生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_Dダイマー測定用キット
出願番号:2005051534
年次:2006
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/543,G01N 33/546,G01N 33/555


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竹下 浩生 星子 進 奥田 昌宏 菊川 紀弘 JP 2006234676 公開特許公報(A) 20060907 2005051534 20050225 Dダイマー測定用キット シスメックス株式会社 390014960 野河 信太郎 100065248 竹下 浩生 星子 進 奥田 昌宏 菊川 紀弘 G01N 33/53 20060101AFI20060811BHJP G01N 33/543 20060101ALI20060811BHJP G01N 33/546 20060101ALI20060811BHJP G01N 33/555 20060101ALI20060811BHJP JPG01N33/53 DG01N33/543 501MG01N33/546G01N33/555 4 OL 11 本発明は、フィブリンの分解産物であるDダイマーの測定に用いられるDダイマー測定用キットに関する。 臨床検査、特に血液凝固線溶検査の分野において、Dダイマーを測定することが知られている。Dダイマーは血液凝固分子マーカーの1つであり、これを測定することは、凝固・線溶系を亢進する各種血栓症やDIC(播種性血管内凝固症候群)の診断、病態把握、治療効果判定などの指標を得るために重要である。 Dダイマーとは、血液中のフィブリノゲンがトロンビンなどの働きにより凝固して形成されるポリマーである安定化フィブリンが、プラスミンのような酵素により分解されて得られるフィブリン分解産物のうちの高分子画分のことであり、DD/E画分およびこれを基本単位とするDD/E画分の多量体の総称である。DD/E画分の多量体は、DXD/YY画分(DD/E画分の3量体)、YXY/DXXD画分(DD/E画分の5量体)、DXXD/YXXY画分(DD/E画分の7量体)などを含む。 また、プラスミンのような酵素は、血液中に存在するフィブリノゲンも分解することができ、DD/E画分の構成要素であるD画分、E画分、X画分、Y画分のようなフィブリノゲン分解産物をも生成する。 よって、血栓症患者の血液中にはフィブリンが分解されて生じるDダイマーと、フィブリノゲンが分解されて生じるフィブリノゲン分解産物とが混在することになる。 Dダイマーの測定方法としては、Dダイマーを認識するモノクローナル抗体を、ラテックス粒子、プラスチックプレートなどの固相に固定してDダイマーと結合させる抗原抗体反応に基づく方法、すなわちラテックス凝集法やELISAなどが知られている(特許文献1参照)。 しかしながら、抗原抗体反応に基づく方法において、現在用いられている固相に結合させるモノクローナル抗体は、Dダイマーに反応性を有すると共に、Dダイマーと類似の構造を有するX画分および/またはY画分に対する反応性も有する場合がある。このようなモノクローナル抗体を用いると、固相に結合したモノクローナル抗体が測定時にDダイマー以外の画分にも結合し、実際のDダイマーの量より低い値が検出されるという問題があった。特開昭63−79900号公報 そこで、本発明は、Dダイマーに対する反応特異性が比較的低いモノクローナル抗体を用いても、実際のDダイマーの量をより正確に測定することができるDダイマー測定用キットを提供することを目的とする。 本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体を予め検体と混合しておくと、次いで反応させる、固相に結合したモノクローナル抗体と検体中のDダイマーとの特異的反応性が向上し、Dダイマーの量を正しく測定できることを見出して本発明を完成した。このことは、X画分やY画分が、モノクローナル抗体との結合部位を1つしか持っていないのに対して、Dダイマーは複数の結合部位をもっていることに起因すると推測される。 よって本発明は、フィブリンの分解産物であるDダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体を含む液状試薬と、Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体が固定化された担体またはそれを含む溶液とを組み合わせてなるDダイマー測定用キットである。 上記の液状試薬に含まれるDダイマー反応性を有するモノクローナル抗体は、溶解されてなるものでもよいし、不溶性の担体に結合されてなるものでもよいが、好ましくは溶解されてなるものである。 本発明により、Dダイマーに対する反応性を有するモノクローナル抗体を固定化したものを用い、実際のDダイマーの量を正しく測定できる、Dダイマー測定用キットが提供される。 本発明のDダイマー測定用キットにおいて、液状試薬に含まれるDダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体は、Dダイマーに反応性を有するものであれば特に限定されないが、なかでも受託番号FERM P−19687として寄託されたハイブリドーマ(平成16年2月17日に独立行政法人産業技術総合研究所に寄託)が産生するモノクローナル抗体が好ましい。 上記のモノクローナル抗体は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ウマなどのいずれに由来するものであってもよいが、マウスが特に好ましい。また、抗体はIgG、IgMなどのいずれであってもよい。 上記のモノクローナル抗体は、公知の方法により得ることができる。すなわち、抗原としてのDダイマーとアジュバントとを任意に混合して動物を免疫にし、該動物から血清を得て、該血清からモノクローナル抗体を精製する方法が挙げられる。該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、上記のようにして免疫した動物由来のBリンパ球と各種骨髄腫細胞とを融合することにより得ることができる。 具体的には、以下の方法により、本発明に用いられるモノクローナル抗体を得ることができる。(抗原の取得) 抗原として用いるDダイマーは、プラスミンのようなフィブリンを分解し得る酵素をフィブリンに作用させて得ることができる。該Dダイマーは、DD/E画分より大きい分子量の画分を含むものが好ましい。このようなものとしては、DD/E画分の2〜5量体が挙げられる。また、Dダイマーのアミノ酸配列に基づいて、遺伝子工学的手法により得られるものを抗原として用いてもよい。 原料となるフィブリンは、市販のものを用いてもよいし、フィブリノゲンにトロンビン、XIII因子およびカルシウム塩を作用させて得られるものを用いてもよい。(免疫方法) 上記のようにして得られる抗原を、アジュバントと任意に混合し、適当な緩衝液に溶解または懸濁して得られる抗原液で、動物を免疫することができる。該抗原液中の抗原の濃度は、50〜500μg/mL程度が好ましい。