タイトル: | 特許公報(B2)_ニキビ予防及び治療用皮膚外用剤組成物 |
出願番号: | 2004528925 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 36/71,A61K 36/00,A61K 36/48,A61K 9/06,A61K 9/70,A61P 17/10,A61P 31/04,A61K 8/97 |
リー スーン ケウン クワク ウィー ジョン ハン チャン キュン キム ジョー ヒョン JP 4361867 特許公報(B2) 20090821 2004528925 20030812 ニキビ予防及び治療用皮膚外用剤組成物 エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド 505053947 熊倉 禎男 100082005 小川 信夫 100084009 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 平山 孝二 100114007 リー スーン ケウン クワク ウィー ジョン ハン チャン キュン キム ジョー ヒョン KR 10-2002-0048073 20020814 20091111 A61K 36/71 20060101AFI20091022BHJP A61K 36/00 20060101ALI20091022BHJP A61K 36/48 20060101ALI20091022BHJP A61K 9/06 20060101ALI20091022BHJP A61K 9/70 20060101ALI20091022BHJP A61P 17/10 20060101ALI20091022BHJP A61P 31/04 20060101ALI20091022BHJP A61K 8/97 20060101ALI20091022BHJP JPA61K35/78 FA61K35/78 BA61K35/78 JA61K35/78 WA61K9/06A61K9/70 401A61K9/70 405A61P17/10A61P31/04A61K8/97 A61K 36/00-36/9068 CA(STN) MEDLINE(STN) EMBASE(STN) BIOSIS(STN) JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特開平11−322630(JP,A) 特開平11−116493(JP,A) 特開平07−216731(JP,A) 特開平06−279256(JP,A) 特開平03−188008(JP,A) 特開2000−044419(JP,A) 特開2001−097842(JP,A) 7 KR2003001626 20030812 WO2004016239 20040226 2005537306 20051208 18 20050214 田村 聖子 本発明は、ニキビ予防及び治療用皮膚外用剤組成物に関するものであって、さらに詳細には、ニキビの症状を起こす主な原因菌であるプロピオニバクテリウム・アクネスに対する抗菌作用、5α還元酵素(5α−Reductase)阻害による皮脂過剰生成抑制、面疱形成抑制及び角質剥離作用、抗炎作用を示し、ニキビの予防及び治療に効果がある、刀豆、柏子仁、黄連抽出物またはこれらの混合物を含有する皮膚外用剤組成物に関するものである。 ニキビは、90%程度が10代に現れるが、20〜30代の成人男女にも現れる。ニキビ(尋常性座瘡)は、毛嚢及び皮脂腺に発生する慢性炎症性疾患を意味するものであって、その発生原因としては、皮脂分泌の増加、毛嚢上皮の異常過角化及び嫌気性皮膚常在菌であるプロピオニバクテリウム・アクネスの増殖が挙げられて、これに加え様々なメカニズムが複合的に作用する。このようにできたニキビは、皮膚でも最もよく見える部位、特に顔、胸、背中、首及び上腕などにできるニキビ、吹き出物、膿疱、狼瘡、小さいこぶ、傷跡で特徴つけられる毛嚢脂腺の慢性疾患である。 ニキビの初期段階は、過多分泌された皮脂が毛穴に詰まって、毛疱の中が皮脂の圧力により膨張され吹き出物となり、毛穴が閉じている状態で皮脂が詰まったものは、白ニキビ(閉鎖面疱)、毛穴が開いていてたまった汚れが黒く見えるものは、黒ニキビ(開放面疱)である。