生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_テトラロン類の製造方法
出願番号:2005046665
年次:2005
IPC分類:7,C07C45/29,C07C45/62,C07C49/67,C07C49/733,C07C49/755,C07B61/00


特許情報キャッシュ

萩谷 弘寿 JP 2005289981 公開特許公報(A) 20051020 2005046665 20050223 テトラロン類の製造方法 住友化学株式会社 000002093 久保山 隆 100093285 中山 亨 100113000 榎本 雅之 100119471 萩谷 弘寿 JP 2004068704 20040311 7C07C45/29C07C45/62C07C49/67C07C49/733C07C49/755C07B61/00 JPC07C45/29C07C45/62C07C49/67C07C49/733C07C49/755C07B61/00 300 8 OL 9 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC11 4H006AC44 4H006BA05 4H006BA23 4H006BA24 4H006BA25 4H006BA26 4H006BA55 4H006BB11 4H006BB14 4H006BB15 4H006BB17 4H006BB21 4H006BB25 4H006BB31 4H039CA40 4H039CA62 4H039CB10 4H039CC20 本発明は、テトラロン類の製造方法に関する。 テトラロン類は、医薬中間体等の各種化学品として有用な化合物である(例えば、非特許文献1、特許文献1参照。)。 その製造方法として、例えばヒドロキシナフタレン類をシクロヘキサンの存在下で臭化アルミニウムを用いて還元する方法(例えば、非特許文献2参照。)、固相でTMSジアゾケトン類を環化、異性化後に脱離反応させる方法(例えば、非特許文献3参照。)などが知られている。 しかしながら、前者の方法は、化学理論当量以上の臭化アルミニウムを用いる必要があり、その取り扱いの点において、また、後者の方法は、多段階の工程を要する点において、いずれも工業的に満足し得る製法とはいえなかった。 また、貴金属触媒の存在下、加圧条件で水素還元によりテトラロン類を得る方法も知られている(例えば、特許文献2、特許文献3、非特許文献4および非特許文献5参照。)が、目的物の選択性が低かったり、加圧反応装置を要したりする点において、工業的には必ずしも有利な方法ではなかった。特開平8−104652号公報特開2003−206253号公報特開2000−229902号公報Tetrahedron,51,11531(1995)Russ.J.Org.Chem.,36,1474(2000)Tetrahedron,56,5353(2000)Bull.Chem.Soc.Jpn.,57,2557(1984)J.Mol.Cat.,34,221(1986) かかる状況の下、本発明者は、テトラロン類の工業的に有利な製造方法について鋭意検討した結果、置換基として水酸基を有するナフタレン類を、溶媒中、貴金属触媒の存在下にギ酸類と反応させることにより、目的とするテトラロン類が比較的選択性よく得られることを見出し、本発明に至った。 すなわち本発明は、溶媒中、貴金属触媒の存在下、式(1−1)または式(1−2)(式中、R1〜R4は、それぞれ同一または相異なって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、水素原子または水酸基を表す。ただし、R1〜R4のうち2つ以上が同時に水酸基であることはなく、その場合の他の置換基は水素原子に限られる。)で示されるナフタレン類をギ酸類と反応させることを特徴とする式(2−1)または式(2−2)(式中、R1〜R4は、上記と同一の意味を表す。)で示されるテトラロン類の製造方法を提供するものである。 本発明によれば、ヒドロキシ置換ナフタレン類を原料として1段階で、特殊な装置を使用することなく、医薬中間体等の各種化学品として有用なテトラロン類を選択性よく製造することができるため工業的に有利である。 以下、本発明を詳細に説明する。 式(1−1)または式(1−2)で示されるナフタレン類(以下、ナフタレン類(1)と略記する。)において、R1〜R4で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。 