生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_血清および血漿の測定値乖離を防止する免疫測定法
出願番号:2004553191
年次:2010
IPC分類:G01N 33/543


特許情報キャッシュ

飯塚 雅行 宮川 明子 中島 秀文 JP 4592422 特許公報(B2) 20100924 2004553191 20031118 血清および血漿の測定値乖離を防止する免疫測定法 デンカ生研株式会社 591125371 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 飯塚 雅行 宮川 明子 中島 秀文 JP 2002333714 20021118 20101201 G01N 33/543 20060101AFI20101111BHJP JPG01N33/543 583 G01N 33/48-33/98 特表平11−505616(JP,A) 特開平05−060753(JP,A) 特開平07−020128(JP,A) 特開2000−210380(JP,A) 6 JP2003014654 20031118 WO2004046723 20040603 9 20060920 草川 貴史 【技術分野】【0001】 本発明は、抗原抗体凝集反応を光学的に抗原または抗体を測定する免疫測定法に関する。具体的には、フィブリノーゲンの影響により生じる血清被検試料と血漿被検試料における抗原または抗体の測定値の乖離を消失させ得る免疫測定法に関する。【背景技術】【0002】 抗原抗体凝集反応を光学的に抗原または抗体を測定する免疫測定法は、血清、血漿等のヒトから採取した生体成分を被検試料としてその中の微量成分を検出することにより、疾病等の生体の異常を診断する臨床検査法であり、自動分析装置を用いて簡単に定量できることから広く用いられている。 また、試料としては病院検査等で外来患者や緊急検査として迅速性から血漿が用いられている。【0003】 免疫測定法では、一般的に補体の影響を回避するために補体活性化経路に関与するCa2+、Mg2+と結合し得るエチレンジアミン四酢酸(以下EDTA)を含む免疫試薬が広く用いられている(非特許文献1を参照)。しかし、このEDTAが起因となり、血漿試料を測定した場合に不溶化物質が発生し、光学的測定に正の誤差を与え、同一ヒトより採血された血清試料の測定結果に対し乖離を生じる場合があった。【0004】 そのため、これらEDTAを含む免疫測定法においては、血漿試料を用いた場合に誤った測定結果を与えるという問題があり、同一ヒトより採血された血清試料の測定値との誤差が生じない免疫試薬測定法が望まれていた。【0005】【先行技術文献】【非特許文献1】John J.Langone and Helen Van Vunakis、 Methods in ENZYMOLOGY、volume74 Immunochemical Technical Part C、(England)、ACADEMIC PRESS, INC、1981年、p.106-139【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0006】 本発明の目的は、特定の特性を有するキレート剤および金属化合物を含む免疫測定試薬を用いることで、血漿試料と同一ヒトより採血された血清試料の測定値との誤差が生じない免疫試薬測定法を提供することである。【課題を解決するための手段】【0007】 本願発明者らは血漿試料の正の測定誤差原因について調査した結果、血清中には無く、血漿中に存在するフィブリノーゲンが試薬中のEDTAによって不溶化し、光学的測定に影響を与え、測定に誤差を生じることを突き止めた。更に脂肪酸を疎水基に有する界面活性剤等の存在で誤差が助長されることもわかった。【0008】 そこで、免疫測定試薬に含まれるキレート剤について検討した結果、キレート剤の配位数が3以下の安定度定数の低いキレート剤を含む免疫測定法で血漿試料を測定すると、同一ヒトより採血された血清試料の測定値との誤差が生じないことがわかった。【0009】 また、EDTAを含む採血管を用いた血漿試料から反応系に微量なEDTAが混入することで上記と同様な現象が起こることも確認された。これら回避方法も検討し、金属化合物を添加することで、EDTAをマスキングし、回避することもわかった。【0010】 血漿試料中のフィブリノーゲンの不溶化機序については不明であるが、配位数が3以下のキレート剤の使用によりフィブリノーゲンの不溶化を抑え、採血管から混入するEDTAを金属化合物の添加でマスキングすることにより、血漿試料を誤差無く測定することが可能となった。【0011】 すなわち、本発明は、血漿試料をフィブリノーゲンの影響を受けずに測定する場合に、特定の特性を有するキレート剤を使用することを特徴とする方法を提供するものである。さらに、本発明は、EDTA採血管を用いて採血した被験試料中に含まれるEDTAの影響を低減するために免疫測定法において、金属化合物を使用することを特徴とする方法を提供するものである。