生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_たもぎ茸抽出物を有効成分とする抗腫瘍性免疫賦活剤
出願番号:2005018004
年次:2008
IPC分類:A61K 36/07,A61P 43/00,A61P 37/04,A61P 35/00,A61P 37/08,A23L 1/30


特許情報キャッシュ

吉成 篤四郎 加藤 和則 JP WO2006038527 20060413 JP2005018004 20050929 たもぎ茸抽出物を有効成分とする抗腫瘍性免疫賦活剤 株式会社スリービー 500451632 大野 聖二 230104019 森田 耕司 100106840 田中 玲子 100105991 北野 健 100114465 吉成 篤四郎 加藤 和則 JP 2004290528 20041001 A61K 36/07 20060101AFI20080418BHJP A61P 43/00 20060101ALI20080418BHJP A61P 37/04 20060101ALI20080418BHJP A61P 35/00 20060101ALI20080418BHJP A61P 37/08 20060101ALI20080418BHJP A23L 1/30 20060101ALI20080418BHJP JPA61K35/84 AA61P43/00 107A61P37/04A61P35/00A61P37/08A23L1/30 B AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20080515 2006539248 19 4B018 4C088 4B018MD82 4B018ME08 4C088AA02 4C088AC16 4C088BA09 4C088CA05 4C088CA11 4C088CA17 4C088MA07 4C088NA14 4C088ZB09 4C088ZB11 4C088ZB13 4C088ZB22 4C088ZB26 本発明は、たもぎ茸抽出物を有効成分とする抗腫瘍性免疫賦活剤および免疫賦活用健康食品に関する。 キノコ類の生体免疫賦活作用についてはさまざまな報告がされており、免疫賦活の機作やキノコ種の違いによる生理活性の差などが徐々に明らかにされている。これまでにある種のキノコ類に含有される多糖体が抗癌の目的で製品化され使用されているが、その効果は必ずしも充分なものとはいえず、より有用な免疫賦活剤が望まれていた。 近年、各種感染症、癌などに対する薬剤による治療法が開発され、その有用性が見いだされているが、癌化学療法や癌免疫療法も満足すべき結果は得られていない。これら疾患の発症は免疫担当細胞類の活性低下に起因するところが大きい。このため、免疫担当細胞に対して免疫賦活効果を有する組成物は、これらの疾患の予防や治療に極めて有用であり、健康維持の観点からも重要である。 免疫系による生体防御機構には自然免疫と獲得免疫がある。自然免疫はマクロファージ、白血球が主体となり病原性細菌等のパターンを認識し捕食することにより生体内から排除する機構であるのに対して、獲得免疫はT細胞とB細胞を主体とした多様な異物抗原にそれぞれ対応できる免疫応答である。その免疫応答は抗原に生体が暴露されるほど強力かつ効率的に反応し、ウイルスなどの再感染を防御している。しかしながら免疫応答が生体内で常に活発に行われていると、逆に炎症性組織障害や自己免疫性疾患が多発することが示されており、生体内にはその免疫応答を“負”に制御できる細胞、つまり抑制性T細胞が正常個体中に自然状態で自己免疫寛容の維持に関与している。 最近の研究で自然状態に存在する抑制性T細胞の異常がヒトの自己免疫性疾患、炎症性腸炎、アレルギーの直接原因となることが示されている。