さらにニキビが進行すると、細菌が炎症を起こし皮膚が赤くなって粟みたいなものができる紅色丘疹型、これが化膿して膿ができる膿疱型に大別される。このようにできた10代のニキビと成人のニキビは、多少の差を示すが、その特性を比較して、表1に示した。 上記表1から分かるように、10代のニキビは、主に皮脂分泌の旺盛な春、夏に額−顔全般に発生、脂性皮膚から発生しやすい反面、成人の場合は、部位が限定されて、年中発生を繰り返す傾向があり、脂質とは関係が少なく、ホルモンの不均衡、ストレス、不規則的な食生活、身体具合の不良など、身体や精神状態から影響を受けるため、発生要因が複雑で、ニキビそれ自体は完治しても、ニキビができていたところに色素が沈着しシミになったり、表面が陥没し傷跡ができたりするという特徴がある。成人ニキビの原因として特に注目を浴びているホルモンは、皮脂腺を刺激して皮脂を分泌させる男性ホルモンと、その作用を抑制する女性ホルモンとのバランスが崩れると、皮脂が過多分泌されてニキビの原因となる。 今まで、ニキビを治療するために医薬分野では、エリスロマイシン、ベンゾイルペルオキシドなどの抗生剤を利用してニキビ菌を抑制するか、女性ホルモンであるエストロゲンを利用した皮脂調節治療を行ってきたが、副作用を伴っている実情であり、化粧品分野では、ビタミンA誘導体を利用した皮膚角質除去及びトリクロ酸、サリチル酸などがニキビ菌抑制目的として使用されてきたが、このような薬剤らは、ある程度の効果を奏する反面、ほとんどが皮膚発赤、皮膚過敏反応または光過敏反応などの副作用及び再発を頻繁に起こしてしまうという問題点を有しており、ニキビを真に予防及び治療できる製品はないというのが今の実情である。 本発明者らは、ニキビの治癒及び予防に効果がある皮膚外用剤を開発するために、東洋医薬に係わる多数の文献情報に基き、ニキビ治療機作(抗菌作用、皮脂分泌抑制作用、角質剥離作用、抗炎作用など)に効果があると予想される生薬の中で、低刺激性で且つニキビ予防及び治療機作に効果がある刀豆、柏子仁、黄連がニキビ予防及び治療の原料として可能性があることを見出し、本発明を完成した。 従って、本発明は、刀豆、柏子仁、黄連抽出物を含有することを特徴とする、ニキビ予防及び治癒に効果のある皮膚外用剤を提供することにその目的がある。 また、本発明の他の目的は、低刺激性で且つニキビの予防及び治癒に効果のある生薬組成物を提供することにある。 本発明は、刀豆、柏子仁、黄連からなる群から選ばれた抽出物を1種または2種以上含有するニキビ予防及び治療用皮膚外用剤組成物をその特徴とする。 上述したように、本発明による刀豆、柏子仁、黄連抽出物を含有する皮膚外用剤組成物は、5α還元酵素の活性抑制効果、プロピオニバクテリウム・アクネスに対する抗菌作用、抗炎効果、面疱形成抑制及び角質剥離効果に優れており、ニキビ予防及び治療に非常に有用である。 以下、本発明をさらに詳細に説明する。 本発明は、ニキビの症状を起こす主な原因菌であるプロピオニバクテリウム・アクネスに対する抗菌作用、5α還元酵素(5α−Reductase)阻害による皮脂過剰生成抑制、面疱形成抑制及び角質剥離作用、抗炎作用を示し、ニキビの予防及び治療に効果がある、刀豆、柏子仁、黄連抽出物またはこれらの混合物を含有する皮膚外用剤組成物に関するものである。 刀豆は、1年生マメ科植物であって、豆がらが刀に似ているため刀豆といい、韓国の中部以南と中国の揚子江流域及び南方で栽培されている。この植物の根、殻も薬用として使用され、刀豆にはビタミンAとC及び加水分解酵素であるウレアーゼを始めとして、ヘマグルチニン、カナバニンなどが含有されており、昔から中国では高級料理及び漢方薬材に、寝汗によるしゃっくり、嘔吐、腹痛治療剤として使用されてきており、現在、民間療法では、蓄膿症、痔などの化膿性疾患に効果があることが知られている。 また、黄連は、キンポウゲ科多年生草本植物であって、その根、茎を薬材として使用するが、昔から漢方で使用してきた材料であって、皮膚及び粘膜に対する刺激のない安全な植物である。黄連は、ベルベリン、コプチシン、オーレニン、パルマチン、コルンバミンなどのアルカロイドを含有する外に、オーバクノン、オーバクラクトンを含有する。