生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_水溶性カンプトテシン製剤
出願番号:2005004653
年次:2012
IPC分類:A61K 31/4745,A61K 9/127,A61K 47/12,A61P 35/00,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

渡邉 正人 米谷 芳枝 戸澗 一孔 JP 5021899 特許公報(B2) 20120622 2005004653 20050112 水溶性カンプトテシン製剤 公益財団法人野口研究所 000173924 渡邉 正人 米谷 芳枝 戸澗 一孔 20120912 A61K 31/4745 20060101AFI20120823BHJP A61K 9/127 20060101ALI20120823BHJP A61K 47/12 20060101ALI20120823BHJP A61P 35/00 20060101ALI20120823BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120823BHJP JPA61K31/4745A61K9/127A61K47/12A61P35/00A61P43/00 111 A61K 31/00 −31/80 A61K 9/00 − 9/72 A61K 47/00 −47/48 A61P 35/00 A61P 43/00 CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特表2003−528894(JP,A) KOZUBEK,A. et al,Acta biochimica Polonica,2000年,Vol.47, No.3,p.639-49 Bulletin of the Chemical Society of Japan,2001年,Vol. 74, No. 4,pp.733-738 2 2006193441 20060727 6 20071227 荒巻 真介 本発明は、長鎖アルキル基を有する安息香酸誘導体を用いるカンプトテシンまたはその誘導体の可溶化方法、および、長鎖アルキル基を有する安息香酸誘導体およびカンプトテシンまたはその誘導体を含有するリポソームからなる医薬組成物に関するものである。カンプトテシンは中国原産の植物Camptotheca acuminataより最初に単離されたアルカロイドであり、下式(1)で示される構造を有する。 既存の制癌薬がDNAトポイソメラーゼIIの阻害剤であるのに対して、カンプトテシンはDNAトポイソメラーゼIを阻害することにより、顕著な抗腫瘍活性を示すので、薬剤耐性を示す癌の治療に用いることができることから注目を集めている。しかし、カンプトテシンは水に難溶性であり、塩基性は弱く、塩酸などの鉱酸とも水溶性の塩を作らないので、水溶性の製剤化をすることが難しい。そのため、臨床では、水溶性のカンプトテシン誘導体である塩酸イリノテカンやトポテカンが用いられている。しかし、これらの誘導体はカンプトテシンよりも活性が低いことが知られている。また、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性水溶液中では、カンプトテシンのE環ラクトンが開環し、溶解度は高まるが、この構造変化によって抗腫瘍効果は減弱することが報告されている。 カンプトテシンあるいはその難水溶性誘導体を可溶化する方法として、これまでに、高分子ミセルを用いる方法(例えば、特許文献1、2参照)やリポソームを用いる方法(例えば、特許文献3参照)が開示されている。しかし、これまでに報告されている高分子ミセルは、必ずしもカンプトテシンあるいはその難水溶性誘導体の可溶化に適した構造とは言い難く、また、サイズのコントロールや表面修飾等により、さらなる機能を付加することも難しい。サイズのコントロールや表面修飾が容易であるという点でリポソームは優れているが、単純なリポソームでは薬効を示すのに充分な量のカンプトテシンあるいはその難水溶性誘導体を可溶化することが難しく、多アニオン性ポリマーの添加を必要とする複雑な組成による手法(特許文献3参照)が報告されているに過ぎない。 従って、現在でも、カンプトテシンあるいはその難水溶性誘導体の新たな可溶化方法が望まれている。特開2002−154963特開2003−342167特表2002−527466 本発明の目的は、リポソーム製剤の特長を残し、かつ、簡便なカンプトテシンまたはその誘導体の可溶化方法、および、その可溶化方法を用いたカンプトテシンまたはその誘導体を含有するリポソームからなる医薬組成物を提供することにある。 