かかるナフタレン類(1)としては、例えば1−ヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1、7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2−ヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−8−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6,8−ジメトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−5,6−ジメトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−6−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−7−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−8−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−7−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−6,7−ジメチルナフタレン、1−ヒドロキシ−7,8−ジメチルナフタレン、2−ヒドロキシ−6,7−ジメチルナフタレン、2−ヒドロキシ−5,6−ジメチルナフタレン等が挙げられる。かかるナフタレン類(1)は、市販のものを用いてもよいし、任意の常法により合成したものを用いてもよい。 貴金属触媒としては、例えばパラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金等の白金族金属からなる触媒が挙げられ、好ましくはパラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金およびパラジウム/銀から選ばれる少なくとも一種が担体に担持された触媒が挙げられ、さらに好ましくはルテニウム、白金、パラジウム/銀が担体に担持された触媒が挙げられ、なかでも反応活性および選択率の点でパラジウム/銀が担体に担持された触媒が特に好ましい。 担体としては、例えば活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト等が挙げられ、入手の容易さ等から活性炭が好ましい。また、かかる担体の表面積は大きい方が反応活性の点で好ましい。 金属が担体に担持された触媒の場合、金属の担体への担持率は、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%程度である。 貴金属触媒の使用量は、特に限定されないが、ナフタレン類(1)に対して、金属換算で、通常0.02〜2重量%程度である。また、パラジウム/銀触媒を用いる場合、パラジウムの重量が銀のそれよりも大きい方が好ましい。 かかる貴金属触媒は、市販のものを用いてもよいし、担体に金属が担持された触媒の場合には、例えば含浸担持法等の公知の方法に従い調製したものを用いてもよい。 ギ酸類としては、例えばギ酸;ギ酸カリウム、ギ酸ナトリウム等のギ酸のアルカリ金属塩;ギ酸マグネシウム、ギ酸カルシウム等のギ酸のアルカリ土類金属塩;などの単独または混合物が挙げられ、好ましくはギ酸のアルカリ金属塩が用いられる。ギ酸類の使用量は、ナフタレン類(1)に対して、通常1モル〜20モル倍程度である。ギ酸類として、ギ酸を用いる場合には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩などと併用して塩基性条件下で用いることが好ましい。 ナフタレン類(1)とギ酸類との反応は、溶媒中で実施され、かかる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば水;ヘプタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;など、またはこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくはアルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒またはこれらと水との混合溶媒が挙げられる。より好ましくはアルコール溶媒と水の混合溶媒が用いられ、なかでもメタノールと水の混合溶媒が最も好ましい。かかる溶媒の使用量は、ナフタレン類(1)に対して、通常1〜100重量倍程度である。 本反応は、通常、常圧で実施される。 反応温度は、通常0〜150℃、好ましくは30〜110℃程度である。 反応終了後、反応液から触媒を濾別し、そのままあるいは水等で洗浄処理した後、溶媒を留去することにより、目的とする式(2−1)または式(2−2)で示されるテトラロン類(以下、テトラロン類(2)と略記する。)を取り出すことができる。取り出したテトラロン類(2)は、例えば再結晶、カラムクロマトグラフィ、蒸留等の通常の手段によりさらに精製してもよい。 かくして得られるテトラロン類(2)としては、1−テトラロン、5−ヒドロキシ−1−テトラロン、6−ヒドロキシ−1−テトラロン、7−ヒドロキシ−1−テトラロン、8−ヒドロキシ−1−テトラロン、2−テトラロン、6−ヒドロキシ−2−テトラロン、7−ヒドロキシ−2−テトラロン、5−メトキシ−1−テトラロン、6−メトキシ−1−テトラロン、7−メトキシ−1−テトラロン、8−メトキシ−1−テトラロン、6−メトキシ−2−テトラロン、7−メトキシ−2−テトラロン、6,7−ジメトキシ−2−テトラロン、6,8−ジメトキシ−1−テトラロン、5,6−ジメトキシ−2−テトラロン、5−メチル−1−テトラロン、6−メチル−1−テトラロン、7−メチル−1−テトラロン、8−メチル−1−テトラロン、6−メチル−2−テトラロン、7−メチル−2−テトラロン、6,7−ジメチル−1−テトラロン、7,8−ジメチル−1−テトラロン、6,7−ジメチル−2−テトラロン、5,6−ジメチル−2−テトラロンが挙げられる。 