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タイトル:公開特許公報(A)_血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤
出願番号:2005004646
年次:2005
IPC分類:7,A61K31/122,A61P9/00


特許情報キャッシュ

鳥住 保博 近藤 達仁 JP 2005225870 公開特許公報(A) 20050825 2005004646 20050112 血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤 三共株式会社 000001856 矢口 敏昭 100115750 金原 玲子 100119622 越後 友希 100125025 鳥住 保博 近藤 達仁 JP 2004009562 20040116 7A61K31/122A61P9/00 JPA61K31/122A61P9/00 4 OL 8 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206CB27 4C206KA01 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA36 本発明は、ユビデカレノンを含有する血管内皮性一酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤に関する。 古くから「ヒトは血管とともに老いる」と言われてきたが、それには加齢や各種疾病等による血管内皮由来一酸化窒素(NO)の産生減少、すなわち内皮型NO合成酵素(eNOS)活性の低下が深く関わっていることが最近判ってきた。 血管内皮の機能障害は動脈硬化の発症・進展に深く関係し、eNOSから産生されるNOの低下がその大きな原因であると言われている。血管壁由来のNOは、血管弛緩、血小板の凝集抑制、好中球の内皮細胞への付着抑制、血管平滑筋細胞の遊走・増殖抑制、LDL酸化抑制、等の面から抗動脈硬化作用を示す(例えば、非特許文献1参照)。 動物試験でNO合成阻害により動脈硬化症が憎悪することからも、動脈硬化発症・進展に直接寄与することが判る(例えば、非特許文献2参照)。 ヒトにおいても血管内皮産生NOは血管保護的に多面的に働くため、心血管系疾患の治療に、血管内皮機能を温存・改善する治療戦略は重要である。eNOS活性を向上させる薬剤として、これまでにスタチン剤、L−アルギニン、ACE阻害剤、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗薬、ホルモン、一部のCa拮抗薬が知られており、また、NOの失活を防止することにより間接的にNO作用を助長するビタミンC、ビタミンE、プロブコール等の抗酸化剤も有効であるとされている(非特許文献3参照)。 一方、NO放出物質であるニトログリセリンを代表とする硝酸薬が一過性に血中NO濃度を増して血管拡張作用を発現することは衆知の通りである。 同様にNO高含有食品や飲料も一過性に血中NO濃度を増大させることが判っている(非特許文献4参照)。しかし、これらはeNOS活性の亢進または刺激に結びついた血管内皮から常時産生されるNOとは直接関係しない。 ユビデカレノン(CoQ10)は鬱血性心不全症状に有効性が認められている代謝性強心剤として知られているが、この作用の他に、抗酸化作用(例えば、非特許文献5参照)、血中コレステロール低下作用(特許文献1参照)等が報告されている。 しかし、ユビデカレノンが直接eNOS活性の亢進進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上をもたらしたという報告は存在しない。 なお、NO合成酵素(NOS)は血管内皮以外にも存在し、全身の循環調節において重要な役割を果たす。NO産生低下が認められている疾患としては、高血圧、高脂血症、動脈硬化、虚血性心疾患、心不全、血栓症等の循環器疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺高血圧、ARDS(成人呼吸窮迫症候群)等の呼吸器疾患、肝障害、肝硬変、胃腸粘膜障害、肥厚性幽門狭窄症、膵炎等の消化器疾患、脳虚血、脳梗塞、脳循環不全、老年性痴呆等の脳血管障害、腎障害、インポテンツ等の腎・泌尿器疾患、妊娠中毒症等の産婦人科疾患、感染症・免疫疾患、糖尿病、熱傷、その他薬剤性にNO産生の低下が認められる疾患が数多く知られている(特許文献2参照)。特開平10−330251特開平10−338637 2項林、脈管学 Vol.38 No.4 1998 p.215−219、のp.215−216林、血管医学 Vol.2 No.2 2001 p.189−194、のp.189江頭、薬理と治療 Vol.29 No.10 2001 p.715−718、のp.716姫野、金沢医大誌 Vol.26 2001 p.170−180、の図2及び図4Animus No.36 2004 p.37−40、のp.37−39 本発明者らはeNOS活性を亢進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度を維持・向上させる安全な薬剤を見出すべく鋭意研究を重ねた。その結果、ユビデカレノンに優れたeNOS活性を亢進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度を維持・向上させる作用があることを見出し、本発明を完成させた。 