タイトル: | 特許公報(B2)_ポリグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、それらの製造方法 |
出願番号: | 2004555071 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07C 41/03,C07C 43/13,C07C 67/08,C07C 69/33,C07D 319/12,C08G 65/28,C07B 61/00 |
遠藤 敏郎 大森 英俊 JP 4540482 特許公報(B2) 20100702 2004555071 20031128 ポリグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、それらの製造方法 ダイセル化学工業株式会社 000002901 後藤 幸久 100101362 遠藤 敏郎 大森 英俊 JP 2002346431 20021128 20100908 C07C 41/03 20060101AFI20100819BHJP C07C 43/13 20060101ALI20100819BHJP C07C 67/08 20060101ALI20100819BHJP C07C 69/33 20060101ALI20100819BHJP C07D 319/12 20060101ALI20100819BHJP C08G 65/28 20060101ALI20100819BHJP C07B 61/00 20060101ALN20100819BHJP JPC07C41/03C07C43/13 DC07C67/08C07C69/33C07D319/12C08G65/28C07B61/00 300 C07C 41/03、43/13、67/08、69/33 特開平10−072392(JP,A) 特開平10−072393(JP,A) 特開平07−185294(JP,A) 13 JP2003015295 20031128 WO2004048304 20040610 19 20060907 神野 将志 本発明は環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびその原料として用いる環状構造低含有ポリグリセリン、及びそれらの製造方法に関する。本発明によって得られる環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルは、脱水環状構造の含有率が少ないので、界面活性能力が高く、乳化、可溶化、分散、洗浄、防食、潤滑、帯電防止、ぬれなどの目的で食品添加物、化粧品用、医薬用及び工業用の界面活性剤として利用でき、また、ポリグリセリンはそれ自体で、保湿剤、増粘剤、可塑剤、親水化処理等に利用できる。 乳化または可溶化剤として従来、種々の化合物、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の酸化エチレン系の非イオン界面活性剤や、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含む)等の食品用界面活性剤が知られている。 その中でもポリグリセリン脂肪酸エステルは人体、環境への安全性と、多種類の組成を得ることができ、汎用性が高いため、最も有用な界面活性剤の一つである。これらポリグリセリン脂肪酸エステルでは、原料の一つとして、グリセリンを苛性ソーダなどのアルカリ触媒の存在下、高温にて重合し、脱臭、脱色して得られたポリグリセリン反応物と脂肪酸を原料としてエステル化反応することによって製造されている。 一方の原料であるポリグリセリンの工業的な製法は、以下の方法が知られている。(i)グリセリンの蒸留残分から回収する方法、(ii)グリセリンを脱水縮合する方法、(iii)エピクロルヒドリンの直接重合、加水分解、脱塩する方法、(iv)グリセリンあるいはポリグリセリンに、NaOHやアミン等のアルカリ触媒または酢酸等の酸性触媒の存在下に、グリシドールを付加する方法。 しかし、前記の各方法で得られたポリグリセリン反応物の組成分布を、後述するように、液体クロマトグラフィー/質量分析法を用いて分析すると、分子内脱水により生成するのは環状低分子化合物のみならず、数百〜数千の分子量を有し、分子中で1分子〜数分子の水分子が脱離して生じた環状構造含有ポリグリセリンの存在割合が非常に多く確認された。 上記環状構造含有ポリグリセリンを多く含有するポリグリセリンは、親水性等の特性を阻害するものであることが本発明により見出され、また、上記ポリグリセリンと脂肪酸から得られるポリグリセリン脂肪酸エステルについても、水溶性、界面活性能等の諸特性を低下させることが本発明により見出された。 従来、反応生成したポリグリセリンは、例えば、グリセリンとエピクロロヒドリンもしくはグリシドール;グリセリンもしくはポリグリセリンとエピクロロヒドリン、モノクロロヒドリン、ジクロロヒドリンもしくはグリシドールを反応させて得られた反応物をそのまま、または必要に応じて精製して使用されていた。 精製法としては、脱臭や未反応原料の除去の目的で加熱下、数Torrの減圧下で、窒素、水蒸気などの気体を通じたり、イオン交換樹脂、イオン交換膜などによって使用した触媒などイオン成分を除去したり、活性炭など吸着剤を用いて色成分、臭成分を除去したり、または水素添加などにより還元処理をするなどして精製される。 しかしこれらポリグリセリン反応物の処理では、得られたポリグリセリン反応物の組成分布については詳しく論じられていない。特に、最も汎用に利用されるグリセリンを苛性ソーダなどのアルカリ触媒の存在下、高温にて重合し、脱臭、脱色して得られたポリグリセリン反応物については、環状ジグリセリンのような低分子量の環状化合物に関しては少なからず論議されているが、分子内で脱水反応が起きることは周知であるにもかかわらず、数百〜数千の分子量範囲での組成分布についての解析はほとんど議論されていないのが実情である。 市場に流通しているポリグリセリンは、水酸基価より計算した平均の重合度によってテトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリンと呼ばれている。