抗原の免疫原性が低い場合は、アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニンのようなキャリアータンパク質を任意に抗原と結合させてもよい。 アジュバントとしては、公知のアジュバントを用いることができ、例えばフロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、Ribi(MPL)、Ribi(TDM)、Ribi(MPL+TDM)、百日咳ワクチン(Bordetella pertussis vaccine)、ムラミルジペプチド(MDP)、アルミニウムアジュバント(ALUM)およびこれらの組み合わせが挙げられる。初回免疫時にFCAを用い、追加免疫時にFIAやRibiアジュバントを用いる組み合わせが特に好ましい。 免疫にする動物は、マウス、ラット、ハムスター、ウマ、ヤギ、ウサギなどのいずれであってもよく、好ましくはマウス、より好ましくはBALB/cマウスである。 免疫法は、使用する抗原の種類やアジュバントの有無により適宜選択することができる。例えば、マウスを用いる場合、アジュバント混合抗原液0.05〜1 mL (抗原10〜200μg)を腹腔内、皮下、筋肉内または(尾)静脈内に注射し、初回免疫から約4〜21日毎に1〜4回追加免疫を行い、さらに約1〜4週間後に最終免疫を行う。抗原量を多くして腹腔内注射することにより、抗原液にアジュバントを用いずに免疫を行ってもよい。追加免疫の約5〜10日後に血液を採取して抗体価を測定する。抗体価は、後記の抗体価アッセイのような公知の方法に従って測定できる。最終免疫から約3〜5日後に、免疫された動物から脾臓を摘出し、脾細胞を分離して抗体産生細胞を得ることができる。(モノクローナル抗体の作製) モノクローナル抗体は、従来公知の方法、例えばKohler and Milstein, Nature, 256, 495-497 (1975)に記載の方法に従って作製することができる。 用いる骨髄腫細胞は、マウス、ラット、ヒトなどいずれに由来するものであってもよく、例えば、マウスミエローマP3X63-Ag8、P3X63-Ag8-U1、P3NS1-Ag4、SP2/o-Ag14、P3X63-Ag8・653などの株化骨髄腫細胞が挙げられる。骨髄腫細胞には免疫グロブリン軽鎖を産生するものがあり、これを融合対象として用いると、抗体産生細胞が産生する免疫グロブリン重鎖とこの軽鎖とがランダムに結合することがあるので、特に免疫グロブリン軽鎖を産生しない骨髄腫細胞、例えばP3X63-Ag8・653やSP2/o-Ag14などを用いるのが好ましい。抗体産生細胞と骨髄腫細胞とは、同種動物、特に同系統の動物由来のものが好ましい。 抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合させてハイブリドーマを作製する方法としては、ポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法、センダイウイルスを用いる方法、電気融合装置を用いる方法などが挙げられる。PEGを用いる場合、約30〜60%のPEG(平均分子量1,000〜6,000)を含む適当な培地または緩衝液中に脾細胞と骨髄腫細胞とを1〜10:1、好ましくは5〜10:1の混合比で懸濁し、温度約25〜37℃、pH6〜8の条件下で約30秒〜3分間程度反応させればよい。反応終了後、細胞を洗浄し、PEG含有溶液を除いて培地に再懸濁し、マイクロタイタープレート上に播種して培養する。 上記のようにして融合させた細胞を選択培地上で培養して、ハイブリドーマの選択を行うことができる。選択培地としては、融合細胞のみが増殖し得る培地であればよく、通常、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地が用いられる。ハイブリドーマの選択は、通常、細胞融合の1〜7日後に培地の一部、好ましくは約半量を選択培地と交換し、さらに2〜3日毎に同様にして培地交換を繰り返しながら培養し、培養終了後、顕微鏡観察によりハイブリドーマのコロニーが生育しているウェルを選択することにより行うことができる。 このようにして得られたハイブリドーマが所望の抗体を産生しているか否かは、そのハイブリドーマの培養上清を採取して、抗体価アッセイを行うことにより確認することができる。抗体価アッセイは、公知の方法により行うことができる。例えば固相に固定化した抗原タンパク質に段階希釈した培養上清を添加し、さらに蛍光物質、酵素または放射性同位体(RI)で標識した二次抗体(抗グロブリン抗体、抗IgG抗体、抗IgM抗体など)を反応させることにより、抗体を検出することができる。 上記の抗体価アッセイにより所望の抗体を産生していることが確認されたハイブリドーマは、限界希釈法、軟寒天法、蛍光励起セルソーターを用いる方法などにより、単一クローンを分離することができる。例えば、限界希釈法の場合、ハイブリドーマのコロニーを1細胞/ウェル程度となるように培地で段階希釈して培養することにより、目的とする抗体を産生するハイブリドーマを単離することができる。 ハイブリドーマからのモノクローナル抗体の取得方法は、モノクローナル抗体の必要量やハイブリドーマの性状により、適宜選択することができる。例えば、該ハイブリドーマを移植したマウスの腹水から取得する方法、細胞培養により培養上清から取得する方法などが挙げられる。マウスの腹腔内で増殖可能なハイブリドーマであれば、腹水から数mg/mLの高濃度のモノクローナル抗体を得ることができる。インビボで増殖できないハイブリドーマの場合には、細胞培養の培養上清からモノクローナル抗体を取得することができる。この場合は、抗体産生量が低いが、免疫グロブリンや他の夾雑物の混入が少なく、精製が容易である。 ハイブリドーマを移植したマウス腹腔内から抗体を取得する場合、例えば予めプリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)のような免疫抑制作用を有する物質を投与したBALB/cマウスの腹腔内へハイブリドーマ(約106個以上)を移植し、約1〜3週間後に貯留した腹水を採取する。異種ハイブリドーマを移植する場合には、ヌードマウス、放射線処理マウスなどを用いるのが好ましい。 細胞培養上清から抗体を取得する場合、例えば、細胞維持に用いられる静置培養の他に、高密度培養法またはスピナーフラスコ培養法などによりハイブリドーマを培養して、抗体を含有する培養上清を得ることができる。培地に血清を添加すると、他の抗体やアルブミンなどの夾雑物が含まれることとなり、抗体の精製が煩雑になることが多いので、培地への血清の添加量は可能な限り少なくするのが好ましい。さらに好ましいのは、ハイブリドーマを常法により無血清培地に馴化させ、無血清培地で培養することである。これにより、抗体精製が容易になる。 腹水や培養上清からのモノクローナル抗体の精製は、公知の方法により行うことができ、例えば硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウムを用いる塩析による分画法、ポリエチレングリコール分画法、エタノール分画法、DEAEイオン交換クロマトグラフィー法、ゲルろ過クロマトグラフィー法などに基づく方法が挙げられる。 