生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_糖尿病性腎症予防組成物
出願番号:2005021264
年次:2006
IPC分類:A61K 31/722,A61P 3/10,A61P 13/12,A23L 1/30,C08B 37/08


特許情報キャッシュ

伊藤 幹雄 小島 良二 雪下 正志 又平 芳春 三澤 義知 JP 2006206505 公開特許公報(A) 20060810 2005021264 20050128 糖尿病性腎症予防組成物 焼津水産化学工業株式会社 390033145 松井 茂 100086689 伊藤 幹雄 小島 良二 雪下 正志 又平 芳春 三澤 義知 A61K 31/722 20060101AFI20060714BHJP A61P 3/10 20060101ALI20060714BHJP A61P 13/12 20060101ALI20060714BHJP A23L 1/30 20060101ALN20060714BHJP C08B 37/08 20060101ALN20060714BHJP JPA61K31/722A61P3/10A61P13/12A23L1/30 AA23L1/30 ZC08B37/08 A 4 OL 14 4B018 4C086 4C090 4B018MD41 4B018ME03 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA23 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA81 4C086ZC35 4C090AA09 4C090BA47 4C090BD37 4C090DA09 4C090DA23 本発明は、糖尿病に伴って起こる腎疾患、すなわち糖尿病性腎症の予防又は進行を抑制する糖尿病性腎症予防組成物に関する。 平成14年度糖尿病実態調査報告(平成16年6月厚生労働省発表)によれば、わが国において、糖尿病が強く疑われる人は男性の12.8%、女性の6.5%であり、その約半数の人が現在何らかの治療を受けているといわれている。また、糖尿病の可能性を否定できない人は男性の10.0%、女性の11.0%であるといわれている。 そして、糖尿病の治療を受けている人の約半数が糖尿病を原因とする何らかの合併症を引き起こしており、その内訳は、神経障害15.6%、網膜症13.1%、腎症15.2%、足壊疽1.6%と報告されている。また、現在治療を受けていない人では3.1%の人が腎症を引き起こしている。さらに、糖尿病が強く疑われる人の中で腎症にかかっている人の割合を年齢別に見ると、20〜39歳で0%、40〜59歳で11%、60歳以上で33%と、高齢になるほど腎症になる確率が高いことが示されている。 糖尿病性腎症とは、糖尿病に起因する腎障害の総称であり、通常、糖尿病性極小血管症により惹起される腎障害のことを指し、高血糖が長期間続くことにより、腎臓の糸球体の血管が硬化して血管が狭くなると同時に濾過作用が低下し、タンパク尿が出たり、尿が出にくくなったりして、老廃物が体にたまって尿毒症や尿毒症性神経痛、ネフローゼ症候群等を引き起こし、最終的には腎不全となり人工透析を必要としなければならなくなる疾患である。糖尿病性腎症は、糖尿病患者にとって生命に関わる重大な合併症であり、1998年には透析導入の原因疾患第1位となり、透析患者は年間1万人の割合で増加している。 一方、グルコサミンがβ1−4結合で直鎖に連なった多糖構造をなしているキトサンは、カニ、エビ等の甲殻類の殻から得られるキチンを脱アセチル化することにより調製される不溶性の食物繊維であり、血清脂質改善作用、血圧調節作用、整腸作用、コレステロール低下作用等の様々な生理活性を有することが知られている。そのため、キトサンは、食品添加物として、また機能性食品の分野ですでに幅広く利用されている。 例えば、本発明者らは、下記特許文献1において、糖尿病治療薬と併用した際に、その効果を高めるための糖尿病治療薬効果促進剤であって、低分子化キトサン及び/又はそれらの塩を有効成分として含む経口摂取用の組成物からなることを特徴とする糖尿病治療薬効果促進剤を提案している。 