しかし、実際には、重合度2から10以上までの種々のグリセリン重合物の混合物であり、未反応グリセリン(重合度1)を含んでいる場合もある。 このような種々のグリセリン重合物の混合物が存在するポリグリセリンの中には、水酸基価より計算した平均の重合度をあわせる必要があるため、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等の比較的低分子のポリグリセリンが多く存在する場合があることも明確になっている。 特公平5−1291号公報(請求項1、第3欄12−22行、実施例)には、グリセリン又はポリグリセリンにリン酸触媒を仕込んた後、115〜125℃でグリシドールを付加反応させ、重合度の高く、着色の少ないポリグリセリンが開示されている。 特開平7−216082号公報(請求項1、段落0008、実施例)には、アルカリの存在下、200〜270℃で反応混合物の沸騰状態で、グリセリンを重縮合させるポリグリセリンの製造方法が開示されている。 特開2002−30144号公報(請求項1、実施例1〜12)には、アルカリ金属ハロゲン化物の存在下、グリセリンを開始剤に使用せずに、グリシドールのみを仕込んで反応させるポリグリセリンの製造方法が開示されている。 ポリグリセリン脂肪酸エステルに関しては、特開平7−308560号公報(請求項1、比較例1(各実施例で使用するポリグリセリンの製造))には、水酸化ナトリウムの存在下、240℃で、グリセリンを重縮合させて生成したポリグリセリンから、低分子重合物を留去して得られたポリグリセリンと脂肪酸を反応させる方法が開示されている。 また、特開平8−109153号公報(請求項1、実施例)には、脂肪酸にグリシドールを付加重合させるポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法が開示されている。しかし、この方法では、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルのみしか製造できない。 本発明の目的は、分子中で水分子が脱離して生じた環状構造を有する環状構造含有ポリグリセリンの存在割合が著しく減少したポリグリセリン及びその製造方法、並びに、界面活性の優れたポリグリセリン脂肪酸エステル及びその製造方法を提供することである。 従来、ポリグリセリンの物理特性として高粘度であり、沸点が高く取り扱いが困難であったため深い研究が成されず、特に、ポリグリセリン反応物中の環状構造含有ポリグリセリンの存在及びそれを除去することの意味が認識されていなかったが、本発明者らは、その低下が必要であることに気づき、鋭意検討した結果、仕込みグリセリンに対して、グリシドールと触媒の両者を滴下して反応させることにより、環状構造低含有ポリグリセリンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、下記一般式[1](式[1]で、pはグリセリン残基の繰返し部分を表し、pは0以上の整数であり、該分子の重合度はp+2となる。)で示されるポリグリセリン(1)の合計に対して、分子中に少なくとも1個の環状構造を有する環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計が、液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比で、ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=70%以上:30%以下(両者の合計は100重量%)であり、平均重合度(グリセリン残基の繰返し単位)〈n〉が2以上である環状構造低含有ポリグリセリンを製造する方法であって、グリセリン1モルに対して、グリシドール2モル以上と触媒の両者を逐次添加して反応させることを特徴とする環状構造低含有ポリグリセリンの製造方法を提供する。 触媒としては、リン酸系酸性触媒が好ましく、特に、リン酸または酸性リン酸エステルが好ましい。 反応温度としては、80〜130℃が好ましい。 本発明は、また、下記一般式[1](式[1]で、pはグリセリン残基の繰返し部分を表し、pは0以上の整数であり、該分子の重合度はp+2となる。)で示されるポリグリセリン(1)の合計に対して、分子中に少なくとも1個の環状構造を有する環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計が、液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比で、ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=70%以上:30%以下(両者の合計は100重量%)であり、平均重合度(グリセリン残基の繰返し単位)〈n〉が2以上である環状構造低含有ポリグリセリンと炭素数2〜30の脂肪酸を脱水反応させる環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法を提供する。 環状構造含有ポリグリセリン(2)としては、下記一般式[2](式[2]で、pはグリセリン残基の繰返し部分を表し、pは0以上の整数であり、qは環状構造部分を表し、qは1以上の整数であり、該分子の重合度はp+2q+1である。環状構造部分はグリセリン残基の間にランダムに入っても連続して入ってもよい。これらの分子の混合物である環状構造低含有ポリグリセリンの平均重合度〈n〉は2以上である。)で示される構造を有する環状構造含有ポリグリセリンが好ましく、特に、下記一般式[3](式[3]で、pはグリセリン残基の繰返し部分を表し、pは0以上の整数であり、該分子の重合度はp+3となる。)で示される構造を有する環状構造含有ポリグリセリンが好ましい。 平均重合度〈n〉が3〜60の環状構造低含有ポリグリセリンを反応に付すことが好ましい。 ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=80%以上:20%以下(両者の合計は100重量%)であり、平均重合度〈n〉が2以上〜10以下、又は、ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=70%以上:30%以下(両者の合計は100重量%)であり、平均重合度〈n〉が10超である環状構造低含有ポリグリセリンを反応に付すことが好ましい。 液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比分布としては、最も高い分布率を示すポリグリセリン(重合度n)に対する重合度n−1の成分の比率:(重合度n−1の成分)/(重合度nの成分)が0.4以上である環状構造低含有ポリグリセリンを反応に付すことが好ましい。 本発明は、さらにまた、前記環状構造低含有ポリグリセリンの製造方法により得られた環状構造低含有ポリグリセリンであって、液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比で、重合度nの成分に対して、重合度n−1の成分と重合度n+1の成分の比率増減の傾向が、グリセリンを開始剤にしてグリシドールを逐次反応させた分布をなす環状構造低含有ポリグリセリンと炭素数2〜30の脂肪酸を脱水反応させる環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法を提供する。 本明細書には、上記発明の他に、上記一般式[1]で示されるポリグリセリン(1)の合計に対して、分子中に少なくとも1個の環状構造を有する環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計が、液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比で、ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=70%以上:30%以下(両者の合計は100重量%)であり、平均重合度(グリセリン残基の繰返し単位)〈n〉が2以上である環状構造低含有ポリグリセリン、環状構造含有ポリグリセリン(2)が、上記一般式[2](式[2]で、pはグリセリン残基の繰返し部分を表し、pは0以上の整数であり、qは環状構造部分を表し、qは1以上の整数であり、該分子の重合度はp+2q+1である。環状構造部分はグリセリン残基の間にランダムに入っても連続して入ってもよい。これらの分子の混合物である環状構造低含有ポリグリセリンの平均重合度〈n〉は2以上である。)で示される構造を有する環状構造含有ポリグリセリンである前記環状構造低含有ポリグリセリン、環状構造含有ポリグリセリン(2)が、上記一般式[3](式[3]で、pはグリセリン残基の繰返し部分を表し、pは0以上の整数であり、該分子の重合度はp+3となる。)で示される構造を有する前記環状構造含有ポリグリセリン、平均重合度〈n〉が3〜60である前記環状構造低含有ポリグリセリン、ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=80%以上:20%以下(両者の合計は100重量%)であり、平均重合度〈n〉が2以上〜10以下である前記環状構造低含有ポリグリセリン、ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=70%以上:30%以下(両者の合計は100重量%)であり、平均重合度〈n〉が10超である前記環状構造低含有ポリグリセリン、液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比分布で、最も高い分布率を示すポリグリセリン(重合度n)に対する重合度n−1の成分の比率:(重合度n−1の成分)/(重合度nの成分)が0.4以上である前記環状構造低含有ポリグリセリン、前記環状構造低含有ポリグリセリンを製造する方法であって、グリセリン1モルに対して、グリシドール2モル以上と触媒の両者を逐次添加して反応させることを特徴とする環状構造低含有ポリグリセリンの製造方法、及び/又は触媒がリン酸系酸性触媒である前記環状構造低含有ポリグリセリンの製造方法、及び/又はリン酸系酸性触媒が、リン酸または酸性リン酸エステルである前記環状構造低含有ポリグリセリンの製造方法、及び/又は反応温度が80〜130℃である前記環状構造低含有ポリグリセリンの製造方法により得られた環状構造低含有ポリグリセリンであって、液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比で、重合度nの成分に対して、重合度n−1の成分と重合度n+1の成分の比率増減の傾向が、グリセリンを開始剤にしてグリシドールを逐次反応させた分布をなす環状構造低含有ポリグリセリン、前記環状構造低含有ポリグリセリンと炭素数2〜30の脂肪酸から脱水反応により生成したエステル構造を有する環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルについても記載する。 以下、詳細に本発明を説明する。 I.環状構造低含有ポリグリセリン 本発明の環状構造低含有ポリグリセリンは、前記一般式[1]で示されるポリグリセリン(1)と、分子中に少なくとも1個の環状構造を有する環状構造含有ポリグリセリン(2)からなる。 式[1]で、pはグリセリン残基の繰返し部分を表し、pは0以上の整数であり、該分子の重合度はp+2となる。従って、式[1]は、pが0の場合は重合度2のジグリセリン、pが1の場合は重合度3のトリグリセリン、pが2の場合は重合度4のテトラグリセリン等を表す。 環状構造含有ポリグリセリン(2)における環状構造部分は、ポリグリセリン(1)のグリセリン残基の任意の2つの水酸基の脱水反応により形成される。この環状構造は、反応条件等により種々の構造を取りうるため特に限定されるものではないが、一般的な反応条件で形成される環状構造としては、1,4−ジオキサン構造(6員環)、1,4−ジオキセパン構造(7員環)、1,5−ジオキソカン構造(8員環)等が挙げられる。 例えば、下記式[2]で表される環状構造含有ポリグリセリンにおいて、pはグリセリン残基の繰返し部分を表し、pは0以上の整数であり、qは環状構造部分を表す。qは1以上の整数であり、該分子の重合度はp+2q+1である。