目的のモノクローナル抗体がマウスIgGである場合、プロテインA結合担体または抗マウスイムノグロブリン結合担体を用いたアフィニティークロマトグラフィー法を用いて抗体を精製することができる。 本発明のDダイマー測定用キットを構成する液状試薬は、緩衝液に、上記のようにして得られるモノクローナル抗体を懸濁または溶解してなる。緩衝液中のモノクローナル抗体の濃度は、1〜100μg/mLが好ましく、より好ましくは5〜50μg/mLである。 緩衝液としては、pH5〜10、好ましくはpH6〜9に緩衝作用を有するものが好ましく、リン酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、トリエタノールアミン−塩酸、グッド緩衝液などが挙げられる。グッド緩衝液としては、MES、Bis−Tris、ADA、PIPES、Bis−Tris−Propane、ACES、MOPS、MOPSO、BES、TES、HEPES、HEPPS、Tricine、Tris、Bicine、TAPSなどの各種緩衝液が挙げられる。なかでも、MOPSO(2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸)が特に好ましい。 上記の液状試薬は、タンパク質安定化剤(例えばウシ血清アルブミン(BSA)など)、防腐剤(例えばアジ化ナトリウム、フェニルメタンスルホニルフルオリドなど)、pH調整剤、増感剤(例えばポリビニルピロリドン、ポリアニオン、ポリエチレングリコール、多糖類など)、無機塩(例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウムなど)などの添加剤を含み得る。 本発明のDダイマー測定用キットは、もう一方の構成要素として、Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体が固定化された担体またはそれを含む溶液を含む。該モノクローナル抗体は、上記の液状試薬に含まれるモノクローナル抗体と同じであることが好ましい。 モノクローナル抗体を固定化する担体としては、有機高分子化合物、無機化合物、赤血球などが挙げられる。有機高分子化合物としては、不溶性アガロース、不溶性デキストラン、セルロース、ラテックス、ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルアクリレートなどが挙げられる。無機化合物としては、シリカ、アルミナなどが挙げられる。なかでも、ラテックスおよび赤血球が特に好ましい。 上記の担体の形状は特に限定されず、粒子状、平面状などいずれの形状でもよい。粒子状である場合、粒子の平均粒径は測定機器などに応じて適宜選択することができるが、通常、0.05〜0.5μmが適当である。 モノクローナル抗体を担体に固定化する方法としては、物理的吸着法および化学的結合法のいずれであってもよいが、担持操作が簡便であるので物理的吸着法がより好ましい。 上記の担体が赤血球またはラテックス粒子である場合、Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体が固定化された担体は、適当な緩衝液に懸濁されてなるのが好ましい。緩衝液としては、pH5〜10、好ましくはpH6〜9に緩衝作用を有するものが好ましく、リン酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、トリエタノールアミン−塩酸、グッド緩衝液などが挙げられる。グッド緩衝液としては、MES、Bis−Tris、ADA、PIPES、Bis−Tris−Propane、ACES、MOPS、MOPSO、BES、TES、HEPES、HEPPS、Tricine、Tris、Bicine、TAPSなどの各種緩衝液が挙げられる。なかでも、MOPSOが特に好ましい。 上記の緩衝液は、さらにタンパク質安定化剤(例えばBSAなど)、防腐剤(例えばアジ化ナトリウム、フェニルメタンスルホニルフルオリドなど)、pH調整剤、無機塩(例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウムなど)などの添加剤を含み得る。 本発明のDダイマー測定用キットは、上記の液状試薬と、モノクローナル抗体が固定化された担体を含む溶液とからなる形態が好ましい。該溶液は、モノクローナル抗体を固定化したラテックス粒子が緩衝液に懸濁された形態であるのが、特に好ましい。 液状試薬と、モノクローナル抗体が固定化されたラテックス粒子を緩衝液に懸濁してなる溶液とを組み合わせてなる本発明のDダイマー測定用キットを用いるDダイマー測定方法について、以下に具体的に説明する。 まず、液状試薬と検体とを反応セル中で混合してインキュベートする。検体としては血清、血漿、尿などが挙げられる。インキュベートする時間は1〜10分間程度でよい。液状試薬と検体とを混合する際の容量比は、5:1〜50:1程度が適当である。 液状試薬と検体との混合物に、モノクローナル抗体が固定化されたラテックス粒子を含む溶液を添加する。該溶液中のラテックス粒子の濃度は、0.5〜10g/Lが好ましく、より好ましくは0.75〜5g/Lである。また、該混合物と溶液とを混合する際の容量比は、1:0.05〜1:1.5程度が適当である。 該溶液を添加して混合した後、1分間当たりの吸光度変化量を測定して、既知の濃度のDダイマー標準物質を用いて得られる検量線から、検体中のDダイマーの量を算出することができる。 本発明のDダイマー測定用キットを用いれば、検体中にDダイマーの構造類似成分、例えばX画分やY画分が存在しても、液状試薬中のモノクローナル抗体がこれらの画分と前もって結合するので、続いて添加される固定化モノクローナル抗体とこれらの画分との反応性は抑制されると考えられる。これは、X画分やY画分はモノクローナル抗体との反応部位が1つしかないのに対して、Dダイマーにはモノクローナル抗体との反応部位が複数あることによるものと考えられる。よって、測定しようとするDダイマーがより高い特異性で固定化モノクローナル抗体と反応することができ、より正確にDダイマーの濃度を測定することが可能になる。 以下に、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。(1)Dダイマー溶液の調製 フィブリノゲン(シグマ社製)100 mg (5.3 mg/mL)に、塩化カルシウム、ヒトトロンビンおよびXIII因子(ERL社製)をそれぞれ最終濃度25 mM、2U/mLおよび1.25μg/mLとなるように加え、37℃で18時間反応させて、フィブリノゲンをフィブリンに変換させた。12,000×gで20分間遠心分離し、フィブリンを非凝固性物質から分離した。フィブリンを1 mm3以下に切断し、50 mM Tris緩衝液(pH 7.4) 2.5 mLに浮遊させ、プラスミン(シグマ社製)25μL (1 U/mL)を添加した。攪拌しながら37℃で3時間反応させた後、アプロチニンを最終濃度1,000 U/mLとなるように添加して分解反応を停止した。12,000×gで20分間遠心分離し、その上清を50 mM Tris緩衝液(pH 7.4)で平衡化したLysine-Sepharose 4B (容積3 mL)に充填し、クロマトグラフィーを行った。非還元下でのSDS-PAGEにより、DD/E画分の3量体以上のものを含む画分をDダイマー溶液とした。