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タイトル:特許公報(B2)_ヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの免疫学的測定法および測定用キット
出願番号:2004372163
年次:2010
IPC分類:G01N 33/53,C07K 7/06,G01N 33/543,G01N 33/58,G01N 33/574


特許情報キャッシュ

岡崎 勲 林 利彦 松山 重雄 今村 保忠 JP 4481160 特許公報(B2) 20100326 2004372163 20041222 ヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの免疫学的測定法および測定用キット 学校法人東海大学 000125369 林 利彦 504471300 松山 重雄 504471735 今村 保忠 504471746 牧村 浩次 100103218 鈴木 亨 100110917 八本 佳子 100115392 辻野 利永子 100118142 岡崎 勲 林 利彦 松山 重雄 今村 保忠 20100616 G01N 33/53 20060101AFI20100527BHJP C07K 7/06 20060101ALI20100527BHJP G01N 33/543 20060101ALI20100527BHJP G01N 33/58 20060101ALI20100527BHJP G01N 33/574 20060101ALN20100527BHJP JPG01N33/53 DC07K7/06G01N33/543 545ZG01N33/58 ZG01N33/574 Z G01N 33/48−33/98 CA/REGISTRY(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特表2000−500022(JP,A) 特開2003−156487(JP,A) 特開2001−153868(JP,A) 特開2003−202338(JP,A) 特表2004−501349(JP,A) 特開平11−248634(JP,A) 特開2002−131232(JP,A) 7 2006177811 20060706 15 20071221 白形 由美子 本発明は、3−ヒドロキシプロリン残基含有ペプチドを特異的に認識するペプチド抗体を用いたヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの免疫学的測定法、ならびにこれに好適に用いられる測定用キットに関する。 さらに、本発明は、3−ヒドロキシプロリン残基含有ペプチドを特異的に認識するペプチド抗体を産生させるためのペプチド抗原にも関する。 従来、健康人を対象としたがん検診は、胃癌検診、肺癌検診、肝臓癌検診、大腸癌検診、膵臓癌検診、また男性であれば前立腺癌検診、女性であれば乳癌検診、子宮癌検診など臓器毎に行われている。男性の場合、これら主要な臓器による癌死亡を合計してもせいぜい65%であり、女性では乳癌・子宮癌を入れても68%にすぎない。つまり、各論のがん検診を全て受けたとしても30〜40%は血液癌、脳神経系癌、骨癌など様々な癌で死亡することになる。さらにそれぞれの臓器癌についての予防方法の研究およびその成果が広報され、ますます特定の臓器癌に偏らず、癌が発生する臓器は多様化する。従って、これからの健康人を対象とするがん検診は、生活習慣の変化や医学的知識の普及、社会経済的配慮、費用便益効果などの面から考えると、個々の臓器癌に対する検査・診断を目的とした試験・測定方法ではなく、臓器を特定しないスクリーニング方法(all purpose cancer screening test)の開発が望まれるところである。 ヒトおよびヒト以外の哺乳類のほぼすべての細胞は、直接あるいは間接的に基底膜と接している。したがって、細胞が癌化し、癌細胞が周囲の細胞に浸潤するときには必ず基底膜の破壊を伴うと考えてよく、癌細胞は、基底膜を有する毛細血管、リンパ管などを破壊して、さらに周囲の組織、器官にも浸潤していく。 癌患者の尿を分析すると、尿中にはコラーゲン由来の3−ヒドロキシプロリン残基を含む3個以上のアミノ酸単位からなるペプチドが、正常人に比べて多量に排泄されている。この3−ヒドロキシプロリンは、基底膜中に存在するコラーゲン中に多く含まれる(1000個のアミノ酸あたり10個前後含有されている)L−アミノ酸である。 したがって、癌患者の尿中に大量に排泄される3−ヒドロキシプロリン残基を含む3個以上のアミノ酸単位からなるペプチドは、癌細胞の浸潤による基底膜の破壊に由来するものと推測される。 