環状構造部分はグリセリン残基の間にランダムに入っても連続して入っても、連鎖中に入っても、末端に入ってもよい。従って、式[2]は、pが0でqが1の場合は環状脱水ジグリセリン1単位とグリセリン1単位とからなり、pが1でqが1の場合はグリセリン2単位と環状脱水ジグリセリン1単位とからなり、pが2でqが1の場合はグリセリン3単位と環状脱水ジグリセリン1単位とからなり、pが3でqが2の場合はグリセリン4単位と環状脱水ジグリセリン2単位とからなるもの等である。 本発明の環状構造低含有ポリグリセリンは、後述する液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS分析法と略称する。)により、(ポリグリセリン(1)の合計):(分子中に少なくとも1個の環状構造、好ましくは1個または2個の環状構造を有する環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計)=70%以上:30%以下(両者の合計は100重量%)、好ましくは80%以上:20%以下のものである。 本発明の環状構造低含有ポリグリセリンでは、1個の環状構造を含有するポリグリセリンはポリグリセリン(1)の合計に対して、30%以下、好ましくは20%以下である。また、2個の環状構造を含有するポリグリセリンは1個の環状構造を含有するポリグリセリンの1/3以下であり、3個の環状構造を含有するポリグリセリンは2個の環状構造を含有するポリグリセリンの1/5以下である。従って、3個の環状構造を含有するものは存在したとしても、微量である。 本発明の環状構造低含有ポリグリセリンのポリグリセリン(1)の平均重合度(グリセリン残基の繰返し単位)〈n〉は2以上、好ましくは3〜60、特に好ましくは3〜50である。 本発明の環状構造低含有ポリグリセリンは、ポリグリセリン(1)の平均重合度〈n〉が増加するにつれて、環状構造含有ポリグリセリン(2)の比率が徐々に増加する傾向にあり、ポリグリセリン(1)の平均重合度〈n〉が2以上〜10以下である場合には、ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=80%以上:20%以下、好ましくは85%以上:15%以下、さらに好ましくは90%以上:10%以下のものである。ポリグリセリン(1)の平均重合度〈n〉が10超である場合には、ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=70%以上:30%以下、好ましくは75%以上:25%以下、さらに好ましくは80%以上:20%以下のものである。 また、本発明の環状構造低含有ポリグリセリンでは、液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比分布で、最も高い分布率を示すポリグリセリン(重合度n)に対する重合度n−1の成分の比率:(重合度n−1の成分)/(重合度nの成分)が0.4以上、ポリグリセリン(1)の平均重合度〈n〉が増加するにつれて、0.5以上、さらには0.7以上となる。 また、本発明の製造方法により得られた環状構造低含有ポリグリセリンでは、液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比で、重合度nの成分に対して、重合度n−1の成分と重合度n+1の成分の比率増減の傾向が、グリセリンを開始剤にしてグリシドールを逐次反応させた分布をなす。このような分布を持たせることにより、溶解力を向上させたり、必要なHLB(親水性−親油性バランス)が得やすくなる。 ポリグリセリン(1)には、二級水酸基にグリシドールが付加した分岐型の構造を少量含んでいても構わない。 反応生成物中には、原料グリセリンを除いて、上記ポリグリセリン(1)及びポリグリセリン(2)以外に、1〜15%程度、好ましくは10%以下の他の化合物(例えば、分子内に二重結合を有するポリグリセリンなど)を含む。該他の化合物は、ポリグリセリン(1)の平均重合度が大きくなるにつれて増加する。 LC/MSの分析システムは、LCおよびMSの部分とそれを結び付けるインターフェイスの部分とで構成されている。検出系であるMSの部分はGC/MSの場合と共通の原理を有し、イオン化された対象物質を質量数/電荷(m/z)比によって検出・同定する手法である。 クロマトグラフィーと結合したMSから情報を得る方法には、任意のm/zについてその強度の時間分布を示すマスクロマトグラムと、任意の時間において各m/zの相対的強度分布を示すマススペクトルと、個々のm/zではなく、全イオンの強度(電気量)を加算した全強度の時間変化を示すトータルイオンクロマトグラム(TIC)とがある。この方法の中で、好ましくはトータルイオンクロマトグラムが利用される。 前記マスクロマトグラムを得る方法には、一定時間間隔で、ある範囲のm/z間を磁場スキャンして得られた時間軸方向の強度情報から、必要なm/zの強度の時間分布を切り出すスキャン法と、目的とする単一または複数のm/zの強度のみを選択的に検出する高感度の選択イオン検出法(SIM:Selected Ion Monitoring)とがある。 実用化されている質量分析装置の基本的原理としては、磁場型、四重極型、イオントラップ型、飛行時間型、フーリエ変換型などがある。この分析装置の中で、好ましくはイオントラップ型である。 本発明の環状構造低含有ポリグリセリンは、水もしくはグリセリンを開始剤にして、開始剤を装入した反応器に、触媒とグリシドールを逐次添加しながら付加重合反応させて得られる。 触媒は、好ましくはリン酸系酸性触媒である。上記リン酸系酸性触媒としては、リン酸類またはリン酸のエステル類であり、具体的には、リン酸、無水リン酸、ポリリン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸などのリン酸類または、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル類などが挙げられる。なお、これらの酸性リン酸エステルはモノエステル体、ジエステル体、及びそれらの混合物のいずれも使用することができる。