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タイトル:公開特許公報(A)_Zn含有化合物中のPb又はCuの濃度を測定する方法
出願番号:2005029924
年次:2006
IPC分類:G01N 21/27


特許情報キャッシュ

岩田 在博 松重 操 志波 孝則 JP 2006214951 公開特許公報(A) 20060817 2005029924 20050207 Zn含有化合物中のPb又はCuの濃度を測定する方法 株式会社トクヤマ 000003182 岩田 在博 松重 操 志波 孝則 G01N 21/27 20060101AFI20060721BHJP JPG01N21/27 Z 2 OL 9 2G059 2G059AA01 2G059BB08 2G059CC03 2G059EE13 2G059JJ01 本発明は、不純物としてPb及び/又はCuを含み得るZn系化合物中のPb及び/又はCuを検出する方法に関する。 ポラプレジンクは亜鉛とL−カルノシンの錯体であり、胃潰瘍或いは亜鉛欠乏症による味覚障害に対する医薬として実用化されている(特許文献1および2参照)。医薬品に関しては、不純物金属、特に毒性の高いPbを厳密に管理する必要があり、そのためには、不純物金属の分析が不可欠である。医薬品中に含まれる金属成分の分析方法としては、日本薬局方に硫化物として分析する方法が示されているが、該方法で分析の対象となる金属は酸性下で硫化物を形成する金属であり、亜鉛もその対象となっている。ポラプレジンク或いはその中間体においてはその構成元素として亜鉛が含まれているため、これらに含まれる微量の不純物金属(特にZn源に不純物として含まれやすいPbやCu)を分析するためには、大量に存在する亜鉛の影響を排除する必要がある。 大量の亜鉛の存在下に微量存在する異種金属の分析をすること自体は可能であるが、ポラプレジンク又はその中間体の製造における工程管理に適用できる分析方法は限られている。たとえば、蛍光試薬を使い選択的に鉛イオンを検出する方法も開発されているが蛍光試薬が一般的に市販されていないという問題がある。また、電気化学的な測定法として還元電流量を測定する方法があるが有害な水銀電極を利用しなければならないといった問題がある。さらに、ICP発光分析法は、装置が高価であるといった問題が挙げられる。 上記したような工程管理用の分析方法としては、高価な装置を必要とせずに簡単な操作で十分な精度の分析ができるという観点から比濁法や比色法が適している。 一般に、比濁法や比色法で大量のZnイオンの共存下における微量金属イオンの量を測定する際には、Znイオンをシアン化カリウムや1,10−フェナントロリンなどの隠蔽剤を用いて隠蔽した後に微量金属イオンを分析する方法、或いは微量金属イオンを不溶物に転化させ、これを沈殿等の方法で分離して分析する方法が採用されている。 たとえば、日本薬局方には、酸化亜鉛中の微量金属の分析法としてシアン化物イオンを隠蔽剤として用い硫化物イオンを加えて比濁する方法、及び硫酸亜鉛中の微量金属の分析としてクロム酸カリウムを添加しクロム酸鉛の沈殿を比濁する方法が挙げられている(非特許文献1参照)。また、共存イオンからPbを分離する方法としては、塩酸酸性条件でPbを沈殿としてろ別する方法、クロム酸カリウムを加えてPbをクロム酸鉛の沈殿として分離する方法、硫酸イオンを加え、硫酸鉛の沈殿として分離する方法が知られている(非特許文献2参照)。また、共存イオンからCuを分離する方法としては、オキシン塩に誘導し沈殿として分離する方法、アスコルビン酸で還元した後ヨウ化物やチオシアン塩に誘導して沈殿として分離する方法が知られている(非特許文献3参照)。特公平3−5367号公報特公平7−116160号公報第十一改正日本薬局方解説書、日本公定書協会・廣川書店、1986年発行、C−821〜C−824超微量成分分析2、第2版、高純度金属・半導体、産業図書、1973年発行、p.201〜217キレート滴定法、第11版、南江堂、1965年発行、p.251 ところが、医薬品や医薬中間体の工程管理用の分析に於いては、安全に対する要求の高まりから有害な試薬の使用が制限される傾向にある。このため、シアン化物イオンやクロム酸カリウムなどの有害試薬を使用する日本薬局方に挙げられている従来の分析方法を使用することが難しくなってきている。 また、PbやCuといった分析対象金属を沈殿物として分離し、それを分析する方法は、PbやCuが微量である場合にはそれぞれの塩がわずかに溶解するため、分析精度が低くなるという問題が起こる。 