この抑制性T細胞の機能を強化できれば自己免疫病やアレルギー、さらには移植臓器に対する免疫拒絶反応の制御も期待できる。 一方、抑制性T細胞は正常個体中で自己から発生した腫瘍細胞(癌細胞)に対する有効な免疫反応を阻害していることが示されている。すなわち自己免疫寛容に関与する細胞が腫瘍細胞に対しても寛容であることが考えられる。実際に正常個体から抑制性T細胞を実験的に除去すると腫瘍に対する免疫応答が惹起あるいは強化され抗腫瘍効果が発揮できる。 正常個体に存在する抑制性T細胞はCD4陽性T細胞群に含まれるCD25またはGITR(Glucocorticoid-induced TNFR family gene)およびFoxP3遺伝子陽性細胞として分類されている。そのため正常個体中のリンパ組織(脾臓、リンパ節、末梢血、骨髄)に存在する抑制性T細胞はCD4とCD25、GITRまたはFoxP3分子の発現陽性細胞で解析することが可能である。抑制性T細胞の割合が生体内で増加しているときは個体が免疫寛容もしくは免疫抑制状態に陥りやすく、腫瘍、ウイルス、病原性細菌等に対する免疫応答も低下する。 したがって、免疫抑制性T細胞の増加を抑制しうる免疫調整物質は免疫賦活剤の有効成分として有用であると考えられる。 本発明に関連する先行技術文献情報としては以下のものがある:特開平11−302191、および三崎旭ら、「キシメジ科食用茸(ヒラタケ、タモギタケ)の多糖の化学的性質及び抗腫瘍作用」、大阪市立大学生活科学部紀要、第39巻(1991)、p.1−8。 本発明は、安全性が極めて高い、免疫賦活作用を有する薬剤ならびに機能性食品を提供することを目的とする。 本発明者らは、北海道産の食用キノコから免疫賦活作用を有するキノコを検索した結果、たもぎ茸の抽出物に高い免疫賦活作用があることを見いだした。 すなわち、本発明は、たもぎ茸抽出物を有効成分とする抗腫瘍性免疫賦活剤を提供する。別の態様においては、本発明は、たもぎ茸抽出物を有効成分とする腫瘍細胞増殖抑制剤を提供する。腫瘍細胞としては、ヒトの体内の腫瘍、例えば、子宮頚部癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、黒色種、膵臓癌、前立腺癌、頭頚部癌、乳癌、肺癌、大腸癌、胃癌、食道癌、卵巣癌、扁平上皮癌、肝細胞癌、胆管癌、中皮腫および類表皮癌由来細胞、マウス等の実験動物に移植された腫瘍細胞、ならびにヒト腫瘍に由来する細胞株の細胞、例えば、HeLa、MeWo, Hs695T, A137, KATO-III, MKN45, MKN28, HuH28, Daudi, Ramos, Raji, U937, HS-Sultan, SKM-1, THP-1, IM-9, MM1S, K562, HL60, HSC-3, HSC-4, TTn, TE-10, IMR-32, U251, PC-3, LNCaP, DU145, DLD-1, WiDr, SW837, Lu135, IMR-90, A549, SK-OV-3, SK-Br-3, A431, RMG-1, MCF-7, MIAPaCa-2, AsPC1, KP-4が含まれる。また別の態様においては、本発明は、たもぎ茸抽出物を有効成分とする免疫賦活性サイトカインの産生の増強剤を提供する。免疫賦活性サイトカインとしては、例えば、インターロイキン(IL)1、2、3、4、5、6、7、12、15、18、21、23、インターフェロン(IFN)α、β、γ、腫瘍壊死因子(TNF)α、β、が挙げられる。また別の態様においては、本発明は、たもぎ茸抽出物を有効成分とする免疫抑制性T細胞増加の抑制剤を提供する。さらに別の態様においては、本発明は、たもぎ茸抽出物からなる免疫賦活用健康食品ならびに腫瘍細胞増殖抑制用健康食品を提供する。 