近年、本発明者らは、癌患者の尿中のペプチドを加水分解して、アミノ酸自動分析法で測定することにより、ヒト尿中の3−ヒドロキシプロリンを定量する手法を提案し、尿中の3−ヒドロキシプロリン量を指標として、臓器を特定しない癌疾患のスクリーニング方法(all purpose cancer screening test)の実現が可能であることを示した(非特許文献1参照)。 しかしながら、ペプチドの加水分解とアミノ酸自動分析とを組み合わせたこの測定法では、3−ヒドロキシプロリンを単離するための溶出条件などの設定が必要となり煩雑である上、アミノ酸自動分析機で測定できる検体数に限りがあること、また検出される3−ヒドロキシプロリン量がngレベルであることから、アミノ酸自動分析機のメンテナンスがよく、測定技術に習熟している者が行う必要があった。さらに、3−ヒドロキシプロリンのわずかな検出ピークに隣のアミノ酸の大きなピークが重なってしまう場合もあり、さらなる改良が望まれていた。 本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意研究した結果、3−ヒドロキシプロリン残基を含むペプチドを特異的に認識するペプチド抗体を用いることにより、より簡便で確実かつ効率的にヒト尿中の3−ヒドロキシプロリンの量を測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。松山重雄、丸田明枝、岡崎勲、小林友美子、「尿中3−hydroxyprolineの定量方法の開発」、第19回日本結合組織学会Vol.19、No.3,4、P.214〜215、昭和62年12月 本発明は、ヒト尿中に含まれる3−ヒドロキシプロリンの量をより簡便で確実かつ効率的に測定する方法、ならびに該方法に好適に用いることができる測定用キットを提供することを課題としている。 さらに、本発明は、3−ヒドロキシプロリン残基含有ペプチドを特異的に認識するペプチド抗体を産生させるためのペプチド抗原を提供することをも課題としている。 本発明に係るヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの免疫学的測定法は、配列番号1で表されるペプチドを抗原として認識し結合するペプチド抗体を用いることを特徴としている。 本発明では、前記ペプチド抗体は、配列番号1で表されるペプチドと反応し、かつ配列番号2で表されるペプチドとは反応しないことが好ましい。 具体的には、本発明のヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの免疫学的測定法では、前記ペプチド抗体の予め定める量と尿検体とをインキュベートして反応させた後、この反応液を、配列番号1で表されるペプチドを不溶化した固相と接触させることにより、固相上の不溶化ペプチドと反応液中に残存している遊離のペプチド抗体との免疫複合体を形成させた後、反応液を除去、固相を洗浄し、固相上の不溶化ペプチドと免疫複合体を形成しているペプチド抗体を定量することにより、尿検体中の3−ヒドロキシプロリン量を測定することが好ましい。 さらに好ましい態様においては、前記工程において、系から反応液を除去し、前記固相を洗浄した後、前記ペプチド抗体に対する標識第二抗体を、系内に添加し、その固相上に形成された免疫複合体と接触させ、免疫複合体を形成しているペプチド抗体に結合した第二抗体を定量することにより、尿検体中の3−ヒドロキシプロリン量を測定することができる。 また、本発明に係るヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの測定用キットは、少なくとも配列番号1で表されるペプチドを不溶化した固相と、該ペプチドに対するペプチド抗体とを含むことを特徴としている。 前記測定用キットは、さらに、前記ペプチド抗体に対する標識第二抗体を含むことが望ましい。 また、本発明に係るペプチド抗原は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなり、3−ヒドロキシプロリン残基含有ペプチドを特異的に認識するペプチド抗体の抗原であることを特徴としている。 本発明の免疫学的測定法によれば、より簡便、確実かつ効率的にヒト尿中に含まれる3−ヒドロキシプロリンの量を測定することができる。具体的には、特定のペプチド抗体を用いることで、ヒト尿中に含まれる3−ヒドロキシプロリンを、4−ヒドロキシプロリンや他の成分の存在下であっても特異的に認識することができ、3−ヒドロキシプロリンの量をより簡便、確実かつ効率的に測定することができる。 