(2)モノクローナル抗体の反応特異性の検討 独立行政法人産業技術総合研究所に受託番号FERM P−19687として寄託されたハイブリドーマDD-M1653株が産生するモノクローナル抗体(以下、DD-M1653抗体という)の反応特異性を、以下に記載のウェスタンブロット法により検討した。ウェスタンブロット法 各成分の濃度が50μg/mLになるように1% (w/v) SDS溶液で調整したDD/E画分、DD/E画分の3〜5量体、X画分、Y画分、D画分、E画分およびフィブリノゲンの混合物を、0.1% (w/v) SDSを含む7.5% ポリアクリルアミドゲル上で60ボルトの定電圧で2.5時間展開させた。緩衝液には0.02% (w/v) SDS を含む 25 mM Tris-192 mM グリシン緩衝液(pH 7.5)を用いた。 このゲルに、PVDF (ポリビニリデンフルオライド)メンブレン(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を密着させ、1 mA/cm2の電流を3時間流してメンブレンにタンパク質をトランスファーした。その後、メンブレンをブロッキング液(5%スキムミルク、1% (w/v) BSA、0.1% (w/v)アジ化ナトリウムを含むPBS(137 mM NaCl、2.7 mM KCl、1.5 mM KH2PO4、8.1 mM Na2HPO4))に浸して30分間振とうした。ブロッキング液を捨て、0.05% (w/v) Tween 20を含むPBS(洗浄液)を用いて5分間、3回洗浄した。メンブレンを、DD-M1653抗体100 μg/mLおよび0.05% (w/v) Tween 20を含むPBSに浸して60分間振とうした。洗浄液で5分間、3回洗浄後、メンブレンを、2次抗体としてHRP (ホースラディッシュペルオキシダーゼ)標識ヤギ抗マウス抗体(ダコサイトメトリー社製)100 μg/mLおよび0.05% (w/v) Tween 20を含むPBSに浸して60分間振とうした。メンブレンを洗浄液で5分間、3回洗浄後、4−クロロ−1−ナフトールと過酸化水素を用いるHRP標識キット(Bio-Rad社製)を用いてタンパク質のバンドを視覚化することにより、モノクローナル抗体の反応特異性を検討した。 結果を表1に示す。 表1において、+は反応性が検出されたことを表し、−は反応性が検出されなかったことを表す。(3)イムノグロブリンサブクラスの同定 DD-M1653抗体のマウスイムノグロブリンサブクラスを、Zymed社製MONOAbタイピングキットを用いて同定した。その結果、DD-M1653抗体はIgG 2aであった。実施例1Dダイマー測定用キットの製造液状試薬の製造 ポリエチレングリコール、アジ化ナトリウムおよびBSAを含むMOPSO緩衝液(pH 7.1)に、DD-M1653抗体を10μg/mLとなるように添加して、液状試薬を製造した。DD-M1653抗体が固定化された担体の製造 10% (w/v)ポリスチレンラテックス懸濁液(積水化学株式会社製、粒径0.245μm)0.5 mLを、DD-M1653抗体を含むリン酸緩衝液(pH 7.5) 2.0 mL (抗体濃度0.625 mg/mL)に添加してボルテックスミキサーで混合した。この混合液を遠心分離し(25,000×g、20分間)、1% BSAを含むMOPSO緩衝液(pH 7.1) 2.5 mLに懸濁した。この懸濁液を遠心分離し(25,000×g、20分間)、ペレットを2% BSAを含むMOPSO緩衝液(pH 7.1) 40 mLに懸濁して、DD-M1653抗体が固定化されたラテックス粒子を含む溶液を得た。キットの製造 上記の液状試薬の入った容器と、DD-M1653抗体が固定化されたラテックス粒子を含む溶液の入った容器とを組み合わせて、本発明のDダイマー測定用キットとした。試験例1 検体14μLと、実施例1で得られた液状試薬84μLとを混合し、37℃で5分間反応させた。ここに、実施例1で得られたDD-M1653抗体が固定化されたラテックス粒子を含む溶液84μLを混合して、波長800 nmで1分間当たりの吸光度変化量を測定することにより、Dダイマー量を測定した。検体としては、上記の(1)で作製したDダイマー溶液(25μg/mL)、上記の(1)で作製したDダイマー溶液(25μg/mL)に、X画分(森永生化学研究所社製)を40μg/mLとなるように添加したもの、および上記の(1)で作製したDダイマー溶液(25μg/mL)に、X画分(森永生化学研究所社製)を20μg/mLとなるように添加したものを用いた。 結果を表2に示す。比較試験例1 試験例1と同じ検体14μLと、DD-M1653抗体を含まない試薬(ポリエチレングリコール、アジ化ナトリウムおよびBSAを含むMOPSO緩衝液(pH 7.1))84μLとを混合し、37℃で5分間反応させた。ここに、実施例1で得られたDD-M1653抗体が固定化されたラテックス粒子を含む溶液84μLを混合して、波長800 nmで1分間当たりの吸光度変化量を測定することにより、Dダイマー量を測定した。 結果を表2に示す。 表2の結果から明らかなように、DD-M1653抗体を含む液状試薬を用いる、本発明のDダイマー測定用キットを用いて得られた結果は、X画分の有無に関わらず、実際のDダイマーの量にほぼ一致した。したがって、DD-M1653抗体を含まない試薬を用いる場合に比べて、より正確なDダイマー量の測定が可能であった。 本発明により、X画分のような低分子量画分を含む検体であっても、実際に含まれるDダイマーの量をより正確に測定することができる。このことは、Dダイマーを測定する検査の信頼性を高める。 フィブリンの分解産物であるDダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体を含む液状試薬と、Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体が固定化された担体またはそれを含む溶液とを組み合わせてなるDダイマー測定用キット。 前記担体が、赤血球またはラテックス粒子である請求項1に記載のDダイマー測定用キット。 前記Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体が、前記液状試薬に溶解されてなる請求項1または2に記載のDダイマー測定用キット。 緩衝液が、ウシ血清アルブミンを含む請求項3に記載のDダイマー測定用キット。 【課題】Dダイマーに対する反応特異性が比較的低いモノクローナル抗体を用いても、実際のDダイマーの量をより正確に測定することができるDダイマー測定用キットを提供することを課題とする。【解決手段】フィブリンの分解産物であるDダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体を含む液状試薬と、Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体が固定化された担体またはそれを含む溶液とを組み合わせてなるDダイマー測定用キットにより、上記の課題を解決する。【選択図】なし


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特許公報(B2)_Dダイマー測定用キット