上記課題を鋭意検討した結果、本発明者らは、リポソームに長鎖アルキル基を有する安息香酸を添加することによって、生体投与時のカンプトテシンの血中濃度が向上し、かつ、抗腫瘍効果を示すのに充分量のカンプトテシンが水に可溶化可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、長鎖アルキル基を有する安息香酸誘導体を用いるカンプトテシンまたはその誘導体の可溶化方法、および、その可溶化方法による長鎖アルキル基を有する安息香酸誘導体およびカンプトテシンまたはその誘導体を含有するリポソームからなる医薬組成物を提供する。 本発明は、長鎖アルキル基を有する安息香酸誘導体を添加することにより、既存のリポソーム組成物に対して、薬効を示すのに充分量のカンプトテシンまたはその誘導体を担持する方法を提供する。 本発明では、長鎖アルキル基を有する安息香酸誘導体を添加することにより、カンプトテシンまたはその誘導体のリポソームに対する担持量を増加させ、カンプトテシンが薬効を発現するのに充分な量を水に可溶化する。また、本発明では、その方法によって得られる医薬組成物を与える。 本発明におけるカンプトテシンまたはその誘導体としては、天然のカンプトテシン、天然由来のカンプトテシン誘導体、全合成で得られたカンプトテシンおよびカンプトテシン誘導体、または、天然のカンプトテシン等を原料に用いて化学修飾して得られる半合成のカンプトテシン等が挙げられる。例えば、10−ヒドロキシカンプトテシン、11−ヒドロキシカンプトテシン、9−メトキシカンプトテシン、10−メトキシカンプトテシン、11−メトキシカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、7−エチルカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、9−アミノ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、9−クロロ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、イリノテカン、トポテカン等である。本発明は、その中でも、特にカンプトテシンおよびその難水溶性誘導体の可溶化に対して顕著な効果がある。 長鎖アルキル基を有する安息香酸誘導体としては、遊離のカルボン酸と長鎖のアルキル基を有すれば、それらのベンゼン環に対する置換位置、置換数、介在構造、分岐構造の有無は問わない。好ましくは、3,5−オルト2置換の安息香酸誘導体であり、さらに好ましくは、3,5−ビス(アルキルオキシ)安息香酸であり、最も好ましくは、そのアルキル基の長さが8から16の化合物である。 リポソームは、37℃より上の相転位温度を有するリポソーム形成脂質組成物であれば、その組成を問わない。例えば、リポソーム形成脂質として、大豆レシチン、水素添加大豆レシチン、卵黄レシチン、水素添加卵黄レシチン、コレステロール、オレイン酸等からなる組成物が挙げられ、リポソームの生体内での安定化の目的でモル比1〜20%のポリエチレングリコールにより誘導体化されたジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン等を含有していても構わない。 リポソーム組成中の長鎖アルキル基を有する安息香酸誘導体量は、モル比で、1〜25%、好ましくは5〜15%である。 リポソーム組成中のカンプトテシンの含有量、モル比で、1〜25%、好ましくは5〜15%である。 リポソームはサイズのコントロールや、官能基を有する脂質誘導体による表面修飾が可能であり、それらを適切に行うことによって、さらに抗腫瘍効果を高めることができる。 以下に、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、PEG2000-DSPEはポリエチレングリコール2000-ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン、CPTはカンプトテシン、HSPCは水素添加大豆レシチン、Chはコレステロール、OAはオレイン酸、ALは3,5−ビス(ドデシルオキシ)安息香酸(artificial lipid)、HSAはヒト血清アルブミンの略号である。(カンプトテシン担持リポソームの調製) PEG2000-DSPE、HSPC、OAは日本油脂株式会社、CPT、Chは和光純薬工業株式会社、HSAはシグマ化学薬品株式会社から購入した。ALは、Bull. Chem. Soc. Jpn. (2001) 74, 733-738に従って合成した。 