このように、ポラプレジンクのように不純物としてPb及び/又はCuを含み得るZn系化合物中のPb又はCuを、有害な試薬を使用することなく簡便且つ高精度で検出する方法は知られていない。そこで、本発明はこのような方法を提供することを目的とする。 本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、ポラプレジンクを酸性又はアルカリ性の水溶液に溶解させた後、溶液を中和してポラプレジンクを析出させた場合、不純物金属は析出物中には取り込まれ難く、殆どが溶液中にイオンとして残るという知見を得た。そして、該知見に基づきさらに検討を行なったところ、ポラプレジンクのようなZn−カルノシン錯体以外の含Zn化合物についても、一旦これを水に溶解させて水溶液とし、該水溶液に中性条件下でカルシンを添加した場合にも、含Zn化合物に含まれる不純物金属をイオンとして溶液中に残したまま亜鉛イオン(又はZn含有イオン)を沈殿物として析出させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、水溶性のZn含有化合物であって、不純物としてPb及び/又はCuを含み得るZn含有化合物中のPb又はCuの濃度を測定する方法であって、 (1) 前記Zn含有化合物の水溶液を調製する工程、 (2) カルノシンの存在下に前記工程(1)で得られた水溶液のpHを6〜10に調整すると共に、Znカルノシン錯体を析出させる工程、 (3) 前記工程(2)で得られた、Znカルノシン錯体からなる析出物を含む水溶液から、液相を分離する工程、及び (4) 前記工程(3)で分離された液相中のPbイオン濃度又はCuイオン濃度を比色分析により測定する工程を含むことを特徴とする方法である。 本発明によれば、ポラプレジンクのようなZn含有化合物に不純物として含まれ得るPbやCuの濃度を、有害な試薬を使用することなく、比色法という簡単な方法で精度よく測定することができる。 本発明の方法では、水溶性のZn含有化合物であって、不純物としてPb及び/又はCuを含み得るZn含有化合物中のPb又はCuの濃度を測定する。 本発明の方法において、測定の対象となる水溶性のZn含有化合物は、化合物(錯体も含む)の構成元素としてZnを含み、且つ水溶性があり、しかも不純物としてPb及び/又はCuを含む可能性のある化合物であれば特に限定されない。ここで水溶性があるとは、酸性、中性、塩基性の何れかの条件で水に可溶であること、別言すれば酸性水溶液、水及び塩基水溶液から成る群より選ばれる少なくとも1つに可溶であることを意味する。また、可溶であるとは、1g以上、より好ましくは10g以上のZn化合物が溶媒となる酸水溶液、水又は塩基性水溶液100gに完全に溶解することを意味する。 本発明で使用する上記Zn化合物を具体的に示せば、ポラプレジンク等のZn−カルノシン錯体(該錯体は、酸性及びアルカリ性の条件下で水に可溶であるが、中性の水又は水溶液、より具体的にはpHが6〜10の水又は水溶液には難溶若しくは不溶である。)、ジメチル亜鉛やジエチル亜鉛などのアルキル亜鉛類、ポルフィリン亜鉛錯体、フタロシアニン亜鉛錯体等の有機亜鉛化合物;金属亜鉛又は亜鉛を含む合金;塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、亜鉛酸塩類;閃亜鉛鉱類;及び酸化亜鉛(亜鉛華)や過酸化亜鉛等の亜鉛酸化物を挙げることができる。これらの中でも、他の分析方法を適用するのが困難であるという理由から、ポラプレジンク等のZn−カルノシン錯体を使用するのが好ましい。 このような化合物は、その精製度合いにもよるが、その化合物を製造する際に使用される亜鉛原料に起因して、通常、それぞれ0〜100ppm(質量基準)、好ましくは0〜10ppm(質量基準)のPb又はCuを不純物として含有している。本発明の方法は、水、酸性水溶液、塩基性水溶液に対して溶解性を持たないZn化合物に対して直接適用することはできないが、これらZn化合物を空気中で燃焼させて酸化亜鉛等の水溶性Zn系化合物に誘導できるものであれば、間接的に適用することができる。Zn化合物の燃焼の方法としては例えば日本薬局方の重金属試験法記載の方法等を挙げることができる。 本発明の方法では、先ず工程(1)において、前記Zn含有化合物の水溶液を調製する。上記水溶液の調製は、前記した水溶性のZn含有化合物と酸性水溶液、水または塩基水溶液とを混合することにより行われる。