【0012】 さらに、詳細には本発明は以下の通りである。(1)血漿中の被検成分を抗原抗体反応により光学的に測定する免疫測定法において、反応系にキレート剤および/または金属化合物を添加することを含む、血漿中のフィブリノーゲンの不溶化による測定値への影響を回避する方法、(2)免疫測定法が凝集反応を利用した方法である、(1)の方法、(3)キレート剤が配位数3個以下のものであり、且つフィブリノーゲンの不溶化による測定値への影響を回避し得るものである(1)または(2)の方法、(4)クエン酸およびクエン酸化合物、シュウ酸およびシュウ酸化合物、イミノ二酢酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸三ナトリウム塩、ニトリロ三プロピオン酸、およびこれらのキレート剤の類似化合物からなる群から選択されるキレート剤の1種類以上を添加する、(3)の方法、(5)添加されるキレート剤の最終濃度が0.01〜0.1mol/Lである(1)から(4)のいずれかの方法、(6)金属化合物が、カルシウム塩またはマグネシウム塩である(1)または(2)の方法、(7)添加される金属化合物の最終濃度が0.001〜0.05mol/Lである(1)、(2)または(6)の方法、(8)血漿中の被検成分を抗原抗体反応により光学的に測定する免疫測定方法において血漿中のフィブリノーゲンの不溶化による測定値への影響を回避するための、キレート剤および/または金属化合物を含む緩衝液組成物、(9)クエン酸およびクエン酸化合物、シュウ酸およびシュウ酸化合物、イミノ二酢酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸三ナトリウム塩、ニトリロ三プロピオン酸、およびこれらのキレート剤の類似化合物からなる群から選択されるキレート剤の1種類以上を含む(8)の緩衝液組成物、(10)キレート剤の濃度が0.01〜0.1mol/Lである(8)または(9)の緩衝液組成物、(11)金属化合物が、カルシウム塩またはマグネシウム塩である(8)の緩衝液組成物、(12)金属化合物の濃度が0.001〜0.05mol/Lである(10)または(11)の緩衝液組成物、および(13)抗原または抗体感作粒子を含む(8)〜(12)のいずれかの緩衝液組成物。【0013】 本発明は、血漿中の被検成分を抗原抗体反応により光学的に測定する免疫測定法において、反応系にキレート剤および/または金属化合物を添加することを含む、血漿中のフィブリノーゲンの不溶化による測定値への影響を回避する方法であり、また本発明は、血漿中のフィブリノーゲンの不溶化による測定値への影響を回避するために、反応系にキレート剤および/または金属化合物を添加することを含む、血漿中の被検成分を抗原抗体反応により光学的に測定する免疫測定方法である。【0014】 本発明が対象とする免疫測定法は、抗原抗体反応により形成された抗原と抗体の結合物を光学的に測定する方法である。例えば、抗原抗体反応により生じた抗原または抗体を結合させた粒子の凝集反応を用いた方法があり、粒子に抗原または抗体を感作すなわち結合させ、被検試料中の抗体または抗原と粒子上の抗原または抗体が結合し、粒子が凝集体を形成し、濁度が変化する。粒子としてはラテックス粒子、ベントナイト、コロジオン、カオリン、固定羊赤血球、ゼラチン、金コロイド、炭素粒子等を使用することができるが、ラテックス粒子を使用するのが好ましい。ラテックス粒子としては、例えば、ポリスチレンラテックス粒子、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス粒子、ポリビニルトルエンラテックス粒子等を使用することができるが、ポリスチレンラテックス粒子を使用するのが好ましい。また、抗原抗体反応を光学的に検出するエンザイムイムノアッセイおよび蛍光イムノアッセイも本発明が対象とする免疫測定法である。例えば、抗原または抗体をマイクロタイタープレートに固相化するELISAや、抗原または抗体をビーズ等に固相化する不均一法ならびに結合した抗原および抗体複合体と遊離の抗体または抗原の分離操作(B/F分離)を行わない均一系測定法も本発明が対象とする免疫測定法である。後者の均一測定法として、例えば非競合均一エンザイムイムノアッセイやEMIT(登録商標)等の競合均一エンザイムイムノアッセイ等がある(P.TIJSSEN著、「生化学実験法11 エンザイムイムノアッセイ」、第1版、東京化学同人、1989年11月15日、p.14-17)。【0015】 本発明の免疫測定法における測定対象、すなわち被検成分は特定のものに限定されず、血中に存在する抗原または抗体ならばいずれでもよい。 本発明の方法に供される被検試料としては、血清、血漿、血液(全血)等の体液やその希釈物を挙げることができる。【0016】 例えば、凝集法において抗体または抗原を担体に感作する方法は、特に限定されず公知の方法に従えばよい。例えば、担体に物理的に吸着させてもよいし、化学的に結合させてもよい。より具体的には、例えば、抗体または抗原と担体とを混和した後、30〜37℃で1〜2時間加温振盪することにより、抗体を担体に感作させることができる。