本反応において、ナフタレン類(1)として式(1−1)で示される1−ヒドロキシナフタレン類を用いた場合、テトラロン類(2)として式(2−1)で示される1−テトラロン類が得られる。同様に、ナフタレン類(1)として式(1−2)で示される2−ヒドロキシナフタレン類を用いた場合、テトラロン類(2)として式(2−2)で示される2−テトラロン類が得られる。 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、分析には、ガスクロマトグラフィ内部標準法を用いた。実施例1 50mlの2口フラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン800mg、5重量%パラジウム/0.5重量%銀/活性炭担持触媒(57重量%含水品)400mg、イソプロパノール5g、水5gおよびギ酸カリウム3.4gを仕込んだ。この反応液を内温60℃に昇温し、同温度で6時間攪拌、保持した。 反応後、常温まで冷却し、5重量%硫酸水溶液40gを加えてから、触媒を濾別し、触媒をメチルtert−ブチルエーテル10gで洗浄した。得られた濾洗液にさらにメチルtert−ブチルエーテル20gを加えて、有機層を分液後、溶媒を留去して粗結晶810mgを得た。得られた粗結晶の組成は、7−ヒドロキシ−2−テトラロン:73%、 7−ヒドロキシ−2−テトラロール:9%、2,7−ジヒドロキシナフタレン(原料):18%であった。実施例2 実施例1において、5重量%パラジウム/0.5重量%銀/活性炭担持触媒(57重量%含水品)を80mg、ギ酸カリウムを840mg、反応を100℃で3時間に変えた以外は実施例1と同様に実施して、粗結晶820mgを得た。得られた粗結晶の組成は、 7−ヒドロキシ−2−テトラロン:30%、2,7−ジヒドロキシナフタレン(原料):70%であった。実施例3 実施例1において、2,7−ジヒドロキシナフタレンに変えて1,7−ジヒドロキシナフタレンを用いる以外は実施例1と同様に実施して、粗結晶810mgを得た。得られた粗結晶の組成は、7−ヒドロキシ−1−テトラロン:46%、7−ヒドロキシ−1−テトラロール:6%、1,7−ジヒドロキシナフタレン(原料):48%であった。実施例4 実施例2において、2,7−ジヒドロキシナフタレンに変えて1−ヒドロキシナフタレン720mgを用いる以外は実施例2と同様に実施して、粗結晶730mgを得た。得られた粗結晶の組成は、1−テトラロン:35%、1−テトラロール:2%、1−ヒドロキシナフタレン(原料):63%であった。実施例5 50mlの2口フラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン800mg、5重量%パラジウム/0.5重量%銀/活性炭担持触媒(57重量%含水品)400mg、メタノール5g、水5gおよびギ酸カリウム3.4gを仕込んだ。この反応液を内温60℃に昇温し、同温度で6時間攪拌、保持した。 反応後、常温まで冷却し、5重量%硫酸水溶液40gを加えてから、触媒を濾別し、触媒をメチルtert−ブチルエーテル10gで洗浄した。得られた濾洗液にさらにメチルtert−ブチルエーテル20gを加えて分液し、得られた有機層をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、7−ヒドロキシ−2−テトラロンの収率は87%、2,7−ジヒドロキシナフタレン(原料)は13%であった。実施例6 50mlの2口フラスコに、2,6−ジヒドロキシナフタレン800mg、5重量%パラジウム/0.5重量%銀/活性炭担持触媒(57重量%含水品)400mg、メタノール5g、水5gおよびギ酸カリウム1.7gを仕込んだ。この反応液を内温40℃に昇温し、同温度で6時間攪拌、保持した。 反応後、常温まで冷却し、5重量%硫酸水溶液40gを加えてから、触媒を濾別し、触媒をメチルtert−ブチルエーテル10gで洗浄した。得られた濾洗液にさらにメチルtert−ブチルエーテル20gを加えて分液し、得られた有機層をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、6−ヒドロキシ−2−テトラロンの収率は69%、6−ヒドロキシ−2−テトラロ−ルは6%、2,6−ジヒドロキシナフタレン(原料)は25%であった。実施例7 実施例5において、2,7−ジヒドロキシナフタレンの代わりに、7−メトキシ−2−ヒドロキシナフタレン870mgを用いる以外は、実施例5と同様に実施した。7−メトキシ−2−テトラロンの収率は26%、7−メトキシ−2−テトラロ−ルは19%、7−メトキシ−2−ヒドロキシナフタレン(原料)は55%であった。