中でも、リン酸および酸性リン酸エステルを用いることが好ましい。上記触媒は1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。 触媒の添加量は得られるポリグリセリンに対して0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%である。0.001重量%未満では反応速度が小さく、1重量%を超えると、残存するリン酸の影響により、脂肪酸とエステル化したときに加水分解が促進されやすいので水溶液安定性が不足するなど、製品性能に悪影響を与える結果となる。反応方法の一例を挙げると、反応容器中にグリセリンを入れ、グリセリン1モルに対して、グリシドール2モル以上と触媒の両者を逐次添加して反応させる。また、水を開始剤にする場合にも、反応容器中に水を入れ、上記と同様にして反応させる。 触媒とグリシドールは別々に滴下(分割装入)されてもよいし、混合された状態で滴下されてもよい。触媒はグリシドールの滴下よりも、あまりにも早く滴下を終了することは好ましくない。両者の滴下速度には、特に制限はないが、全体が均一な速度で滴下されることが好ましい。 反応温度は80〜130℃、好ましくは85〜125℃であり、より好ましくは90〜120℃である。80℃未満では反応速度が小さく、また130℃を超えると分子内脱水が生じやすく、環状構造含有ポリグリセリンが増加する。 また、反応は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましく、必要に応じて加圧しても、減圧にしてもよく、加圧にすると反応速度を上げることができる。 グリシドールの転化率は98%以上、好ましくは99.5%以上、更に好ましくは99.9%以上である。 得られた環状構造低含有ポリグリセリンは製品の使用上の要求によって精製してもよい。精製方法は公知のいかなる方法でもよく特に限定するものではない。例えば、活性炭や活性白土などで吸着処理したり、水蒸気、窒素などをキャリアーガスとして用いて減圧下処理を行ったり、または酸やアルカリを用いて洗浄を行ったり、分子蒸留を行ったりして精製してもよい。または液液分配や吸着剤、樹脂、分子篩、ルーズ逆浸透膜、ウルトラフィルトレーション膜などを用いて未反応ポリグリセリンなどを分離除去するなどしてもよい。 また、本発明の環状構造低含有ポリグリセリンから、必要に応じて、上記反応物から未反応のグリセリンやグリセリン2量体等の低分子量のものを、蒸留などにより除去してもよい。 II.環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステル 本発明に係る環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルは、上記本発明の環状構造低含有ポリグリセリンと脂肪酸から脱水生成したエステル構造を有する環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルである。 本発明に係る環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法は、脂肪酸と環状構造低含有ポリグリセリンからの脱水エステル化による方法、脂肪酸低分子アルコールエステルと環状構造低含有ポリグリセリンからの脱低分子アルコールによる方法、環状構造低含有ポリグリセリンの低分子脂肪酸エステルと高級脂肪酸からの脱低分子脂肪酸による方法、脂肪酸ハライドと環状構造低含有ポリグリセリンと苛性アルカリとからの脱ハロゲン化アルカリによる方法などを挙げることができるが、脂肪酸と環状構造低含有ポリグリセリンからの脱水エステル化による方法が経済的である。 脱水エステル化による方法は、例えばアルカリ触媒下、酸触媒下、または無触媒下にて、常圧または減圧下に脱水エステル化することができる。環状構造低含有ポリグリセリンと脂肪酸の仕込み量は製品の目的によって適宜選択しなくてはならない。例えば親水性の界面活性剤を得ようとすれば環状構造低含有ポリグリセリンの水酸基価(OH価ともいう。)と脂肪酸の分子量から計算により等モルになるように重量を計算して仕込めばよく、親油性の界面活性剤を得ようとすれば脂肪酸のモル数を増加させればよい。 得られた環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルは製品の使用上の要求によって精製してもよい。精製の方法は公知のいかなる方法でもよく特に限定するものではない。 例えば、活性炭や活性白土などで吸着処理したり、水蒸気、窒素などをキャリアーガスとして用いて減圧下処理を行ったり、または酸やアルカリを用いて洗浄を行ったり、分子蒸留を行ったりして精製してもよい。または液液分配や吸着剤、樹脂、分子篩、ルーズ逆浸透膜、ウルトラフィルトレーション膜などを用いて未反応ポリグリセリンなどを分離除去するなどしてもよい。 添加剤 本発明の環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルに添加剤を加えて製品の取扱いを容易にすることができる。添加剤としては、例えば製品の粘度を低下させるためにエタノール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、水、液糖、油脂などの一種または二種以上を添加して溶解または乳化してもよい。または乳糖、デキストリンなどの多糖類やカゼイネートなど蛋白質を添加して粉末化してもよい。 使用の目的によっては、本発明の環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルと、添加剤として他の界面活性剤を混合して界面活性剤製剤としてもよい。