また、本発明の測定用キットによれば、上記測定法をより簡便に実施することができ、より多数の検体を効率的に分析することが可能となる。 本発明のペプチド抗原によれば、3−ヒドロキシプロリン残基含有ペプチドを特異的に認識するペプチド抗体を産生させることができる。 以下、本発明について具体的に説明する。 本発明のヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの免疫学的測定法は、配列番号1で表されるペプチドを抗原として認識するペプチド抗体を用いることを特徴としている。配列番号1で表されるペプチドは具体的には下記のアミノ酸配列からなる。 上述したように、癌患者の尿中に多量に排泄される3−ヒドロキシプロリン残基を含む3個以上のアミノ酸単位からなるペプチドは、癌細胞の浸潤による基底膜の破壊によるコラーゲン由来の分解物と推測することができる。この3−ヒドロキシプロリンは、蛋白質の合成終了後にプロリンが修飾されることによって形成されるため、コラーゲン中に3−ヒドロキシプロリン残基が単独で存在することはなく、その異性体である4−ヒドロキシプロリン残基も共に存在していると考えられる。 したがって、コラーゲンが分解されてペプチドが尿中に排泄された場合でも、3−ヒドロキシプロリン残基のみを含むペプチドが単独で存在することはなく、(i)3−ヒドロキシプロリン残基を含み4−ヒドロキシプロリン残基を含まないペプチド、(ii)3−ヒドロキシプロリン残基と4−ヒドロキシプロリン残基とを含むペプチド、(iii)3−ヒドロキシプロリン残基を含まず4−ヒドロキシプロリン残基を含むペプチド、(iv)3−ヒドロキシプロリン残基も4−ヒドロキシプロリン残基も含まないペプチドが共存していることが想定される。 よって、尿中に含まれている3−ヒドロキシプロリンの量をより正確に測定するためには、(iv)の3−ヒドロキシプロリン残基も4−ヒドロキシプロリン残基も含まないペプチドによる干渉や阻害がおこらないようにすることは言うに及ばず、さらに4−ヒドロキシプロリンの存在を念頭に入れ、(iii)の3−ヒドロキシプロリン残基を含まず4−ヒドロキシプロリン残基を含むペプチドによる干渉や阻害が起こらないようなペプチド抗体を得ることが重要である。 抗原と抗体との特異性は、主として抗原のエピトープによって決定されるが、通常、エピトープは約4〜8個のアミノ酸残基からなるといわれている。したがって、上記(iii)のペプチドによる干渉や阻害を回避するためには、配列番号1で表されるペプチドのうち、エピトープとなりうる領域の3−ヒドロキシプロリン残基の有無によって、特異性が変化する抗体を使用すればよい。 この点から、配列番号1で表されるペプチドを抗原として特異的に認識し結合するペプチド抗体を使用することが好ましく、配列番号1で表されるペプチドと反応し、かつ配列番号2で表されるペプチドとは反応しないペプチド抗体を使用することがより好ましい。なお、配列番号2で表されるペプチドは具体的には下記のアミノ酸配列からなり、配列番号1で表されるペプチドの3−ヒドロキシプロリン残基がプロリン残基に置き換わったものである。 ここで、本明細書中、ペプチド抗体が「配列番号1で表されるペプチドと反応し、かつ配列番号2で表されるペプチドと反応しない」とは、該ペプチド抗体の、配列番号1で表されるペプチドに対する抗体価と、配列番号2で表されるペプチドに対する抗体価とを比較した場合に、有意差があることを意味する。具体的には、たとえば、後述の図3〜5に示したように、波長492nmで測定された吸光度が1.0未満となるときの、配列番号1で表されるペプチドに対する抗体価が、配列番号2で表されるペプチドに対する抗体価と比較して4倍以上高い場合などには充分に有意差があると言える。 該ペプチド抗体は、通常の抗体産生方法により調製することができるが、その抗体産生の際に用いる免疫原としては、配列番号1で表される10アミノ酸残基からなるペプチド(ペプチド抗原)に公知の方法でキャリア蛋白を結合させたものが好ましく挙げられる。 配列番号1で表されるペプチドは、N末端にCysを有する10アミノ酸残基からなり、各アミノ酸残基を構成するアミノ酸を用いて公知の方法、たとえば、固相法(Boc法)で連続的に合成することができる。なお、配列番号2で表されるペプチドも同様に、該ペプチドを構成するアミノ酸を用いて固相法(Boc法)で連続的に合成することができる。 前記キャリア蛋白としては、公知のものを使用することができ、とくに限定されないが、具体的には、たとえば、ウシ血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などが挙げられる。 