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_Dダイマー測定用キット
出願番号:2005051534
年次:2010
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/543,G01N 33/546,G01N 33/555


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竹下 浩生 星子 進 奥田 昌宏 菊川 紀弘 JP 4589756 特許公報(B2) 20100917 2005051534 20050225 Dダイマー測定用キット シスメックス株式会社 390014960 野河 信太郎 100065248 竹下 浩生 星子 進 奥田 昌宏 菊川 紀弘 20101201 G01N 33/53 20060101AFI20101111BHJP G01N 33/543 20060101ALI20101111BHJP G01N 33/546 20060101ALN20101111BHJP G01N 33/555 20060101ALN20101111BHJP JPG01N33/53 DG01N33/543 501DG01N33/546G01N33/555 G01N 33/53−579 特開2001−311733(JP,A) 特開2000−193663(JP,A) 特開2001−021557(JP,A) 5 2006234676 20060907 10 20080218 山村 祥子 本発明は、フィブリンの分解産物であるDダイマーの測定に用いられるDダイマー測定用キットに関する。 臨床検査、特に血液凝固線溶検査の分野において、Dダイマーを測定することが知られている。Dダイマーは血液凝固分子マーカーの1つであり、これを測定することは、凝固・線溶系を亢進する各種血栓症やDIC(播種性血管内凝固症候群)の診断、病態把握、治療効果判定などの指標を得るために重要である。 Dダイマーとは、血液中のフィブリノゲンがトロンビンなどの働きにより凝固して形成されるポリマーである安定化フィブリンが、プラスミンのような酵素により分解されて得られるフィブリン分解産物のうちの高分子画分のことであり、DD/E画分およびこれを基本単位とするDD/E画分の多量体の総称である。DD/E画分の多量体は、DXD/YY画分(DD/E画分の3量体)、YXY/DXXD画分(DD/E画分の5量体)、DXXD/YXXY画分(DD/E画分の7量体)などを含む。 また、プラスミンのような酵素は、血液中に存在するフィブリノゲンも分解することができ、DD/E画分の構成要素であるD画分、E画分、X画分、Y画分のようなフィブリノゲン分解産物をも生成する。 よって、血栓症患者の血液中にはフィブリンが分解されて生じるDダイマーと、フィブリノゲンが分解されて生じるフィブリノゲン分解産物とが混在することになる。 Dダイマーの測定方法としては、Dダイマーを認識するモノクローナル抗体を、ラテックス粒子、プラスチックプレートなどの固相に固定してDダイマーと結合させる抗原抗体反応に基づく方法、すなわちラテックス凝集法やELISAなどが知られている(特許文献1参照)。 しかしながら、抗原抗体反応に基づく方法において、現在用いられている固相に結合させるモノクローナル抗体は、Dダイマーに反応性を有すると共に、Dダイマーと類似の構造を有するX画分および/またはY画分に対する反応性も有する場合がある。このようなモノクローナル抗体を用いると、固相に結合したモノクローナル抗体が測定時にDダイマー以外の画分にも結合し、実際のDダイマーの量より低い値が検出されるという問題があった。特開昭63−79900号公報 そこで、本発明は、Dダイマーに対する反応特異性が比較的低いモノクローナル抗体を用いても、実際のDダイマーの量をより正確に測定することができるDダイマー測定用キットを提供することを目的とする。 本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体を予め検体と混合しておくと、次いで反応させる、固相に結合したモノクローナル抗体と検体中のDダイマーとの特異的反応性が向上し、Dダイマーの量を正しく測定できることを見出して本発明を完成した。このことは、X画分やY画分が、モノクローナル抗体との結合部位を1つしか持っていないのに対して、Dダイマーは複数の結合部位をもっていることに起因すると推測される。 よって本発明は、フィブリンの分解産物であるDダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体を含む液状試薬と、Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体が固定化された担体またはそれを含む溶液とを組み合わせてなるDダイマー測定用キットである。 上記の液状試薬に含まれるDダイマー反応性を有するモノクローナル抗体は、溶解されてなるものでもよいし、不溶性の担体に結合されてなるものでもよいが、好ましくは溶解されてなるものである。 本発明により、Dダイマーに対する反応性を有するモノクローナル抗体を固定化したものを用い、実際のDダイマーの量を正しく測定できる、Dダイマー測定用キットが提供される。 本発明のDダイマー測定用キットにおいて、液状試薬に含まれるDダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体は、Dダイマーに反応性を有するものであれば特に限定されないが、なかでも受託番号FERM P−19687として寄託されたハイブリドーマ(平成16年2月17日に独立行政法人産業技術総合研究所に寄託)が産生するモノクローナル抗体が好ましい。 上記のモノクローナル抗体は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ウマなどのいずれに由来するものであってもよいが、マウスが特に好ましい。また、抗体はIgG、IgMなどのいずれであってもよい。 上記のモノクローナル抗体は、公知の方法により得ることができる。すなわち、抗原としてのDダイマーとアジュバントとを任意に混合して動物を免疫にし、該動物から血清を得て、該血清からモノクローナル抗体を精製する方法が挙げられる。該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、上記のようにして免疫した動物由来のBリンパ球と各種骨髄腫細胞とを融合することにより得ることができる。 具体的には、以下の方法により、本発明に用いられるモノクローナル抗体を得ることができる。(抗原の取得) 抗原として用いるDダイマーは、プラスミンのようなフィブリンを分解し得る酵素をフィブリンに作用させて得ることができる。該Dダイマーは、DD/E画分より大きい分子量の画分を含むものが好ましい。このようなものとしては、DD/E画分の2〜5量体が挙げられる。また、Dダイマーのアミノ酸配列に基づいて、遺伝子工学的手法により得られるものを抗原として用いてもよい。 原料となるフィブリンは、市販のものを用いてもよいし、フィブリノゲンにトロンビン、XIII因子およびカルシウム塩を作用させて得られるものを用いてもよい。