使用できる他の界面活性剤は、大豆レシチン、卵黄レシチン、菜種レシチンなどのレシチン、またはその部分加水分解物;カプリル酸モノグリセライド、カプリン酸モノグリセライド、ラウリン酸モノグリセライド、ミリスチン酸モノグリセライド、パルミチン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ベヘン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、エライジン酸モノグリセライド、リシノール酸モノグリセライド、縮合リシノール酸モノグリセライドなどのモノグリセライド、またはこれらのモノグリセライド混合物または、これらモノグリセライドの酢酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸など有機酸とのエステルである有機酸モノグリセライド;カプリル酸ソルビタンエステル、カプリン酸ソルビタンエステル、ラウリン酸ソルビタンエステル、ミリスチン酸ソルビタンエステル、パルミチン酸ソルビタンエステル、ステアリン酸ソルビタンエステル、ベヘン酸ソルビタンエステル、オレイン酸ソルビタンエステル、エライジン酸ソルビタンエステル、リシノール酸ソルビタンエステル、縮合リシノール酸ソルビタンエステルなどのソルビタン脂肪酸エステル;カプリル酸プロピレングリコールエステル、カプリン酸プロピレングリコールエステル、ラウリン酸プロピレングリコールエステル、ミリスチン酸プロピレングリコールエステル、パルミチン酸プロピレングリコールエステル、ステアリン酸プロピレングリコールエステル、ベヘン酸プロピレングリコールエステル、オレイン酸プロピレングリコールエステル、エライジン酸プロピレングリコールエステル、リシノール酸プロピレングリコールエステル、縮合リシノール酸プロピレングリコールエステルなどのプロピレングリコール脂肪酸エステル;カプリル酸ショ糖エステル、カプリン酸ショ糖エステル、ラウリン酸ショ糖エステル、ミリスチン酸ショ糖エステル、パルミチン酸ショ糖エステル、ステアリン酸ショ糖エステル、ベヘン酸ショ糖エステル、オレイン酸ショ糖エステル、エライジン酸ショ糖エステル、リシノール酸ショ糖エステル、縮合リシノール酸ショ糖エステルなどのショ糖脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤や両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤などを例示することができる。 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 なお、実施例および比較例を通じて、LC/MS(Liquid Chromatography/Mass Spectrometry)の分析条件は下記の通りである。 (LC分離条件) カラム:TSKgel α−2500(7.8×300mm)(水系ポリマーゲルカラム) 温度:40℃ 溶離液:水/アセトニトリル=7/3 流量:0.8ml/min 注入量:10μl(試料濃度100ppm) 分析時間:20分 (MS分析条件) 装置:LCQ(サーモクエスト社製、イオントラップ型) イオン化モード:AP CI(Atmospheric Pressure Chemical Ionization、大気圧化学イオン化法)、negative 測定範囲:m/z=90−2000 強度比測定法:任意の時間において各m/zの相対的強度分布を示すマススペクトル分析法による。 実施例1 窒素導入管、攪拌機、冷却管、温度調節器、滴下シリンダーを備えた1リットルの4つ口フラスコに、グリセリン4.0mol(368.4g)を加え、100℃に加熱した。反応温度を100℃に保ちながら、グリシドール8.0mol(592.6g)とリン酸(85%品)1.922gを6時間かけて、別々に滴下し、系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後反応物を取り出し、ポリグリセリン(PGL3:平均重合度約3)を約950g得た。このものはOH価1170mg−KOH/gであった。得られたポリグリセリンを前記LC/MS分析法により分析した。成分分析結果を図1に示した。なお、以下の成分分析結果の各図で、横軸の数字はポリグリセリンの重合度を示し、縦軸は相対強度を棒グラフで示す。横軸で、各重合度毎にポリグリセリン(1)、1個の環状構造を有する環状構造含有ポリグリセリン(2)、2個の環状構造を有する環状構造含有ポリグリセリン(2)が、棒グラフが横に接して示されている。各図で、Ideal PGL Groups(PGL)とはポリグリセリン(1)を表し、PGL−H2O、PGL−2H2O等は1分子脱水環構造含有ポリグリセリン、2分子脱水環構造含有ポリグリセリン等を表す。 図1のポリグリセリンの強度比分布において、最頻値(最も高い分布率)を示したポリグリセリンの重合度nは4であり、(重合度n−1の成分)/(重合度nの成分)の比率は、0.5327であった。 このように、本発明の方法により重合工程で得られた反応生成物は、未反応原料のグリセリンを除いて、重合度の異なる成分が、グリセリンを開始剤にしてグリシドールを逐次反応させた分布を成している。このような分布をしていると、溶質の種類にもよるが、溶解力などを高めることができる。 実施例2 実施例1で使用したものと同様の設備の2リットルの4つ口フラスコに、グリセリン4.4mol(405.2g)を加え、120℃に加熱した。次いで、反応温度を120℃に保ちながらグリシドール22.0mol(1629.8g)とリン酸(85%品)2.035gを6時間かけて、別々に滴下し、系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後反応物を取り出し、ポリグリセリン(PGL6:平均重合度約6)を約2000g得た。このものはOH価970mg−KOH/gであった。得られたポリグリセリンのLC/MS分析結果を図2に示した。このように、本発明の方法により重合工程で得られた反応生成物は、未反応原料のグリセリンを除いて、重合度の異なる成分が、実施例1と同様に好ましい分布を成している。 実施例3 実施例2で使用したものと同じフラスコに、グリセリン2.0mol(188g)を加え、100℃に加熱した。反応温度を100℃に保ちながら、次いで、グリシドール18.0mol(1332g)とリン酸(85%品)1.525gを6時間かけて、別々に滴下し、系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後反応物を取り出し、ポリグリセリン(PGL10:平均重合度約10)を約1500g得た。