また、下記非特許文献1、2において、インスリン非依存性の非肥満型及び肥満型糖尿病モデルである糖尿病態マウスに、キトサンを低分子化処理して得られる低分子キトサンを経口投与することにより、血糖値の上昇が抑制されることを報告している。特開2004−67575号公報Biol. Pharm. Bull. 23(12) 1458-1464 (2000)Biol. Pharm. Bull. 25(2) 188-192 (2002) 糖尿病性腎症は、一般に糖尿病の発病から10年くらいで発症するとされるが、自覚症状がないことから、自覚症状が現れたときにはかなり腎症が進んだ状態であり、また、インスリン非依存型では、発病時期が明確に分からないため、日常の食事等による血糖や血圧コントロールに注意を払うとともに、微量アルブミン尿検査等を定期的に行うことで早期発見に努める必要がある。 現在、糖尿病性腎症の治療には、まずは運動療法、食事療法、経口血糖降下剤、インスリンによる血糖コントロールが行われている。さらに症状が進行した場合、抗血小板剤、アンジオテンシン阻害剤、利尿剤、経口吸着剤等が用いられる。 しかしながら、血糖を下げる目的で用いられるスルホニル尿素(SU)剤や、ビグアナイド剤、α−グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリン系薬、フェニルアラニン誘導体系薬等の長期投与は、低血糖症状や、胃腸障害、肝障害、皮膚障害等の副作用があり、その他の薬剤にも様々な副作用が強く懸念されるため問題となっている。 また、糖尿病性腎症には、TGF−β、アンジオテンシンII、血小板由来成長因子−B(PDGF−β)、成長ホルモン(GH)、インスリン様成長因子−I(IGF−I)等の増殖肥大因子、内皮細胞型NO合成酵素、オルニチン脱炭酸酵素等の因子が関わっていると考えられているが、臨床的な応用がなされているのはアンジオテンシンIIに関わるアンジオテンシン変換酵素阻害剤とAT1受容体拮抗薬のみである。これらはいわゆる血圧降下の薬剤であり、腎臓をターゲットとした効果的な薬剤の開発が期待されている状況にある。 したがって、本発明の目的は、糖尿病の疑いのある人及び糖尿病患者が、糖尿病の発症前又は発症初期の段階から長期的に安全に摂取でき、合併症である糖尿病性腎症への進行を予防又は抑制することができる糖尿病性腎症予防組成物を提供することにある。 上記目的を達成するため、本発明の糖尿病性腎症予防組成物は、低分子キトサン及び/又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする。 本発明の糖尿病性腎症予防組成物においては、前記低分子キトサンの平均分子量が10,000〜30,000であることが好ましい。 本発明の糖尿病性腎症予防組成物は、低分子キトサン及び/又はその塩を有効成分として含有することにより、長期間摂取しても副作用の心配がなく、糖尿病性腎症の発症を効果的に予防又は抑制することができる。 本発明の糖尿病性腎症予防組成物は、非肥満型インスリン非依存型糖尿病により誘発される糖尿病性腎症の予防、あるいは肥満型インスリン非依存型糖尿病により誘発される糖尿病性腎症の予防に好適に用いられる。 本発明の糖尿病性腎症予防組成物は、糖尿病の疑いのある人及び糖尿病にかかっている人が安全に継続的に摂取することができるので、インスリン分泌障害をもつ2型糖尿病及び肥満でインスリン抵抗性を持つ2型糖尿病から誘発される糖尿病性腎症のどちらに対してもその発症を効果的に予防又は抑制することができる。 本発明の糖尿病性腎症予防組成物の有効成分である低分子キトサンは、キチンのアルカリ処理による脱アセチル化反応によって調製されるキトサンの加水分解物であり、好ましくは平均分子量10,000〜30,000のものが用いられ、より好ましくは平均分子量15,000〜25,000のものが用いられる。例えば、平均分子量20,000の低分子キトサンは、分子量1,000〜100,000の範囲に分布するキトサン分解物の混合物である。 