Zn含有化合物が中性の水に可溶である場合には、通常水を使用し、Zn含有化合物が中性の水に不溶である場合には、酸性水溶液または塩基性水溶液が使用される。これら水または水溶液としては、亜鉛、鉛、Cuを含まないものであればとくに限定されるものではないが、水としてはイオン交換水、超純水または蒸留水を使用するのが好適である。また酸性水溶液或いは塩基性水溶液としては、これらの水に酸あるいは塩基を溶解させたものが使用される。このとき使用される酸及び塩基は、Zn、Pb、Cuを含まないものであれば特に制限されず、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、酢酸、クエン酸等の酸あるいはそれらの混合物が使用できる。また、塩基性水溶液としては、水に塩基を溶解させたものが使用できる。塩基としては、酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、あるいはそれらの混合物が使用できる。 水溶性のZn含有化合物1gに対し、溶解させる酸性水溶液、水または塩基水溶液の量は100g以下が好ましく、多すぎると不純物のPbやCuの濃度が希薄になり比色分析の感度が悪くなる恐れがある。また、使用量が少なすぎると後の工程でZn−カルノシン錯体のろ過が困難になるという点から1〜10gが特に好ましい。水溶性のZn含有化合物を溶解させる温度は、酸性水溶液、水及び塩基水溶液が液体である温度範囲内でとくに限定されないが、水溶性のZn含有化合物の溶解が少量の酸性水溶液、水及び塩基水溶液でよいという点から5℃以上が好ましい。一方、あまりに高温であると酸性水溶液、水及び塩基水溶液が蒸発して測定誤差の原因になるという点から80℃以下が好ましい。 本発明の方法では、工程(2)において、カルノシンの存在下に前記工程(1)で得られた水溶液のpHを6〜10に調整すると共に、Znカルノシン錯体を析出させる。ここで、カルノシンとしては、β−アラニンとL−ヒスチジンが縮合したL−カルノシン、β−アラニンとD−ヒスチジンが縮合したD−カルノシン、及びL−カルノシンとD−カルノシンの混合物が使用できる。L−カルノシンとD−カルノシンの混合物を使用する場合、両者の混合比は特に限定されず、任意に定めることができる。カルノシンにおいては、その分子内のカルボキシル基やアミノ基の構造により、酸型(−NH3+)、塩基型(−COO−)、中性型(−COOH,−NH2)に分類されるが、本発明では、いずれの型のカルノシンでも使用できる。 カルノシンの存在下に前記工程(1)で得られた水溶液のpHを調整する方法は特に限定されなず、例えば、前記工程(1)で得られた水溶液がpH6未満の酸性水溶液またはpH10を越える塩基性水溶液である場合には、これら水溶液にカルノシンを添加し、中和することによりpHを所定の範囲に調製すればよい。また、前記工程(1)で得られた水溶液がpH6〜10の水溶液である場合には、該水溶液に単にカルノシンを添加すればよい。 中和に際して使用される酸及び塩基は、Zn、Pb、Cuを含まないものであれば特に制限されず、前記工程(1)の説明で示したものと同様なものが使用できる。しかしながら、クエン酸等の多価の有機酸は生成するZnカルノシン錯体の溶解度を高めてしまう効果があるため、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸等の強酸あるいは酢酸、蟻酸などの一価の有機酸を使用するのが好ましい。pHを調整する酸あるいは塩基の規定度はあまりに低すぎると不純物のPbやCuの濃度が希薄になり比色分析の感度が悪くなるという点から0.01N以上が好ましく、とくに0.1N以上が好ましい。なお水酸化ナトリウムや炭酸水素ナトリウムなどの固体のものについては固体のまま加えても良い。 カルノシンは固体のままあるいは水に溶解させて添加することができる。添加するカルノシンの量は、水溶液に含まれるZn1グラム原子に対して1モル以上であればよいが、比色分析におけるZnの影響を排除する効果が高いという観点からZn1グラム原子に対して1.1〜10モル、特に1.5〜5モル使用するのが好ましい。例えば、塩化亜鉛1gを含む水溶液(亜鉛0.0074グラム原子を含む)を使用する場合には、1.66g(0.0074モル)以上のカルノシン(分子量226.24)を使用すればよい。 