このものはOH価885mg−KOH/gであった。得られたポリグリセリンのLC/MS分析結果を図3に示した。このように、本発明の方法により重合工程で得られた反応生成物は、未反応原料のグリセリンを除いて、重合度の異なる成分が、実施例1と同様に好ましい分布を成している。 図8(a)に、実施例3に係る反応生成物の液体クロマトグラムを示した。以下の各液体クロマトグラムでは、横軸は溶出時間、縦軸はクロマトグラムのピーク強度(単位mV)である。 実施例4 実施例2で使用したものと同じフラスコに、グリセリン0.5mol(47g)を加え、120℃に加熱した。反応温度を120℃に保ちながら、次いで、グリシドール19.5mol(1443g)とリン酸(85%品)1.525gを12時間かけて、別々に滴下し、系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後反応物を取り出し、ポリグリセリン(PGL40:平均重合度約40)を約1500g得た。このものはOH価787mg−KOH/gであった。得られたポリグリセリンのLC/MS分析結果を図4に示した。このように、本発明の方法により重合工程で得られた反応生成物は、未反応原料のグリセリンを除いて、重合度の異なる成分が、実施例1と同様に好ましい分布を成している。 比較例1 市販品のデカグリセリン:坂本薬品株式会社製、デカグリセリン#750(グリセリンの脱水縮合で得られたポリグリセリン、OH価890mg−KOH/g)を前記LC/MS分析法により分析した。成分分析結果を図5に示した。このものは、環状構造含有ポリグリセリン(2)を非常に多量に含んでいる。 比較例2 市販品のデカグリセリン:鹿島ケミカル株式会社製、K−COL−IV−750(エピクロルヒドリンから得られたポリグリセリン、OH価882mg−KOH/g)を前記LC/MS分析法により分析した。成分分析結果を図6に示した。このものは、環状構造含有ポリグリセリン(2)を多量に含んでいる。 比較例3 実施例2で使用したものと同じフラスコに、グリセリン2.0mol(188g)を加え、140℃に加熱した。反応温度を140℃に保ちながら、次いで、グリシドール18.0mol(1332g)とリン酸(85%品)1.525gを6時間かけて、別々に滴下し、系中のオキシラン濃度が0.1%未満になるまで反応を続けた。冷却後反応物を取り出し、ポリグリセリン(比4PGL10:平均重合度約10)を約1500g得た。このものはOH価887mg−KOH/gであった。得られたポリグリセリンのLC/MS分析結果を図7に示した。このものは、環状構造含有ポリグリセリン(2)や他の化合物を多量に含んでいる。 比較例4 フラスコに、グリセリン2.0mol(188g)とリン酸(85%品)1.525gを仕込んでおき、次いで、グリシドール18.0mol(1332g)を6時間かけて滴下した以外は実施例3と同様に行った。このものはOH価885mg−KOH/gであった。得られたポリグリセリン(比5PGL10:平均重合度約10)は約1500gであった。得られたポリグリセリンのLC/MS分析結果を図9に示した。このものは、環状構造含有ポリグリセリン(2)や他の化合物を多量に含んでいる。このように、グリセリンに対してグリシドールと触媒の両者を逐次添加して反応させることにより、環状構造含有ポリグリセリンの副生量が著しく減少するが、グリシドール又は触媒のいずれかを滴下する方法では、環状構造含有ポリグリセリンの副生量が多い。また、反応温度が130℃を超えると環状構造含有ポリグリセリンの副生量が増加する。以下に、ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造とその評価を示す。 実施例5 攪拌機、温度計、加熱ジャケット、ガス仕込み口、原材料仕込み口を備えた容量2リッターの反応容器に、実施例3で得たポリグリセリン(PGL10:平均重合度約10)を1200g仕込んだ。ついで、ラウリン酸(純度99%)と10%水酸化ナトリウム水溶液とを仕込んだ。なお、ラウリン酸の仕込み量は、ラウリン酸/ポリグリセリンのモル比が1/1となる様にした。水酸化ナトリウム量は、ポリグリセリンとラウリン酸との総量に対して0.0025重量%とした。窒素気流下、常圧で、内温を240℃に昇温して3時間反応させた後、内温をさらに260℃に昇温して4時間反応させた。反応終了後、常温まで冷却し、ポリグリセリンラウリン酸エステル(PGLE−1)を得た。 比較例5 ポリグリセリン(PGL10:平均重合度約10)の代りに、比較例1のデカグリセリン#750を使用した以外は、実施例5と同様にエステル化を行い、ポリグリセリンラウリン酸エステル(PGLE−2)を得た。 (ポリグリセリン脂肪酸エステルの評価) 実施例5で得られたPGLE−1または比較例5で得られたPGLE−2を、それぞれ、脱塩水に溶解して10%水溶液を調製し、5℃で保存した水溶液の状態を経時的に観察した。結果を表5に示す。 本発明による環状構造低含有ポリグリセリンは、分子内脱水により生じた環状構造含有ポリグリセリンの含有率が低いので、OH価が大きくなり、保湿剤、増粘剤、可塑剤、親水化処理等に利用できる。また、該ポリグリセリンと脂肪酸から得られる脂肪酸エステルは、乳化、可溶化、分散、洗浄、防食、潤滑、帯電防止、ぬれなどの諸特性に優れ、食品添加物、化粧品用、医薬用及び工業用の界面活性剤として利用できる。また、ポリグリセリンはそれ自体で、保湿剤、増粘剤、可塑剤、親水化処理等に利用できる。実施例1に係る反応生成物の組成分布図である。実施例2に係る反応生成物の組成分布図である。実施例3に係る反応生成物の組成分布図である。実施例4に係る反応生成物の組成分布図である。比較例1に係る反応生成物の組成分布図である。比較例2に係る反応生成物の組成分布図である。比較例3に係る反応生成物の組成分布図である。(a)は、実施例3に係る反応生成物の液体クロマトグラムである。 (b)は、比較例1に係る反応生成物の液体クロマトグラムである。 (c)は、比較例2に係る反応生成物の液体クロマトグラムである。比較例4に係る反応生成物の組成分布図である。 下記一般式[1](式[1]で、pはグリセリン残基の繰返し部分を表し、pは0以上の整数であり、該分子の重合度はp+2となる。)で示されるポリグリセリン(1)の合計に対して、分子中に少なくとも1個の環状構造を有する環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計が、液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比で、ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=70%以上:30%以下(両者の合計は100重量%)であり、平均重合度(グリセリン残基の繰返し単位)〈n〉が2以上である環状構造低含有ポリグリセリンを製造する方法であって、グリセリン1モルに対して、グリシドール2モル以上と触媒の両者を逐次添加して反応させることを特徴とする環状構造低含有ポリグリセリンの製造方法。 触媒がリン酸系酸性触媒である請求項1に記載の環状構造低含有ポリグリセリンの製造方法。 リン酸系酸性触媒が、リン酸または酸性リン酸エステルである請求項2に記載の環状構造低含有ポリグリセリンの製造方法。 反応温度が80〜130℃である請求項1〜3のいずれかに記載の環状構造低含有ポリグリセリンの製造方法。 下記一般式[1](式[1]で、pはグリセリン残基の繰返し部分を表し、pは0以上の整数であり、該分子の重合度はp+2となる。)で示されるポリグリセリン(1)の合計に対して、分子中に少なくとも1個の環状構造を有する環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計が、液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比で、ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=70%以上:30%以下(両者の合計は100重量%)であり、平均重合度(グリセリン残基の繰返し単位)〈n〉が2以上である環状構造低含有ポリグリセリンと炭素数2〜30の脂肪酸を脱水反応させる環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。 環状構造含有ポリグリセリン(2)が、下記一般式[2]で示される構造を有する環状構造含有ポリグリセリンである請求項5に記載の環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。(式[2]で、pはグリセリン残基の繰返し部分を表し、pは0以上の整数であり、qは環状構造部分を表し、qは1以上の整数であり、該分子の重合度はp+2q+1である。環状構造部分はグリセリン残基の間にランダムに入っても連続して入ってもよい。これらの分子の混合物である環状構造低含有ポリグリセリンの平均重合度〈n〉は2以上である。) 環状構造含有ポリグリセリン(2)が、下記一般式[3]で示される構造を有する環状構造含有ポリグリセリンである請求項5に記載の環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。(式[3]で、pはグリセリン残基の繰返し部分を表し、pは0以上の整数であり、該分子の重合度はp+3となる。) 平均重合度〈n〉が3〜60である環状構造低含有ポリグリセリンを反応に付す請求項5に記載の環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。 ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=80%以上:20%以下(両者の合計は100重量%)であり、平均重合度〈n〉が2以上〜10以下である環状構造低含有ポリグリセリンを反応に付す請求項5に記載の環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。 ポリグリセリン(1)の合計:環状構造含有ポリグリセリン(2)の合計=70%以上:30%以下(両者の合計は100重量%)であり、平均重合度〈n〉が10超である環状構造低含有ポリグリセリンを反応に付す請求項5に記載の環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。 液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比分布で、最も高い分布率を示すポリグリセリン(重合度n)に対する重合度n−1の成分の比率:(重合度n−1の成分)/(重合度nの成分)が0.4以上である環状構造低含有ポリグリセリンを反応に付す請求項5〜10の何れかの項に記載の環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。 請求項1〜3のいずれかに記載の環状構造低含有ポリグリセリンの製造方法により得られた環状構造低含有ポリグリセリンであって、液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比で、重合度nの成分に対して、重合度n−1の成分と重合度n+1の成分の比率増減の傾向が、グリセリンを開始剤にしてグリシドールを逐次反応させた分布をなす環状構造低含有ポリグリセリンと炭素数2〜30の脂肪酸を脱水反応させる環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。 請求項4に記載の環状構造低含有ポリグリセリンの製造方法により得られた環状構造低含有ポリグリセリンであって、液体クロマトグラフィー/質量分析法による強度比で、重合度nの成分に対して、重合度n−1の成分と重合度n+1の成分の比率増減の傾向が、グリセリンを開始剤にしてグリシドールを逐次反応させた分布をなす環状構造低含有ポリグリセリンと炭素数2〜30の脂肪酸を脱水反応させる環状構造低含有ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法。