図1は、たもぎ茸熱水抽出物によるHeLa細胞増殖の抑制を示す。 図2は、たもぎ茸熱水抽出物による腫瘍細胞Sarcoma180の増殖の抑制を示す。 図3は、たもぎ茸熱水抽出物によるヒト樹状細胞の活性化抗原発現の増加を示す。 図4は、たもぎ茸熱水抽出物によるヒト樹状細胞からのIL−12産生の増強を示す。 図5は、マウス脾細胞中の抑制性T細胞のFACS解析の結果を示す。 図6は、Sarcoma180担癌マウス脾臓中におけるGITR陽性抑制性T細胞の割合を示す。 図7は、たもぎ茸熱水抽出物および他のキノコ抽出物を与えたSarcoma180移植マウスの腫瘍体積の変化を示す。 図8は、たもぎ茸熱水抽出物および他のキノコ抽出物を与えたSarcoma180移植マウスの腫瘍重量の平均値を示す。 図9は、たもぎ茸熱水抽出物および他のキノコ抽出物を与えたSarcoma180移植マウスの生存率を示す。 たもぎ茸はヒラタケ属に属するキノコであり、北海道を中心として広く食用に供されている。たもぎ茸抽出物は以下の方法によって製造することができる。本発明において使用するたもぎ茸は、天然に産するものを収穫してもよく、工場で人工栽培してもよい。たもぎ茸は、好ましくは、収穫後2時間以内に使用する。 収穫したたもぎ茸から有効成分を抽出する。抽出は好ましくは熱水抽出により行う。例えば、収穫したたもぎ茸を、たもぎ茸の重量の2−30倍、好ましくは5−20倍量の沸騰水の中に投入し、蒸気を加えながら撹拌する。沸騰してから10分間撹拌しながらたもぎ茸エキスを抽出する。得られたエキスはそのまま使用してもよく、濾過して固形分を除いてもよい。また、減圧濃縮機、凍結濃縮機等を用いて適宜濃縮してもよい。また、エキスを長期間保存するためには、レトルトパックに封入した後、例えば、120℃、15分間で殺菌処理をしてもよく、凍結乾燥または噴霧乾燥により粉末としてもよい。 このようにして得られたたもぎ茸抽出物は、後述の実施例で示されるように、HeLa細胞などのヒト癌に由来する細胞株の増殖を抑制し、マウスに移植した肉腫の成長を阻害することができた。さらに、たもぎ茸抽出物が、IL−12などの免疫賦活性サイトカインの産生を増強し、樹状細胞を活性化させ、免疫抑制性T細胞の出現を阻害しうることが示された。これらの結果は、本発明にしたがうたもぎ茸抽出物が、免疫賦活活性および腫瘍細胞増殖抑制活性を有することを裏付ける。 本発明にしたがって得られたたもぎ茸抽出物は、そのまま免疫賦活用健康食品あるいは腫瘍細胞増殖抑制用健康食品として用いることができるが、他の食品に添加して用いてもよい。摂取量は、固形分2.5%のエキスとして0.1−10ml/kg/日、特に1.8−2.7ml/kg/日が適当である。 本発明にしたがう免疫賦活剤は、毒性を有しないこと、多量に摂取しても生体に悪影響を与えないことなどの利点を有するため、健康食品に添加するのに非常に適している。 本明細書において明示的に引用される全ての特許および参考文献の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。また,本出願が有する優先権主張の基礎となる出願である日本特許出願2004−290528号の明細書および図面に記載の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。 以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。キノコ熱水抽出物の調製 各種キノコの熱水抽出物を調製した。たもぎ茸、マイタケ、シメジ、およびシイタケ各1kgをそれぞれ沸騰水5kg中に入れ、さらに加熱し、沸騰してから10分間撹拌した。得られた抽出液を減圧濃縮して、固形分2.5%の濃縮物240mlを得た。得られた濃縮物を120℃、15分間のレトルト殺菌処理をして、キノコ熱水抽出物を得た。