タイトル: | 特許公報(B2)_ウルソル酸−大豆レシチン凍結乾燥ナノ粒子注射剤およびその製造方法 |
出願番号: | 2004552351 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 31/56,A61K 9/19,A61K 47/12,A61K 47/26,A61K 47/24,A61P 35/00 |
謝俊明 白岩 易以木 楊光 張長弓 JP 4896401 特許公報(B2) 20120106 2004552351 20031117 ウルソル酸−大豆レシチン凍結乾燥ナノ粒子注射剤およびその製造方法 武漢利元亨薬物技術有限公司 505187828 伊藤 進 100076233 山崎 行造 100071010 杉山 直人 100121762 白銀 博 100126767 赤松 利昭 100118647 奥谷 雅子 100138519 田坂 一朗 100120145 星 貴子 100122839 謝俊明 白岩 易以木 楊光 張長弓 CN 02147711.6 20021121 20120314 A61K 31/56 20060101AFI20120223BHJP A61K 9/19 20060101ALI20120223BHJP A61K 47/12 20060101ALI20120223BHJP A61K 47/26 20060101ALI20120223BHJP A61K 47/24 20060101ALI20120223BHJP A61P 35/00 20060101ALI20120223BHJP JPA61K31/56A61K9/19A61K47/12A61K47/26A61K47/24A61P35/00 A61K 9/00-9/72 A61K 47/00-47/48 A61K 31/00-33/44 特表2002−530321(JP,A) 特表2000−516244(JP,A) 特表2002−538199(JP,A) 特表2002−509876(JP,A) 特開平03−287531(JP,A) 特開平03−287530(JP,A) 国際公開第02/009719(WO,A1) 国際公開第02/052956(WO,A1) 4 CN2003000969 20031117 WO2004045619 20040603 2006508968 20060316 8 20061002 福井 悟 本発明は、薬品ウルソル酸に関するものであり、具体的にはウルソル酸のナノメートルレベルの凍結乾燥粒子の注射剤とその製造方法に関する。 ウルソル酸は植物体内の有機酸の一種である。近年、国の内外の実験研究から本品が腫瘍や炎症、一部の遺伝子に対し影響を及ぼすことが分っている。 目下、ウルソル酸関連の薬理作用に関する研究はいずれも実験室内での段階にとどまっており、ウルソル酸の製剤は市場に出ていない。近年、中国国内で、ウルソル酸の錠剤、カプセル剤、顆粒剤、注射薬、内服液の国内特許が出願されている。その出願番号は99126892−Xである。ウルソル酸の水溶性は低く、内服後容易には吸収されない。中国国外のウルソル酸関連の研究もいずれも原料の一般形態についてのものだけであり、そのナノメートルレベルの形態に関する文献はいまだ発表されていない。 本発明の目的は、ナノメートルレベルのウルソル酸凍結乾燥粒子注射剤とその製造方法を提供して、その安全性を高めることにある。 本発明のナノメートルレベルウルソル酸凍結乾燥粒子注射剤の主要な原料は、活性原料ウルソル酸、ウルソル酸ナノ粒子用複合担体、凍結乾燥助材である。 ウルソル酸ナノ粒子用複合担体には大豆レシチンおよびステアリン酸を選択する。 凍結乾燥助材中の賦形薬には、マンニトール、注射用乳糖、注射用ブドウ糖、デキストラン、塩化ナトリウム、グリシンナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、アミノ酢酸のうちから1種を用いる。好ましくは乳糖を用いる。 ウルソル酸の一般製剤と比較すると、ウルソル酸ナノ粒子注射剤は、肝臓への標的指向性と良好な遅延放出効果を備えており、病変部位に集中可能なため、薬物の治療効果が上がり、副作用を減少させる。 その製造方法は、以下のとおりである。医薬用有機溶剤を用いて溶解したウルソル酸に、複合担体の大豆レシチンとステアリン酸を加え、45〜55℃に加熱し反応が完成するまで攪拌する。次に蒸留水を加え、賦形薬を加え、35〜55℃に加熱して反応が完成するまで攪拌する。その後、細孔ろ過膜でろ過し、ろ液を凍結乾燥して凍結乾燥粒子注射剤を製造する。有機溶剤にはメタノール、アセトンの中から1種または2種を用いる。