担体に感作する抗体または抗原の量は、使用する担体の粒径に応じて適宜設定することができる。抗体または抗原を担体に感作した後、担体表面上の未感作部分をウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、ウサギ血清アルブミン、卵白アルブミン等でブロッキングするのが好ましい。抗体または抗原を感作した担体は被検試料と反応させる時まで媒体分散液として保持しておくのが好ましい。この際、媒体としては、例えば、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液等を使用することができる。媒体中には、必要に応じてウシ血清アルブミン、ゼラチン、アラビアゴム等を添加してもよい。このように調製した抗体または抗原感作担体を被検試料と反応させ、凝集の有無またはその程度により感作させた抗体または抗原と被検試料中の抗原または抗体との反応性を判別し、被検試料中の抗原または抗体を検出することができる。【0017】 感作粒子を用いた凝集法における検出は、適当な反応容器中で被検試料数μL〜数十μLに生理食塩水または適当な緩衝液数十μL〜数百μLを添加し混和し、数分間インキュベーションを行い、次いで抗体または抗原を結合させた感作粒子を数十μL〜数百μL添加し、数分間インキュベーションを行う。次いで、適当な測定波長(例えば、570nm)で吸光度を測定することにより、抗原抗体反応により生じた感作粒子の凝集による濁度を測定することができる。また、反応試料数μLに緩衝液に浮遊させた感作粒子溶液数十μL〜数百μLを添加してもよい。緩衝液としては、pH5.0〜10の適当な緩衝液、例えば、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液等が挙げられる。この際、感作粒子と被検体中の抗原または抗体との非特異的結合を抑制するために、緩衝液にTritonX-100、Tween20、Tween80等の適当な界面活性剤を添加してもよい。凝集度の測定は、例えば三菱化学株式会社のLPIA-S500ラテックス凝集全自動測定器、ロシュ・ダイアグノスティック・システムズ社のCOBAS FARA装置及びCOBAS MIRA装置、及び日立製作所の日立7070分析装置等を用いて行うことができる。反応はスライドグラス上で行ってもよく、この場合凝集度は目視により判定してもよい。【0018】 本発明においては、最初に被検試料に添加する生理食塩水もしくは緩衝液、または感作粒子を浮遊させた緩衝液にキレート剤および/もしくは金属化合物を添加すればよい。また、最初に金属化合物のみを含む緩衝液と被検試料を混合し、被検試料中のEDTA採血管に由来するEDTAの配位座をマスキングし、その後にキレート剤含有緩衝液またはキレート剤含有感作粒子浮遊液を添加することによりキレート剤を添加してもよい。【0019】 本発明で用いるキレート剤は配位数(配位座の数)3個以下のキレート剤であり、さらによりキレート安定度定数の低いものが好ましい。ここでキレート安定度定数とはL.G.Sillen & A.E.Martell著"StabilityConstants of Metal Complexes"TheChemical Society,London(1964)、S.Chaberek & A.E.Martell著"Organic Sequestering Agents"Willey(1959)等により一般に知られている係数をいう。本発明で用いるキレート剤は、血漿中の抗原または抗体を抗原抗体反応により光学的に測定する方法において、血漿中のフィブリノーゲンの不溶化させ測定値に影響を及ぼさず、なおかつ補体を活性化して測定値に影響を及ぼさないキレート剤である。血漿中のフィブリノーゲンの不溶化させ測定値に影響を及ぼすかどうかは、例えばフィブリノーゲン100〜700mg/mLの溶液にキレート剤を添加し、570nmにおける吸光度が増加しないかどうかで評価できる。本発明において用いるキレート剤の具体例として、クエン酸およびクエン酸化合物、シュウ酸およびシュウ酸化合物、イミノ二酢酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸三ナトリウム塩、ニトリロ三プロピオン酸、これらキレート剤の類似化合物が挙げられる。試料および感作粒子反応時の最終濃度は、0.01mol/L〜0.1mol/Lの範囲である。例えば、キレート剤の濃度は試料10μLにキレート剤を含む緩衝液を0.2mL添加し、感作粒子浮遊液を0.1mL添加する測定系において、緩衝液中で0.015〜0.15mol/Lの範囲であり、0.05〜0.1mol/Lが好ましい。本発明の測定系としては、最初に被検体とキレート剤含有緩衝液を混合し、次いで感作粒子浮遊液を添加して反応を行わせる測定系および被検体とキレート剤含有感作粒子浮遊液を混合する測定系があり、系に添加する被検体、キレート剤含有緩衝液および感作粒子浮遊液の容積は適宜設定可能であるが、キレート剤の最終的な濃度が上記範囲になるように緩衝液または感作粒子浮遊液に含有させればよい。