タイトル: | 特許公報(B2)_タウロリジンを伴う腹膜透析溶液 |
出願番号: | 2004508814 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A61K 31/549,A61K 47/00,A61P 7/08,A61P 31/04,A61M 1/28,C07D 285/18 |
ポラシェッグ、ハンス−ディートリッヒ JP 4874543 特許公報(B2) 20111202 2004508814 20030529 タウロリジンを伴う腹膜透析溶液 エヌディー・パートナーズ、エルエルシー 504438794 河野 哲 100091351 中村 誠 100088683 蔵田 昌俊 100108855 峰 隆司 100075672 福原 淑弘 100109830 村松 貞男 100084618 橋本 良郎 ポラシェッグ、ハンス−ディートリッヒ US 10/160,529 20020531 20120215 A61K 31/549 20060101AFI20120126BHJP A61K 47/00 20060101ALI20120126BHJP A61P 7/08 20060101ALI20120126BHJP A61P 31/04 20060101ALI20120126BHJP A61M 1/28 20060101ALI20120126BHJP C07D 285/18 20060101ALN20120126BHJP JPA61K31/549A61K47/00A61P7/08A61P31/04A61M1/28C07D285/18 A61K 31/549 A61K 47/00 A61M 1/28 A61M 1/14 A61P 7/08 A61P 31/04 C07D 285/18 CAplus(STN) REGISTRY(STN) JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特表2001−507019(JP,A) 特開平02−042021(JP,A) 特開2000−080033(JP,A) 特表2001−523212(JP,A) 特開平10−005342(JP,A) 特表平10−503698(JP,A) 国際公開第00/001391(WO,A1) Klaus Sodemann,Two Years' Experience with Dialock and CLSTM(A New Antimicrobial Lock Solution),Blood Purification,2001年,19(2),p.251-254 12 US2003017006 20030529 WO2003101457 20031211 2005534645 20051117 9 20060523 磯部 洋一郎発明の分野 本発明は、一般には透析、即ち、人工的手段による血液の精製に使用される溶液に関する。より詳細に言えば、本発明は、連続的な移動式腹膜透析のプロセスに使用される水ベースの化学的溶液に関し、更に、その中で使用するための抗菌剤組成物に関する。発明の背景 透析は、通常は腎臓によって行われる血液精製機能を達成するための医学的療法である。透析は、慢性および急性の腎不全、または腎疾患もしくは傷害に伴う障害の場合、または腎臓手術または移植の際に最も一般的に使用される。 透析の際に、異化物(即ち、血液により運ばれる代謝老廃物)が過剰に負荷された患者の血液は人工透析溶液に接触させられる。(ここでは「透析溶液」「透析液」および「透析物」の用語が互換的に使用され、これらは同じ意味を有する)。血液および透析溶液は、人工または天然の半透膜によって相互に分離される。透析液は、等張になるように、また血液に運ばれる異化物が拡散によって血液から透析溶液へと前記膜を通過し、それにより異化物の血液濃度が低下するように処方される。透析の他の重要な機能は、身体から過剰な水を除去することである。 透析の効率は、少なくとも透析液の容積、透析溶液の交換数、および交換の間の時間の長さ(または、連続システムでは流速)、膜の表面積、膜の孔径、毒素の拡散速度、および患者の変数に直接関係する。 血液透析は、患者の血液を一時的に患者の身体から抜き取り、膜および透析液ならびにポンプおよび温度制御を含む機械を通して分流させる特殊なタイプの透析である。血液は患者の身体から抜き取られ、次いで上記機械を通して循環され、そこで上記膜の表面に露出される。異化物は前記膜を通過して外部へと移行し、機械的濾過によって水が除去される。