(免疫方法) 上記のようにして得られる抗原を、アジュバントと任意に混合し、適当な緩衝液に溶解または懸濁して得られる抗原液で、動物を免疫することができる。該抗原液中の抗原の濃度は、50〜500μg/mL程度が好ましい。抗原の免疫原性が低い場合は、アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニンのようなキャリアータンパク質を任意に抗原と結合させてもよい。 アジュバントとしては、公知のアジュバントを用いることができ、例えばフロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、Ribi(MPL)、Ribi(TDM)、Ribi(MPL+TDM)、百日咳ワクチン(Bordetella pertussis vaccine)、ムラミルジペプチド(MDP)、アルミニウムアジュバント(ALUM)およびこれらの組み合わせが挙げられる。初回免疫時にFCAを用い、追加免疫時にFIAやRibiアジュバントを用いる組み合わせが特に好ましい。 免疫にする動物は、マウス、ラット、ハムスター、ウマ、ヤギ、ウサギなどのいずれであってもよく、好ましくはマウス、より好ましくはBALB/cマウスである。 免疫法は、使用する抗原の種類やアジュバントの有無により適宜選択することができる。例えば、マウスを用いる場合、アジュバント混合抗原液0.05〜1 mL (抗原10〜200μg)を腹腔内、皮下、筋肉内または(尾)静脈内に注射し、初回免疫から約4〜21日毎に1〜4回追加免疫を行い、さらに約1〜4週間後に最終免疫を行う。抗原量を多くして腹腔内注射することにより、抗原液にアジュバントを用いずに免疫を行ってもよい。追加免疫の約5〜10日後に血液を採取して抗体価を測定する。抗体価は、後記の抗体価アッセイのような公知の方法に従って測定できる。最終免疫から約3〜5日後に、免疫された動物から脾臓を摘出し、脾細胞を分離して抗体産生細胞を得ることができる。(モノクローナル抗体の作製) モノクローナル抗体は、従来公知の方法、例えばKohler and Milstein, Nature, 256, 495-497 (1975)に記載の方法に従って作製することができる。 用いる骨髄腫細胞は、マウス、ラット、ヒトなどいずれに由来するものであってもよく、例えば、マウスミエローマP3X63-Ag8、P3X63-Ag8-U1、P3NS1-Ag4、SP2/o-Ag14、P3X63-Ag8・653などの株化骨髄腫細胞が挙げられる。骨髄腫細胞には免疫グロブリン軽鎖を産生するものがあり、これを融合対象として用いると、抗体産生細胞が産生する免疫グロブリン重鎖とこの軽鎖とがランダムに結合することがあるので、特に免疫グロブリン軽鎖を産生しない骨髄腫細胞、例えばP3X63-Ag8・653やSP2/o-Ag14などを用いるのが好ましい。抗体産生細胞と骨髄腫細胞とは、同種動物、特に同系統の動物由来のものが好ましい。 抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合させてハイブリドーマを作製する方法としては、ポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法、センダイウイルスを用いる方法、電気融合装置を用いる方法などが挙げられる。PEGを用いる場合、約30〜60%のPEG(平均分子量1,000〜6,000)を含む適当な培地または緩衝液中に脾細胞と骨髄腫細胞とを1〜10:1、好ましくは5〜10:1の混合比で懸濁し、温度約25〜37℃、pH6〜8の条件下で約30秒〜3分間程度反応させればよい。反応終了後、細胞を洗浄し、PEG含有溶液を除いて培地に再懸濁し、マイクロタイタープレート上に播種して培養する。 上記のようにして融合させた細胞を選択培地上で培養して、ハイブリドーマの選択を行うことができる。選択培地としては、融合細胞のみが増殖し得る培地であればよく、通常、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地が用いられる。ハイブリドーマの選択は、通常、細胞融合の1〜7日後に培地の一部、好ましくは約半量を選択培地と交換し、さらに2〜3日毎に同様にして培地交換を繰り返しながら培養し、培養終了後、顕微鏡観察によりハイブリドーマのコロニーが生育しているウェルを選択することにより行うことができる。 このようにして得られたハイブリドーマが所望の抗体を産生しているか否かは、そのハイブリドーマの培養上清を採取して、抗体価アッセイを行うことにより確認することができる。抗体価アッセイは、公知の方法により行うことができる。例えば固相に固定化した抗原タンパク質に段階希釈した培養上清を添加し、さらに蛍光物質、酵素または放射性同位体(RI)で標識した二次抗体(抗グロブリン抗体、抗IgG抗体、抗IgM抗体など)を反応させることにより、抗体を検出することができる。 上記の抗体価アッセイにより所望の抗体を産生していることが確認されたハイブリドーマは、限界希釈法、軟寒天法、蛍光励起セルソーターを用いる方法などにより、単一クローンを分離することができる。例えば、限界希釈法の場合、ハイブリドーマのコロニーを1細胞/ウェル程度となるように培地で段階希釈して培養することにより、目的とする抗体を産生するハイブリドーマを単離することができる。 ハイブリドーマからのモノクローナル抗体の取得方法は、モノクローナル抗体の必要量やハイブリドーマの性状により、適宜選択することができる。例えば、該ハイブリドーマを移植したマウスの腹水から取得する方法、細胞培養により培養上清から取得する方法などが挙げられる。マウスの腹腔内で増殖可能なハイブリドーマであれば、腹水から数mg/mLの高濃度のモノクローナル抗体を得ることができる。インビボで増殖できないハイブリドーマの場合には、細胞培養の培養上清からモノクローナル抗体を取得することができる。この場合は、抗体産生量が低いが、免疫グロブリンや他の夾雑物の混入が少なく、精製が容易である。 ハイブリドーマを移植したマウス腹腔内から抗体を取得する場合、例えば予めプリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)のような免疫抑制作用を有する物質を投与したBALB/cマウスの腹腔内へハイブリドーマ(約106個以上)を移植し、約1〜3週間後に貯留した腹水を採取する。異種ハイブリドーマを移植する場合には、ヌードマウス、放射線処理マウスなどを用いるのが好ましい。 細胞培養上清から抗体を取得する場合、例えば、細胞維持に用いられる静置培養の他に、高密度培養法またはスピナーフラスコ培養法などによりハイブリドーマを培養して、抗体を含有する培養上清を得ることができる。培地に血清を添加すると、他の抗体やアルブミンなどの夾雑物が含まれることとなり、抗体の精製が煩雑になることが多いので、培地への血清の添加量は可能な限り少なくするのが好ましい。さらに好ましいのは、ハイブリドーマを常法により無血清培地に馴化させ、無血清培地で培養することである。これにより、抗体精製が容易になる。 腹水や培養上清からのモノクローナル抗体の精製は、公知の方法により行うことができ、例えば硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウムを用いる塩析による分画法、ポリエチレングリコール分画法、エタノール分画法、DEAEイオン交換クロマトグラフィー法、ゲルろ過クロマトグラフィー法などに基づく方法が挙げられる。 