本発明は、(1)ユビデカレノンを含有する血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤、(2)血管内皮酸化窒素合成酵素活性低下及び/又は血管内皮由来血中酸化窒素濃度低下に起因する疾病を治療または予防するための、請求項1に記載の血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤、(3)各種要因により発現する血管内皮酸化窒素合成酵素活性低下及び/又は血管内皮由来血中酸化窒素濃度低下の改善のための、請求項1に記載の血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤、(4)血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤を製造するための、ユビデカレノンの使用である。 本発明におけるユビデカレノンは、コハク酸脱水素酵素活性に関係する補酵素で、補酵素Q10、CoQ10又はユビキノン(50)とも呼ばれ、生体では細胞のミトコンドリアに多く含まれている。 本発明における血管内皮酸化窒素合成酵素活性低下及び/又は血管内皮由来血中酸化窒素濃度低下に起因する疾病とは、例えば、高血圧、動脈硬化、虚血性心疾患、心不全、血栓症、肺高血圧、再狭窄症、末梢循環障害等の循環器疾患、脳虚血、脳梗塞、脳循環不全、老年性痴呆等の脳血管障害、腎障害、インポテンツ等の腎・泌尿器疾患又は糖尿病が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 また、本発明における「各種要因」とは、血管内皮細胞由来NOの血中濃度の低下を引き起こす疾病又は原因のことであり、例えば、加齢、閉経、高血圧、高脂血症、喫煙、インスリン抵抗性、糖尿病、酸化ストレス、薬剤性などが挙げられる。 なお、上記疾患初期においては際立った自覚症状はなく、自己判断は必ずしも容易ではないが、本発明における「各種疾病」に関わる自覚症状としては、例えば、頭痛、めまい、手足のしびれ又はしびれ感、手足の冷感、肩こり、皮膚・筋肉の萎縮、陰縮等が挙げられる。 本発明の、ユビデカレノンを含有する医薬組成物は、優れた血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上作用があり有用である。 本発明の医薬組成物に含まれるユビデカレノンは、第14改正日本薬局方に収載されている。 本発明の血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤が固形製剤の場合において、含有されるユビデカレノンの含有量は、通常、1乃至500mgであり、好適には、5乃至100mgである。 液剤の場合において含有されるユビデカレノンの含有量は通常、0.1乃至50mg/mLであり、好適には、0.5乃至10mg/mLである。 本発明の医薬組成物においては、必要に応じてトコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類、ピリドキシン類、コバラミン類、葉酸、イノシトールヘキサニコチネート及びパンテチン等のビタミン類又はビタミン類似物質、スタチン類をはじめとする高脂血症用剤、降圧剤、抗凝固剤、生薬類などを本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。 本発明の血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤の具体的な剤形としては、例えば、錠剤、細粒剤(散剤を含む)、カプセル、液剤(シロップ剤を含む)等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基材を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。 上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される各種添加剤を使用することもできる。 例えば、錠剤の場合、乳糖、結晶セルロース等を賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は酸化マグネシウム等を安定化剤として、ヒドロキシプロピルセルロース等をコーテイング剤として、ステアリン酸マグネシウム等を滑沢剤として、使用することができ、 細粒剤及びカプセル剤の場合、乳糖又は精製白糖等を賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は酸化マグネシウム等を安定化剤として、トウモロコシデンプン等を吸着剤として、ヒドロキシプロピルセルロース等を結合剤として、使用することができる。 上記各剤形において、必要に応じ、クロスポビドン等の崩壊剤;ポリソルベート等の界面活性剤;ケイ酸カルシウム等の吸着剤;三二酸化鉄、カラメル等の着色剤;安息香酸ナトリウム等の安定剤;pH調節剤;香料;等を添加することもできる。 以下に、実施例等を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。<実施例1>錠剤(1)成分 (表1) 3錠中(mg)――――――――――――――――――――――――――――ユビデカレノン 30酸化マグネシウム 50結晶セルロース 100コーンスターチ 60ヒドロキシプロピルセルロース 30クロスカルメロースナトリウム 5ステアリン酸マグネシウム 10トリアセチン 2乳糖 適量(2)製法 上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製する。