次いで、処理された血液が患者の身体へと戻される。水は、一般的には膜を横切る水圧によって除去される。 血液透析の代替法は、患者の腹腔をライニングする生きた組織膜を利用した腹膜透析(PD)であり、腹腔は、内臓を含んだ横隔膜下に位置する腹部内腔の一部である。腹膜透析と血液透析との間の原理的相違は、血液透析機の人工的に設けられた半透膜を、腹腔内に豊富に存在する天然の半透性キャピラリーベッド膜で置換えることである。 PDにおいて、透析溶液は、腹部ポートまたはカテーテルによって患者の腹腔の中に導入される。この透析溶液は、数時間から一晩の間、患者の腹腔の内部に残され、次いで除去される。PDの際に、腹膜に最も近接して流れる患者の血液の一部が血液浄化透析プロセスを受ける。即ち、異化物は、患者の腹膜を横切って、血液から透析溶液へと移動する。腹腔内の血管外空間を等張透析溶液で溢れさせることによって、血液からの毒素の交換が生じて、透析が達成される。 連続移動式PDの概念は、1976年に、PopovichおよびMoncriefによって米国に導入された。これらの著者は、患者が透析溶液を含むポリ塩化ビニルのような軟質材料製バッグを持ち運ぶ、連続移動式腹膜透析(CAPD)のための方法を明らかにした。この透析溶液の容器は、軟質バッグからチューブを介して患者の腹腔の中に連結される。 今日のPDの実務においては、ポートまたはカテーテルが、身体の外表面を横断するように患者の腹部内に配置される。このポートまたはカテーテルは、新鮮な透析溶液が患者の腹腔内に導入されることを可能にし、また該溶液が無効または使用済みになったら、即ち、患者の血液から除去された異化物の前記透析溶液中における濃度が、当該溶液が患者の血液から追加の代謝物を除去する上でもはや無効であるような濃度に達したときに、患者の腹腔から排出されることを可能にする。 典型的には、PDシステムは、患者から突出したカテーテルの末端に結合された廃液ラインおよび新鮮液透析ラインが存在するように構成される。更に、新鮮透析液ラインとカテーテルの間、排液ラインとカテーテルの間、および新鮮透析ラインと排液ラインの間の接続は全て、必要に応じて開放および閉鎖することができる。これは、腹腔に透析溶液を充填し、また排出するための種々の技術を可能にする。 PDは、患者が正常な日常活動を奪われることなく、日常活動を行いながら治療を受けることを可能にする点で、血液透析とは異なる利点を有している。移動意識の連続的腹膜透析は、正常には、略24時間当たり4回の交換で行われる。 水除去に関していえば、PDにおいては、腹膜を横切る圧力勾配を形成して患者の血液から水を除去することは不可能である。従って、PDにおいては、浸透圧限外濾過が、水を血液から透析液へと抽出するための機構である。水の除去は、略正常な血液電解質濃度をもち、且つ好ましい低い拡散速度の追加の物質を含有する透析液を提供することによって達成される。水は、浸透圧物質が腹腔から血液へと拡散するよりも迅速に腹腔へと拡散するので、正味の水除去が達成される。最も普通に使用されるこの物質はグルコースであり、これは血液中に拡散して数時間以内に平衡を達成する。グルコースは迅速に代謝されるので、通常は追加のグルコース負荷が許容可能である。 PDの際の浸透圧限外濾過は、血液から透析液へと水が流れる方の腹膜側に初期の高い溶質濃度を維持する方法として、例えば大量のグルコースを透析溶液に添加することによって達成される。グルコースはまた、透析溶液から患者の血液への水の逆流を防止する。別の浸透圧物質は、アミノ酸、グリセロール、または吸収性に乏しい未だ研究中の炭水化物ポリマーである。 PDにおいて生じやすい主な合併症は、腹膜炎、即ち、腹膜ライニングまたは腹腔内での感染症である。感染の主な経路は、カテーテル連結部である。この理由で、連結プロセスの際に流路内部ルーメンの感染を回避するために、多くの開発がなされている。連結後の細菌感染を低減するために、UV光および熱が使用されている。通常のコネクタは、皮膚接触による汚染の生じ易さを低減する特別のものに置換えられてきた。また、汚染の可能性を低下させる方法、例えば、使用済みの透析液を除去する前に、最初に新鮮な透析液をフラッシュして排出する方法が開発されている。 それを通して透析溶液が腹腔に導入され、かつ腹腔から回収される埋設されたポートまたはカテーテルはまた、腹膜炎を発生させる原因になる可能性がある。