HeLa細胞増殖抑制活性 実施例1で製造したたもぎ茸熱水抽出物をさらに減圧濃縮して、3倍濃度のたもぎ茸エキスを調製し、これを用いて、HeLa細胞増殖抑制活性を測定した。HeLa細胞を96穴マイクロプレートでMEM培地中に3.7x103細胞/ウエルで播種し、たもぎ茸エキスを最終固形分濃度がそれぞれ1.25%、2.5%、2.75%および3.75%となるようにウエルに加え、37℃で培養した。12、24、および48時間後に、MTT法により450nmで細胞数を係数した。 結果を図1に示す。たもぎ茸エキス添加後12時間および24時間では、すべての濃度で細胞数が減少した。48時間では2.5%濃度以上で細胞数の減少が見られた。すなわち、たもぎ茸エキスを添加することによりHeLa細胞の増殖が抑制されることが明らかとなった。なお、対照としてマウス脾臓由来の正常細胞についても同様の実験を行ったが、たもぎ茸エキスは正常細胞の増殖には影響を及ぼさなかった。肉腫に対する抗腫瘍効果 実施例1で製造したたもぎ茸熱水抽出物のSarcoma180に対する抗腫瘍効果を測定した。Sarcoma180の凍結細胞(東北大学加齢医学研究所より入手)を、37℃の温水で急速解凍し、約10倍量の生理食塩水を加え、遠心分離(1000回転/分、5分間)し、上清を除去した。この操作を4回繰り返した後、ペレットに約3倍量の生理食塩水を加えて撹拌し、細胞液とした。 細胞液0.1ml(約5×106個の細胞)を雌マウス(Slc:ICR)5匹の腹腔内に移植し、7日後に頸椎脱臼により犠牲死させた。腹部をエタノール消毒し、滅菌した注射筒を用いて腹水を回収した。各動物から回収した腹水を混合し、約5×106個の細胞を雌マウス(Slc:ICR、5週齢、約18g)の鼡径部皮下に移植した。 予防効果の評価実験(群1−3)においては腫瘍移植前10日間および移植後21日間、治療効果の評価実験(群4)においては移植後21日間、それぞれ1日1回試験溶液を経口投与した。投与は、所定量のたもぎ茸熱水抽出物と精製水からなる試験溶液12ml/kgをマウス用金属ゾンデを用いて移植動物の胃内に強制的に投与することにより行った。投与量は以下の表に示すとおりである。 移植後5、7、10、14、17、21および22日目に腫瘍体積を測定した。腫瘍体積は、ノギスを用いて腫瘍の短径(a)および長径(b)を測定し、以下の式により算出し、平均±標準偏差で示した。腫瘍体積(cm3)=4/3πa2b/2 結果を図2に示す。たもぎ茸熱水抽出物を投与することにより、腫瘍体積の増加が有意に抑制されることが示された。また、たもぎ茸熱水抽出物を予防的に投与することにより、さらに高い効果が得られることがわかった。樹状細胞の細胞表面抗原の発現変化 ヒト末梢血単核球由来樹状細胞の誘導は、加藤ら(K. Kato, et al., J Leukoc Biol, 70: 941-949, 2001)に記載されている手法に従い調製した。まず、ヘパリンを加えたシリンジを用いて健常人左腕静脈部より血液15−20mlを採取し、無菌下で等量のPBSで希釈した。等倍希釈血液を予め無菌プラスチックチューブに準備したリンフォセパール15ml(IBL社製)上に重層し、1500rpmで30分間遠心分離した。遠心後、リンフォセパール上の単核球層を回収し、PBSにて細胞を2回遠心洗浄した。単核球は最終的にRPMI1640培地、10%ウシ胎児血清含(Sigma社製)に希釈し、10cmのプラスチックシャーレに細胞を添加し培養した。37℃で30分後に非付着性の細胞(リンパ球)を除去し、付着細胞(単核球)に対して樹状細胞誘導培地(RPMI1640培地、10%ウシ胎児血清、50ng/mlヒトGM−CSF(オステオジェネティクス社製)および50ng/mlヒトIL−4(オステオジェネティクス社製))にて37℃で7日間培養し、ヒト単核球由来樹状細胞を誘導した。 