なお、前記工程(1)で得られた水溶液に含まれる含Znか号物がポラプレジンク等のZnカルノシン錯体のように、化合物内にカルノシンおよびその前駆体が含まれる場合には、カルノシンは水溶液中に存在することになるので、pH調製に際してカルノシンを添加する必要は特にないが、安定した分析結果を得るために、Zn1グラム原子に対して0.1〜9モル、特に0.5〜4モルのカルノシンを添加量するのが好適である。 水溶液中で水溶性含Zn化合物とカルノシンが共存するとZnカルノシン錯体が形成される。このZnカルノシン錯体は中性の水にはほとんど溶解しないことが知られている。このため、カルノシンの存在下に前記工程(1)で得られた水溶液のpHを6〜10、好ましくは5〜8さらに好ましくは7に調整すると、形成されたZnカルノシン錯体は析出し沈殿する。一方、不純物として含まれるPbまたはCuは析出せずにイオンの状態で液相に残ることになる。 本発明の方法では、工程(3)において、前記工程(2)で得られた、Znカルノシン錯体からなる析出物を含む水溶液から、液相を分離する。このとき前記工程(2)でpH調整した液の液温があまり高すぎるとZnカルノシン錯体の溶解度が大きくなるため、液温は0〜30℃とするのが好ましい。また、分離される液相に含まれるZnカルノシン錯体の量を少なくするために、分離前にZnカルノシン錯体の熟成を行なうのが好ましく、そのために0〜30℃で30分以上静置または攪拌してから分離操作を行なうことが望ましい。なお、静置と攪拌は組み合わせても良い。さらに、水分の蒸発による測定誤差の影響を避けるため、このときの静置あるいは攪拌する時間は30分以上24時間以内とするのが好ましい。 析出物と液相との分離方法としては、ろ過、デカンテーション等の一般に採用される固液分離法が限定されることなく用いることができる。ろ過方法としては遠心分離、自然ろ過、吸引ろ過、加圧ろ過等が挙げられる。また、後段の分析において使用する液相の量が少なくてもよい場合は、水相を全て分離する必要はないので、上澄み液をピペット等で採取してもよい。この場合、全水相の量に対する採取量を把握しておけば、後段の分析結果から試料として使用した水溶性含Zn化合物中のPbまたはCu量を求めることができる。 本発明の方法では、工程(4)において、前記工程(3)で分離された液相中のPbイオン濃度又はCuイオン濃度を比色分析により測定する。前記工程(3)で分離された液相は、前記工程(1)で調製された水溶液と比べるとZnの含有量が極めて少ないものとなっているが、少量のZnイオンを含む。このため、比色分析に際しては、Znに対する遮蔽を行なうのが好適である。PbまたはCuの比色分析及びZn遮蔽方法としては特に限定されず、たとえば以下に示すような方法が好適に採用できる。 即ち、Pbイオンの分析法としては、(i)アンモニアで弱塩基性条件にしたのち、シアン化カリウムを隠蔽剤として加えテトラフェニルポルフィリンテトラスルホン酸等の水溶性のポルフィリンで発色させて黄色(λ=464nm)の吸光度を測定する方法、(ii)塩基性条件下、シアン化カリウムを隠蔽剤として加えジチゾンの四塩化炭素溶液を加えて有機層の赤色(λ=530nm)の吸光度を測定する方法、(iii)酢酸/酢酸ナトリウム緩衝溶液で弱酸性条件にしたのち、1,10−フェナントロリン水溶液を隠蔽剤として加えキシレノールオレンジを加えて紫色(λ=580nm)の吸光度を測定する方法、(iv)塩基性条件下で酒石酸、EDTA、トリエタノールアミン、ブロモチモールブルーを加えて600nmの吸光度を測定する方法、(v)弱酸性条件下、シアン化カリウム、EDTA、ピロガロールレッドを加えて530nmの吸光度を測定する方法、(vi)シアン化カリウム、ピリジルアゾレゾルシノールを加え540nmの吸光度を測定する方法が好適に採用できる。中でも特に毒性が低いという点から前記(iii)の方法を採用するのが好ましい。 上記(iii)の方法では、前記工程(3)で分離された水相(Pbイオン及び/又はCuイオンを含み得る水溶液)1(ml)に緩衝溶液(pH=5.5)を0.1(ml)加え、飽和1,10−フェナントロリン水溶液1(ml)、0.1%のキシレノールオレンジ水溶液を加えて攪拌し580nmの吸光度を測定する。このとき使用する緩衝溶液はpHが5.5となるものであれば特に制限されない。