このようなポートおよびカテーテルは、完全に身体の無菌領域内に配置されるわけではなく、また完全に身体の外に配置されるわけでもない。即ち、透析に使用されるポートおよび/またはカテーテルは、身体の外表面を横切ることによって、無菌の身体内領域を外界の病原体に露出させる。 加えて、透析溶液内に含まれる物質、特に上記で述べたグルコース、デキストロース、アミノ酸、およびグリセロールは、細菌の増殖を助ける。従って、透析溶液が滅菌されていても、当該溶液の成分は、細菌増殖のための理想的な培地として働くことができる。 更に、腹膜透析ポートまたはカテーテルは、埋設された装置に最も隣接した身体組織が、埋設装置の周囲に組織ポケットまたはカプセルを形成するように誘発させる。当該カプセルは、身体の大きなシステムから外来オブジェクトを単離するための身体の道である。典型的には、このような組織ポケットまたはカプセルの壁は、略1ミリメータ以下の厚さを有している。組織ポケットまたはカプセル内の細菌感染は、埋設プロセスの際に生じる可能性がある。前記カプセル内に住み着いた細菌は、その後に腹腔内に移動して腹膜炎を生じさせる可能性がある。 患者に透析ポートを埋設した後に、皮膚を貫通する針穿刺によって皮膚を通してポートに持ち込まれる皮膚細菌から、感染が生じる可能性がある。当該装置の外表面とこれに対向する組織表面との間の空間に入り込んだ細菌は、次いで、前記ポートの外表面に付着して、バイオフィルムと称される層もしくは膜形状のコロニーにまで増殖する。最初は装置の周囲に形成されたポケット内に位置するが、このようなコロニーは長時間に亘って症状を起こさず、または感染症として表れない。しかし、バイオフィルムコロニーからの細菌は、ポケット膜を脱落させてこれを通過し、それによって感染が全身および/または腹腔内に表れるであろう。このような感染は、局部的膨潤、膿汁の形成、局部的炎症および痛み等によって示される局部的な組織感染になることがあり、また、全身的な血液感染へと導く可能性がある。このような感染は重篤であり、もし治療しなければ病的状態を導き、屡々死に至る。 皮下ポートの構築における改良にもかかわらず、感染の問題は、医療実務におけるそれらの完全な有用性を妨げている。このような感染は治療が困難であり、ポートまたは他の装置の除去を必要とすることが多く、それによって患者に追加の外傷を負わせ、また感染を一掃して、除去されたインプラントをもう一つの装置で置換えるときには、当該装置の利益を受けられないままになる。更に、抗生物質を頻繁に投与しなければならないことは費用が嵩み、また繰り返し感染に罹患する患者は抗生物質に対して耐性の細菌株を生み出すことが多い。このような感染は、患者にとって、生命を維持する腎置換療法へのアクセスを失うジレンマを生じる。 従って、本発明の目的は、透析溶液についての消毒および感染予防方法を提供することである。本発明の更なる目的は、腹膜透析に関連して使用される埋設された装置およびカテーテルの消毒または感染予防の手段を提供することである。本発明の更なる目的は、腹膜透析溶液内において細菌の薬物耐性株を発生させない非抗生物質系の抗菌物質を使用するためのシステムを提供することである。発明の概要 本発明は、腹膜透析における微生物感染の予防および治療のための組成物および方法であって、約0.2%〜約4%のタウロリジンを含有する液体水溶液を含んでなるものである。該タウロリジンは、腹部内および/または埋設された透析ポートの近傍において、感染の発生を予防または減少させることを意図したものである。一つの実施形態において、タウロリジン溶液は、腹膜透析のためのカテーテルおよび付属チューブをロックまたはフラッシュするために使用される。もう一つの実施形態において、タウロリジンは腹膜透析溶液自身に添加される。好ましい実施形態の説明 本発明は、抗菌剤化合物であるタウロリジン、および幾つかの実施形態においてはタウロリジンのアジュバントを、水ベースのカテーテルフラッシュ溶液およびPD溶液自身に組込むことを想定している。タウロリジンは、腹部内および/または埋設された透析ポートの近傍における感染の発生を予防または低減することを意図している。 タウロリジンは、凝固防止特性を備えた非抗生物質系の抗菌剤(即ち、殺菌剤および殺真菌剤)である。これは、ヨーロッパでは1970年代から、防腐剤溶液として、また耐性骨感染に対する抗菌剤としてゲルおよび粉末形態で医療的に使用されている。タウロリジンは抗生物質とは異なる方法で作用するものであり、その殺菌効果によって細菌耐性を誘導したことはない。