当該ナノ粒子注射剤は分散度が高い、安定性がよい等の優れた点を備えている。その平均粒径は209.5nm、薬物含量25.2%であり、当該薬物は肝ガン細胞への抑制作用、殺傷作用を備え、p53、bc1−2、Topo−IIの発現を低減させる。 活性原料ウルソル酸、ウルソル酸ナノ粒子用複合担体の大豆レシチンおよびステアリン酸、凍結乾燥助剤の乳糖の重量比を0.1〜10:0.3〜30:0〜10:0.1〜20とする。 図に示すように、処方されたウルソル酸2000mgを取り、メタノール10mlを加えて室温で攪拌溶解した後、大豆レシチン3000mg、ステアリン酸1000mgを加えて、45〜55℃に加熱する。50℃の場合10分攪拌する。蒸留水40mlと乳糖2000mgを加え、35〜55℃にする。55℃の場合30分攪拌する。その後、0.8μの細孔ろ過膜を用いてろ過し、ろ過液を−45〜−55℃にする。−50℃の場合、凍結2〜4時間して完成品となる。 品質検査 本発明で得られたウルソル酸−大豆レシチン凍結乾燥ナノ粒子注射剤の薬物封入率は88.3%、薬物含量は25.2%であった。レーザー粒径測定装置で測定した粒径は平均209.5nm、ゼータ電位は−31.67mV、多分散指数(polydispersity)は0.149であった。 動物に対する急性毒性試験 1.実験動物:健康な昆明種マウス、体重18〜20g、雌雄同数、雌雄同数、同済医科大学動物所提供、合格証番号19−052。 2.供試薬品の調製:(1)ウルソル酸溶液の調製:ウルソル酸(含有量99.7%)6660mgを取り、20%のプロピレングリコール水溶液10mlに溶かす。(2)ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤の調製:ウルソル酸8350mgに相当するサンプル薬品をはかり、10mlの水に溶かす。薬量を7割ずつ逓増させる。 3.実験方法:実験動物をランダムに5群に分ける。各群10匹、絶食14時間後、尾の静脈に0.5mlを一度に注射し、直ちに反応を観察して、動物の死亡を陽性指標とする。各群の死亡数を記録する。Bliss法によりLD50を算出する。 4.結果:実験から動物の死亡はすべて投与後2日以内に発生したことがわかった。生存している動物を7日間連続で観察した結果、以降の死亡は出現しなかった。動物の死亡は、すべて四肢の麻痺、筋肉の弛緩、最後は呼吸停止での死亡であった。 実験データは表に示した。 以上の結果は、ウルソル酸ナノ粒子注射剤は原薬に比べて毒性が低いことを示している。 薬力学試験 ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤の肝ガン細胞への抑制作用研究 1.細胞株 ヒトの肝ガン細胞株SMMC−7721は第四軍医大学生物教研室による提供。 2.主な試薬 RPMI−1640培地はギブコ社の製品を用いる。説明に従い3回蒸留して得られた水を用いて調製し、ウシ胎児血清10%(V/V)、ペニシリン1000U/mLとストレプトマイシン100U/mLを添加して0.22Uろ過器で除菌し、4℃の冷蔵庫で保存する。ウシ胎児血清は浙江省金華市清湖犢牛応用研究站の製品を用いる。MTT[3−(4,5)−メチルエチルチアゾール−(2,5)−ジメチルプロミドブルーテトラゾリウム]はアメリカのシグマ社製で、リン酸塩緩衝液(0.01mol/L,pH7.4,PBS)で5mg/mLの溶液をつくり、ろ過除菌し、4℃の冷蔵庫で保存する。TUNEL未端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼキット[Termi−naldeoxylnuculeotidyl Transferase(TdT)]はアメリカのプロメガ社製を用いる。DIG−dUTPはドイツのBM社の製品を用いる。Anti−DIG−Biotinはアメリカのシグマ社の製品を用いる。エトポシドは北京製薬工業研究所実験薬廠の製品を用いる。免疫組織化学法試薬キットは武漢博士徳公司の製品を用い、一次抗体は小ロット包装の輸入品で、SABC及びDABキットはともに武漢博士徳公司製である。 3.実験方法 3.1 実験用薬品の調製:ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤に注射用水を加え完全に溶解した後、加熱煮沸(100℃30分)して濃度を100mg/mL(ウルソル酸含有)に調整する。使用前、無菌環境下で培養液で段階希釈して必要な濃度にする。 