中国では昔から火傷治療、化膿性感染の治療、感染性皮膚炎治療、蓄膿症治療、口蓋面炎症治療、多形滲出性紅斑の治療、胃腸薬、止瀉整腸薬の原料として使用されてきた。 柏子仁は、ヒノキ科植物である側柏の種であって、外殼皮を除去した後、蒸かして天日に乾かしたものである。新鮮なものは、淡黄色あるいは黄白色であるが、長い時間置いておくと、黄褐色に変わり油が染み出る。主に中国の山東、雲南、河南、河北で採れるが、種子には、脂肪油が約14%含有されており、少量の精油、サポニンも含有されている。抗炎症薬、鎮静薬として、神経不安、止汗、便秘治療及び脱毛治療剤として使用されてきた。 刀豆、柏子仁及び黄連をそれぞれ粉末化して、精製水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセロール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、メチルアセテート、エチルアセテート、ベンゼン、ヘキサン、ジエチルエーテル及びジクロロメタンの中から選ばれた1種または2種以上の抽出溶媒に加熱抽出した後濾過し、減圧濃縮及び凍結乾燥して乾燥粉末を収得する。 刀豆、柏子仁及び黄連混合生薬抽出物は、前記刀豆、柏子仁及び黄連をそれぞれ粉末化して、これらの混合物を抽出して収得するか、前記刀豆、柏子仁及び黄連をそれぞれ粉末化して、それぞれの抽出物を収得してから混合する。 前記抽出物を混合して使用する時は、刀豆0.01〜10質量%と柏子仁0.01〜10質量%、または刀豆0.01〜10質量%と黄連0.001〜5質量%、または柏子仁0.01〜10質量%と黄連0.001〜5質量%からなる2種の生薬抽出物が含有されて、または、刀豆0.01〜10質量%、柏子仁0.01〜10質量%及び黄連0.001〜5質量%からなる3種の生薬抽出物が含有される。前記範囲を外れると、低い濃度では効能が微弱であり、高い濃度では、皮膚副作用及び剤形化の問題が生じる。 一方、前記皮膚外用剤組成物は、刀豆、柏子仁及び黄連の中から選ばれた1種または2種以上の抽出乾燥粉末を、全体組成物に対し0.001〜20.0質量%含有することが好ましい。0.001質量%未満である場合は、治療効果が微弱な問題点があり、20質量%を超過すると、剤形化の困難と皮膚副作用の問題が生じる。 一方、本発明による前記抽出物の外にも薬学的に許容可能な担体または賦形剤を加えて、軟膏剤、貼付剤などの医薬品と、エマルジョン、ゲル、パック、化粧水、石鹸などの化粧料の皮膚外用剤として使用することができ、これらの製造方法は公知の方法に従う。 前記抽出物で表示される有効成分の有効塗布量は、ニキビの形状、大きさ、部位、年齢により様々であるが、一般に一日2回または一日数回の範囲内で塗布される。 従って、本発明による刀豆、柏子仁、黄連またはこれらの混合抽出物を含有する皮膚外用剤組成物は、ニキビ予防及び治療に非常に有用である。 以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。実施例1:刀豆、柏子仁、黄連抽出物の製造 以下、本発明に使用された刀豆、柏子仁及び黄連抽出物の抽出方法を説明する。 まず、それぞれの生薬200gを精製水で洗浄、乾燥して生薬粉砕機で粉末化し、約10倍嵩量の80%エタノール溶媒を加えた。抽出方法としては、冷却コンデンサーが装置され溶媒の蒸発を防止した状態で、80℃で8時間加熱し抽出した後、400メッシュ濾過布で濾過し、残渣を同一の方法でもう1回抽出した。それぞれの生薬抽出液を常温に冷却してワットマン2番濾過紙で濾過した後、冷却コンデンサー付き蒸留装置(Buchi Rotavapor R-124, Water Bath B-480 Made in Switzerland, Eyela A-3S Tokyo rikakikai)を利用し48℃に維持して、蒸発して出る溶媒を回収しながら減圧濃縮して凍結乾燥させ、その乾燥質量として刀豆15.8g、柏子仁8.9g、黄連14.6gを得た。実施例2:5α還元酵素抑制力評価 生薬抽出物の5α還元酵素の活性抑制力をスクリーニングするために使用されたテストステロン5α還元酵素製造の全過程は、4℃以下で行った。