更に詳細に言えば、タウロリジンはバクテリア細胞壁のリポポリサッカライド、並びに細菌性エンドトキシンおよびエキソトキシンのポリペプチドと反応して細菌を殺し、毒素を不活性化する。タウロリジンは、通常の意味における抗生物質ではなく、防腐剤でもない。インビトロでのタウロリジンの殺菌時間は15〜30分であるのに対して、フランス標準(AFNOR)に従えば、防腐剤の定義は5分未満である。従って、タウロリジンは実際の防腐剤ではなく、局部的および全身的に適用される抗菌性化学療法剤のグループに属する(Burri, C., p.2,「タウロリジンを用いた感染の局部治療」, in Aktuel. Prob. Chir. Orthop. 34:60-66, 1989)。 タウロリジンの化学名は、ビス-(,1-ジオキソペルヒドロ-1,2,4-チアビアジニル-4)メタンである。この物質は、アミノスルホン酸タウリン(アカタウリンアミド(akataurineamide))の誘導体である。 タウロリジンの抗菌活性の様式は正確には知られておらず、むしろ情報に基づく推論である。単純な水溶液において、タウロリジンは、タウルルタム(taurultam)およびメチロール供与種との平行状態で存在する。現在の多数意見は、タウロリジンが、インビボにおいて、平行状態にあるタウルルタムおよびメチロールタウルルタムへと加水分解することを示唆する。一つの活性のN-メチロール(ヒドロキシメチル)基がメチロールタルルタムから放出される際に、タルルタムは更に、メチロールタウリンアミンを経由してタウリンへと加水分解される。従って、細菌または真菌細胞成分との反応に続いて、タウロリジン1分子当たり三つの活性なN-メチロール基が放出される。これらのメチロール基は、細菌の細胞成分に対する高い親和性を有しており、これに選択的かつ不可逆的に結合して、それらの殺菌効果を働かせる。この独特の作用機構のために、該作用機構をもたない標準的な抗菌剤との交差耐性を疑う理由は存在しない。 古典的標準によれば、細菌種に対するタウロリジンの活性は適度のものであるが、タウロリジンは広い安全性プロファイルを有し、高投与量を静脈注射で与えることができる。以下の因子は、本発明においてPD溶液中にタウロリジンを組込む際の考慮要件である。 ・抗付着性 ・好気性および嫌気性の細菌および真菌に対する殺菌性 ・内毒素を中和すること ・低コスト ・耐性細菌株を誘導しないこと Blenkharn, J. I.,「タウロリジンの抗菌活性:非経腸的栄養溶液ための可能な添加剤」, Clinical Nutrition Solution (1987) 6:35-38は、タウロリン(Taurolin;タウロリジン)の抗菌特性および関連特性を簡単に検討し、それを局部投与、腹腔内投与および静脈内投与のための独特の物質として記載している。また、過去において、タウロリジンは腹腔洗浄液として首尾良く使用されてきている。Baker, D. M., Jones, J. A., Nguyen-Van-Tam, J. S., Lloyd, J. H., Morris, D. L., Bourke, J. B., Steele, R. J., and Hardcastle, J. D.,「選択的な結腸直腸手術後の感染に対する予防としてのタウロリジン腹腔洗浄液」, Br. J. Surg. (1994)81(7): 1054-1056。それはグラム陽性菌およびグラム陰性菌、好気性菌、並びに通性および偏性嫌気性菌に対する非常に広い抗菌作用スペクトルを有している。また、それは殆どの酵母および糸状菌(filamentous fungi)に対しても有効である。耐性は、インビボまたはインビトロの何れにおいても観察されなかった。タウロリジンの抗菌効果は、インビトロではインビボよりも低いことが知られている。 タウロリジンの最も興味ある性質の一つは、宿主細胞表面に細菌が付着するのを妨げて、多くの感染プロセスの病原性におけるキー経路をブロックする能力である。タウロリジンのもう一つの重要な性質は、インビボおよびインビトロにおける顕著な抗内毒素活性である。従って、タウロリジンは感染の予防や、生命を脅かす敗血症および内毒素ショックをもった非常に状態の悪い患者の治療において、確認された役割を有している。タウロリジンは、0.5〜1.5 mL/minの速度で、腹腔液のリンパ吸収によって腹腔から血液へと輸送される。 <ラクテート、ビカルボネート、および酸/塩基バランス> PD溶液のビカルボネート含量は、血症中でのその濃度には必ずしも対応しない。