また、前記ペプチドとキャリア蛋白とを結合させる方法としては、たとえば、カルボジイミド法、グルタルアルデヒド法、ジアゾ縮合法、マレイミドベンゾイルオキシスクシンイミド(以下、MBSと略す。)法などが挙げられるが、配列番号1で表されるペプチドおよび配列番号2で表されるペプチドは、いずれもN末端にCysを有するため、MBS法を好適に用いることができる。 このようにして合成した配列番号1で表されるペプチドを含む免疫原を用いて得られる抗血清から配列番号1で表されるペプチドを抗原として認識するペプチド抗体を得ることができる。 該抗血清の製造は、公知の方法によって行えばよく、たとえば、配列番号1で表されるペプチドを含む免疫原を高度に精製し、フロイントの完全アジュバントと混合してエマルジョンとし、2週間おきに免疫動物の皮下に数回注射し、最終免疫の数日後に採血し、該血液を室温で凝固させた後、4℃で一夜静置し、その後、遠心分離(3000rpm、20分間)することにより得られる。 免疫動物としては、公知のものを用いることができ、とくに限定されないが、たとえば、日本白色家兎、ヤギ、ニワトリ、モルモット、ラット、マウスなどを挙げることができる。得られた抗血清は、プロテインGによって精製することが望ましい。 このようにして得られた抗血清には、配列番号1で表されるペプチドを抗原として認識するペプチド抗体が含まれている。したがって、該抗血清をペプチド抗体溶液として用いることができる。 上記のようにして得られたペプチド抗体溶液を用いて、該ペプチド抗体の予め定める量と尿検体とをインキュベートし反応させた後、この反応液を、配列番号1で表されるペプチドを不溶化した固相と接触させて、固相上の不溶化ペプチドと反応液中に残存している遊離のペプチド抗体との免疫複合体を形成させた後、系内から反応液を除去して、固相を洗浄し、固相上の不溶化ペプチドと免疫複合体を形成しているペプチド抗体を定量することにより、尿検体中の3−ヒドロキシプロリン残基含有ペプチド(配列番号1で表されるペプチド)の量を測定することができる。 このような手法は、一般にinhibition ELISAと呼ばれる測定原理に基づいている。inhibition ELISAとは、測定対象となる抗原を含む検体に該抗原に対する抗体(標識された抗体)を添加した反応液を、該抗原を不溶化した固相と接触させた後、該反応液を除去し、固相を洗浄して、固相上の不溶化抗原に結合しなかった抗体を除いた後、標識の発するシグナルから、固相上の不溶化抗原と結合した抗体量を検出し、該抗体量は検体中の抗原に相当する量の抗体が減少したものであることを利用して、検体中の抗原量を求める方法である(図1参照)。 つまり、検体中の抗原量が多ければ、固相上の不溶化抗原と結合するペプチド抗体量は少なく(シグナルは弱く)なり、逆に検体中の抗原量が少なければ、固相上の不溶化抗原と結合するペプチド抗体量は多く(シグナルは強く)なる。 本発明では、固相上の不溶化ペプチドと免疫複合体を形成しているペプチド抗体を定量する方法として、上記のように標識されたペプチド抗体を用いてもよく、あるいは標識された第二抗体を用いてもよい。 これらの標識から発せられたシグナルを測定するのであるが、本発明では、得られたシグナル測定値から、検体中に含まれている抗原(配列番号1で表されるペプチド)の量を求める際に、予め既知濃度の抗原(配列番号1で表されるペプチド)を含む標準液を用いて作製しておいた標準検定曲線を用いてもよい。 このようにして求められた抗原(配列番号1で表されるペプチド)量を、検体中に含まれる3−ヒドロキシプロリン量の指標とすることができる。 より具体的には、まず、前記ペプチド抗体の予め定める量と尿検体とをインキュベートして反応させる。この場合、尿検体とインキュベートさせるペプチド抗体の量は、抗体価によっても異なるが、1,000〜10,000倍希釈のペプチド抗体溶液の場合には、検体20〜50μLに対して通常50〜100μLである。インキュベートの温度は通常、室温(20〜25℃)で2〜3時間である。このようにして得られた反応液中で、3−ヒドロキシプロリン残基を有するペプチドと前記ペプチド抗体とは免疫複合体を形成していると考えられる。なお、3−ヒドロキシプロリン残基を有するペプチドがペプチド抗体より少なければ、残余のペプチド抗体は免疫複合体を形成できず遊離の状態で反応液中に残存しており、逆に、3−ヒドロキシプロリン残基を有するペプチドがペプチド抗体より多ければ、遊離のペプチド抗体は反応液中には存在しないことになる。 次にこの反応液を、配列番号1で表されるペプチドを不溶化した固相と接触させて、固相上の不溶化ペプチドと反応液中に残存している遊離のペプチド抗体との免疫複合体を形成させる。 