<実施例2>細粒剤(1)成分(表2) 3包中(mg)――――――――――――――――――――――――――――ユビデカレノン 30酸化マグネシウム 100メタケイ酸アルミン酸マグネシウム 50精製白糖 250トウモロコシデンプン 150ポリソルベート80 40ステアリン酸マグネシウム 15乳糖 適量(2)製法 上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製する。<実施例3>カプセル剤(1)成分(表3) 3カプセル中(mg)――――――――――――――――――――――――――――――ユビデカレノン 30酸化マグネシウム 50トウモロコシデンプン 150ポリソルベート80 25ステアリン酸マグネシウム 10乳糖 適量カプセル 240(2)製法 上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製した後、カプセルに充填して硬カプセル剤を製する。<実施例4>シロップ剤(1)成分(表4) 60mL中(mg) ――――――――――――――――――――――――――――――ユビデカレノン 30安息香酸ナトリウム 240クエン酸 60白糖 1500濃グリセリン 1000ポリビニルアルコール 120エタノール(95%) 100精製水 適量(2)製法 上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「シロップ剤」の項に準じてシロップ剤を製した後、褐色ガラス瓶に充填してシロップ剤を製する。<試験例>血中窒素酸化物量の評価試験(1)被験物質 ユビデカレノンは日清ファルマ(株)製造のものを使用した。(2)動物 試験動物としては、Covance Research Products Inc.からビーグル犬雄を5箇月齢で購入し、約1箇月間の検疫および馴化飼育後に使用した。(3)投与剤形、製剤の調整方法および製剤の保存方法 試験動物毎の体重をもとに算出した必要量の被験物質を、TORPAC社のゼラチンカプセル(1/2オンス)に充填した。充填後、カプセルは動物毎に区分されたケースに入れ、投与時まで冷蔵保存した。(4)投与経路および投与期間 被験物質を充填したカプセルは、1日1回9:00〜12:30の間に、試験動物に強制経口投与した。なお、試験動物は投与前2乃至3時間絶食させた。 投与期間は11日間とした。(5)被験試料の調製 カプセル投与前−14および−7日(投与開始前第2週および第1週)、投与後4日、8日、12日に、橈側皮静脈から約10mL採血した。なお、採血前約18時間、試験動物は絶食させた。 得られた血液を試験管にとり、室温で30分から1時間放置後、遠心分離(約1600×g、10分間)して得られた血清を用いた。(6)試験方法 一酸化窒素合成酵素(NOS)により生成されたNOは、速やかに硝酸イオン(NO3−)と亜硝酸イオン(NO2−)に変換される。血中窒素酸化物総濃度(NOx)はHPLC法を用いて求めたNO3−とNO2−の和として算出した。(試験結果1) 各被験物質の投与における血中窒素酸化物総濃度(NOx)を、投与2週間前および1週間前のNOxの平均を100として換算して求めた。 得られた結果を表5に示す。なお、各値とも1郡5匹の平均値である。(表5)被験物質 血中NOxの変動率%(mg/Kg) 投与後4日 投与後8日 投与後12日――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ユビデカレノン(10) 113.8 119.5 122.2(試験結果2) 各被験物質の投与における血中窒素酸化物総濃度(NOx)を、投与2週間前および1週間前のNOxの平均を100として換算して求めた。 得られた結果を表6に示す。なお、各値とも1郡10匹の平均値である。(表6)被験物質 血中NOxの変動率%(mg/Kg) 投与後4日 投与後8日 投与後12日――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ユビデカレノン(10) 123.1* 121.1* 120.4**:p<0.05(投与前値に対する変動率のpaired−t−test片側検定) ユビデカレノンを含有する血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤。 血管内皮酸化窒素合成酵素活性低下及び/又は血管内皮由来血中酸化窒素濃度低下に起因する疾病を治療または予防するための、請求項1に記載の血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤。 各種要因により発現する血管内皮酸化窒素合成酵素活性低下及び/又は血管内皮由来血中酸化窒素濃度低下の改善のための、請求項1に記載の血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤。 血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤を製造するための、ユビデカレノンの使用。 【課題】 優れた血管内皮性酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上剤を見出すこと。【解決手段】 ユビデカレノンを含有する医薬組成物。【選択図】 なし。


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