【0020】 本発明において用いる金属化合物はEDTAと結合しEDTAの配位座をマスキングし得るものであればよく限定されないが、カルシウム塩、マグネシウム塩等をあげることができる。カルシウム塩としては、例えば、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、酢酸カルシウム、フッ化カルシウム、クロム酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、ギ酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ヘパリンカルシウム等が挙げられ、マグネシウム塩としては、塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクタデカン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ホスフィン酸マグネシウム、ヨウ化マグネシウム等が挙げられる。【0021】 試料および感作粒子反応時の最終濃度は、0.001mol/L〜0.05mol/Lの範囲である。本発明で用いる金属化合物の濃度は試料10μLに金属化合物を含む緩衝液を0.2mL添加し、感作粒子浮遊液を0.1mL添加する測定系において緩衝液中で0.0015〜0.075mol/Lの範囲であり、0.01〜0.05mol/Lが好ましい。本発明の測定系としては、最初に被検体と金属化合物含有緩衝液を混合し、次いで感作粒子浮遊液を添加して反応を行わせる測定系および被検体と金属粒子含有感作粒子浮遊液を混合する測定系があり、反応系に添加する被検体、金属化合物含有緩衝液および感作粒子浮遊液の容積は適宜設定可能であるが、凝集反応時の金属化合物の最終的な濃度が上記範囲になるように緩衝液または感作粒子浮遊液に含有させればよい。【0022】 また、測定系にキレート剤と金属化合物の両方を添加する場合、最初に被検体と金属化合物含有緩衝液を混合し、次いでキレート剤含有緩衝液を添加し、最後に感作粒子浮遊液を添加する系、最初に被検体とキレート剤と金属化合物の両方を含有する緩衝液を混合し、次いで感作粒子浮遊液を添加する系、最初に被検体と金属化合物含有緩衝液を混合し、次いでキレート剤含有浮遊液を添加する系、ならびに被検体とキレート剤と金属化合物の両方を含有する感作粒子浮遊液を添加する系等がある。どの系においても、反応系に添加する被検体、金属化合物含有緩衝液、キレート剤含有緩衝液、キレート剤と金属化合物の両方を含有する緩衝液ならびに感作粒子浮遊液の容積は適宜設定可能であり、いずれの場合であっても、凝集反応時のキレート剤および金属化合物の最終的な濃度が上記範囲になるように緩衝液または感作粒子浮遊液に含有させればよい。尚、あらかじめ緩衝液または感作粒子浮遊液にキレート剤と金属化合物の両方を混ぜておく場合には、キレート剤と金属化合物が結合し得るが、EDTA採血管で採取した血液を被検体として用いる場合には、本発明で用いるキレート剤に結合した金属化合物は、該キレート剤から遊離してEDTAと結合するので問題にならず、また金属化合物の濃度をキレート剤の濃度より低く設定すれば、ヘパリン採血管等のEDTAを含まない採血管を用いて採取した血液を被検体として用いる場合でも、金属化合物と結合していないキレート剤が存在するので、本発明の効果を奏し得る。この場合の、キレート剤と金属化合物のモル濃度比はキレート剤添加濃度と同モル以下の金属化合物で添加であればよい。本発明は、キレート剤および/または金属化合物を含む緩衝液組成物をも包含する。さらに、抗原または抗体を感作した粒子を含む緩衝液組成物も本発明に包含される。該緩衝液組成物は液体の状態であってもよいし、乾燥状態であってもよく、後者の場合水によって復元し使用することができる。さらに、本発明は前記緩衝液組成物を含む免疫測定キットをも包含する。該免疫測定キットは、前記緩衝液組成物に抗原または抗体を感作した粒子が含まれない場合は、抗原または抗体を感作した粒子を別途含む、さらに陽性対照、陰性対照、説明書等を含んでいてもよい。【0023】 本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2002-333714号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。【発明の効果】【0024】 実施例に示したように、測定系に特定の特性を有するキレート剤を添加する本発明の免疫測定法により、血清検体と血漿検体における測定値の乖離を回避することができる。また、測定系に金属化合物を添加する本発明の免疫測定法により、EDTA採血管由来のEDTAの影響による血清検体と血漿検体における測定値の乖離を回避することができる。さらに測定系に上記キレート剤と金属化合物を添加することにより、血清検体と血漿検体における測定値の乖離をより十分に回避することができる。【発明を実施するための形態】【0025】 以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、下記例において、「%」は「重量%」を示す。