上記低分子キトサンは、遊離体であってもよく塩であってもよい。低分子キトサンの塩類としては、薬学的に許容されるものであればよく、具体的には、塩酸塩、乳酸塩、酢酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩等が例示できる。 低分子キトサンは、キチンのアルカリ処理により直接低分子量のキトサンを調製することもできるが制御が難しいため、市販されているキトサンを酸分解又は酵素分解して分子量を調節して製造することが好ましい。例えば、キトサンを塩酸、酢酸、蟻酸等の酸とともに加熱した後、酸を除去あるいは中和脱塩処理し、結晶化等により粉末化する方法や、キトサンを希酸に溶解し、キトサナーゼ、グルコサミニダーゼ、ヘミセルラーゼ等のキトサン分解酵素を作用させる方法等が例示できる。このようにして得られたキトサン加水分解物(低分子化キトサン)は、そのまま用いることもできるが、カラムクロマトグラフィーや溶剤分画等の方法により精製してから用いてもよい。なお、加水分解条件は、上記の平均分子量範囲のキトサン加水分解物(低分子化キトサン)が得られるように適宜設定すればよい。 本発明の糖尿病性腎症予防組成物は、上記の有効成分のほかに、賦形剤、安定剤、防腐剤、保存剤、光沢剤、増粘剤、着色剤、ミネラル類、ビタミン類、糖類、香料、油脂、アミノ酸等の添加剤を適宜含むことができる。 本発明の糖尿病性腎症予防組成物の製品形態は、経口投与に適した形であれば特に制限されず、例えば、錠剤、粉末、顆粒、溶液、カプセル剤等が挙げられる。 本発明の糖尿病性腎症予防組成物の有効摂取量は、成人1日当り低分子キトサン及び/又はその塩換算で1.0〜5000mgが好ましく、50〜500mgがより好ましい。低分子キトサンの安全性については既に確認されており、ラットにおける経口投与での急性毒性試験の結果、LD50は体重1kg当り5g以上である。 また、本発明の糖尿病性腎症予防組成物は、例えば、滋養強壮ドリンク、ジュース類、コーヒー類、ミネラルウォーター、味噌汁、調味料、たれ、ドレッシング等の飲食品に配合して摂取することもできる。上記飲食品への糖尿病性腎症予防組成物の配合量は、上記の有効摂取量に基づいて設定すればよいが、通常、低分子化キトサン及び/又はその塩換算で0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。 本発明の糖尿病性腎症予防組成物は、糖尿病初期の段階、より好ましくは糖尿病発症前に経口投与することにより、尿中アルブミン排泄量を低減し、腎組織の病理組織学的変化(近位尿細管の巨核化、遠位尿細管の突出の程度、糸球体メサンギウム細胞の面積、尿細管間質の線維化、糸球体の肥大等)を抑制し、効果的に糖尿病性腎症の発症を予防又は抑制することができる。 また、他の糖尿病治療薬と低分子キトサンを併用して摂取することについては、既に安全性が確認されており、本発明の糖尿病性腎症予防組成物は、糖尿病性腎症の治療に用いられる糖尿病治療薬と同時に服用してもよく、個別に服用してもよい。 キトサン3.0kgを300Lの水に分散させ、撹拌しながら乳酸を加えて溶解させた(pH5.0)。この溶液に、キトサナーゼ(商品名「キトサナーゼ−U」、明治製菓株式会社製)を1500U(力価はメーカー表示による)を加え、45℃で分解反応を行った。この反応液をフィルタープレス濾過して不溶物を除去した後、限外濾過膜処理した。限外濾過膜処理は、商品名「マイクローザACV−3010」(旭化成工業株式会社製、分画分子量13,000)で処理した非透過側液を回収し、次いで商品名「マイクローザAHV−3010」(旭化成工業株式会社製、分画分子量50,000)で処理して透過側の液を回収した。この透過液を凍結乾燥して、570gの低分子キトサンを得た。この低分子キトサンの分子量測定を行ったところ、分子量分布は15,000〜30,000の範囲で、平均分子量は約20,000であった。この低分子キトサンを用いて後述する試験を行った。 