースゲル電気泳動を行い、判定した。(3)塩基配列の決定法;目的のPCR産物をTAクローニングし、BigDyeTeminater(ABI社)により、塩基配列の決定を行った。 本発明においては、nDartとして、nDart1−1(配列番号1)、nDart1−10(同2)、nDart1−11(同3)、nDart1−12(同4)、nDart1−2(同5)、nDart1−3(6)(同6)、nDart1−3(8)(同7)、nDart1−4(3−1)(同8)、nDart1−4(3−2)(同9)、nDart1−5(同10)、nDart1−6(同11)、nDart1−7(同12)、nDart1−9(同13)、nDart1−A(同14)が提供される。 また、Dartとして、図9及び配列表に示すDart01〜Dart51(配列番号15〜65)が提案される。そして、本発明のnDart及びDartは、これらの塩基配列のみに限定されるものではなく、これらの塩基配列において、その活性が消失されない範囲内で、一又はそれ以上の塩基が付加、置換、又は欠失した塩基配列も本発明のnDart及びDartに包含される。即ち、本発明においては、本発明のnDart及びDartの活性が消失されない限り、そして、その塩基配列が実質的に変化しないものであれば、その塩基配列において、一部の塩基の配列を任意に変更することが可能である。 以上詳述したように、本発明は、トランスポゾンを利用した遺伝子解析方法に係るものであり、本発明により、イネトランスポゾン非自律性因子nDartと、該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを利用した、遺伝子の単離方法及び遺伝子機能の解析方法、変異型遺伝子の作出方法及び遺伝子機能の解析方法、変異型遺伝子の作出方法、イネ品種作出及び育成方法、及びイネ品種等を提供することが可能となる。本発明は、特に、非自律性因子nDartによる遺伝子変異の作出と、該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartとを利用して、イネ品種の交配により、新しい遺伝的機能を発現するイネ品種を作出し、提供することを可能とする新しいイネ品種作出技術を提供するものとして有用である。更に、本発明は、上記nDart/Dartをイネ以外の植物種(生物種)に遺伝子導入し、遺伝子の単離、解析等を行うことを可能にするものとして有用である。野生型及びアルビノ(albino)変異体における葉身の植物表現型を示す。アルビノ遺伝子のポジショナルクローニングを示す。アルビノ変異体におけるMgPIXMTの配列構造を示す。Dartの構造を示す。Dart因子とhATスーパーファミリーに属するトランスポゾンの系統分類関係を示す。Dartの多型性のバンドを示すサザンブロット解析の結果を示す。MgPIXMT、nDart1−4(3−1)及びnDart1−12遺伝子座におけるnDart挿入の欠如の種類を示す。nDartの分布及び転移活性を示す。「日本晴」ゲノムに見出されたDart因子(Dart01〜Dart51)とそのTSD及びTIR配列を示す。自律性因子Dart(Dart01)の配列を示す。非自律性因子nDart1−1の配列を示す。非自律性因子nDart1−10の配列を示す。非自律性因子nDart1−11の配列を示す。非自律性因子nDart1−12の配列を示す。非自律性因子nDart1−2の配列を示す。非自律性因子nDart1−3(6)の配列を示す。非自律性因子nDart1−3(8)の配列を示す。非自律性因子nDart1−4(3−1)の配列を示す。非自律性因子nDart1−4(3−2)の配列を示す。非自律性因子nDart1−5の配列を示す。非自律性因子nDart1−6の配列を示す。非自律性因子nDart1−7の配列を示す。非自律性因子nDart1−9の配列を示す。非自律性因子nDart1−Aの配列を示す。 イネトランスポゾンの非自律性因子nDartと該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを利用して、イネ品種におけるトランスポゾンの転移性に伴う遺伝子変異の変異性を解析することを特徴とする遺伝子及び/又は遺伝子機能の解析方法。 イネトランスポゾンの非自律性因子nDartを、該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを有するイネ品種に導入し、トランスポゾンの転移性に伴う遺伝子変異の変異性を解析する請求項1に記載の遺伝子及び/又は遺伝子機能の解析方法。 イネトランスポゾンの非自律性因子nDartと該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを利用して、イネ優良品種において、その変異を利用して遺伝子機能を改変されたイネ品種を作出することを特徴とするイネ品種の作出方法。 イネトランスポゾンの非自律性因子nDartを、該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを有するイネ優良品種に導入し、その変異を利用して遺伝子機能を改変されたイネ品種を作出する請求項3に記載のイネ品種の作出方法。 イネトランスポゾンの非自律性因子nDartと該因子を転移する活性型の自律性因子Dartを利用して、イネ品種において、トランスポゾンの転移に伴い形成される変異型遺伝子を作出、単離することを特徴とする変異型遺伝子の作出方法。 イネトランスポゾンの非自律性因子nDartを、該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを有するイネ品種に導入し、トランスポゾンの転移に伴い形成される変異型遺伝子を作出、単離する請求項5に記載の変異型遺伝子の作出方法。 請求項5又は6に記載の方法で作出した変異型遺伝子を、イネ優良品種に導入し、所定の遺伝子機能を発現するイネ品種を作出することを特徴とするイネ品種の作出方法。 請求項3又は4に記載の方法で作出された、遺伝子機能の改変された、あるいは所定の遺伝子機能を発現することを特徴とするイネ品種。 イネトランスポゾンの非自律性因子nDartと該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを利用して、イネ以外の植物種に遺伝子導入し、遺伝子を作出、単離することを特徴とする変異型遺伝子の作出方法。 nDartとして、nDart1−4(3−2)、nDart1−12、nDart1−4(3−1)及びnDart1−3(6)の中から選択された1種を用いる、請求項1から6又は9のいずれかに記載の方法。 配列番号1〜14のいずれかの塩基配列を有する、又はそれと高い相同性を有する塩基配列を有し、かつ同一の活性を有することを特徴とするイネトランスポゾンの非自律性因子nDart。 配列番号15〜65の塩基配列を有する、又はそれと高い相同性を有する塩基配列を有し、かつ同一の活性を有することを特徴とするイネトランスポゾンの自律性因子Dart。 【課題】トランスポゾンを利用した遺伝子解析方法等を提供する。【解決手段】イネトランスポゾンの非自律性因子nDartと該因子を転移させる活性型の自律性因子Dartを利用して、イネ品種におけるトランスポゾンの転移性に伴う遺伝子変異の変異性を解析することから成る遺伝子及び/又は遺伝子機能の解析方法、非自律性因子nDartと自律性因子Dartを利用して、イネ優良品種において、その変異を利用して遺伝子機能を改変されたイネ品種を作出することから成るイネ品種の作出方法、非自律性因子nDartと自律性因子Dartを利用して、イネ品種において、トランスポゾンの転移に伴い形成される変異型遺伝子を作出、単離することから成る変異型遺伝子の作出方法、及び非自律性因子nDart及び自律性因子Dart。【選択図】図2配列表


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