溶媒中、貴金属触媒の存在下、式(1−1)または式(1−2)(式中、R1〜R4は、それぞれ同一または相異なって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、水素原子または水酸基を表す。ただし、R1〜R4のうち2つ以上が同時に水酸基であることはなく、その場合の他の置換基は水素原子に限られる。)で示されるナフタレン類をギ酸類と反応させることを特徴とする式(2−1)または式(2−2)(式中、R1〜R4は、上記と同一の意味を表す。)で示されるテトラロン類の製造方法。貴金属触媒が、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金およびパラジウム/銀からなる群から選ばれる少なくとも一種が担体に担持された触媒である請求項1に記載のテトラロン類の製造方法。貴金属触媒が、パラジウム/銀が担体に担持された触媒である請求項1に記載のテトラロン類の製造方法。担体が、活性炭である請求項2または3に記載のテトラロン類の製造方法。ギ酸類が、ギ酸のアルカリ金属塩である請求項1に記載のテトラロン類の製造方法。溶媒が、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒またはこれらと水との混合溶媒である請求項1に記載のテトラロン類の製造方法。溶媒が、アルコール溶媒と水との混合溶媒である請求項1に記載のテトラロン類の製造方法。溶媒が、メタノールと水との混合溶媒である請求項1に記載のテトラロン類の製造方法。 【課題】工業的に有利なテトラロン類の製造方法を提供すること。【解決手段】溶媒中、貴金属触媒の存在下、式(1−1) 【化1−1】または式(1−2) 【化1−2】(式中、R1〜R4は、それぞれ同一または相異なって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、水素原子または水酸基を表す。ただし、R1〜R4のうち2つ以上が同時に水酸基であることはなく、その場合の他の置換基は水素原子に限られる。)で示されるナフタレン類をギ酸類と反応させることを特徴とする式(2−1) 【化2−1】または式(2−2) 【化2−2】(式中、R1〜R4は、上記と同一の意味を表す。)で示されるテトラロン類の製造方法。【選択図】 なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る

特許公報(B2)_テトラロン類の製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_テトラロン類の製造方法
出願番号:2005046665
年次:2010
IPC分類:C07C 45/29,C07C 45/62,C07C 49/67,C07C 49/733,C07C 49/755,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

萩谷 弘寿 JP 4586568 特許公報(B2) 20100917 2005046665 20050223 テトラロン類の製造方法 住友化学株式会社 000002093 中山 亨 100113000 萩谷 弘寿 JP 2004068704 20040311 20101124 C07C 45/29 20060101AFI20101104BHJP C07C 45/62 20060101ALI20101104BHJP C07C 49/67 20060101ALI20101104BHJP C07C 49/733 20060101ALI20101104BHJP C07C 49/755 20060101ALI20101104BHJP C07B 61/00 20060101ALN20101104BHJP JPC07C45/29C07C45/62C07C49/67C07C49/733C07C49/755C07B61/00 300 C07C 27/00−71/00 CAplus/REGISTRY(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平09−255595(JP,A) 特開2000−229902(JP,A) 特開2003−206253(JP,A) Russ. J. Org. Chem.,2000年,Vol. 36, No. 10,p.1474-1477 Chemical Reviews,1985年,Vol.85, No.2,p.129-170 9 2005289981 20051020 9 20071206 高橋 直子 本発明は、テトラロン類の製造方法に関する。 テトラロン類は、医薬中間体等の各種化学品として有用な化合物である(例えば、非特許文献1、特許文献1参照。)。 その製造方法として、例えばヒドロキシナフタレン類をシクロヘキサンの存在下で臭化アルミニウムを用いて還元する方法(例えば、非特許文献2参照。)、固相でTMSジアゾケトン類を環化、異性化後に脱離反応させる方法(例えば、非特許文献3参照。)などが知られている。 しかしながら、前者の方法は、化学理論当量以上の臭化アルミニウムを用いる必要があり、その取り扱いの点において、また、後者の方法は、多段階の工程を要する点において、いずれも工業的に満足し得る製法とはいえなかった。 