目的のモノクローナル抗体がマウスIgGである場合、プロテインA結合担体または抗マウスイムノグロブリン結合担体を用いたアフィニティークロマトグラフィー法を用いて抗体を精製することができる。 本発明のDダイマー測定用キットを構成する液状試薬は、緩衝液に、上記のようにして得られるモノクローナル抗体を懸濁または溶解してなる。緩衝液中のモノクローナル抗体の濃度は、1〜100μg/mLが好ましく、より好ましくは5〜50μg/mLである。 緩衝液としては、pH5〜10、好ましくはpH6〜9に緩衝作用を有するものが好ましく、リン酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、トリエタノールアミン−塩酸、グッド緩衝液などが挙げられる。グッド緩衝液としては、MES、Bis−Tris、ADA、PIPES、Bis−Tris−Propane、ACES、MOPS、MOPSO、BES、TES、HEPES、HEPPS、Tricine、Tris、Bicine、TAPSなどの各種緩衝液が挙げられる。なかでも、MOPSO(2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸)が特に好ましい。 上記の液状試薬は、タンパク質安定化剤(例えばウシ血清アルブミン(BSA)など)、防腐剤(例えばアジ化ナトリウム、フェニルメタンスルホニルフルオリドなど)、pH調整剤、増感剤(例えばポリビニルピロリドン、ポリアニオン、ポリエチレングリコール、多糖類など)、無機塩(例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウムなど)などの添加剤を含み得る。 本発明のDダイマー測定用キットは、もう一方の構成要素として、Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体が固定化された担体またはそれを含む溶液を含む。該モノクローナル抗体は、上記の液状試薬に含まれるモノクローナル抗体と同じであることが好ましい。 モノクローナル抗体を固定化する担体としては、有機高分子化合物、無機化合物、赤血球などが挙げられる。有機高分子化合物としては、不溶性アガロース、不溶性デキストラン、セルロース、ラテックス、ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルアクリレートなどが挙げられる。無機化合物としては、シリカ、アルミナなどが挙げられる。なかでも、ラテックスおよび赤血球が特に好ましい。 上記の担体の形状は特に限定されず、粒子状、平面状などいずれの形状でもよい。粒子状である場合、粒子の平均粒径は測定機器などに応じて適宜選択することができるが、通常、0.05〜0.5μmが適当である。 モノクローナル抗体を担体に固定化する方法としては、物理的吸着法および化学的結合法のいずれであってもよいが、担持操作が簡便であるので物理的吸着法がより好ましい。 上記の担体が赤血球またはラテックス粒子である場合、Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体が固定化された担体は、適当な緩衝液に懸濁されてなるのが好ましい。緩衝液としては、pH5〜10、好ましくはpH6〜9に緩衝作用を有するものが好ましく、リン酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、トリエタノールアミン−塩酸、グッド緩衝液などが挙げられる。グッド緩衝液としては、MES、Bis−Tris、ADA、PIPES、Bis−Tris−Propane、ACES、MOPS、MOPSO、BES、TES、HEPES、HEPPS、Tricine、Tris、Bicine、TAPSなどの各種緩衝液が挙げられる。なかでも、MOPSOが特に好ましい。 上記の緩衝液は、さらにタンパク質安定化剤(例えばBSAなど)、防腐剤(例えばアジ化ナトリウム、フェニルメタンスルホニルフルオリドなど)、pH調整剤、無機塩(例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウムなど)などの添加剤を含み得る。 本発明のDダイマー測定用キットは、上記の液状試薬と、モノクローナル抗体が固定化された担体を含む溶液とからなる形態が好ましい。該溶液は、モノクローナル抗体を固定化したラテックス粒子が緩衝液に懸濁された形態であるのが、特に好ましい。 液状試薬と、モノクローナル抗体が固定化されたラテックス粒子を緩衝液に懸濁してなる溶液とを組み合わせてなる本発明のDダイマー測定用キットを用いるDダイマー測定方法について、以下に具体的に説明する。 まず、液状試薬と検体とを反応セル中で混合してインキュベートする。検体としては血清、血漿、尿などが挙げられる。インキュベートする時間は1〜10分間程度でよい。液状試薬と検体とを混合する際の容量比は、5:1〜50:1程度が適当である。 液状試薬と検体との混合物に、モノクローナル抗体が固定化されたラテックス粒子を含む溶液を添加する。該溶液中のラテックス粒子の濃度は、0.5〜10g/Lが好ましく、より好ましくは0.75〜5g/Lである。また、該混合物と溶液とを混合する際の容量比は、1:0.05〜1:1.5程度が適当である。 該溶液を添加して混合した後、1分間当たりの吸光度変化量を測定して、既知の濃度のDダイマー標準物質を用いて得られる検量線から、検体中のDダイマーの量を算出することができる。 本発明のDダイマー測定用キットを用いれば、検体中にDダイマーの構造類似成分、例えばX画分やY画分が存在しても、液状試薬中のモノクローナル抗体がこれらの画分と前もって結合するので、続いて添加される固定化モノクローナル抗体とこれらの画分との反応性は抑制されると考えられる。これは、X画分やY画分はモノクローナル抗体との反応部位が1つしかないのに対して、Dダイマーにはモノクローナル抗体との反応部位が複数あることによるものと考えられる。よって、測定しようとするDダイマーがより高い特異性で固定化モノクローナル抗体と反応することができ、より正確にDダイマーの濃度を測定することが可能になる。 以下に、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。(1)Dダイマー溶液の調製 フィブリノゲン(シグマ社製)100 mg (5.3 mg/mL)に、塩化カルシウム、ヒトトロンビンおよびXIII因子(ERL社製)をそれぞれ最終濃度25 mM、2U/mLおよび1.25μg/mLとなるように加え、37℃で18時間反応させて、フィブリノゲンをフィブリンに変換させた。12,000×gで20分間遠心分離し、フィブリンを非凝固性物質から分離した。フィブリンを1 mm3以下に切断し、50 mM Tris緩衝液(pH 7.4) 2.5 mLに浮遊させ、プラスミン(シグマ社製)25μL (1 U/mL)を添加した。攪拌しながら37℃で3時間反応させた後、アプロチニンを最終濃度1,000 U/mLとなるように添加して分解反応を停止した。