誘導した樹状細胞をプラスチックチューブに回収し、RPMI1640培地を加えて遠心洗浄を行い、細胞数を測定した。細胞濃度を最終的に2x105個/mlにRPMI1640培地で調整し、0.5mlずつ24穴プレートに添加し、実施例1で調製した各種キノコ熱水抽出液(たもぎ茸、マイタケ、シメジ、シイタケ)をそれぞれ最終濃度2%で添加し37℃で24時間培養した。 キノコ熱水抽出液で刺激した樹状細胞をプラスチックチューブに回収し、RPMI1640培地で遠心洗浄後、FITC標識抗ヒトCD45抗体、PE標識抗ヒトCD86抗体(いずれもeBioscience社製)を各5μl添加し、4℃で1時間反応後、FACS(BD社製)にて細胞表面抗原の発現変化を解析した。樹状細胞におけるCD54およびCD86は、免疫応答の惹起に不可欠な分子であり、抗原発現の増加は樹状細胞の活性化状態を示すものであることが知られている。その結果、図3に示すようにたもぎ茸熱水抽出液を添加した樹状細胞において非添加細胞と比較してCD86抗原の発現増加(ヒストグラムの右側へのシフト)が確認された。またこの発現増強は他のキノコ抽出液(マイタケ、シメジ)ではほとんど認められなかった。下記の表に樹状細胞上のCD54抗原とCD86抗原の発現変化量を示す(FlowJoソフトによる解析;TreeStar社製)。 たもぎ茸熱水抽出液を添加することにより樹状細胞のCD54、CD86抗原の発現が増加していることが確認され、この効果は他のキノコよりも有意に高いものであった。樹状細胞からのIL−12産生 実施例1で製造した各種キノコ熱水抽出物を用いて、ヒト樹状細胞からのIL−12産生の増強効果を調べた。インターロイキン12(IL−12)は、主として樹状細胞から産生されるサイトカインの1種であり、NK細胞、Th1細胞の活性化に最も重要な因子であることが知られている。活性化樹状細胞から産生されるインターロイキン12(IL−12)の産生増強効果は以下の方法にて解析した。実施例4と同様に誘導した樹状細胞を細胞濃度を最終的に2x105個/mlにRPMI1640培地で調整し、0.5mlずつ24穴プレートに添加した。成熟化刺激としては、アデノウイルスによるCD40リガンド遺伝子導入(AxCACD40L−F/RGD、300粒子/細胞)を行い、さらに各種キノコ熱水抽出物(たもぎ茸、マイタケ、シメジ、シイタケ)をそれぞれ最終濃度2%で添加し37℃で48時間培養した。 キノコ熱水抽出液で48時間活性化刺激した樹状細胞の培養液をプラスチックチューブに回収し、10000rpm、5分間遠心して上清を回収した。培養上清をPBSにて10倍に希釈後、IL−12含有量をELISAキット(R&D社製)を用いて測定した。その結果、キノコ熱水抽出液を添加していない樹状細胞では13.0±0.1ng/mlの産生に対して、たもぎ茸熱水抽出液添加樹状細胞では14.4±0.1ng/mlと有意な差をもってIL−12の産生が亢進していた。またこの効果は他のキノコ(シイタケ:13.8±0.1ng/mlよりも高いものであった。脾細胞中の抑制性T細胞の解析 実験動物はSlc:ICR系のSPF雄性マウス(日本エスエルシー株式会社)より購入した生後5週齢の動物を飼育室で1週間飼育を行った後に実験を開始した。飼育室の平均温度は22℃、湿度50%の空調施設にて、無菌ケージ内で固形飼料を自由摂取で飼育した。ICRマウスの大腿部皮下に実施例3で示したSarcoma180細胞を1匹あたり500万個の細胞数を1ml注射筒と注射針26G(テルモ)を用いて投与した。 移植同日に実施例1で製造した被験物質たもぎ茸抽出物をマウス用金属ゾンデにて胃内に強制的に4ml/kgを連日21日目まで投与した。対照群として生理食塩水(大塚製薬(株))を等量投与した。1群あたりマウスは7匹使用した。