本実験に使用された白ラットはスプラグドーリー系であって、8週齢の雌ラットをジエチルエーテルで呼吸麻酔し頚椎離脱で死亡させた後、解剖して肝を摘出し、PBS溶液で3回洗浄した後、3倍容量の氷で冷却させた緩衝溶液(50mMリン酸ナトリウム、pH6.8、0.25Mスクロース、1mMジチオスレイトール)を添加し、細胞破砕機(Polytron Homogenizer)で肝細胞を粉砕して均質化した後、懸濁液を調剤した。この懸濁液から5α還元酵素を分離するために懸濁液を超音波粉砕(Ultrasonication、5分)した後、有効タンパク質層を得るために遠心分離(15000rpm、4℃、5分)して、上清液を前記緩衝溶液に懸濁し−80℃で保管した。前記方法により得られたタンパク質懸濁液のタンパク質定量は、ブラッドフォード(Bradford)法により行われて、ELISAリーダーを使用し正確なたんぱく質量を決定した。 5α還元酵素の活性抑制効果を評価するために、反応溶液50μlに阻害物質のエタノール溶液あるいは試験物質(生薬抽出物70%エタノール溶液)10μlを添加した後、タンパク質懸濁液を加えて反応溶液を100μlにして、この際の反応溶液の条件は、50mMのNa2HPO4(pH6.8)、25mMのKCl、500mMのNADPH及び50mM(3H)のテストステロンであった。37℃の水浴上で10分間反応させた後、250μlの反応終結試薬(70%シクロヘキサン、30%エチルアセテート混合液)を加えて反応を終結させた。反応終結試薬に抽出されたステロイドを得るために遠心分離した後上清液を取り、フードで一日放置して反応溶媒を揮発させた後、残留物をクロロホルム20μlに溶かして、これをTLCプレート上にスポットし、TLCチャンバーで30分間展開溶媒(トルエン:アセトン=4:1)で展開させた後、展開されたプレートをハイパーフィルムに三日間感光させて、感光された面積を濃度計(Densitometer)で測定し、次の式1を利用しテストステロン5α還元酵素の活性抑制率を計算した。その結果を次の表2と表3に示した。5α還元酵素の活性抑制率(%)=[(A−B)/A]×100A:試験物質未添加時、テストステロンからジヒドロテストステロンへの転換率B:試験物質添加時、テストステロンからジヒドロテストステロンへの転換率 前記表2から分かるように、3種の抽出物(刀豆、柏子仁、黄連)が5α還元酵素の活性を抑制するということが確認された。また、3種の抽出物を2種以上適正比率で混合し70%エタノール溶液に溶解させて実験濃度(0.1、0.05、0.01%(w/v))別に5α還元酵素の活性抑制率を測定した結果、表3から分かるように、低い濃度でも5α還元酵素の活性を著しく抑制するとして評価され、生薬を単独使用した場合よりさらに強力な活性抑制効果を示した。これは、混合抽出物が適正比率で溶解されると、5α還元酵素の活性抑制率に対する相乗効果を奏するということを意味し、活性抑制力は、前記実験した抽出物の組成に限定されるものではない。実施例3:ニキビ菌に対する抗菌力評価 前記3種の抽出物(刀豆、柏子仁、黄連)の抗菌力実験は、液体培地で培養したニキビ菌に一定濃度の凍結乾燥粉末化した前記抽出物を加え、嫌気性培養槽で培養した後、ニキビ菌(Propionibacterium acnes)の発育を抑制する最小抑制濃度(MIC)を測定することにより行った。実験過程は次のとおりである。 ニキビ菌(Propionibacterium acnes)をレインフォーストクロストリジアル(reinforced clostridial)培地で三日間37℃で培養し、活力がよくなるまで継代培養を続けた。 第一、液体培養法は、レインフォーストクロストリジアル培地10mlをスクリューキャップチューブ(screw cap tube)に入れて、121℃で20分間滅菌した。滅菌が終わると、別に滅菌した液体パラフィン0.5mlを液体培地上に滴下し、酸素との接触を防ぐ。培地が冷めたら、菌を接種して37℃で、通常72時間以上培養した。 第二、固体培養法は、固体培地は、レインフォーストクロストリジアル(reinforced clostridial)培地にアガー1.0%を加え培地を製造して、スクリューキャップチューブに10mlを入れて、121℃で20分間滅菌した。培地が冷めたら、白金ループで菌を接種し、37℃で72時間穿刺培養した。 