また、貴金属触媒の存在下、加圧条件で水素還元によりテトラロン類を得る方法も知られている(例えば、特許文献2、特許文献3、非特許文献4および非特許文献5参照。)が、目的物の選択性が低かったり、加圧反応装置を要したりする点において、工業的には必ずしも有利な方法ではなかった。特開平8−104652号公報特開2003−206253号公報特開2000−229902号公報Tetrahedron,51,11531(1995)Russ.J.Org.Chem.,36,1474(2000)Tetrahedron,56,5353(2000)Bull.Chem.Soc.Jpn.,57,2557(1984)J.Mol.Cat.,34,221(1986) かかる状況の下、本発明者は、テトラロン類の工業的に有利な製造方法について鋭意検討した結果、置換基として水酸基を有するナフタレン類を、溶媒中、貴金属触媒の存在下にギ酸類と反応させることにより、目的とするテトラロン類が比較的選択性よく得られることを見出し、本発明に至った。 すなわち本発明は、溶媒中、貴金属触媒の存在下、式(1−1)または式(1−2)(式中、R1〜R4は、それぞれ同一または相異なって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、水素原子または水酸基を表す。ただし、R1〜R4のうち2つ以上が同時に水酸基であることはなく、その場合の他の置換基は水素原子に限られる。)で示されるナフタレン類をギ酸類と反応させることを特徴とする式(2−1)または式(2−2)(式中、R1〜R4は、上記と同一の意味を表す。)で示されるテトラロン類の製造方法を提供するものである。 本発明によれば、ヒドロキシ置換ナフタレン類を原料として1段階で、特殊な装置を使用することなく、医薬中間体等の各種化学品として有用なテトラロン類を選択性よく製造することができるため工業的に有利である。 以下、本発明を詳細に説明する。 式(1−1)または式(1−2)で示されるナフタレン類(以下、ナフタレン類(1)と略記する。)において、R1〜R4で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。 かかるナフタレン類(1)としては、例えば1−ヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1、7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2−ヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−8−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6,8−ジメトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−5,6−ジメトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−6−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−7−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−8−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−メチルナフタレン、2−ヒドロキシ−7−メチルナフタレン、1−ヒドロキシ−6,7−ジメチルナフタレン、1−ヒドロキシ−7,8−ジメチルナフタレン、2−ヒドロキシ−6,7−ジメチルナフタレン、2−ヒドロキシ−5,6−ジメチルナフタレン等が挙げられる。かかるナフタレン類(1)は、市販のものを用いてもよいし、任意の常法により合成したものを用いてもよい。 貴金属触媒としては、例えばパラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金等の白金族金属からなる触媒が挙げられ、好ましくはパラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金およびパラジウム/銀から選ばれる少なくとも一種が担体に担持された触媒が挙げられ、さらに好ましくはルテニウム、白金、パラジウム/銀が担体に担持された触媒が挙げられ、なかでも反応活性および選択率の点でパラジウム/銀が担体に担持された触媒が特に好ましい。 担体としては、例えば活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト等が挙げられ、入手の容易さ等から活性炭が好ましい。また、かかる担体の表面積は大きい方が反応活性の点で好ましい。 金属が担体に担持された触媒の場合、金属の担体への担持率は、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%程度である。 貴金属触媒の使用量は、特に限定されないが、ナフタレン類(1)に対して、金属換算で、通常0.02〜2重量%程度である。