身体において、血中重炭酸ナトリウムはバッファーとして作用し、血液のpHを約7.4の望ましいレベルに維持する。不溶性の沈殿形成のような、ビカルボネートを含有する透析溶液の調製および保存に関与する問題のために、透析溶液は、ビカルボネートを生成する化合物として、ラクテートを含有している。典型的なPD溶液のラクテートレベルは、35〜40 mEq/Lである。吸収されたラクテートの肝臓および他の臓器における代謝は、ビカルボネートの生成をもたらす。通常、身体の中にはL-ラクテートだけが存在する。しかし、腹膜透析に使用されるラクテートはラセミ体のDL形態であり、これは両者共にビカルボネートを生成するように働くことができるからである。クエン酸、乳酸または他の生物学的に許容可能な酸を使用して、タウロリジン溶液のpHを低下させ、それによってタウロリジンの溶解度および有効性を増大させると共に、抗凝固活性を与えることができる。タウロリジン溶液のための効果的なpHは約4〜約7であり、約5.5〜6.5が好ましい。 <タウロリジンの濃度> 本発明は、約0.2%〜約4%のタウロリジンをPD溶液に添加することを想定している。約0.2%未満の濃度は有効ではなく、また約4%を超える濃度は痛みを生じる可能性がある。約0.2%〜約2%の濃度が好ましい。タウロリジンは、腹部内および/または埋設透析ポートの近傍における感染の発生を予防または低減することを目的としている。クエン酸およびポリビニルピロリドン(PVP)のような化合物を使用して、約2%を超えるタウロリジン濃度において、不溶性粒子の形成を防止することができる。 腹膜透析液と組合せてタウロリジンの抗菌特性を使用するための一つの方法は、それをPD溶液自身の中に溶解することである。タウロリジンは、非常に多量でも患者に対して無毒であり、ヨーロッパでは数年に亘って腹腔洗浄液として使用されている。この方法に関連するのは、約0.5%〜約2%の濃度のタウロリジンを含有し、クエン酸および乳酸からなる群から選択されるような生物学的に許容可能な酸の追加の成分を含んだ、本発明の腹膜透析溶液である。 図1は、腹膜透析装備に使用される液体ライン、および透析溶液貯蔵器の典型的な構成を、概略的なフォーマットで示している。図1はここでは、感染および/または敗血症の防止において、タウロリジンおよびタウロリジン溶液の抗菌特性を使用するために想定される幾つかの方法についての、以下での説明を補うために使用される。より詳細に言えば、図1は、タウロリジンの溶液を保持する液体バッグまたは容器20を示している。このバッグ20は、流れ制御弁18を有する液体搬送ライン16によって連結体8に接続されており、該連結体はカテーテル10と連通しており、また該カテーテルは患者の腹腔に隣接した患者の腹部14の一部に配置され、またはこれに隣接して配置されたポート12と連通している。(注:参照番号14は腹部の表面、並びにその下にある腹腔を同等に意味するものである)。連結体8は、バルブ24を有する供給ライン22をも収容しており、該供給ラインは新鮮な腹膜透析溶液を保持する容器26と連通している。バルブ30を有する第三の液体ライン28は、連結体8と消費済みまたは使用済みの透析溶液を保持する容器32との間に連通している。加えて、連結体8は、カテーテル10および腹腔14の中への液体流、およびこれらカテーテル10および腹腔10からの液体流を制御できるカテーテル遮断バルブ9を有している。バルブ18および24は、夫々の容器20,26の中への意図しない液体の逆流を防止するためのチェックバルブを含んでいてもよい。 図1に概略的に示した腹膜透析設備は説明のためだけのものであり、特定の構成を表すことを意図したものではない。即ち、同様の動作目的を有する別の構成が想定される。例えば、タウロリジンを腹膜透析における抗菌剤として使用するための下記の第一の方法においては、容器20および付属のライン16およびバルブ18は想定されていない。 図1に示したような設備内でタウロリジンを使用する方法の以下の例示において、溶液中のタウロリジンの濃度は約0.2%〜約2%である。そのpHは約4〜約7、好ましくは約5.5〜6.5である。このpHは、乳酸およびクエン酸からなる群から選択される生物学的に許容可能な酸の添加によって調節される。 タウロリジン溶液をカテーテル10の中に輸送するための第一の方法では、処方された量の腹膜透析液を、新鮮な透析バッグ26から、ライン22に対して直列または並列に配置されたタウロリジン粉末を収容したカートリッジ(図示せず)を通して、適切な流れ制御バルブに沿って通過させる。