第三、プレート培養法は、固体培養培地と同一で、プレートに滅菌したアガー培地を注いだ後、冷ます。完全に冷めて固まったら、接種し嫌気性容器(anaerobic jar)に入れて、ガスパック(Gas-Pak)に10mlの水を入れた後、蓋をして、37℃で72時間培養した。 十分継代培養をしたプロピオニバクテリウム・アクネスの培養液1mlを取って、レインフォーストクロストリジアル(reinforced clostridial)培地9mlずつを入れた培地に接種して10倍希釈した。このように希釈し続けて10-1〜10-5まで希釈培養液を作った。凍結乾燥して作った刀豆、柏子仁、黄連及び2種以上の混合均質液を実験濃度別に10mlの70%エタノールによく溶かした後、2倍ずつ希釈して溶液を製造した。この溶液を0.2μm膜濾過器(membrane filter)を利用して除菌濾過した。レインフォーストクロストリジアルアガー培地を滅菌した後50℃に冷まして、除菌濾過した抽出物を最終濃度が10μg/ml〜0.1mg/mlになるようにそれぞれ添加し、よく混ぜた。前記希釈培養液(10-1〜10-5で継代培養したプロピオニバクテリウム・アクネス希釈培養液)を1mlずつ取ってペトリ皿に分株し、各濃度別アガー培地を分株してよく混ぜられるように振った後、静置してアガー培地を硬化した。培地が硬化したら、嫌気性容器に入れてガスパックを装置し、37℃で三日間培養した後、現れたコロニー数を測定して対照群と比較し抑制率を計算した。プロピオニバクテリウム・アクネスに対する抗菌率の結果を次の表4及び表5に示した。 ここで、−は、成長抑制、±は、偽陽性、+は陽性を示す。 前記表4のプロピオニバクテリウム・アクネスに対する抗菌力評価結果、各抽出物によってプロピオニバクテリウム・アクネスの最小抑制濃度(MIC)に若干の差はあったが、0.03%程度の低い濃度で殺菌力を示し始め、0.1%以上では、ニキビ菌が完全に殺菌されたことから、本発明の生薬抽出物が非常に低い濃度でもプロピオニバクテリウム・アクネスに対する優れた殺菌効果を有していることが確認できた。 表5から分かるように、刀豆、柏子仁、黄連抽出物の中で2種以上の抽出物を一定比率で混合使用して実験した時、単独使用時とほぼ等しいか、少し高い抗菌活性力を示した。特に、刀豆、柏子仁、黄連が一定比率で混合された抽出物の各濃度別抗菌活性率及び5α還元酵素阻害率が優秀であった。実施例4:過角質化抑制能の評価試験 皮膚を構成する全ての細胞は、適切な代謝過程を通じて、皮膚の恒常性を維持するために細胞の生成速度と剥離速度を一定に維持する。そのため、皮膚の再生速度は、角質層が剥離される速度を測定して間接的に知ることができ、また皮膚の角質剥離速度は、角質剥離による皮膚の変色程度を測定して剥離速度を測定する。 前記抽出物の有用性を評価するため、1次スクリーニングは、無毛マウスを利用して角質剥離促進効果有無試験を行った。各生薬抽出物のサンプルは、前記実施例1の製造方法により作られた乾燥粉末抽出物及び陽性対照群であるグリコール酸と乳酸とを70%エタノールに溶解して使用した。実験過程は次のとおりである。 無毛マウスの皮膚を10%SDSで30分間洗浄し、実験に必要な乾燥皮膚にした。次いで、10%酢酸銀水溶液0.4mlをヒルトップチャンバー(hill top chamber)で覆った後、30分間閉鎖貼付した後、写真現像液に5分間浸透させて酢酸銀貼付部位を黒化した。その上に各試験生薬を閉鎖貼付し、約24時間後除去した。薬剤付着前の着色度と除去24時間後の褪色度を測色計でそれぞれ測定した(褪色度が高いほど角質剥離促進効果が高い)。++:顕著な褪色、+:褪色、±:若干褪色、−:変化無し 2次角質剥離促進効果の定量試験は、1次スクリーニングで有効性のあった刀豆、柏子仁、黄連抽出物の2種以上の混合物を70%エタノール溶液に溶解させて評価したが、皮膚変色剤としてセルフタニング製品に使用されているジヒドロキシアセトンを着色剤として使用して、次のように実験を行った。 20代初めから30代半ばまでの男女20名を選定し、上腕内側を実験部位として選定し、着色前の皮膚の明度を測定した後、10%ジヒドロキシアセトン溶液0.4mlをヒルトップチャンバーを利用して着色させた。