このような緩衝溶液を例示すると酢酸/酢酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム/水酸化ナトリウム、リン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム/リン酸水素二ナトリウム、クエン酸/リン酸水素二ナトリウム、フタル酸水素カリウム/水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム/水酸化ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム/水酸化ナトリウム、コハク酸/四ホウ酸ナトリウム、乳酸/乳酸ナトリウム、ギ酸/水酸化ナトリウムが挙げられる。緩衝溶液の濃度はあまりに濃度が低いと緩衝の効果が少なく、あまりに濃度が高いと共通イオン効果等の影響により塩が析出してくることから0.01〜10Nが好ましく、0.1〜1Nが特に好ましい。 1,10−フェナントロリンは、3分子でひとつのZnイオンを隠蔽することができる。水には難溶であるが水100gあたり1,10−フェナントロリンは1.5g程度溶解できる。1(ml)を使うことで16mgのZnを隠蔽できる。なお、前記操作によって得たPbイオン及び/又はCuイオンを含む水溶液1(ml)中にはZnが1mg程度残っており1,10−フェナントロリン飽和水溶液1(ml)を加えることで十分隠蔽が可能である。隠蔽剤が多すぎても比色には影響を与えることは稀であるが、あまりに少ないとZnが隠蔽できずあまりに多いと不純物の濃度が低くなって感度が悪くなることから加える飽和1,10−フェナントロリン飽和水溶液は0.01(ml)〜5(ml)が好ましく、とくに0.1〜2.0(ml)が特に好ましい。 キシレノールオレンジは水に溶解させることができ、Pbと1:1のキレートを形成して紫色を呈する。添加するキシレノールオレンジは少なすぎるとPbとキレートを形成させることができず、またあまり多すぎるとPbとキレートを形成していないキシレノールオレンジによって吸光度の妨害を受けるため0.1%のキシレノールオレンジ水溶液を0.01〜1(ml)添加するのが好ましい。580nmの吸光度を測定することでPbとCuの検出が可能となる。 一方Cuイオンの分析法として好適な方法を例示すると、(i)前述のように弱酸性条件下、1,10−フェナントロリンを隠蔽剤として加えキシレノールオレンジを加えて紫色(λ=580nm)の吸光度を測定する方法、(ii)塩酸とクロロ酢酸を加え吸光度を測定する方法、ピリジルアゾ2−ナフトールを加え吸光度を測定する方法、(iii)ムレキシドを加えて吸光度を測定する方法、アンモニアとナフトールバイオレットを加えて570nmの吸光度を測定する方法、(iv)カルセインを加えて消光する蛍光を観測する方法等が挙げられる。 前記工程で分離された水相(Pbイオン及び/又はCuイオンを含み得る水溶液)がCuイオンを含無場合には青色を呈するので、600nmの吸光度を測定することでCuイオンの定量が可能である。感度を高める目的でアンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアミンを加えて吸光度を測定する方法も挙げることができる。 これらの方法を使うことにより、亜鉛、亜鉛酸化物、塩化亜鉛、ポルフィリン亜鉛錯体等の水溶性Zn系化合物を毒性の高い試薬を用いることなく容易にPbやCuを分析することが可能である。 以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 なお、以下に示す実施例及び比較例で使用したZnカルノシン錯体は、メタノール中酢酸亜鉛、カルノシン、水酸化ナトリウムを室温で攪拌し、ろ過して水で洗浄を繰り返すことで得た。得られたZnカルノシン錯体はICP―MSで測定し、PbとCuは含まれていないことを確認した。 実施例1 Znカルノシン錯体(Pb、Cu不含)100mgに10ppmのPb標準液を0、100、200(μl)加えたものを用意し容量を調整するためイオン交換水をそれぞれ200、100、0(μl)加えた。3N−塩酸を1(ml)加えてZnカルノシン錯体を完全に溶解させ3N−水酸化ナトリウムを1(ml)、水を1(ml)加えてpHをそれぞれ7.3に調製し白色の沈殿を形成させた。25℃で1時間放置した後メンブレンフィルターでろ過した。それぞれのろ液を1(ml)取り、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH=5.5)を100(μl)加え、飽和1,10−フェナントロリン水溶液を1(ml)加えた。0.1%キシレノールオレンジ水溶液を100(μl)加え580nmの吸光度を測定したところそれぞれ0.063Abs、0.089Abs、0.129Abs(相関係数=0.9852)であった。 