試験においては、疾患モデル動物として、1)ヒトの非肥満のインスリン非依存型糖尿病に酷似しているとされる、グルコース刺激に対してインスリン分泌障害をもつことを特徴とするストレプトゾトシン(STZ)誘発進行性糖尿病マウスであるSPF雄性ICRマウス(8週齢、日本S.C.L.より購入)と、2)ヒトの肥満のインスリン非依存型糖尿病に酷似しているとされる、重度な肥満、高インスリン血症、インスリン抵抗性を特徴とする遺伝性肥満糖尿病マウスであるSPF雄性KK−Ayマウス(6週齢、日本クレアより購入)の2種類の糖尿病マウスモデルを用いた。なお、予め、両マウスとも飼育後、血糖の上昇とともに、多飲、多尿、尿中アルブミンの増加等の症状が見られ、また、腎の病理学的解析から腎への障害が見られることを確認している。 試験例1(STZ誘発進行性糖尿病マウスの尿中アルブミン排泄量に対する試験) 20時間絶食した8週齢のSPF雄性ICRマウスを3群(各群10匹)に分配し、STZを100mg/kg単回、腹腔内注射した。また、正常対照群(群10匹)として、STZ未処置のSPF雄性ICRマウス(8週齢)を使用した。 STZ処置後2週目から23週目まで、STZ処置群のうち2群には、低分子キトサンを蒸留水に溶解した溶液(濃度0.2質量%、0.8質量%)を飲水投与し(低分子キトサン投与群)、残りの1群(糖尿病対照群)には蒸留水を飲水投与した。なお、正常対照群には蒸留水を飲水投与した。 そして、STZ処置後22週目に各群の個々のマウスを代謝ケージに入れ、24時間尿を採取し、24時間あたりの尿中アルブミン排泄量を測定した。その結果を図1に示す。 図1から、0.2質量%及び0.8質量%の低分子キトサン投与群は、糖尿病対照群に比べて、1日あたりの尿中アルブミン排泄量の増加が有意(p<0.05)に抑制されていることが分かる(0.2質量%低分子キトサン投与群:12±1μg、0.8質量%低分子キトサン投与群:13±5μg、糖尿病対照群:369±305μg)。 試験例2(STZ誘発進行性糖尿病マウスの近位尿細管の巨核化及び遠位尿細管の突出に対する試験) 上記試験例1におけるマウスから、STZ処置後24週目に各群の個々のマウスを代謝ケージに入れて腎を摘出し、腎の病理組織学的な変化を評価した。腎は摘出後2mm程度にスライスし、10%中性緩衝ホルマリン溶液中で一昼夜固定した後、48時間0.01%リン酸緩衝液(pH7.2)に浸した。次に、70、80、90、95%アルコールに順次、それぞれ3時間浸し、さらに99.5%アルコールで一昼夜浸した後、無水アルコールに1時間浸して完全に脱水した。その後、組織をベンゼンI、II、III及びパラフィン飽和ベンゼンにそれぞれ30分間入れ、アルコールを除去した。そして、パラフィンに浸透させ、組織をパラフィン包埋した。組織ブロックを作製後、大型滑走式ミクロトーム(商品名「LS−113」、ヤマト製)を用いて厚さ約1μmの組織切片を作製した。 得られた組織標本を光学顕微鏡で観察して、病理組織学的変化(近位尿細管の巨核化、遠位尿細管の突出の程度)を4段階(−:変化なし、+:やや変化あり、++:変化あり、+++:顕著な変化あり)で評価した。図2に近位尿細管の巨核化の程度、図3に遠位尿細管の突出の程度の結果を示す。 図2、3から、低分子キトサン投与群は、糖尿病対照群に比べて、近位尿細管の巨核化及び遠位尿細管の突出という腎の病理組織学的変化が抑制されていることが分かる。 試験例3(STZ誘発進行性糖尿病マウスの糸球体メサンギウム細胞の面積に対する試験) 上記試験例2において摘出された腎組織標本をPAS染色することにより、糸球体の観察を行った。すなわち、組織切片をキシレン、無水キシレンにそれぞれ20分間浸してパラフィンを除去し、99.5、90、80%アルコールに順次つけてキシレン除去及び組織の再水和を行った。その後、0.5%過ヨウ素酸水溶液中に10分間浸し、精製水で数回洗浄した。次に、シッフ試薬中に40分間浸し、その後亜硫酸水中に3回それぞれ3分間浸し水道水で水洗した。次にヘマトキシレン液中に10秒間浸し、再び水道水で水洗した。最後に、80、90、99.5%及び無水アルコールにより脱水し、クレオート・キシレン及びキシレンにより透徹し封入した。