前記固相としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ニトロセルロース、デキストラン、アガロース、ガラス、セラミック、金属などの各種支持体、およびこれらの組み合わせが挙げられる。 該固相の形状は特に限定されないが、マイクロプレート、ビーズ(磁性ビーズ含む)、シート、メンブレンなどが挙げられる。これらのうち、多数の検体の同時測定に簡便である点からマイクロプレートを用いることが好ましい。 配列番号1で表されるペプチドを固相上に不溶化する方法としては、物理的吸着または化学的結合による手法が採用できるが、不溶化操作が容易である点から物理的吸着によることが好ましい。さらに、固相に対する抗体の非特異的吸着を抑制するため、BSAなどでブロッキングすることが望ましい。 反応液と前記固相との接触は、通常、室温(20〜25℃)で2〜3時間行われる。 その後、反応液を系内から除去し、リン酸緩衝化生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス−HCl緩衝液などで固相を洗浄する。これによって、固相との接触前から反応液中に存在していた免疫複合体は除去され、固相上に不溶化されたペプチドとペプチド抗体との免疫複合体のみが固相上に残存する。 次に、この固相上の不溶化ペプチドと免疫複合体を形成しているペプチド抗体を定量する。これによって、尿検体中の3−ヒドロキシプロリン残基含有ペプチドの量を測定することができ、この結果を検体中の3−ヒドロキシプロリン量の指標とすることができる。 固相上の不溶化ペプチドと免疫複合体を形成しているペプチド抗体を定量するには、予めこのペプチド抗体を標識し、この標識から発せられるシグナルを検出してもよく、また、該ペプチド抗体に対する第二抗体を標識して用いて、該シグナルを検出してもよい。たとえば、前記工程において、反応液を系内から除去し、固相を洗浄した後、前記ペプチド抗体に対する標識第二抗体を、系内に添加し、その固相上に形成された免疫複合体と接触させ、免疫複合体を形成しているペプチド抗体に結合した第二抗体を定量することで、該ペプチド抗体を定量してもよい。 標識物質としては、酵素、蛍光物質、放射性物質が挙げられる。具体的には、酵素を用いる場合には、西洋ワサビペルオキシダーゼ(以下、HRPOという。)、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼなどが挙げられ、蛍光物質としてはフルオレセインイソチオシアネート、放射性物質としては125I、131Iなどが挙げられる。これらのうちでは、酵素標識が好ましい。 標識物質として酵素を用いる場合、酵素と前記ペプチド抗体あるいは第二抗体との結合は、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸法、マレイミド法、アビジン−ビオチン法など公知の方法によることができる。また、標識物質として酵素を用いる場合には、酵素に対する基質を加えて発色させ、所定の波長の吸光度を測定するが、基質としては、たとえば、HRPOを用いる場合には過酸化水素とo−フェニレンジアミン(以下、OPDという。)、アルカリホスファターゼを用いる場合にはp−ニトロフェニルホスフェート、β−D−ガラクトシダーゼを用いる場合にはo−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシドなどを用いることができる。 得られた測定結果と上述した標準検定曲線とを利用して、検体中に含まれるペプチド抗原(配列番号1で表されるペプチド)量を決定することができる。したがって、このペプチド抗原量を介して検体中に含まれる3−ヒドロキシプロリン量を測定することができる。 また、癌患者の尿と健常人の尿とをそれぞれ検体として用い、上述したようにシグナルを測定し、得られたシグナルの測定結果をそのまま比較することにより、検体中に含まれる3−ヒドロキシプロリン量のおおよその指標として用いることも可能である。 このように、本発明の免疫学的測定法によれば、従来の加水分解・アミノ酸自動分析による方法と比較して、簡便かつ効率的にヒト尿中の3−ヒドロキシプロリン量を測定することができる。 該免疫学的測定法をより簡便に実施するためには、少なくとも配列番号1で表されるペプチドを不溶化した固相と、該ペプチドに対するペプチド抗体とを含むヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの測定用キットを使用することが好適である。予めこのようなキットの形態になっていると、効率的に多数の検体の検査を行うことができる。 