また、パラジウム/銀触媒を用いる場合、パラジウムの重量が銀のそれよりも大きい方が好ましい。 かかる貴金属触媒は、市販のものを用いてもよいし、担体に金属が担持された触媒の場合には、例えば含浸担持法等の公知の方法に従い調製したものを用いてもよい。 ギ酸類としては、例えばギ酸;ギ酸カリウム、ギ酸ナトリウム等のギ酸のアルカリ金属塩;ギ酸マグネシウム、ギ酸カルシウム等のギ酸のアルカリ土類金属塩;などの単独または混合物が挙げられ、好ましくはギ酸のアルカリ金属塩が用いられる。ギ酸類の使用量は、ナフタレン類(1)に対して、通常1モル〜20モル倍程度である。ギ酸類として、ギ酸を用いる場合には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩などと併用して塩基性条件下で用いることが好ましい。 ナフタレン類(1)とギ酸類との反応は、溶媒中で実施され、かかる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば水;ヘプタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;など、またはこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくはアルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒またはこれらと水との混合溶媒が挙げられる。より好ましくはアルコール溶媒と水の混合溶媒が用いられ、なかでもメタノールと水の混合溶媒が最も好ましい。かかる溶媒の使用量は、ナフタレン類(1)に対して、通常1〜100重量倍程度である。 本反応は、通常、常圧で実施される。 反応温度は、通常0〜150℃、好ましくは30〜110℃程度である。 反応終了後、反応液から触媒を濾別し、そのままあるいは水等で洗浄処理した後、溶媒を留去することにより、目的とする式(2−1)または式(2−2)で示されるテトラロン類(以下、テトラロン類(2)と略記する。)を取り出すことができる。取り出したテトラロン類(2)は、例えば再結晶、カラムクロマトグラフィ、蒸留等の通常の手段によりさらに精製してもよい。 かくして得られるテトラロン類(2)としては、1−テトラロン、5−ヒドロキシ−1−テトラロン、6−ヒドロキシ−1−テトラロン、7−ヒドロキシ−1−テトラロン、8−ヒドロキシ−1−テトラロン、2−テトラロン、6−ヒドロキシ−2−テトラロン、7−ヒドロキシ−2−テトラロン、5−メトキシ−1−テトラロン、6−メトキシ−1−テトラロン、7−メトキシ−1−テトラロン、8−メトキシ−1−テトラロン、6−メトキシ−2−テトラロン、7−メトキシ−2−テトラロン、6,7−ジメトキシ−2−テトラロン、6,8−ジメトキシ−1−テトラロン、5,6−ジメトキシ−2−テトラロン、5−メチル−1−テトラロン、6−メチル−1−テトラロン、7−メチル−1−テトラロン、8−メチル−1−テトラロン、6−メチル−2−テトラロン、7−メチル−2−テトラロン、6,7−ジメチル−1−テトラロン、7,8−ジメチル−1−テトラロン、6,7−ジメチル−2−テトラロン、5,6−ジメチル−2−テトラロンが挙げられる。 本反応において、ナフタレン類(1)として式(1−1)で示される1−ヒドロキシナフタレン類を用いた場合、テトラロン類(2)として式(2−1)で示される1−テトラロン類が得られる。同様に、ナフタレン類(1)として式(1−2)で示される2−ヒドロキシナフタレン類を用いた場合、テトラロン類(2)として式(2−2)で示される2−テトラロン類が得られる。 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、分析には、ガスクロマトグラフィ内部標準法を用いた。実施例1 50mlの2口フラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン800mg、5重量%パラジウム/0.5重量%銀/活性炭担持触媒(57重量%含水品)400mg、イソプロパノール5g、水5gおよびギ酸カリウム3.4gを仕込んだ。この反応液を内温60℃に昇温し、同温度で6時間攪拌、保持した。 反応後、常温まで冷却し、5重量%硫酸水溶液40gを加えてから、触媒を濾別し、触媒をメチルtert−ブチルエーテル10gで洗浄した。得られた濾洗液にさらにメチルtert−ブチルエーテル20gを加えて、有機層を分液後、溶媒を留去して粗結晶810mgを得た。得られた粗結晶の組成は、7−ヒドロキシ−2−テトラロン:73%、 7−ヒドロキシ−2−テトラロール:9%、2,7−ジヒドロキシナフタレン(原料):18%であった。実施例2 実施例1において、5重量%パラジウム/0.5重量%銀/活性炭担持触媒(57重量%含水品)を80mg、ギ酸カリウムを840mg、反応を100℃で3時間に変えた以外は実施例1と同様に実施して、粗結晶820mgを得た。得られた粗結晶の組成は、 7−ヒドロキシ−2−テトラロン:30%、2,7−ジヒドロキシナフタレン(原料):70%であった。