これを画像解析装置(商品名「Image analyzer V1」、TOYOBO製)により各組織標本中、15個の糸球体を観察し、PAS陽性の基底膜及びメサンギウム細胞の面積を測定して数量的に組織変化の程度を評価した。その結果を図4に示す。 図4から、低分子キトサン投与群は、糖尿病対照群比較して、メサンギウム領域の面積の増加が有意(p<0.01)に低く、正常対照群と同レベルまで抑制されており、腎の病理組織学的変化が抑制されていることが分かる(0.2質量%低分子キトサン投与群:15±1×10−4mm2、0.8質量%低分子キトサン投与群:14±0.4×10−4mm2、糖尿病対照群:19±1×10−4mm2)。 試験例4(遺伝性肥満糖尿病KK−Ayマウスの尿中アルブミン排泄量に対する試験) 正常マウスとして6週齢のSPF雄性ICRマウス(1群12匹)を標準飼料(商品名「MF」、オリエンタル酵母株式会社製)で飼育した(正常群)。一方、糖尿病マウスとして6週齢のSPF雄性KK−Ayマウスを2群(各群12匹)に分配し、1群は高脂肪含有飼料(標準飼料+10質量%ラード)で飼育し(対照群)、もう1群は高脂肪含有飼料と1.8質量%低分子キトサン水溶液を投与した群(低分子キトサン投与群)とした。 実験開始0、3、6、9、12、18、24、30週目に各群の動物を代謝ケージに入れ、24時間あたりの飲水量と尿量及び尿中アルブミン排泄量を測定した。尿中アルブミン排泄量の結果を図5に示す。 図5から、正常群の尿中アルブミン排泄量は、実験期間を通して0.01〜0.04mL/24hであったのに対して、対照群及び低分子キトサン投与群は12週目まで増加を示し、その後尿量の減少とともに減少した。低分子キトサン投与群は、対照群の尿中アルブミン量に比べ3、6、12、24週目で低い値を示したが、有意差は認められなかった。 試験例5(遺伝性肥満糖尿病KK−Ayマウスのチオバルビツール酸(TBA)反応物質量に対する試験) 上記試験例4において、12週目及び30週目に各群のマウスの半数をエーテル麻酔下に開腹して両腎を摘出した。腎の湿重量測定後、一腎をホモジネートし、脂質過酸化の指標としてチオバルビツール酸(TBA)反応物質量を測定した。その結果を図6に示す。 図6から、12週目における腎組織中のTBA反応物質量は、対照群及び低分子キトサン投与群ともに正常群の約3倍であったが、30週目では低分子キトサン投与群は対照群(正常群の約5倍)に比較して有意(p<0.01)に低く、腎に対する酸化ストレスが低減されていることが分かる(30週目…正常群:1.31±0.3、対照群:5.08±0.4、低分子キトサン投与群:2.04±0.2)。 試験例6(遺伝性肥満糖尿病KK−Ayマウスの尿細管間質の線維化に対する試験) 上記試験例5で摘出した一腎を10%中性緩衝ホルマリン液に固定し、パラフィン包埋後、薄切した。得られた切片を、常法にしたがってMasson's trichrome染色し、染色された線維化領域を、画像解析ソフト(商品名「Win ROOF」、三谷商事製)を用いて測定した。その結果を図7に示す。 図7から、対照群では30週目で、より高度な線維化が観察されたのに対して、低分子キトサン投与群では正常群と同レベルまで線維化の進行が抑制されており、腎の病理組織学的変化が抑制されていることが分かる(30週目…正常群:4.59±0.33、対照群:14.5±0.69、低分子キトサン投与群:5.13±0.10)。 試験例7(遺伝性肥満糖尿病KK−Ayマウスの糸球体面積と糸球体メサンギウム面積に対する試験) 上記試験例6で得られた腎組織の切片を、常法にしたがってPAS染色した。このPAS染色標本より糸球体面積及び糸球体メサンギウム面積を画像解析ソフト(商品名「Win ROOF」、三谷商事製)により測定した。その結果を図8、図9に示す。 図8から、低分子キトサン投与群の糸球体面積は正常群の約1.3倍ではあるが、対照群と比較して、糸球体の肥大が有意(p<0.01)に抑制されており、腎の病理組織学的変化が抑制されていることが分かる(12週目…正常群:3415±71.9、対照群:5543±90.0、低分子キトサン投与群:4599±77.2、30週目…正常群:3806±91.1、対照群6464±142.3、低分子キトサン投与群:4832±139.6)。 