さらに、該測定用キットには、前記ペプチド抗体に対する標識第二抗体が含まれているとより便宜であり、好ましい。さらに好ましい態様としては、これらに加えて、標準検定曲線作成のための濃度既知の抗原(配列番号1で表されるペプチド)、緩衝液、標識が酵素の場合にはこれに対する基質などが含まれていることが望ましい。 以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記例において特に言及しない限り、%は重量%を意味する。 <免疫原の調製> 以下のようにして、配列番号1で表されるペプチド抗原のCysのN末端にMBS法によりKLHを結合させた免疫原を作製した。 すなわち、10mg KLH/2mL リン酸緩衝液に0.8mg MBS/100μL DMF(ジメチルホルムアミド)を滴下し、室温で30分間攪拌、遠心分離後、リン酸緩衝液(以下、PBSという。)を用いてSephadexG-25で分画した。分画により得られた最初のピーク溶液と、固相法で連続的に合成したペプチド(配列番号1)5mgとを混合し、4℃で一夜攪拌し免疫原とした。 <ペプチド抗体の産生> 上記のようにして得られた免疫原を、フロイントの完全アジュバントと等量混合してエマルジョンを得て、該エマルジョン0.5〜1mLを5羽の日本白色家兎に2週ごとに4回皮下注射し、免疫開始から2ヶ月後に採血し、常法に従い抗血清No.1〜5(以下、ペプチド抗体溶液No.1〜5という。)を得て、下記手順で抗体価の測定をELISA法で行った。 まず、固相として96穴マイクロプレートを用い、10mM PBSで希釈した配列番号1で表されるペプチド(10μg/mL)を100μL/wellの量でウェル内に添加し、室温で2時間接触させ、ウェル内の溶液を除去した後、10mM PBSで洗浄し、抗原不溶化固相を作製した。 該抗原不溶化固相を1%BSA−PBSでブロッキングした後、ペプチド抗体溶液No.1〜5をそれぞれ10mM PBS(0.1%Tween20)で1,000倍に希釈して、100μL/wellの量でウェル内に添加し、これをマイクロプレート上で10mM PBS(0.1%Tween20)により倍々希釈(1〜128倍)して、室温で2時間静置した。 次に、ウェル内から溶液を除去し、10mM PBS(0.1%Tween20)で洗浄した後、10mM PBSで5,000倍希釈したヤギHRPO標識−抗ウサギIgG(PEROXIDASE-CONJUGETED,ICN Biomedicals,Inc.)を100μL/wellの量でウェル内に添加し、室温で2時間反応させた。 洗浄後、基質液として、最終的な過酸化水素濃度5mM、OPD濃度10mMになるように調整した調整基質液100μL/wellを加え、室温で20分間反応させた後、1M硫酸を100μL/wellの量でウェル内に添加して反応を停止させた。 次に、分光光度計を用いて、ウェル内の溶液の波長492nmでの吸光度を測定した。 結果を図2に示す。 なお、免疫前に日本白色家兎の耳介静脈から25ml血液を採取し、遠心分離して血清を分取して、同様の操作で抗体価を測定し、コントロールとして用いた。 <ペプチド抗体の特異性評価> 上記のようにして得られたペプチド抗体のうち、抗体価が高かったもの(ぺプチド抗体溶液No.2、3、5)について、配列番号1で表されるペプチドと、配列番号2で表されるペプチドを用いて、上述した方法と同様にしてそれぞれ抗原不溶化固相を調製し、これらに対する抗体価をそれぞれ測定し、特異性を評価した。 結果を図3〜5に示す。 図3〜5によれば、配列番号1で表されるペプチドに対する抗体価は、配列番号2で表されるペプチドに対する抗体価とを比較した場合に、波長492nmで測定された吸光度が1.0未満となる場合の抗体価がいずれも4倍以上高くなっており、得られたペプチド抗体は、配列番号2で表される3−ヒドロキシプロリン残基を含まず4−ヒドロキシプロリン残基を含むペプチドではなく、配列番号1で表される3−ヒドロキシプロリン残基を含むペプチドに特異的であることがわかる。 <inhibition ELISAによるヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの測定(3−ヒドロキシプロリン残基含有ペプチドの定量)> (1)標準検定曲線の作製 図1に示した手順で、inhibition ELISA法により、濃度既知のペプチド(配列番号1)の吸光度を測定し、標準検定曲線を作製した。 まず、固相として96穴マイクロプレートを用い、10mM PBSで希釈した配列番号1で表されるペプチド(2.5μg/mL)を100μL/wellの量でウェル内に添加し、室温で2時間静置し、接触させ、ウェル内の溶液を除去した後、10mM PBSで洗浄し、抗原不溶化固相を作製した。 