実施例3 実施例1において、2,7−ジヒドロキシナフタレンに変えて1,7−ジヒドロキシナフタレンを用いる以外は実施例1と同様に実施して、粗結晶810mgを得た。得られた粗結晶の組成は、7−ヒドロキシ−1−テトラロン:46%、7−ヒドロキシ−1−テトラロール:6%、1,7−ジヒドロキシナフタレン(原料):48%であった。実施例4 実施例2において、2,7−ジヒドロキシナフタレンに変えて1−ヒドロキシナフタレン720mgを用いる以外は実施例2と同様に実施して、粗結晶730mgを得た。得られた粗結晶の組成は、1−テトラロン:35%、1−テトラロール:2%、1−ヒドロキシナフタレン(原料):63%であった。実施例5 50mlの2口フラスコに、2,7−ジヒドロキシナフタレン800mg、5重量%パラジウム/0.5重量%銀/活性炭担持触媒(57重量%含水品)400mg、メタノール5g、水5gおよびギ酸カリウム3.4gを仕込んだ。この反応液を内温60℃に昇温し、同温度で6時間攪拌、保持した。 反応後、常温まで冷却し、5重量%硫酸水溶液40gを加えてから、触媒を濾別し、触媒をメチルtert−ブチルエーテル10gで洗浄した。得られた濾洗液にさらにメチルtert−ブチルエーテル20gを加えて分液し、得られた有機層をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、7−ヒドロキシ−2−テトラロンの収率は87%、2,7−ジヒドロキシナフタレン(原料)は13%であった。実施例6 50mlの2口フラスコに、2,6−ジヒドロキシナフタレン800mg、5重量%パラジウム/0.5重量%銀/活性炭担持触媒(57重量%含水品)400mg、メタノール5g、水5gおよびギ酸カリウム1.7gを仕込んだ。この反応液を内温40℃に昇温し、同温度で6時間攪拌、保持した。 反応後、常温まで冷却し、5重量%硫酸水溶液40gを加えてから、触媒を濾別し、触媒をメチルtert−ブチルエーテル10gで洗浄した。得られた濾洗液にさらにメチルtert−ブチルエーテル20gを加えて分液し、得られた有機層をガスクロマトグラフィー(内部標準法)にて分析したところ、6−ヒドロキシ−2−テトラロンの収率は69%、6−ヒドロキシ−2−テトラロ−ルは6%、2,6−ジヒドロキシナフタレン(原料)は25%であった。実施例7 実施例5において、2,7−ジヒドロキシナフタレンの代わりに、7−メトキシ−2−ヒドロキシナフタレン870mgを用いる以外は、実施例5と同様に実施した。7−メトキシ−2−テトラロンの収率は26%、7−メトキシ−2−テトラロ−ルは19%、7−メトキシ−2−ヒドロキシナフタレン(原料)は55%であった。水、脂肪族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒及びアセトニトリル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒中、白金族金属及び銀を含む貴金属触媒の存在下、常圧で、式(1−1)または式(1−2)(式中、R1〜R4は、それぞれ同一または相異なって、水素原子または水酸基を表す。ただし、R1〜R4のうち2つ以上が同時に水酸基であることはない。)で示されるナフタレン類を、ギ酸のアルカリ金属塩及びギ酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のギ酸類と反応させることを特徴とする式(2−1)または式(2−2)(式中、R1〜R4は、上記と同一の意味を表わす。)で示されるテトラロン類の製造方法。貴金属触媒が、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の白金族金属及び銀が担体に担持された触媒である請求項1に記載のテトラロン類の製造方法。貴金属触媒が、パラジウム及び銀が担体に担持された触媒である請求項1に記載のテトラロン類の製造方法。担体が、活性炭である請求項2または3に記載のテトラロン類の製造方法。ギ酸類が、ギ酸のアルカリ金属塩である請求項1〜4のいずれかに記載のテトラロン類の製造方法。溶媒が、アルコール溶媒、エーテル溶媒若しくはエステル溶媒、またはアルコール溶媒、エーテル溶媒若しくはエステル溶媒と水との混合溶媒である請求項1〜5のいずれかに記載のテトラロン類の製造方法。溶媒が、アルコール溶媒と水との混合溶媒である請求項1〜5のいずれかに記載のテトラロン類の製造方法。溶媒が、メタノールと水との混合溶媒である請求項1〜5のいずれかに記載のテトラロン類の製造方法。式(1−1)または式(1−2)で示されるナフタレン類が、1−ヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1、7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2−ヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン又は2,7−ジヒドロキシナフタレンである請求項1〜8のいずれかに記載のテトラロン類の製造方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る