実施例2 Znカルノシン錯体(Pb、Cu不含)100mgに10ppmのCu標準液を0、100、200(μl)加えたものを用意し容量を調整するためイオン交換水をそれぞれ200、100、0(μl)加えた。3N−塩酸を1(ml)加えてZnカルノシン錯体を完全に溶解させ3N−水酸化ナトリウムを1(ml)、水を1(ml)加えてpHをそれぞれ7.3に調製し白色の沈殿を形成させた。25℃で1時間放置した後メンブレンフィルターでろ過した。それぞれのろ液を1(ml)取り、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH=5.5)を100(μl)加え、飽和1,10−フェナントロリン水溶液を1(ml)加えた。0.1%キシレノールオレンジ水溶液を100(μl)加え580nmの吸光度を測定したところそれぞれ0.060Abs、0.081Abs、0.096Abs(相関係数=0.9908)であった。 実施例3 Pb濃度未知のZnカルノシン錯体100mgを200(μl)の水と3N塩酸1(ml)を加えて完全に溶解させた。3N−水酸化ナトリウムを1(ml)、水を1(ml)加えてpHをそれぞれ7.3に調製し白色の沈殿を形成させた。25℃で1時間放置した後メンブレンフィルターでろ過した。それぞれのろ液を1(ml)取り、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH=5.5)を100(μl)加え、飽和1,10−フェナントロリン水溶液を1(ml)加えた。0.1%キシレノールオレンジ水溶液を100(μl)加え580nmの吸光度を測定したところ0.074であった。検量線からPb濃度は7ppmであると計算された。同じ試料をICP−MSで測定したところPbは7ppmでありよく一致した。 比較例1 Znカルノシン錯体(Pb、Cu不含)100mgに10ppmのPb標準液を0、100、200(μl)加えたものを用意し容量を調整するためイオン交換水をそれぞれ200、100、0(μl)加えた。1(ml)ずつ取り、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH=5.5)を100(μl)加え、飽和1,10−フェナントロリン水溶液を1(ml)加えた。0.1%キシレノールオレンジ水溶液を100(μl)加え580nmの吸光度を測定したところそれぞれ0.920Abs、0.921Abs、0.918Absであった。 比較例2 Znカルノシン錯体(Pb、Cu不含)100mgに10ppmのCu標準液を0、100、200(μl)加えたものを用意し容量を調整するためイオン交換水をそれぞれ200、100、0(μl)加えた。1(ml)ずつ取り、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH=5.5)を100(μl)加え、飽和1,10−フェナントロリン水溶液を1(ml)加えた。0.1%キシレノールオレンジ水溶液を100(μl)加え580nmの吸光度を測定したところそれぞれ0.924Abs、0.926Abs、0.923Absであった。水溶性のZn含有化合物であって、不純物としてPb及び/又はCuを含み得るZn含有化合物中のPb又はCuの濃度を測定する方法であって、 (1) 前記Zn含有化合物の水溶液を調製する工程、 (2) カルノシンの存在下に前記工程(1)で得られた水溶液のpHを6〜10に調整すると共に、Znカルノシン錯体を析出させる工程、 (3) 前記工程(2)で得られた、Znカルノシン錯体からなる析出物を含む水溶液から、液相を分離する工程、及び (4) 前記工程(3)で分離された液相中のPbイオン濃度又はCuイオン濃度を比色分析により測定する工程を含むことを特徴とする方法。前記Zn含有化合物が、Znカルノシン錯体である請求項1に記載の方法。 【課題】 不純物としてPb及び/又はCuを含み得るZn系化合物中のPb及び/又はCuを有害な試薬を使用することなく簡便且つ高精度で検出する方法提供する。 【解決手段】 先ず、被検体となる水溶性のZn含有化合物の水溶液を調製する。次いで、カルノシンの存在下に該水溶液のpHを6〜10調整することによりZnカルノシン錯体を析出さた後、析出物と水相とを分離する。そして、分離された液相中のPbイオン濃度又はCuイオン濃度を比色分析により測定する。【選択図】 なし


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