該抗原不溶化固相に1%BSA−PBSを300μL/well加え、4℃で24時間静置してブロッキングし、その後、ウェル内の溶液を除去した。 なお、上記操作と並行して、別の96穴マイクロプレート上で、10mM PBS(0.1%Tween20)で1,000倍希釈したペプチド抗体溶液No.3 50μL/wellと、配列番号1で表されるペプチドを10mM PBSで濃度100μg/mLから10段階倍々希釈したもの50μL/wellとを、それぞれ接触させ、4℃で24時間静置した(以下、反応液という)。 得られた反応液を100μL/wellの量で上記抗原不溶化固相の各ウェル内に添加し、室温で2時間静置した。 その後、各ウェル内から溶液を除去し、10mM PBS(0.1%Tween20)で洗浄した後、10mM PBSで5,000倍希釈したヤギHRPO標識−抗ウサギIgGを100μL/wellの量で各ウェル内に添加し、室温で2時間静置して反応させた。 次に、基質液として、最終的な過酸化水素濃度5mM、OPD濃度10mMになるように調整した調整基質液100μL/wellを加え、室温で30分間静置して反応させた後、1M硫酸を100μL/wellの量で各ウェル内に添加して反応を停止させ、分光光度計を用いて、ウェル内の溶液の波長492nmでの吸光度を測定した。 上記一連の操作を3回行った結果をその平均値と共に表1に示す。 得られた吸光度の平均値をX軸に、配列番号1で表されるペプチドの濃度をY軸にプロットし、標準検定曲線を得た。結果を図6に示す。 図6から、200ng/mL〜8μg/mLの範囲で精度よく測定可能であることがわかる。 (2)従来法との比較 既知濃度の抗原(配列番号1で表されるペプチド)に代えて、参考例1として後述した加水分解・アミノ酸自動分析による方法で使用したのと同じ検体(7名の癌患者から採尿した尿検体)を用いたほかは、上記(1)の方法と同様にして、ウェル内の溶液の波長492nmでの吸光度測定を行った。 次いで、得られた吸光度の値を図6の標準検定曲線に当てはめ、検体中の3−ヒドロキシプロリン残基含有ぺプチド(配列番号1で表されるペプチド)の濃度(μg/mL)を求めた。 その結果をX軸に、参考例1で得られた結果をY軸にプロットしたグラフを図7に示す。 図7から、本発明の方法および従来法(参考例1)のいずれでも、すべての尿検体の3−ヒドロキシプロリン残基含有ぺプチド濃度(本発明の方法)あるいは3−ヒドロキシプロリン濃度(従来法)は高く、尿中の3−ヒドロキシプロリン量が癌疾患のスクリーニングの指標として有効であることがわかる。 また、図7より、従来の加水分解・アミノ酸自動分析による方法と、本発明の方法とは、相関係数が高いこともわかる(γ=0.7689)。したがって、本発明の免疫学的測定法によって得られた結果は、ヒト尿中の3−ヒドロキシプロリン量の指標となることが確認された。 (3)尿中の夾雑物の影響評価 既知濃度の抗原(配列番号1で表されるペプチド)に代えて、下記の検体を用いたほかは上記(1)と同様にして、ウェル内の溶液の波長492nmでの吸光度測定を行った。 検体としては、・ペプチドコントロール;配列番号1で表されるペプチドを10mM PBSで希釈して2.5μg/mL濃度としたもの・検体 a;健常人の尿・検体 a+pep;健常人の尿に配列番号1で表されるペプチドを2.5μg/mLとなるように添加したもの・検体 b;aとは異なる健常人の尿・検体 b+pep;別の健常人の尿に配列番号1で表されるペプチドを2.5μg/mLとなるように添加したもの を使用した。 吸光度測定は上記検体をマイクロプレート上で10mM−PBS(0.1%Tween20)で倍々希釈(1〜128倍)したものについて、各2回行い、平均値を求めた。 結果を表2に示す。 該平均値をX軸に、各検体の希釈度をY軸にプロットした結果を図8に示す。 図8より、尿中に配列番号番号1で表されるペプチドを添加した検体(a+pepおよびb+pep)は、ペプチドコントロールと同様の挙動を示しており、尿中の夾雑物の影響は実質的に問題とならないことがわかる。 また、検体aおよび検体bでは、3−ヒドロキシプロリン残基を含むペプチド(配列番号1で表されるペプチド)の含有量が少ないため吸光度が高いことがわかる。 [参考例1] <加水分解・アミノ酸自動分析による方法> 7名の癌患者から採尿した尿検体を、それぞれ10分間3000gで遠心分離し、有形成分を分離除去した後、上清1mLに濃塩酸1mLを添加し、150℃で1時間加水分解した。 加水分解後、Speed−Vac Concentratorにて凍結乾燥させ、0.02N塩酸1mLに溶解し、3−ヒドロキシプロリン測定用試料として用いた。 