24時間経過後、着色部位を測色計で測定して、2種以上混合抽出物の乾燥粉末をそれぞれ0.05%、0.1%、0.2%の濃度とし70%エタノール溶液に溶解させて、0.4mlずつ1日2回30分間適用した後、測色計で毎日測定した。ジヒドロキシアセトン適用24時間後、測定された測色計値を100として、毎日脱色される値を%に換算して計算した。判定は、着色された部位が正常な色に戻る時間(日)で判定した。 過角質化抑制率(%)=[(対照群−試験群)/対照群]×100 前記表7に示したように、2種以上混合抽出物は、過角質化抑制効果が、0.2%乾燥粉末溶液では47.4〜52.6%程度であって、ジヒドロキシアセトンにより着色された皮膚を早い時間(日)内に正常皮膚に戻すということが分かる。このことから、一定濃度の単独生薬抽出物よりも2種以上混合抽出物の方が角質剥離効果に優れていることが分かり、特に、刀豆、柏子仁、黄連の3種混合抽出物が過角質化抑制効果に最も優れていることが分かる。実施例5:抗炎症効果1)スプラーグドーリーラットを利用したカラギーナン足浮腫(Carrageenan foot edema)法 実施例1により製造された刀豆、柏子仁、黄連及び2種以上混合抽出物をそれぞれ30mg/kgずつ腹腔に投与した後、1時間後0.1%カラギーナン溶液0.5mlを実験動物の足裏に注入して炎症を誘発させた。カラギーナン注入直後と注入4時間経過後のラット足の嵩の変化を測定して、次の式により抑制率(%)を算出し、その結果を表8に示した。抑制率(%)=[(1−△V処理群)/△V対照群]×100(△V:足の嵩の変化)2)マウスの耳浮腫試験 抽出物の抗炎症効果を調べるために、刺激誘発物質である塩化ベンザルコニウム5.0%、コロトンオイル2.5%、レチノイン酸3000iu/g(陰性対照群)を70%エタノール溶液に溶解させて、0.3mg/耳ずつマウスの耳(群当たり6匹)に塗布して浮腫を誘発した。浮腫誘発後15分、6時間後に生薬及び対照群試料(0.3mg/耳)をそれぞれ塗布した。最初刺激誘発物質の塗布24時間経過後、マウスの耳の一定部分をパンチで抉った後、耳の質量を測定して、浮腫程度をマイクロメーターで3回ずつ繰り返して測定し、3種の刺激物質に対し平均値を求めて抗炎症効果を評価し、その結果を表9に示した。抑制率(%)=[(A−B)/A]×100A:対照群耳の平均厚さ(陰性対照群を処理した耳の厚さ−非処理した耳の厚さ)B:試料群耳の厚さ(試料処理した耳の厚さ−非処理した耳の厚さ) 前記表8と表9の結果から分かるように、抽出物を処理した群は、陽性対照群として使用した甘草酸及びインドメタシンとほぼ同等な浮腫抑制効果を示した。特に、刀豆単独抽出物と刀豆、柏子仁、黄連混合抽出物とが浮腫抑制効果に優れており、陰性対照群溶液に比べ110〜200%程度の優れた浮腫抑制効果を示した。実施例6:白ウサギの耳を利用した面疱緩和効果試験系:ニキビ効能評価法として広く知られている方法を使用し、質量2〜3kgの4ヶ月齢前後のニュージーランド産雄白ウサギを入手して、1週間の馴化過程を経て、目視で健康な動物のみを選別し使用した。試験物質:試験群は、3種(刀豆、柏子仁、黄連)の0.1%(w/v)生薬抽出乾燥粉末及び2種以上混合生薬乾燥粉末0.1%を70%エタノール溶液に溶解して使用し、陽性対照群としては、アゼライン酸1.0%を溶かした70%エタノール溶液を、陰性対照群としては、70%エタノール溶液を使用した。試験系の区分:面疱誘発物質であるイソプロピルミリアテート(Isopropyl myriatate、シグマ試薬)を使用し、ウサギの両耳に2週間毎日塗布し面疱を形成させて、この中から目視で典型的な面疱が観察されるウサギのみを選別した後、各ウサギの面疱程度を考慮し各群当たり6匹になるように分類して試験した。IPM適用2週後、ウサギ耳の見掛け状態は、個体により若干の差はあったが、ほとんどが酷い程度の毛穴拡大及び面疱形成、酷い程度の外皮、毛穴の過角化及び痂皮形成、そして中等度以上の炎症発生が観察された。試料物質の投与方法:ウサギの右耳には試験群及び陽性対照群を、左耳には陰性対照群を、1日1回0.5mlずつ2週間毎日投与し、綿棒で軽く伸ばして塗る方法を使用して、2週後、両耳を比較して評価した。