【0026】〔参考例〕 RF測定試薬を用いて、緩衝液のキレート剤の種類における、同一ヒトから採血されたリウマチ因子を含む血清試料と血漿試料の誤差を調べた。この操作は具体的に次のように行なった。 0.1mol/L Good緩衝液 pH8.3、30% Tween80、0.05mol/L キレート剤を含む緩衝液を調製し、試料10μLに緩衝液0.2mLを混和し、37℃、5分間反応させた後、ラテックス浮遊液0.1mLを添加、混合しさらに5分間反応させ、測定波長570nmにて測定した。【0027】〔実施例1〕 キレート剤の添加 次の組成から成る5種類の試薬を調製した。 5種類の試薬は緩衝液中に含まれるキレート剤が異なり、それ以外の成分は全て同じとした。<共通成分>緩衝液 Good緩衝液、pH8 0.1mol/L Tween80 30% キレート剤 0.05mol/Lラテックス浮遊液 RF−ラテックスX1「生研」ラテックス浮遊液(デンカ生研)<試薬> 緩衝液に以下のキレート剤を添加して測定を行った。従来測定法 エチレンジアミン四酢酸(ナカライテスク)試薬1 クエン酸三ナトリウム(ナカライテスク)試薬2 シュウ酸(ナカライテスク)試薬3 ニトリロ三プロピオン酸(同仁化学)試薬4 イミノ二酢酸(同仁化学) キレート剤の配位数を表1に示す。【0028】【表1】【0029】 RF陰性健常者より、血清および血漿を採血したものを試料とし、従来免疫測定法および試薬1〜4にて測定を行い、血清試料と血漿試料の測定値の差を算出した。測定値の差(IU/mL)=血漿試料の測定値−血清試料の測定値 結果を表2に示す。【0030】【表2】【0031】 表2に示されるように、キレート剤の配位数が3以下の選択されたキレート剤を含む免疫測定法では血漿試料と血清試料との測定値に差がないことがわかる。【0032】〔実施例2〕 金属化合物の添加 実施例1で用いた試薬1の緩衝液に塩化カルシウムを添加しないものと添加したものを調製し、測定を行った。<試薬>緩衝液 good緩衝液、pH8 0.1mol/L Tween80 30% クエン酸三ナトリウム 0.05mol/L 塩化カルシウム 0.01mol/Lラテックス浮遊液 RF−ラテックスX1「生研」ラテックス浮遊液(デンカ生研)試薬1−1 塩化カルシウム無添加試薬1−2 塩化カルシウム添加【0033】 RF陰性健常人より、血清およびEDTA-2Na採血管にて採血した血漿(以下:EDTA採血管血漿試料)、ヘパリン-Li採血管にて採血した血漿(以下:ヘパリン採血管血漿試料)を試料とし、試薬1−1および試薬1−2にて測定を行い、血清試料とEDTA採血管血漿試料の測定値の差を算出した。測定値の差(IU/mL)=EDTA採血管血漿試料の測定値−血清試料の測定値 結果を表3に示す。【0034】【表3】【0035】 表3に示されるように、金属化合物を含む免疫測定法ではEDTA採血管の影響を回避し、EDTA採血管血漿試料と血清試料に差がないことがわかる。【0036】 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。 緩衝液および界面活性剤を用いて、血漿中の被検成分を抗原抗体反応により光学的に測定する免疫測定法において、緩衝液および界面活性剤を含む反応系にクエン酸およびクエン酸化合物、シュウ酸およびシュウ酸化合物、イミノ二酢酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸三ナトリウム塩、およびニトリロ三プロピオン酸からなる群から選択される配位数3個以下のキレート剤ならびに/またはカルシウム塩もしくはマグネシウム塩である金属化合物を添加することを含む、血漿中のフィブリノーゲンの不溶化による測定値への影響を回避する方法。 緩衝液および界面活性剤を含む反応系にクエン酸およびクエン酸化合物、シュウ酸およびシュウ酸化合物、イミノ二酢酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸三ナトリウム塩、およびニトリロ三プロピオン酸からなる群から選択される配位数3個以下のキレート剤ならびにカルシウム塩もしくはマグネシウム塩である金属化合物を添加することを含む、請求項1記載の方法。 免疫測定法が凝集反応を利用した方法である、請求項1または2に記載の方法。 添加されるキレート剤の最終濃度が0.01〜0.1mol/Lである請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 添加される金属化合物の最終濃度が0.001〜0.05mol/Lである請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 反応系が、採血に用いたEDTA採血管由来のEDTAを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。


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