なお、上記尿検体の加水分解前に濃度既知の3−ヒドロキシプロリンを添加し、その後は上記と同様に処理したものを補正用試料として用いた。 次いで、標準試料として濃度既知の3−ヒドロキシプロリンを、アミノ酸自動分析器(装置名;アミノ酸分析計835−50型、製造元;日立社製)で測定した。 その後、上記3−ヒドロキシプロリン測定用試料をMillipore GVで濾過した後、上記アミノ酸自動分析器にて、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリンの溶出時間としてそれぞれ16.13分及び21.50分の条件を設定して、3−ヒドロキシプロリンを単離し、予め測定した標準試料の測定値に基づいて、3−ヒドロキシプロリン含有量を求めた。 補正用試料についても同様にして、上記アミノ酸自動分析器で3−ヒドロキシプロリンを単離し、予め測定した標準試料の測定値に基づいて、3−ヒドロキシプロリン含有量を求めた。 上記3−ヒドロキシプロリン測定用試料の3−ヒドロキシプロリン含有量を、補正用試料の3−ヒドロキシプロリン含有量で補正し、最終的な3−ヒドロキシプロリン含有量を決定した。 結果を図7に示す。図1は、実施例1の(1)の手順を示す概略図である。図2は、ペプチド抗体溶液No.1〜5の抗体価を示すグラフである。図3は、ペプチド抗体溶液No.2の配列番号1で表されるペプチドに対する抗体価と配列番号2で表されるペプチドに対する抗体価とを示すグラフである。図4は、ペプチド抗体溶液No.3の配列番号1で表されるペプチドに対する抗体価と配列番号2で表されるペプチドに対する抗体価とを示すグラフである。図5は、ペプチド抗体溶液No.5の配列番号1で表されるペプチドに対する抗体価と配列番号2で表されるペプチドに対する抗体価とを示すグラフである。図6は、ペプチド抗体溶液No.3を用いた場合の、配列番号1で表されるペプチドの標準検定曲線を示すグラフである。図7は、本発明の免疫学的測定法と従来法との相関を示すグラフである。図8は、尿中の夾雑物の影響を検討したグラフである。 3−ヒドロキシプロリン。 4−ヒドロキシプロリン。 配列番号1で表されるペプチドを抗原として認識し結合するペプチド抗体を用いることを特徴とするヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの免疫学的測定法。 前記ペプチド抗体が、配列番号1で表されるペプチドと反応し、かつ配列番号2で表されるペプチドとは反応しないことを特徴とする請求項1に記載のヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの免疫学的測定法。 前記ペプチド抗体の予め定める量と尿検体とをインキュベートして反応させた後、 この反応液を、配列番号1で表されるペプチドを不溶化した固相と接触させることにより、固相上の不溶化ペプチドと反応液中に残存している遊離のペプチド抗体との免疫複合体を形成させた後、反応液を除去、固相を洗浄し、 固相上の不溶化ペプチドと免疫複合体を形成しているペプチド抗体を定量することにより、尿検体中の3−ヒドロキシプロリン量を測定することを特徴とする請求項1または2に記載のヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの免疫学的測定法。 反応液を除去し、前記固相を洗浄した後、 前記ペプチド抗体に対する標識第二抗体を、系内に添加し、その固相上に形成された免疫複合体と接触させ、免疫複合体を形成しているペプチド抗体に結合した第二抗体を定量することにより、尿検体中の3−ヒドロキシプロリン量を測定することを特徴とする請求項3に記載のヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの免疫学的測定法。 少なくとも配列番号1で表されるペプチドを不溶化した固相と、該ペプチドに対するペプチド抗体とを含むことを特徴とするヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの測定用キット。 さらに、前記ペプチド抗体に対する標識第二抗体を含むことを特徴とする請求項5に記載のヒト尿中3−ヒドロキシプロリンの測定用キット。 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなり、3−ヒドロキシプロリン残基含有ペプチドを特異的に認識するペプチド抗体の抗原であることを特徴とするペプチド抗原。配列表


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