(目視観察)目視判定基準は、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3の7段階に区分して判定し、面疱の面積を比較して判定した。面疱治癒期間は、2週間進行して、試料物質を塗布しながら面疱の病変進行程度と面疱減少効果を目視判定し、その結果を表10に示した。 (目視判定の基準)0:対照群と違い無し0.1:0と1の中間程度の症状1:充血、毛細管出血、弱い毛穴角化症及び毛穴肥大症の観察1.5:1と2の中間程度の症状2:中等度の毛穴角化症及び毛穴肥大症2.5:2と3の中間程度の症状3:酷い毛穴角化症及び毛穴肥大症、典型的な面疱観察(画像分析観察) 目視評価実験が終了した後、各試験群をペントバルビタ-ルナトリウムで安楽死させ両耳を切りとった後、基底部の組織を約2.5×1.5cmの大きさで切り、微温湯(50℃)に3分間浸してから取り出し表皮のみを剥離した後、スライドガラスに裏面が上方になるようによく広げて載せた後、組織を固定し常温で乾燥した後、立体顕微鏡を使用し20倍率で観察して、画像分析器で組織の面疱数と面積を計算し単位面疱当たりの面積を評価して、その結果を表11に示した。 表11に示したように、陽性対照群であるアゼライン酸(40.0%)より面疱減少率(area/count ratio)が大きいとして確認された抽出物は、刀豆(46.7%)、黄連(43.3%)、2種以上混合抽出物であって、特に刀豆:柏子仁:黄連(70:20:10)が配合された抽出物は、陽性対照群に比べ1.6倍高い面疱減少効果を示した。本試験による面疱減少効果試験は、目視観察結果と画像分析結果とがほぼ等しいことが分かる。 以上のニキビ機作別試験結果をまとめてみると、本発明による生薬抽出物は、ニキビ発病の原因であるプロピオニバクテリウム・アクネスに対する抗菌効果、皮脂生成抑制効果、面疱溶解効果、過角化抑制効果、抗炎効果を有していながらも、皮膚に安全な生薬であることが証明された。実施例7:人体皮膚刺激試験 ニキビ予防及び治療に効果がある刀豆、柏子仁、黄連及び2種以上混合抽出物を含有したエマルジョン剤形に適用した場合の皮膚安全性を確認するために、人体皮膚刺激試験(人体貼布試験)を行った。20〜30代の健康な男女30名を対象に、フィンチャンバーに用意した試験物質(10%パッチベース)20μlを滴下した後、70%エタノールで洗浄、乾燥した後、試験部位の上腕内測部に載せて微小孔テープで固定した。24時間貼布して除去した後、油性ペンで試験部位を表示し、30分、24時間後に各試験部位の皮膚反応を観察して、次のように等級別に評価した。 次の表12において、平均反応度は、±は1点、+は2点、++は3点、+++は4点に定めて、判定基準は、1等級(無刺激範囲)は1未満、2等級(軽刺激範囲)は3未満、3等級(中刺激範囲)は5未満、4等級(強刺激範囲)は5以上を基準とした。前記表12に示したように、アクネエマルジョンベースは、安全範囲の刺激値を示して、刀豆(1等級)を除いた全ての生薬原料が試験処方で2等級以上の刺激を示した。しかし、黄連は、色素沈着のため低い濃度で試験した。実施例8及び比較例1:エマルジョンの製造 実施例6で面疱溶解及び減少効果に最も優れている刀豆、柏子仁、黄連(70:20:10)混合抽出物を利用し、次の表13の組成及び含量でエマルジョンを製造した。製造過程は次のとおりである。 油相原料(成分1〜5)を正確に称量し油相補助タンクに入れて75℃に加熱溶解した。水相原料(成分6〜9)を称量し乳化タンクに注入した後、成分10〜11の原料を称量し精製水に攪拌湿潤させた後乳化タンクに注入して、75℃に加熱溶解した。乳化タンクに油相原料を真空減圧下で注入した後、乳化器(homogenizer、3500rpm)とペダルミクサー(Pedal Mixer、25rpm)を使用し75℃で5分間乳化した後、成分12を入れて3分間分散し、成分13及び14を少量の精製水に溶解分散し乳化タンクに注入して中和した。真空脱泡した後冷却して50℃に至ると、香を添加し分散した後、35℃に冷却し作業終了して、熟成させてエマルジョンを製造した。実施例9及び比較例2:貼付剤の製造 成分1〜6の原料を称量し溶解タンクに入れて室温で均質攪拌して粘性液を作り、成分7〜10を室温溶解して溶解タンクに注入した後均質攪拌した。