次いで、タウロリジンが溶解された透析溶液はカテーテル10に運ばれ、そこで或る時間だけ存在させられる。その時間は、カテーテルの中を流す前の少なくとも1分から、カテーテルの中の流れの間の全体の時間である。 本発明のもう一つの方法は、カテーテルまたはポートに腹膜透析液を最充填する前に、先ずカテーテル10またはポート12を上記濃度のタウロリジン溶液で少なくとも1分間満たすことである。 もう一つの方法は、先ず、適切なバルブを調節して、全ての使用済み腹膜透析液を腹腔14から収容容器32の中に流した後、夫々のバルブ18,24および30を調節して、新鮮透析ライン22および排液ラインまたは使用済み透析液ライン28の両方を、容器26からの新鮮な透析溶液でフラッシュする。次に、バルブ24および遮断バルブ18を閉じながらバルブ18を開き、容器26からのタウロリジン溶液で排液ライン28をフラッシュさせる。次いで、バルブ30を閉じると共にカテーテル遮断バルブ9およびバルブ18を開いて、容器20からの処方された量のタウロリジン溶液がカテーテル10に充填され、該溶液は、使用済み溶液32の中に排出される前に少なくとも1分間そこに保持される。最後に、バルブ18を閉じてバルブ24を開くことにより、新鮮な透析溶液を腹腔14の中に流入させる。 タウロリジン溶液でフラッシュするための更なる方法は、腹腔14に新鮮な透析溶液を充填した後、カテーテル10をフラッシュすることである。この方法は、先ず、腹腔に新鮮な腹膜透析液を充填し、次いでバルブ24を閉じることを含んでいる。次に、弁を調節して新鮮な透析溶液を廃液容器32の中に流し、それによってラインをフラッシュする。次いで弁18を開き、新鮮透析ライン16および排液ライン28の両者をタウロリジン溶液でフラッシュする。最後に、カテーテル10を処方された量のタウロリジン溶液で満たす。図1は、タウロリジン溶液を透析カテーテルの中に導入するための典型的な水圧式構成を示している。 腹膜透析のためのシステムであって: 液体デリバリーラインによって腹膜透析溶液の容器に接続され、次いで患者の腹部に接続されるカテーテルと; タウロリジン粉末を含有するカートリッジであって、該カートリッジは、前記容器からの腹膜透析溶液が該カートリッジを通過して、前記タウロリジンと共に前記カテーテルの中に搬送され得るように、前記液体デリバリーラインに接続されるカートリッジを具備してなるシステム。 請求項1に記載のシステムであって、前記カートリッジが前記液体デリバリーラインと直列に接続されるシステム。 請求項1に記載のシステムであって、前記カートリッジが、流れ制御弁によってもう一つの前記液体デリバリーラインと並列に接続されるシステム。 請求項1、2または3に記載のシステムであって、更に、廃液ラインによって前記カテーテルに接続された、消費済みまたは使用済みの透析溶液を保持する容器を備えてなるシステム。 請求項4に記載のシステムであって、更に、前記カテーテル、前記液体デリバリーラインおよび前記廃液ラインと連通する連結体を備えてなるシステム。 請求項5に記載のシステムであって、前記連結体が、前記カテーテルの中への流れおよび該カテーテルから外への流れを制御できるカテーテル遮断バルブを有するシステム。 液体デリバリーラインによって腹膜透析溶液の容器に接続される、腹膜透析に関連して使用されるカテーテルを消毒する方法であって: a.前記腹膜透析溶液の容器を前記カテーテルに接続している前記液体デリバリーラインの中に、タウロリジン粉末を含んだカートリッジを挿入する工程と; b.前記タウロリジンを伴った透析溶液を前記カテーテルの中に搬送する工程を具備してなる方法。 請求項7に記載の方法であって、前記タウロリジンを伴う透析溶液中のタウロリジンが、0.2%〜4%の濃度を有する方法。 請求項7または8に記載の方法であって、前記タウロリジンを伴う透析溶液が、更に、前記溶液のpHを4〜7の範囲にするために十分な量の生物学的に許容可能な酸を含有する方法。 請求項9に記載の方法であって、前記タウロリジンを伴う透析溶液のpHが5.5にされる方法。 請求項9または10に記載の方法であって、前記生物学的に許容可能な酸が、乳酸およびクエン酸からなる群から選択される方法。 請求項7〜11の何れか1項に記載の方法であって、前記タウロリジンを伴う透析溶液が、少なくとも1分の特定の時間だけ前記カテーテルのルーメン内に残される方法。