12,000×gで20分間遠心分離し、その上清を50 mM Tris緩衝液(pH 7.4)で平衡化したLysine-Sepharose 4B (容積3 mL)に充填し、クロマトグラフィーを行った。非還元下でのSDS-PAGEにより、DD/E画分の3量体以上のものを含む画分をDダイマー溶液とした。(2)モノクローナル抗体の反応特異性の検討 独立行政法人産業技術総合研究所に受託番号FERM P−19687として寄託されたハイブリドーマDD-M1653株が産生するモノクローナル抗体(以下、DD-M1653抗体という)の反応特異性を、以下に記載のウェスタンブロット法により検討した。ウェスタンブロット法 各成分の濃度が50μg/mLになるように1% (w/v) SDS溶液で調整したDD/E画分、DD/E画分の3〜5量体、X画分、Y画分、D画分、E画分およびフィブリノゲンの混合物を、0.1% (w/v) SDSを含む7.5% ポリアクリルアミドゲル上で60ボルトの定電圧で2.5時間展開させた。緩衝液には0.02% (w/v) SDS を含む 25 mM Tris-192 mM グリシン緩衝液(pH 7.5)を用いた。 このゲルに、PVDF (ポリビニリデンフルオライド)メンブレン(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を密着させ、1 mA/cm2の電流を3時間流してメンブレンにタンパク質をトランスファーした。その後、メンブレンをブロッキング液(5%スキムミルク、1% (w/v) BSA、0.1% (w/v)アジ化ナトリウムを含むPBS(137 mM NaCl、2.7 mM KCl、1.5 mM KH2PO4、8.1 mM Na2HPO4))に浸して30分間振とうした。ブロッキング液を捨て、0.05% (w/v) Tween 20を含むPBS(洗浄液)を用いて5分間、3回洗浄した。メンブレンを、DD-M1653抗体100 μg/mLおよび0.05% (w/v) Tween 20を含むPBSに浸して60分間振とうした。洗浄液で5分間、3回洗浄後、メンブレンを、2次抗体としてHRP (ホースラディッシュペルオキシダーゼ)標識ヤギ抗マウス抗体(ダコサイトメトリー社製)100 μg/mLおよび0.05% (w/v) Tween 20を含むPBSに浸して60分間振とうした。メンブレンを洗浄液で5分間、3回洗浄後、4−クロロ−1−ナフトールと過酸化水素を用いるHRP標識キット(Bio-Rad社製)を用いてタンパク質のバンドを視覚化することにより、モノクローナル抗体の反応特異性を検討した。 結果を表1に示す。 表1において、+は反応性が検出されたことを表し、−は反応性が検出されなかったことを表す。(3)イムノグロブリンサブクラスの同定 DD-M1653抗体のマウスイムノグロブリンサブクラスを、Zymed社製MONOAbタイピングキットを用いて同定した。その結果、DD-M1653抗体はIgG 2aであった。実施例1Dダイマー測定用キットの製造液状試薬の製造 ポリエチレングリコール、アジ化ナトリウムおよびBSAを含むMOPSO緩衝液(pH 7.1)に、DD-M1653抗体を10μg/mLとなるように添加して、液状試薬を製造した。DD-M1653抗体が固定化された担体の製造 10% (w/v)ポリスチレンラテックス懸濁液(積水化学株式会社製、粒径0.245μm)0.5 mLを、DD-M1653抗体を含むリン酸緩衝液(pH 7.5) 2.0 mL (抗体濃度0.625 mg/mL)に添加してボルテックスミキサーで混合した。この混合液を遠心分離し(25,000×g、20分間)、1% BSAを含むMOPSO緩衝液(pH 7.1) 2.5 mLに懸濁した。この懸濁液を遠心分離し(25,000×g、20分間)、ペレットを2% BSAを含むMOPSO緩衝液(pH 7.1) 40 mLに懸濁して、DD-M1653抗体が固定化されたラテックス粒子を含む溶液を得た。キットの製造 上記の液状試薬の入った容器と、DD-M1653抗体が固定化されたラテックス粒子を含む溶液の入った容器とを組み合わせて、本発明のDダイマー測定用キットとした。試験例1 検体14μLと、実施例1で得られた液状試薬84μLとを混合し、37℃で5分間反応させた。ここに、実施例1で得られたDD-M1653抗体が固定化されたラテックス粒子を含む溶液84μLを混合して、波長800 nmで1分間当たりの吸光度変化量を測定することにより、Dダイマー量を測定した。検体としては、上記の(1)で作製したDダイマー溶液(25μg/mL)、上記の(1)で作製したDダイマー溶液(25μg/mL)に、X画分(森永生化学研究所社製)を40μg/mLとなるように添加したもの、および上記の(1)で作製したDダイマー溶液(25μg/mL)に、X画分(森永生化学研究所社製)を20μg/mLとなるように添加したものを用いた。 結果を表2に示す。比較試験例1 試験例1と同じ検体14μLと、DD-M1653抗体を含まない試薬(ポリエチレングリコール、アジ化ナトリウムおよびBSAを含むMOPSO緩衝液(pH 7.1))84μLとを混合し、37℃で5分間反応させた。ここに、実施例1で得られたDD-M1653抗体が固定化されたラテックス粒子を含む溶液84μLを混合して、波長800 nmで1分間当たりの吸光度変化量を測定することにより、Dダイマー量を測定した。 結果を表2に示す。 表2の結果から明らかなように、DD-M1653抗体を含む液状試薬を用いる、本発明のDダイマー測定用キットを用いて得られた結果は、X画分の有無に関わらず、実際のDダイマーの量にほぼ一致した。したがって、DD-M1653抗体を含まない試薬を用いる場合に比べて、より正確なDダイマー量の測定が可能であった。 本発明により、X画分のような低分子量画分を含む検体であっても、実際に含まれるDダイマーの量をより正確に測定することができる。このことは、Dダイマーを測定する検査の信頼性を高める。 フィブリンの分解産物であるDダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体を含む液状試薬と、Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体が固定化された担体またはそれを含む溶液とを組み合わせてなるDダイマー測定用キット。 前記担体が、赤血球またはラテックス粒子である請求項1に記載のDダイマー測定用キット。 前記Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体が、前記液状試薬に懸濁または溶解されてなる請求項1または2に記載のDダイマー測定用キット。 前記液状試薬が、ウシ血清アルブミンを含む請求項3に記載のDダイマー測定用キット。 抗原抗体反応に基づいて検体中のDダイマーを測定する方法であって、前記検体と、フィブリンの分解産物であるDダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体を含む液状試薬とを混合する第一の混合工程、及び前記第一混合工程で得られた混合物と、Dダイマーに反応性を有するモノクローナル抗体が固定化された担体とを混合する第二の混合工程、を含むDダイマーを測定する方法。


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