3.2 細胞培養:ヒトのガン細胞株SMMC−7721をRPMI−1640完全培養液内で定法によって培養し、37℃、CO25%のインキュベータに2日〜3日置き、1代継代させる。対数増殖期細胞を取り実験に供する。 3.3 ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤のSSMC−7721に及ぼす作用の観察:対数増殖期のSMMC−7721細胞を取って定法によって消化し、細胞濃度を1×104/mlに調整し、96ウエル培養プレートに、各ウエル100μLずつ播種する。RPMI−1640培養液でウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤液およびエトポシド(VP16)を必要な実験濃度にそれぞれ希釈し、細胞播種の24時間後、96ウエルプレートに各ウエル100μLずつ滴下する。実験群はウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射薬液+SMMC−7721、陽性対照群はVP16+SMMC−7721、陰性対照群はCM+SMMC−7721である。各群さらに3つのウエルを割り当て、ブランクウエルは200μLの完全培養液とする。細胞を、37℃、5%CO2のインキュベータで継続培養し、1日、3日、5日、7日後、濃度5mg/mLのMTTを各ウエル20μLずつ加え、4時間インキュベートした後に、各ウエルの上清を慎重に吸い出す。ジメチルスルホキシド(DMSO)を各ウエル150μLずつ加え、振とう溶解した後に、490nmの波長で各ウエルの吸光度(OD値)を測定する。薬物濃度を横軸に、細胞増殖抑制率を縦軸にして曲線を描く。 抑制率(E)=(1−OD薬/OD対)×100%。 3.4 薬物のp53、TopoII、bc1−2に対する作用:定法によって培養した細胞標本に、24時間後、ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤を濃度10μg/mLにして加え、48時間および72時間作用させ、ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤を加えないものと対照する。培養終了後、冷PBSで軽く2回洗浄する。予冷した95%アルコールで固定し、4℃で保存する。透明なセロファンテープを用いて細胞標本の背面をスライドガラスの上に貼り付け、細胞面は上向きにし、37℃で乾燥させ、PBSに5分浸けて洗浄し、0.3%トリトンX−100で10分処理し、0.01mol/LのPBSで5分洗浄を2回行い、3%オキシドールに37℃で30分浸けて洗浄し、PBSで5分洗浄を3回行い、二次抗体を加え、37℃で30分置いた後、PBSで5分洗浄を3回し、DAB染色液を15μLずつ滴下して、5〜15分発色させる(DAB 5mgは10mLのPBSに溶かし、ろ紙でろ過後、30%オキシドール10μL〜15μLを加える)。顕微鏡観察して、発色したらスライドを蒸留水中に入れ、発色を止める。bc1−2のスライドは非細胞核発色であり、さらに核の対比染色をする:ヘマトキシリンで1分間染色し、水道水で洗い流し、塩酸アルコールに2〜5分浸けてから水洗いし、希アンモニア水に15〜20秒浸けてから水洗いする。すべてのスライドを段階的にアルコール脱水した後、キシレンで15分透徹し封入する。結果判定:光学顕微鏡観察で、p53及びTopoIIは細胞核が黄色から濃いチョコレート色に発色したのを陽性細胞とし、bc1−2は細胞質が淡黄色を呈するのを陽性細胞とする。低倍率顕微鏡で、バックグラウンドが鮮明で、DAB発色対比が最も満足できる3区域を選択し、高倍率顕微鏡に換えて、細胞500個ごとの陽性細胞の数をそれぞれ計算する。3区域の陽性細胞の平均数を取って陽性率とする。弱陽性(+):<20%;強陽性(+++):>70%;中度陽性(++):両者の間。 4.結果 4.1 ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤の肝ガン細胞SMMC−7721に対する投与量依存抑制: MTT法によりウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤のSMMC−7721増殖に対する抑制を測定した。ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤はSMMC−7721細胞の増殖に対してあきらかな抑制・殺傷作用が見られた。ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤の投与量の増加にしたがって抑制程度も強まり、両者はプラスの相関関係(r=0.976,p<0.01)を示した。