移植後より週2回継続的に腫瘍系を測定し、21日後まで腫瘍体積を測定したところ、たもぎ茸熱水抽出物投与群で有為な腫瘍増殖抑制効果が認められた。この結果は実施例3で示した増殖抑制と同様であり、抗腫瘍効果が再確認された。 腫瘍移植後22日目に全ての腫瘍移植マウスを深麻酔下にて安楽死後、脾臓を腹腔内から摘出した。摘出脾臓を培養液の満たされたシャーレ内でほぐしてリンパ球を主体とした脾細胞液を得た。得られた脾臓細胞中の赤血球を溶血後、細胞数を測定しプラスチックチューブに10万個の細胞を入れた。 脾臓は腫瘍系が大きいほど巨大化しており、繊維芽質でやや赤みが薄く、骨髄系の細胞の混入も多く認められた。たもぎ茸熱水抽出物投与マウスでは生理食塩水投与マウスに比べて脾臓の巨大化、繊維芽質の程度も軽度であった。 脾細胞中の抑制性T細胞の蛍光染色は以下に示すとおりに行った。各投与群7匹で実施したが、抑制性T細胞の解析はうち6匹を用いて施行した。各マウスの実験番号は以下の通りである。グループ1:生理食塩水投与群151、152、153、154、155、157グループ2:タモギタケ熱水抽出液投与群251、252、254、255、256、257 各細胞入りのプラスチックチューブにFITC-CD4 (RM4-5; 0.5μl/reaction, eBioscience), Biotin-GITR (DTA-1; 0.5μl/reaction, eBioscience), Avidine-PE (0.2μl/reaction, BDpharmingen)を添加し、4℃で1時間反応させた。PBSで細胞を洗浄後PI染色にて死細胞を除去し、FACScalibur(BDバイオサイエンス社製)を用いて蛍光標識細胞を測定した。抑制性T細胞数の解析はFlowJoソフトウェア(トリースター社製)を用いて解析した。 抑制性T細胞はCD4陽性T細胞(FITC陽性細胞)中のGITR陽性細胞を割合で算出した。その結果を図5および6に示す。GITR陽性抑制性T細胞は、たもぎ茸熱水抽出物投与担癌マウス群 (13.2%±3.1%) では生理食塩水投与担癌マウス(33.4%±10.6%) にくらべて有為に減少していることが判明した。 以上の結果から、たもぎ茸熱水抽出物には、担癌状態により誘導される免疫抑制性T細胞の出現を阻害できる活性物質が含まれることが示された。このことは、たもぎ茸抽出物が免疫賦活剤として有用であることを示す。肉腫に対する予防的抗腫瘍効果の比較 たもぎ茸熱水抽出物および市販のキノコ抽出物のSarcoma180に対する予防的抗腫瘍効果を測定した。被検物質としては、実施例1で製造したたもぎ茸熱水抽出物(ロット1および2)、アガリクス仙生露ロイヤルおよびメシマ(登録商標)ピュアPL2.5を使用した。 Sarcoma180の凍結細胞(TKG0173、東北大学加齢医学研究所より入手)を、37℃の温水で急速解凍し、約10倍量の生理食塩水を加え、遠心分離(1000回転/分、5分間)し、上清を除去した。この操作を4回繰り返した後、ペレットに約3倍量の生理食塩水を加えて撹拌し、細胞液とした。細胞液0.1ml(約5×106個の細胞)をマウスの腹腔内に移植し、7日後に頸椎脱臼により犠牲死させた。腹部をエタノール消毒し、滅菌した注射筒を用いて腹水を回収した。各動物から回収した腹水を混合し、約5×106個の細胞を試験動物の鼡径部皮下に移植した。 試験動物としては6週齢の雌マウス(Slc:ICR)を各群10匹ずつ用い、飼料および水を自由に摂取させた。腫瘍移植前10日間および移植後35日間、1日1回試験溶液を経口投与した。投与は、所定量のたもぎ茸熱水抽出物または対照キノコ抽出物と精製水からなる試験溶液12ml/kgをマウス用金属ゾンデを用いて移植動物の胃内に強制的に投与することにより行った。投与量は以下の表に示すとおりである。 