また、図9から、糸球体に対するメサンギウム面積率においても、低分子キトサン投与群では有意に抑制されており、腎の病理組織学的変化が抑制されていることが分かる(12週目…正常群:11.2±0.32、対照群:23.2±0.49、低分子キトサン群:21.6±0.38、30週目…正常群:10.0±0.50、対照群27.9±0.54、低分子キトサン群:22.5±0.52)。 以上の試験結果から、低分子キトサンを継続投与することにより、STZ誘発進行性糖尿病マウス及び遺伝性肥満糖尿病KK−Ayマウスにおける腎機能の障害を抑制できることが明らかとなり、インスリン分泌障害を特徴とする2型糖尿病及び肥満でインスリン抵抗性を特徴とする2型糖尿病により誘発される糖尿病性腎症の進展を効果的に抑制することが示された。STZ誘発進行性糖尿病マウスに低分子キトサンを投与した際の22週目における各群のマウスの尿中アルブミン排泄量を測定した結果を示す図である。STZ誘発進行性糖尿病マウスに低分子キトサンを投与した際の22週目における各群のマウスから摘出した腎組織標本の近位尿細管の巨核化の程度を観察した結果を示す図である。STZ誘発進行性糖尿病マウスに低分子キトサンを投与した際の22週目における各群のマウスから摘出した腎組織標本の遠位尿細管の突出の程度を観察した結果を示す図である。STZ誘発進行性糖尿病マウスに低分子キトサンを投与した際の24週目における各群マウスから摘出した腎組織標本の糸球体メサンギウム面積を測定した結果を示す図である。遺伝性肥満糖尿病KK−Ayマウスに低分子キトサンを投与した際の各群マウスの尿中アルブミン排泄量の変動の推移を表した図である。遺伝性肥満糖尿病KK−Ayマウスに低分子キトサンを投与した際の12週目及び30週目における各群マウスの腎組織中のTBA反応物質量を測定した結果を示す図である。遺伝性肥満糖尿病KK−Ayマウスに低分子キトサンを投与した際の12週目及び30週目における各群マウスの尿細管間質の繊維化を観察、比較した結果を示す図である。遺伝性肥満糖尿病KK−Ayマウスに低分子キトサンを投与した際の12週目及び30週目における各群マウスの糸球体面積を測定した結果を示す図である。遺伝性肥満糖尿病KK−Ayマウスに低分子キトサンを投与した際の12週目及び30週目における各群マウスの糸球体面積に対する糸球体メサンギウム面積率を測定Sた結果を示す図である。 本発明の糖尿病性腎症予防組成物は、糖尿病に起因する腎臓障害の発症・進行の予防又は抑制に好適に用いることができる。 低分子キトサン及び/又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする糖尿病性腎症予防組成物。 前記低分子キトサンの平均分子量が10,000〜30,000である請求項1記載の糖尿病性腎症予防組成物。 非肥満型インスリン非依存型糖尿病により誘発される糖尿病性腎症の予防に用いられる請求項1又は2記載の糖尿病性腎症予防組成物。 肥満型インスリン非依存型糖尿病により誘発される糖尿病性腎症の予防に用いられる請求項1又は2記載の糖尿病性腎症予防組成物。 【課題】 糖尿病の疑いのある人及び糖尿病患者が、糖尿病の発症前又は発症初期の段階から長期的に安全に摂取でき、合併症である糖尿病性腎症への進行を予防又は抑制することができる糖尿病性腎症予防組成物を提供する。【解決手段】 糖尿病性腎症予防組成物の有効成分として低分子キトサン及び/又はその塩を有効成分として含有させる。前記低分子キトサンの平均分子量が10,000〜30,000であることが好ましい。本発明の糖尿病性腎症予防組成物は、非肥満型インスリン非依存型糖尿病により誘発される糖尿病性腎症の予防、あるいは肥満型インスリン非依存型糖尿病により誘発される糖尿病性腎症の予防に好適に用いられる。【選択図】 なし


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