統計学処理で曲線を直線に近似させて回帰計算した結果、ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤のIC50は4μ/mLを示した。IC50(ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤)<IC50(VP16)、(t=−10.84,P<0.01)という結果は、ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤のSMMC−7721に対する抑制作用があきらかにVP16より勝っていることを示している。 4.2 ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤のSMMC−7721細胞のp53、TopoII、bc1−2発現へ及ぼす影響: 免疫組織化学法でp53、ToopII、bc1−2の発現を測定すると(表2)、ToopII、p53蛋白は細胞核内のみに存在し細胞質中にはなく、細胞は黄色から濃いチョコレート色に染色した。bc1−2蛋白は細胞質中で淡黄色に発色し、核内にはなかった。SMMC−7721の正常細胞対照染色において3者はいずれも陽性または強い陽性を示したが、ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤の細胞に作用する時間を長くするにつれて、3者ともあきらかに低減変化を示した。 5.結論 以上の実験は、ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤のヒト肝ガン細胞SMMC−7721に対する抑制作用および殺傷作用がエトポシド(VP16)をあきらかに上回り、且つ、投与量の増大につれてその抑制強度も増し、両者は正の相関関係を示すことを物語る。さらに行われた研究は、ウルソル酸−大豆レシチンナノ粒子注射剤がp53、bc1−2、TopoII発現を抑制し得ることを証明し、それによるガン細胞の増殖抑制作用および殺傷作用の達成を明らかにした。 本発明製剤およびウルソル酸原薬を用いて、腸ガン(HT−29)、肺ガン(A549)、肝ガン(Hep−G2)細胞のインビトロ抗癌実験を行い、薬物の作用時間と効果との関係を観察する:薬物の作用時間と抑制率との関係をみる実験では、薬物を作用させて2、3、4日の細胞抑制率をそれぞれ観察した。3種の細胞系に対して原薬の及ぼす作用を観察する過程では、低濃度0.1、0.5、2μg/mlにおける抑制作用は弱く、作用時間の延長に伴う抑制率の伸び方はいずれも緩慢であった。高濃度下、10、50μg/mlにおける抑制作用は強く、時間の延長に伴う抑制率の上がり方も速く、3日目には95%以上に達した。3種細胞系に対して製剤の及ぼす作用を観察する過程では、低濃度0.1、0.5、2μg/mlにおける抑制作用は弱く、作用時間の延長に伴うその抑制率の増大は緩慢だった。10μg/mlの時に抑制作用が強く、時間の延長に伴い抑制率はいずれも増大する傾向にはあるが、A549に対する抑制作用は他の2種の細胞に対するより弱かった。50μg/mlの時に抑制作用は作用時間の延長に伴って速やかに増大する傾向を示し、3日目には95%以上に達した。この結果は、HT−29、A549、Hep−G2の3種の細胞系に対して、薬物が最大の作用を発揮するのは4日目であることを示しており、このことは本発明製剤が良好な遅延放出効果を備えていることを物語っている。ウルソル酸−大豆レシチン凍結乾燥ナノ粒子注射剤製造のフローチャートを示す。 ウルソル酸と、 大豆レシチンおよびステアリン酸からなる複合担体と、 乳糖と、からなることを特徴とするウルソル酸−大豆レシチン凍結乾燥ナノ粒子注射剤。 ウルソル酸を有機溶剤で溶解後、複合担体として大豆レシチンとステアリン酸を加え、45〜55℃に加熱して反応が完全になるまで攪拌し、蒸留水を加え、乳糖を加え、35〜55℃に加熱して反応が完全になるまで攪拌し、その後、細孔ろ過膜でろ過し、ろ過液を凍結乾燥させることを特徴とするウルソル酸−大豆レシチン凍結乾燥ナノ粒子注射剤の製造方法。 前記有機溶剤が、メタノールまたはアセトンの1種または2種であることを特徴とする請求項2に記載のウルソル酸−大豆レシチン凍結乾燥ナノ粒子注射剤の製造方法。 凍結乾燥温度が、−45〜−55℃であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のウルソル酸−大豆レシチン凍結乾燥ナノ粒子注射剤の製造方法。