腫瘍体積は、実験開始日、移植後5、7、10、14、17、21、24、28、32および36日目(観察終了日)に、生存している個体について測定した。腫瘍体積は、ノギスを用いて腫瘍の短径(a)および長径(b)を測定し、以下の式により算出した。腫瘍体積(cm3)=4/3πa2b/2 腫瘍重量は、死亡例は発見後速やかに、生存例は最終投与(移植後35日目)の翌日に測定した。試験動物をエーテル麻酔下で放血により安楽死させ、左鼠径部の腫瘍を摘出し、その重量を測定した。各試験群の腫瘍重量の平均値より、それぞれの腫瘍増殖阻止率を以下の式により算出した。腫瘍増殖阻止率(%)=(1−投与群の平均腫瘍重量/対照群の平均腫瘍重量)×100 延命率は、腫瘍移植後の試験動物の生存日数を調べ、以下の式により算出した。延命率(%)=(投与群の平均生存日数/対照群の平均生存日数−1)×100 各パラメータについて一元配置分散分析を実施し(有意水準10%)、群間に有意差がみられた場合は、平均値についてDunnettの多重比較検定を実施した(有意水準5%および1%)。 結果を図7−9に示す。たもぎ茸熱水抽出物投与群では、腫瘍体積の平均値は経日的に増加したが対照群より低値で推移し、移植後5日目以降では、対照群と比較して統計学的に有意に低い値を示した。腫瘍重量の平均値は対照群と比べて23.4−29.3%の腫瘍増殖抑制が認められたが、統計学的有意差はみられなかった。延命率は15.5−21.0%であった。また、生存日数において対照群と比べ統計学的に有意な延命効果がみられた。 アガリクス投与群では、腫瘍体積の平均値は経日的に増加したが対照群より低値で推移し、移植後5日目以降断続的に、対照群と比較して統計学的に有意に低い値を示した。腫瘍重量の平均値は対照群と比べて5.7%の腫瘍増殖抑制が認められたが、統計学的有意差はみられなかった。延命率は20.6%であった。また、生存日数において対照群と比べ統計学的に有意な延命効果がみられた。メシマ(登録商標)投与群では、腫瘍体積の平均値は経日的に増加したが対照群より低値で推移し、移植後5日目以降断続的に、対照群と比較して統計学的に有意に低い値を示した。腫瘍重量の平均値は対照群と比べて24.6%の腫瘍増殖抑制が認められたが、統計学的有意差はみられなかった。延命率は8.9%であった。また、生存日数は対照群と比べ統計学的有意差はみられなかった。 以上のことから、たもぎ茸熱水抽出物を予防的に投与することにより、腫瘍増殖抑制効果および延命効果が認められた。 本発明の抗腫瘍性免疫賦活剤は腫瘍細胞の増殖の抑制に有用である。たもぎ茸抽出物を有効成分とする抗腫瘍性免疫賦活剤。たもぎ茸抽出物を有効成分とする腫瘍細胞増殖抑制剤。たもぎ茸抽出物を有効成分とする免疫賦活性サイトカインの産生増強剤。たもぎ茸抽出物を有効成分とする免疫抑制性T細胞増加の抑制剤。たもぎ茸抽出物からなる免疫賦活用健康食品。たもぎ茸抽出物からなる腫瘍細胞増殖抑制用健康食品。たもぎ茸抽出物を被験者に投与することにより、被験者において抗腫瘍性免疫を賦活させる方法。たもぎ茸抽出物を被験者に投与することにより、被験者において腫瘍細胞の増殖を抑制する方法。たもぎ茸抽出物を被験者に投与することにより、免疫賦活性サイトカインの産生を増強する方法。たもぎ茸抽出物を被験者に投与することにより、免疫抑制性T細胞増加を抑制する方法。 たもぎ茸抽出物を有効成分とする抗腫瘍性免疫賦活剤が開示される。たもぎ茸抽出物は、腫瘍細胞細胞の増殖を抑制し、免疫賦活性サイトカインの産生を増強し、免疫抑制性T細胞増加を抑制することが示された。本発明はまた、たもぎ茸抽出物からなる免疫賦活用健康食品ならびに腫瘍細胞増殖抑制用健康食品を提供する。


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