成分11〜13の原料を60℃に加温、溶解した後、溶解タンクに少量ずつ注入し貼付用ゲルを製造した。前記処方で製造された貼付用ゲルを、アプリケーターキャップ付き被覆機械を使用し、シリコン化された接着組成物層を有する横1m×縦1mのポリエステルフィルム上に700g/m2で一定に被覆して、非孔隙性ポリエチレンフィルムで積層した。多層の積層体の大きさを直径1.5cm2の円形パッチ状に切って、最終的に紙、低密度ポリエチレン、アルミニウムから構成されたポーチ積層フィルムに入れて、臨床用貼付剤を製造した。実施例10:エマルジョン及び貼付剤の臨床試験 実施例8及び比較例1(実験群15名、対照群15名)、実施例9及び比較例2(実験群15名、対照群15名)のニキビ緩和効果を調べるために、ニキビを有している10〜20代の健康な男女60名を被験者に選定し、エマルジョンは1日2回(朝、夜塗布)、貼付剤は1日1回(夜に付着し翌日の朝取り外す)、一ヶ月間ニキビ部位に塗布または付着して、ニキビ予防及び治療効果を評価した。判定方法は、実験前の被験者の皮膚状態、ニキビの状態により一定の等級を付けて写真撮影をして、エマルジョン及び貼付剤の使用一ヶ月後、ニキビ予防及び治療程度を写真撮影及び目視観察により判定した。その判定基準は表15に示した。 前記表15の判定基準で、被験者のニキビに対する等級が3等級以上の減少を示すと効果優秀、1〜2の減少効果を示すと効果中間、減少がないと効果無し、試験前の等級より試験後の等級が高いと悪化、として判定し、判定基準に従い、本発明のエマルジョン及び貼付剤を使用してニキビ予防及び治療効果に対し臨床試験した結果を表16に示した。 前記表16の結果をまとめてみると、本発明の刀豆、柏子仁、黄連抽出物を含有したエマルジョン及び貼付剤は、これらを含有していないエマルジョン及び貼付剤に比べ、優れたニキビ予防及び治療効果を示した。実施例11:毒性試験 刀豆、柏子仁、黄連抽出物に対し毒性実験を次のように行った。前記抽出物をジメチルスルホキシドに溶解して水で希釈した後、これをマウス(群当たり10匹)にそれぞれ100mg/kgずつ投与した後、7日間観察したが、死亡したマウスはいなかった。 有効成分が、(a)刀豆抽出物、(b)柏子仁抽出物、又は(c)刀豆、柏子仁及び黄連の中から選ばれた2種または3種の生薬抽出物からなるニキビ予防及び治療用皮膚外用剤組成物。 生薬抽出物が0.001〜20.0質量%含有されていることを特徴とする、請求項1に記載のニキビ予防及び治療用皮膚外用剤組成物。 刀豆0.01〜10質量%と柏子仁0.01〜10質量%、または刀豆0.01〜10質量%と黄連0.001〜5質量%、または柏子仁0.01〜10質量%と黄連0.001〜5質量%からなる2種の生薬抽出物が含有されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のニキビ予防及び治療用皮膚外用剤組成物。 刀豆0.01〜10質量%、柏子仁0.01〜10質量%及び黄連0.001〜5質量%からなる3種の生薬抽出物が含有されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のニキビ予防及び治療用皮膚外用剤組成物。 刀豆、柏子仁及び黄連をそれぞれ粉末化して、精製水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセロール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、メチルアセテート、エチルアセテート、ベンゼン、ヘキサン、ジエチルエーテル及びジクロロメタンの中から選ばれた1種または2種以上の抽出溶媒で加熱抽出した後濾過し、減圧濃縮及び凍結乾燥して収得したものであることを特徴とする、請求項1に記載のニキビ予防及び治療用皮膚外用剤組成物。 刀豆、柏子仁及び黄連をそれぞれ粉末化して、これらの混合物を抽出して収得するか、前記刀豆、柏子仁及び黄連をそれぞれ粉末化して、それぞれの抽出物を収得した後混合することを特徴とする、請求項5に記載のニキビ予防及び治療用皮膚外用剤組成物。 エマルジョン、ゲル、パック、化粧水、石鹸などの化粧品、または軟膏剤、貼付剤などの医薬品に適用されることを特徴とする、請求項1に記載のニキビ予防及び治療用皮膚外用剤組成物。