リポソームの構成脂質として、HSPC、Ch、OA、PEG2000-DSPE、ALを用い、HSPC/Ch/OA/PEG2000-DSPE (7:3:1:0.4 molar ratio)をOA-L、HSPC/Ch/OA/AL/PEG2000-DSPE(7:3:1:1:0.4 molar ratio)をAL-Lとし、それぞれのCPT担持リポソームの調製を行った。 CPT担持リポソームの調製方法には薄膜法を用いた。各組成の脂質とCPTをクロロホルムとメタノールの混液(4:1 v/v)に溶かし、ロータリーエバポレーターで溶媒を取り除き、窒素置換を行い、薄膜を得た。この薄膜に、総脂質濃度として20mMになるようにリン酸緩衝液(pH=6.02)を加え、バス型の超音波装置により超音波を約30分照射し、大きい粒子を取り除くため遠心分離(3,400rpm 10min)し、上清を回収し、CPT担持リポソームを得た。 CPT担持リポソームの粒子径は電気泳動光散乱光度計を用いて測定した。またCPTの担持率はCPT担持リポソームを超遠心分離(48,000rpm, 1hr)し、リポソームを沈殿させ、その上清を蛍光光度計(ex369nm, em426nm)で測定し、仕込み量に対する比率として算出した。 AL-Lを用いたCPT担持リポソームの粒子径は約140nmであり、CPT担持リポソームの薬物担持率は70〜90%と高い担持率を持つCPT担持リポソームを調製することができた。(カンプトテシンの血中滞留性の評価) CPT担持リポソームを雄性のddYマウス(18-20g)に尾静脈内注射(2.5mgCPT/kg)し、投与4時間後に、採血し、血漿サンプルを得た。クロロホルム:メタノール(4:1 v/v)でCPTを抽出し、血中濃度をHPLCで定量した。HPLCの条件として、移動相はアセトニトリル:1%トリエチルアミンアセテート緩衝液(pH=5.5)=23:77(v/v)を用いた。流速は、1ml/minとし、サンプルを25μlずつ測定した。C18(150×4.6 mmI.D.)カラムで分離し、蛍光検出器(ex369nm em426nm)で検出した。 実施例1で調製したCPT担持リポソームを用いて、それぞれの4時間後の血中濃度を求めたところ、OA-Lの0.31%に対し、AL-Lは1.21%と、ALを添加したリポソームの方が4時間後の血中薬物残存率が高いことが明らかとなった。(カンプトテシン担持リポソームの抗腫瘍効果) リポソームの脂質二重膜表面に蛋白やペプチドを結合させると血中半減期が長くなることが知られている。そこで、リポソーム表面に蛋白質であるヒト血清アルブミン(HSA)を吸着させ、血中滞留性の向上を図った。8%のHSA溶液を調製し、1:1(volume ratio)の割合で、実施例1で調製したCPT担持リポソーム(AL-L)と混合し、室温で1時間インキュベーションし、HSA吸着CPT担持リポソーム(HSA-AL-L; HSA4%)を調製した。 5週齢のCDF1(雌18-20g n=5)マウスにColon26細胞(結腸癌細胞)1.0×105Cellを右横腹に皮下移植した担癌マウスを作成した。移植後15日目の担癌マウスに、HSA吸着CPT担持リポソームを10mg/kg単回投与または2回投与、対照として生理食塩液単回投与し、その比較検討を行った。投与後8日間における腫瘍の拡大の様子と体重の変化を測定した。腫瘍の大きさは、下の式によって腫瘍の体積として算出した。 Tumor volume (mm3)=π/6×長径×短径2 HSA-AL-Lを用いて抗腫瘍効果を検討した結果を[図1]に示す。HSA-AL-L(10mg/kg×1)単回投与群は生理食塩液投与群に比べて有意に腫瘍の成長を抑えた。また、2回投与群は3日後に2回目の投与後2日間ですべてのマウスが死亡した。これは可溶化により、致死量を越える充分量のCPTが投与可能であることを示唆している。また、単回投与群はsaline群と体重変化を比較すると有意な差がなく、副作用である下痢も観察されなかったため、CPTによる毒性はみられないと考えられる。 本発明は、カンプトテシンを有効成分とする水溶性の抗腫瘍製剤を提供する。HSA-AL-L単回投与群及び2回投与群(共に、n = 5)の抗腫瘍効果を示す図である。横軸は腫瘍移植後の日数、縦軸は相対的な腫瘍体積を表す。符号の説明 黒四角は単回投与群、白四角は2回投与群、白三角は生理食塩水投与群を表す。 炭素数が8から16である長鎖アルキル基を有する3、5ビス(アルキルオキシ)安息香酸を含有するリポソームを用いる、カンプトテシンまたはその難水溶性誘導体の可溶化方法。 炭素数が8から16である長鎖アルキル基を有する3、5ビス(アルキルオキシ)安息香酸、およびカンプトテシンまたはその難水溶性誘導体を含有するリポソームからなる医薬組成物。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る